JP3713208B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

液晶表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3713208B2
JP3713208B2 JP2001038246A JP2001038246A JP3713208B2 JP 3713208 B2 JP3713208 B2 JP 3713208B2 JP 2001038246 A JP2001038246 A JP 2001038246A JP 2001038246 A JP2001038246 A JP 2001038246A JP 3713208 B2 JP3713208 B2 JP 3713208B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid crystal
voltage
gradation voltage
crystal panel
display device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001038246A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001343956A (ja
Inventor
貴子 足立
誠 塩見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2001038246A priority Critical patent/JP3713208B2/ja
Priority to TW090106756A priority patent/TW513598B/zh
Priority to US09/820,021 priority patent/US20010038369A1/en
Priority to KR1020010016638A priority patent/KR100641249B1/ko
Publication of JP2001343956A publication Critical patent/JP2001343956A/ja
Priority to US10/622,870 priority patent/US7084846B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP3713208B2 publication Critical patent/JP3713208B2/ja
Priority to KR1020060055375A priority patent/KR100676479B1/ko
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、動画表示に好適に用いられる液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、例えばパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、アミューズメント機器、テレビ装置などに用いられている。さらに、液晶表示装置の応答特性を改善し、高画質の動画表示を得るための検討がなされている。
【0003】
特開平4−288589号公報は、中間調表示での応答速度を高速化して残像を低減するため、高域成分を予め強調した入力画像信号を液晶表示部に供給することにより、応答の立ち上がりおよび立ち下がりを高速化した液晶表示装置を開示している。なお、液晶表示装置(液晶パネル)における「応答速度」は、液晶層の配向状態が印加された電圧に対応した配向状態に達するのに要する時間(応答時間)の逆数に相当する。図12を参照しながら、この液晶表示装置の駆動回路の構成を説明する。
【0004】
上記の液晶表示装置の駆動回路は、入力画像信号S(t)の少なくとも一枚のフィールド画像を保持する画像用記憶回路61と、この記憶回路61に保持された画像信号と入力画像信号S(t)とから各絵素の時間軸方向のレベル変動を検出して時間軸方向に高域強調フィルタをかける時間軸フィルタ回路63とを備えている。入力画像信号S(t)は、ビデオ信号をR、G、B信号に分解した後の信号であるが、R、G、B信号に対して同じ処理になるので、ここではそれらのうちの1チャンネルのみ示している。
【0005】
入力画像信号S(t)は、少なくとも1フィールド分の画像信号を記憶する画像用記憶回路61に保持される。差分器62は、入力画像信号S(t)と画像用記憶回路61とから、対応する各絵素信号の差をとるもので、1フィールドの間の信号レベルの変化を検出するレベル変化検出回路となっている。この差分器62から得られる時間軸方向の差信号Sd(t)は、入力画像信号S(t)と共に時間軸フィルタ回路63に入力される。
【0006】
時間軸フィルタ回路63は、差信号Sd(t)に応答速度に応じた重み係数αをかける重み付け回路66と、重み付けられた差信号と入力画像信号S(t)とを加算する加算器67とから構成されている。時間軸フィルタ回路63は、レベル変動検出回路の出力と入力画像信号の各絵素の入力レベルとによりフィルタ特性が変化させられる適応型フィルタ回路である。この時間軸フィルタ回路63によって入力画像信号S(t)は時間軸方向の高域が強調される。
【0007】
こうして得られた高域強調信号は、極性反転回路64によって交流信号に変換され、液晶表示部65に供給される。液晶表示部65は、複数本のデータ信号配線とこれと交差する複数本の走査信号配線の各交差部に表示電極(絵素電極ともいう。)を持つ、アクティブマトリクス方式の液晶表示部である。
【0008】
図13は、この駆動回路により応答特性が改善される様子を示す信号波形図である。説明を分かり易くするため入力画像信号S(t)が1フィールド周期で変化するものとし、図では2フィールドで信号レベルが急激に変化している場合を示している。この場合、時間軸方向における入力画像信号S(t)の変化、すなわち差信号Sd(t)は図に示すように、入力画像信号S(t)が正に変化するときに1フィールド間に亘り正となり、負に変化するときに1フィールド間に亘り負となる。
【0009】
基本的にはこの差信号Sd(t)を入力画像信号S(t)に加えることにより、高域強調ができる。実際には、入力画像信号S(t)の変化の程度と透過率の変化の程度との関係は、液晶層の応答速度に依存するので、オーバーシュートが生じない範囲で補正するように重み係数αを決める。その結果、図13に示したような高域強調された高域補正信号Sc(t)が液晶表示部に入力されることにより、光学応答特性I(t)は、破線で示す従来のものに対して、実線で示すように改善される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されている駆動回路を現行の液晶表示装置に適用すると、立ち上がり(液晶層への印加電圧の上昇に伴う表示状態に変化)の応答特性を改善できるものの、立ち下がり(液晶層への印加電圧の低下に伴う表示状態に変化)の応答特性を改善する効果が比較的少ない。液晶表示装置における立ち下がりは、ある第1電圧が印加されたときの配向状態から、第1電圧よりも低い第2電圧が印加されたときの配向状態へ、液晶分子の配向状態が復元しようとする緩和現象であり、第2電圧に対応する配向状態に到達するのに要する時間(立ち下がり応答時間)は、液晶分子間に働く復元力に主に依存する。従って、液晶層への印加電圧が第1電圧から第2電圧へ低下する場合の液晶層の立ち下がりの応答速度(または応答時間)は、一般的に、第2電圧の大きさ(ある第1電圧との差)にあまり依存しないので、入力画像信号S(t)を強調しても立ち下がりの応答を高速化する効果が少ないという問題があった。
【0011】
特に、上記特開平4−288589号公報の図20に記載されているような電圧−透過率(V−T)特性(本願の図5Aのリタデーションが260nmのV−T曲線に相当)を有する液晶表示装置において、最低の階調電圧(階調電圧の最低値)を透過率が最大となる電圧に設定すると、オーバーシュート電圧(最低の階調電圧よりも低い電圧)を印加しても、立ち下がりの応答を速くすることはできない。なぜならば、最高透過率を示す電圧の領域(V−T曲線の平坦な領域)においては液晶分子の配向状態は実質的に等しいので、この領域内のどの電圧を印加しても液晶分子間に働く復元力は実質的に等しいからである。
【0012】
本願明細書における、「立ち上がり」および「立ち下がり」は、上述したように、それぞれ、液晶層に対する印加電圧の「上昇」および「低下」に伴う表示状態(または液晶層の配向状態)の変化に対応づけられる。「立ち上がり」は、印加電圧の上昇に伴う変化であり、ノーマリホワイトモード(以下「NWモード」と称する。)においては「輝度の低下」に対応し、ノーマリブラックモード(以下「NBモード」と称する。)においては「輝度の上昇」に対応する。「立ち下がり」は、印加電圧の低下に伴う変化であり、NWモードにおいては「輝度の上昇」に対応し、NBモードにおいては「輝度の低下」に対応する。すなわち、「立ち下がり」は液晶層(液晶分子)の配向の緩和現象に関係する。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、立ち下がり応答特性を改善した液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶表示装置は、液晶層と前記液晶層に電圧を印加する電極とを有する液晶パネルと、前記液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路とを備え、前記液晶パネルは、電圧−透過率特性において、最低の階調電圧以下の電圧において透過率の極値を示し、前記駆動回路は、1垂直期間前の入力画像信号と現垂直期間の入力画像信号の組合せに応じて、予め決められた、現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を前記液晶パネルに供給し、そのことによって上記目的が達成される。
【0015】
前記液晶パネルの電圧無印加状態と最高の階調電圧印加状態とのリタデーションの差は、300nm以上であることが好ましい。
【0016】
前記液晶パネルは、透過型液晶パネルであって、前記極値は、透過率の最大値を与える構成とすることが好ましい。
【0017】
前記入力画像信号の1垂直期間を1フレームとし、前記入力画像信号の1フレームに対して、前記駆動電圧の少なくとも2フィールドが対応し、前記駆動回路は、前記駆動電圧の少なくとも最初のフィールドにおいて、現フィールドの入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を前記液晶パネルに供給する構成としてもよい。
【0018】
前記液晶層はホモジニアス配向型液晶層であることが好ましい。
【0019】
前記液晶パネルは、位相差補償素子をさらに備え、前記位相差補償素子は、屈折率楕円体の3つの主屈折率na、nb、ncがna=nb>ncの関係を有し、前記液晶層のリタデーションの少なくとも一部を相殺するように配置されている構成としてもよい。
【0020】
以下、本発明の作用を説明する。
【0021】
本発明の液晶表示装置が備える液晶パネルは、電圧−透過率特性において、最低の階調電圧以下の電圧において透過率の極値を示し、この液晶パネルにオーバーシュートされた階調電圧が印加される。なお、一般に液晶表示装置は、交流駆動を行っているが、電圧−透過率特性では、対向電極の電位を基準として、液晶層に印加される電圧の絶対値と透過率との関係を表している。
【0022】
本願明細書において、液晶表示装置において表示を行うために液晶層に印加される電圧を階調電圧Vgと呼び、例えば、0階調(黒)〜63階調(白)の全64階調表示を行う場合、0階調の表示を行うための階調電圧VgをV0、63階調の表示を行うための階調電圧VgをV63で示す。実施形態で例示するNWモードの液晶表示装置の場合、V0が最高の階調電圧であり、V63が最低の階調電圧となる。これに対し、NBモードの液晶表示装置においては、逆に、V0が最低の階調電圧であり、V63が最高の階調電圧となる。
【0023】
以下では、液晶表示装置で表示すべき画像情報を与える信号を入力画像信号Sと呼び、それぞれの入力画像信号Sに応じて絵素に印加される電圧を階調電圧Vgと呼ぶ。64階調の入力画像信号(S0〜S63)は、それぞれ階調電圧(V0〜V63)に一対一で対応する。階調電圧Vgは、それぞれの階調電圧Vgが印加された液晶層が定常状態に到達したときに、それぞれの入力画像信号Sに対応する透過率(表示状態)となるように設定される。このときの透過率を定常状態透過率と称する。勿論、階調電圧V0〜V63の値は液晶表示装置によって異なり得る。
【0024】
液晶表示装置は、例えばインターレース駆動され、1枚の画像に対応する1フレームを2つのフィールドに分割し、各フィールド毎に入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが表示部に印加される。勿論、1フレームが3以上のフィールドに分割されることもあり得るし、ノンインターレース駆動されてもよい。ノンインターレース駆動においては、各フレーム毎に入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが表示部に印加される。インターレス駆動における1フィールドまたはノンインターレース駆動における1フレームをここでは1垂直期間と称する。
【0025】
オーバーシュートされた電圧とは、前垂直期間(直前の垂直期間)と現垂直期間との入力画像信号Sを比較し、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりも低い場合には、現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりもさらに低い電圧であり、逆に、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧が前垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧Vgよりも高い場合には、現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりもさらに高い電圧を指す。
【0026】
オーバーシュート電圧を検出するための入力画像信号Sの比較は、全ての絵素のそれぞれに対する前垂直期間の入力画像信号Sと現垂直期間の入力画像信号Sとの間で行われる。1フレームの画像情報が複数のフィールドに分割されるインターレース駆動の場合でも、1フレーム前のその絵素に対する入力画像信号Sや上下のラインの入力画像信号Sが補完信号として使用され、1垂直期間中に全ての絵素に相当する信号が与えられる。そして、前フィールドと現フィールドのこれらの入力画像信号Sが比較される。
【0027】
オーバーシュートされた階調電圧Vgと所定の階調電圧(現垂直期間の入力画像信号Sに対応する階調電圧)Vgとの差をオーバーシュート量ということもある。また、オーバーシュートされた階調電圧Vgをオーバーシュート電圧と呼ぶこともある。オーバーシュート電圧は、所定の階調電圧Vgに対して所定のオーバーシュート量を有する他の階調電圧Vgであってもよいし、オーバーシュート駆動のために予め準備されたオーバーシュート駆動専用電圧であってもよい。少なくとも、最高の階調電圧(階調電圧のなかで最も電圧値の高い階調電圧)および最低の階調電圧(階調電圧のなかで最も電圧値の低い階調電圧)をオーバーシュートする電圧として、高電圧側オーバーシュート駆動専用電圧および低電圧側オーバーシュート駆動専用電圧がそれぞれ用意される。
【0028】
本発明の液晶表示装置の液晶パネルは、そのV−T特性において、最低の階調電圧以下の電圧で透過率の極値を有する。
【0029】
最低の階調電圧で透過率の極値をとる場合、最低の階調電圧がオーバーシュートされた電圧(低電圧側オーバーシュート駆動専用電圧)が印加されると、最低の階調電圧に対応する透過率(NWモードの場合は表示に利用される透過率の内の最大値であり透過率の極値である。NBモードの場合は表示に利用される透過率の内の最小値であり透過率の極値である。)を経てから、オーバーシュート電圧に対応する透過率(NWモードの場合にはより小さい透過率であり、NBモードの場合はより大きい透過率である。)に到達する。
【0030】
最低の階調電圧が透過率の極値をとる電圧よりも高く設定されている場合、最低の階調電圧がオーバーシュートされた電圧(低電圧側オーバーシュート駆動専用電圧)を透過率の極値をとる電圧よりも低く設定し、これを印加すると、最低の階調電圧に対応する透過率(NWモードの場合は表示に利用される透過率の内の最大値であり、NBモードの場合は表示に利用される透過率の内の最小値である。)を経てから、透過率の極値を経て、オーバーシュート電圧に対応する透過率(NWモードの場合にはより小さい透過率であり、NBモードの場合はより大きい透過率である。)に到達する。
【0031】
最低の階調電圧が透過率の極値をとる電圧よりも高く設定されている場合、最低の階調電圧がオーバーシュートされた電圧(低電圧側オーバーシュート駆動専用電圧)を透過率の極値をとる電圧以上に設定し、これを印加すると、最低の階調電圧に対応する透過率(NWモードの場合は表示に利用される透過率の内の最大値であり、NBモードの場合は表示に利用される透過率の内の最小値である。)を経てから、オーバーシュート電圧に対応する透過率(NWモードの場合にはより大きい透過率であり、NBモードの場合はより小さい透過率である。)に到達する。
【0032】
立ち下がりに要する(定常状態までの)応答時間は、最低の階調電圧を印加した場合も、オーバーシュート電圧を印加した場合もほとんど同じなので、オバーシュート電圧を印加することによって、最低の階調電圧に対応する透過率に到達する時間を短くすることができる。すなわち、最低の階調電圧以下の電圧で透過率の極値を示す液晶パネルにおいては、最低の階調電圧を印加したときの液晶層の液晶分子は、電圧無印加時の液晶層の液晶分子と実質的に異なる配向状態をとっており、さらに緩和できる状態にあるので、最低の階調電圧以下の電圧範囲に亘って一定の透過率を示す(すなわち極値を有しない)V−T特性を有する液晶パネルをオーバーシュート駆動した場合よりも、透過率の時間変化が急峻になる(図5Aおよび5B参照)。
【0033】
従って、本発明によると液晶表示装置の立ち下がりの応答特性を従来のオーバーシュート駆動よりも改善することができる。なお、低電圧側で透過率の極値を呈しない液晶パネルを用いた場合においても、最低の階調電圧を透過率が最高(NWモード)または最低(NBモード)になる電圧よりも高めに設定することによって、立ち下がり応答特性を改善することができるが、最低の階調電圧を高めに設定している分だけ表示に利用できる透過率の範囲が狭くなるという問題を生じる。それに対し、本発明の液晶表示装置においては、透過率が極値(極大(NWモード)または極小(NBモード))を示す電圧以上に最低の階調電圧が設定されているので、透過率のロスを抑制または防止した状態で、立ち下がりの応答速度を改善することができる。
【0034】
特に、最低の階調電圧を透過率が極値を示す電圧に設定した場合には、透過率のロスはない。なお、応答速度の改善効果を高めるためには、最低の階調電圧を透過率が極値を示す電圧よりも高く設定することが好ましい。たとえこのように最低の階調電圧を設定しても、透過率のロスは低電圧側で極値を呈しない液晶パネルを用いた場合よりも少なくできる。なぜならば、本発明の液晶表示装置においては、透過率が極値をとる電圧が印加された液晶層の配向状態は電圧無印加時の液晶層の配向状態とは実質的に異なっており、さらに緩和できる状態にあるので、透過率の極値から電圧無印加状態の透過率に至る過程の緩和現象を立ち下がりの応答に利用することができるからである。
【0035】
勿論、液晶層の立ち上がりの応答速度は、印加電圧値が高いほど速くなるので、オーバーシュート電圧を印加することによって、立ち上がりの応答特性も改善される。
【0036】
なお、V−T特性において、最低の階調電圧以下の電圧で透過率の極値を示す液晶パネルは、例えば、そのリタデーションを調整することによって実現される。
【0037】
本願明細書において、「液晶パネルのリタデーション」とは、NWモードの場合には、電圧無印加時の液晶層のリタデーションと位相差補償素子のリタデーションとの和を意味し、液晶パネルの表示面(液晶層の層面に平行)に垂直に入射する光に対するリタデーションを指す。勿論、位相差補償素子を設けていない構成においては、液晶パネルのリタデーションは、電圧無印加時の液晶層のリタデーションである。また、NBモードにおける「液晶パネルのリタデーション」とは、表示に利用し得る最大の電圧を印加したときの液晶層のリタデーションと位相差補償素子のリタデーションとの和を意味し、液晶パネルの表示面に垂直に入射する光に対するリタデーションを指す。位相差補償素子を設けていない構成においては、液晶パネルのリタデーションは、表示に利用し得る最大の電圧を印加したときの液晶層のリタデーションである。なお、液晶層のリタデーションは、液晶材料の最大の屈折率と最小の屈折率との差(Δn)に液晶層の厚さ(d)を乗じた値である。
【0038】
一般に、透過型液晶パネルのリタデーションは、階調電圧の印加によって、リタデーションが約260nm変化するように設定されている。すなわち、最低階調表示状態と最高階調表示状態における液晶パネルのリタデーションの差が約260nmとなるように設定されている。これは、視感度が最も高い緑の光(波長約550nm)に対するコントラスト比を高くし、且つ、他の色の光に対する表示特性(視野角依存性)を考慮して決められる。液晶表示装置の仕様に応じて、約250nm〜約270nmの範囲内に設定される。以下の説明においては、「約260nm」を設定リタデーション値を代表する値として用いる。
【0039】
液晶層のリタデーションは、液晶分子が電圧に応答して配向状態を変化するので、電圧によって変化する。しかしながら、液晶層には電圧印加(通常の表示で使われる電圧範囲)では配向状態が変化しない、基板表面にアンカリングされた液晶層(以下、「アンカリング層」と称する。)が存在する。このアンカリング層のリタデーションは約40nm〜約80nm程度である。従って、一般的に、液晶層全体のリタデーションは、上記の設定値(約260nm)にアンカリング層のリタデーションを加えた値(約300nm〜約340nm)となる。
【0040】
また、アンカリング層によるリタデーションを補償するための位相差補償素子(例えば、位相差板または位相差フィルム)が設けられることがある。すなわち、液晶層と位相差補償素子とのリタデーションの合計が、上記の設定値(約260nm)となるような位相差補償素子が設けられる。
【0041】
本発明の液晶表示装置の液晶パネルの電圧無印加状態と最高の階調電圧印加状態とのリタデーションの差(単純に「液晶パネルのリタデーション差」ということもある。)は、300nm以上であることが好ましい。液晶パネルのリタデーションが、最高の階調電圧までの電圧範囲内で、300nm以上変化するように設定することによって、表示に利用されるリタデーションの範囲として約260nmを確保し、且つ、最低の階調電圧以下の電圧で透過率の極値を与えるV−T特性を実現することができる。勿論、応答速度を重視する構成においては、表示に利用するリタデーションの範囲を狭くしてもよい。
【0042】
本発明による立ち下がりの応答特性の改善効果は、NWモードの液晶パネルにおいて顕著に観察されるので、本発明をNWモードの液晶表示装置に適用することが好ましい。水平配向型液晶層を備え、位相差補償素子が用いられたNBモードの液晶パネルに本発明を適用した場合には、透過率の極値(極小値)は黒表示側に現れることになり、観察され難い。また、黒表示側の極値付近では階調電圧が少し違うだけでリタデーション値が大きく異なるので、良好な黒を表示するように位相差を補償することが難しい。垂直配向型液晶層を備えたNBモードの液晶パネルに本発明を適用した場合には、黒表示側で透過率の極値は観察されないので、応答時間を短縮する効果がない。
【0043】
また、平行配向(ホモジニアス配向)型液晶層は、ツイスト配向型液晶層や垂直配向型液晶層よりも応答速度が速い(例えば、応答時間が約17msec)ので、本発明を適用することによって、さらに応答速度を改善することができ、動画表示特性が特に優れた液晶表示装置(例えば、応答時間が約10msec以下)を実現することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明による実施形態の液晶表示装置を説明する。以下では、NWモードの液晶表示装置を例に本発明の実施形態を説明するが、これに限定されない。
【0045】
(リタデーション)
本実施形態の液晶表示装置が備えるNWモードの液晶パネルは、V−T特性において、最低の階調電圧以下の電圧において透過率の極大値(且つ最大値)を示すように、リタデーションが調整されている。典型的には、液晶パネルは、電圧印加によってリタデーションが300nm以上変化するように設定されている。
【0046】
図1、図2Aおよび図2Bを参照しながらこの理由を説明する。
【0047】
正の屈折異方性(Δn=n//−n⊥>0)を有する液晶材料を含む平行配向型液晶層を備えた液晶パネルのV−T曲線を図1に示す。図1は、リタデーションが異なる液晶パネルのV−T曲線を合わせて示している。図2Aは、リタデーションが260nmの液晶パネルの電圧−リタデーション曲線を示し、図2Bは、リタデーションが300nmの液晶パネルの電圧−リタデーション曲線を示す。印加電圧によって変化する透過率またはリタデーションを示す曲線を表すグラフの縦軸は、それぞれ、透過率またはリタデーションの最低値を零とする相対値(任意単位)で示す。従って、これらのグラフに示される透過率またはリタデーションは、印加電圧の変化に伴って変化する分を示していることになる。
【0048】
図1に示した種々のリタデーションを有する液晶パネルは、Δnが異なる液晶材料や液晶層の厚さdを変えることによって得ることができる。また、位相差補償素子を用いることによって、リタデーションの値を調整することもできる。
【0049】
まず、アンカリング層を除いた液晶層について、液晶分子の配向状態とリタデーションとの関係について説明する。平行配向型液晶層に電圧を印加すると、液晶分子が液晶層の層面に対して立ち上がる(傾斜する)と、液晶層に垂直に入射する光に対する最大屈折率はn//よりも小さくなる(最小屈折率はn⊥のまま変化しない)ので、図2Aおよび図2Bに示したように、電圧印加時のリタデーションは小さくなる。さらに、印加電圧を大きくする(飽和電圧以上の電圧を印加する)と、液晶分子は液晶層の層面に対して垂直に配向するので、液晶層の最大屈折率および最小屈折率はともにn⊥となり、リタデーションは零になる。但し、実際の液晶層にはアンカリング層が存在するのでリタデーションは零にならない。図2Aおよび図2Bは、アンカリング層によるリタデーションを補償するための位相差補償素子を設けた液晶パネルの電圧−リタデーション曲線である。ここでは、5V印加時の液晶層のリタデーションが相殺されている。
【0050】
一般的に、液晶パネルのリタデーションが約260nm(250〜270nm)のときに、液晶パネルの透過率が最も高くなるように設定される。従って、電圧無印加時のリタデーションが約260nm以下(図1中の220nmおよび260nmの曲線参照)の場合、電圧無印加状態から電圧を上昇させると、透過率は徐々に単調に低下する。それに対し、電圧無印加時のリタデーションが約260nmを越える(図1中の300nm、320nm、340nm、380nmの曲線参照)場合、電圧の上昇により、透過率は、一旦(リタデーションが約260nmに到達するまで)徐々に上昇し、その後低下する。
【0051】
液晶パネルのリタデーション(電圧で変化する幅)を300nm以上としているので、液晶層に印加する電圧が0Vよりも高い電圧において、透過率が最高値(極大値)を示し、この電圧以上の範囲に階調電圧Vgの最低電圧(例えば、V63)が設定され、且つ、オーバーシュートされた電圧としてこの電圧よりも低い電圧を印加することで、低電圧側のオーバーシュートを有効に行うことができる。
【0052】
(オーバーシュート駆動専用電圧と階調電圧)
NWモードの場合、本発明による液晶表示装置の階調電圧Vgの最低値は、定常的な透過率が最も高くなる電圧以上に設定される。また、階調電圧Vgの最高値は、定常的な透過率が最も低くなる電圧以下に設定される。なお、NBモードの場合、階調電圧Vgの最低値は、定常的な透過率が最も低くなる電圧以上に設定され、階調電圧Vgの最高値は定常的な透過率が最も高くなる電圧以下に設定される。
【0053】
本発明の液晶表示装置は、例えば、300nm以上のリタデーション差を有しているので、図1に示したように、NWモードの表示装置のV−T曲線における透過率が最大となる電圧は極値を与える電圧なので、階調電圧Vgがこの極値を与える電圧よりも低い電圧を含む範囲に設定されると、透過率の逆転が生じ、その結果、階調の反転が観察されることになる。この階調反転を防止するために、最低の階調電圧は極値を与える電圧以上の電圧に設定される。また、当然ではあるが、階調電圧Vgの最高値は駆動回路(ドライバ、典型的にはドライバIC)の耐圧を越えないように設定される。
【0054】
本発明の液晶表示装置においては、階調電圧Vg(V0〜V63)のほかに、オーバーシュート駆動専用電圧Vosが予め設定される。オーバーシュート駆動専用電圧Vosは、階調電圧Vgよりも低電圧側のVos(L)と、高電圧側のVos(H)を含み、それぞれ、複数の異なる電圧値を用意してもよい。高電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(H)(複数の場合にはその最高値)は、駆動回路の耐圧を越えないように設定される。さらに、オーバーシュート駆動専用電圧Vosと階調電圧Vg(V0〜63)をあわせて駆動回路のビット数を越えないように設定される。
【0055】
次に、図3を参照しながら、オーバーシュート駆動専用電圧Vosと階調電圧Vgの設定について具体的に説明する。図3にV−T曲線とオーバーシュート駆動専用電圧Vos、階調電圧Vgの関係を示す。階調電圧Vg(V0(黒)〜V63)は透過率が最高値を示す電圧以上から透過率が最低値を示す電圧以下の範囲で設定される。低電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(L)(例えば、32階調のVos(L)1からVos(L)32)は、0V以上でV63(階調電圧Vgの最低値)未満の範囲で設定される。高電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(H)(例えば、32階調のVos(H)1からVos(H)32)は、V0(階調電圧Vgの最高値)より高い電圧から駆動回路の耐圧を超えない範囲で設定される。なお、これら階調電圧Vgの階調数およびオーバーシュート駆動専用電圧Vosの階調数は、駆動回路のビット数を超えない範囲で任意に設定できる。低電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(L)の階調数と、高電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(H)の階調数を異ならしてもよい。
【0056】
オーバーシュート駆動を行うときに印加される電圧は、入力画像信号Sの変化に対応して予め決められており、階調電圧Vgおよびオーバーシュート駆動専用電圧Vosのいずれかが使用される。
【0057】
例えば、現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgが前フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりも低い場合、階調電圧Vgおよび低電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vos(L)のなかから選択される、現フィールドの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりさらに低電圧側の電圧が液晶パネルに入力される。オーバーシュート駆動に使用される電圧は、現フィールドの電圧を印加してから、予め決められた所定の時間(例えば、16.7msec)内で、現フィールドの入力画像信号Sに対応した定常状態の透過率に到達するように、予め決められる。あるいは、目視により違和感を感じないような透過率となるように、予め決められる。
【0058】
オーバーシュート駆動に使用する電圧は、前フィールドの入力画像信号S(例えば64階調)と現フィールドの入力画像信号S(64階調)との組合せ(但し、階調の変化の無い組合せに対しては不必要)に対して決められる。液晶パネルの応答速度によっては、オーバーシュート駆動を必要としない階調の組合せがあり得る。また、オーバーシュート駆動専用電圧Vosの階調数も適宜変化し得る。
【0059】
(オーバーシュート駆動を行う回路)
図4を参照しながら、本発明の実施形態の液晶表示装置における駆動回路10の構成を説明する。
【0060】
駆動回路10は、外部から入力画像信号Sを受け取り、それに応じた駆動電圧を液晶パネル15に供給する。駆動回路10は、画像用記憶回路11と、組合せ検出回路12と、オーバーシュート電圧検出回路13と、極性反転回路14とを有する。
【0061】
画像用記憶回路11は、入力画像信号Sの少なくとも1枚のフィールド画像を保持する。もちろん、1フレームが複数のフィールドに分割されない場合、画像用記憶回路11は、少なくとも1枚のフレーム画像を保存する。組合せ検出回路12は、現フィールドの入力画像信号Sと、画像用記憶回路11に保持された前フィールドの入力画像信号Sとを比較し、その組合せを示す信号をオーバーシュート電圧検出回路13に出力する。オーバーシュート電圧検出回路13は、組合せ検出回路12で検出された組合せに対応する駆動電圧を、階調電圧Vgおよびオーバーシュート駆動専用電圧Vosのなかから検出する。極性反転回路14は、オーバーシュート電圧検出回路13で検出された駆動電圧を交流信号に変換し、液晶パネル(表示部)15に供給する。
【0062】
それぞれの回路の入力・出力信号について、立ち下がりのオーバーシュート駆動に使用する電圧が入力画像信号Sに対応する階調電圧Vgよりも低電圧側の階調電圧Vgに予め設定されている場合について説明する。
【0063】
まず、画像用記憶回路11は、現フィールドの入力画像信号Sより1フィールド前の入力画像信号Sを保持する。
【0064】
次に、組合せ検出回路12は、各絵素ごとに現在の入力画像信号Sと画像用記憶回路11に保持された1フィールド前の入力画像信号Sとの組合せを検出する。例えば、ある絵素について、1フィールド前の入力画像信号S20と、現フィールドの入力画像信号S40との組合せ(S20,S40)を検出する。
【0065】
オーバーシュート電圧検出回路13は、組合せ検出回路12によって検出された組合せ(S20,S40)に対して予め決められていた階調電圧V60(入力画像信号S60に対応する)を検出し、階調電圧V60を駆動電圧として極性反転回路14に供給する。この動作は、現フィールドの入力画像信号がS40からS60に変換されたことに相当する。組合せ検出回路12によって検出された組合せ(S20,S40)に対して、これに対応する予め決められたオーバーシュート電圧として、階調電圧V60を検出する過程は、例えば、ルックアップテーブル法を用いて行ってもよいし、予め決められた演算を実行することによって行ってもよい。
【0066】
最後に、極性反転回路14は、階調電圧V60を交流信号に変換し、液晶パネル15に供給する。
【0067】
以下に、本発明による実施形態の液晶表示装置で、オーバーシュート駆動専用電圧Vosを用いてオーバーシュート駆動を行う動作を説明する。
【0068】
例えば、オーバーシュート電圧検出回路13は、64階調(6ビット)の入力画像信号Sに対応して、7ビット(64の階調電圧Vg(V0〜V63)と、64のオーバーシュート電圧Vos(高電圧側:Vos(H)1〜Vos(H)32、低電圧側:Vos(L)1〜Vos(L)32)から所定のオーバーシュート駆動のための駆動電圧を検出することができる。
【0069】
具体的に、例えば、立ち下がりを例にとり、入力画像信号がS40から1フィールド後にS63に切り換わるとする。入力画像信号S40は、画像用記憶回路11に保持される。組合せ検出回路12は、(S40、S63)を検出する。そして、オーバーシュート電圧検出回路13は、例えば1フィールド以内に入力画像信号S63に対応する定常的な透過率に達するように予め決められたオーバーシュート駆動専用電圧Vos(L)20を検出し、これを駆動電圧として極性反転回路14に供給する。この電圧Vos(L)20が、極性反転回路14によって交流化された後、液晶パネルに供給される。
【0070】
上記の動作は、6ビットのデジタル入力画像信号Sが、オーバーシュート電圧検出回路13によって、オーバーシュート駆動専用電圧Vos(64階調)を含む7ビットのデジタル入力画像信号Sに変換されることに相当する。
【0071】
なお、入力画像信号Sに変化がないときには、駆動電圧はオーバーシュートされない。例えば、組合せ検出回路12が(S40、S40)を検出すると、オーバーシュート電圧検出回路13は、S40に対応する階調電圧V40を駆動電圧として、極性反転回路14に出力する。
【0072】
上述のオーバーシュート駆動の対象は、入力画像信号Sが切り替わった最初のフイールドに限定されない。最初のフィールドのみならず、次のフィールドやそのまた次のフィールドに対してオーバーシュート駆動を実行してもよい。このような駆動方法は、適当な回路を組み合わせれば実行できる。なお、1フレームを複数のフィールドに分割して駆動する場合、最初のフィールドまたは全てのフィールドに対して、オーバーシュート駆動を行うことが好ましい。また、1フレーム内の複数のフィールドに対してオーバーシュート駆動する場合、それぞれのフィールドで用いられるオーバーシュート量(言い換えると、所定の階調電圧Vgからのシフト量)は互いに異なってもよい。例えば、第1フィールドに対するオーバーシュート駆動に用いるオーバーシュート量よりも少ないオーバーシュート量で第2フィールドに対するオーバーシュート駆動を行ってもよい。
【0073】
(オーバーシュート駆動を行ったときの透過率変化)
図5Aおよび図5Bを参照しながら、本発明による実施形態の液晶表示装置をオーバーシュート駆動したときの応答特性を説明する。
【0074】
図5Aは、本実施形態の液晶表示装置(リタデーション320nmの液晶パネル)と比較例の液晶表示装置(リタデーション260nmの液晶パネル)のV−T曲線を示している。本実施形態の液晶パネルはV−T曲線に極値を有するのに対して、比較例の液晶パネルはV−T曲線に極値を有しない。これら2つの液晶パネルにおいては、液晶層の厚さが同じであり、用いられている液晶材料の誘電率異方性(Δε)および粘度が同じで、△nが異なっており、位相差補償素子によりリタデーションが調整されている。これらの液晶パネルは、同じ電圧(Vth)からリタデーションが実質的に変化し始める。低電圧側から印加電圧を徐々に上昇すると、260nmの液晶パネルの透過率はVthを超えると単調に減少し、320nmの液晶パネルの透過率はVthを超えると一旦上昇し、極大値を経て、単調に減少する。最高の透過率は、いずれの液晶パネルでもT(c)であり、印加電圧V(a)に対する定常的な透過率はT(a)である。
【0075】
図5Bは、本実施形態の液晶表示装置の透過率の時間変化を模式的に示すグラフである。図5B中の破線で示した時間間隔は、1フィールドに相当し、黒表示(最低階調:S0に相当)の第1フィールドから、白表示(最高階調:S63に相当)の第2フィールドへの変化を示している。図5B中では同じ時間tsで定常状態に達する様子が示されている。これは、前述したように、液晶表示装置における立ち下がりは液晶分子の配向の緩和現象だからである。
【0076】
図5B中の曲線L1は、リタデーションが320nmの液晶パネルに対して、第2フィールドにおいて電圧V(a)、すなわち低電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧Vosを印加した場合(本発明)を示す。これに対し、曲線L2は、リタデーションが320nmの液晶パネルに対して、オーバーシュート駆動専用電圧V(a)を印加した場合と同じ定常状態透過率を示す最低の階調電圧V(b)を印加した場合を示している。ここでは、比較の容易さのために、最低の階調電圧V(b)の透過率と同じ透過率を示す電圧をオーバーシュート駆動専用電圧V(a)としているが、オーバーシュート駆動専用電圧V(a)の設定はこれに限られない。
【0077】
曲線L1に示したように、低電圧側のオーバーシュート駆動専用電圧V(a)を印加すると、1フィールドが十分に長ければ、透過率は、第1フィールドの値から上昇し、その後低下して、オーバーシュート駆動専用電圧V(a)の定常状態透過率に近づく。
【0078】
これは、本発明による実施形態の液晶パネルのリタデーション変化によるものである。オーバーシュート駆動専用電圧V(a)の印加により液晶分子は立ち下がり、定常状態に近づく。当然、液晶層のリタデーションは上昇し、印加したオーバーシュート駆動専用電圧V(a)に対応する定常状態に近づく。すなわち、リタデーションは上昇していき、260nmを経てさらに上昇し、印加したオーバーシュート駆動専用電圧V(a)に対応する定常的なリタデーションに近づく。一般的に透過率が最大となるリタデーションは約260nmであるので、透過率は、まず上昇し、その後低下して、上述のような透過率変化となるのである(図5A参照)。
【0079】
一方、曲線L2に示したように、V(a)に代えて、単純に最低の階調電圧V(b)を印加すると(すなわち、オーバーシュート駆動を行わないと)、透過率は第1フィールドの値から上昇し、最低の階調電圧V(b)に対応する定常状態の透過率に近づく。液晶分子は、階調電圧V(b)の印加により立ち下がり、定常状態に近づく。当然、リタデーションは上昇し、印加したV(b)の定常状態に近づく。この場合、リタデーションは約260nm(透過率の極値を与えるリタデーション)を超えることはないので、透過率の低下は起こらない。
【0080】
なお、リタデーションが260nmの液晶パネルにV(a)を印加した場合の応答特性は、曲線L2とほぼ同様に変化する。また、リタデーションが260nmの液晶パネルにV(a)(最低の階調電圧とする。)よりも更に低い電圧(オーバーシュート電圧)を印加すると、その応答時間は更に短くなるが、その程度もわずかであり、曲線L1よりも急峻な応答曲線は得られない。
【0081】
以上のことから、曲線L1に示したように、リタデーションが300nm以上の液晶パネルを用いて、オーバーシュート駆動専用電圧V(a)を印加した場合、第2フィールドにおける透過率の上昇の急峻性が高いことがわかる。本発明の実施形態によると、このようにして起こる急峻な透過率の変化を利用することによって、立ち下がりの応答特性を改善し、動画表示に好適に用いられる液晶表示装置が提供される。
【0082】
次に、図5Cに示したように、実施形態の液晶表示装置(リタデーションが320nmの液晶パネル)に対して、最高の透過率(T(c))を示す電圧(V(c))に最低の階調電圧を設定し、オーバーシュート駆動(電圧V(d)を印加)した場合の応答特性を説明する。比較のためにV−T曲線に極値を有しない液晶パネル(リタデーションが260nmの液晶パネル)に対して、最高の透過率(T(c))を示す電圧(V(d))に最低の階調電圧を設定し、オーバーシュート駆動(電圧V(d’)を印加)した場合の応答特性を説明する。
【0083】
図5Dは、リタデーションが320nmの液晶パネルに対して、最高の透過率(T(c))を示す電圧(V(c))に最低の階調電圧を設定し、オーバーシュート駆動(電圧V(d)を印加)した場合の応答曲線L3と、オーバーシュート駆動を行わず最低の階調電圧V(c)を印加した場合の応答曲線L4とを示している。
【0084】
図5Dの曲線L3と曲線L4との比較から明らかなように、リタデーションが320nmの液晶パネルにおいて、透過率が最高となる電圧V(c)に最低の階調電圧を設定した場合においても、図5Bを参照しながら上述した場合と同様に、オーバーシュート電圧V(d)を印加することによって、立ち下がりの応答特性を改善することができる。これは、320nmの液晶パネルのV−T曲線において、最高透過率を与える点は極大値であり、V(c)よりも低い電圧範囲において、さらにリタデーションが変化する、すなわち、液晶分子の配向が緩和する余地が残っているからである。但し、透過率が最高値から低下しないようにオーバーシュート電圧V(d)を印加する期間を調整する必要がある。
【0085】
なお、上述のように、透過率が最高となる電圧V(c)に最低の階調電圧を設定することによって、透過率を犠牲にすることなく、応答特性を改善することができるという利点が得られるが、応答特性の改善効果については、図5Bに示したように、透過率が極値を示す電圧より高い電圧に最低の階調電圧をした場合の方が高い。従って、液晶表示装置の用途などに応じて、透過率が極大値を示す電圧以上の電圧に最低の階調電圧を設定すればよい。
【0086】
一方、図5Cに示したように、リタデーションが260nmの液晶パネルにおいて、透過率の最大値を与える電圧を最低の階調電圧に設定すると、最低の階調電圧未満のオーバーシュート駆動専用電圧V(d’)を印加しても、応答特性を改善することができない。すなわち、最低の階調電圧V(d)を印加したときも、オーバーシュート電圧V(d’)を印加しときも、その応答曲線は、図5Dの曲線L4とほぼ同じになる。これは、前述したように、260nmの曲線の平坦部における液晶分子の配向状態は実質的は同じなので、復元力も同じであるからである。従って、リタデーションが260nmの液晶パネルの立ち下がり応答特性を改善するためには、透過率が最高になる電圧よりも高い電圧(例えばV(c))を最低の階調電圧に設定し、透過率を犠牲にすることによって、初めてオーバーシュート駆動(例えばV(d)を印加)による高速応答化が可能となる。
【0087】
上述したように、本実施形態によると、立ち下がりの応答特性を改善し、動画表示に好適に用いられる液晶表示装置が提供される。
【0088】
上記の例では、1フィールド内で印加電圧に対応する定常状態透過率が得られる、液晶層の応答速度が比較的速い場合を説明したが、印加された電圧に対応する定常状態透過率に到達するために比較的長い時間(例えば、2フィールド)を要する液晶パネルにおいては、曲線L2で示した応答特性では、所定の表示状態(透過率)を実現できないことになる。それに対し、曲線L1の応答特性を有すると、図5Bの時間軸の単位を2分の1にした図6に示したように、1フィールドで所定の表示状態を実現することができる。従って、前フィールドの画像と現フィールドの画像が重なることによる動画表示のボヤケが生じることが防止される。
【0089】
あるいは、図5Bに示した比較的応答速度が速い液晶層を有する液晶パネルに対してオーバーシュート駆動を行う場合、図5Bの1フィールドをさらに2分割して、前半のフィールドに対してオーバーシュート駆動電圧V(a)を印加し、後半のフィールドでは所定の階調電圧Vgに対応するV(b)を印加することによって、図6に示した応答特性を得ることもできる。すなわち、液晶パネルに駆動電圧を供給する周波数を2倍にすることによって、図5Bの曲線L1で見られた、一旦所定の透過率以上に上昇した後に透過率が低下することを防止し、図6に示したように、急峻性の高い透過率の変化を実現できる。このように、オーバーシュート駆動を行わなくても1フィールド内で印加電圧に対応する定常状態透過率が得られる液晶パネルの応答特性をさらに向上すると、液晶パネルが所定の表示状態にある時間(透過率の時間積分値)が長くなるので、表示品位(輝度やコントラスト比など)を改善することができる。
【0090】
このように、本発明によると、動画表示に適した高速応答の液晶表示装置を得ることができる。
【0091】
(表示モード)
本発明は、種々の液晶表示装置に適用することができる。但し、上述したように、液晶パネルの応答特性は、液晶層の応答速度(液晶材料や配向形態など)に依存する。従って、応答速度の速い液晶層を用いることによって、より高速で、動画表示特性の優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0092】
図7に、応答速度が速い液晶モードとして知られている、平行配向(ホモジニアス配向)型液晶層を用いたECB(電界制御複屈折)モードのNWモードの透過型液晶パネル20を模式的に示す。
【0093】
液晶パネル20は、液晶セル20aと、液晶セル20aを挟持するように設けられた一対の偏光子25および26と、偏光子25および26と液晶セル20aとの間にそれぞれ配置された位相差補償素子23および24を備えている。
【0094】
液晶セル20aは、一対の基板21と22との間に設けられた液晶層27を有している。基板21および22は、透明基板(例えばガラス基板)と、その液晶層27側の表面に設けられた、液晶層27に電圧を印加するための透明電極(不図示)および液晶層27の液晶分子27aの配向方向を規定するための配向膜(不図示)を有している。もちろん、必要に応じてカラーフィルタ層(不図示)などをさらに有してもよい。透明電極は、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)を用いて形成される。
【0095】
液晶層27は平行配向型液晶層であり、液晶層27中の液晶分子27aは、電圧無印加時には、液晶層27の層面(基板表面に平行)に実質的に平行(プレチルト角分だけ僅かに平行からずれる)でかつ、液晶分子27aどうしも実質的に互いに平行(プレチルト角の影響を受けない。)である。アンカリング層の屈折率楕円体は、液晶層27の層面(すなわち表示面)をXY平面とするXYZ座標系において、X軸を中心軸として、時計方向にプレチルト角分だけ僅かに傾斜している。
【0096】
平行配向型液晶層は、液晶層27の両側に設けられる配向膜を反平行にラビング処理することによって得られる(図7中のラビング方向を示す矢印参照)。なお、液晶層の両側に設けられる配向膜を平行にラビング処理を施すと、一方の配向膜上の液晶分子と他方の配向膜上の液晶分子とが、プレチルト角の2倍の角度をなすので、液晶分子27aどうしが平行でなくなる。
【0097】
一対の偏光子(例えば、偏光板や偏光フィルム)25および26は、その吸収軸(図7中の矢印)が互いに直交し、かつ前述のラビング方向(液晶分子の層面内の配向方向)とそれぞれ45度の角度をなすように配置されている。
【0098】
位相差補償素子(例えば、位相差板や位相差フィルム)23および24は、図7に示したように、その屈折率楕円体(主軸a、bおよびcを有する)は、液晶層27の層面(すなわち表示面)をXY平面とするXYZ座標系において、X軸と平行に配置されたa軸を中心軸として、僅かに回転している。ここでは、Y軸はラビング方向と平行(または反平行)に設定されており、屈折率楕円体のb軸は、このY軸から傾斜するように配置されている。すなわち、屈折率楕円体の長軸(b軸)はYZ平面内でX軸に対して反時計方向に傾斜している。このように配置された位相補償素子23および24を傾斜型位相差補償素子と呼ぶ。
【0099】
この位相差補償素子23および24は、液晶層27のアンカリング層のリタデーションを補償する機能を有する。液晶層27に、例えば、7Vの電圧を印加しても、配向膜(不図示)によってアンカリングされている液晶分子は液晶層27の層面に平行な配向を維持するので、液晶層27のリタデーションは零にならない。このリタデーションを位相差補償素子23および24が補償(相殺)する。
【0100】
典型的な例として、各主軸方向の主屈折率na、nbおよびncがna=nb>ncとする。図8に模式的に示すように、位相差補償素子23および24の屈折率楕円体の傾斜角(b軸がY軸に対して成す角)が0度であれば、位相差補償素子23および24の正面リタデーション(表示面法線方向(図中のZ軸に平行)から入射する光に対するリタデーション)は零であるが、傾斜角が大きくなるにつれて、リタデーションが発生し大きくなっていく。つまり、図8に示したように、表示面法線方向から見たとき、傾斜角0度の屈折率楕円体は完全な円に見えるのに対し、傾斜角が大きくなるにつれて楕円に見えることから理解できる。
【0101】
従って、上述のように傾斜した屈折率楕円体を有する位相差補償素子23および24を、傾斜方向(b軸方向)とラビング方向とを互いに平行または反平行に配置すれば、アンカリング層のリタデーションを位相差補償素子23および24の正面リタデーションで相殺することができる。従って、前述の例でいうと、7V印加時の液晶層27のリタデーションを相殺(7V印加時の液晶パネル20としてのリタデーションを零にする)し、透過率を0%、すなわち黒表示を実現することができる。
【0102】
位相差補償素子23および24の正面リタデーションは、その屈折率楕円体の主屈折率、傾斜角、厚さによって調整することができる。位相差補償素子23および24の正面リタデーションの大きさを変化させることによって、相殺される液晶セル20aのリタデーションの大きさを変えられる。従って、液晶層27のアンカリング層によるリタデーションだけでなく、ある電圧を印加したときの液晶層27のリタデーションを相殺することによって、階調電圧Vgの範囲を任意に調整することができる。例えば、図9に示すように、屈折率楕円体の主屈折率および傾斜角を一定にし、位相差補償素子23および24の厚さd(表示面法線方向の厚さ)のみを変化させた場合の、液晶パネル20のV−T曲線を示す。なお、透過率は、表示面法線方向における透過率である。このように、位相差補償素子23および24の光学特性の制御により、V−T曲線を制御できることがわかる。もちろん、屈折率楕円体の傾斜角、主屈折率を制御しても同様の効果が得られることは上記説明から明らかである。
【0103】
液晶パネル20の応答時間(オーバーシュート駆動を用いない従来の駆動方法による)は、従来のTNモードの液晶パネルの典型例な応答時間である30msの約半分である。TNモードの液晶パネルの液晶層が捻じれ配向構造を有しているのに対し、ホモジニアス配向では捻じれ配向構造がないので、配向構造の単純性から応答時間が短いと解釈できる。
【0104】
さらに、この液晶パネル20に、表示面法線方向およびそれに近い方向の透過光(表示光)を、観察者の視線に対して上下方向に拡散する、すなわち一次元方向にのみレンズの効果を有する光学素子(例えば、住友3M株式会社製のBEFフィルム)を表示面に配置することによって、あらゆる角度から見ても、ほとんどその表示品位が変化しない、極めて広い視角を有する液晶パネル20を得ることができる。
【0105】
本発明による実施形態の液晶表示装置30を模式的に図10に示す。
【0106】
液晶表示装置30は、図7に示した液晶パネル20と、図4に示した駆動回路10とを備えている。液晶表示装置30は、NWモードの透過型液晶表示装置である。
【0107】
液晶パネル20は、TFT基板21とカラーフィルタ基板(以下、「CF基板」と称する。)22とを備えている。これはいずれも公知の方法で作製される。本発明の液晶表示装置30はTFT型液晶表示装置に限られないが、速い応答速度を実現するためには、TFT型またはMIMなどのアクティブマトリクス型液晶表示装置であることが好ましい。
【0108】
TFT基板21においては、ガラス基板31上にITOからなる絵素電極32とその液晶層27側の表面に配向膜33が形成されている。CF基板22においては、ガラス基板35上にITOからなる対向電極(共通電極)36とその液晶層27側の表面に配向膜37が形成されている。配向膜33および37は、例えば、ポリビニルアルコールやポリイミドを用いて形成される。配向膜33および37の表面は、それぞれ一方向にラビングされている。TFT基板21とCF基板22とを、そのラビング方向が互いに反平行になるように貼り合わせたのち、誘電率異方性△εが正のネマティック液晶材料を注入し、平行配向型の液晶層27を得る。液晶層27のみのリタデーションを400nmとする。液晶層27はシール材38によって封止されている。
【0109】
TFT基板21およびCF基板22の外側に80nmの正面リタデーションを有する位相差補償素子23および24をそれぞれ、ラビング方向と位相差補償素子23および24の遅相軸が直交するように貼り付ける。位相差補償素子23および24のリタデーションを含む、液晶パネル20全体のリタデーションは320nmである。位相差補償素子23および24、および偏光子25および26の配置は、図7を参照しながら上述したとおりである。
【0110】
液晶表示装置30は、図1の320nmの曲線で示したV−T特性を有し、印加電圧が約2Vで最も高い透過率(極大値)を示し、さらに印加電圧を増加すると透過率が低下する。
【0111】
次に、駆動回路10の具体的な構成を説明する。
【0112】
入力画像信号Sとして、6ビット(64階調)で、1フレーム60Hzのプログレッシブ信号を用いる。この入力画像信号Sが、順次、画像用記憶回路11に保持される。次に、組合せ検出回路12は、各絵素ごとに、現在の入力画像信号Sと、画像用記憶回路に11に保持された1フレーム前の入力画像信号Sとの組合せを120Hzで検出する。ここで、120Hzで検出するのは、後述する倍速書きこみを行うためである。入力画像信号Sは、1フレーム60Hzなので、駆動回路10内の適当な場所で、倍速の120Hzに変換する。ここでは、組合せ検出回路12でその変換を行う。
【0113】
オーバーシュート電圧検出回路13は、7ビット(低電圧側オーバーシュート駆動専用電圧:0V〜2Vの間に32階調、階調電圧2.1V〜5Vの間に64階調、高電圧側オーバーシュート駆動専用電圧:5.1V〜6.5Vの間に32階調)の電圧のなかから、組合せ検出回路12によって検出された組合せに対応する予め決められたオーバーシュート電圧を検出する。オーバーシュート電圧は、120Hzの電圧とする。このオーバーシュート電圧は、極性反転回路14に供給され、120Hzの交流電圧に変換される。この120Hzの交流電圧が液晶パネル20に供給される。すなわち、この駆動回路10への60Hzの入力画像信号Sは、120Hzの画像信号として駆動回路10から液晶パネル20に出力される。従って、1フレーム・60Hzの入力画像信号Sが、1フィールド・120Hzの出力画像信号2フィールド(「第1および第2サブフィールド」と呼ぶことにする。)に変換され、液晶パネル20に倍速書き込みされることになる。
【0114】
ここで、駆動回路10は、入力画像信号S(60Hz)が変化したとき、120Hzの第1サブフィールドでは、上述したオーバーシュート電圧を出力し、第2サブフィールドでは、現フレームの入力画像信号Sに対応する階調電圧Vg(オーバーシュートなし)を液晶パネル20に出力するように設定する。
【0115】
図11に、本実施形態の液晶表示装置30の応答特性(実線)を示す。図11には、比較例として、オーバーシュート駆動を行わない場合の応答特性(破線)を合わせて示している。また、図11には、入力画像信号S、液晶パネル20に倍速書き込みされる電圧と、比較例のオーバーシュート駆動を行わない場合(倍速駆動もなし)の液晶パネルに出力される電圧とを合わせて示している。
【0116】
図11に示したように、入力画像信号(60Hz)が第1フィールドから第2フィールドに、高階調側(低電圧側)に変化した場合、所定の階調電圧を印加するだけでは、破線で示したように、第2フィールド内で所定の透過率の到達しない。それに対し、オーバーシュート駆動を行うと、実線で示したように1/2フィールド(1サブフィールド)で所定の透過率に到達する。本発明による、応答特性を向上させる効果は、第2フィールドの入力画像信号Sが最高階調の信号であっても得られる。
【0117】
なお、比較例(破線)の応答特性が不連続な変化を示しているのは、液晶層27が電荷を保持している期間に、液晶の配向変化に伴う液晶容量の増加が生じ、その結果、液晶層27に印加されている電圧が低下することに起因している。
【0118】
尚、駆動回路10の説明では、1フレームが1垂直期間に相当するノンインターレース駆動方式の液晶表示装置を例に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限られず、1フィールドが1垂直期間に相当するインターレス駆動方式の液晶表示装置にも適用できる。
【0119】
【発明の効果】
本発明によると、立ち下がり応答速度が改善された液晶表示装置が提供される。特に、本発明を平行配向型液晶層に適用することによって、応答時間を10msec程度にまで短縮することが可能となる。
【0120】
本発明による液晶表示装置は、速い応答速度を有するので、動画表示における残像現象による画像のボヤケの発生が防止され、高品位の動画表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正の屈折異方性(Δn=n//−n⊥>0)を有する液晶材料を含む平行配向型液晶層を備えた液晶パネルのV−T曲線を示すグラフである。
【図2A】リタデーションが260nmの液晶パネルの電圧−リタデーション曲線を示すグラフである。
【図2B】リタデーションが300nmの液晶パネルの電圧−リタデーション曲線を示すグラフである。
【図3】本発明による実施形態の液晶表示装置が備える液晶パネルのV−T曲線とオーバーシュート駆動専用電圧Vos、階調電圧Vgの関係を示す模式図である。
【図4】本発明による実施形態の液晶表示装置が備える駆動回路10の構成を示す模式図である。
【図5A】本発明による実施形態の液晶表示装置(リタデーション320nmの液晶パネル)と比較例の液晶表示装置(リタデーション260nmの液晶パネル)のV−T曲線および最低の階調電圧の設定条件を示すグラフである。
【図5B】本発明による実施形態の液晶表示装置の透過率の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図5C】本発明による実施形態の液晶表示装置(リタデーション320nmの液晶パネル)と比較例の液晶表示装置(リタデーション260nmの液晶パネル)のV−T曲線および最低の階調電圧の設定条件を示すグラフである。
【図5D】本発明による実施形態の液晶表示装置の透過率の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図6】本実施形態の他の液晶表示装置の透過率の時間変化を模式的に示すグラフである。
【図7】本発明による実施形態の液晶表示装置が備える、平行配向型液晶層を用いたNWモードの透過型液晶パネルを模式的に示す図である。
【図8】実施形態で用いられる位相差補償素子の機能を説明するための図である。
【図9】液晶パネルのV−T曲線に与える、位相差補償素子の厚さの影響を示すグラフである。
【図10】本発明による実施形態の液晶表示装置30を模式的に示す図である。
【図11】本実施形態の液晶表示装置30の応答特性を説明するための図であり、入力画像信号S、透過率および液晶パネルに出力される電圧を比較例とともに示している。
【図12】従来の液晶表示装置の駆動回路の構成を示す模式図である。
【図13】図12に示した駆動回路によって応答特性が改善される様子を示す、信号波形図である。
【符号の説明】
10 駆動回路
11 画像用記憶回路
12 組合せ検出回路
13 オーバーシュート電圧検出回路
14 極性反転回路
15 液晶パネル
20 液晶パネル
20a 液晶セル
21、22 基板
23、24 位相差補償素子
25、26 偏光子
27 液晶層
27a 液晶分子
30 液晶表示装置
31、35 ガラス基板
32 絵素電極
33、37 配向膜
36 対向電極(共通電極)
38 シール材

Claims (11)

  1. 液晶層と前記液晶層に電圧を印加する電極とを有する液晶パネルと、前記液晶パネルに駆動電圧を供給する駆動回路とを備え、
    前記液晶パネルは、透過型液晶パネルであって、電圧−透過率特性において、最低の階調電圧よりも低い電圧において透過率の極値を示し、
    前記駆動回路は、1垂直期間前の入力画像信号と現垂直期間の入力画像信号の組合せに応じて、予め決められた、現垂直期間の入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を、前記液晶パネルに供給する液晶表示装置。
  2. 前記液晶パネルの電圧無印加状態と最高の階調電圧印加状態とのリタデーションの差は、300nm以上である請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記極値は、透過率の最大値を与える請求項1または2に記載の液晶表示装置。
  4. 前記入力画像信号の1垂直期間を1フレームとし、前記入力画像信号の1フレームに対して、前記駆動電圧の少なくとも2フィールドが対応し、前記駆動回路は、前記駆動電圧の少なくとも最初のフィールドにおいて、現フィールドの入力画像信号に対応する階調電圧がオーバーシュートされた駆動電圧を前記液晶パネルに供給する請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示装置。
  5. 前記液晶層はホモジニアス配向型液晶層である請求項1から4のいずれかに記載の液晶表示装置。
  6. 前記液晶パネルは、位相差補償素子をさらに備え、
    前記位相差補償素子は、屈折率楕円体の3つの主屈折率na、nb、ncがna=nb>ncの関係を有し、前記液晶層のリタデーションの少なくとも一部を相殺するように配置されている請求項1から5のいずれかに記載の液晶表示装置。
  7. 液晶パネルに駆動電圧を印加することにより、前記液晶パネルの透過率を制御し、表示を行う液晶表示装置であって、
    前記液晶パネルは、透過型液晶パネルであって、電圧−透過率特性において、最低の階調電圧よりも低い電圧において透過率の極大値または極小値を示し、
    前記液晶パネルに前記駆動電圧を印加する駆動回路は、1垂直期間前の入力画像信号と前記現垂直期間の入力画像信号の組合せに応じて、予め決められた、前記現垂直期間の入力画像信号に対応する前記駆動電圧として、少なくとも最低の階調電圧以上かつ最高の階調電圧以下の範囲内の階調電圧および前記最低の階調電圧よりも低いオーバーシュートされた階調電圧を前記液晶パネルに選択的に供給する液晶表示装置。
  8. 前記液晶パネルはノーマリーホワイト方式である請求項7に記載の液晶表示装置。
  9. 前記駆動回路は、前記最低の階調電圧以上かつ前記最高の階調電圧以下の範囲内の前記階調電圧および前記最低の階調電圧よりも低いオーバーシュートされた前記階調電圧に加えて、前記最高の階調電圧よりも高いオーバーシュートされた階調電圧をさらに選択的に供給する請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 前記液晶パネルはノーマリーブラック方式である請求項7に記載の液晶表示装置。
  11. 前記駆動回路は、前記最低の階調電圧以上かつ前記最高の階調電圧以下の範囲内の前記階調電圧および前記最低の階調電圧よりも低いオーバーシュートされた前記階調電圧に加えて、前記最高の階調電圧よりも高いオーバーシュートされた階調電圧をさらに選択的に供給する請求項10に記載の液晶表示装置。
JP2001038246A 2000-03-29 2001-02-15 液晶表示装置 Expired - Fee Related JP3713208B2 (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001038246A JP3713208B2 (ja) 2000-03-29 2001-02-15 液晶表示装置
TW090106756A TW513598B (en) 2000-03-29 2001-03-22 Liquid crystal display device
US09/820,021 US20010038369A1 (en) 2000-03-29 2001-03-28 Liquid crystal display device
KR1020010016638A KR100641249B1 (ko) 2000-03-29 2001-03-29 액정표시장치
US10/622,870 US7084846B2 (en) 2000-03-29 2003-07-18 Liquid crystal display device
KR1020060055375A KR100676479B1 (ko) 2000-03-29 2006-06-20 액정표시장치

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-91832 2000-03-29
JP2000091832 2000-03-29
JP2001038246A JP3713208B2 (ja) 2000-03-29 2001-02-15 液晶表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001343956A JP2001343956A (ja) 2001-12-14
JP3713208B2 true JP3713208B2 (ja) 2005-11-09

Family

ID=26588750

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001038246A Expired - Fee Related JP3713208B2 (ja) 2000-03-29 2001-02-15 液晶表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3713208B2 (ja)

Families Citing this family (26)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3715249B2 (ja) 2001-04-27 2005-11-09 シャープ株式会社 画像処理回路、画像表示装置、並びに画像処理方法
JP2003241721A (ja) * 2002-02-20 2003-08-29 Fujitsu Display Technologies Corp 液晶パネルの表示制御装置および液晶表示装置
EP1460612A3 (en) 2003-03-19 2006-11-15 Sharp Kabushiki Kaisha Driving method of liquid crystal display apparatus, driving apparatus of liquid crystal display apparatus, and program thereof
JP4537679B2 (ja) * 2003-09-18 2010-09-01 株式会社東芝 液晶表示装置
JP2005275137A (ja) * 2004-03-25 2005-10-06 ▲ゆ▼瀚科技股▲ふん▼有限公司 液晶パネルの駆動方法
JP2005352315A (ja) * 2004-06-11 2005-12-22 Seiko Epson Corp 電気光学装置用駆動回路及び電気光学装置用駆動方法、並びに、電気光学装置及び電子機器
JP4413730B2 (ja) 2004-09-28 2010-02-10 富士通株式会社 液晶表示装置及びその駆動方法
JP2006330605A (ja) 2005-05-30 2006-12-07 Sharp Corp 液晶表示装置
US8519988B2 (en) 2005-06-13 2013-08-27 Sharp Kabushiki Kaisha Display device and drive control device thereof, scan signal line driving method, and drive circuit
JP2007033864A (ja) * 2005-07-27 2007-02-08 Mitsubishi Electric Corp 画像処理回路及び画像処理方法
WO2007018219A1 (ja) 2005-08-09 2007-02-15 Sharp Kabushiki Kaisha 表示装置の駆動制御装置、表示方法、表示装置、表示モニター、テレビジョン受像機
JP5041697B2 (ja) * 2005-11-16 2012-10-03 三菱電機株式会社 画像処理装置、画像表示装置、及び画像処理方法
JP2007206620A (ja) * 2006-02-06 2007-08-16 Sony Corp 画像表示装置および画像表示方法
JP5522334B2 (ja) * 2006-03-14 2014-06-18 Nltテクノロジー株式会社 液晶駆動方法及び液晶駆動装置
US8212756B2 (en) 2006-04-14 2012-07-03 Sharp Kabushiki Kaisha Display panel driving apparatus, display panel driving method, display apparatus, and television receiver
JP4584333B2 (ja) * 2006-04-14 2010-11-17 シャープ株式会社 表示パネル駆動装置、表示装置、表示パネル駆動方法、テレビジョン受像機
JP2007304325A (ja) 2006-05-11 2007-11-22 Necディスプレイソリューションズ株式会社 液晶表示装置および液晶パネル駆動方法
JP5110862B2 (ja) * 2006-12-01 2012-12-26 キヤノン株式会社 液晶表示装置及びその制御方法、コンピュータプログラム及び記憶媒体
JP2009128504A (ja) * 2007-11-21 2009-06-11 Canon Inc 液晶表示装置
JP5215733B2 (ja) 2008-05-28 2013-06-19 キヤノン株式会社 表示制御装置およびオーバードライブ駆動用パラメータの決定方法
JP5508700B2 (ja) * 2008-08-28 2014-06-04 株式会社ジャパンディスプレイ 液晶表示装置
EP2434474A4 (en) 2009-05-19 2013-03-27 Sharp Kk Liquid crystal display device and method for its activation
US20120105468A1 (en) * 2009-07-06 2012-05-03 Sharp Kabushiki Kaisha Display Device And Display Device Driving Method
WO2011040075A1 (ja) * 2009-09-30 2011-04-07 シャープ株式会社 表示方法および表示装置
WO2011129124A1 (ja) * 2010-04-12 2011-10-20 シャープ株式会社 表示装置
WO2011162083A1 (ja) * 2010-06-24 2011-12-29 シャープ株式会社 液晶表示素子の駆動方法、液晶表示素子の駆動装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001343956A (ja) 2001-12-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3713208B2 (ja) 液晶表示装置
KR100507546B1 (ko) 액정표시장치
KR100641249B1 (ko) 액정표시장치
JP4436622B2 (ja) 液晶表示装置
US6952192B2 (en) Liquid crystal display device and its drive method
KR100794105B1 (ko) 액정 표시 장치, 그 구동 방법 및 액정 표시 패널의 구동 장치
JP2004533647A (ja) 液晶装置
EP1600936A2 (en) Active-matrix liquid-crystal display device
JP2000284254A (ja) 液晶表示装置
JP2011145712A (ja) 液晶表示装置
US8654303B2 (en) Liquid crystal display device
JP3660886B2 (ja) 液晶表示装置
JP4212571B2 (ja) 液晶表示装置及びその駆動方法
KR100786510B1 (ko) 액정표시장치 및 그 구동방법
JP4409146B2 (ja) 液晶表示装置
JP4572748B2 (ja) 電気光学装置、駆動方法および電子機器
JP3210385B2 (ja) 液晶表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040817

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041014

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20041214

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050209

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050819

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 3713208

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080826

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090826

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090826

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100826

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110826

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110826

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120826

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120826

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130826

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees