JP2008169402A - 電気化学的反応方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒子が均質に分散してなる複合材料を形成する電気化学的反応方法を提供する。
【解決手段】1.液体と電解質溶液と粒子とを含み、粒子が液体の相と電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行う。2.亜臨界または超臨界状態の物質と電解質溶液と粒子とを含む浴中で反応を行い、粒子が亜臨界状態または超臨界状態である物質の相と電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行う。3.液体と、液体と相分離する電解質溶液と、液体、電解質溶液のいずれにも溶解しない粒子とを含む浴中で反応を行い、粒子を共析させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、電気めっき(メッキ)等の電気化学的反応方法に関する。なお、本発明でいう電気化学的反応とは、電荷(イオン、電子)の移動、授受を伴う化学反応をいい、外部電界を加えることによって起きる電気分解、電気泳動等の現象を利用したいわゆる電気化学反応のみならず、例えば無電解メッキ等の、電界を加えずに行う酸化還元反応をも含むものである。
電気メッキ工程は、前処理工程、メッキ工程及び後処理工程に大きく分けることができる。前処理工程は脱脂洗浄や酸洗いを伴う。これらは、専用の浴槽に所定の処理液を収容して加温し、この処理液に被処理物を所定時間浸漬することが通常実現されている。したがって、この作業には、複数の浴槽とその作業スペ−スを要し、設備費が高価になるとともに、処理液の飛散や有害なガスが発生する状況下での作業を強いられて作業環境が悪く、しかも前記浸漬に長時間を要して生産性が悪いという問題があった。
そこで、超臨界状態とした物質、電解質溶液及び界面活性剤を反応浴槽に導入し、これらの乳濁状態の下で電気メッキし、メッキ後に超臨界物質を気化させ、これを浴槽外に排出することによって、洗浄液を要することなく反応浴槽や電極等を洗浄できるようにした電気化学的反応方法が開発されている。
特許3571627
また、電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、反応浴槽を加圧して電気化学的反応させ、電解溶液の溶媒の電気分解を抑制して、電気化学的反応を合理的かつ効率良く行い、緻密で薄厚の金属皮膜を得られるとともに、生産性の向上と設備の小形軽量化とを図れ、また各処理工程を安全で合理的に行え、しかも各処理工程における廃液量を低減し、環境汚染を防止し得るようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法およびその電気化学的反応装置が開発されている。
特開2003−321793
さらに、電気メッキ等の電気化学的処理に好適で、超臨界または亜臨界二酸化炭素を用いて、各処理工程を安全で合理的かつ速やかに行うことができ、使用後の二酸化炭素および処理溶液等を合理的かつ迅速に処理するとともに、酸洗い液やメッキ液等の使用量を抑制し、更にメッキ作業から発生する廃液量を低減して、環境汚染を防止し、作業環境を改善して生産性を向上するとともに、それらの再利用を図り、またメッキのつき廻りを飛躍的に向上し、美麗な仕上がりを得られるとともに、被処理物の裏面や凹部にも緻密かつ一様なメッキを容易に実現し、その生産性を向上する一方、各処理に要する浴槽を省略かつ小形軽量化し、設備費の軽減と設置スペ−スのコンパクト化を図れるようにした電気メッキ等の電気化学的処理方法およびその電気化学的反応装置が開発されている。
特開2003−321798
一方、近年、めっき皮膜に耐磨耗性、耐熱性、自己潤滑性やその他の機能性の付加、あるいはこれらの機能性を有する複合材料を皮膜として製造することを目的として、複合めっき(分散めっき)の技術が開発されてきている。複合めっき(分散めっき)は次の手順で一般に実現される。まず、上述と同様に、金属イオンを含む水溶液に、上記各種機能を付与するための繊維状や粒子状の所要の不活性微粒子(電解浴と反応しない微粒子)を加えて均一なサスペンションを形成させる。その後、このサスペンションをめっき浴として電解めっきを行い、金属表面に吸着する上記不活性微粒子を析出する金属によってめっき皮膜中に埋め込ませる。これにより上記共析した不活性微粒子を金属マトリックス内に取り込ませ、分散相を形成させてなる複合材料によるめっき皮膜を形成させる。たとえば、金属イオンを含む水溶液に、マイクロメートルオーダーの不活性微粒子を分散させためっき浴を用いた複合めっきは既に工業的に利用されてきている。これはエンジンシリンダ内の耐摩耗性向上等に用いられている。
しかしながら、金属イオンを含む水溶液に不活性微粒子を分散させてなるめっき浴を用いて行う上述の複合めっきでは、ナノ(ナノメートル)オーダーの粒子、「猫のひげ」と呼ばれる金属めっき皮膜表面に発生したヒゲ状の結晶生成物(ウィスカ)、繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン等の不活性微粒子を、金属イオンを含む電解浴に分散させる場合、水溶液中では高いイオン強度により拡散二重層が圧縮されるためナノオーダーの不活性粒子等は凝集し易く、また、凝集した粒子に働く剪断応力は粒径が小さくなればなるほど小さくなることから、粒子が凝集したままめっき皮膜中に埋め込まれてしまい均質な複合材料の膜が形成されにくくなるため、安定した機械的、化学的又は物理的性質が達成されないという問題がある。
本発明は、上述の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒子が均質に分散してなる複合材料を形成する電気化学的反応方法を提供しようとすることにある。
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。以下、この発明を詳細に説明する。
本発明の第1の側面は、液体と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記液体の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法である。
本構成によれば、温和な実現しやすい条件下で粒子が均質に分散してなる複合材料が得られる。
本発明の第2の側面は、亜臨界状態である物質と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記亜臨界状態である物質の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法である。
本構成によれば、温和な実現しやすい条件下であるにもかかわらず速い反応速度で粒子が均質に分散してなる複合材料を形成することができる。
なお、ここで亜臨界状態とは、温度か圧力のいずれか一方が臨界値の70%を超えている状態をいう。
本発明の第3の側面は、超臨界状態である物質と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記超臨界状態である物質の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法である。
本構成によれば、高い拡散定数を有する超臨界物質により浴が均質化され、電極等の周辺にイオンが効率よく供給されて反応性が高まるという極めて有利な条件下で粒子が均質に分散してなる複合材料を形成することができる。
なお、ここで超臨界状態とは、状態図で温度、圧力、エントロピー線図の臨界点より上の温度・圧力下にある状態をいい、気体でも液体でもない性質を示す。
本発明の第4の側面は、液体と、前記液体と相分離する電解質溶液と、前記液体、前記電解質溶液のいずれにも溶解しない粒子とを含む浴中で反応を行い、前記粒子を共析させることを特徴とする電気化学的反応方法である。
本構成によれば、温和な実現しやすい条件下で粒子が均質に分散してなる複合材料が得られる。
本発明によれば、粒子が均質に分散してなる複合材料が得られる。
本発明のさらに他の目的、特徴又は利点は、後述する本発明の実施の形態や添付する図面に基づきより詳細な説明によって明らかになるであろう。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の実施の形態は、反応させる浴中に電極を設置して外部電界を加える場合であり、したがって、電気めっき、電鋳、陽極酸化皮膜の形成、電解研磨、電解加工、電気泳動塗装、電解精錬等の各方法に共通して適用することができる。また、無電解めっき、化成処理等の外部電界を加えない場合であっても、陰極及び陽極に替えて被めっき物(被処理物)を浸漬させることにより、電界を加える場合と同様にして実施することができる。
《第1の実施形態》
まず、第1の実施形態について説明する。図1は反応過程を示す図である。図1において(a)は反応前、(b)は反応中、(c)は反応後の各状態を表している。まず(a)の状態では、反応させる浴中に電解質溶液1、臨界点以下の物質2及び粒子を含んでいる。
この状態から、必要に応じて、(b)の状態、すなわち臨界点以下の物質2を超臨界状態に移行させ、電解質溶液と均一分散状態3にする。超臨界状態とすれば、高い拡散定数を有する超臨界物質により浴が均質化され、電極等の周辺にイオンが効率よく供給されて反応性が高まるという極めて有利な条件が実現できる。また、亜臨界状態とすれば、温和な実現しやすい条件下であるにもかかわらず速い反応速度を得ることができる。臨界状態又は亜臨界状態の有無にかかわらず、攪拌させ速い反応速度を得ることもできる。
浴中に界面活性剤を加えて乳濁させると系がさらに安定化し望ましい。
なお、超臨界状態にするためには、通常、コンプレッサーや熱交換器等を用いて、圧力、温度を上げることにより行う。
電極4の表面は、温度・圧力を上げて超臨界状態とする過程で、系に生じた流れのため自然に脱脂洗浄される。したがって、反応工程前に予め行う電極4の脱脂作業を省略することができる。一般の脱脂作業では、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン等の溶剤を用いて行っているが、これらの溶剤は毒性が強く、環境汚染を引き起こす恐れがあり、安全面にも問題があった。本実施形態では、上記溶剤系脱脂剤が不要となるため、環境保全型のシステムを実現することができる。なお、以上の説明は、電極を予め脱脂洗浄することを妨げるものではない。
続いて、(b)の状態で反応を行う。超臨界状態とした物質は、高い拡散定数を有するため、電解質溶液中の金属イオン等が電極4の周囲に効率良く供給され、電極4の表面の析出・溶解速度が大きくなる。また、系が常に均質化されるため、つきまわり性、皮膜の均一性も向上する。さらに、高い反応効率は維持しつつ、使用する電解質溶液1は少量で済むため、処理すべき廃液の量を削減でき、環境保全、コストの面で好ましい。
次に、反応を行った後、減圧するか又は温度を下げることにより、超臨界状態の物質を、再び臨界点以下の状態へ移行させ、(c)の相分離した状態とする。この過程で、超臨界状態の物質が急激に気化又は液化するため系に激しい流れが生じ、それに伴い電極4表面の不純物が吹き飛ばされて洗浄される。したがって、反応後に行う水等による洗浄が不要となり、洗浄に用いた水等の廃液が生じない。なお、相分離した電解質溶液1は回収し、反応により失われた電解質を適宜補充し濃度を調整した上で再利用することができる。
このようにして、浴中で様々な機能を持った粒子を共析させることによって新たな機能を形成される膜に与えることができる。
次に、反応させる浴中の各成分についてそれぞれ説明する。
本実施形態では、一般の複合めっき方法と異なり、粒子の種類の幅広い選択が可能である。例えば、めっき液に難分散性を示すマイクロオーダーからナノオーダーの不活性微粒子が挙げられる。また、粒子は、有機粒子でも無機粒子でもよい。
具体的には、テフロン(PTFE)粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、ナノダイヤが挙げられる。テフロン粒子を使用すると撥水性の付加が、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、ナノダイヤを使用すると強度と対磨耗性の付加が期待できる。なお、テフロンは、フッ素樹脂(4フッ化エチレン樹脂)の商品名を示す登録商標である。
また、ニッケル、銅、クロム、ニッケルリン、ニッケルタングステン、コバルトめっき等に耐摩耗性や自己潤滑性、耐食性等の機能を向上させるために使用されることが多い、アルミナ、チッ化シリコン、炭化シリコン等のセラミックスやフッ素樹脂(PTFE,PFA等)の有機物、ダイヤモンド、フッ化カーボン、硫化モリブデン等の微粒子でもよい。
また、無電解複合めっきで耐摩耗性を向上させるため等に使用される分散粒子である、炭化シリコン、ダイヤモンド、炭化タングステン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒素化ホウ素、酸化チタン、酸化クロム、炭化チタンでもよい。また、無電解複合めっきで自己潤滑性、離型性を向上させるため等に使用される分散粒子である、PTFE、フッ化炭素、窒化ホウ素、二硫化モリブデンでもよい。
さらに、シリカ粒子、シランカップリング剤を固定化した粒子、アルミナ粒子、マイクロカプセル、鉛フリーはんだめっきも可能となるスズ/銀ナノ粒子、UDD(Ultra Dispersed Diamond)と略称されるダイヤモンド質微粒子、酸化物(二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、酸化タングステン、二酸化チタンなど)、炭化物(炭化ケイ素、炭化クロム、炭化タングステン、炭化ホウ素など)、二酸化モリブデン、窒化ホウ素、高分子フッ素化合物でもよい。
超臨界状態とする物質は、特に限定されるものではなく、その物質に固有の臨界温度、臨界圧力を考慮して、従来知られた気体、液体物質の中から適宜選択して用いることができる。具体例として、二酸化炭素、3フッ化メタン(フルオロホルム)、エタン、プロパン、ブタン、ベンゼン、メチルエーテル、クロロホルム等を挙げることができる。その中でも二酸化炭素が、コスト、安全性、臨界条件等の点で最も好ましく用いられる。例えば、二酸化炭素は、臨界温度304.5K、臨界圧力7.387MPaであり、それ以上の範囲で超臨界状態に移行することができる。
次に、電解質溶液としては、溶媒に対して、一種又は二種以上の金属の塩、有機電解質、リン酸等の酸、アルカリ物質等の各種電解質を溶解させたものが用いられる。上記溶媒は、極性溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体例として、水、エタノール、メタノール等のアルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の直鎖状カーボネート類、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。
金属の塩としては、析出させようとする金属、合金、酸化物の種類等を考慮して適宜選択すれば良い。電気化学的に析出させることができる金属としては、Cu、Zn、Ga、As、Cr、Se、Mn、Fe、Co、Ni、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ru、Rh、Pd、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、W、Po、Re、Os、Ir、Pt等が挙げられる。また、有機電解質としては、ポリアクリル酸等の陰イオン系電解質、ポリエチレンイミン等の陽イオン系電解質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
電解質溶液には、上記物質の他にも、溶液の安定化等を目的として一種又はそれ以上の物質を含むことができる。具体的には、(1)析出する金属のイオンと錯塩をつくる物質、(2)電解質溶液の導電性をよくするための無関係塩、(3)電解質溶液の安定剤、(4)電解質溶液の緩衝剤、(5)析出金属の物性をかえる物質、(6)陰極の溶解を助ける物質、(7)電解質溶液の性質あるいは析出金属の性質を変える物質、(8)二種以上の金属を含む混合溶液の安定剤等を挙げることができる。
さらに具体的に、主な電気化学的反応方法における電解質溶液の主成分を挙げれば以下の通りであるが、これらに限定されるものではない。
銅を析出させる場合;(1)結晶硫酸銅及び硫酸、(2)ホウフッ化銅及びホウフッ酸、(3)シアン化銅及びシアン化ソーダ、(4)ピロリン酸銅、ピロリン酸カリウム、及びアンモニア水ニッケルを析出させる場合;(1)硫酸ニッケル、塩化アンモニウム、及びホウ酸、(2)硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及びホウ酸、(3)スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、及びホウ酸クロムを析出させる場合;(1)クロム酸及び硫酸、(2)クロム酸、酢酸バリウム、及び酢酸亜鉛を析出させる場合;(1)硫酸亜鉛、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、及びデキストリン、(2)酸化亜鉛、シアン化ソーダ、及び苛性ソーダ、(32)酸化亜鉛及び苛性ソーダカドミウムを析出させる場合;(1)酸化カドミウム、シアン化ソーダ、ゼラチン、及びデキストリンスズを析出させる場合;(1)硫酸第一スズ、硫酸、クレゾールスルホン酸、β−ナフトール、及びゼラチン、(2)すず酸カリ及び遊離苛性カリ銀を析出させる場合;(1)シアン化銀及びシアン化カリ金を析出させる場合;(1)金、シアン化カリ、炭酸カリ、及びリン酸水素カリ白金を析出させる場合;(1)塩化白金酸、第二リン酸アンモニウム、及び第二リン酸ソーダ、(2)塩化白金酸及び酢酸塩ロジウムを析出させる場合;(1)濃硫酸及びロジウム、(2)リン酸及びリン酸ロジウムルテニウムを析出させる場合;(1)ルテニウム錯体黄銅を析出させる場合;(1)シアン化第一銅、シアン化亜鉛、シアン化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムスズ鉛合金を析出させる場合;(1)スズ、鉛、遊離ホウフッ酸、及びペプトン、(2)スズ、鉛、遊離ホウフッ化水素酸、及びペプトン鉄ニッケル合金を析出させる場合;(1)スルファミン酸ニッケル、スルファミン酸第一鉄、及び酢酸ナトリウムコバルト燐を析出させる場合;(1)塩化コバルト、亜リン酸、及びリン酸
また、上述したような、超臨界状態とする物質及び電解質溶液の、浴中での仕込み比は特に限定されるものではなく、電解質溶液の濃度や反応条件等を考慮して適宜設定することができる。しかし、電解質溶液が少な過ぎると反応が進み難くなるため、臨界点以下の物質2に対して少なくとも0.01wt%以上の電解質溶液1を含むことが好ましい。
さらに、反応させる浴中には、上述したような超臨界状態とする物質及び電解質溶液に加えて、界面活性剤を含むことができる。例えば、超臨界状態とする物質として二酸化炭素を選択した場合、二酸化炭素は電解質溶液とは非相溶であり、そのため、超臨界状態に移行させたときに通常は相分離してしまう。そこで界面活性剤を加えることにより、系を乳濁させて均一とし、反応効率を向上させるものである。界面活性剤としては、従来知られた陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、及び両性イオン性界面活性剤の中から、少なくとも一種以上を適宜選択して使用することができる。
陰イオン性界面活性剤としては、石鹸、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、フェニルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、硫酸化油、リン酸エステル、パーフルオロオレフィンスルホン酸塩、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル硫酸エステル塩、パーフルオロフェニルエーテル硫酸エステル塩、パーフルオロメチルタウリン酸塩、スルホパーフルオロコハク酸塩、パーフルオロエーテルスルホン酸塩等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記陰イオン性アニオン界面活性剤の塩のカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、電解可能な陽イオンであれば用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、C1〜25アルキルフェノール系、C1〜20アルカノール、ポリアルキレングリコール系、アルキロールアミド系、C1〜22脂肪酸エステル系、C1〜22脂肪族アミン、アルキルアミンエチレンオキシド付加体、アリールアルキルフェノール、C1〜25アルキルナフトール、C1〜25アルコキシ化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、スチレン化フェノール、アルキルアミンエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加体、アルキルアミンオキサイド、C1〜25アルコキシ化リン酸(塩)、パーフルオロノニルフェノール系、パーフルオロ高級アルコール系、パーフルオロポリアルキレングリコール系、パーフルオロアルキロールアミド系、パーフルオロ脂肪酸エステル系、パーフルオロアルキルアミンエチレンオキシド付加体、パーフルオロアルキルアミンエチレンオキシド/パーフルオロプロピレンオキシド付加体、パーフルオロアルキルアミンオキサイド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
陽イオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、エチレンオキシド付加型アンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、酢酸モノアルキルアンモニウム、イミダゾリニウムベタイン系、アラニン系、アルキルベタイン系、モノパーフルオロアルキルアンモニウムクロライド、ジパーフルオロアルキルアンモニウムクロライド、パーフルオロエチレンオキシド付加型アンモニウムクロライド、パーフルオロアルキルベンジルアンモニウムクロライド、テトラパーフルオロメチルアンモニウムクロライド、トリパーフルオロメチルフェニルアンモニウムクロライド、テトラパーフルオロブチルアンモニウムクロライド、酢酸モノパーフルオロアルキルアンモニウム、パーフルオロアルキルベタイン系等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
両性イオン性界面活性剤としては、ベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸等が挙げられ、また、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化又はスルホン酸化付加物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
界面活性剤の使用量は特に限定されないが、電解質溶液に対して、0.0001〜20wt%程度とすることが好ましく、就中0.001〜10wt%である。
また、図1(b)の状態での反応条件は適宜設定できる。例えば、超臨界状態とする物質として二酸化炭素を選択した場合には、その臨界点である温度304.5Kかつ圧力7.387MPa以上の条件で反応させることが必須とされる。なお、二酸化炭素の場合の反応温度は304.5K以上である限り特に限定されないが、好ましくは304.5K〜573.2K、最も好ましくは304.5K〜473.2Kの範囲である。また反応圧力は7.387MPa以上である限り特に限定されないが、好ましくは7.387MPa〜40.387MPa、最も好ましくは7.4MPa〜20.387MPaの範囲である。また、反応時間は、析出させようとする皮膜の厚さ等により異なり、特に限定されない。必要に応じて0.001秒〜数ヶ月程度の時間が適宜設定される。
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態を図2に示す。図2の例においては、反応前の(a)の状態で浴中に電解質溶液1、臨界点以下の物質2、粒子を含むことは上記第1の実施の形態と同様であるが、系の圧力を上げる等して、臨界点以下の物質2を超臨界状態の物質5に移行させたときに、(b)に示すように相分離した状態となり、かつ超臨界状態の物質5の密度が電解質溶液1のそれよりも高いために、超臨界状態の物質5が電解質溶液1よりも下側に位置するようになる。(b)の状態で電気化学的反応を行い、反応を終えた後、再び臨界点以下の状態に移行させることにより、超臨界状態の物質5が急激に気化又は液化しつつ上側の層に移動するため上記第1の実施の形態と同様に系に流れが生じ、電極4の表面が洗浄される。なお、浴中の各成分の組成、反応条件等は第1の実施形態の場合に準ずる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、超臨界状態とする物質、電解質溶液、界面活性剤等の組成、濃度、及び電流等の反応条件、反応方法等は適宜変更することができる。
陽極に純ニッケル板、陰極にハルセル試験用真鍮板を用い、二酸化炭素を超臨界状態とし電気めっきを行った。電解質溶液としてはニッケルワット浴を用いた。その組成を以下に示す。
(めっき浴組成)
二酸化炭素(純度99.9%以上)、硫酸ニッケル370g/l、塩化ニッケル88g/l、ホウ酸95g/l、pH4.70、CNT(カーボンナノチューブ、直径1.22-1.50nm、長さ1-4μm、純度50-70%)
界面活性剤として、非イオン性界面活性剤オクタ(エチレンオキシド)ドデシルエーテル(H(OCH2CH2)8O(CH2)12H)を上記電解質溶液に対して3.0wt%加えた。超臨界状態とする物質として二酸化炭素を用い、二酸化炭素と常圧における電解質溶液の体積比を1/2とし、温度50℃(323K)、圧力10MPa、電流密度5.0A/dmで10分間反応を行った。その結果、電極表面に、ほどよく均一なNi-C複合めっき膜が形成された。得られためっき膜の膜厚は表面で約8.8μm、裏面で約8.0μmであった。
次に、上述の方法により得られためっき膜について考察する。
図3は、超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤を用いためっきの方法による皮膜のSEM写真である。反応は、粒子を加えない条件下で行い、反応時間は10分間である。図3ではNiめっき膜の滑らかな表面が観察される。
図4は、超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤/カーボンナノチューブを用いた本実施例による皮膜のSEM写真である。
図5は、めっき液/カーボンナノチューブを用いためっきの方法による皮膜のSEM写真である。
図6は、超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤/カーボンナノチューブを用いた本提案による皮膜の光学顕微鏡写真である。
図7は、めっき液/カーボンナノチューブを用いためっきの方法による皮膜の光学顕微鏡写真である。
図6と図7とを比較することにより、図6に記載した、本実施例による皮膜は、めっき液/カーボンナノチューブを用いた通常のめっきの方法による皮膜と比較し、カーボンナノチューブの分散がより均一なニッケル皮膜であることがわかる。
図4〜図7によると、本実施例により成膜されたニッケル粒子の大きさはほぼ80nm以下であり、これは、通常の電気めっきにより成膜されたニッケル粒子の大きさよりもはるかに小さい。皮膜表面の凹凸はカーボンナノチューブの堆積によるものであるが、その凹凸もまた通常の電気めっきによるカーボンナノチューブの堆積の場合よりもはるかに小さい。図4及び図6に示すように、本実施例により成膜された皮膜中においてニッケルと炭素粒子は均質に分散されている。
図8は、本実施例によるNi-C複合めっき膜のX線回折を示す図である。反応は、超臨界状態の二酸化炭素の存在下で行い、反応時間は10分間である。図8は、Ni-C複合めっき膜中にニッケルとカーボンナノチューブとに由来するピークが存在していることを示している。また、図8は、このNi-C複合めっき膜中には金属構造やその特性に影響を与えかねない不純物がなく、良質の膜が成膜されていることも示している。
上述のように、本実施形態又は本実施例によれば、還元電位の低い金属であっても比較的穏やかな条件の下で皮膜を形成できる。
また、粒子径が小さくなるほど不活性微粒子の複合めっき皮膜中に含有される粒子数が減少することも問題であった。たとえば、マイクロオーダーの粒子では5〜15vol%含有する条件であっても、ナノオーダーの粒子では0.1vol%以下に減少してしまう。この原因としては、親水性である不活性微粒子の表面に吸着した水分子と、析出する金属の表面に吸着した水分子との間に働く斥力の影響が指摘されていた。しかしながら、本実施形態又は本実施例によれば、ナノオーダーサイズの粒子であっても粒子が皮膜中で均質に分散されているという優れた利点を有する複合材料を得ることができる。特に、本実施形態又は本実施例では界面を利用して二次元的に粒子を分散させることができるため、超音波等を使用する一般の分散方法よりも優れている。
さらに、本実施形態又は本実施例によれば、粒子の種類の選択の幅を大きく広げることができるという利点もある。このことは、電解質溶液に分散が困難であるため使用が困難であった粒子を、本実施形態又は本実施例によれば使用することができるようになる点で大きな意義を有する。
また、圧力によって反応速度や分散状態を制御できるという利点もある。
特に、超臨界状態を利用して反応を行った場合には水の電気分解による水素ガスで生成されるピンホールの生成が少なく、良質の膜を得ることができる。
なお、本実施形態又は本実施例は、耐摩耗性に優れた金属と、その他の耐熱性、耐摩耗性に優れた微粒子とを組み合わせ、更なる性能を追求した新しい素材の皮膜を析出させることを狙ったもの(耐摩耗性皮膜)、共析させる素材として二硫化モリブデン、グラファイト、四弗化エチレンなど元々潤滑性のあるものによって潤滑性複合皮膜を得るもの、素材を銅と一緒に析出させる機械部品の摺動部やプラスチック射出成型の金型等の摩擦や粘着性を減少させる目的で用いられるもの(潤滑性皮膜)に適用してもよい。さらに、有機顔料を共析する複合めっき(カラーめっき)、蛍光顔料を共析する複合めっき(蛍光めっき)、繊維を共析して、機械的強度の向上を図っためっき(強化金属)、繊維中に金属を含ませて、様々な機能の付加(金属含浸繊維(抗菌繊維、消防服、電磁波シールド服、静電防止繊維等))、紙、パルプ中に金属を含ませて様々な機能の付加((金属含浸紙・パルプ)抗菌ノート、簡易電磁波シールド等)、各種電子機器用部品、装飾品の一部等(セラミック材料の金属化)に適用してもよい。
また、自動車、オートバイ部品金型、宇宙産業用機器材及び航空機用機器材、化学プラント、コンピュータ用又は電子機器要素及び部品又はOA機器用又はカメラ等の光学機器用要素及び部品(記憶素子、スイッチング素子等)及び磁気テープ又はCD等記録媒体の等の摺動性、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐熱膨張性、耐剥離性、耐水耐薬品及び耐ガス腐食性の改善、外観及び触感の改善、色調の改善、比重密度の改善を目的にして、潤滑油組成物、燃料組成物、グリースのようなペースト状組成物、成形用樹脂組成物、ゴム組成物、金属材料、セラミック組成物等への添加、または、粉末の形態自体で機械の摺動部位等に存在させ、或いは吸着材、イオン交換材として生体内へ経口投与する等、各種用途に適用することも考えられる。
以上、特定の実施形態及び実施例を参照しながら、本発明について説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施形態、実施例の修正又は代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
また、この発明の説明用の実施形態及び実施例が上述の目的を達成することは明らかであるが、多くの変更や他の実施例を当業者が行うことができることも理解されるところである。特許請求の範囲、明細書、図面及び説明用の各実施形態のエレメント又はコンポーネントを他の1つまたは組み合わせとともに採用してもよい。特許請求の範囲は、かかる変更や他の実施形態及び実施例をも範囲に含むことを意図されており、これらは、この発明の技術思想および技術的範囲に含まれる。
第1の実施形態の反応過程を示す図である。 第2の実施形態の反応過程を示す図である。 超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤を用いためっきの方法による皮膜のSEM写真である。 超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤/カーボンナノチューブを用いた本実施例による皮膜のSEM写真である。 めっき液/カーボンナノチューブを用いためっきの方法による皮膜のSEM写真である。 超臨界二酸化炭素/めっき液/界面活性剤/カーボンナノチューブを用いた本提案による皮膜の光学顕微鏡写真である。 めっき液/カーボンナノチューブを用いためっきの方法による皮膜の光学顕微鏡写真である。 Ni-C複合めっき膜のX線回折を示す図である。
符号の説明

電解質溶液

臨界点以下の物質

均一状態

電極

超臨界状態の物質

Claims (8)

  1. 液体と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記液体の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法。
  2. 亜臨界状態である物質と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記亜臨界状態である物質の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法。
  3. 超臨界状態である物質と電解質溶液と粒子とを含み、前記粒子が前記超臨界状態である物質の相と前記電解質溶液の相との界面に位置する浴中で反応を行うことを特徴とする電気化学的反応方法。
  4. 反応を終えた後、前記超臨界状態である物質を臨界点以下の状態へ移行させることを特徴とする請求項3記載の電気化学的反応方法。
  5. 前記物質は二酸化炭素であることを特徴とする請求項2又は3記載の電気化学的反応方法。
  6. 前記浴は界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項記載の電気化学的反応方法。
  7. 複合めっきであることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項記載の電気化学的反応方法。
  8. 液体と、前記液体と相分離する電解質溶液と、前記液体、前記電解質溶液のいずれにも溶解しない粒子とを含む浴中で反応を行い、前記粒子を共析させることを特徴とする電気化学的反応方法。
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