JP3702656B2 - 圧電素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電体のマウント部に端子が接合された圧電素子およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、圧電体のマウント部と端子とを導電性接着剤で接合する際の表面処理技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電振動子あるいは発振器などの圧電素子では、水晶片などといった圧電体(圧電振動片)のマウント部に端子が導電性接着剤によって接合された構成になっている。このような圧電素子において、圧電体のマウント部の表面は、従来、銀で被覆され、かつ、端子の表面はニッケルで被覆されている。
【0003】
圧電素子に対しては、小型・薄型化、共振周波数の高精度化・高安定化、CI値(クリスタルインピーダンス/振動子の機械的振動を抵抗、容量、インダクタンスの直列共振回路とこの直列共振回路に対する並列容量とによって等価回路として表したときの抵抗の値)の低減、電気的特性面の向上、機械的強度の向上などといった要求がある。これらの要求のうち、高精度化や電気的特性面での信頼性の向上については、圧電体のマウント部の表面を金または銀などの貴金属層で被覆する一方、端子の表面も金または銀などの貴金属層で被覆することによって達成することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電体のマウント部および端子の表面を金または銀などの貴金属層で被覆すると、高精度化や電気的特性面での信頼性を向上させることができても、金または銀は導電性接着剤との密着性が悪いため、接合部分の機械的強度が低下するという問題点がある。しかも、小型・薄型化を図るために、圧電体のマウント部と端子との接合面積を小さくすると、その分、接合部分の機械的強度が低下するので、圧電体のマウント部および端子の表面を金または銀で被覆したときの接合部分の機械的強度の低下はより顕著になる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、圧電体のマウント部および端子の表面を金または銀からなる貴金属層で被覆しても、接合部分の機械的強度が低下しない圧電素子およびその製造方法を実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、圧電体と、該圧電体のマウント部に導電性接着剤によって接合された端子とを有する圧電素子において、前記圧電体のマウント部および前記端子は、表面が金または銀からなる貴金属層で被覆されているとともに、前記圧電体のマウント部および前記端子のうちの少なくとも一方の前記貴金属層表面にはチオール処理膜が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明で用いたチオールは、R−SH(但し、Rはアルキル基などの有機基であり、好ましくは炭素数が3以上のアルキル基、あるいは、樹脂成分と化学吸着や結合を行なう官能機能を有する有機基)で表される。このチオールを金属膜などの表面に付着させておくと、金属膜表面と樹脂との密着性が向上する。その理由として、チオールは金属膜表面に錯体を形成することによりチオール基を金属膜の方に向け、樹脂成分との親和性が高い有機基を外側に向けているためと考えられる。従って、金あるいは銀といった貴金属層に導電性接着剤を直接塗布した場合には密着性が悪くても、貴金属層の表面にチオール処理膜を形成しておけば、貴金属層と導電性接着剤との密着性が向上する。それ故、圧電体のマウント部および端子の双方が金または銀からなる貴金属層で被覆されていても、圧電体のマウント部と端子とを導電性接着剤を介して高い機械的強度をもって接合することができる。
【0008】
本発明において、チオール処理膜は、前記圧電体のマウント部および前記端子の一方の貴金属層表面に形成されていてもよいが、前記圧電体のマウント部および前記端子の双方の貴金属層表面に形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る圧電振動子を製造するには、前記圧電体のマウント部および前記端子の表面を金または銀からなる貴金属層で被覆した以降、前記圧電体のマウント部および前記端子のうちの少なくとも一方に塗布した導電性接着剤によって前記圧電体のマウント部と前記端子とを接合する前に、前記圧電体のマウント部および前記端子のうちの少なくとも一方の前記貴金属層表面にチオール処理膜を形成しておく。
【0010】
ここで、前記チオール処理膜の形成は、前記圧電体のマウント部および前記端子の双方の前記貴金属層表面に対して行っておくことが好ましい。
【0011】
このようなチオール処理膜の形成は、当該チオール処理膜を形成すべき前記貴金属層表面に対して、たとえば、チオールを溶剤で希釈した処理液を接触させることにより行うことができる。本発明において、処理液を貴金属層に接触させるだけでもチオールは貴金属層に付着し、かつ、チオールはあくまで貴金属層の表面に単分子層を形成する程度に付着させるだけで貴金属層の表面改質を行う。従って、圧電体のマウント部と導電性接着剤との界面、あるいは端子と導電性接着剤との界面にチオール処理膜が介在していても、圧電体のマウント部と端子との間の電気的な接続に支障がない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、圧電素子の全体構成を示す斜視図である。図2(A)は、本発明を適用した圧電素子において、電極膜を形成した圧電体を一方の腕部の側からみた斜視図、(B)は、他方の腕部の側からみた斜視図、(C)は基部の方からみた側面図である。
【0014】
[圧電素子の全体構造]
図1に示すように、音叉型の水晶振動子1(圧電素子)は、基部21から第1および第2の腕部22、23が同一方向に並列して延びる音叉型の平面形状を有する薄板状の水晶片からなる圧電体2と、この圧電体2の基部21に形成されているマウント部51、52に対して2本の内部端子31がそれぞれ導電性接着剤50によって接続されたステム30と、圧電体2を収納したケース35とから構成され、このケース35とステム30とによって内部が気密状態に保たれている。
【0015】
図2(A)、(B)に示すように、圧電体2の表面には、上面および下面のそれぞれに所定のギャップ10を隔てて2つの電極膜41、42が分割形成され、これらの電極膜41、42の各々にステム30の外部端子33(図1参照)から交流電圧を印加することによって腕部22、23が所定の周波数で振動する。
【0016】
電極膜41、42は、詳しくは後述するが、クロム層からなる下地金属膜と金電極層との2層構造になっている。また、腕部22、23では各電極膜41、42間のギャップ10が極めて狭いため、電極膜41、42間で短絡が発生するおそれがあるので、電極膜41、42の表面に表面保護膜(図示せず。)を形成する場合もある。
【0017】
圧電体2では、上面と下面との間で各電極膜41、42同士を接続するために各側端面にも電極膜41、42が形成されている。但し、側端面においても所定の箇所では、電極膜41、42の間を絶縁分離する必要があるので、たとえば、腕部22、23のつけ根部分に挟まれた又部24の内側の側端面にはかなり幅広のギャップ11が形成されている。また、図2(C)に示すように、圧電体2の基部21には、各内部端子31を導電性接着剤50によってそれぞれ電極膜41、42に接続するマウント部51、52が形成され、この基部21の側端面210には、電極膜41、42のいずれも形成されておらず、側端面210全体がギャップ12として機能している。ここで、導電性接着剤50は、いわゆる銀ペーストなどであり、樹脂成分に銀などの導電粒子が配合されている。また、各内部端子31をマウント部51、52に接合するにあたっては、導電性接着剤50を単独で使用する場合の他、導電性接着剤50と導電性を有しない接着剤(非導電性接着剤)とを併用し、その機械的強度を高めることもある。
【0018】
[接合部分の構成]
図3は、水晶振動子1におけるマウント部と内部端子との接合構造を拡大して示す断面図である。
【0019】
図3に示すように、本形態の水晶振動子1では、その電気的特性などを向上させるために、マウント部51、52(電極膜)は、下地膜としてのクロム層Crの表面を金層Auまたは銀Agからなる貴金属層で被覆するとともに、内部端子31についてもその芯材の表面に下地膜として形成したニッケル層Niの表面を金層Auまたは銀Agからなる貴金属層で被覆してある。但し、マウント部51、52(電極膜)の表面、あるいは内部端子31の表面が金層Auまたは銀層Agからなる貴金属層で被覆されていると、内部端子31とマウント部51、52(電極膜)をそのまま導電性接着剤50で接合しようにも、導電性接着剤50の樹脂成分と金層Auまたは銀層Agからなる貴金属層との密着性が悪いので、十分な接合強度が得られない。そこで、本形態では、圧電体2のマウント部51、52および内部端子31の貴金属層(金層Auまたは銀層Ag)表面にはチオール処理膜60、61が形成されている。従って、導電性接着剤50と圧電体のマウント部51、52とはチオール処理膜60を介して接着されているので、密着性に優れている。また、導電性接着剤50と内部端子31とはチオール処理膜61を介して接着されているので、密着性に優れている。それ故、圧電体2のマウント部51、52と内部端子31とは導電性接着剤50によって十分な機械的強度をもって接合されている。
【0020】
ここで用いたチオール処理膜60、61は、後述するように、内部端子31および圧電体2のマウント部51、52に対して、チオールを溶剤で希釈した処理液を接触させることにより付着させた単分子膜である。ここで用いたチオールは、R−SH(但し、Rはアルキル基などの有機基であり、好ましくは炭素数が3以上のアルキル基、あるいは樹脂成分と化学吸着や結合を行なう官能機能を有する有機基)で表され、単分子層を形成しただけでも、金層Auまたは銀層Agの表面と錯体を形成することによりチオール基SHを金層Auまたは銀層Agの表面の方に向け、樹脂との親和性が高い有機基を外側に向けているため、導電性接着剤50と圧電体2のマウント部51、52と密着性、および導電性接着剤50と内部端子31との密着性を高めているものと考えられえる。すなわち、チオールは、導電性接着剤の樹脂成分との親和性が高い有機基を外側に向けており、導電性接着剤の樹脂成分の有機鎖とチオールの有機鎖とが絡まっているため密着性が高いと考えられる。あるいは、導電性接着剤の樹脂成分とチオールの有機基との化学吸着や結合が生じているため密着性が高いとも考えられる。それ故、チオールとしては、R−SHで表したときのRが、炭素数が3以上のアルキル基であることが好ましく、直鎖が長いほど導電性接着剤の樹脂成分との親和性が高い。また、チオールの有機基としては、導電性接着剤の樹脂成分と化学吸着や結合を行なう官能機能を有する有機基であっても、導電性接着剤の樹脂成分との密着性が高い。
【0021】
[水晶振動子1の製造方法の概略]
このような構成の水晶振動子1の製造方法を、図4を参照して説明する。図4には、圧電体2の2本の腕部22、23に相当する部分の断面を表してある。
【0022】
まず、図4(A)に示すように切り出した水晶のウエーハWに研磨加工、洗浄を行った後、図4(B)に示すように、クロム層Crおよび金層Auをそれぞれ数百オングストロームの膜厚でスパッタ法や蒸着法により形成する。ここでクロム層Crを形成するのは金層Auだけでは水晶のウエーハWに対する密着性が悪いからである。
【0023】
次に、液状のフォトレジストPR1を金層Auの表面に塗布した後、フォトレジストPR1を音叉形状のパターンに露光、現像し、図4(C)に示すように、音叉外形のレジストマスクM1を形成する。次に、レジストマスクM1を介して金層Auおよびクロム層Crにエッチングを行い、図4(D)に示すように、金層Auおよびクロム層Crを音叉形状に残す。次に、金層Auおよびクロム層CrをマスクとしてウエーハWにフッ酸およびフッ化アンモニウムを用いたエッチング液でエッチングを行い、図4(E)に示すように、水晶を音叉形状に成形する。この水晶片が圧電体2である。
【0024】
次に、圧電体2上のレジストマスクM1、金層Auおよびクロム層Crを全て除去し、図4(F)に示すように、改めて、電極膜41、42およびマウント部51、52を形成するためのクロム層Crおよび金層Au(または銀層Ag)をスパッタ法により形成する。なお、図示を省略するが、この工程では、後述する周波数調整のための錘部分を圧電体2の腕部22、23先端側に金層(または銀層)として形成しておく(金属膜形成工程)。
【0025】
次に、図4(F)に示すように、圧電体2の金層Au(または銀層Ag)の表面に液状のフォトレジストPR2を塗布する。(レジスト塗布工程)。
【0026】
次に、図4(G)に示すように、フォトレジストPR2を各電極膜41、42およびマウント部51、52のパターン形状に露光、現像し、各電極膜41、42およびマウント部51、52の外形をしたレジストマスクM2を形成する(露光・現像工程)。
【0027】
次に、図4(H)に示すように、レジストマスクM2を介して金層Au(または銀層Ag)およびクロム層Crにエッチングを行う。しかる後に、レジストマスクM2を除去する。その結果、図2(A)、(B)、(C)を参照して説明したように、金層Au(または銀層Ag)およびクロム層Crは電極膜41、42およびマウント部51、52のパターン形状に残され、クロム層Crからなる下地金属膜と金層Au(または銀層Ag)とからなる電極膜41、42およびマウント部51、52を形成できる(パターニング工程)。
【0028】
次に、表面保護膜の形成工程を行う(図4(I))。
【0029】
このようにして電極膜41、42およびマウント部51、52を形成した圧電体2については、すぐにマウント工程を行わず、図5(A)に示すように、チオールをアルコールやケトンなどの溶剤で溶かした処理液L1に浸漬し、しかる後に、図5(B)に示すように、処理液L1に用いた溶剤と同一の溶剤、たとえばアルコールL2に圧電体2を浸漬することににより、圧電体2を軽く濯いで圧電体2の表面から余剰な処理液L1を除去する。しかる後に乾燥を行う。ここで用いたチオールは、R−SH(但し、Rはアルキル基などの有機基であり、好ましくは炭素数が3以上のアルキル基、あるいは樹脂成分と化学吸着や結合を行なう官能機能を有する有機基)で表され、圧電体2を処理液L1に浸漬しただけでも、図3に示したように、チオールがチオール処理膜60として金層Au(または銀層Ag)の表面に付着する(チオールの付着処理)。
【0030】
また、図3に示すように、内部端子31についても、その下地金属膜として、ニッケル層Ni単独、あるいは銅層とニッケル層とを形成した後、金層Au(または銀層Ag)を被覆する。そして、圧電体2と同様、図5(A)を参照して説明した処理液L1に内部端子31を浸漬し、しかる後に、図5(B)に示すアルコールL2などに浸漬することにより、内部端子31の表面から余剰な処理液L1を除去した後、乾燥を行う。その結果、図3に示すように、内部端子31の表面を覆う金層Au(または銀層Ag)の表面にチオール処理膜61が形成される(チオールの付着処理)。
【0031】
このようにしてチオール処理膜60、61を形成し終えた圧電体2と内部端子31については、図3および図6に示すように、マウント工程として、基部21に形成されているマウント部51、52にステム30の内部端子31を導電性接着剤50で電気的および機械的に接続する。
【0032】
それには、圧電体2のマウント部51、52の金層Au(または銀層Ag)の表面、および内部端子31の金層Au(または銀層Ag)の表面のうちの一方、あるいは両方に導電性接着剤50を塗布する。しかる後に、圧電体2のマウント部51、52に導電性接着剤50を介して内部端子31を重ね、硬化処理を行う。このようにして、チオールの付着処理済の金層Au(または銀層Ag)で被覆された圧電体2のマウント部51、52と、チオールの付着処理済の金層Au(または銀層Ag)で被覆された内部端子31とは、導電性接着剤50によって接合される。
【0033】
次に、この段階での圧電体2の周波数調整を圧電体2の腕部22、23先端に形成してある錘部分へのレーザトリミングにより行った後、真空チャンバー内でケース35へステム30を圧入し(封止工程)、水晶振動子1を製造する。しかる後には、水晶振動子1の特性検査を行う(検査工程)。
【0034】
[その他の実施例およびそれらの評価結果]
上記の形態では、圧電体2のマウント部51、52および内部端子31の双方にチオールの付着処理を行ったが、いずれか一方のみにチオールの付着処理を行ってもよい。
【0035】
ここまでは、圧電素子の一例として、圧電体が音叉型の水晶振動子で説明した。次に、チオール付着処理は同じで、チオール付着処理の効果が大きい図7に示すような、圧電体が矩形状の厚みすべり水晶振動子での評価結果を説明する。
【0036】
表1には本発明の各実施例並びに比較例に係る水晶振動子の構成、およびそれらの評価結果を示してある。
【0037】
【表1】
【0038】
ここで、圧電体2としては、マウント部51、52を金層Auで被覆したものを用い、内部端子31としては金層Auあるいは銀層Agで覆ったものを用いた。また、圧電体2と内部端子31との接合面積を0.72mm2 および0.36mm2 とした場合のそれぞれについて、チオールの付着処理を圧電体2の側および内部端子31の側の双方に行った試料(実施例1〜4)、チオールの付着処理を圧電体2の側のみに行い、内部端子31の側には行わない試料(実施例5〜8)、およびチオールの付着処理を内部端子31の側のみに行い、圧電体2の側には行わない試料(実施例9〜12)を製作し、それぞれについて、125℃1000時間放置後の共振周波数のシフト量(Δf)並びにCI値のシフト量(ΔCI)、600gの治具中に水晶振動子を収納して高さ125cmのところからの落下を100回繰り返した後の共振周波数のシフト量(Δf)並びにCI値のシフト量(ΔCI)を計測した。また、100個の試料のうち、圧電体から端子が剥離した数(剥離発生率)も評価した。
【0039】
なお、比較例としては、圧電体02の側には金層Auまたは銀層Agを形成する一方、内部端子31の方には金層Au、銀層Agあるいはニッケル層Niを形成し、いずれの側にもチオールの付着処理を行わなかった試料(比較例1〜6)を製作した。
【0040】
その結果、表1からわかるように、落下試験において、本発明の実施例1〜8では、圧電体2から内部端子31が剥離した数(剥離発生率)が0個であるのに対して、比較例のうち、金層Auあるいは銀層Agを形成して電気的な特性を向上させた比較例1〜4では、圧電体2から内部端子31が剥離した数(剥離発生率)が5個〜16個もある。また、内部端子31にニッケル層Niを形成した比較例5、6でも、圧電体2から内部端子31が剥離した数(剥離発生率)が1個、3個ある。それ故、本発明によれば、圧電体2と内部端子31との接合部分の機械的な強度が大幅に向上することが確認できた。
【0041】
また、表1からわかるように、本発明の実施例9〜12では、圧電体2から内部端子31が剥離した数(剥離発生率)が2個〜14個であるが、対応する比較例1〜4での発生率と比較すれば少ない傾向にある。従って、チオールの付着処理を内部端子31の側のみに行い、圧電体2の側には行わない場合(実施例9〜12)であっても、チオールの付着処理を一切行わない場合と比較すると、機械的強度が向上していることがわかる。
【0042】
また、落下試験前後における共振周波数のシフト量(Δf)並びにCI値のシフト量(ΔCI)からみても、本発明を適用すれば、小さく抑えることができる。
【0043】
それ故、機械的強度(落下試験)については、チオールの付着処理を圧電体2の側および内部端子31の側の双方に行った試料(実施例1〜4)が最も優れ、以下、チオールの付着処理を圧電体2の側のみに行い、内部端子31の側には行わない試料(実施例5〜8)、チオールの付着処理を内部端子31の側のみに行い、圧電体2の側には行わない試料(実施例9〜12)の順にその効果が減少していくといえる。なお、チオールの付着処理を圧電体2の側および内部端子31の側のいずれに対しても行わなかった試料(比較例1〜6)の間では、銀層Agとニッケル層Niとの組合せが最も機械的強度が高く、以下、金層Auと銀層Agとの組合せ、金層Auと金層Auとの組合せの順に機械的強度が低下している傾向にある。
【0044】
また、電気的特性の安定性(放置試験)については、圧電体2および内部端子31の材質の影響が支配的であり、金層Auと金層Auの組合せが最も優れ、以下、金層Auと銀層Agとの組合せ、銀層Agとニッケル層Niに組合せの順に低下していく。なお、電気的特性の安定性に対しては、チオールの付着処理の効果はやや確認できる程度である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る圧電素子およびその製造方法では、圧電体のマウント部および端子を覆う金または銀からなる貴金属層の表面にチオール処理膜が形成されているので、圧電体のマウント部と端子とを導電性接着剤によって高い機械的強度をもって接合することができる。それ故、圧電体のマウント部と端子との接合面積を縮小して、圧電素子の小型・薄型化を図ることも可能である。また、圧電体のマウント部および端子の表面を銀あるいは金で被覆しても、接合部分の機械的強度が低下しないので、電気的特性面での信頼性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電素子の全体構成を示す斜視図である。
【図2】(A)は、電極膜を形成した圧電体を一方の腕端の方からみた斜視図、(B)は他方の腕端の方からみた斜視図、(C)は基部の方からみた側面図である。
【図3】本発明を適用した水晶振動子におけるマウント部と内部端子との接合構造を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明を適用した圧電素子の製造方法において、圧電体に電極膜などを形成するまでの工程図である。
【図5】(A)、(B)はそれぞれ、本発明を適用した圧電素子の製造方法において、チオールの付着処理の様子を示す説明図、およびその濯ぎ処理の様子を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した圧電素子の製造方法において、圧電体に電極膜などを形成した以降の工程図である。
【図7】図1に示す圧電素子とは別のタイプの圧電素子の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 水晶振動子(圧電素子)
21 圧電素子の基部
22、23 圧電素子の腕部
30 端子
31 端子の内部端子
35 ケース
41、42 電極膜
50 導電性接着剤
51、52 マウント部
60、61 チオール処理膜
L1 処理液
L2 濯ぎ用のアルコール
Claims (5)
- 圧電体と、該圧電体のマウント部に導電性接着剤を介して接合される端子とを有する圧電素子において、
前記マウント部および前記端子は、表面が金または銀からなる貴金属層で被覆されているとともに、
前記マウント部および前記端子のうちの少なくとも一方の前記貴金属層表面にはチオール処理膜が形成されてなり、前記マウント部および前記端子のうちの少なくとも一方の前記貴金属層表面と前記導電性接着剤との間に前記チオール処理膜が配置され、前記マウント部と前記端子とが接合されていることを特徴とする圧電素子。 - 請求項1において、前記マウント部および前記端子の双方の前記貴金属層表面にチオール処理膜が形成されていることを特徴とする圧電素子。
- 圧電体と、該圧電体のマウント部に導電性接着剤によって接合された端子とを有する圧電素子の製造方法において、
前記マウント部および前記端子の表面を金または銀からなる貴金属層で被覆する工程と、
前記マウント部および前記端子のうちの少なくとも一方の前記貴金属層表面にチオール処理膜を形成する工程と、
しかる後、前記マウント部および前記端子のうちの少なくとも一方に塗布した導電性接着剤によって前記マウント部と前記端子とを接合する工程とを含む圧電素子の製造方法。 - 請求項3において、前記チオール処理膜の形成は、前記マウント部および前記端子の双方の前記貴金属層表面に対して行うことを特徴とする圧電素子の製造方法。
- 請求項3または4において、前記チオール処理膜の形成は、当該チオール処理膜を形成すべき前記貴金属層表面に対して、チオールを溶剤で希釈した処理液を接触させることにより行うことを特徴とする圧電素子の製造方法。
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