JP3713537B2 - カルボシラン系共重合ポリマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性あるいは発光性材料として有用なカルボシラン系共重合ポリマーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカルボシラン類は高い熱安定性・耐久性・光電子特性、易加工性等のすぐれた物性を示すことから、各種材料への応用が期待されているが、ジヒドロシラン類と、ジインおよびトリイン化合物(芳香族または脂肪族)の三種類のモノマーを利用して、主鎖中のトリイン部分での架橋構造の導入により物性向上を図った三元系共重合ポリマーについては、まだ知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、ジヒドロシラン/ジイン/トリインの三種類のモノマーを用いて製造されるカルボシラン系共重合ポリマーを効率的に提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロシラン類が、パラジウム触媒存在下、ジインおよびトリイン化合物と容易に反応し、目的とする三元系共重合ポリマーを与えるという新規な事実を見いだし、それに基づいて本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)パラジウム触媒存在下、下記一般式(I)
R1R2SiH2 (I)
(式中、R1およびR2は、アルキル基、アリール基およびアラルキル基の中から選ばれる互いに同一または相異なる1価の基を示す。)
で表されるジヒドロシラン化合物を、下記一般式(II)
(HC≡C)2X1 (II)
(式中、X1は、芳香族または脂肪族化合物の2価の残基を示す。)
で表されるジイン化合物および下記一般式(III)
(HC≡C)3X2 (III)
(式中、X2は、脂肪族または芳香族化合物の3価の残基を示す。)
で表されるトリイン化合物と反応させて得られる、下記一般式(IV)
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、R1、R2、X1、X2は前記一般式(I)〜(III)と同義である。また、R3〜R9は、−CH=CH−(ビニレン基)または>C=CH2(ビニリデン基)の中から選ばれる互いに同一または相異なる2価の基を示し、R10は1価の有機基または水素原子を示す。p、qおよびrは整数で、pおよびqは1以上、rは0以上、p+q+rは2〜50000である。)
で表される繰り返し単位を有することを特徴とするカルボシラン系共重合ポリマー、
(2)(1)項に記載のカルボシラン系共重合ポリマーを含む耐熱性材料、及び
(3)(1)項に記載のカルボシラン系共重合ポリマーを含む発光性材料
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
前記一般式(I)中のケイ素上の置換基R1およびR2は、アルキル基、アリール基、およびアラルキル基の中から選ばれる互いに同一または相異なる1価の基であり、より詳しくは、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜8のアルキル基、炭素数が好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10のアリール基、炭素数が好ましくは7〜20、より好ましくは7〜10のアラルキル基である。それらの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、それら基の水素原子の一部が反応に関与しないアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の基又は原子で置換されていても差し支えない。したがって、それらの置換基を有する一般式(I)で表わされるジヒドロシラン化合物を例示すれば、ジエチルシラン、メチルプロピルシラン、ジイソブチルシラン、メチルヘキシルシラン、ジオクチルシラン、メチルフェニルシラン、ジフェニルシラン、ナフチルメチルシラン、ジベンジルシラン等が挙げられる。
【0009】
また、前記一般式(II)中のX1は、炭素数が好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12の芳香族化合物の2価の残基であり、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12の脂肪族化合物の2価の残基である。それらの具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、アントリレン基、メチレン基、エチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、エイコサメチレン基等が挙げられ、それら基の水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の基又は原子で置換されていても差し支えない。したがって、それらの置換基等を有する一般式(II)で表されるジイン化合物としては、ジエチニルベンゼン、ジエチニルナフタレン、ジエチニルアントラセン、1,4−ペンタジイン、1,5−ヘキサジイン、1,7−オクタジイン、1,8−ノナジイン、1,9−デカジイン、1,11−ドデカジイン、1,13−テトラデカジイン等が挙げられる。
【0010】
さらに、前記一般式(III)中のX2は、炭素数が好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12の芳香族化合物の3価の残基であり、炭素数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12の脂肪族化合物の3価の残基である。それらの化合物の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、プロパン、ペンタン、オクタン等が挙げられ、それら基の水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の基で置換されていても差し支えない。したがって、それらの置換基等を有する一般式(III)で表されるトリイン化合物としては、トリエチニルベンゼン、トリエチニルナフタレン、トリエチニルビフェニル、4−エチニル−1,6−ヘプタジイン、5−エチニル−1,8−ノナジイン等が挙げられる。
【0011】
これらジイン化合物およびトリイン化合物は、それぞれ、1種類を単独で使用することもできるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0012】
本発明のポリマーの製造において用いられる原料化合物の比は、一般式(I)のジヒドロシラン化合物に対して、一般式(II)のジイン化合物および一般式(III)のトリイン化合物を、それぞれ任意のモル比で使用でき、特に制限されるものではない。一般的には、そのモル比として一般式(I)のジヒドロシラン化合物1モルに対し一般式(II)、(III)の化合物を、それぞれ、通常0.001〜100モル、好ましくは0.01〜80モル、より好ましくは0.03〜50モルの範囲の割合で使用することができる。
【0013】
本発明では、原料化合物の、一般式(I)のジヒドロシラン化合物、一般式(II)のジイン化合物および一般式(III)のトリイン化合物を、パラジウム触媒存在下で反応させることによって、前記一般式(IV)で表される繰り返し単位を有するカルボシラン系共重合ポリマーを得ることができる。本発明の一般式(IV)の繰り返し単位を有するカルボシラン系共重合ポリマーにおいてその重合形態(ブロック重合、ランダム重合、グラフト重合等)は特に制限されるものではない。
前記一般式(IV)のR10は、原料化合物に由来する1価の有機基や水素原子である。例えば1価の有機基としては置換基を有していてもよいビニル基等が挙げられ、また前記一般式(IV)中の各繰り返し単位の一方の結合部位に末端基が結合して形成される基であってもよい。
【0014】
本発明のポリマーの末端部の基は、ヒドロシリル基またはエチニル基等である。p+q+rは、好ましくは2〜40000、より好ましくは3〜30000の整数で、p:q:rの比は、たとえば、(1)使用するジヒドロシラン化合物、ジイン化合物、トリイン化合物のモル比、(2)ジヒドロシラン化合物、ジイン化合物、トリイン化合物、触媒等の構造、(3)温度、溶媒等の反応条件等により、容易に制御できる。さらに、ポリマー中の−CH=CH−(ビニレン基)と>C=CH2(ビニリデン基)の比も、たとえば、(1)ジヒドロシラン化合物、ジイン化合物、トリイン化合物、触媒等の構造、(2)温度、溶媒等の反応条件等により制御できる。
【0015】
本発明において用いられるパラジウム触媒としては、その金属錯体、金属塩、金属や担持金属、また、それらに配位子を添加した系など、従来公知のものを含む各種のものが使用できる。それらの具体例を示すと、ジクロロビス(トリフェニルホスフィンパラジウム)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム、ジヨードビス(ジエチルフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジヨードビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−i−ブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、ジブロモビス(トリプロピルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリ−i−プロピルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリメチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスファイト)パラジウム、ジクロロビス(トリエチルホスファイト)パラジウム、ビス(t−ブチルイソシアニド)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジブロモビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(π−アリル)二パラジウム、ジクロロビス(ピリジン)パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ヨウ化パラジウム、活性炭担持パラジウム等が挙げられる。
これらの中で好ましいものはリン配位子を含む系で、より好ましくはホスフィン配位子を含む系、そしてさらに好ましくはトリアルキルホスフィンを含む系である。また、必要に応じてそれらの系に添加する配位子を例示すれば、トリフェニルホスフィン、t−ブチルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−i−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリ−i−プロピルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリメチルホスファイト、t−ブチルイソシアニド、シクロヘキシルイソシアニド等が挙げられる。これらの触媒系は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
パラジウム触媒は、前記ジヒドロシラン化合物、ジイン化合物、トリイン化合物のうちモル量の少ない原料に対するパラジウム金属原子のモル比として、通常0.000001〜0.5の範囲である。
【0017】
本発明のポリマーを製造するにあたり行われる前記の反応は、−100℃以上、好ましくは−50〜250℃、より好ましくは−20〜150℃の反応温度で行われる。また、この反応は溶媒の有無にかかわらず行うことができるが、溶媒を用いる場合は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒やテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒の他、原料のジヒドロシラン化合物、ジイン化合物、トリイン化合物と反応するものを除いた各種の有機溶媒を用いることができる。反応の停止は、特に制限されるものではなく、通常用いられる停止剤などにより行うことができる。
【0018】
反応混合物からの目的ポリマーの分離精製は、一般に再沈殿またはクロマトグラフィー等の有機化学的に通常用いられる手段により、容易に達せられるが、本反応はほぼ定量的に進行するため、減圧下または常圧下で溶媒を除去する等の方法でも容易に目的ポリマーが得られる。
【0019】
本発明のカルボシラン系共重合ポリマーは高い熱安定性を有し、また紫外光(200〜400nm)等を照射すると、紫〜赤(400〜700nm)の可視光領域等で発光するという性質を有する。
したがって本発明のポリマーから、さまざまな耐熱性材料を得ることができる。その形状としては、膜状、糸状、塊状等各種のものが可能である。たとえば、本発明のポリカルボシラン化合物を溶解した有機溶液を、基板上に、キャスト法、ディッピング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、またはスピンコート法等の方法で塗布し乾燥することにより、容易に耐熱性コーティング材料を得ることができる。
また、同様の手法により、本発明のポリマーから発光性材料を得ることもできる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
実施例1
1,4−ジエチニルベンゼン(II−a)0.364mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.146mmolのトルエン1ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.175ml(0.00525mmol Pd)を添加し、60℃で2時間撹拌した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、ヘキサンで洗浄後、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−a)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は77:23)を、淡黄色粉末状固体として66%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0022】
(IV−a)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=102,000、数平均分子量=9,200
元素分析(%,(C123H112Si7)nとして)
計算値 C 82.68,H 6.32
測定値 C 82.88,H 6.35
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.30−0.78(br m,Si−CH3),2.68−2.80(m,≡CH),4.98−5.10(br m,SiH),5.55−5.83 および 5.90−6.17(それぞれ br m,=CH2),6.44−6.85(br m,Si−CH=),6.85−7.95(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
29Si−NMR(C6D6,δ,ppm) −15.6,−13.4
IR(KBr,cm−1) 2153,1600,1505,1428,1250,1111,987,801,735,698
UV(CHCl3,nm) 288(ε=2.1×104),391(2.8×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,377,398,463(励起光:323nm)
DSC(30〜300℃まで10℃/分で昇温) 300℃までピークなし
【0023】
実施例2
1,4−ジエチニルベンゼン(II−a)0.408mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.102mmolを用いて、60℃で2.5時間撹拌するほかは、実施例1と同様に反応および後処理を行い、カルボシラン系共重合ポリマー(IV−b)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は78:22)を、淡黄色粉末状固体として78%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0024】
(IV−b)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=132,000、数平均分子量=8,100
元素分析(%,(C87H80Si5)nとして)
計算値 C 82.54,H 6.37
測定値 C 83.05,H 6.42
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.30−0.80(br m,Si−CH3),2.68−2.81(m,≡CH),4.98−5.12(br m,SiH),5.55−5.83 および 5.91−6.20(それぞれ br m,=CH2),6.45−6.87(br m,Si−CH=),6.87−7.97(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
29Si−NMR(C6D6,δ,ppm) −15.6,−13.4
IR(KBr,cm−1) 2153,1599,1506,1428,1250,1111,987,801,736,698
UV(CHCl3,nm) 292(ε=2.1×104),387(2.9×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,377,398,462(励起光:325nm)
DSC(30〜300℃まで10℃/分で昇温) 300℃までピークなし
【0025】
実施例3
1,4−ジエチニルベンゼン(II−a)0.459mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.051mmolのトルエン1ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.175ml(0.00525mmol Pd)を添加し、60℃で2.5時間撹拌した後、さらに、同じ濃度の触媒溶液を0.1ml添加し、60℃で2時間加熱した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−c)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は79:21)を、黄色粉末状固体として60%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0026】
(IV−c)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=30,000、数平均分子量=6,000
元素分析(%,(C172H160Si10)nとして)
計算値 C 82.37,H 6.43
測定値 C 82.96,H 6.57
1H−NMR(C6D6,δ) 0.30−0.77(br m,Si−CH3),4.95−5.15(br m,SiH),5.53−5.84 および 5.90−6.20(それぞれ br m,=CH2),6.47−6.85(br m,Si−CH=),6.85−7.97(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
IR(KBr,cm−1) 2152,1598,1505,1428,1250,1110,986,799,735,698
UV(CHCl3,nm) 296(ε=1.9×104),391(2.7×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,398,462,482(励起光:325nm)
【0027】
実施例4
1,4−ジエチニルベンゼン(II−a)0.485mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.026mmolのトルエン0.9ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.2ml(0.006mmol Pd)を添加し、60℃で2時間撹拌した後、さらに、同じ濃度の触媒溶液を0.125ml添加し、60℃で2時間加熱した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−d)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は82:18を、黄色粉末状固体として63%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0028】
(IV−d)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=14,000、数平均分子量=5,500
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.30−0.75(br m,Si−CH3),4.98−5.13(br m,SiH),5.56−5.83 および 5.93−6.22(それぞれ br m,=CH2),6.48−6.83(br m,Si−CH=),6.90−7.97(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
UV(CHCl3,nm) 300(ε=2.5×104),394(2.8×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,398,461,482(励起光:329nm)
【0029】
実施例5
1,3−ジエチニルベンゼン(II−b)0.364mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.146mmolのトルエン1ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.2ml(0.006mmol Pd)を添加し、70℃で2時間撹拌した後、さらに、同じ濃度の触媒溶液を0.1ml添加し、70℃で1時間加熱した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−e)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は76:24)を、淡黄色粉末状固体として58%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0030】
(IV−e)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=44,000、数平均分子量=6,100
元素分析(%,(C123H112Si7)nとして)
計算値 C 82.68,H 6.32
測定値 C 82.76,H 6.31
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.23−0.77(br m,Si−CH3),2.60−2.77(m,≡CH),4.92−5.12(br m,SiH),5.48−5.83 および 5.85−6.18(それぞれ br m,=CH2),6.40−6.85(br m,Si−CH=),6.85−7.97(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
IR(KBr,cm−1) 2152,1605,1572,1428,1250,1192,1110,988,826,794,735,698,474
UV(CHCl3,nm) 259(ε=2.5×104),360(2.1×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,371,427,446(励起光:282nm)
DSC(30〜300℃まで10℃/分で昇温) 300℃までピークなし
【0031】
実施例6
1,3−ジエチニルベンゼン(II−b)0.408mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.102mmolを用いるほかは、実施例5と同様に反応および後処理を行い、カルボシラン系共重合ポリマー(IV−f)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は77:23)を、淡黄色粉末状固体として72%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0032】
(IV−f)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=109,000、数平均分子量=7,800
元素分析(%,(C87H80Si5)nとして)
計算値 C 82.54,H 6.37
測定値 C 83.63,H 6.38
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.24−0.76(br m,Si−CH3),2.63−2.73(m,≡CH),4.95−5.12(br m,SiH),5.50−5.83 および 5.86−6.18(それぞれ br m,=CH2),6.43−6.87(br m,Si−CH=),6.87−8.02(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
29Si−NMR(C6D6,δ,ppm) −15.6,−13.6
IR(KBr,cm−1) 2152,1606,1572,1428,1250,1194,1110,988,826,795,735,698,475
UV(CHCl3,nm) 260(ε=2.8×104),364(1.9×103)
蛍光(CHCl3,nm) 358,371,425,446(励起光:284nm)
DSC(30〜300℃まで10℃/分で昇温) 300℃までピークなし
【0033】
実施例7
1,3−ジエチニルベンゼン(II−b)0.459mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.051mmolのトルエン1ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.175ml(0.00525mmol Pd)を添加し、70℃で3時間撹拌した後、さらに、同じ濃度の触媒溶液を0.1ml添加し、70℃で2時間加熱した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−g)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は80:20)を、淡黄色粉末状固体として59%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0034】
(IV−g)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=59,000、数平均分子量=6,100
元素分析(%,(C172H160Si10)nとして)
計算値 C 82.37,H 6.43
測定値 C 82.71,H 6.60
1H−NMR(C6D6,δ) 0.27−0.77(br m,Si−CH3),4.96−5.11(br m,SiH),5.55−5.83 および 5.90−6.17(それぞれ br m,=CH2),6.48−6.85(br m,Si−CH=),6.85−7.95(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
IR(KBr,cm−1) 2152,1605,1571,1428,1250,1193,1110,988,829,791,735,698,475
UV(CHCl3,nm) 260(ε=3.0×104),354(1.5×103)
蛍光(CHCl3,nm) 356,369,420,441(励起光:278nm)
【0035】
実施例8
1,3−ジエチニルベンゼン(II−b)0.485mmolおよび1,3,5−トリエチニルベンゼン(III−a)0.026mmolのトルエン0.9ml溶液に、窒素下、メチルフェニルシラン(I−a)0.51mmolを添加した。この溶液に、パラジウム−トリシクロヘキシルホスフィン触媒のベンゼン溶液(トリス(ジベンジリデンアセトン)ニパラジウムとトリシクロヘキシルホスフィン(4当量)の混合物のベンゼン溶液、0.03M Pd)0.2ml(0.006mmol Pd)を添加し、70℃で2時間撹拌した後、さらに、同じ濃度の触媒溶液を0.075ml添加し、70℃で1時間加熱した。反応液を撹拌2−プロパノール40mlに滴下し、沈殿した固体を、真空中、60℃で1時間乾燥させることによりカルボシラン系共重合ポリマー(IV−h)(−CH=CH−と>C=CH2の存在比は79:21を、淡黄色粉末状固体として60%収率(ポリマー重量と原料の合計重量との比から計算)で得た。
【0036】
(IV−h)の物性、スペクトル測定等の分析値は次の通りである。
GPC(トルエン、ポリスチレン基準) 重量平均分子量=21,000、数平均分子量=5,200
1H−NMR(C6D6,δ,ppm) 0.27−0.74(br m,Si−CH3),4.97−5.11(br m,SiH),5.53−5.83 および 5.90−6.16(それぞれ br m,=CH2),6.47−6.85(br m,Si−CH=),6.85−7.95(br m,ベンゼン環H および Si−C=CH)
UV(CHCl3,nm) 260(ε=3.0×104),351(1.5×103)
蛍光(CHCl3,nm) 356,369,420,441(励起光:278nm)
上記実施例1〜8の分析値の結果から、前記一般式(IV)で表されるカルボシラン系共重合ポリマーが得られたことが確認された。なお、実施例3、4、7、8ではrの割合は全体(p+q+r)の10%以下であることを確認した。
【0037】
実施例9
実施例1で得られたポリマー(IV−a)の4w/v%トルエン溶液をガラス基板上に塗布して、窒素気流下で乾燥後、真空中、80℃で2時間加熱乾燥した結果、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは以下のような高い熱安定性を示した。
熱重量分析装置による試験(以下、TGAという)(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 469,残存率(980℃,%) 71
本発明のカルボシラン系共重合ポリマーを用いれば耐熱性材料を製造できることがわかる。
【0038】
実施例10
実施例2で得られたポリマー(IV−b)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 454,残存率(980℃,%) 66
【0039】
実施例11
実施例3で得られたポリマー(IV−c)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 457,残存率(980℃,%) 67
【0040】
実施例12
実施例4で得られたポリマー(IV−d)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 444,残存率(980℃,%) 62
【0041】
実施例13
実施例5で得られたポリマー(IV−e)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 456,残存率(980℃,%) 68
【0042】
実施例14
実施例6で得られたポリマー(IV−f)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 449,残存率(980℃,%) 66
【0043】
実施例15
実施例7で得られたポリマー(IV−g)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 440,残存率(980℃,%) 63
【0044】
実施例16
実施例8で得られたポリマー(IV−h)を用いて、実施例9と同様の操作により、透明なコーティング膜が得られた。この膜のポリマーは高い熱安定性を示した。
TGA(窒素下)
Td5(5%重量減温度,℃) 428,残存率(980℃,%) 58
【0045】
実施例17
実施例1で得られたポリマー(IV−a)の2w/v%トルエン溶液を用いて、石英基板上にスピンコート法で、真空中80℃で1時間乾燥して薄膜を作製し、試料を得た。この試料は、紫外光照射により青緑色に光ることが確認された。本発明のカルボシラン系共重合ポリマーを用いれば発光性材料を製造できることがわかる。
【0046】
実施例18
実施例5で得られたポリマー(IV−e)を用いて、実施例17と同様の操作により、紫外光照射で青色に光る発光性材料を得た。
【0047】
【発明の効果】
本発明のカルボシラン系共重合ポリマーは、ジヒドロシラン化合物、ジイン化合物およびトリイン化合物といった比較的入手容易な原料を用いて効率よく安全に製造でき、その精製も容易である。また本発明のカルボシラン系共重合ポリマーは適当な溶媒に溶解してコーティングすることができる。また、耐熱性、発光性といった特性を有するため、耐熱性材料、発光性材料をはじめとして各種材料の製造に有用である。したがって、本発明の工業的意義は多大である。
Claims (3)
- パラジウム触媒存在下、下記一般式(I)
R1R2SiH2 (I)
(式中、R1およびR2は、アルキル基、アリール基およびアラルキル基の中から選ばれる互いに同一または相異なる1価の基を示す。)
で表されるジヒドロシラン化合物を、下記一般式(II)
(HC≡C)2X1 (II)
(式中、X1は、芳香族または脂肪族化合物の2価の残基を示す。)
で表されるジイン化合物および下記一般式(III)
(HC≡C)3X2 (III)
(式中、X2は、脂肪族または芳香族化合物の3価の残基を示す。)
で表されるトリイン化合物と反応させて得られる、下記一般式(IV)
で表される繰り返し単位を有することを特徴とするカルボシラン系共重合ポリマー。 - 請求項1に記載のカルボシラン系共重合ポリマーを含む耐熱性材料。
- 請求項1に記載のカルボシラン系共重合ポリマーを含む発光性材料。
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