JP3703132B2 - 電気メッキ等の電気化学的処理方法およびその電気化学的反応装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、超臨界または亜臨界二酸化炭素を用いて、各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、使用後の二酸化炭素および処理溶液等を合理的かつ迅速に処理するとともに、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、それらの再利用を図り、またメッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上する一方、各処理に要する浴槽を省略かつ小形軽量化し、設備費の軽減と設置スペ−スのコンパクト化を図れるようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法およびその電気化学的反応装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気メッキ工程は大別すると、前処理工程とメッキ工程、後処理工程に分けられる。このうち、前処理工程は脱脂洗浄や酸洗いを伴い、これらは通常、専用の浴槽に所定の処理液を収容して加温し、この処理液に被処理物を所定時間浸漬して行なっている。
したがって、複数の浴槽とその作業スペ−スを要して設備費が高価になるとともに、処理液の飛散や有害なガスが発生する状況下での作業を強いられて作業環境が悪く、しかも前記浸漬に長時間を要して生産性が悪い、という問題があった
【0003】
また、従来の脱脂洗浄にはアルカリ加熱、電解洗浄、溶剤洗浄、エマルジョン洗浄等種々の洗浄法が提案されているが、何れも薬剤の投入や特別の設備を要し、しかも各処理液に被処理物を浸漬し、若しくは処理液の蒸気中に晒すため、その後の水切りに時間が掛かる問題がある。
【0004】
このような問題を解決するものとして、例えば特開2000−63891号公報では、被洗浄物を収容する小容積のチャンバ−に超臨界状態の二酸化炭素を供給して接触させ、同時に被洗浄物を加熱し若しくは振動させて、被洗浄物に付着したPCBを溶解し除去するようにしている。
【0005】
しかし、この従来の洗浄装置は、洗浄後、超臨界状態の二酸化炭素をすべて大気へ排出しているため、前記チャンバ−より大容積の電気メッキ製品の洗浄には、前記二酸化炭素の消費量が増大して高価になり、また前記二酸化炭素の排出に伴う作業環境の劣化が予想されて、採用できない。
【0006】
また、従来のメッキ工程は、メッキ槽に隣接して複数の水洗いを要し、その主要な水洗槽に常時給水するため、設備費が高価になり水の使用料が嵩む等の問題がある。
更に、メッキ槽から被メッキ物を取り出す際のメッキ液の回収、いわゆるくみ戻しが非常に煩雑で手間が掛かり、しかもその回収液に濃縮を要する等して、生産性が非常に低かった。
【0007】
一方、従来の電気メッキは、概してメッキのつき廻りが悪く、電流密度の低い被処理物の裏面や凹部にはメッキが殆ど付かないため、当該部をメッキする場合、それらの向きを変えてメッキするか、当該部に補助極を配置する面倒があり、異形の被処理物のメッキに対応し難い。また、従来の後処理工程は、メッキ後水洗いし湯洗いして乾燥していたが、それらに時間が掛かり生産性が悪かった。
【0008】
更に、メッキ工場から排出される廃水は、その水質を法規制されているが、メッキ作業から発生する排水のうち、洗浄排水は一般に所定の薬品を添加し無害化処理してから、PH調整により重金属を水酸化物として除去し、濃厚排水は洗浄排水に少しづつ加えて処理するか、別途処理し、その処理液を薄い洗浄排水中に混合して処理していた。
しかし、従来の排水処理は高価な設備と種々の薬品、多量の水と多くの時間を要し、生産性が非常に悪かった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、超臨界または亜臨界二酸化炭素を用いて、各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、使用後の二酸化炭素および処理溶液等を合理的かつ迅速に処理するとともに、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、それらの再利用を図り、またメッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上する一方、各処理に要する浴槽を省略かつ小形軽量化し、設備費の軽減と設置スペ−スのコンパクト化を図れるようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法およびその電気化学的反応装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、電解物質と、陰極および陽極の電極物質とを収容可能な反応浴槽を超臨界または亜臨界状態に形成し、前記状態の下で前記一方の電極物質を電解し、若しくは前記電解した電極物質およびまたは電解質溶液に含まれる電解物質を他方の電極物質に析出付着する電気メッキ等の電気化学的処理方法において、前記電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態の物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入し、前記反応浴槽内を超臨界状態または亜臨界で乳濁させるようにして、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、電解物質の電解前、または電解時における各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、メッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上するとともに、これを電鋳法や陽極酸化皮膜形成法、電解研磨法に適用可能にし、その生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られるようにしている。
【0011】
請求項2の発明は、電解物質を収容可能な反応浴槽に陰極および陽極の電極物質を収容し、前記電極物質を電解し、これを他方の電極物質側で採集するようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法において、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態の物質と界面活性剤とを導入し、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁させるようにして、金属の電解抽出、精錬法に適用可能にし、生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られるようにしている。
請求項3の発明は、前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間させて収容するようにして、それらの個々の使用量を低減し、均質で合理的かつ安価な電気化学的処理を実現可能にしている。
【0012】
請求項4の発明は、少量の電解物質と界面活性剤とを収容するようにして、電解物質と界面活性剤の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現し、生産性の向上を図るようにしている。
請求項5の発明は、前記電極物質若しくは電解物質の電解前に、酸化皮膜除去溶液と界面活性剤と超臨界または亜臨界状態形成物質とを前記反応浴槽に導入して乳濁し、前記電極物質浄若しくは酸化皮膜除去を、合理的かつ迅速にしかも精度良く行なえ、またその乾燥を促すようにしている。
【0013】
請求項6の発明は、前記電極物質若しくは電解物質の電解後に、超臨界または亜臨界状態形成物質を前記反応浴槽に導入し、前記電極物質若しくは電解物質採集側をきめ細かく洗浄し、若しくは乾燥するようにして、それらの処理を合理的かつ迅速に、しかも高精度に行ない、その乾燥を促すようにしている。
請求項7の発明は、前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質、電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤等を貯留させ、それらの排出を制止し、その再生を図って、合理的かつ有効な使用を図り、生産性を向上し得るようにしている。
【0014】
請求項8の発明は、前記貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流し、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を再生して各溶液槽に還流するようにして、使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質や、使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去物質、界面活性剤等の有効利用を図るようにしている。
請求項9の発明は、前記電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理するようにして、処理工程毎の浴槽を廃し、設備費の低減と設置スペースのコンパクト化を図るとともに、前記浴槽毎に被処理物を移動する煩雑を解消し、その作業能率を向上するようにしている。
【0015】
請求項10の発明は、前記電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行するようにして、複数の反応浴槽で一連の処理工程を二つに分け、こ処理を交互に行なわせ、一連の処理作業を合理的かつ迅速に行なうようにしている。
請求項11の発明は、前記電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着するようにして、被処理物を反応浴槽から搬出することなく、次層の電極物質の前処理、析出付着を続行可能にし、作業性と生産性を向上するようにしている。
【0016】
請求項12の発明は、電解物質と、陰極および陽極の電極物質とを収容可能な反応浴槽を超臨界または亜臨界状態に形成し、前記状態の下で前記一方の電極物質を電解し、若しくは前記電解した電極物質およびまたは電解質溶液に含まれる電解物質を他方の電極物質に析出付着可能にした電気メッキ等の電気化学的反応装置において、前記電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態の物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁可能にし、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、電解物質の電解前、または電解時における各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、メッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上するとともに、これを電鋳法や陽極酸化皮膜形成法、電解研磨法に適用可能にし、その生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られるようにしている。
【0017】
請求項13の発明は、電解物質を収容可能な反応浴槽に陰極および陽極の電極物質を収容可能に設け、前記電極物質を電解し、これを他方の電極物質側で採集可能にした電気メッキ等の電気化学的反応装置において、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態の物質と界面活性剤とを導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁可能にして、金属の電解抽出、精錬法に適用可能にし、生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られるようにしている。
請求項14の発明は、前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間して収容可能にして、それらの個々の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現可能にしている。
【0018】
請求項15の発明は、少量の電解物質と界面活性剤とを収容可能にして、電解物質と界面活性剤の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現し、生産性の向上を図るようにしている。
請求項16の発明は、前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質若しくは電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を貯留可能にし、それらの排出を制止し、その再生を図って、合理的かつ有効な使用を図り、生産性を向上し得るようにしている。
【0019】
請求項17の発明は、前記貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流可能に設け、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または界面活性剤、洗浄若しくは酸化皮膜除去物質等を再生して再利用可能にし、使用後の超臨界または亜臨界形成物質や、使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去物質、界面活性剤等の有効利用を図るようにしている。
請求項18の発明は、前記電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理可能にして、処理工程毎の浴槽を廃し、設備費の低減と設置スペースのコンパクト化を図るとともに、前記浴槽毎に被処理物を移動する煩雑を解消し、その作業能率を向上するようにしている。
【0020】
請求項19の発明は、前記電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行可能にし、複数の反応浴槽で一連の処理工程を二つに分け、この処理を交互に行なわせて、一連の処理作業を合理的かつ迅速に行なうようにしている。
請求項2の発明は、前記電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着可能にして、被処理物を反応浴槽から搬出することなく、次層の電極物質の前処理、析出付着を続行可能にし、作業性と生産性を向上するようにしている。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を電気化学的処理法である電気メッキ(ニッケルメッキ)に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図7において1は電気化学的反応浴槽であるステンレス鋼製のメッキ槽で、その内面を塩化ビニ−ルや硬質ゴムでライニングしており、その上側の開口部に蓋体(図示略)が気密かつ着脱可能に装着されている。
【0022】
前記メッキ槽1の外部に外部電界である直流電源2が設けられ、その正極側に導通する電極物質である陽極3と、負極側に導通する、電極物質でかつ被処理物である陰極4とがメッキ槽1に収容可能にされている。実施形態では陽極3に純ニッケル板、陰極4にハルセル試験用真鍮板が使用されている。
【0023】
図中、5は電源2の給電回路に挿入されたスイッチで、電気化学的反応時、つまり電気メッキ時にのみONされ、陽極3および陰極4に通電可能にしている。6はメッキ槽1の底部に設けたスタ−ラ等の攪拌子2で、メッキ槽1に導入された超臨界物質である後述の二酸化炭素と、界面活性剤を含む電解質溶液若しくは酸溶液とを攪拌可能にしている。
【0024】
前記メッキ槽1の外部に、超臨界物質である二酸化炭素7を高圧に加圧して収容したガス容器8と、互いに異種の電解質溶液9、10を収容した電解質溶液槽11,12と、PH7およびそれ以下の酸溶液13を収容した酸溶液槽14と、使用後の二酸化炭素15を収容するガス溜槽16と、使用後の界面活性剤を含む酸溶液17、若しくは使用後の界面活性剤を含む電解質溶液18,19を収容する、複数の貯留槽である液溜槽20〜22が配置されている。
【0025】
これらの液溜槽20〜22には、前記各溶液槽11,12,14に連通するリタ−ンパイプ49〜51が接続され、使用後の各溶液17〜19を界面活性剤と分離し、または分離せずに若干高濃度に調製して再生後、これを各溶液槽11 , 12 , 14へ還流させている。
【0026】
前記ガス容器8は導管23を介してメッキ槽1の上部に連通し、該管23に圧縮ポンプ24とバルブ25が介挿されている。前記圧縮ポンプ24は、二酸化炭素7を所定圧、実施形態では二酸化炭素7をその臨界圧7.38MPa以上の10.0MPaに加圧可能にしている。この場合、二酸化炭素7を超臨界に限らず、亜臨界状態に加圧して以降の処理を実行することも可能である。
【0027】
前記バルブ25は、メッキ作業の各処理工程、つまり脱脂処理、酸化皮膜除去、いわゆる酸洗い処理、メッキ処理、乾燥の各処理前と、前記各工程の間に実行する陰極4の洗浄工程時に一定時間開弁し、超臨界状態の二酸化炭素7をメッキ槽1に導入可能にしている。
前記導管23の下流側にヒ−タ等の加熱手段26が配置され、前記二酸化炭素7をその臨界温度31.1℃以上に加熱可能にしている。
【0028】
前記各槽11〜13は導管27〜29を介してメッキ槽1の下部に連通し、該管27〜29にバルブ30〜32と、共用の送液ポンプ33が介挿されている。このうち、前記バルブ30,31は、メッキ処理前に一定時間開弁し、所定の界面活性剤を含む電解質溶液9,10を、送液ポンプ33を介してメッキ槽1に導入可能にしている。
【0029】
前記バルブ32は酸洗い前に一定時間開弁し、所定の界面活性剤を含む酸溶液13を、送液ポンプ33を介してメッキ槽1に導入可能にしている。図中、34〜36は前記電解質溶液9,10および酸溶液13に添加する界面活性剤で、前記溶液9,10,13の供給時に適宜ポンプ(図示略)を介して導入可能にしている。
【0030】
前記ガス溜槽15は導管37を介してメッキ槽1の上部に連通し、該管37にバルブ38が介挿されている。前記バルブ38は脱脂処理、酸洗い、メッキ処理、乾燥の各処理前、およびそれらの間に行なう被処理物4の洗浄前に一定時間開弁し、使用後の二酸化炭素15をガス溜槽15に導入可能にしている。
【0031】
図中、39は前記ガス溜槽15に一端を接続したリターンパイプで、他端を前記圧縮ポンプ24に接続し、該パイプ39に水および油脂分を吸収可能なカラム40を挿入している。
そして、ガス溜槽15に所定量の二酸化炭素15が貯留された際、前記二酸化炭素15をカラム40へ導いて初期状態に再生し、これを前記圧縮機24へ還流可能にしている。
【0032】
前記液溜槽20〜22は導管41〜43を介してメッキ槽1の下部に連通し、これらの各管41〜43にバルブ44〜46が介挿されている。このうち、前記バルブ44は陰極4の酸洗い後、一定時間開弁し、使用後の酸洗い溶液17を界面活性剤36と一緒に液溜槽20へ導入可能にしている。
また、前記バルブ45,46は各メッキ処理後、一定時間開弁し、使用後の電解質溶液18,19を界面活性剤34,35と一緒に液溜槽21,22へ導入可能にしている。
【0033】
この他、図中47は前記送液ポンプ33および導管27〜29に並列に介挿した洗浄水槽で、各溶液9,10,13をメッキ槽1に送液後、前記ポンプ33内を洗浄可能にしている。48はアルコール等の有機溶媒からなるエントレーナで、ガス容器8と圧縮機24との間の導管23に選択的に導入し、しつこい油脂分を脱脂可能にしている。
【0034】
このように構成した電気メッキ等の電気化学的反応装置は、メッキ前処理、つまり脱脂、酸洗い、洗浄の各処理、メッキ処理、メッキ後処理、つまり被処理物4の回収、乾燥の多工程を単一のメッキ槽1で行っているから、各処理毎に専用の浴槽を要する従来のメッキ処理法および設備に比べて、構成が簡単で設置スペ−スがコンパクトになり、設備費の低減を図れる。
【0035】
また、本発明装置は、前記脱脂、酸洗い、洗浄、メッキ処理乾燥の各作業から排出する種々の排出物、つまり二酸化炭素や界面活性剤を含む酸洗い溶液や電解質溶液をガス溜槽16や複数の液溜槽20〜22に排出し、外部への排出を回避するとともに、これを合理的に処理しているから、従来のような高価かつ大形の排水処理設備を要しない。
【0036】
しかも、前記各処理は非常に良好な拡散性を有する超臨界二酸化炭素を利用して行なっているから、メッキ液に被処理物を浸漬する従来のメッキ法に比べて、酸溶液や電解質溶液の使用量が非常に少量で足り、したがってそれらの使用量の節減と排出処理設備の小形軽量化を図れる。
更に、前記各処理を超臨界二酸化炭素を利用して行ない、溶液や水の使用を可及的に抑制したから、前記排水処理設備の省略化を図れるとともに、被処理物の洗浄や回収、乾燥、電解質溶液の回収を容易かつ速やかに行える。
【0037】
また、本発明装置は超臨界物質として、比較的低温かつ低圧の臨界点を持つ二酸化炭素を使用しているから、超臨界状態を比較的小さなエネルギ−で容易かつ速やかに得られ、その使用コストの低減を図れるとともに、メッキ槽1の耐圧強度の緩和を図れ、これを安価に製作できる。
【0038】
このような電気化学的反応装置を使用して電気メッキを行なう場合は、電極3,4の通電停止状況の下で、先ずメッキ槽1の負極側に、例えば表面を研磨処理し終えた被処理物4を取り付け、蓋(図示略)を閉めてメッキ槽1を密閉する。
次に圧縮ポンプ24を駆動し、加熱手段26を作動してガス容器8を開弁し、内部の二酸化炭素を圧縮ポンプ24へ導き、これを臨界圧以上の高圧に加圧し、更に加熱手段26で臨界温度以上に加熱して、超臨界二酸化炭素を生成し、これをバルブ25の開弁を介してしてメッキ槽1へ導入する。
【0039】
前記超臨界二酸化炭素はメッキ槽1に高速に拡散し、該槽1内の二酸化炭素も超臨界状態になって前記被処理物4に接触し、該被処理物4および陽極3に付着している油脂分や水分、異物等を高速かつ効率良く洗浄する。
その際、撹拌子6を作動して超臨界二酸化炭素を撹拌すれば、前記拡散が一様化され洗浄能率が向上する。
しかも、従来のエマルジョン洗浄のような水、溶液の使用を廃しているから、その分被処理物4の乾燥が促される。
【0040】
このように本発明は超臨界状態の下で被処理物4の脱脂洗浄を行なっているから、被処理物を脱脂液に浸漬する従来の方法に比べて、有害な脱脂剤の使用をなくし、作業環境を改善して、これを安全で迅速かつ容易に行えるとともに、メッキ槽1で脱脂洗浄を行なっているから、従来のような専用の脱脂槽を要せず、その分設備費の低減を図れる。
【0041】
そして、所定時間洗浄後、バルブ38を開弁し、代わりにバルブ25を閉じて圧縮ポンプ24の駆動を停止する。
このようにすると、前記二酸化炭素が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、急激に気化または液化してメッキ槽1内を上方へ移動し、導管37に導かれてガス溜槽16へ移動する。この状況は図2のようである。
【0042】
したがって、前記二酸化炭素に捕集された油脂分や水分、異物等がガス溜槽16へ移動し、かつ前記二酸化炭素の移動時に系に流れが発生して、陽極3および被処理物4を洗浄し、前述の洗浄と相俟って洗浄精度を高める。こうして使用後の二酸化炭素15をガス溜槽16へ排出後、バルブ38を閉じる。
【0043】
次に前記洗浄後、被処理物4を酸洗いする。この酸洗いに際しては、前記通電停止状態とメッキ槽1の気密状態の下でバルブ32を開弁し、酸溶液槽14内の酸溶液13を送液ポンプ33へ送り出し、同時に前記酸溶液13に所定の界面活性剤36を加えて、これらをメッキ槽1内へ送り込む。
【0044】
前記酸溶液13と界面活性剤36は、図3(a)のようにメッキ槽1内で二層を形成する。この状況の下で圧縮ポンプ24を駆動し、加熱手段26を作動してガス容器8を開弁し、内部の二酸化炭素を圧縮ポンプ24へ導き、これを臨界圧以上の高圧に加圧し、更に前記二酸化炭素を加熱手段26で臨界温度以上に加熱して、超臨界二酸化炭素を生成し、これをバルブ25を開弁してメッキ槽1へ導入する。
【0045】
こうして、超臨界二酸化炭素がメッキ槽1へ導かれると、これがメッキ槽1に高速に拡散して、前記酸溶液13と界面活性剤36に急速に混合して乳濁させ、その微粒子が被処理物4の表面に接触し、被処理物4表面の錆を落とし酸化皮膜を除去して、表面を活性化する。
この状況は図3(b)のようで、その際撹拌子6を作動し、前記乳濁物質を撹拌すれば、前記拡散が均一化され、酸化皮膜が均一かつ効率良く除去されて、酸洗い能率が向上する。
【0046】
そして、所定時間酸洗い後、バルブ44を開弁すると、臨界二酸化炭素が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、メッキ槽1内に使用後の酸溶液13と界面活性剤36との二層状態が回復される。この状況は図3(c)のようである。
その間、バルブ25から高圧の二酸化炭素がメッキ槽1内に導入され、その圧力によって使用後の酸溶液13と界面活性剤36とが押し出され、これが導管41に導かれて液溜槽20へ移動して収容される。この状況は図4のようである。
【0047】
このように本発明は超臨界状態の下で被処理物4の酸化皮膜を除去しているから、被処理物を酸溶液に浸漬する従来の酸洗い法に比べて、酸溶液の使用量を低減し、これを迅速かつ容易に行えるとともに、メッキ槽1で酸洗いを行なっているから、従来のような専用の酸洗い槽を要せず、その分設備費の低減を図れる。
【0048】
こうして、酸溶液17を排出し終えたところで、前記バルブ44を閉弁し、代わりにバルブ38を開弁して、メッキ槽1内の使用後の二酸化炭素を前記導入下の二酸化炭素によって押し出し、これを導管37に導いてガス溜槽15へ移動し、収容する。
その際、前記二酸化炭素の移動時に系に流れが発生して、陽極3および被処理物4を洗浄する。この状況は図4のようである。
この場合、酸溶液17と使用後の二酸化炭素の排出順序を前述と反対にしても良いが、前述のようにすれば両者を能率良く精密に排出できる。
【0049】
そして、使用後の二酸化炭素を排出後、バルブ38を閉じ、所定時間高圧の二酸化炭素7をメッキ槽1内に導入する。
このようにすると、メッキ槽1内が加圧かつ加温され、二酸化炭素の臨界状態が形成されて、この超臨界二酸化炭素が被処理物4に接触し、該被処理物4および陽極3に付着している水分を高速かつ効率良く洗浄し乾燥する。
その際、撹拌子6を作動して超臨界二酸化炭素を撹拌すれば、前記拡散が増進され洗浄能率が向上する。
【0050】
こうして被処理物4を洗浄し乾燥後、圧縮ポンプ24を停止しバルブ25を閉じて、二酸化炭素の導入を停止し、代わりにバルブ38を開弁し、メッキ槽1内の使用後の二酸化炭素を導管37に導き、ガス溜槽15へ移動して収容する。
その際、前記二酸化炭素の移動時に系に流れが発生して、陽極3および被処理物4を洗浄する。この状況は図4のようである。
したがって、メッキ槽1内に前記種々の前処理を終え、乾燥された被処理物4が置かれている。
【0051】
このような状況の下でバルブ30または31、この例ではバルブ30を開弁し、電解質溶液槽11内の電解質溶液9を送液ポンプ33へ送り出し、同時に前記溶液9に所定の界面活性剤34を加えて、これらをメッキ槽1内へ送り込む。
【0052】
前記電解質溶液9と界面活性剤34は、図5(a)のようにメッキ槽1内で二層を形成する。この状況の下で圧縮ポンプ24を駆動し、加熱手段26を作動してガス容器8を開弁し、内部の二酸化炭素7を圧縮ポンプ24へ導き、これを臨界圧以上の高圧に加圧し、更に前記二酸化炭素を加熱手段26で臨界温度以上に加熱して、超臨界二酸化炭素を生成し、これをバルブ25の開弁を介してしてメッキ槽1へ導入する。
【0053】
こうして、超臨界二酸化炭素がメッキ槽1へ導かれると、これがメッキ槽1に高速に拡散し、前記電解質溶液9と界面活性剤34に急速に混合して乳濁化し、電解質溶液9の微粒子がメッキ槽1内に高密度に拡散し、被処理物4の表面に接触する。
【0054】
この状況の下でスイッチ5を閉じ、陽極3および陰極4に通電すると、陽極片である純ニッケルが電解して乳濁化した電解質溶液9に析出し、これが被処理物4の表面に付着する。
その際、撹拌子6を作動し、前記乳濁物質を撹拌して前記電解ニッケルイオンを均一に分布させ、被処理物4の表面に緻密に付着させる。この状況は図5(b)のようである。
【0055】
しかも、前記電解ニッケルイオンの電解、析出および付着を超臨界状態で行なっているから、電解ニッケルイオンがメッキ槽1内を速やかに拡散し、かつ高密度で均一に分布して、被処理物4の表面および裏面に付着する。
したがって、電解質溶液中で陽極物質を電解し析出、付着する従来のメッキ法に比べて、いわゆるメッキのつき廻りが非常に良く、被処理物4の表面および裏面に均一かつ緻密なメッキ状態を得られ、良好な仕上がり面を得られる。
【0056】
このため、従来のメッキ法のように、被処理物4の表面と裏面のメッキを分けて行なう面倒がなく、その分生産性を向上でき、しかも被処理物4が複雑な形状の場合でも、補助極を要することなく容易に対応できる。
【0057】
前記メッキ工程終了後、スイッチ5をOFFし、撹拌子6を停止してバルブ45を開弁すると、前記二酸化炭素が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、急激に気化または液化するとともに、電解質溶液10と界面活性剤34とが二層状態を回復する。この状況は図5(c)のようである。
【0058】
この後、バルブ45を開弁し、使用後の電解質溶液18を界面活性剤34と一緒にメッキ槽1から押し出し、これを導管42から液溜槽21へ導いて収容するそして、電解質溶液18を排出後、バルブ45を閉じ、代わりにバルブ38を開いて使用後の二酸化炭素をメッキ槽1から押し出し、これを導管37からガス溜槽16へ導いて収容する。
その際、前記二酸化炭素の移動時に系に流れが発生して、陽極3および被処理物4を洗浄する。
【0059】
使用後の二酸化炭素を排出後、バルブ38を閉じ、かつその間バルブ25を開弁して、高圧の二酸化炭素7をメッキ槽1に導入する。
このようにすると、メッキ槽1内が加圧かつ加温され、二酸化炭素の超臨界状態が形成されて、この超臨界二酸化炭素が被処理物4に接触し、該被処理物4および陽極3に付着している水分を高速かつ効率良く洗浄し乾燥する。
その際、撹拌子6を作動して超臨界二酸化炭素を撹拌すれば、前記拡散が増進され洗浄能率が向上する。
【0060】
こうして被処理物4を洗浄し乾燥後、圧縮ポンプ24を停止しバルブ25を閉じて、二酸化炭素の導入を停止し、メッキ槽1の蓋(図示略)を開けて、メッキ処理後の被処理物4を取り出せば、一連のメッキ作業が終了する。
【0061】
なお、使用後の二酸化炭素がガス溜槽16に所定量貯留されると、その外部のバルブを開弁し、前記使用後の二酸化炭素をリターンパイプ39を介してカラム40へ導き、該カラム40で前記ニ酸化炭素中の水および油脂分を吸収し、初期状態に再生して適時、圧縮ポンプ24へ還流し、再利用する。
したがって、使用後の二酸化炭素を大気中へ放出する無駄を解消し、また前記放出による作業環境の悪化を未然に防止し得る。
【0062】
また、使用後の酸溶液17および電解質溶液18,19が液溜槽20〜22に所定量貯留されると、これらを混入した界面活性剤と分離し、または分離せずに若干高濃度に調製して再生後、各溶液槽11,12,14へ還流する。
したがって、従来のように被処理物4を回収後、メッキ液等の煩雑な汲み戻しや濃縮調整の面倒がない。
【0063】
なお、被処理物4に複数のメッキ層を形成する、いわゆる重ねメッキを行なう場合は、一層目のメッキ終了後、被処理物4をメッキ槽1から取り出すことなく、前述の前処理を実行してメッキ処理すれば良い。
したがって従来の重ねメッキのように、メッキ終了後、被処理物4をメッキ槽からいちいち取り出し、これを各槽へ移動して前処理を行なう面倒がなく、生産性が向上する。
【0064】
図8は本発明の他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分には同一の符号を用いている。なお、図8は実施形態の要部のみを図示し、各反応浴槽1,1aに対する超臨界または亜臨界ニ酸化炭素の供給と排出、並びに貯留部分の構成、および各種溶液の供給と排出、並びに貯留部分の構成は図示を省略しており、当該部は図1と実質的に同一である。
【0065】
この実施形態は、実質的に同一な反応浴槽1,1aを複数、実施形態では2つ並設し、これらを導管52,53で連通し、該導管52,53にバルブ54,55を介挿する。
これらの反応浴槽1,1aは、同一の処理工程を交互に実行可能で、一方の反応浴槽1で一連のメッキ処理工程の一部、例えば前処理、他方の反応浴槽1aで一連のメッキ処理工程の残部、例えばメッキ処理と後処理とを実行させ、一連のメッキ処理を実現させている。
【0066】
すなわち、一方の反応浴槽1で被処理物4のメッキ処理工程の一部、例えば脱脂洗浄、酸洗い等の前処理を行ない、使用後の各種ガスおよび溶液を前記貯留槽(図示略)に収容する。
他方の反応浴槽1aでは既に前記前処理工程を終えてメッキ処理を実行し、かつメッキ処理後の被処理物4を回収、洗浄、乾燥し、使用後の各種ガスおよび溶液を前記貯留槽(図示略)に収容する。この状況はステップ1のようである。この場合、反応浴槽1aに対する二酸化炭素は、バルブ54より下流側の導管52に導入する。
【0067】
次にステップ2では、反応浴槽1が既に前処理工程を終えてメッキ処理を実行し、かつメッキ処理後の被処理物4を回収、洗浄、乾燥し、使用後の各種ガスおよび溶液を前記貯留槽(図示略)に収容する。
一方、反応浴槽1aでは前記メッキ処理を終えて、新たな被処理物4を取り付け、該被処理物4の脱脂洗浄、酸洗い等の前処理を行ない、使用後の各種ガスおよび溶液を前記貯留槽(図示略)に収容する。
【0068】
このようにこの実施形態では、複数の反応浴槽1,1aでメッキ処理工程の前後処理、つまり全処理工程の一部とその残部処理を交互に行わせて、一連のメッキ作業を合理的かつ迅速に行なうようにしている。
【0069】
なお、前述の実施形態のように電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着する方法は、原理的に同様な電鋳および陽極酸化皮膜形成法に適用することができ、前述と同様な効果を得られる。
また、反応浴槽に電解物質と電極物質を収容し、一方の電極物質を電解し、これを他方の電極物質側で採集する電解法にも、本発明を適用することが可能であり、そのようにすることで、例えば金属の電解精製、電解抽出、電解研磨等に適用することができ、前述と同様な効果を得られる。
【0070】
また、電解物質を収容可能な反応浴槽に被処理物を収容し、電解質溶液に含まれる電解物質を前記被処理物に析出付着し、外部電界を加えない無電解メッキや化成処理法にも本発明を適用することが可能であり、そのようにすることで前述と同様な効果を得られる。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態形成物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入し、前記反応浴槽内を超臨界状態または亜臨界で乳濁させるようにしたから、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、電解物質の電解前、または電解時における各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上できるとともに、メッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上するとともに、これを電鋳法や陽極酸化皮膜形成法、電解研磨法に適用可能にし、その生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られる効果がある。
【0072】
請求項2の発明は、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態の物質と界面活性剤とを導入し、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁させるようにしたから、金属の電解抽出、精錬法に適用可能にし、生産性の向上と良好な仕上がり状態を得ることができる 請求項3の発明は、前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間させて収容するようにしたから、それらの個々の使用量を低減し、均質で合理的かつ安価な電気化学的処理を実現することができる。
請求項4の発明は、少量の電解物質と界面活性剤とを収容するようにしたから、電解物質と界面活性剤の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現し、生産性の向上を図ることができる。
【0073】
請求項5の発明は、前記電極物質若しくは電解物質の電解前に、酸化皮膜除去溶液と界面活性剤と超臨界または亜臨界状態形成物質とを前記反応浴槽に導入して乳濁し、前記電極物質浄若しくは酸化皮膜除去を、合理的かつ迅速にしかも精度良く行なえ、またその乾燥を促すことができる。
請求項6の発明は、電極物質若しくは電解物質の電解に、超臨界または亜臨界状態形成物質を前記反応浴槽に導入し、前記電極物質若しくは電解物質採集側をきめ細かく洗浄し、若しくは乾燥するようにしたから、それらの処理を合理的かつ迅速に、しかも高精度に行なえ、その乾燥を促すことができる。
請求項7の発明は、前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質、電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤等を貯留させたから、それらの排出を制止し、その再生を図って、合理的かつ有効な使用を図り、生産性を向上することができる。
【0074】
請求項8の発明は、貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流し、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を再生して各溶液槽に還流するようにしたから、使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質や、使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去物質、界面活性剤等の有効利用を図ることができる。
請求項9の発明は、電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理するようにしたから、処理工程毎の浴槽を廃し、設備費の低減と設置スペースのコンパクト化を図るとともに、前記浴槽毎に被処理物を移動する煩雑を解消し、その作業能率を向上することができる。
【0075】
請求項10の発明は、前記電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行するようにしたから、複数の反応浴槽で一連の処理工程を二つに分け、この処理を交互に行なわせ、一連の処理作業を合理的かつ迅速に行なうことができる。
請求項11の発明は、前記電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着するようにしたから、被処理物を反応浴槽から搬出することなく、次層の電極物質の前処理、析出付着を続行可能にし、作業性と生産性を向上することができる
【0076】
請求項12の発明は、電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態形成物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁可能にしたから、例えば電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、電解物質の電解前、または電解時における各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行なえ、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、メッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上するとともに、これを電鋳法や陽極酸化皮膜形成法、電解研磨法に適用可能にし、その生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られる効果がある。
【0077】
請求項13の発明は、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態の物質と界面活性剤とを導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁可能にしたから、金属の電解抽出、精錬法に適用可能にし、生産性の向上と良好な仕上がり状態を得られ効果がある。
請求項14の発明は、前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間して収容可能にしたから、それらの個々の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現することができる。
請求項15の発明は、少量の電解物質と界面活性剤とを収容可能にしたから、電解物質と界面活性剤の使用量を低減し、合理的かつ安価な電気化学的処理を実現し、生産性の向上を図ることができる。
請求項16の発明は、前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質若しくは電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を貯留可能にしたから、それらの排出を制止し、その再生を図って、合理的かつ有効な使用を図り、生産性を向上することができる。
【0078】
請求項17の発明は、前記貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流可能に設け、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または界面活性剤、洗浄若しくは酸化皮膜除去物質を再生して再利用可能にしたから、使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質や、使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去物質、界面活性剤等の有効利用を図ることができる。
請求項18の発明は、電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理可能にしたから、処理工程毎の浴槽を廃し、設備費の低減と設置スペースのコンパクト化を図るとともに、前記浴槽毎に被処理物を移動する煩雑を解消し、その作業能率を向上することができる。
【0079】
請求項19の発明は、電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行可能にしたから、複数の反応浴槽で一連の処理工程を二つに分け、この処理を交互に行なわせて、一連の処理作業を合理的かつ迅速に行なうことができる。
請求項20の発明は、電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着可能にしたから、被処理物を反応浴槽から搬出することなく、次層の電極物質の前処理、析出付着を続行可能にし、作業性と生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図で、単一の反応浴槽を用いてメッキ処理の多工程を実施させている。
【図2】前記メッキ処理の脱脂および洗浄処理工程を示す説明図である。
【図3】前記メッキ処理の酸化皮膜除去および被処理物活性化処理工程を順に示す説明図である。
【図4】前記メッキ処理の酸溶液排出および洗浄工程を示す説明図である。
【図5】前記メッキ処理のメッキ工程を順に示す説明図である。
【図6】前記メッキ処理の電解質溶液排出および洗浄工程を示す説明図である。
【図7】前記メッキ処理の乾燥および洗浄工程を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の要部を示す説明図で、二つの反応浴槽を用いてメッキ処理の前後処理工程を実施させている。
【符号の説明】
1,1a 反応浴槽
3 電極物質(陽極)
4 電極物質(陰極)
9,11 電解質溶液
13 酸溶液(酸化皮膜除去溶液)
20〜22 貯留槽
34〜36 界面活性剤

Claims (20)

  1. 電解物質と、陰極および陽極の電極物質とを収容可能な反応浴槽を超臨界または亜臨界状態に形成し、前記状態の下で前記一方の電極物質を電解し、若しくは前記電解した電極物質およびまたは電解質溶液に含まれる電解物質を他方の電極物質に析出付着する電気メッキ等の電気化学的処理方法において、前記電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態の物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入し、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁させることを特徴とする電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  2. 電解物質を収容可能な反応浴槽に陰極および陽極の電極物質を収容し、前記電極物質を電解し、これを他方の電極物質側で採集するようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法において、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態形成物質と界面活性剤とを導入し、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁させることを特徴とする電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  3. 前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間させて収容する請求項1または2記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  4. 少量の電解物質と界面活性剤とを収容する請求項3記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  5. 前記電極物質若しくは電解物質の電解前に、酸化皮膜除去溶液と界面活性剤と超臨界または亜臨界状態形成物質とを前記反応浴槽に導入して乳濁し、前記電極物質を洗浄し、若しくは酸化皮膜を除去する請求項1または2記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  6. 前記電極物質若しくは電解物質の電解後に、超臨界または亜臨界状態形成物質を前記反応浴槽に導入し、前記電極物質若しくは電解物質採集側を洗浄し、若しくは乾燥する請求項1または2記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  7. 前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質、電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を貯留させる請求項1または2または5記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  8. 前記貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流し、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を再生して各溶液槽に還流する請求項記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  9. 前記電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理する請求項1または2記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  10. 前記電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行する請求項1または2記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  11. 前記電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着する請求項1記載の電気メッキ等の電気化学的処理方法。
  12. 電解物質と、陰極および陽極の電極物質とを収容可能な反応浴槽を超臨界または亜臨界状態に形成し、前記状態の下で前記一方の電極物質を電解し、若しくは前記電解した電極物質およびまたは電解質溶液に含まれる電解物質を他方の電極物質に析出付着可能にした電気メッキ等の電気化学的反応装置において、前記電極物質若しくは電解物質の電解前、または電解時に、超臨界または亜臨界状態の物質と電解物質と界面活性剤とを前記反応浴槽に導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界状態または亜臨界で乳濁可能にしたことを特徴とする電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  13. 電解物質を収容可能な反応浴槽に陰極および陽極の電極物質を収容可能に設け、前記電極物質を電解し、これを他方の電極物質側で採集可能にした電気メッキ等の電気化学的反応装置において、前記反応浴槽に超臨界または亜臨界状態形成物質と界面活性剤とを導入可能にし、前記反応浴槽内を超臨界または亜臨界状態で乳濁可能にしたことを特徴とする電気メッキ等の電気化学的反応装置
  14. 前記電解物質と界面活性剤とを、前記電極物質と離間して収容可能にした請求項12または13記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  15. 少量の電解物質と界面活性剤とを収容可能にした請求項14記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  16. 前記反応浴槽の外部に前記反応浴槽に連通可能な貯留槽を設け、該貯留槽に使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質若しくは電解物質または洗浄若しくは酸化皮膜除去溶液、界面活性剤を貯留可能にした請求項11または13記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  17. 前記貯留槽に貯留した使用後の超臨界または亜臨界状態形成物質を再生して反応浴槽に還流可能に設け、または前記貯留槽に貯留した使用後の電解物質または界面活性剤、洗浄若しくは酸化皮膜除去物質を再生して再利用可能にした請求項16記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  18. 前記電極物質の析出付着およびその前処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前処理工程を、単一の反応浴槽で処理可能にした請求項13または14記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  19. 前記電極物質の析出付着およびその前後の処理工程または前記電解物質の電解および採集並びにその前後の処理工程を実行可能な少なくとも二つの反応浴槽を設け、この一方の反応浴槽で前記処理工程の一部を実行し、他方の反応浴槽で前記処理工程の残部を実行し、かつこれらの処理を前記反応浴槽間で交互に実行可能にした請求項1または1記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
  20. 前記電極物質を電解し、または前記電解した電極物質を他方の電極物質に析出付着後、前記反応浴槽を使用して、他方の電極物質に複数層の電極物質を析出付着可能にした請求項13または14記載の電気メッキ等の電気化学的反応装置。
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