本発明は、被処理物の表面処理方法及び表面処理装置に関し、特に電気メッキが高温・高圧下の超臨界流体又は亜臨界流体を使用して行われる被処理物の表面処理方法及び処理装置において、前処理工程、電気メッキ工程及び後処理工程の切換時間を短縮して、短時間に被処理物の表面処理を行うことができる表面処理方法及び表面処理装置に関する。
従来の電気メッキ工程は大別すると、前処理工程、メッキ工程及び後処理工程に分けられる。前処理工程には酸洗工程、脱脂工程が含まれる。酸洗工程は硫酸や硝酸等の酸水溶液に被処理物を浸漬することにより表面の酸化物等を溶解させる工程であり、また脱脂工程は水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に燐酸ナトリウムや珪酸ナトリウム等を添加した溶液を用いてケン化作用により脱脂するアルカリ脱脂や有機溶剤を用いた溶剤脱脂、石油と水と界面活性剤とを混ぜてエマルジョン化作用を利用するエマルジョン脱脂、或いは電解時に発生した油による撹拌作用を利用した電解脱脂等が使用されている。
従来のこれらの前処理工程は、通常、専用の処理槽に所定の処理薬剤を収容して加温し、この処理薬剤に被処理物を所定時間浸漬或いは処理液の蒸気に曝すことにより行なっているため、複数の処理槽が必要であるとともに作業スペ−スを要するため、設備費が高価になり、しかも、処理薬剤の飛散や有害なガスが発生するために作業環境が悪く、また、浸漬処理には長時間を要するために生産性が悪いというような問題点が存在していた。
また、従来の電気メッキ法は、概してメッキのつき廻りが悪く、電流密度の低い被処理物の裏面や凹部にはメッキが殆ど付かないため、このような場所をメッキする場合、非メッキ物の向きを変えてメッキするか、補助極を配置する必要があり、特に異形の被処理物のメッキに対応し難いという問題点が存在している。
更に、従来の電気メッキ工程後の後処理工程としては、電気メッキ後にメッキ液を洗い流すために水洗工程が必要であるため、電気メッキ処理装置に隣接して複数の水洗槽を必要とし、その主要な水洗槽に常時給水するため、設備費が高価になるとともに水の使用料が嵩む等の問題が存在している。しかも、被処理物へのメッキ後、水洗ないし湯洗いして乾燥していたが、この乾燥に時間が掛かり、生産性が悪かった。加えて、メッキ槽から被メッキ物を取り出す際のメッキ液の回収工程、いわゆるくみ戻し工程が非常に煩雑で手間が掛かり、しかもその回収液に濃縮工程が必要であるため、生産性が非常に低いという問題点が存在している。
更に、メッキ工場から排出される排水はその水質が法規制されているが、メッキ作業から発生する排水のうち、洗浄排水は一般に所定の薬品を添加し無害化処理してからPH調整により重金属を水酸化物として除去し、濃厚排水は洗浄排水に少しずつ加えて処理するか、別途処理してその処理液を薄い洗浄排水中に混合して処理していたため、従来の排水処理工程は高価な設備と種々の薬品、多量の水及び多くの時間を要し、生産性が非常に悪いという問題点も存在している。
このような従来の電気メッキ法の問題点を改善するため、下記特許文献1及び2には、高温・高圧の二酸化炭素の超臨界流体ないし亜臨界流体を使用し、電気メッキの前処理工程、電気メッキ工程及び後処理工程を密閉雰囲気下で行うようにした被処理物の表面処理方法及び処理装置の発明が開示されている。まず最初に、下記特許文献1に開示されている被処理物の処理装置を図6を用いて説明する。なお、図6は特許文献1に開示されている単一の反応槽を用いた被処理物の表面処理装置の概略図である。
この被処理物の処理装置50は、その内面が塩化ビニ−ルや硬質ゴムでライニングされており、その上側の開口部に蓋体(図示略)が気密かつ着脱可能に装着されているステンレス鋼製のメッキ槽51を備えている。このメッキ槽51内には正極52及び被処理物53が取り付けられた負極が備えられている。更に、メッキ槽51の下部には第1メッキ液供給タンク54、第2メッキ液供給タンク55及び酸洗剤供給タンク56がそれぞれ接続されており、送液ポンプ57を介して第1メッキ液、第2メッキ液及び酸洗剤がそれぞれ選択的に切換供給されるようになされている。また、メッキ槽51の上部には圧縮ポンプ58及びヒータ59を介して外部二酸化炭素容器60からの二酸化炭素が臨界圧7.38MPa以上、及び臨界温度31.1℃以上の高温・高圧にされて供給されるようになされている。
更に、メッキ槽51の下部には、第1メッキ液回収タンク61、第2メッキ液回収タンク62及び酸洗剤回収タンク63が接続され、メッキ槽51で使用された第1メッキ液、第2メッキ液及び酸洗剤がそれぞれ選択的に各回収タンク61〜63に集められ、必要な処理を経た後にそれぞれ第1メッキ液供給タンク54、第2メッキ液供給タンク55及び酸洗剤供給タンク56に戻されて再利用されるようになされている。また、メッキ槽51の上部には、二酸化炭素滞留槽64が接続され、この二酸化炭素滞留槽64からの二酸化炭素は、水分及び油脂分の吸着カラム65を経て浄化された後に、圧縮ポンプ58に戻されて再利用されるようになされている。なお、洗浄水槽66には送液ポンプ57内を洗浄するための洗浄水が注入されており、また、エントレーナ67内には頑固な油脂分の除去用のアルコール等が注入されている。
このような電気化学的反応装置を使用して電気メッキを行なう場合は、先ずメッキ槽51の負極側に、例えば表面を研磨処理し終えた被処理物53を取り付け、蓋(図示略)を閉めてメッキ槽51を密閉する。次に圧縮ポンプ58及び加熱手段59を経て二酸化炭素容器60からの二酸化炭素ガスを臨界圧以上に加圧すると共に臨界温度以上に加熱し、超臨界二酸化炭素を生成してメッキ槽51へ導入する。この超臨界二酸化炭素はメッキ槽51に高速に拡散し、メッキ槽51内の二酸化炭素も超臨界状態になって被処理物に接触し、被処理物及び正極52に付着している油脂分や水分、異物等を高速かつ効率良く洗浄する。
そして、所定時間洗浄後、圧縮ポンプ58の駆動を停止し、二酸化炭素を二酸化炭素滞留槽64へ回収すると、臨界条件が維持されなくなるために二酸化炭素は急激に気化又は液化し、二酸化炭素に捕集された油脂分や水分、異物等は二酸化炭素滞留槽64へ移動し、かつ前記二酸化炭素の移動時に系に流れが発生して、正極52及び被処理物53を洗浄し、前述の洗浄と相俟って洗浄精度を高める。次に、酸洗剤供給タンク56内の酸溶液に界面活性剤溶液タンク68から所定の界面活性剤を添加してこれらをメッキ槽51内へ送り込むと、酸溶液と界面活性剤はメッキ槽51内で二層を形成する。この状況の下で圧縮ポンプ58及び加熱手段59を経て二酸化炭素容器60からの二酸化炭素ガスを臨界圧以上に加圧すると共に臨界温度以上に加熱し、超臨界二酸化炭素を生成してメッキ槽51へ導入すると、超臨界状態の二酸化炭素がメッキ槽51に高速に拡散し、酸溶液と界面活性剤と急速に混合してエマルジョン化させ、その微粒子が被処理物53の表面に接触して錆ないしは酸化皮膜を除去して、表面を活性化する。
そして、所定時間酸洗後、バルブを開いてメッキ槽51と回収タンク61とを連通すると、メッキ槽51内が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、メッキ槽51内に使用後の酸溶液と界面活性剤との二層状態が回復される。その間、圧縮ポンプ58から高圧の二酸化炭素がメッキ槽51内に導入され、その圧力によって使用後の酸溶液と界面活性剤とが押し出されて回収タンク61に回収される。その後、脱脂工程の場合と同様にしてメッキ槽51内に超臨界状態の二酸化炭素を導入して、被処理物53及び正極52に付着している水分を高速かつ効率良く洗浄し乾燥するとともに、二酸化炭素を二酸化炭素滞留槽64へ回収する。
ついで、第1メッキ液槽54内のメッキ液に界面活性剤溶液タンク68から所定の界面活性剤を添加してこれらをメッキ槽51内へ送り込むと、メッキ液と界面活性剤はメッキ槽51内で二層を形成するから、ここで圧縮ポンプ58及び加熱手段59を経て二酸化炭素容器60からの二酸化炭素ガスを臨界圧以上に加圧すると共に臨界温度以上に加熱し、超臨界二酸化炭素を生成してメッキ槽51へ導入すると、超臨界状態の二酸化炭素がメッキ槽51に高速に拡散し、メッキ液と界面活性剤と急速に混合してエマルジョン化させ、二酸化炭素が分散されたメッキ液、あるいはメッキ液の泡がメッキ槽51内に高密度に拡散し、被処理物53の表面に接触する。
この状況の下で正極52及び負極に通電すると、正極片(例えば純ニッケル)が電解してエマルジョン化したメッキ液に溶出し、これが被処理物53の表面に析出してメッキされる。その際、ニッケルイオンの電解溶出、析出ないし付着を超臨界状態で行なっているから、ニッケルイオンがメッキ槽51内を速やかに拡散し、かつ高密度で均一に分布して、被処理物53の表面だけでなく裏面にも付着する。したがって、従来の電解メッキ法に比べて、いわゆるメッキのつき廻りが非常に良く、被処理物53の表面及び裏面に均一かつ緻密なメッキ状態を得られ、良好な仕上がり面を得られる。
このメッキ工程の終了後に、バルブを開いてメッキ槽51と回収タンク62とを連通すると、メッキ槽51内が減圧されて臨界点以下の状態に移行し、メッキ槽51内に使用後のメッキ液と界面活性剤との二層状態が回復される。その間、圧縮ポンプ58から高圧の二酸化炭素がメッキ槽51内に導入され、その圧力によって使用後のメッキ液と界面活性剤とが押し出されて回収タンク62に回収される。その後、脱脂工程の場合と同様にしてメッキ槽51内に超臨界状態の二酸化炭素を導入して、被処理物53及び正極52に付着している水分を高速かつ効率良く洗浄し乾燥するとともに、二酸化炭素を二酸化炭素滞留槽64へ回収する。このようにして被処理物53を洗浄し乾燥後、圧縮ポンプ58を停止して二酸化炭素の導入を停止し、メッキ槽51の蓋(図示略)を開けて、メッキ処理後の被処理物53を取り出せば、一連のメッキ作業が終了する。
なお、使用後の二酸化炭素は、二酸化炭素滞留槽64からカラム65を二酸化炭素中の水及び油脂分を吸収し、初期状態に再生して適時、圧縮ポンプ58へ還流し、再利用する。また、使用後の酸溶液及びメッキ液等は、回収タンク61〜62を経て混入された界面活性剤を分離ないしは若干高濃度に調製して再生した後に、各溶液槽54〜56へ還流させる。
この被処理物の処理装置50は、脱脂、酸洗、洗浄のメッキ前処理、電気メッキ処理、被処理物の回収、乾燥のメッキ後処理を単一のメッキ槽で行うことができるため、各処理毎に専用の浴槽を要する従来のメッキ処理法及び設備に比べて、構成が簡単で設置スペ−スがコンパクトになり、設備費の低減を図ることができるとともに、各工程から排出する種々の排出物の外部への排出を回避できるから、従来のような高価かつ大形の排水処理設備を必要とせず、しかも、これらの各処理工程は非常に良好な拡散性を有する超臨界二酸化炭素を利用して行なっているから、メッキ液に被処理物を浸漬する従来のメッキ法に比べて酸溶液やメッキ液の使用量が非常に少量で足りるため、排出処理設備の小形軽量化及び排水処理設備の省略化を図れるとともに、被処理物の洗浄や回収、乾燥、メッキ液の回収を容易かつ速やかに行えるという効果を奏するものである。
また、下記特許文献2には、単一の電気メッキ槽を使用しながらも各処理液を流通式に供給するようにした被処理物の表面処理方法及び処理装置の発明が開示されている。そこで、以下において下記特許文献2に開示されている被処理物の表面処理装置70について図7を用いて説明する。この被処理物の表面処理装置70は、有底円筒形の圧力容器からなるメッキ槽71を備え、このメッキ槽71は蓋(図示略)を介して密閉可能にされ、その内部に正極72と負極に相当する被処理物73を収容している。
このメッキ槽71は、互いに独立した第1循環路74及び第2循環路75に介挿され、このうち第1循環路74は電気メッキの前処理である脱脂洗浄に使用可能にされ、第2循環路75は電気メッキの前処理である酸洗(酸化皮膜除去)処理、電気メッキ処理及び後処理に使用可能にされている。第1循環路74には前記メッキ槽71、冷却器76及び加熱器77が介挿され、第2循環路75にはメッキ槽71、循環ポンプ78及びミキサ79が介挿されている。また、第1循環路74及び第2循環路75の適所に切換弁80、81が介挿され、これらの切換弁80、81は適時第1循環路74及び第2循環路75の流路を圧力容器である貯留タンク82、83へ接続可能にされている。また、第1循環路74には高圧の二酸化炭素容器84が接続され、循環ポンプ78にも別の高圧の二酸化炭素容器85が加圧ポンプ86及びヒータ87を介して接続されている。更に、循環ポンプ78には、界面活性剤容器88及び酸洗剤容器89が直列に接続され、また、別の活性剤容器90及びメッキ液容器91が直列に接続されているとともに、洗浄水を収容した給水タンク92も接続されている。
このような被処理物の表面処理装置70を用いて被処理物73を電気メッキする場合、脱脂洗浄は第1循環路74で行ない、酸洗、電気メッキ及び乾燥等は第2循環路75で行なう。すなわち、先ず、被処理物73及び正極72(例えばニッケル)をメッキ槽71に対向して収容し、蓋を取り付けメッキ槽71を密閉する。次いで、二酸化炭素容器84からの二酸化炭素を第1循環路74へ送り出し、冷却器76で冷却かつ減圧した後に加圧ポンプ(図示略)で加圧して、加熱器77へ移動させ、二酸化炭素が臨界圧7.38MPa以上、及び臨界温度31.1℃以上の超臨界状態ないしは亜臨界状態となるようにして、メッキ槽71に流入させる。この超臨界状態の二酸化炭素はメッキ槽71内で高速に拡散し、被処理物73及び正極72に勢い良くかつ高密度に接触して、被処理物73の表面に付着した油脂分や水分、異物等を除去する。脱脂洗浄後の二酸化炭素はメッキ槽71から流出して冷却器76へ流入されて、油脂分や水分、異物が凝縮された後、加熱器77で加熱されて再びメッキ槽71に流入し、被処理物73を脱脂洗浄する。
次に、被処理物73を酸洗する場合は、界面活性剤容器88からの界面活性剤を酸洗剤容器89に所要量添加し、この界面活性剤と酸洗剤の混合液の所定量を循環ポンプ78へ供給して加圧して第2循環路75へ送出する。この混合液は第2循環路75を矢印方向へ移動し、ミキサ79で混合撹拌されてメッキ槽71へ移動する。これと同時に、二酸化炭素容器85からの二酸化炭素を加圧ポンプ86及びヒ−タ87を介して加圧かつ加熱して循環ポンプ78へ供給することにより二酸化炭素が超臨界状態ないしは亜臨界状態となるようにして第2循環路75へ送り出す。
界面活性剤を添加した酸洗剤と超臨界状態ないし亜臨界状態の二酸化炭素とがミキサ79で混合されるとエマルジョン化され、このエマルジョンはメッキ槽71内で高速に拡散し、被処理物73及び正極72を包み込み、界面活性剤を被覆した微粒子状の酸洗剤が均一かつ高精密に被処理物73及び正極72に接触し、被処理物73の表面の酸化皮膜を除去する。
酸洗後、メッキ槽71から流出したエマルジョンは、循環ポンプ78へ移動して再加圧され、ミキサ79においてエマルジョンの各成分が混合かつ撹拌され、均一に調製されてメッキ槽71へ送り込まれる。以降、被処理物73は間断無く酸洗され、所期の酸洗精度を得られたところで、酸洗を終了し、次の電気メッキへ移行する。その際、切換弁81を作動して第2循環路75内の前記エマルジョンを貯留タンク83へ収容した後、切換弁81を復旧させる。
酸洗後、被処理物73や正極72に付着した酸洗剤を除去し乾燥する場合、第1循環路74に接続された二酸化炭素容器84内の二酸化炭素を使用し、前述の脱脂工程と同様に処理して行うことができる。また、給水タンク92内の洗浄水を第2循環路75に圧送して循環させ、酸洗剤を洗い流した後、二酸化炭素を吹き込んで乾燥させれば、安価かつ簡便に行なえる。
こうして、表面を活性化した被処理物73を電気メッキする場合、第2循環路75に接続された二酸化炭素容器85からの二酸化炭素を加圧ポンプ86及びヒ−タ87を介して加圧かつ加熱して循環ポンプ78へ送り込んで約8〜10MPa、約50℃の二酸化炭素の超臨界状態ないしは亜臨界状態にしてから第2循環路75へ送り出し、これをミキサ79で混合撹拌してメッキ槽71へ送り込む。そして、メッキ槽71にメッキ液を供給する前に被処理物73と正極72との間に通電可能な状況を形成しておく。
一方、二酸化炭素の供給と前後して、メッキ液容器91に界面活性剤容器90からの界面活性剤を所定量添加し、この界面活性剤とメッキ液の混合液を循環ポンプ78へ供給して第2循環路75へ送り出し、ミキサ79で超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素と混合撹拌してエマルジョン化させ、このエマルジョンをメッキ槽71へ送り込む。このエマルジョンはメッキ槽71内で高速に拡散し、被処理物73及び正極72を包み込む。このため、予め通電可能な状態に置かれた被処理物73と正極72との間に電流が流れ、エマルジョンに拡散したメッキ液中の金属イオンが負極側の被処理物73に析出して、メッキ皮膜を生成する。この場合、被処理物73は、エマルジョンとの接触前に通電可能な状況に置かれているから、エマルジョンとの接触時に置換メッキを生ずることなく、正極板との間で速やかに電気化学反応が形成され、電気メッキが行なわれる。
また、メッキ槽71から流出したメッキ液を含むエマルジョンを循環ポンプ78に導入することにより再加圧されてミキサ79へ移動し、ミキサ79で前記エマルジョンが混合撹拌されて均一化され、再度メッキ槽71へ流入する。以降、被処理物73は連続的に電気メッキされるが、所期のメッキ状態を得られたところで切換弁81を作動させ、第2循環路75内の前記エマルジョンを貯留タンク83へ収容し、この後、切換弁81を復旧させる。
メッキ後に、被処理物73や正極72に付着したメッキ液を除去したり乾燥する場合、脱脂工程の場合と同様にして二酸化炭素容器84内の二酸化炭素を使用し、これを前述のように超臨界又は亜臨界状態に調製して被処理物73に接触させる。また、給水タンク92内の洗浄水を第2循環路75に圧送して循環させ、メッキ液を洗い流した後、二酸化炭素を吹き込んで乾燥させればよい。この後、蓋を開けてメッキ槽71を開放し、メッキ後の被処理物73を回収する。
このような被処理物の表面処理装置70によれば、下記特許文献1に開示されているようなバッチ式の表面処理装置50と比すると、酸洗剤とメッキ液とを等温循環させているために洗浄流体の循環に用いられる加熱器や冷却器が不要になり、単一の密閉容器からなるメッキ槽71で一連の電気メッキ処理を行なっているために構成が簡単で装置のコンパクト化、設備費の低減、稼動コストの低減、作業環境の改善と作業の安全性を達成できるとともに、生産性が向上するという効果を奏するものである。
特開2003−321798号公報(特許請求範囲、段落[0021]〜[0070]、図1)
特開平2005−154816号公報(特許請求範囲、段落[0023]〜[0057]、図1)
特開平2003−147591号公報(段落[0026]〜[0032]、図6)
上述の被処理物の処理装置50及び70は、界面活性剤を含むメッキ液と超臨界状態の二酸化炭素とのエマルジョンを使用したことにより、従来の一般的な電気メッキ法に比してメッキのつき廻りが非常に良く、被処理物の表面及び裏面に均一かつ緻密なメッキ状態を得られ、良好な仕上がり面が得られる外、上述のような優れた効果を奏するものである。しかしながら、これらの被処理物の表面処理装置50及び70にあっては、バッチ式及び流通式の差異はあっても、脱脂工程から酸洗工程へ移行する際あるいは酸洗工程からメッキ工程へ移行する際に、メッキ槽内に流入させた超臨界状態の二酸化炭素自体ないしは超臨界状態の二酸化炭素を含むエマルジョンを臨界点以下の状態として排出した後、次の工程で使用する酸洗液ないし電気メッキ液と二酸化炭素との混合流体を二酸化炭素が超臨界状態となるように加圧及び加熱して導入する必要があるため、非常に時間がかかるという問題点が存在している。
このようなメッキ槽内を次の工程で使用する超臨界状態の二酸化炭素を含むエマルジョンで置換するのに必要とされる時間は、加圧ポンプないしは循環ポンプの能力にもよるが、一例として排出に約5分程度、導入に約20分程度必要とされる。したがって、酸洗工程ないしメッキ工程において超臨界状態の二酸化炭素を用いて洗浄する工程をも追加しようとすれば、処理そのものに必要な時間よりもメッキ槽を次の工程で使用する超臨界状態の二酸化炭素ないしは超臨界状態の二酸化炭素を含むエマルジョンで置換するのに必要な時間の方が大幅に長くなってしまい、量産用途には適さないものとなってしまう。
本願発明はこのような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、その第1の目的は、超臨界状態ないしは亜臨界状態の不活性ガスを使用しながらも表面処理に要する時間を短縮した、作業効率がよく、量産用途に最適な被処理物の表面処理方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、超臨界状態ないしは亜臨界状態の不活性ガスを使用しながらも表面処理に要する時間を短縮した、作業効率がよく、量産用途に最適な被処理物の表面処理装置を提供することにある。
本発明の上記第1の目的は以下の方法により達成し得る。すなわち、請求項1に係る被処理物の表面処理方法の発明は、所定の表面処理流体を貫流可能な耐圧密閉型の処理槽と、不活性ガスを含む所定の表面処理流体を供給する複数の表面処理流体供給手段を用いた被処理物の表面処理方法であって、以下の(1)〜(7)の工程からなることを特徴とする。
(1)前記処理槽内に被処理物を配置して密閉する工程、
(2)前記複数の表面処理流体供給手段内のそれぞれの所定の表面処理流体を、前記表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持しながら前記それぞれの表面処理流体供給手段内において循環する工程、
(3)前記処理槽を前記複数の表面処理流体供給手段の一つに接続して前記表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持しながら前記表面処理流体を循環しながら対応する表面処理を行う工程、
(4)前記処理槽を前記所定の圧力及び温度を保ったまま前記表面処理流体供給手段の一つから切り離す工程、
(5)前記処理槽を前記複数の表面処理流体供給手段の他の一つに接続して他の表面処理流体を循環しながら対応する表面処理を行う工程、
(6)前記(4)及び(5)を全ての表面処理を行うまで繰り返す工程、
(7)前記処理槽を常圧に戻して表面処理された被処理物を取り出す工程。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の被処理物の表面処理方法において、前記不活性ガスとして二酸化炭素を用いたことを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の被処理物の表面処理方法において、複数の表面処理流体供給手段内のそれぞれの所定の表面処理流体は、脱脂用流体、酸洗用流体及びメッキ用流体であり、前記処理槽において電気メッキを行うことを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の被処理物の表面処理方法において、前記酸洗用流体及びメッキ用流体は界面活性剤を含むことを特徴とする。
更に、本発明の上記第2の目的は以下の構成により達成し得る。すなわち、請求項5に係る被処理物の表面処理装置の発明は、
被処理物を収容できると共に外部接続用の一対の配管を備え、所定の表面処理流体を貫流可能な耐圧密閉型の処理槽と、
それぞれ前記処理槽に接続される一対の配管を備えた不活性ガスを含む所定の表面処理流体を供給する複数の表面処理流体供給手段と、
を有する被処理物の表面処理装置において、
前記処理槽の一対の配管を前記複数の表面処理流体供給手段のそれぞれの一対の配管に切換接続するための配管切換手段が設けられ、
前記処理槽の一対の配管及び前記複数の表面処理流体供給手段のそれぞれの一対の配管は、それぞれストップバルブを備え、
前記複数の表面処理流体供給手段のそれぞれの一対の配管は、それぞれストップバルブの手前に三方向バルブを備えているとともに前記三方向バルブ間を接続するバイパス配管を備え、
前記複数の表面処理流体供給手段は、それぞれの一対の配管内の所定の表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持しながら前記三方向バルブ及びバイパス配管を経て循環する手段を備えているとともに、それぞれの一対の配管が前記処理槽の外部接続用の一対の配管に接続されているときには前記所定の表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持しながら前記処理槽に循環させる手段を備えていることを特徴とする。
また請求項6に係る発明は、請求項5に記載の被処理物の表面処理装置において、前記配管切換手段は、前記処理槽の一対の配管及び前記複数の表面処理流体供給手段の一対の配管にそれぞれ設けられたカプラであることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明は、請求項5に記載の被処理物の表面処理装置において、前記配管切換手段は、前記処理槽の一対の配管と前記複数の表面処理流体供給手段のそれぞれの一対の配管を切換ることができる複数ポートの切換バルブであることを特徴とする。
また、請求項8に係る発明は、請求項5に記載の被処理物の表面処理装置において、前記不活性ガスは二酸化炭素であることを特徴とする。
更に、請求項9に係る発明は、請求項5に記載の被処理物の表面処理装置において、前記複数の表面処理流体供給手段は、脱脂液供給手段、酸洗液供給手段及びメッキ液供給手段からなり、前記処理槽が電気メッキ槽であることを特徴とする。
本発明は上記のような構成を備えることにより、以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る発明によれば、所定の表面処理流体は前記表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持されて前記それぞれの表面処理流体供給手段内において循環されているから、(3)の工程において処理槽を表面処理流体供給手段に接続した際には直ちに処理槽内は前記表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度の表面処理流体に満たされ、またこの表面処理流体は循環されているから、処理槽内が所定の圧力及び温度になるまでの時間が短縮されるとともに、表面処理の均一化と高速化を達成し得る。加えて、他の表面処理工程に移行した際には、処理槽内は既に前記表面処理流体中の不活性ガスを超臨界状態ないし亜臨界状態とし得る所定の圧力及び温度に維持されているから、直ちに他の表面処理が所定の圧力及び温度条件下で行われることとなるため、更に処理時間を短縮することができるようになり、全表面処理工程を通しての処理時間の短縮は非常に大きくなり、量産用途に最適な被処理物の表面処理方法が得られる。
また、請求項2に係る発明によれば、二酸化炭素は安価であると共に実質的に無害な気体であり、臨界圧力及び臨界温度が他の不活性ガスに比べて低いため、低コストで安全に表面処理を行うことができる。
また、請求項3に係る発明によれば、脱脂、酸洗及びメッキの各工程が超臨界状態ないし亜臨界状態で行われるため、短時間で均質なメッキ処理表面が得られるようになる。
また、請求項4に係る発明によれば、酸洗及びメッキの各工程が超臨界状態ないし亜臨界状態の不活性ガスと界面活性剤と酸洗液ないしはメッキ液とのエマルジョンが生成され、このエマルジョンは急速に処理槽内に導入されるとともに隅々まで拡散するため、短時間で均質な酸洗及びメッキ処理工程を行うことができる。
更に、請求項5に係る発明によれば、容易に請求項1の発明を実施し得る被処理物の表面処理装置が得られる。
また、請求項6に係る発明によれば、カプラは容易に配管同士を接続ないしは分離できるため、処理槽とそれぞれの表面処理流体供給手段とを短時間に接続ないしは分離することができるので、表面処理に要する時間の短縮が可能となる。このカプラとしては周知の高圧用ワンタッチカプラないしはクラッチ方式のカプラを使用することができる。
また、請求項7に係る発明によれば、単に切換バルブによってポートを選択することによって処理槽とそれぞれの表面処理流体供給手段とを短時間に接続ないしは分離することができるようになるので、更に表面処理に要する時間の短縮が可能となる。
また、請求項8に係る発明によれば、二酸化炭素は安価であると共に実質的に無害な気体であり、臨界圧力及び臨界温度が他の不活性ガスに比べて低いため、低コストで安全に表面処理を行うことができる表面処理装置が得られる。
更に、請求項9に係る発明によれば、脱脂、酸洗及びメッキの各工程が超臨界状態ないし亜臨界状態で行われるため、短時間で均質なメッキ処理表面を有する被処理物を得ることができる表面処理装置が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例及び図面を用いて詳細に説明するが、以下に述べる実施例は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
実施例1にかかる被処理物の表面処理装置を、電気メッキ処理の場合を例にとり、図1〜図4を用いて説明する。なお、図1は実施例1に係る被処理物の表面処理装置の概略構成を示す図であり、図2は図1の被処理物の表面処理装置の脱脂工程を説明するための概略図であり、図3は図1の被処理物の表面処理装置の酸洗工程を説明するための概略図であり、更に、図4は図1の被処理物の表面処理装置の電気メッキ工程を説明するための概略図である。この実施例1の被処理物の表面処理装置10は、図1に示すように、大きく分けて移動可能な処理槽としての電気メッキ槽11と固定されている各種配管群12とに分かれており、更に各種配管群12は脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cとに分かれている。
電気メッキ槽11は、有底円筒形の圧力容器からなり、図示しない蓋を介して密閉可能にされ、その内部に配線基板等の被処理物を収容し、密閉、高温、加圧状態で被処理物に対して脱脂洗浄、酸洗(酸化皮膜除去)、電気メッキ等を実行可能なものである。この前記電気メッキ槽11は、内部に被処理物と、正極板(例えばニッケル)とを収容し、これらをリ−ド線を介して外部電源の負端子側と正端子側に接続し、スイッチを介して通電・遮断可能に接続されており、図示しない移動手段により各種配管群12の脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cに対して順次移動可能となされている。また、電気メッキ槽11には、下部配管13及びストップバルブ14を介して簡単に管路を接続ないし分離し得る高圧用カプラ15が接続されており、同じく上部配管16及びストップバルブ17を介して別の高圧用カプラ18が接続されている。この高圧用カプラとしては、ワンタッチカプラや例えば上記特許文献3に開示されているようなクラッチ方式のもの等周知のものを使用し得る。
脱脂部Aは、電気メッキ槽11のカプラ15及び18にそれぞれ接続されるカプラ19a及び26aを備え、このカプラ19aは、ストップバルブ20aを経て順次三方バルブ21a1、冷却器22、加圧ポンプ23a、加熱室24a、三方バルブ21a2、ストップバルブ25a及びカプラ26aが接続されている。そして、カプラ19aとストップバルブ20aとを結ぶ配管27a1には分岐配管27a2を介してリリーフバルブ28aが接続され、このリリーフバルブ28aは圧力容器である第1回収タンク29aに接続されている。同じくカプラ26aとストップバルブ25aとを結ぶ配管30a1には分岐配管30a2を介してリリーフバルブ31aが接続され、このリリーフバルブ31aは圧力容器である回収タンク32aに接続されている。そして、これら配管27a1及び30a1、分岐配管27a2及び30a2の占める内部体積は可能な限り小さくなるようになされている。また、三方バルブ21と冷却器22とを結ぶ配管には、二酸化炭素タンク34からの二酸化炭素供給配管33が接続されて、超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素が供給されるようになっている。なお、2つの三方バルブ21a1及び21a2の間にはバイパス配管21a3が設けられており、これらの三方バルブ21a1、21a2及びバイパス配管21a3 が設けられている。これらの三方バルブ21a1、21a2及びバイパス配管21a3の機能については後述する。
また、酸洗部Bは、電気メッキ槽11のカプラ15及び18にそれぞれ接続されるカプラ19b及び26bを備え、このカプラ26bは、ストップバルブ25bを経て順次循環ポンプ35b、ミキサ(例えば、スタティックミキサ)36b、ストップバルブ20b及びカプラ19bが接続されている。そして、カプラ19bとストップバルブ20bとを結ぶ配管27b1には分岐配管27b2を介してリリーフバルブ28bが接続され、このリリーフバルブ28bは圧力容器である回収タンク29b1に接続されている。同じくカプラ26bとストップバルブ25bとを結ぶ配管30b1には分岐配管30b2を介してリリーフバルブ31bが接続され、このリリーフバルブ31bは圧力容器である回収タンク32bに接続されている。そして、これら配管27b1及び30b1、分岐配管27b2及び30b2の占める内部体積は可能な限り小さくなるようになされている。なお、酸洗部Bにも、三方バルブ21b1、21b2及びバイパス配管21b3が設けられている(図3参照)が、図1においては省略されている。
また、二酸化炭素タンク34からの二酸化炭素ガスが二酸化炭素供給配管33、加圧ポンプ23b及び加熱室24bを経て循環ポンプ35bに供給されているとともに、界面活性剤容器37bからの所定の界面活性剤が添加された酸洗液が酸洗液容器38bから循環ポンプ35bに供給されている。そして、循環ポンプ35bを経て送出された二酸化炭素は少なくとも超臨界状態ないしは亜臨界状態となるようになされており、酸洗液と超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素はミキサ36bで十分に混合された後にストップバルブ20bを経てカプラ19bへ供給されるようになっている。
更に、メッキ液部Cは、電気メッキ槽11のカプラ15及び18にそれぞれ接続されるカプラ19c及び26cを備え、このカプラ26cは、ストップバルブ25cを経て順次循環ポンプ35c、ミキサ(例えば、スタティックミキサ)36c、ストップバルブ20c及びカプラ19cが接続されている。そして、カプラ19cとストップバルブ20cとを結ぶ配管27c1には分岐配管27c2を介してリリーフバルブ28cが接続され、このリリーフバルブ28cは圧力容器である回収タンク29c1に接続されている。同じくカプラ26cとストップバルブ25cとを結ぶ配管30c1には分岐配管30c2を介してリリーフバルブ31cが接続され、このリリーフバルブ31cは圧力容器である回収タンク32cに接続されている。そして、これら配管27c1及び30c1、分岐配管27c2及び30c2の占める内部体積は可能な限り小さくなるようになされている。なお、メッキ液部Cにも、三方バルブ21c1、21c2及びバイパス配管21c3が設けられている(図4参照)が、図1においては省略されている。
また、二酸化炭素タンク34からの二酸化炭素ガスが二酸化炭素供給配管33、加圧ポンプ23c及び加熱室24cを経て循環ポンプ35cに供給されているとともに、界面活性剤容器37cからの所定の界面活性剤が添加された電気メッキ液が電気メッキ液容器38cから循環ポンプ35cに供給されている。そして、循環ポンプ35cを経て送出された二酸化炭素は少なくとも超臨界状態ないしは亜臨界状態となるようになされており、電気メッキ液と超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素はミキサ36cで十分に混合された後にストップバルブ20cを経てカプラ19cへ供給されるようになっている。
この実施例の装置を利用して被処理物を電気メッキするには脱脂洗浄工程、酸洗工程及び電気メッキ工程の順に行なわれるが、それぞれの工程は電気メッキ槽11を脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cの順に移動させて行う。すなわち、電気メッキ槽11には、下部配管13及びストップバルブ14を介してカプラ15が接続されており、同じく上部配管16及びストップバルブ17を介して別のカプラ18が接続されており、また、脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cにも電気メッキ槽11のカプラ15及び18と対になるカプラ19a及び26a、19b及び26b、19c及び26cがそれぞれ設けられており、これらの対となるカプラ同士を互いに接続ないし分離させることにより、電気メッキ槽11を脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cに接続してそれぞれの工程における処理を行わせたり、あるいは各部の間で移動できるようになされている。
先ず、被処理物を脱脂洗浄する場合は、被処理物及び正極板(いずれも図示せず)を電気メッキ槽11に対向して収容し、蓋(図示せず)を取り付け電気メッキ槽11を密閉後、被処理物と正極板とを周知の外部電源に接続し、この段階では電源をOFF状態としておく。電気メッキ槽11に取り付けたカプラ15及び18を、図2に示したように、脱脂部Aの対応するカプラ26a及び19aにそれぞれ結合して電気メッキ槽11を脱脂部Aに結合する。初期状態として、ストップバルブ14、17、20a及び25aは開状態であり、リリーフバルブ28a及び31aは閉状態となっている。また、ここでは三方バルブ21a1、21a2及びバイパス配管21a3を使用していないものとして説明する。なお、図2は電気メッキ槽11を脱脂部Aに取り付けた状態を示す概略図であり、他の酸洗部B及びメッキ液部Cの構成は省略してある。
次いで二酸化炭素タンク34を開弁し、充填した二酸化炭素を二酸化炭素供給配管33を介して脱脂部Aへ送出し、冷却器22で冷却かつ減圧し、更に加圧ポンプ23aで加圧して、加熱室24aへ移動させて、約8〜10MPa、約50℃に加圧及び加熱して二酸化炭素を超臨界状態ないしは亜臨界状態とし、カプラ26a及び15を経て電気メッキ槽11に流入させる。この超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素は電気メッキ槽11内で高速に拡散し、被処理物及び正極板に勢い良くかつ高密度に接触して、被処理物の表面に付着した油脂分や水分、異物等を除去する。
そして、電気メッキ槽11で脱脂洗浄に使用された二酸化炭素を電気メッキ槽11から流出させ、カプラ18及び19aを経て再度冷却器22へ流入させ、冷却器22内において油脂分や水分を凝縮させ、それらと異物を除去した後に、再度加圧ポンプ23a、加熱室24aを経て電気メッキ槽11に再循環させる。以降、被処理物は連続的に脱脂洗浄されるので、所期の洗浄精度を得られたところで、加圧ポンプ23aの作動を停止し、ストップバルブ14、17、20a、25aを閉じ、更にリリーフバルブ28a及び31aを開き、ストップバルブ17と20aの間及びストップバルブ14と25aとの間に存在していた二酸化炭素をそれぞれ回収タンク29a及び32aに回収する。そうすると、電気メッキ槽11内は実質的に清浄な超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素が充満した状態に保持され、更に、カプラ15、18、19a及び26a内の圧力は常圧に戻るため、それぞれのカプラを安全に切り離すことができるようになる。そして、電気メッキ槽11を脱脂部Aから分離させ、酸洗部Bへ移行させる。
この脱脂洗浄工程は、超臨界状態ないし亜臨界状態の二酸化炭素を高速に循環させて行なっているから、電気メッキ槽11に洗浄流体を吹き込むだけの洗浄法に比べ、前記洗浄流体が電気メッキ槽11内でカルマン渦を形成することなく、高速かつ円滑に移動し、被処理物に終始一定の速度で接触して洗浄し、高速かつ高精密な洗浄作用を得られる。その際、超臨界状態ないし亜臨界状態の二酸化炭素は、被処理物に沿って平行に移動するから、移動速度や拡散速度が減速されることなく、高速かつ高精密な洗浄作用を維持する。
なお、ここでは三方バルブ21a1、21a2及びバイパス配管21a3を使用していないものとして説明した。この場合、初期状態では脱脂部Aの管路等の内部は全て常圧となっているため、複数個の電気メッキ槽11を切り替えて実質的に連続的に脱脂工程を行わせるには、電気メッキ槽11内を約超臨界状態ないしは亜臨界状態とするために時間がかかる。そのため、三方バルブ21a1、21a2及びバイパス配管21a3を設け、電気メッキ槽11が脱脂部Aに接続されていない場合には、加熱室24aから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を三方バルブ21a2、バイパス配管21a3、三方バルブ21a1を経て冷却器22に循環させておく。この状態で電気メッキ槽11を脱脂部Aに接続した後に三方バルブ21a1及び21a2を切り替えて、加熱室24aから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を電気メッキ槽11に供給するようにすると、更に必要な時間を短縮することができるため、作業性が向上し、量産用途に非常に適したものとなる。
次に、酸洗工程においては、まず、電気メッキ槽11に取り付けたカプラ15及び18を、図3に示したように、酸洗部Bの対応するカプラ26b及び19bにそれぞれ結合して電気メッキ槽11を酸洗部Bに結合する。なお、初期状態として、ストップバルブ20b及び25b、リリーフバルブ28b及び31bはそれぞれ閉状態となっている。図3は電気メッキ槽11を酸洗部Bに取り付けた状態を示す概略図であり、他の脱脂部A及びメッキ液部Cの構成は省略してある。
次いで、循環ポンプ35bを作動させ、二酸化炭素タンク34を開弁し、充填した二酸化炭素を二酸化炭素供給配管33、加圧ポンプ23b及び加熱室24bを経て約8〜10MPa、約50℃に加圧及び加熱して二酸化炭素を超臨界状態ないしは亜臨界状態として循環ポンプ35bへ送出する。これと同時にストップバルブ14、17、20b及び25bを開状態として超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を、図3において矢印で示した方向に、電気メッキ槽11へ循環させる。この状態で、酸洗液容器38b内の酸洗液に界面活性剤容器37bからの所定の界面活性剤を所要量添加して所定の組成に調製し、この混合液の所定量を送液ポンプ39bを介して循環ポンプ35bへ供給し、図3において矢印で示した方向に送出する。この混合液及び超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素はミキサ36bで混合撹拌されて電気メッキ槽11へ移動する。この場合、前記供給する混合液量は、後述のように非常に少量で足りる。
このように、界面活性剤を添加した酸洗液と超臨界状態ないし亜臨界状態の二酸化炭素とがミキサ36b内で混合され、酸洗液を含むエマルジョンを形成し、このエマルジョンは電気メッキ槽11内で高速に拡散し、被処理物及び正極板を包み込んで、界面活性剤を被覆した微粒子状の酸洗液が均一かつ高精密に被処理物及び正極板に接触し、被処理物の表面の酸化皮膜を除去する。その際、前記酸洗液は界面活性剤を介して超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素中に拡散するから、従来のように被処理物を酸洗液に浸漬する方法に比べて、非常に少量で足りる。
この酸洗に使用されたエマルジョンは、電気メッキ槽11から流出したあと、循環ポンプ35bへ移動し、循環ポンプ35bで加圧され、ミキサ36b内おいてエマルジョンの各成分が混合かつ撹拌され、均一に調製されて電気メッキ槽11へ送り込まれ、電気メッキ槽11内で被処理物を酸洗する。以降、被処理物は連続的に酸洗され、所期の酸洗精度を得られたところで、酸洗を終了する。その際、循環ポンプ35bを停止し、リリーフバルブ28b及び31bを開いてエマルジョンを回収タンク29b1及び32bへ回収し、その後、リリーフバルブ28b及び31bを閉じる。
酸洗後、被処理物や正極板に付着した酸洗液を除去し乾燥する場合、二酸化炭素タンク34内の二酸化炭素を使用し、これを前述のように超臨界又は亜臨界状態に調製して被処理物に接触させれば、速やかに所期の効果を得られる。また、別途洗浄水を用いて電気メッキ槽11内に圧送して循環させ、酸洗液を洗い流した後、二酸化炭素を吹き込んで乾燥させれば、安価かつ簡便に酸洗液の除去及び乾燥を行なうことができる。この場合、メッキ工程に移行する前に、ストップバルブ14、17、20b、25bを閉じ、更にリリーフバルブ28b及び31bを開き、ストップバルブ17と20bの間及びストップバルブ14と25bとの間に存在していた二酸化炭素をそれぞれ回収タンク29b1及び32bに回収する。そうすると、電気メッキ槽11内は実質的に清浄な超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素が充満した状態に保持され、更に、カプラ15、18、19b及び26b内の圧力は常圧に戻るため、それぞれのカプラを安全に切り離すことができるようになる。そして、電気メッキ槽11を酸洗部Bから分離させ、メッキ液部Cへ移行させる。
このように前記酸洗工程は、超臨界状態ないし亜臨界状態の酸洗液を含む高圧のエマルジョンを高速に循環させて行なっているから、エマルジョンが電気メッキ槽11内でカルマン渦を形成することなく、高速かつ円滑に移動し、被処理物に終始一定の速度で接触して、高速かつ高精密な酸洗精度を得られる。その際、前記エマルジョンは、被処理物に沿って平行に移動するから、移動速度や拡散速度が減速されることなく、高速かつ高精密な酸洗作用を維持する。加えて、電気メッキ槽11の脱脂部Aから酸洗部Bへの移動は、カプラの分離に時間を要しないために短時間ででき、しかも、脱脂部Aから移動されてきた電気メッキ槽11内は、超臨界状態ないし亜臨界状態の清浄な二酸化炭素で充満されているため、短時間で酸洗工程に移行することができる。
なお、ここでは三方バルブ21b1、21b2及びバイパス配管21b3を使用していないものとして説明した。この場合、初期状態では酸洗部Bの管路等の内部は全て常圧となっているため、複数個の電気メッキ槽11を切り替えて実質的に連続的に酸洗工程を行わせるには、電気メッキ槽11内を超臨界状態ないしは亜臨界状態とするために時間がかかる。そのため、三方バルブ21b1、21b2及びバイパス配管21b3を設け、電気メッキ槽11が酸洗部Bに接続されていない場合には、循環ポンプ35bから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を三方バルブ21b2、バイパス配管21b3、三方バルブ21b1を経て循環ポンプ35bに循環させておく。この状態で電気メッキ槽11を酸洗部Bに接続した後に三方バルブ21b1及び21b2を切り替えて、循環ポンプ35bから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を電気メッキ槽11に供給するようにすると、更に必要な時間を短縮することができるため、作業性が向上し、量産用途に非常に適したものとなる。
次に、メッキ工程においては、まず、電気メッキ槽11に取り付けたカプラ15及び18を、図4に示したように、メッキ液部Cの対応するカプラ26c及び19cにそれぞれ結合して電気メッキ槽11をメッキ液部Cに結合する。なお、初期状態として、ストップバルブ20c及び25c、リリーフバルブ28c及び31cはそれぞれ閉状態となっている。図4は電気メッキ槽11をメッキ液部Cに取り付けた状態を示す概略図であり、他の脱脂部A及び酸洗部Bの構成は省略してある。また、ここでは三方バルブ21c1、21c2及びバイパス配管21c3を使用していないものとして説明する。
次いで、循環ポンプ35cを作動させ、二酸化炭素タンク34を開弁し、充填した二酸化炭素を二酸化炭素供給配管33、加圧ポンプ23c及び加熱室24cを経て約8〜10MPa、約50℃に加圧及び加熱して二酸化炭素を超臨界状態ないしは亜臨界状態として循環ポンプ35cへ送出する。これと同時にストップバルブ14、17、20c及び25cを開状態として超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を、図4において矢印で示した方向に、電気メッキ槽11へ循環させる。この状態で、電気メッキ液容器38c内の電気メッキ液に界面活性剤容器37cからの所定の界面活性剤を所要量添加して所定の組成に調製し、この混合液の所定量を送液ポンプ39cを介して循環ポンプ35cへ供給し、図4において矢印で示した方向に送出する。この混合液及び超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素はミキサ36cで混合撹拌されて電気メッキ槽11へ移動する。この場合、前記供給する混合液量は、後述のように非常に少量で足りる。加えて、電気メッキ槽11の酸洗部Bからメッキ液部Cへの移動は、カプラの分離に時間を要しないために短時間ででき、しかも、酸洗部Bから移動されてきた電気メッキ槽11内は、超臨界状態ないし亜臨界状態の清浄な二酸化炭素で充満されているため、短時間でメッキ工程に移行することができる。
そして、超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を供給後、電気メッキ槽11に電気メッキ液を供給する前、より厳密には被処理物が電気メッキ液に接触する前に、外部電源をONとし、被処理物と正極板との間に通電可能な状況を形成して置く。このように、界面活性剤を添加した電気メッキ液と超臨界状態ないし亜臨界状態の二酸化炭素とがミキサ36c内で混合され、電気メッキ液を含むエマルジョンを形成し、このエマルジョンは電気メッキ槽11内で高速に拡散し、被処理物及び正極板を包み込んで、界面活性剤を被覆した微粒子状の電気メッキ液が均一かつ高精密に被処理物及び正極板に接触し、被処理物の表面に所定の電気メッキを行う。このように、電気メッキ液は界面活性剤を介して超臨界状態ないしは亜臨界状態のエマルジョンに拡散するから、従来のようにメッキ液中に被処理物を浸漬するメッキ法に比べて、非常に少量で足りる。
また、このメッキ液部Cでは、電気メッキ液を含むエマルジョンが電気メッキ槽11内に流入した後に予め通電可能な状態に置かれた被処理物と正極板との間に電流が流れ、前記エマルジョンに拡散した電気メッキ液中の金属イオンが負極側の被処理物の表面に析出して、メッキ皮膜を生成する。この場合、被処理物は前記エマルジョンとの接触前に、通電可能な状況に置かれているから、エマルジョンとの接触時に置換メッキを生ずることなく、正極板との間で速やかに電気化学反応が形成され、電気メッキが行なわれる。すなわち、被処理物の通電前に被処理物がメッキ液に接触してメッキ液中の金属イオンが、素地金属とのイオン化傾向の差によって、素地金属である被処理物に析出し、代わりに素地金属が溶出する置換メッキを防止することができる。かかる構成によれば、被処理物が金銀等の貴金属である場合のように、貴金属の置換メッキによる溶出を防止でき、また置換メッキの皮膜上に本来のメッキ皮膜が電着することがないから、メッキ皮膜の密着性が向上する。
しかも、前記金属イオンは、超臨界ないし亜臨界状態の高拡散性のエマルジョンに拡散し、電気メッキ槽11内で均一かつ高密度に拡散して被処理物に接触し析出するから、つきまわりが良く、複雑な形状の被処理物のメッキに応じられるとともに、均一かつ緻密で薄厚のメッキ皮膜を得られる。また、このメッキ液部Cでは、電気メッキ液を管路等の内部を高速に循環し、電極である被処理物の界面を高速に移動させているから、被処理物の通電によって電極界面に電位勾配が形成され、この電位勾配によって形成される電気メッキ液の濃度分布ないし金属イオンの密度分布を解除し、これを平坦かつ均一化して、均一かつ緻密なメッキ皮膜を形成する。このように電気メッキ液部Cでは、超臨界状態ないしは亜臨界状態の電気メッキ液を含むエマルジョンを循環させて行なっているから、このエマルジョンが電気メッキ槽11内でカルマン渦を形成することなく、高速かつ円滑に移動し、均一かつ高精密なメッキ皮膜を得られる。その際、前記エマルジョンは、被処理物に沿って平行に移動するから、移動速度や拡散速度が減速されることなく、高速かつ高精密な金属イオンの析出ないしメッキ作用を維持する。
前記メッキ処理後の電気メッキ液を含むエマルジョンは、電気メッキ槽11から流出し、循環ポンプ35cに導かれ、この循環ポンプ35cで加圧されてミキサ36cへ移動し、該ミキサ36cで前記エマルジョンが混合撹拌されて均一化され、再度電気メッキ槽11へ流入する。以降、被処理物は連続的に電気メッキされ、所期のメッキ状態を得られたところで、次の乾燥工程へ移行する。その際、循環ポンプ35cを停止し、リリーフバルブ28c及び31cを開いてエマルジョンを回収タンク29c1及び32cへ回収し、その後、リリーフバルブ28c及び31cを閉じる。
電気メッキ後、被処理物や正極板に付着した電気メッキ液を除去し乾燥する場合、二酸化炭素タンク34内の二酸化炭素を使用し、これを前述のように超臨界又は亜臨界状態に調製して被処理物に接触させれば、速やかに所期の効果を得られる。また、別途洗浄水を用いて電気メッキ槽11内に圧送して循環させ、電気メッキ液を洗い流した後、二酸化炭素を吹き込んで乾燥させれば、安価かつ簡便に電気メッキ液の除去及び乾燥を行なうことができる。この場合、乾燥工程を終了する前に、ストップバルブ20c、25cを閉じ、更にリリーフバルブ28c及び31cを開き、ストップバルブ17と20cの間及びストップバルブ14と25cの間に存在していた二酸化炭素をそれぞれ回収タンク29c1及び32cに回収する。そうすると、電気メッキ槽11内及びカプラ15、18、19c及び26c内の圧力は常圧に戻るため、それぞれのカプラを安全に切り離すことができるようになる。そして、電気メッキ槽11の蓋を外して電気メッキされた被処理物を取り出す。
なお、ここでは三方バルブ21c1、21c2及びバイパス配管21c3を使用していないものとして説明した。この場合、初期状態ではメッキ液部Cの管路等の内部は全て常圧となっているため、複数個の電気メッキ槽11を切り替えて実質的に連続的にメッキ工程を行わせるには、電気メッキ槽11内を超臨界状態ないしは亜臨界状態とするために時間がかかる。そのため、三方バルブ21c1、21c2及びバイパス配管21c3を設け、電気メッキ槽11がメッキ液部Cに接続されていない場合には、循環ポンプ35cから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を三方バルブ21c2、バイパス配管21c3、三方バルブ21c1を経て循環ポンプ35cに循環させておく。この状態で電気メッキ槽11をメッキ液部Cに接続した後に三方バルブ21c1及び21c2を切り替えて、循環ポンプ35bから得られた超臨界状態ないしは亜臨界状態の二酸化炭素を電気メッキ槽11に供給するようにすると、更に必要な時間を短縮することができるため、作業性が向上し、量産用途に非常に適したものとなる。
実施例1の被処理物の表面処理装置10においては、各種配管群12と処理槽としての電気メッキ槽11との間の結合をカプラにより行い、電気メッキ槽11を各種配管群12の脱脂部A、酸洗部B及びメッキ液部Cへ順次移送するようにして表面処理に要する時間の短縮を図ったが、実施例2では電気メッキ槽11を固定したまま表面処理に要する時間の短縮を図った被処理物の表面処理装置10Aについて図5を用いて説明する。なお、図5は実施例2に係る被処理物の表面処理装置の概略構成を示す図であり、実施例1の表面処理装置10と共通する構成部分には同一の参照符合を付与してその詳細な説明は省略する。
実施例2に係る被処理物の表面処理装置10Aが実施例1に係る被処理物の表面処理装置10と構成が相違している点は、電気メッキ槽11の下部配管13及び上部配管16がそれぞれストップバルブ14及び17を介して2連3ポートバルブ401及び402に接続され、更にこの2連3ポートバルブ401及び402のそれぞれのポートが脱脂部Aの配管27a1及び30a1、酸洗部Bの配管27b1及び30b1、メッキ液部Cの配管27c1及び30c1にそれぞれ接続されている点であり、その他の構成に実質的差異はない。
すなわち、この2連3ポートバルブ401及び402を操作することにより、電気メッキ槽11の下部配管13及び上部配管16をそれぞれ脱脂部Aの配管27a1及び30a1、酸洗部Bの配管27b1及び30b1、メッキ液部Cの配管27c1及び30c1に対して選択的に接続可能となるため、実施例1に係る被処理物の表面処理装置10のようにカプラを操作して電気メッキ槽11を脱脂部A、酸洗部B又はメッキ液部Cに接続ないしは分離するよりも短時間で接続ないしは分離することができるようになる。なお、実施例2に係る被処理物の表面処理装置10Aにおける各工程での処理操作は、2連3ポートバルブ401及び402を操作すること以外は実施例1に係る被処理物の表面処理装置10の各工程での処理操作と実質的に同一であるため、その詳細な説明は省略する。
ただ、実施例2に係る被処理物の表面処理装置10Aにおいては、脱脂部Aの配管27a1及び30a1、酸洗部Bの配管27b1及び30b1、メッキ液部Cの配管27c1及び30c1はある程度長くなるが、この長さを可能な限り短くなるように配置することにより、これらの配管内の体積を小さくして、回収タンク29a〜29cに回収される表面処理流体の量を減らすことが望ましい。
実施例1に係る被処理物の表面処理装置の概略構成を示す図である。
図1の被処理物の表面処理装置の脱脂工程を説明するための概略図である。
図1の被処理物の表面処理装置の酸洗工程を説明するための概略図である。
図1の被処理物の表面処理装置の電気メッキ工程を説明するための概略図である。
実施例2に係る被処理物の表面処理装置の概略構成を示す図である。
従来の単一の反応槽を用いた被処理物の表面処理装置の概略図である。
従来の単一の電気メッキ槽を使用しながらも各処理液を流通式に供給するようにした被処理物の表面処理装置の概略図である。
符号の説明
10、10A 被処理物の表面処理装置
11 電気メッキ槽
12 各種配管群
13 下部配管
14、17 ストップバルブ
15、18 カプラ
16 上部配管
19a〜19c カプラ
20a〜20c ストップバルブ
21 三方バルブ
22 冷却器
23a〜23c 加圧ポンプ
24a〜24c 加熱室
25a〜25c ストップバルブ
26a〜26c カプラ
27a1〜27c1、30a1〜30c1 配管
27a2〜27c2、30a2〜30c2 分岐配管
28a〜28c、31a〜31c リリーフバルブ
29a〜29c、32a〜32c 回収タンク
33 二酸化炭素供給配管
34 二酸化炭素タンク
35b、35c 循環ポンプ
36b、36c ミキサ
37b、37c 界面活性剤容器
38b 酸洗液容器
38c 電気メッキ液容器
39b、39c 送液ポンプ
A 脱脂部
B 酸洗部
C メッキ液部