JP3707283B2 - 自動車の車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車の車体構造、特に、ストラットタワーとカウルボックス周りの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車におけるエンジンルームの左右両側には、ストラットタワーが設けられている。このストラットタワーの上面には、サスペンション入力が下からの突き上げ力として斜め内側に向けて加わる。従って、構造的にストラットタワーの剛性を高めて内側への倒れを防止する必要がある。そのため、従来では、特開平9−109929号公報で知られるように、カウルボックスの下面をストラットタワーの上面に結合し、このカウルボックスにより、ストラットタワーの内倒れ剛性を高めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにカウルボックスの下面をストラットタワーの上面に直接結合して内倒れを防止する構造は、ストラットタワーのすぐ真上にカウルボックスが存在するようなタイプの自動車(例えば乗用車)であれば適用できるが、RV車のように、カウルボックスの位置が高くて、ストラットタワーとカウルボックスとの間に空間が存在するような場合は、従来の構造を適用できない。
【0004】
この発明はこのような従来の技術に着目してなされたものであり、カウルボックスの位置が高い場合にもストラットタワーの内倒れ剛性を確実に高めることができる自動車の車体構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、カウルボックスがストラットタワーの上方位置まで前側に延長形成されており、該ストラットタワーと前記カウルボックスとの間に空間が形成され、該空間に前記ストラットタワーの上面と前記カウルボックスの下面とを結合するガセットを設けた自動車の車体構造において、エンジンルームの側壁又は側壁付近に設けられている部材を、差厚部を境界にして前側が薄く後側が厚く形成し、該差厚部と、前記カウルボックスの前壁と、前記ストラットタワーの前壁とのそれぞれ前後方向位置を、側面視で同一の垂直基準線に略合致させたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記ガセットが、前記エンジンルームの側壁にも結合されているものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記ガセットが、前面部を前記垂直基準線に近づけて取付けられたものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記ストラットタワーの下方で前後方向に沿って配されているサイドメンバが、差厚部を境界にして前側が薄く後側が厚く形成され、該差厚部が、前記垂直基準線に略合致している。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記ストラットタワーの前後中心が側面視で前記ガセットの形状内に位置している。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記ガセットが、前面部と、後面部と、前記前面部及び前記後面部の車幅方向内側端同士を連結した側面部とを備えた断面コ字形をしている。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記ガセットの断面形状が下側へ向けて漸次拡大している。
【0014】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ストラットタワーとカウルボックスとの間に空間が存在していても、その空間にストラットタワーの上面とカウルボックスの下面とを結合するガセットを設けたため、ストラットタワーの上面に加わる内倒れ方向への荷重をガセットを介してカウルボックスで受け止めることができる。従って、ストラットタワーの内倒れ剛性が向上し、ストラットタワーによるサスペンション支持性能が高まる。また、ストラットタワーとカウルボックスとをガセットで結合することにより、車体の捩れ剛性も高まり、エンジンルームの側壁とストラットタワーとの車幅方向での剥離も防止される。
また、エンジンルーム側壁等の差厚部と、カウルボックスの前壁と、ストラットタワーの前壁との前後方向位置が垂直基準線に略合致しているため、車両の前面衝突時に、垂直基準線よりも前側は潰して衝突エネルギーを吸収し且つ後側の乗員スペースは固めて乗員を保護する性能が向上する。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ガセットがエンジンルームの側壁にも結合されているため、ストラットタワーの内倒れ剛性及び車体の捩じれ剛性が更に向上する。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、ガセットの前面部を垂直基準線に近づけて取付けたため、垂直基準線よりも前側を潰して後側を固める性能が更に向上する。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、サイドメンバの差厚部が垂直基準線に略合致しているため、この点においても、前側を潰して後側を固める性能が更に向上する。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、ストラットタワーの前後中心がガセット形状内に位置しているため、ストラットタワーの上面に対して突き上げ方向に加わる荷重がガセットを介し側面視で直線的にカウルボックスに伝達され、該カウルボックスにより前記荷重を確実に受け止めることができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、ガセットが断面コ字形をしているため、ガセット自体の剛性が高く、ストラットタワーの内倒れ剛性及び車体の捩れ剛性がより一層向上する。また、ガセットをエンジンルームの側壁に結合した場合は、ガセットが閉断面化(ボックス化)して前記内倒れ剛性及び捩れ剛性が更に高まる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、ガセットの断面形状が下側へ向けて漸次拡大しているため、特にガセット上部の下部に対する水平方向での変形が防止され、前期内倒れ剛性及び捩れ剛性が更に高まる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1及び図2は、自動車のエンジンルームEの右側部分を示している。エンジンルームEの側壁は、フードリッジアッパ1とフードリッジロア2とから形成されている。フードリッジアッパ1とフードリッジロア2の外側には、フードリッジレンフォース3が取付けられ、それらにより閉断面が形成されている(図3参照)。また、その閉断面の外側には、更にフロントフェンダ4が設けられている。
【0024】
前記フードリッジレンフォース3には、その前後途中位置に差厚部3aが斜めに形成されており、この差厚部3aを境界にして、前側が薄く形成され、後側が厚く形成されている。これは、車両の前面衝突時に、差厚部3aよりも前側は潰して衝突エネルギーを吸収し且つ後側の乗員スペースは固めて乗員を保護するためである。
【0025】
フードリッジロア2の後方にはホイルハウスインナ5が設けられており、該ホイルハウスインナ5の中央部にはストラットタワー6が形成されている。このストラットタワー6の上面は、フードリッジアッパ1の下端付近に位置している。また、ストラットタワー6の前壁6aは、側面視において、前記フードリッジレンフォース3の差厚部3aを通る垂直基準線Pと合致した位置にある。
【0026】
フードリッジロア2の下端には閉断面のサイドメンバ7が前後方向に沿って形成されている。このサイドメンバ7の前記垂直基準線Pに合致する位置にも差厚部7aが形成れており、前側が薄く後側が厚く形成されている。
【0027】
ストラットタワー6の上方位置には、カウルボックス8が前側に延長した状態で形成されている。このカウルボックス8は、その底壁9a及び前壁9bを形成するカウルトップ9と、側壁を形成するカウルサイド10と、上壁を形成するカウルアッパ11と、奥壁を形成するダッシュアッパ12とから区画形成されている。カウルボックス8は、カウルトップ9の前壁9bが前記垂直基準線Pに合致する位置まで前方に延長形成されている。従って、このカウルボックス8とストラットタワー6との間には、上下方向において所定の空間Sが形成されている。また、前記ダッシュアッパ1とカウルトップ9との接合部からは、ダッシュロア13が下向きに延びており、このダッシュロア13により、エンジンルームEと車室内Rとを区切っている。
【0028】
カウルボックス8とストラットタワー6との間の空間Sには断面コ字形のガセット14が取付けられている。具体的には、図4に示す通り、前面部15と、側面部16と、後面部17を備えた形状をしている。これらの前面部15、側面部16、後面部17は、それぞれ下部が断面外側へ傾斜しており、下部の断面形状が漸次拡大した状態になっている。更に、このガセット14における端部には、各々フランジ18、19、20が形成されている。
【0029】
そして、このガセット14を、側面部16をエンジンルームEの内側に向けた状態で空間S内にセットし、縦のフランジ18をエンジンルームEの側壁を形成するフードリッジアッパ1に溶接し、上下のフランジ19、20をカウルボックス8の下面及びストラットタワー6の上面にそれぞれ溶接する。このように溶接したことにより、ガセット14は閉断面化(ボックス化)し、自身の剛性及び周辺の剛性を高める。
【0030】
更に、ガセット14は前記空間S内における前寄り位置に溶接され、その前面部15が前記垂直基準線Pに近接した状態になっている(合致させても良い)。また、ガセット14はこのように前寄りに位置しながらも、形状内をストラットタワー6の前後中心線Xが側面視で通過している(図2参照)。
【0031】
この実施形態によれば、ストラットタワー6とカウルボックス8との間に空間Sが形成されていても、そのストラットタワー6の上面とカウルボックス8の下面とがガセット14により結合されているため、ストラットタワー6の上面に対し内倒れ方向への荷重が加わっても、その荷重をガセット14を介してカウルボックス8で確実に受け止めることができる。従って、ストラットタワー6の内倒れ剛性が向上し、ストラットタワー6によるサスペンション支持性能が高まる。また、ガセット14でストラットタワー6とカウルボックス8を結合することで、車体の捩じれ剛性も高まり、エンジンルームEの側壁(フードリッジアッパ1やフードリッジロア2)と、ストラットタワー6との剥離も防止される。
【0032】
特に、この実施形態では、前述のように、ガセット14をフードリッジアッパ1に接合して閉断面化(ボックス化)しているため、ガセット14自体及び周辺の剛性が高まり、前記内倒れ剛性及び捩じれ剛性が更に高まる。また、ストラットタワー6の前後中心線Xが、側面視でガセット14の形状内を通過しているため、ストラットタワー6の上面に加わる突き上げ方向での荷重が、ガセット14を介し側面視で直線的にカウルボックス8に伝達され、該カウルボックス8により荷重を確実に受け止めることができる。加えて、この実施形態のガセット14は断面形状が下側へ向けて漸次拡大しているため、特にガセット14上部の下部に対する水平方向での変形が防止され、前記内倒れ剛性及び捩じれ剛性が更に高める効果がある。
【0033】
次に、車両が前面衝突を起こした場合には、カウルボックス8の前壁9b、ストラットタワー6の前壁6a、フードリッジレンフォース3の差厚部3a、サイドメンバ7の差厚部7aがそれぞれ垂直基準線Pに合致しており、またガセット14の前面部15が垂直基準線Pに近接しているため、垂直基準線Pよりも前側は潰して衝突エネルギーを吸収し且つ後側の乗員スペースは固めて乗員を保護する性能が相乗的に向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るストラットタワー周辺の車体構造を示す斜視図。
【図2】ストラットタワー周辺の車体構造を示す側面図。
【図3】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図4】ガセットの斜視図。
【符号の説明】
1 フードリッジアッパ(側壁)
2 フードリッジロア(側壁)
3 フードリッジレンフォース
3a 差厚部
6 ストラットタワー
6a 前壁
7 サイドメンバ
7a 差厚部
8 カウルボックス
14 ガセット
15 ガセットの前面部
E エンジンルーム
R 車室内
S 空間
X 中心
Claims (7)
- カウルボックスがストラットタワーの上方位置まで前側に延長形成されており、該ストラットタワーと前記カウルボックスとの間に空間が形成され、該空間に前記ストラットタワーの上面と前記カウルボックスの下面とを結合するガセットを設けた自動車の車体構造において、
エンジンルームの側壁又は側壁付近に設けられている部材を、差厚部を境界にして前側が薄く後側が厚く形成し、
該差厚部と、前記カウルボックスの前壁と、前記ストラットタワーの前壁とのそれぞれ前後方向位置を、側面視で同一の垂直基準線に略合致させたことを特徴とする自動車の車体構造。 - 前記ガセットは、前記エンジンルームの側壁にも結合されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体構造。
- 前記ガセットは、前面部を前記垂直基準線に近づけて取付けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車の車体構造。
- 前記ストラットタワーの下方で前後方向に沿って配されているサイドメンバは、差厚部を境界にして前側が薄く後側が厚く形成され、該差厚部は、前記垂直基準線に略合致していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の自動車の車体構造。
- 前記ストラットタワーは、前後中心が側面視で前記ガセットの形状内に位置していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の自動車の車体構造。
- 前記ガセットは、前面部と、後面部と、前記前面部及び前記後面部の車幅方向内側端同士を連結した側面部とを備えた断面コ字形をしていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の自動車の車体構造。
- 前記ガセットは、断面形状が下側へ向けて漸次拡大していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の自動車の車体構造。
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