JP3708627B2 - 構築用インサート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてコンクリート造建築物を構築する際に、壁つなぎ金具や足場などの取付け手段として予めコンクリート中に埋設される構築用インサートに関する。より詳しくは、型枠に形成した取付孔に対して外側からハンマー等により打込むことにより装着可能な構築用インサートに関する。
【0002】
【従来の技術】
型枠に形成した取付孔部にインサート本体を装着してコンクリートを打設することにより所定位置に埋設するこの種の構築用インサートに関しては、従来から前記インサート本体を型枠の内側の所定位置に支持しながら、型枠の外側から前記取付孔を介して取付ボルトを螺合して締付け固定する装着方法が広く慣用されている。しかしながら、この従来方法は、型枠の内側でインサート本体を所定位置に支持する作業者と、型枠の外側で取付ボルトを型枠に形成した前記取付孔に挿通して前記インサート本体を締付け固定する作業者の二人の作業者を必要としたため、作業性がよくなかった。そこで、近時、型枠の外側から一人の作業者によって装着し得るように改良された種々の構築用インサートが開示されるに至っている。
【0003】
例えば、実公平4−6401号公報や実公平7−26484号公報には、型枠に形成された取付孔の孔径より大きい外形に形成した弾性体からなる係止用部材を使用し、その係止用部材に取付ボルトを挿通して一体化した状態で、弾性変形させながら前記取付孔を通過させ、その弾性による復元力により、取付孔を通過後、原形に復元させて取付孔の内側縁部に係止させることにより、前記取付ボルトの頭部側との間に型枠を狭持してインサート本体を型枠に固定するという技術手段が開示されている。また、実開平7−23114号公報には、取付ボルトに挿通されるスリーブの外周にスプライン状の突条と係止用突起を設け、型枠に形成された取付孔に挿通した場合に、前記係止用突起を取付孔内面に喰い込ませることにより取付ボルトを強固に取付けて、インサート本体を取付孔に固定するという技術手段が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、弾性体からなる係止用部材を使用する前者の従来技術は、その係止用部材を型枠に形成された取付孔を通過後、原形に復元させてその内側縁部に係止させることにより固定するという装着構造を採用していたため、型枠の板厚の変化に対する対応が困難であるとともに、取付孔のバリなどにより弾性部材の復元作用が阻害され、確実な係止状態が得られないという不具合が生じやすいといった欠点があった。また、係止用突起を用いる後者の従来技術は、その係止用突起を取付孔内面に喰い込ませて固定する装着構造を採用しているが、十分な固定効果が得られる程度に突起部を取付孔内面に確実に喰い込ませること自体、実際にはそれほど簡単なことではなく、他方、逆に型枠の脱型後、型枠からスリーブを抜取って再使用する場合の支障にもなりかねないといった問題があった。さらに、両従来技術に共通した問題点として、爪状の小片からなる弾性係止部を形成する場合には、その小さな形状から十分な弾性力を保障し得るように成形すること自体に技術上の難点を伴うばかりでなく、その係止部が破損されやすく耐久性上の問題が多く、再使用の可能回数がきわめて低いといった欠点があった。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、型枠に形成された取付孔に対して外側からハンマー等により打込むことにより簡便に装着し得るとともに、その部材の製造が比較的容易で、しかも耐久性が改善されて再使用回数が増大し、さらにコンクリート打設後のインサート本体の入口側の傾斜面の形成も同時に可能な、使い勝手のきわめて良好な構築用インサートを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、少なくとも、型枠に形成された取付孔に挿通可能な取付ボルトと、前記取付孔に挿通可能なアンカー部及び断面形状が円形以外の回り止め部を有し、前記取付ボルトに螺合可能な雌ネジを形成したインサート本体と、弾性変形可能な材料からなり、先端側が徐々に小径に形成されたテーパーなどの先細部に連続した筒状に形成され、その最大径部分の直径が前記取付孔より大径に形成された外形を有し、内方に前記取付ボルトの挿通部を形成した圧着スリーブとを備え、前記圧着スリーブの挿通部に前記取付ボルトを挿通して前記インサート本体の雌ネジに螺合して一体化した状態で、前記圧着スリーブを型枠に形成された前記取付孔に対して外側から圧入することにより、その圧着スリーブの外面を前記取付孔の内面に圧着することによって、インサート本体を型枠に固定するという技術手段を採用した。特に、前記圧着スリーブの内方に形成される前記取付ボルトの挿通孔は、その圧着スリーブの軸心部に向けて放射状に形成した複数のリブの内端部により形成した点を特徴とするさらに、前記圧着スリーブの先端部に形成された前記先細部の端部に、前記取付ボルトの軸部外径と略同径の中央開口部を有する薄壁部を一体的に形成して、コンクリートのろの浸入をより確実に防止し得るように構成してもよい
【0007】
【発明の実施の形態】
前記圧着スリーブの成形材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる合成樹脂が好適であるが、硬質ゴムなどから形成することも可能である。要は、圧着スリーブを型枠に形成された前記取付孔に対して打込み等により強制的に圧入した場合に、その圧着スリーブの外径の縮小に伴う弾性変形に基づく復元力によって、その外面が前記取付孔の内面に対して圧着して十分な固定力を得られるものであればよい。また、圧着スリーブの外形に関しても、前記取付孔に圧入した場合に、その取付孔の内面に対する十分な圧着作用が得られる外径部分が一部でもあればよく、前記先細部に連続して形成される筒状部分は円筒状でもテーパー状でもよい。また、その外形表面は、平滑面でも凹凸面でもよい。さらに、圧着スリーブの外径と取付孔の内径との差は、その成形材料などとの関係を勘案して、十分な固定力が得られ、しかも取付孔への圧入が比較的容易な直径差を選定すればよい。なお、その場合、前記先細部が取付孔への圧入の案内作用を奏することはいうまでもない。また、圧着スリーブの取付孔への圧入に伴う取付孔の多少の変形は問題ない。
【0008】
その他の前記インサート本体や取付ボルトに関しては、従来公知のものを用いればよい。また、取付ボルトの頭部と圧着スリーブとの間に型枠表面に当接する適宜の座金を用いてもよいことはいうまでもない。また、前記圧着スリーブの後端部に座金に代るフランジ部を一体的に形成することも可能である。さらに、インサート本体の具体的な形状や寸法などは適宜選定すればよく、要は前記取付孔に挿通可能なアンカー部及び断面形状が円形以外の回り止め部を有し、前記取付ボルトに螺合可能な雌ネジを形成したものであれば選択が可能である。その回り止め手段としては、公知のように、インサート本体の軸部の断面形状を六角形や楕円などの偏平形状に形成したものでよい。また、インサート本体を構成する回り止め部やアンカー部などを一体的に形成したものでもよいことはいうまでもない。
【0009】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1〜図5は本発明の一実施例を示したもので、図1は本構築用インサートを型枠へ装着した状態を示した縦断面図、図2はその要部拡大図である。また、図3は同構築用インサートの組立状態図、図4は同構築用インサートに使用されている圧着スリーブの縦断面図、図5は同圧着スリーブを一部破断して示した右側面図である。図中、1は本構築用インサートで、図3はその組立状態を示したものである。構築用インサート1は、インサート本体2と、取付ボルト3と、それらの間に狭持される圧着スリーブ4を主要素として構成される。本実施例においては、取付ボルト3の頭部と圧着スリーブ4との間に座金5を介在しているが、前述のように、圧着スリーブ4の後端部に一体的にフランジ部を形成することにより座金5に代えることも可能である。図1及び図2に示すように、前記インサート本体2及び取付ボルト3の雄ネジ部は、合板等から構成される型枠6に形成された取付孔7に挿通可能に構成されている。
【0010】
前記インサート本体2は、図1及び図2に示すように、前記取付孔7に挿通可能なアンカー部8を備えたアンカー軸部9と、断面形状が円形以外の形状、本実施例では六角形に形成された回り止め部10とから構成され、前記回り止め部10の内方には前記取付ボルト3に螺合可能な雌ネジ11が形成されており、その雌ネジ11の他端部に前記アンカー軸部9の雄ネジ部12を螺合することにより一体化し得るように構成されている。なお、雌ネジ11と雄ネジ12の螺合後、その螺合部分をカシメ等により固定することにより強固な一体化を図ることが望ましい。
【0011】
前記圧着スリーブ4は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂や硬質ゴムなどのように弾性変形可能な材料から適度の強度を有するものを選定して成形される。図4及び図5に示すように、その外形は、先端側が徐々に小径に形成された先細部13に連続した筒状に形成され、その最大径部分の直径Dが前記取付孔7の直径dより大径に形成されている。本実施例においては、最大径部分は先端側に偏って形成され、その最大径部分を挟んで両側が共に緩やかなテーパー状に形成され、先端部分が前記先細部13を形成している。また、圧着スリーブ4の内方には、その軸心部に向けて放射状に形成された複数のリブ14が形成されており、それらのリブ14の内端部により前記取付ボルト3の挿通部15が形成されている。さらに、圧着スリーブ4の先端部に形成された先細部13の端部には、前記取付ボルト3の軸部外径と略同径の中央開口部16を有する薄壁部17が一体的に形成されている。この薄壁部17の外表面は前記インサート本体2を構成する回り止め部10の端部に接合してコンクリートのろの取付ボルト3部分への浸入をより確実に防止する
【0012】
次に、本実施例の使用の仕方に関して説明する。前述のように、先ず前記回り止め部10の内方に形成された雌ネジ11に前記アンカー軸部9の雄ネジ部12を螺合し、その螺合部分を必要に応じてカシメ等により強固に一体化したインサート本体2を形成しておく。このインサート本体2の雌ネジ11に、図1及び図2に示すように、座金5及び圧着スリーブ4に挿通した取付ボルト3の雄ネジ部を螺合して締付け一体化することにより、図3に示した構築用インサート1を組立てる。そして、型枠6に形成された取付孔7に構築用インサート1を装着する場合には、図3に示した組立状態のまま、図1及び図2に示したように、取付孔7にアンカー部8及び回り止め部10を挿通し、その状態で取付ボルト3の頭部を介してハンマー等により打込むことにより、前記圧着スリーブ4を前記取付孔7に圧入することにより装着する。すなわち、この圧着スリーブ4の取付孔7に対する圧入により、圧着スリーブ4の外面が取付孔7の内面に圧着され、その間の摩擦力によって構築用インサート1が型枠6に固定されることになる。
【0013】
型枠6の所定の取付孔7に対する構築用インサート1の装着が終了したならば公知のようにコンクリートの打設が行われる。コンクリートの固化後には、図6に示したように、取付ボルト3を緩めて圧着スリーブ4の部分まで取外す。この場合、図示のように、圧着スリーブ4の先端部の前記先細部13により、インサート本体2の入口側の傾斜面18が同時に形成される。そして、インサートとして壁つなぎ金具や足場などの取付け手段として使用した後、不要になった場合には、図7に示したようにプラグ19を前記雌ネジ11部分に打込んだり、モルタルなどを充填したり、モルタル仕上げなどによってインサート本体2の入口側の開口部を塞ぐことにより雨水等の浸入を防止する。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)前記圧着スリーブの少なくとも最大径の部分が、その周面において型枠側の取付孔の内面に対して圧着されるので、両者間の摩擦力により強固かつ安定した装着状態が得られる。したがって、打込み等により型枠の外側から簡便かつ確実に装着することができる。
(2)また、筒状の圧着スリーブの少なくとも最大径の部分が、その全周面において型枠側の取付孔の内面に対して連続的に圧着されることから、それらの圧着スリーブと型枠側の取付孔の内面との間からのコンクリートのろの流出は確実に防止される。
しかも、圧着スリーブの内方に軸心部に向けて放射状に形成した複数のリブの内端部により取付ボルトの挿通部を形成したので、それらのリブを介して圧着スリーブを取付ボルトに対して弾性変形可能に支持し得るとともに、その材料を節約することができる。
さらに、圧着スリーブの外周面に従来のような局部的な突出部は存在しないので、型枠側の取付孔に対する挿入がきわめてスムースで、取付孔のバリ等にも影響されないため、装着作業の作業性が改善される。
)圧着スリーブの外周面の摩擦力によりインサート本体を固定するので、型枠の板厚に対する融通性があり、その適応範囲が広い。
)圧着スリーブの先端側にテーパーなどの先細部を形成したので、型枠に形成された取付孔に対する挿入がきわめてスムースになるとともに、インサート本体の入口側の傾斜面を形成することができる。しかも、それらの作用効果が1個の部材によって可能なことから使い勝手がよい。
)圧着スリーブの外周面で圧着することにより固定するものであって、従来のように局部的な変形を介して装着するものではないから、再使用の繰返しに対する耐久性が大幅に改善され、使用回数が増大される。
)圧着スリーブの先端部に形成された先細部の端部に取付ボルトの軸部外径と略同径の中央開口部を有する薄壁部を一体的に形成すれば、コンクリートのろの取付ボルト部分への浸入をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の装着状態を示した縦断面図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【図3】 前記実施例の組立状態図である。
【図4】 同実施例に使用されている圧着スリーブの縦断面図である。
【図5】 同圧着スリーブを一部破断して示した右側面図である。
【図6】 前記実施例の埋設状態を示した縦断面図である。
【図7】 前記実施例の使用済の場合を示した縦断面図である。
【符号の説明】
1…構築用インサート、2…インサート本体、3…取付ボルト、4…圧着スリーブ、5…座金、6…型枠、7…取付孔、8…アンカー部、9…アンカー軸部、10…回り止め部、11…雌ネジ、12…雄ネジ部、13…先細部、14…リブ、15…挿通部、16…中央開口部、17…薄壁部、18…傾斜面、19…プラグ

Claims (2)

  1. 少なくとも、型枠に形成された取付孔に挿通可能な取付ボルトと、前記取付孔に挿通可能なアンカー部及び断面形状が円形以外の回り止め部を有し、前記取付ボルトに螺合可能な雌ネジを形成したインサート本体と、弾性変形可能な材料からなり、先端側が徐々に小径に形成された先細部に連続した筒状に形成され、その最大径部分の直径が前記取付孔より大径に形成された外形を有し、かつ内方に軸心部に向けて放射状に形成した複数のリブの内端部により前記取付ボルトの挿通部を形成した圧着スリーブとを備え、前記圧着スリーブの挿通部に前記取付ボルトを挿通して前記インサート本体の雌ネジに螺合して一体化した状態で、前記圧着スリーブを型枠に形成された前記取付孔に対して外側から圧入することにより、その圧着スリーブの外面を前記取付孔の内面に圧着することによって、インサート本体型枠に固定されるように構成したことを特徴とする構築用インサート。
  2. 前記圧着スリーブの先端部に形成された先細部の端部に、前記取付ボルトの軸部外径と略同径の中央開口部を有する薄壁部を一体的に形成したことを特徴とする請求項1に記載の構築用インサート。
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