JP3705557B2 - 圧電トランス及び圧電トランス電源 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電トランス及び圧電トランス電源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電振動子矩形板から成る圧電トランス振動子を用いた圧電トランスが知られている。
【0003】
図7を参照して、この種の圧電トランス1は、DC−DCコンバータやインバータとして応用され、駆動回路2、制御回路3、及び帰還回路4からなる電子電源回路に接続されて圧電トランス電源を構成することが知られている。ここで図示されている圧電トランス電源は、VinがDC(直流)の入力を受け、Vout がAC(交流)の出力を生成する圧電トランス式インバータである。
【0004】
現在、圧電トランスに用いる振動子としてセラミックやニオブ酸リチウム単結晶を用いることが多く、一般的な構造としては、図8(a)の概略図に示すように圧電振動子11の表面あるいは側面にそれぞれ電力を入力、出力できる入力電極12a,12bと出力電極13が形成されて圧電トランス部材とし、電力の取り出しは、前記圧電トランス部材に形成された電極にリード線12c,12d,13cを直接半田付けするか、図8(b)に示すようにバネ状の導体44で取り出す方法が一般的であった。
【0005】
さらに図9に示す圧電トランス及び圧電トランス電源では、圧電セラミック矩形板11に入力用電極12a,12bと出力用電極13とを設けてなる圧電トランス部材を、線状導体16a,16b,16cを設けてなる可撓性の絶縁板17を介して回路基板14に固定すると共に、高圧を絶縁するためにケース15を覆い被せている(特願平8−155825号参照)。
【0006】
また、より低背、低コストを図るために、図10のようにケースの代わりに絶縁性のシートとして熱収縮性チューブ58a,58bを用いることも提案されている(特願平8−162242号参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に圧電トランスは、信頼性が高く、小形化、低背化、低コスト化の要求が非常に強いが、従来の圧電トランス及び圧電トランス電源の構成では、信頼性と小形、低背、低コストを両立することが難しいという欠点があった。
【0008】
詳しく述べると、図10に示したように絶縁性のシートを用いて圧電トランス部材と基板とを一体化し固定すると、ケースを用いて固定した場合と比較して、ケースの厚みの分だけかなりの低背化が図れるが、信頼性の点、特に基板の長手方向の衝撃に弱くなってしまい、車載等のより高信頼性を要求されるような場合には、要求条件を満足できないという欠点があった。
【0009】
このように、従来の圧電トランス及び圧電トランス電源では、信頼性と小形、低背、低コスト化の市場要求を十分に満たすことは非常に困難であるという欠点があった。
【0010】
それ故に本発明の技術的課題は、小形、低背化を図っても高信頼性を十分に満足し、しかも低コストの圧電トランス及び圧電トランス電源を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極とを有する圧電トランス部材と、前記圧電トランス部材を直接に配置した基板と、絶縁性のシートとを含み、前記基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランス部材に対応する位置に有し、前記圧電トランス部材及び前記基板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランスが得られる。
【0012】
また本発明によれば、電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極とを有する圧電トランス部材と、前記圧電トランス部材を可撓性の絶縁板を介して配置した基板と、絶縁性のシートとを含み、前記基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランス部材に対応する位置に有し、前記圧電トランス部材、前記基板、及び前記絶縁板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランスが得られる。
【0013】
また本発明によれば、電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極を有する圧電トランスと、前記圧電トランスを直接に配置しこれを駆動及び制御する回路基板と、絶縁性のシートとを含み、前記回路基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランスに対応する位置に有し、前記圧電トランス及び前記回路基板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス電源が得られる。
【0014】
また本発明によれば、電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極を有する圧電トランスと、前記圧電トランスを可撓性の絶縁板を介して配置しこれを駆動及び制御する回路基板と、絶縁性のシートとを含み、前記回路基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランスに対応する位置に有し、前記圧電トランス、前記回路基板、及び前記絶縁板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス電源が得られる。
【0015】
【作用】
本発明の圧電トランス及び圧電トランス電源を用いれば、基板あるいは回路基板に切欠部を設けることにより、長手方向の耐衝撃性を向上でき、高信頼性を十分確保し、同時に低背化、小形化、低コスト化が図れる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の圧電トランス及び圧電トランス電源の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
【実施例】
図1は本発明の第1の実施例に係る圧電トランスを示す斜視図である。図1に示す圧電トランスは圧電トランス部材を含んでいる。その圧電トランス部材は、圧電セラミック矩形板11の内部に複数の内部電極を有し、前記内部電極と交互にそれぞれ電気的接続を持たせた1組即ち一対の外部電極即ち入力用電極12a,12bを圧電セラミック矩形板11の両長辺側面に形成し、さらに圧電セラミック矩形板11の短辺端面に出力用電極13を形成したものである。ここで圧電セラミック矩形板11の寸法は40mm×6mm×1.5mmであり、PZT系ラミックを用いて作られている。内部電極はAg/Pbの一体焼結により形成され、外部電極である入力用電極12a,12b及び出力用電極13はAgの焼き付けにて形成されている。
【0018】
さらに引き出し用のリード121a,121b,131を入力用電極12a,12b及び出力用電極13に夫々接続した後、幅方向両端に複数の切欠部20a,20bを形成した基板19上にこの圧電トランス部材を直接にかつ切欠部20a,20bに対応するように配置する。しかる後に、これを絶縁性のシートを構成する熱収縮性チューブ18に挿入し、かつその熱収縮性チューブ18を切欠部20a,20bに対応させる。熱収縮性チューブ18の長さは切欠部20a,20bの幅よりわずかに短いものとする。即ち、熱収縮性チューブ18が絶縁性のシートを構成するものであり、かつ基板19の切欠部20a,20bの幅はそのシートの幅よりわずかに広く作られている。
【0019】
次に熱収縮性チューブ18を加熱して収縮させ、これにより全体が一体化するように固定する。ここで、熱収縮性チューブ18の収縮は、ドライヤーにより約100℃の熱を加えることにより行うとよい。
【0020】
図2は本発明の第2の実施例に係る圧電トランスを示す斜視図である。図2に示す圧電トランスの圧電トランス部材は、圧電セラミック矩形板11の内部に複数の内部電極を有し、前記内部電極と交互にそれぞれ電気的接続を持たせた一対の外部電極即ち入力用電極12a,12bを圧電セラミック矩形板11の両側面に形成し、さらに圧電セラミック矩形板11の端面に出力用電極13を形成したものである。ここで圧電セラミック矩形板11の寸法は40mm×6mm×1.5mmであり、PZT系ラミックを用いて作られている。内部電極はAg/Pbの一体焼結により形成され、外部電極である入力用電極12a,12b及び出力用電極13はAgの焼き付けにて形成されている。
【0021】
さらに内部に各々が絶縁された3つの線状導体16a,16b,16cを有する可撓性の絶縁板(FPC)17を形成し、圧電トランス部材の入力用電極12a,12b及び出力用電極13を絶縁板17の線状導体16a,16b,16cに一対一に対応させて電気的に接続した後、幅方向両端に複数の切欠部20a,20bを形成した基板19上にこの圧電トランス部材を絶縁板17を介してかつ切欠部20a,20bに対応するように配置する。しかる後に、これを絶縁性のシートを構成する熱収縮性チューブ18に挿入し、かつその熱収縮性チューブ18を切欠部20a,20bに対応させる。この場合にも、基板19の切欠部20a,20bの幅はそのシートの幅、即ち、熱収縮性チューブ18の長さよりわずかに大きく作られる。
【0022】
次に熱収縮性チューブ18を加熱して収縮させ、圧電トランス部材と絶縁板17とを覆い、これにより全体が一体化するように固定する。
【0023】
図3は本発明の第3の実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図である。図3に示す圧電トランス電源は圧電トランス部材を含んでいる。その圧電トランス部材は、圧電セラミック矩形板11の内部に複数の内部電極を有し、前記内部電極と交互にそれぞれ電気的接続を持たせた一対の外部電極即ち入力用電極12a,12bを圧電セラミック矩形板11の両側面に形成し、さらに圧電セラミック矩形板11の端面に出力用電極13を形成したものである。ここで圧電セラミック矩形板11の寸法は40mm×6mm×1.5mmであり、PZT系ラミックを用いて作られている。内部電極はAg/Pbの一体焼結により形成され、外部電極である入力用電極12a,12b及び出力用電極13はAgの焼き付けにて形成されている。
【0024】
さらに入力用電極12a,12b及び出力用電極13を、リード線を用いて、複数の切欠部22a,22bを有する回路基板21の電極に接続する。最後に絶縁性のシートを構成する熱収縮性チューブ18に圧電トランス22a,22bと回路基板21を挿入して切欠部22a,22bに対応させ、熱収縮性チューブ18を加熱して収縮させ、圧電トランス部材及び回路基板21を一体化するように固定する。ここで、圧電トランス電源の全体の厚さは、2.5mmであり、従来の1/2の厚みである。この場合、回路基板21の切欠部22a,22bの幅はそのシートの幅、即ち、熱収縮性チューブ18の長さよりわずかに大きく作られる。
【0025】
図4は本発明の第4の実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図である。図4に示す圧電トランス電源の圧電トランス部材は、圧電セラミック矩形板11の内部に複数の内部電極を有し、前記内部電極と交互にそれぞれ電気的接続を持たせた一対の外部電極即ち入力用電極12a,12bを圧電セラミック矩形板11の両側面に形成し、さらに圧電セラミック矩形板11の端面に出力用電極13を形成したものである。ここで圧電セラミック矩形板11の寸法は40mm×6mm×1.5mmであり、PZT系ラミックを用いて作られている。内部電極はAg/Pbの一体焼結にて形成され、入力用電極12a,12b及び出力用電極13はAgの焼き付けにて形成されている。
【0026】
さらに内部に各々が絶縁された3つの線状導体16a,16b,16cを有する可撓性の絶縁板(FPC)17を形成し、圧電トランス部材の入力用電極12a,12b及び出力用電極13を絶縁板17の線状導体16a,16b,16cに一対一で対応しさせて電気的に接続し、さらに幅方向両端に複数の切欠部22a,22bを有する回路基板21の電極に接続した。最後にこれを絶縁性のシートを構成する熱収縮性チューブ18に挿入して切欠部22a,22bに対応させ、熱収縮性チューブ18を加熱して収縮させ、圧電トランス部材及び回路基板21を一体化するように固定した。この場合にも、回路基板21の切欠部22a,22bの幅はそのシートの幅、即ち、熱収縮性チューブ18の長さよりわずかに大きく作られる。
【0027】
また図1〜図4のいずれの構成にあっても、図5に示す変形実施例のように、圧電トランスの振動節点近傍を熱収縮性チューブ58a,58bで覆い固定することが可能である。ここで用いた圧電トランスは1波長モードで駆動しているため、振動節点は圧電トランスの長さ方向の両端から、それぞれ1/4の寸法であり、2カ所存在する。したがって、これらの振動節点に対応して複数の切欠部22a,22b,22c,22dを設けるとよい。
【0028】
さらに図6に示した変形実施例のように、圧電トランス振動子の長さ方向の半分の一方の領域を入力電極とし厚み方向に分極し、残りの一方に端面から1/4の長さの線状に出力電極を形成し、領域を2分割し、反対向きに分極した構成の場合は、高圧が出力される出力電極を振動節点で熱収縮性チューブにより、可撓性の絶縁板や回路基板と固定、一体化できるため、信頼性も高い。
【0029】
ここで圧電トランス電源の代表例の特性を表2に示す。評価に用いた圧電トランスは、一体積層品(10層)であり、負荷にはφ2mm×200mmの冷陰極管を用いた。表1には、従来の切欠部をもたない回路基板と本発明の切欠部有する回路基板の衝撃試験の結果を示す。本発明の構成とすることにより、回路基板の長さ方向の耐衝撃性が向上することがわかる。また表2にエージング結果を示すが1000時間後に特性の劣化は確認できない。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の圧電トランス及び圧電トランス電源を用いれば、基板あるいは回路基板に切欠部を設けることにより、カバー用絶縁シートを安定に固定できるため、長さ方向の耐衝撃性を向上でき、信頼性を十分確保しながら、容易に低背化を図ることができ、生産コストを低減出来ることから実用的効果は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る圧電トランスを示す斜視図。
【図2】本発明の第2の実施例に係る圧電トランスを示す斜視図。
【図3】本発明の第3の実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図。
【図4】本発明の第4の実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図。
【図5】本発明の変形実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図。
【図6】本発明の他の変形実施例に係る圧電トランス電源を示す斜視図。
【図7】一般的な圧電トランス電源の構成を示すブロック図。
【図8】従来の圧電トランスを示す斜視図。
【図9】従来の圧電トランス電源の一例の分解斜視図。
【図10】従来の圧電トランス電源の他例の斜視図。
【符号の説明】
11 圧電セラミック矩形板
12a,12b 入力用電極
13,63,64,65 出力用電極
21 回路基板
19 基板
15 ケース
16a〜c 線状導体
17 可撓性の絶縁板(FPC)
18 熱収縮性チューブ
58a,58b 熱収縮性チューブ
121a,121b,131 リード線
20a,20b,22a,22b,22c,22d 切欠部
Claims (4)
- 電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極とを有する圧電トランス部材と、前記圧電トランス部材を直接に配置した基板と、絶縁性のシートとを含み、前記基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランス部材に対応する位置に有し、前記圧電トランス部材及び前記基板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス。
- 電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極とを有する圧電トランス部材と、前記圧電トランス部材を可撓性の絶縁板を介して配置した基板と、絶縁性のシートとを含み、前記基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランス部材に対応する位置に有し、前記圧電トランス部材、前記基板、及び前記絶縁板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス。
- 電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極を有する圧電トランスと、前記圧電トランスを直接に配置しこれを駆動及び制御する回路基板と、絶縁性のシートとを含み、前記回路基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランスに対応する位置に有し、前記圧電トランス及び前記回路基板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス電源。
- 電力を入力するための少なくとも1組の入力用電極と電力を取り出すための少なくとも1つの出力電極を有する圧電トランスと、前記圧電トランスを可撓性の絶縁板を介して配置しこれを駆動及び制御する回路基板と、絶縁性のシートとを含み、前記回路基板は少なくとも1つの切欠部を前記圧電トランスに対応する位置に有し、前記圧電トランス、前記回路基板、及び前記絶縁板を前記切欠部に対応した位置で前記シートにより覆って一体化し固定したことを特徴とする圧電トランス電源。
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