JP3713589B2 - 建物の防蟻構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建物の断熱基礎に使用される断熱材の内部を白アリが通過して軸組や床組へ侵入するのを物理的に防止する建物の防蟻構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物における従来の白アリ防除技術としては、例えば、(1) 建物の床下の地盤(土壌)と、地面から1m以内の木部とを薬剤で処理する方法や、(2) 白アリの活動をモニタリングしながら、侵入してきた白アリに少量の薬剤を含む毒餌を摂食させて根絶するベイト工法(レスケミカル法)等が知られている。
【0003】
しかしながら、上記のような従来例(1) においては、薬剤に起因する化学物質過敏症等の問題があり、即ち、建物内の環境が化学物質によって汚染されるという問題点がある。
【0004】
また、従来例(2) においては、白アリに毒餌を摂食させ、コロニー全体の活力を衰退させることを目的とするので、その開始から終了までに少なくとも数カ月〜2年程度の長期間を要するという問題点がある。
【0005】
そこで、これらの問題が発生しないように、(3) 薬剤を全く使用しない、ステンレスメッシュや破砕石等の物理的なバリアーを構築する物理的工法(ケミカルフリー法)等が提案されている。この物理的工法に使用されるバリアー材としては、例えば、特許第2652902号公報及び特表平8−506868号公報に開示されているように、白アリの分泌物に耐性で且つ少なくとも約70のショア硬度を有する耐腐食性材料の編み目シートからなり、この編み目の孔がいずれの方向においても制御すべき白アリ種の頭部横断面の最大寸法より小径である白アリバリアー材等がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来例(3) においては、断熱基礎等に使用される断熱材の内部を白アリが通過するのを防止することについては開示されていない。
【0007】
この発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、断熱基礎に使用される断熱材の内部を白アリが通過して軸組や床組へ侵入するのを物理的に防止できる建物の防蟻構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段とするところは、第1に、建物の外周部分に施工された布基礎の立ち上がり部の外側面及び/又は内側面に密着した断熱材の内部を白アリが通過して軸組及び床組へ侵入するのを物理的に防止する建物の防蟻構造であって、前記立ち上がり部の外側面に密着した断熱材の外側面及び/又は立ち上がり部の内側面に密着した断熱材の内側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されたシート材を介して更に断熱材が取付けられていることにある。
第2に、前記布基礎の内面と、この布基礎の内方に設けられた基礎及び/又は束石の側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されたシート材を前記床下空間内へその上縁部が突出するようにしてそれぞれ取付けたことにある。
【0009】
第3に、建物の外周部分に施工された布基礎の立ち上がり部の外側面及び/又は内側面に密着した断熱材の内部を白アリが通過して軸組及び床組へ侵入するのを物理的に防止する建物の防蟻構造であって、前記断熱材の下面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されかつ複数のアンカー孔を有するシート材を介して更に断熱材が取付けられていると共に、前記布基礎の内面と、この布基礎の内方に設けられた基礎及び/又は束石の側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されかつ複数のアンカー孔を有するシート材を前記床下空間内へその上縁部が突出するようにしてそれぞれ取付けたことにある。
【0010】
第4に、前記シート材が地盤面より高い位置にあることにある。
【0011】
第5に、前記シート材が、前記白アリの頭部横断面の最大寸法より小径の複数のアンカー孔を有することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至図4に示すように、第1実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、建物Aの外周部分に施工された布基礎1の立ち上がり部2の例えば外側面2aに密着した断熱材3の内部を白アリ4が通過して軸組B及び床組Cへ侵入するのを物理的に防止するものであって、前記断熱材3の外側面3aに、前記白アリ4の分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成された例えばステンレスメッシュ(シート材)5を介して更に断熱材6が取付けられているものである。
【0013】
前記布基礎1は、図1及び図2に示すように、建物Aの外周部分に平面視で例えば矩形状に施工され、立ち上がり部2とベース部7とから例えば横断面が逆T字状に形成されている。
【0014】
前記断熱材3は、例えば合成樹脂発泡体等から構成され、前記立ち上がり部2の外側面2aに配置されて例えばこの立ち上がり部2とベース部7の隅角部8に密着するように取付けられている。
【0015】
前記断熱材6も、例えば合成樹脂発泡体等から構成され、前記断熱材3の外側面3aにステンレスメッシュ5を介して取付けられている。なお、この断熱材6は、前記断熱材3の外側面3aに例えば釘、ビス、ステープル等の止着部材や接着剤等によってあらかじめ又は建築現場で取付けられたステンレスメッシュ5の上から建築現場において接着剤等で取付けてもよいし、あるいはこの断熱材6と前記断熱材3の間にあらかじめステンレスメッシュ5を埋設等して形成した積層体を前記立ち上がり部2の外側面2aに密着するようにしてもよい。
【0016】
前記白アリ4とは、ゴキブリに近縁の社会生活をする不完全変態の昆虫であって、シロアリ目(等翅類)Isopteraの総称である。このような白アリ4としては、例えば、ヤマトシロアリやイエシロアリ等の各種の白アリが挙げられる。また、この白アリ4は、図3に示すように、非変形性の堅い頭部4aを有する一方、比較的柔らかくて弱い体部4bを有している。
【0017】
前記ステンレスメッシュ5は、図4に示すように、白アリ4の分泌物に耐性で且つ少なくとも約70のショア硬度を有する耐腐食性材料であるステンレス鋼ワイヤー5a等から製織され、前記白アリ4の頭部4aの横断面の最大寸法Hより小径の複数の編み目9を有している。このようなステンレスメッシュ5としては、例えば、「ターミーメッシュ(TERMI−MESH)」(商品名、ターミーメッシュ・オーストラリア社製)等を好適に使用することができる。
【0018】
なお、白アリバリアー材として使用されるシート材としては、このようなステンレスメッシュ5に限定されるものではなく、白アリ4から放出されるギ酸等の分泌物に耐性で且つ白アリ4が噛み砕くことができない硬さ、好ましくは少なくとも約70のショア硬度を有すると共に、使用環境下で数十年の耐用年数を有する耐腐食性材料で構成されていれば、種々のものを使用することができる。このようなシート材としては、例えば、セラミックス、ガラス、合成樹脂等の繊維、フィラメント、ストランド等から製織又は製編等されたシートや不織布、あるいは金属板、金属シート等が挙げられる。
【0019】
ここで、シート材が、この実施形態のようにいずれの方向においても前記白アリ4の頭部4aの横断面の最大寸法Hより小径の複数の編み目9等のアンカー孔を有する場合には、白アリ4の進行をこのシート材により阻止できると共に、前記2層の断熱材3,6の間にシート材を介在させた状態においてはこのアンカー孔内に接着剤や合成樹脂発泡体等が充填されるので、アンカー効果により前記2層目の断熱材6の取付けをより強固にできるという利点がある。
【0020】
なお、複数のアンカー孔を有するシート材としては、前記複数の編み目9を有するステンレスメッシュ5の他、図5に示すように、例えばアンカー孔10を打ち抜いて形成したパンチングメタル11等が挙げられる。
【0021】
このように、前記2層の断熱材3,6の間にステンレスメッシュ5等のシート材を介在させておけば、地盤12中から2層目の断熱材6の内部に侵入した白アリ4の進行は、このシート材により阻止される。そのため、前記立ち上がり部2の外側面2aに密着した1層目の断熱材3を白アリ4による食害から保護でき、この断熱材3の内部を白アリ4が通過して軸組Bや床組Cへ侵入するのを防止できるという利点がある。
【0022】
なお、この実施形態においては、前記立ち上がり部2の外側面2aに断熱材3,6を取付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、立ち上がり部2の内側面2bに断熱材3を密着させ、この断熱材3の内側面に前記シート材を介して更に2層目の断熱材6を取付けてもよいし、あるいはこのようにして外側面2aと内側面2bの両方に取付けるようにしてもよい。
【0023】
また、前記1層目の断熱材3の下面3dは、この実施形態のようにベース部7と密着させて地盤12と接しないようにし、この下面3dから白アリ4が侵入しないようにしておくのが望ましい。
【0024】
更に、前記布基礎1の内方の地盤面12a上には、前記布基礎1の内方に形成される床下空間13の防湿を図ること等を目的として、この実施形態のように必要に応じて防湿シート14を敷設すると共に、その上から例えば捨てコン、乾燥砂、乾燥砂利等の押さえ層15を設けておいてもよいし、あるいは土間床を施工しておいてもよい。
【0025】
前記地盤面12a上に土間床を施工する場合には、この土間床と前記布基礎1との打ち継ぎ部分や、土間床と前記布基礎1の内方に設けられた布基礎16等との打ち継ぎ部分からの侵入を防止するために、これら打ち継ぎ部分の上方又は下方に、シート材をこれら打ち継ぎ部分を閉塞するようにそれぞれ取付けておくのが望ましい。
【0026】
図7に示すように、第2実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、例えば、第1実施形態の断熱材3より低く且つ厚く形成されて前記立ち上がり部2の外側面2aの上方側に密着した断熱材23の内部を白アリ4が通過して軸組B及び床組Cへ侵入するのを物理的に防止するものであって、前記断熱材23の下面23dに、前記ステンレスメッシュ5を介して更に断熱材26が取付けられているものである。
【0027】
このように、前記上下2段の断熱材23,26の間にステンレスメッシュ5等のシート材を介在させておけば、第1実施形態と同様、地盤12中から1段目の断熱材26の内部に侵入した白アリ4の進行は、このシート材により阻止される。そのため、2段目の断熱材23を白アリ4による食害から保護でき、この断熱材23の内部を白アリ4が通過して軸組Bや床組Cへ侵入するのを防止できるという利点がある。
【0028】
ここで、この実施形態のように、シート材が地盤面12aより高い位置にある場合には、2段目の断熱材23が地盤12と接しないので、この2段目の断熱材23をより効果的に保護できるという利点がある。
【0029】
なお、この実施形態においては、前記立ち上がり部2の外側面2aに断熱材23,26を取付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、立ち上がり部2の内側面2bだけ、あるいは外側面2aと内側面2bの両方に取付けるようにしてもよい。
【0030】
また、断熱基礎に使用される断熱材3,23を白アリ4による食害から保護する場合について説明したが、これに加え、前記床下空間13から軸組Bや床組Cへの白アリ4の侵入をも防止するために、例えば、
▲1▼ 前記布基礎1の内方にシート材を張り渡すようにして設ける、
▲2▼ 前記布基礎1の内面と、この布基礎1の内方に設けられた布基礎16等の側面に、シート材を前記床下空間13内へその上縁部が突出するようにしてそれぞれ取付ける、
▲3▼ 少なくとも前記布基礎1と軸組Bの間、及び前記布基礎16等と軸組B又は床組Cの間に前記シート材をそれぞれ介在させると共に、これらシート材の前記床下空間13内に突出する縁部をそれぞれ下方側へ折曲する、
▲4▼ 前記軸組Bに使用される土台27等の構成部材及び床組Cに使用される大引き28等の構成部材の少なくとも下面を前記シート材でそれぞれ被覆する、
▲5▼ 前記軸組B及び床組Cの下面を前記シート材で全面に渡って被覆する、
等の手段をも講じるのが望ましい。
【0031】
更に、前記布基礎1の内方に設けられる基礎としては、図1及び図6に示すような間仕切基礎等の布基礎16に限定されるものではなく、他に例えば束基礎等の独立基礎等が挙げられる。また、このような基礎と共に又は基礎に代えて、束石が設けられていてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、請求項1及び請求項2の発明によれば、前記立ち上がり部の外側面に密着した断熱材の外側面及び/又は立ち上がり部の内側面に密着した断熱材の内側面に、前記シート材を介して更に断熱材が取付けられているので、地盤中から2層目の断熱材の内部に侵入した白アリの進行が前記シート材により阻止される。そのため、1層目の断熱材を白アリによる食害から保護でき、この断熱材の内部を白アリが通過して軸組や床組へ侵入するのを防止できるという利点がある。
【0033】
請求項3の発明によれば、前記断熱材の下面に、前記シート材を介して更に断熱材が取付けられているので、地盤中から1段目の断熱材の内部に侵入した白アリの進行が前記シート材により阻止される。そのため、2段目の断熱材を白アリによる食害から保護でき、この断熱材の内部を白アリが通過して軸組や床組へ侵入するのを防止できるという利点がある。
【0034】
請求項4の発明によれば、前記シート材が地盤面より高い位置にあるので、2段目の断熱材が地盤とは接しない。そのため、請求項2の効果に加え、この2段目の断熱材をより効果的に保護できるという利点がある。
【0035】
請求項5の発明によれば、前記シート材が、前記白アリの頭部横断面の最大寸法より小径の複数のアンカー孔を有しているので、白アリの進行をこのシート材により阻止できると共に、前記2層の断熱材の間にシート材を介在させた状態においてはこのアンカー孔内に接着剤や合成樹脂発泡体等が充填されるので、アンカー効果により前記2層目の断熱材の取付けをより強固にできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る建物の防蟻構造の縦断面図。
【図2】図1のX−X線断面図。
【図3】 (a) は白アリの平面図、(b) は(a) のY−Y線断面図。
【図4】ステンレスメッシュの要部拡大平面図。
【図5】複数のアンカー孔を形成したパンチングメタルの要部拡大平面図。
【図6】第2実施形態に係る建物の防蟻構造の縦断面図。
【符号の説明】
A 建物
B 軸組
C 床組
1 布基礎
2 立ち上がり部
2a 外側面
2b 内側面
3 断熱材
3a 外側面
4 白アリ
4a 頭部
5 ステンレスメッシュ(シート材)
6 断熱材
9 編み目(アンカー孔)
10 アンカー孔
11 パンチングメタル(シート材)
12a 地盤面
23 断熱材
23d 下面
26 断熱材
Claims (5)
- 建物の外周部分に施工された布基礎の立ち上がり部の外側面及び/又は内側面に密着した断熱材の内部を白アリが通過して軸組及び床組へ侵入するのを物理的に防止する建物の防蟻構造であって、
前記立ち上がり部の外側面に密着した断熱材の外側面及び/又は立ち上がり部の内側面に密着した断熱材の内側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されたシート材を介して更に断熱材が取付けられていることを特徴とする建物の防蟻構造。 - 前記布基礎の内面と、この布基礎の内方に設けられた基礎及び/又は束石の側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されたシート材を前記床下空間内へその上縁部が突出するようにしてそれぞれ取付けたことを特徴とする請求項1記載の建物の防蟻構造。
- 建物の外周部分に施工された布基礎の立ち上がり部の外側面及び/又は内側面に密着した断熱材の内部を白アリが通過して軸組及び床組へ侵入するのを物理的に防止する建物の防蟻構造であって、
前記断熱材の下面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されかつ複数のアンカー孔を有するシート材を介して更に断熱材が取付けられていると共に、
前記布基礎の内面と、この布基礎の内方に設けられた基礎及び/又は束石の側面に、前記白アリの分泌物に耐性の耐腐食性材料で構成されかつ複数のアンカー孔を有するシート材を前記床下空間内へその上縁部が突出するようにしてそれぞれ取付けたことを特徴とする建物の防蟻構造。 - 前記シート材が地盤面より高い位置にあることを特徴とする請求項3記載の建物の防蟻構造。
- 前記シート材が、前記白アリの頭部横断面の最大寸法より小径の複数のアンカー孔を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の建物の防蟻構造。
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