JP3705657B2 - N,n−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステル類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトレジスト用の光塩基発生剤等として有用な新規化合物であるN,N−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステル類およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紫外光照射によって分解し、アミンを発生する化合物が、近年、フォトレジスト用途に開発されている。例えば、このような光照射によりアミンを発生する化合物としてアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステル類が知られている。この化合物は、酸硬化型のポリマーに熱酸発生剤とともに添加することにより、ポジ型のフォトレジストを与えることが、Journal of Photopolymer Science and Technology 1990年3巻3号419−422ページに記載されている。また、同じ化合物を、カルボン酸含有ポリマーに添加することにより、ネガ型のフォトレジストを与えることが、Gov.Rep.Announce Index 1993年93巻18号1−11ページに記載されている。
【0003】
さらに、アルキルカルバミン酸3,5−ジメトキシベンジルエステル類も、同様に、光照射によりアミンを発生することが、J.Org.Chem.1990年55巻5919−5922ページに記載されている。
そしてこれらの化合物が発生するアミンはいずれも1級アミンである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、発生する塩基が2級アミンである方が、より塩基性が高く求核性が小さいので、性能のよいフォトレジストが得られると考えられることから、2級アミンを発生する光塩基発生剤の開発が望まれていた。
従って、本発明は、上記のアルキルカルバミン酸エステルに代えて、2級アミンを発生することができる新規N,N−ジアルキルカルバミン酸エステルを開発することを目的とする。
さらに、このようなN,N−ジアルキルカルバミン酸エステルはフォスゲンを用いて製造するのが一般的であるが、フォスゲンを用いる方法は危険で複雑であるので、安全かつ簡便にN,N−ジアルキルカルバミン酸エステルを製造できる方法を開発することも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を解決すべく検討を行った結果、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R1 は炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基を表し、R2 は炭素原子数4〜18のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)
で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステル類
を見いだすにいたった。
【0006】
一般式(1)において、R1 は炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。またR2 は炭素原子数4〜18のアルキル基またはシクロアルキル基を表し、具体的には、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
【0007】
また、本発明の上記一般式(1)で表される化合物を、安全かつ簡便に製造する方法を検討した結果、本発明者は以下の方法を見いだした。すなわち、N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとを反応させた後、下記一般式(2)
【化4】
(式中、R1 およびR2 は、上で定義した通りである。)
で表される2級アミンを反応させる、ことを特徴とする製造方法である。
【0008】
以下にこの方法を詳しく説明する。
まず、N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとを反応させてN−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールを生成する(第一工程)。N,N’−カルボニルジイミダゾールと反応させる2−ニトロベンジルアルコールの量は、N,N’−カルボニルジイミダゾール1モルに対して一般に0.95〜1.0モルであり、2−ニトロベンジルアルコールが過剰にならないようにするのが好ましい。過剰の2−ニトロベンジルアルコールは生成したN−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールと反応して副産物のビス(2−ニトロベンジル)カーボネートとなり、目的物の収率が低下するからである。
【0009】
N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとの反応は、反応溶媒中で行われる。反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン性の極性溶媒が単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、なかでもDMFが好ましい。
N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとを反応させる際、N,N’−カルボニルジイミダゾールをDMF溶液または懸濁液とし、これに2−ニトロベンジルアルコールのDMF溶液を加えるのが一般的である。
【0010】
N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとの反応温度は、一般に−20℃〜+30℃、好ましくは0℃〜+10℃である。これより高い温度では、副産物のビス(2−ニトロベンジル)カーボネートの割合が高くなり、目的物の収率が低下するからである。
さらに、上記反応は発熱反応であるので、反応温度が高くならないように、N,N’−カルボニルジイミダゾールと2−ニトロベンジルアルコールとを反応させることが必要である。例えば、反応器を冷却しながら、反応器から除熱できる速度で、N,N’−カルボニルジイミダゾールのDMF溶液または懸濁液に2−ニトロベンジルアルコールのDMF溶液を加える。
【0011】
次に、第一工程で生成したN−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールと上記一般式(2)で表される2級アミンとを反応させる(第二工程)。その際、第一工程で生成したN−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールを反応液から単離してから第二工程に進んでもよいが、単離せずに反応液のまま第二工程に進むのが簡便で好ましい。すなわち、第二工程の反応も、第一工程の反応と同様の反応溶媒、好ましくはDMF中で行われるので、例えば、上記第一工程で得られた、反応溶媒としてDMFが使用されている反応液に、一般式(2)で表される2級アミンのDMF溶液を加える。反応させる2級アミンの量は、第一工程で用いたN,N’−カルボニルジイミダゾール1モルに対して一般に1〜1.5モルである。窒素原子のまわりの立体障害が大きく反応し難いアミン、例えば式(2)中のR2 がシクロアルキル基であるアミンを用いる場合には、アミンを過剰に用いるのが好ましい。
【0012】
N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールと一般式(2)で表される2級アミンとの反応温度は、一般に−20℃〜+80℃であり、2級アミンのかさ高さによって適当な温度を選択するのが好ましい。
N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールと上記一般式(2)で表される2級アミンとの反応によって、目的とするN,N−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルが生成する。生成されたN,N−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルは、慣用の方法で、例えば反応溶媒を除去することにより、反応液から単離され、場合によりさらに、再結晶化またはクロマトグラフィーなどにより精製される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0014】
【実施例】
本発明の実施例を示す。
実施例1
N−メチル−n−ヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルの製造
滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラーを備えた100mlの三口ガラスフラスコを窒素置換し、N,N’−カルボニルジイミダゾール1.62g(10mmol)を仕込んだ。ここにN,N−ジメチルホルムアミド5mlを加えて懸濁させ、懸濁液をマグネチックスターラーで撹拌しながら氷浴で冷却し、0〜5℃とした。
【0015】
2−ニトロベンジルアルコール1.53g(10mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶解させた。
氷浴で冷却して懸濁液の温度を0〜5℃に維持しながら、懸濁液にこの溶液を、滴下ロートから30分かけて滴下して加えた。フラスコ内の反応液を、0〜5℃で30分熟成した後、反応液をこの温度に維持しながら、これにN−メチル−n−ヘキシルアミン1.15g(10mmol)のDMF5ml溶液を滴下ロートから10分かけて滴下して加えた。次いで、氷浴をはずして反応液を室温で12時間熟成した。
その後、反応液をロータリーエバポレーターで濃縮しDMFを除いた後、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固体2.30gを得た。
【0016】
1H−核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトルおよび質量スペクトルの結果より、この白色固体は、N−メチル−n−ヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルであることが確認された。使用した2−ニトロベンジルアルコールに対する収率は78%であった。
【0017】
1H−NMR(CDCl3 ):δ(ppm)
7.4−8.1(4H,m,ベンゼン環),5.5(2H,s,ベンジル位),3.3(2H,t(br),N−CH2 ),2.8(3H,s,N−CH3 ),1.4(8H,m,メチレン),1.0(3H,t(br),ヘキシルCH3)
IR(KBr):1702(CO),1527(NO2 )cm-1
MS(EI)m/z:294(M+ )
【0018】
実施例2
N−メチル−n−ドデシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルの製造
実施例1と同様に行った。但し、N−メチル−n−ヘキシルアミンの代わりに、N−メチル−n−ドデシルアミン1.99g(10mmol)を用いた。これによって、白色固体2.72gが得られた。
【0019】
1H−核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトルおよび質量スペクトルの結果より、この白色固体は、N−メチル−n−ドデシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルであることが確認された。使用した2−ニトロベンジルアルコールに対する収率は72%であった。
【0020】
1H−NMR(CDCl3 ):δ(ppm)
7.4−8.1(4H,m,ベンゼン環),5.5(2H,s,ベンジル位),3.3(2H,t(br),N−CH2 ),2.8(3H,s,N−CH3 ),1.4(2OH,m,メチレン),1.0(3H,t(br),ドデシルCH3 )
IR(KBr):1702(CO),1528(NO2 )cm-1
MS(EI)m/z:378(M+ )
【0021】
実施例3
N−メチルシクロヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルの製造
実施例1と同様に行った。但し、N−メチル−n−ヘキシルアミンの代わりに、N−メチルシクロヘキシルアミン1.70g(15mmol)を用いた。これによって、無色油状物2.07gが得られた。
【0022】
1H−核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトルおよび質量スペクトルの結果より、この油状物は、N−メチルシクロヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステルであることが確認された。使用した2−ニトロベンジルアルコールに対する収率は71%であった。
【0023】
1H−NMR(CDCl3 ):δ(ppm)
7.4−8.1(4H,m,ベンゼン環),5.5(2H,s,ベンジル位),3.9(1H,br,N−CH),2.8(3H,s,CH3 ),1.0−1.8(10H,m,シクロヘキシルCH2 )
IR(NaCl):1701(CO),1527(NO2 )cm-1
MS(EI)m/z:292(M+ )
【0024】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0025】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、N,N−ジアルキルカルバミン酸2−ニトロベンジルエステル類が、安全かつ簡便に提供される。この化合物は、2級アミンを発生するので、フォトレジスト用の光塩基発生剤として有用である。
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