JP2003278490A - トンネル掘削機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 トンネル掘削機において、掘削機本体に対す
る裏込め材の付着を防止することで推進力の低下を防止
してトンネル工事の効率化を図る。 【解決手段】 裏込め注入装置３４よりも前方に位置し
て、掘削機本体１１の外周面に対して裏込め材の付着を
防止する付着防止材を吐出する付着防止材吐出装置４１
を設け、この付着防止材吐出装置４１を、前胴１２の全
周にわたって形成された多数の吐出孔４２，４３に対応
してその内周面に一次貯留タンク４４，４５を固定し、
この一次貯留タンク４４，４５に供給配管４６を介して
開閉操作弁４７、送出ポンプ４８、貯溜タンク４９を連
結して構成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、トンネルボーリン
グマシンやシールドマシンなどのトンネル掘削機に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】一般に、シールド掘削機は、円筒形状を
なす掘削機本体の前部に円盤形状をなすカッタヘッドが
駆動回転可能に装着され、このカッタヘッドにカッタビ
ットが多数取付けられる一方、後部には掘削機本体を前
進させる多数のシールドジャッキが装着されると共に、
既設トンネルの内壁面にセグメントを組み付けるエレク
タ装置が装着されて構成されている。従って、カッタヘ
ッドを回転させながらシールドジャッキを伸長させる
と、既設セグメントからの掘削反力を得て掘削機本体が
前進し、各カッタビットが前方の地盤を掘削し、トンネ
ルを形成することができる。

【０００３】また、トンネル掘削工事では、回転するカ
ッタヘッドが地盤を掘削してトンネルを形成し、エレク
タ装置がこのトンネルの内壁面にセグメントをリング状
に組み付けてトンネルを構築していくが、セグメントは
掘削機本体の内側で組み立てるために既設トンネルの内
壁面とリング状の既設セグメントの外周面との間に空間
部、つまりテールボイドが発生する。そのため、掘削機
本体の後部には裏込め注入装置が設けられており、この
裏込め注入装置によりこのテールボイドにモルタルやコ
ンクリートなどの裏込め材を充填し、地山の緩みと沈下
を防止して既設セグメントを早期に安定させるようにし
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述したように、トン
ネル掘削に伴ってトンネルの内壁面に沿ってセグメント
が組み付けられ、テールボイドに裏込め材が充填されて
トンネルが構築される。この裏込め材は、一般に、２種
類の液（例えば、セメントと水ガラス）をテールボイド
に同時注入して混合することで、早期に固化させて既設
セグメントの安定化を図っている。この場合、この裏込
め材の注入圧と注入量を管理しながら作業を行うもの
の、これを高精度に管理することは困難である。そのた
め、裏込め注入装置により掘削機本体の後端部からテー
ルボイドに裏込め材が注入されるものの、一部が前方に
流動して既設トンネルの内壁面と掘削機本体の外周面と
の隙間に入り込むことがある。すると、この隙間に入り
込んだ裏込め材が早期に固化して掘削機本体の外周面に
付着してしまい、付着した裏込め材が掘削機本体の掘進
の障害となり、掘削機本体の推進力が減少して掘削能力
が低下してしまうという問題がある。

【０００５】本発明はこのような問題を解決するもので
あって、掘削機本体に対する裏込め材の付着を防止する
ことで推進力の低下を防止してトンネル工事の効率化を
図ったトンネル掘削機を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めの請求項１の発明のトンネル掘削機は、筒状の掘削機
本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、前
記掘削機本体の前部に駆動回転可能に装着されたカッタ
ヘッドと、トンネル内壁面に沿って覆工部材をリング状
に組立てるエレクタ装置と、前記掘削機本体側からトン
ネル内壁面と既設の覆工部材の外壁面との空間部に裏込
め材を注入する裏込め注入装置と、該裏込め注入装置よ
りも前方側の前記掘削機本体の外周面に対して前記裏込
め材の付着を防止する付着防止材を吐出する付着防止材
吐出手段とを具えたことを特徴とするものである。

【０００７】この場合、付着防止材の吐出位置は裏込め
材の注入位置よりも前方であればどこでもよいが、前方
への裏込め材の流動量を考慮すると、掘削機本体の前部
が好ましい。そして、この付着防止材は掘削機本体の全
周にわたって吐出することが望ましく、その方法として
は、多数の小孔から外側あるいは後方に向けて噴射する
とよい。

【０００８】また、請求項２の発明のトンネル掘削機で
は、前記付着防止材吐出手段は、前記掘削機本体に形成
された多数の吐出孔と、該多数の吐出孔に付着防止材を
送出する送出ポンプを有することを特徴としている。

【０００９】また、請求項３の発明のトンネル掘削機で
は、前記掘削機本体の内周部には付着防止材を一次的に
貯留する一次貯留タンクが設けられ、該一次貯留タンク
に前記多数の吐出孔が連通すると共に、前記送出ポンプ
が連結されたことを特徴としている。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。

【００１１】図１に本発明の一実施形態に係るトンネル
掘削機の概略断面、図２に付着防止材吐出装置の要部断
面、図３にトンネル掘削機の概略を示す。

【００１２】本実施形態のトンネル掘削機において、図
１に示すように、掘削機本体１１は円筒形状をなす前胴
１２と後胴１３とが球面軸受１４によって屈曲自在に連
結され、複数の中折れジャッキ１５によって屈曲可能と
なっている。この掘削機本体１１の前胴１２の前部には
軸受１６によってカッタヘッド１７が回転自在に装着さ
れている。このカッタヘッド１７は、放射状に設けられ
た複数のカッタスポーク１８を有し、このカッタスポー
ク１８に多数のカッタビット１９が装着されている。

【００１３】一方、このカッタヘッド１７の後部にはリ
ングギア２０が固定される一方、前胴１２にはカッタ旋
回モータ２１が取付けられ、この旋回モータ２１の駆動
ギア２２がこのリングギア２０に噛み合っている。従っ
て、旋回モータ２１を駆動して駆動ギア２２を回転駆動
すると、リングギア２０を介してカッタヘッド１７を回
転することができる。

【００１４】また、前胴１２にはカッタヘッド１７の後
方に位置してバルクヘッド２３が取付けられており、カ
ッタヘッド１７とこのバルクヘッド２３との間にチャン
バ２４が形成されている。そして、このチャンバ２４に
は一端がトンネル掘削機の外部に延設された送泥管２５
及び排泥管２６の他端が開口しており、排泥管２６の開
口部分の近傍には掘削土砂と泥水とを攪拌、混合するア
ジテータ２７が装着されている。

【００１５】更に、掘削機本体１１の後胴１３の前部に
はシールドジャッキ２８が周方向に沿って複数並設され
ており、このシールドジャッキ２８を掘進方向後方に伸
長してスプレッダ２９を既設セグメントＳに押し付ける
ことで、その反力により掘削機本体１１を前進すること
ができる。また、この後胴１３には支持部材３０によっ
て旋回リング３１が旋回自在に支持され、駆動モータ３
２により旋回可能となっており、この旋回リング３１に
セグメントＳを組立てるエレクタ装置３３が装着されて
いる。

【００１６】また、掘削機本体１１の後胴１３の外周部
には既設トンネルの内壁面と既設セグメントＳの外壁面
との間のテールボイドＢに裏込め材を注入する裏込め注
入装置３４が設けられている。この裏込め注入装置３４
にて、後胴１３の外周上部の両側に２箇所にわたって突
出部３５が掘進方向に沿って形成され、この突出部３５
内に２本（図示では１本）の注入管３６が配設され、基
端部が連結管３７を介して前胴１２に延出され、図示し
ない裏込め材供給装置に連結されている。一方、注入管
３６の先端部は後胴１３の後端部側、つまり、テールボ
イドに開口している。この場合、裏込め材としては、Ａ
液として固化材（セメント系、スラグ系）に助材（粘土
鉱物）及び水の混合材、Ｂ液として急結剤（水ガラス
系）が用いられ、Ａ液とＢ液を別々に圧送し、所定の混
合割合で混合することで、急速にゲル化して固化し、地
山の緩みや沈下を防止して既設セグメントを早期に安定
させることができる。

【００１７】そして、本実施形態では、この裏込め注入
装置３４よりも前方に位置して、掘削機本体１１の外周
面に対して裏込め材の付着を防止する付着防止材を吐出
する付着防止材吐出装置４１が設けられている。この付
着防止材吐出装置４１において、図１乃至図３に示すよ
うに、前胴１２には多数の吐出孔４２，４３が全周にわ
たって形成されており、この吐出孔４２，４３に対応す
る前胴１２の内周面には付着防止材を一次的に貯留する
一次貯留タンク４４，４５が周方向に沿って固定され、
吐出孔４２，４３に連通している。そして、各一次貯留
タンク４４，４５には供給配管４６の先端部が連結さ
れ、この供給配管４６の基端部には、開閉操作弁４７、
送出ポンプ４８、貯溜タンク４９が連結されている。

【００１８】従って、開閉操作弁４７を開放して送出ポ
ンプ４８を駆動することで、貯溜タンク４９内の付着防
止材を供給配管４６を通して一次貯留タンク４４，４５
に供給し、多数の吐出孔４２，４３から外方に吐出し、
掘削機本体１１の外周面に付着防止材を付着させること
ができる。この場合、付着防止材は、掘削機本体１１に
対して裏込め材の付着を防止するものであればよく、裏
込め材の種類に応じて適宜選択すればよい。

【００１９】なお、図１に示すように、後胴１３の後端
部の内周面には周方向に沿ってテールシール（ブラシシ
ール）５０が装着され、既設セグメントＳの外周面に摺
接して掘削機本体１１内への泥水や泥土の浸入を防止し
ており、その後方であって、既設トンネルの内壁面と既
設セグメントＳの外壁面との間の空間部がテールボイド
Ｂであり、このテールボイドＢに裏込め注入装置３４の
注入管３６の先端部が開口している。

【００２０】ここで、このように構成された本実施形態
のトンネル掘削機によるトンネル掘削作業について説明
する。

【００２１】まず、カッタ旋回モータ２１によりカッタ
ヘッド１７を回転させながら、複数のシールドジャッキ
２８を伸長してスプレッダ２９を既設セグメントＳへ押
し付け、その反力によって掘削機本体１１を前進させ
る。すると、カッタヘッド１７のカッタビット１９が前
方の地盤を掘削し、掘削土砂がチャンバ２４内に取り込
まれ、送泥管２５から供給された送水とアジテータ２７
により混合され、排泥管２６によって外部に排出され
る。次に、エレクタ装置３３では、既設トンネル内に搬
入されたセグメントＳを把持してトンネル内壁面に沿っ
て移動し、把持したセグメントＳを所定の位置に固定
し、リング状に組み立てていく。

【００２２】そして、掘削機本体１１の前部では、付着
防止材吐出装置４１が常時稼働して多数の吐出孔４２，
４３から付着防止材を外方に吐出し、掘削機本体１１の
外周面に付着させている。一方、掘削機本体１１の後端
部では、裏込め注入装置３４が稼働して注入管３６の先
端部から裏込め材を吐出し、この裏込め材をテールボイ
ドに充填する。従って、テールボイドに充填された裏込
め材が早期に固化することで、地山の緩みや沈下が防止
されて既設セグメントＳを早期に安定させることができ
る。この場合、裏込め材の注入圧と注入量を管理しなが
ら作業を行うが、一部の裏込め材が前方に流動して既設
トンネルの内壁面と掘削機本体１１の外周面との隙間に
入り込むことがある。ところが、掘削機本体１１の外周
面には付着防止材が塗布されており、この隙間に入り込
んだ裏込め材が固化して掘削機本体１１の外周面に付着
することはなく、掘削機本体１１は推進力が減少せずに
所定の掘削能力でトンネルを構築することができる。

【００２３】このように本実施形態のトンネル掘削機に
あっては、掘削機本体１１の後部に設けられた裏込め注
入装置３４よりも前方に位置して、掘削機本体１１の外
周面に対して裏込め材の付着を防止する付着防止材を吐
出する付着防止材吐出装置４１を設け、この付着防止材
吐出装置４１を、前胴１２の全周にわたって形成された
多数の吐出孔４２，４３に対応してその内周面に一次貯
留タンク４４，４５を固定し、この一次貯留タンク４
４，４５に供給配管４６を介して開閉操作弁４７、送出
ポンプ４８、貯溜タンク４９を連結して構成している。

【００２４】従って、付着防止材吐出装置４１により多
数の吐出孔４２，４３から付着防止材を外方に吐出して
掘削機本体１１の外周面に付着させることで、裏込め注
入装置３４によってテールボイドに充填された裏込め材
が前方に流動しても、この裏込め材が固化して掘削機本
体１１の外周面に付着することはなく、掘削機本体１１
は適正な推進力で掘進し、確実にトンネルを構築するこ
とができる。

【００２５】なお、上述の実施形態において、付着防止
材吐出手段を、開閉操作弁４７を開放して送出ポンプ４
８を駆動して貯溜タンク４９内の付着防止材を供給配管
４６を通して一次貯留タンク４４，４５に供給し、多数
の吐出孔４２，４３から外方に吐出して掘削機本体１１
の外周面に付着させるように構成したが、この構成に限
定されるものではない。例えば、各吐出孔を斜め後方に
向けて開口して掘削機本体１１の外周面に付着しやすく
したり、掘削機本体１１の外周面にリング状の凸部ある
いは凹部を形成し、その背面部から後方に向けて付着防
止材を吐出するようにしてもよい。更に、裏込め材が付
着しやすい掘削機本体１１の一部だけ、つまり、多数の
吐出孔を周方向の一部分だけ設けてもよい。

【００２６】また、裏込め注入装置３４を、掘削機本体
１１の外周面に固定した突出部３５に注入管３６を配設
し、この注入管３６の先端部から裏込め材をテールボイ
ドＢに注入するように構成したが、既設セグメントＳの
注入孔に裏込め材注入ノズルを差し込んでテールボイド
Ｂに注入するようにしたもよい。

【００２７】そして、本発明のトンネル掘削機は、シー
ルド掘削機やトンネルボーリングマシンに適用すること
ができる。

【００２８】

【発明の効果】以上、実施形態において詳細に説明した
ように請求項１の発明のトンネル掘削機によれば、筒状
の掘削機本体を推進ジャッキにより前進可能とし、掘削
機本体の前部に駆動回転可能なカッタヘッドを装着する
と共に、既設トンネルの壁面に沿って覆工部材をリング
状に組立てるエレクタ装置と、掘削機本体側からトンネ
ル内壁面と既設の覆工部材の外壁面との空間部に裏込め
材を注入する裏込め注入装置と、裏込め注入装置よりも
前方側の掘削機本体の外周面に対して裏込め材の付着を
防止する付着防止材を吐出する付着防止材吐出手段を設
けたので、裏込め注入装置によってトンネル内壁面と既
設覆工部材の外壁面との空間部に充填された裏込め材が
前方に流動しても、掘削機本体の外周面に付着防止材が
塗布されているため、この裏込め材が固化して掘削機本
体に付着することはなく、掘削機本体の推進力の低下を
防止してトンネル工事の効率化を図ることができる。

【００２９】請求項２の発明のトンネル掘削機によれ
ば、付着防止材吐出手段として、掘削機本体に形成され
た多数の吐出孔と、この多数の吐出孔に付着防止材を送
出する送出ポンプとを設けたので、掘削機本体の内部か
ら容易にその外周面に付着防止材を塗布することができ
る。

【００３０】請求項３の発明のトンネル掘削機によれ
ば、掘削機本体の内周部に付着防止材を一次的に貯留す
る一次貯留タンクを設け、この一次貯留タンクに多数の
吐出孔を連通すると共に送出ポンプが連結したので、常
時、掘削機本体の内部から適量の付着防止材をその外周
面に塗布することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削機の概
略断面図である。

【図２】付着防止材吐出装置の要部断面図である。

【図３】トンネル掘削機の概略図である。

【符号の説明】

１１ 掘削機本体 １７ カッタヘッド ２１ カッタ旋回モータ ２８ シールドジャッキ（推進ジャッキ） ３３ エレクタ装置 ３４ 裏込め注入装置 ３６ 注入管 ４１ 付着防止材吐出装置 ４２，４３ 吐出孔 ４４，４５ 一次貯留タンク ４６ 供給配管 ４７ 開閉操作弁 ４８ 送出ポンプ ４９ 貯溜タンク Ｓ セグメント Ｂ テールボイド

フロントページの続き (72)発明者 繁 修二 東京都新宿区津久戸町２番１号 株式会社 熊谷組東京本社内 Ｆターム(参考） 2D054 AD22 FA12 2D055 JA00 LA14

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 筒状の掘削機本体と、該掘削機本体を前
   進させる推進ジャッキと、前記掘削機本体の前部に駆動
   回転可能に装着されたカッタヘッドと、トンネル内壁面
   に沿って覆工部材をリング状に組立てるエレクタ装置
   と、前記掘削機本体側からトンネル内壁面と既設の覆工
   部材の外壁面との空間部に裏込め材を注入する裏込め注
   入装置と、該裏込め注入装置よりも前方側の前記掘削機
   本体の外周面に対して前記裏込め材の付着を防止する付
   着防止材を吐出する付着防止材吐出手段とを具えたこと
   を特徴とするトンネル掘削機。
2. 【請求項２】 請求項１記載のトンネル掘削機におい
   て、前記付着防止材吐出手段は、前記掘削機本体に形成
   された多数の吐出孔と、該多数の吐出孔に付着防止材を
   送出する送出ポンプを有することを特徴とするトンネル
   掘削機。
3. 【請求項３】 請求項２記載のトンネル掘削機におい
   て、前記掘削機本体の内周部には付着防止材を一次的に
   貯留する一次貯留タンクが設けられ、該一次貯留タンク
   に前記多数の吐出孔が連通すると共に、前記送出ポンプ
   が連結されたことを特徴とするトンネル掘削機。