JP4045479B2 - シールドトンネル工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシールドトンネル工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールドトンネル工法においてたとえばトンネル曲線部でシールド機を急旋回させる際には、旋回のためのクリアランスを確保するために、拡径カッタを用いてシールド機の断面よりも大断面の掘削すなわち余掘りを行う必要がある。そのような余掘りを行う場合、シールド機自身では余掘り部における地山の保持ができないため、余掘り部において地山の崩落が懸念される場合には、その対策として、予め余掘り部を地盤改良しておいて地山強度を増強させておく、余掘り部に対して急結裏込め材を速やかに充填する、余掘り部に設置するセグメントとして袋付きの特殊なセグメントを用いて袋を膨張させることで地山を保持する、といった工法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、地盤改良による地山増強策では余掘り部の周囲の広範囲にわたって地盤改良を行う必要があり、多大なコストと工期を必要とする。また、急結裏込め材による場合には、旋回が完了しないうちに裏込め材が不用意に固結してしまって旋回に支障をきたす場合があるので、固結のタイミングを確実に制御する必要がある。さらに、袋付きの特殊なセグメントを用いることはシールド機側部の余掘り部の地山保持ができず、また大きなコスト増となるし施工も煩雑となる。
【0004】
以上のことは、旋回部に対して旋回クリアランスを確保するために余掘りを行う場合のみならず、掘進途中で断面を漸次拡大あるいは縮小させるために余掘りを行う際においても同様であり、シールド機自身では地山を安定に保持することのできない余掘り部に対する地山保持を有効に行い得る手段の開発が必要とされていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記事情に鑑み、請求項1の発明は、シールド機の旋回部あるいはトンネル断面変更部において通常断面よりも大断面の余掘りを行うに際し、流動性を有しかつ地山への非浸透性を有するゲル状の充填材を余掘り部に充填して地山を保持しつつ余掘り部を掘進し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することにより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明のシールドトンネル工法において、トンネル断面変更部においてトンネル断面の拡幅を伴う場合、余掘り部を掘進し、断面拡幅時には拡幅量に応じて充填材を回収し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の発明のシールドトンネル工法において、トンネル断面変更部においてトンネル断面の拡幅と縮小を伴う場合、余掘り部を掘進し、断面拡幅時には拡幅量に応じて充填材を回収し、断面縮小時には縮小量に応じて充填材を充填し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図3に本発明の一実施形態を示す。本実施形態はトンネル曲線部でシールド機1を急旋回させるに際して、旋回部の周囲に対して断面を拡大する余掘りを行い、そのような余掘り部Aを設けることで旋回クリアランスを確保する場合に適用したものである。
【0011】
図1は旋回部に達する以前の直線部の掘進を行っている状況を示し、この段階では通常どうりシールド機1により掘進を行い、その後方においてセグメント2を組み立て、その外側に裏込め材3を充填し硬化させていく。
【0012】
シールド機1が旋回部に達したら、図2に示すように拡径カッタ4を延ばして余掘りを行うが、その際にはシールド機1の内部からゲル状の充填材5を注入口6を通してポンプ(図示せず)によって余掘り部Aに加圧注入して余掘り部A全体に充填する。充填材5の詳細については後述するが、これは流動性を有するとともに地山への非浸透性を有する(つまり地山へ浸透していかない)特性を有するゲル状のものであって、これを余掘り部Aに充填することで地山が保持されてその崩落が防止されるものである。また、この充填材5は流動性を維持するものであるので、シールド機の旋回に支障を来すことはないし、後段において容易に回収することができるものである。
【0013】
上記のように余掘り部Aに充填した充填材5により余掘り部Aの地山を安定に保持しつつシールド機1を旋回させ、旋回部を通過したら、図3に示すように通常の直線部の掘進に戻る。そして、組み立てられたセグメント2の内側から余掘り部Aの前後の位置に注入口7および排出口8を設け、注入口7から余掘り部Aに対して裏込め材3を加圧注入しつつ、余掘り部A内に充填されていた充填材5を排出口8からセグメント2内に押し出して回収する。そのようにして余掘り部Aの地山を保持しつつ余掘り部A内を充填材5から裏込め材3に置換すれば、所定時間経過後には直線部と同様に裏込め材3が自ずと硬化する。
【0014】
上記のシールドトンネル工法によれば、ゲル状の充填材5を余掘り部Aに充填することで地山を安定に支持して崩落を防止できることはもとより、その充填材5は流動性を維持するものであるから、ポンプによる長距離圧送および余掘り部Aへの加圧注入を容易に行うことができるし、余掘り部Aに裏込め材3を加圧注入することで自ずとそこから押し出されてくるので容易に回収することも可能である。勿論、本シールドトンネル工法は、充填材5が従来の急結裏込め材を用いる場合のように不用意に固結してしまうようなことはないからシールド機1の旋回に支障を来すこともなく、従来の地盤改良による工法や、特殊な袋付きのセグメントを用いる場合に比べて施工の簡略化を実現でき、工期短縮と工費削減を図ることができる。
【0015】
ところで、本実施形態のシールドトンネル工法において採用する充填材5は、流動性を有するとともに少なくとも回収されるまでは流動性を維持するものであること、および地山に対する非浸透性を有するものであることが必要であり、そのような特性を有する充填材として次のものを採用している。
【0016】
すなわち、本実施形態の充填材5は、水とベントナイトおよびポリアクリルアミド系高分子凝集材のみをゲル状を呈するように配合したものであり、それらの配合比はそれぞれ77.1〜85.0重量%、14.7〜21.9重量%、0.1〜1.4重量%の範囲内に設定することが好ましく、特に水79.69重量%、ベントナイト20.05重量%、ポリアクリルアミド系高分子凝集材0.26重量%とすることが最適な配合比の一例として挙げられる。これらを配合するための操作は適宜で良いが、たとえば水とベントナイトとを高速ミキサーにて10分間程度攪拌した後、それにポリアクリルアミド系高分子凝集材を添加してさらに低速ミキサーにて20分間程度攪拌すれば良い。また、ミキサーの形状によっては、1つのミキサーで回転速度を変えることにより、本実施形態の充填材5を10分程度で配合することができる。
【0017】
上記配合の充填材5は比重が1.13程度であるが、その表面に直径50mmの球体を静置してその沈降(沈み込み)の程度を確認する球体沈降試験によれば、球体の比重が2.4の場合には全体の1/3程度しか沈降せず、球体の比重が3.6の場合でも1/2程度沈降するに留まり、この結果から比重2.7程度である土粒子に対する十分な保持性能を有するものであることが確認できた。
【0018】
しかも、上記配合の充填材5は、地山に対する十分な保持性能と非浸透性を有し、流動性が長期にわたって安定に維持されるという基本的な特性に加え、加圧による圧縮率が小さい、水に対する分離抵抗性が高い、空洞部への充填性が良い、ポンプによる長距離圧送によっても性状変化が生じない、十分に安価であるといった特性を有し、上記シールドトンネル工法において採用するものとして最適である。
【0019】
以上で本発明をシールド機の旋回部に適用した場合の一実施形態を説明したが、本発明は旋回部に対して余掘りを行う場合のみならず、掘進途中で断面を拡大あるいは縮小するに際しても同様に適用できるものであり、その実施形態を図4および図5に示す。
【0020】
図4は断面を拡大する場合の実施形態であり、(a)に示すようにシールド機1の先端部が拡幅部に達したら、(b)に示すように拡径カッタ4を延ばし、かつ充填材5を充填して地山保持しつつ掘進を行う。(c)に示すようにシールド機1の後端部が拡幅部に達したら拡幅胴部10を広げるが、その際には余剰の充填材5を回収する。(d)に示すように充填材5を充填して地山を保持しつつ掘進を続け、所定長の掘進を行ったら掘進を停止し、裏込め材3を充填して充填材5を回収し、裏込め材3を硬化させる。以降は(e)に示すように、充填材5を充填しつつ一定長の掘進を行っては、裏込め材3を充填して充填材5を回収していけば良い。
【0021】
図5は断面を拡幅した後、再び縮小する場合の実施形態であり、(d)に示す拡幅部の掘進工程までは図4と同様である。この場合も、充填材5を充填しつつ断面拡大部の掘進を行い、シールド機1の先端部が縮小部に達した時点で(e)に示すように拡径カッタ4を格納し、続いて(f)に示すように拡幅胴部10も格納して通常の掘進に戻り、その際には充填材5を追加充填する。そして、シールド機1の後端部が断面縮小部に達したら、(g)に示すように裏込め材3を充填して充填材5を回収し、裏込め材3を硬化させる。なお、断面拡大部の距離が長い場合には、図3の場合と同様に一定長の掘進ごとに裏込め材3を充填しては充填材5を回収すれば良い。
【0022】
なお、上記の充填材は、流動性を有し、地山への非浸透性を有するものであるので、上記実施形態のようなシールドトンネル工法に適用して最適であるが、シールドトンネル工法や地山への適用に限らず他の用途にも適用できることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】
請求項1の発明のシールドトンネル工法は、流動性および地山への非浸透性を有するゲル状の充填材を余掘り部に充填して地山を保持しつつ余掘り部を掘進し、シールド機が余掘り部を通過した後に、裏込め材を充填して充填材を回収し、裏込め材を硬化させるので、余掘り部の地山を安定に保持しつつそこでの掘進を支障なく行うことが可能であり、従来の地盤改良による工法や急結裏込め材を用いる工法、特殊な袋付きのセグメントを用いる工法に比べて施工の簡略化を実現でき、工期短縮と工費削減を図ることができる。また、請求項2の発明によれば、トンネル断面の拡幅部における掘削を充填材により地山を安定に保持しつつ行うことができる。請求項3の発明によれば、トンネル断面の拡幅部および縮小部における掘削をいずれも充填材により地山を安定に保持しつつ行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を示す概要図であって、通常の直線部の掘削を行っている状況を示す図である。
【図2】 同、余掘り部を充填材により保持しつつ余掘りを行っている状況を示す図である。
【図3】 同、余掘り部の充填材を裏込め材に置換している状況を示す図である。
【図4】 本発明の他の実施形態を示す図である。
【図5】 本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
A 余掘り部
1 シールド機
2 セグメント
3 裏込め材
4 拡径カッタ
5 充填材
6 注入口
7 注入口
8 排出口
10 拡幅胴部
Claims (3)
- シールド機の旋回部あるいはトンネル断面変更部において通常断面よりも大断面の余掘りを行うに際し、流動性を有しかつ地山への非浸透性を有するゲル状の充填材を余掘り部に充填して地山を保持しつつ余掘り部を掘進し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することにより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とするシールドトンネル工法。
- 請求項1記載のシールドトンネル工法において、トンネル断面変更部においてトンネル断面の拡幅を伴う場合、余掘り部を掘進し、断面拡幅時には拡幅量に応じて充填材を回収し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とするシールドトンネル工法。
- 請求項1記載のシールドトンネル工法において、トンネル断面変更部においてトンネル断面の拡幅と縮小を伴う場合、余掘り部を掘進し、断面拡幅時には拡幅量に応じて充填材を回収し、断面縮小時には縮小量に応じて充填材を充填し、シールド機が余掘り部を通過した後に裏込め材を充填することより充填材を回収し、充填された裏込め材を硬化させることを特徴とするシールドトンネル工法。
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