JP3309826B2 - 弾性表面波共振片、弾性表面波共振子の製造方法 - Google Patents

弾性表面波共振片、弾性表面波共振子の製造方法

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JP3309826B2
JP3309826B2 JP09903099A JP9903099A JP3309826B2 JP 3309826 B2 JP3309826 B2 JP 3309826B2 JP 09903099 A JP09903099 A JP 09903099A JP 9903099 A JP9903099 A JP 9903099A JP 3309826 B2 JP3309826 B2 JP 3309826B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】安定度の高い高周波用の発振
回路および装置を構成するのに適した弾性表面波共振子
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】IC等の微細加工技術を利用して、圧電
体表面上へ微細電極の形成が可能となり、弾性表面波
(SAW)を電気的に駆動あるいは検出できるようにな
った。これを利用して、およそ100MHzからギガH
z帯の高周波を安定して得られるようになった。この弾
性表面波を用いたSAWデバイスは、高周波用のフィル
ター(SAWフィルタ)あるいは発振回路を構成するた
めの弾性表面波共振子(SAW共振子)などとして用い
られている。
【0003】図2に、従来のSAWデバイスの概要を
示してある。このデバイス90では、SAW共振片92
がこれを支持するための金属部91に接着剤93で固着
されており、ケース96内に窒素雰囲気中で抵抗溶接な
どによって封止されている。SAW共振片92と電気的
な接続を得るためのリード94が金属部91の中の絶縁
部すなわち封止ガラス97を貫通しており、これらのリ
ード94はSAWデバイス上の電極とボンディングワイ
ヤー95によって電気的に接続されている。
【0004】図2に示した従来のSAWデバイス90
は、セラミックなどのベース101を備えており、この
ベース101に弾性表面波共振片92が接着剤93によ
って取りつけられた、いわゆる全面接着型のSAWデバ
イスである。ベース101には、SAW共振片92と電
気的な接続を構成するために、電極がメタライズされて
おり、ベース101上の電極とSAW共振片92の上の
電極は上記と同様にボンディングワイヤ95によって電
気的に接続されている。また、ベース101の上方に
は、キャップ102が窒素雰囲気中で接着剤などによっ
て取りつけられている。キャップ102は、ろう付け、
溶接などによって取りつけられているものもある。
【0005】図2に、これらのSAWデバイスに収納
されるSAW共振片110の概略を示してある。SAW
共振片110は、水晶片などの圧電体111を用いて形
成される。この圧電体111は、平坦な圧電体基板を所
定の大きさ、および寸法にカットしたものであり、後述
するような反射器を設けるエリアを確保でき、量産性が
高く、さらに、加工の容易な長方形にカットされたもの
が多い。圧電体111の一方の面(主面)の略中央に
は、交差指電極(IDT)112がアルミニウム系素材
などの薄膜電極を用いて構成されている。さらに、この
IDTl12の長手方向の両側、すなわち、圧電体11
1の長い方の辺に沿った両側の各々に、反射器113が
電極と同じくアルミニウム系素材などの薄膜を用いて構
成されている。圧電体111の長手方向の縁に沿って、
IDTl12と繋がった導通用の接続ランド114がI
DTl12と同じ素材を用いて形成されており、この接
続ランド114にワイヤーボンディングすることによっ
て電気的な接続が得られるようになっている。
【0006】SAWデバイスを用いて高周波領域の高安
定発振器を構成するためには、Q値(共振せん鋭度)が
高く、共振周波数の安定した低等価直列抵抗のSAWデ
バイスが必要となる。上記のような従来のSAWデバイ
スでは、SAW共振片が接着剤によって支持基板に密着
されている。このため、SAW共振片とこれを支持する
部分との熱膨張率の違いや、接着剤の収縮や支持する部
分の変形などによって、SAW共振片に歪みが発生し、
これらが共振周波数を不安定にしたり等価直列共振抵抗
を高める要因となっていた。このようなSAWデバイス
の多くは、従来SAWフィルタとして用いられていたた
め、それほど高いQ値は必要とされなかった。しかしな
がら、発振器を構成するSAW共振片においては、フィ
ルタよりさらに安定した共振周波数を得ることが重要で
あり、等価直列共振抵抗が低く、Q値の高いSAW共振
子を用いることが高安定の発振器を実現するために重要
である。
【0007】また、信頼性の高い発振器を得るために
は、これを構成するデバイスにも高い信頼性が要求され
る。SAWデバイスの場合、IDTの形成された表面に
ごみなどの異物が付着すると周波数が変動したり、安定
した共振特性が得られなくなるなどのトラブルが発生す
る。また、IDTとリードとが接続不良になれば、安定
した発振特性が得られないことはもちろん、その接続不
良に起因する接続抵抗の増加は周波数の変動や、Q値の
低下などの影響をもたらす。従って、SAW共振片の表
面への歪みの影響を避けながら、異物などの影響を排除
したり、接続状態の悪化を防止し信頼性の高いデバイス
を提供することも重要である。
【0008】[発明の開示]本発明においては、SAW
共振片に対する支持部材あるいは接着剤による影響を抑
止するため、SAW共振片の端部のみを支持するように
している。すなわち、ほぼ矩形にカットされ表面の略中
央に交差指電極が形成されたSAW共振片の長手方向の
一方の端部のみを支持体に接続し、支持体に影響される
部分を少なくし、さらに、ケースなどのハウジングから
SAW共振片を浮かすようにしている。これによって、
SAW共振片には外部から応力がかからず、歪みによる
影響を受けないで非常に安定した共振周波数を有した、
エージング特性の良いSAW共振子が得られる。すなわ
ち、反射体より端側をマウントする(以下において片持
ちマウントと言う)ことによって、SAW共振片への歪
の影響を少なくできることが見いだされた。
【0009】そして、SAW共振片を片持ちマウント
し、SAW共振子とするためのハウジングの構造として
は、金属の筒型、丸缶型、箱型のケースを支持体によ
って封止したものがある。なお、筒型とはその断面形状
が円形または楕円形を含むものである。そして、筒型ケ
ースを用いる場合には、SAW共振片はケースをかぶせ
る方向に概ね平行にマウントされ、丸缶型または箱型の
場合には、ケースをかぶせる方向に概ね直角にマウント
される。このようなハウジング内に封止されたSAW共
振片との電気的な導通は、支持体の複数のリードによっ
て確保できる。箱型のセラミックケースを用いて封止し
てもよく、この場合は、導出パターンを用いて電気的な
接続を確保しても良い。
【0010】また、SAW共振子は、圧電体のSAWを
用いたデバイスであるが、ハウジング内の雰囲気によっ
てQ値が変化することが本願によって見いだされ、ハウ
ジング内の雰囲気をほぼ真空状態とすることによってQ
値の高いSAW共振子が得られることが判った。
【0011】また、ハウジング内にSAW共振片を封止
する際に、ハウジングの中心軸とSAW共振片の表面が
交差するような状態で傾斜してマウントすればハウジン
グ内のスペースを有効活用でき、ハウジングとSAW共
振片との接触などのトラブルを防止できる。このため
に、リードがSAW共振片と接する部分をハウジングの
中心軸に対して傾斜させておくこともできる。
【0012】SAW共振片を片持ちマウントするには、
非導電性の接着剤を介して圧電体を支持しても良く、あ
るいは、リードを用いてSAW共振片に設けられた接続
ランドと接続し導通を取りながら支持しても良い。ある
いは、これら両者の方法を同時に用いても良く、いずれ
の方法を主、他の方法を従として強度を確保しても良
い。
【0013】リードを接続ランドに接続する際に、リー
ドに平板状の接続端を設けて導通面積を確保したり、そ
の接続端の先端を少なくとも2本に分岐させることも有
効である。接続ランドにはアルミニウム系の電極が使用
されることが多いので通常の方法での半田接続は
い。電極の表面には極薄い酸化膜が自然に形成されるの
で、一般的な導電性接着剤を用いるだけでは安定的な電
気的導通を確保することは難しい。このため、酸化防止
材を混入した導電性接着剤が有効である。さらに、電極
の酸化膜の影響を防止するには、接続ランド上に導電性
接着剤の塗布後に少なくとも1本の傷を形成したり、接
続ランドにバンプを形成することが有効である。
【0014】また、SAWデバイスでは、ハウジング内
でのごみなどの異物によるトラブルが発生しやすい。交
差指電極を構成する一対の電極のうち、一方のみを陽極
酸化処理して少なくとも280オングストロームの酸化
膜を形成することにより、このようなトラブルを防止で
きる。さらに、ウェハの状態で共振周波数の測定可能
になり、陽極酸化処理によるSAW共振片の共振周波数
の調整も図れる。
【0015】さらに、SAW共振子と、これらのリード
と電気的に接続されたリードフレームとを樹脂により一
体成形することによっても表面実装に適した表面実装型
のデバイスを提供できる。また、ハウジングが金属
場合、このハウジングと電気的に接続されたリードフレ
ームもモールドしておけば、ハウジングを接地すること
によってノイズに強い表面実装型のSAWデバイスを実
現できる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1に、本発明のSAW共振片の
一例を示してある。このSAW共振片1は、水晶、リチ
ウムタンクレート、リチウムニオブベートなどの圧電体
を矩形にカットしたものを基体(チップ)2として構成
されている。本例の圧電体チップ2は、平らな長方形に
カットされており、その表面(主面)3の中央に1組の
電極4aおよび4bによってIDT5が構成されてい
る。また、このIDT5の長手方向の両側に格子状の反
射器6aおよび6bが形成されている。IDT5を形成
する1組の電極4aおよび4bは、一方の反射器6aの
外側、すなわち、チップ2の縁側を通って、チップ2の
端部2aに導かれ、若干面積の広くなった接続ランド7
aおよび7bが形成されている。電極4,反射器6およ
び接続ランド7は、導電性の素材として、加工およびコ
ストの点からアルミニウムあるいはアルミニウム系の素
材が用いられている。
【0017】[SAW共振片のマウント方法について]
図2に、水晶のSTカットを用いたレーリー波の145
MHzのSAW共振片1(長さ6.5mm、幅1.6m
mおよび厚さ0.4mm)を、チップ2の端部2a側を
支持した際の共振周波数(Fr)の変化と、チップ2の
変形量を示してある。また、合わせて、先に説明した従
来の接着剤を用いてチップ2の主面3と反対側の裏面9
全体を支持した際の共振周波数(Fr)の変化と、チッ
プ2の変形量を示してある。チップ2の変形量は、図2
(b)に示すように、チップ2の歪みや反りを反映でき
るように、主面3の最大の変化量を示してある。
【0018】図2にて判るように、チップ2の端部2a
側のみを支持した、いわゆる片持ちマウントの場合は、
周波数の変化は殆どなく、また、チップの変形量も非常
に小さい。これに対し、チップの裏面9を接着した、い
わゆる全面接着マウントの場合は、周波数の変化は10
0ppm以上であり、また、チップの変形量も500n
m以上と、ともに大きい。SAWデバイスは、主面の弾
性表面波によって共振周波数を得ているため、裏面を強
固に接続し、主面には影響がでないであろう方法で支持
していた。しかし、これらのデータより、マウントの方
法によってチップの状態および共振周波数が大きく影響
されることが判った。そして、従来のチップを安定して
固定し、安定した周波数を得られるものと期待されてい
た全面接着マウントでは、チップの変形量が大きく、共
振周波数の変化も大きいことが判明した。これに対し、
チップを片持ちマウントした場合の周波数の変化および
チップの変形量は非常に小さい。従って、安定した高い
性能を得るためにはSAW共振片を片持ちマウントした
方が良いことが判る。
【0019】図3および図4に、上記と同じSAW共振
片を片持ちマウントした場合と、全面接着マウントした
場合とのエージング特性を示してある。これらの図に
は、SAW共振片をそれぞれの方法でマウントした後、
85°Cで放置し、所定の時間経過したのちの共振周波
数の変化△Frと等価直列抵抗の変化△Rrを測定した
結果を示してある。片持ちマウントされたSAW共振片
では、1000時間経過した後の共振周波数の変化△F
rがほぼ10ppm以下に収まる。これに対し、全面接
着マウントされたSAW共振片では、30ppm程度変
化する傾向が見られる。さらに、等価直列抵抗の変化△
Rrも、片持ちマウントされたものではほぼ0Ωの近傍
に測定値が集まるのに対し、全面接着マウントされたも
のでは等価直列抵抗Rrの値が1〜3Ω程度増加する傾
向が見られる。このようなエージングの傾向は全面接着
マウントした際の接着剤の硬化や、マウントされた部材
との熱膨張率の違いなどに起因するもので、片持ちマウ
ントすることによってこれらの影響を排除できることが
判る。
【0020】このように、片持ちマウントされたSAW
共振片はエージング特性も良好であり、従来の全面接着
マウントされたものより優れている。すなわち、SAW
共振片を片持ちマウントすることによって、長時間にわ
たって安定した特性を保つ共振子が得られ、等価直列抵
抗Rrの増加も小さいことから高安定発振器に適したQ
値の大きなSAW共振子が得られる。
【0021】SAW共振片1を片持ちマウントする方法
には以下に述べるような幾つかのものがある。図5に、
リードを用いてSAW共振片1を片持ちマウントしたS
AW共振子の概略構造を示してある。このSAW共振子
20では、筒形で一方が開口となった金属製のケース2
1の中にSAW共振片1が収納されており、金属製のケ
ース21の開口には、いわゆるハーメチック端子22が
嵌め込まれて、これによってケース21に密封されてい
る。このハーメチック端子22は、ガラス部23の外周
に金属環24が設けられたものであり、ガラス部23を
2本のリード25が貫通している。そして、これらのリ
ード25のケース21内の端25c,25dがSAW共
振片1の接続ランド7a,7bにそれぞれ接続されてお
り、これらのリード25を介してハーメチック端子22
(以降リードも含めてプラグ体と呼ぶ)によりSAW共
振片1はケース21内に片持ちマウントされている。
【0022】リード25c,25dは、接続ランド7
a,7bに固着剤26によって固着されており、この固
着剤26は電気的な導通を得るために半田や導電性接着
剤が用いられる。リード25c,25dと接続ランド7
a,7bとを低抵抗の状態で接続することが重要であ
り、これについてはさらに詳しく後述する。また、ケー
ス21およびプラグ体の金属環24には、ケース内の気
密性を保持できるようにプラグメッキ27およびケース
メッキ28が施されており、これらのメッキがシール材
として機能を果たす。これについてもさらに詳しく後述
する。
【0023】図6に、上記のSAW共振子20をSAW
共振片1の側方から見た状態を示してある。SAW共振
片1はケース21の中心軸29に対し主面3が傾くよう
にリード25と接続されて、中心軸29とSAW共振片
1とが交差するようになっている。SAW共振片1をこ
のようにマウントすると、リード25をプラグ体の中心
に設けてもSAW共振片1はケース21の略中央にマウ
ントできるので、SAW共振片1とケース21の内面2
1aとの間に十分な隙間を確保できる。このような隙間
を設けることによって、ケース21内にSAW共振片1
を組み入れる際にケース21とSAW共振片1が接触す
ることはなく、発振を不安定にする要因を排除できる。
また、ケース21内に共振片が触れてゴミが発生すると
いったトラブルも防止できる。
【0024】SAW共振片1を傾ける角度は、SAW共
振片1が中心軸29と平行な位置から、接続ランドを設
けてないチップ2の他方の端面8dか中心軸29と交差
する程度の範囲までとすることが望ましい。リード25
の端25cは接着剤26によって繋がっており、接続ラ
ンド7とは直接接触しなくとも良いので、マウント角度
を設けることは容易である。もちろん、リード25の端
25cを所定の角度で傾けても良く、あるいは、リード
25の端25cを所定の角度で切断または潰し、この切
断面または潰し面を用いて接続ランド7と連結しても良
い。
【0025】図7に、非導電性の接着剤30を用いてS
AW共振片1をプラグ体に片持ちマウントした例を部分
的に示してある。図示した例では、リード25c,25
dを導電性接着剤26を用いて接続ランド7a,7bと
接続してあるので、非導電性の接着剤30は片持ちマウ
ントの補強するために用いられている。SAWの振動は
チップ2の表面に発生するが、SAW共振片1の特性を
確保できるだけのチップの厚みが必要となる。この厚み
はSAW波長の10倍程度で十分であるが、共振周波数
が低い場合はチップが厚くなるのでSAW共振片の重量
が増す。このような場合は、導電性接着剤26および非
導電性の接着剤30の両方を用いて衝撃や振動に十分に
耐えられる強度でSAW共振片1を片持ちマウントする
ことが望ましい。非導電性の接着剤30がSAW共振片
1を覆う面積は少ないほうが望ましく、SAW共振片の
特性を考慮すると接続ランド7を覆う程度、すなわち、
チップの片持ち側の端2a側の反射器6aに到達しない
程度に収めておくことが望ましい。
【0026】図8および図9に、ほぼ楕円形の平箱状の
ケース21にSAW共振片1を片持ちマウントした状態
を示してある。図9に示すように、ほぼ楕円形をした平
らなベース31の一方の端側に2本のリード25が絶縁
体31aの中を貫通しており、リード25の先端にベー
ス31に沿って延びた平らな接続端25cが形成されて
いる。この接続端25cの上にSAW共振片1の接続ラ
ンド7を載せ、リード25と接続ランド7とを導電性の
接着剤26により固定する。さらに、SAW共振片1の
端部2aを非導電性の接着剤30により固定する。この
ような固定方法により、SAW共振片1を薄いケース2
1内に片持ちマウントできる。ケース21は丸缶型や、
角型の箱状ケースであってももちろん良い。
【0027】また、SAW共振片1は、IDTの形成さ
れた主面3が本図と反対にベース31の側を向いて取り
付けてあっても良い。この場合には、主面3とベース3
1との間が狭いので、異物が入りにくく信頼性の点で好
ましい。片持ちマウントを採用することにより必要に応
じて主面をどちらに向けてもよい。接続ランド7の位置
は、IDTの構成された主面3でなくても良く、図1に
示した裏面9や側面8aおよび8c、あるいは端面8b
に形成されていても良い。接続ランド7を裏面9あるい
は側面8aおよび8cに設ける場合も、SAW共振片の
特性が悪化しないように接続ランド7の位置をチップの
固定端2a側とすることが望ましい。接続ランド7は、
固定端2a側の反射器6a近傍、あるいは反射器6aよ
りチップ2の固定端2a側に配置し、特に、主面3に設
けた場合と同様に反射器6aより固定端2a側に接続ラ
ンド7を設けておくことが望ましい。主面以外に接続ラ
ンドを設ける場合は、斜め蒸着等の技術を駆使して導通
パターンを作成する必要があるので、導通不良が発生し
ないように十分注意する必要がある。導通不良を防止す
るためには、導通パターンの固着面積を十分に確保する
ことが重要であり、この点では、接続ランドを主面に設
けておくことが望ましい。
【0028】図10にセラミックケース32内にSAW
共振片1を片持ちマウントしたSAW共振子20の例を
示してある。セラミックケース32は四方が壁面となっ
た箱型をしており、これらの壁面のうち少なくとも1つ
に段差32aが設けられている。この段差32aの表面
にセラミックケース32の外部と導通したパターン33
が予め形成されており、この導通パターン33とSAW
共振片1の接続ランド7との位置を合わせることにより
SAW共振片1を片持ちマウントできるようになってい
る。SAW共振片1をマウントする際は、接続ランド7
と導通パターン33を導電性の接着剤26で接続し、チ
ップの固定端2aを段差32aに非導電性の接着剤30
により固定する。SAW共振片1をマウントした後、蓋
34をセラミックケース32に被せ、シーム溶接により
ケースを密閉する。
【0029】図11に、セラミックケース32にSAW
共振片1を片持ちマウントした異なった例を示してあ
る。本例では、SAW共振片1の固定端2aをセラミッ
クケース32の底面32bから、非導電性の接着剤ある
いはセラミックなどのスペーサー35を介して浮かして
固定してある。そして、ボンディングワイヤー36によ
ってSAW共振片1と導通パターン33を電気的に接続
してある。
【0030】SAW共振片1をマウントする際に用いら
れる固定用の非導電性の接着剤としては、SAW共振子
の動作温度範囲では十分に強度を保持できる程度の耐熱
性を有し、さらに、SAW共振片を収納したケース内の
雰囲気に影響を与えるようなガスを発生しない加熱硬化
性の樹脂が適当である。さらに、硬化中にSAW共振片
に広がったり、プラグ体の外周面に広がらないように、
たれないものが望ましい。さらに、硬化中にSAW共振
片のチップにストレスが蓄積されないように低応力のも
ので、低い温度で硬化するものが望ましい。このような
条件にあった非導電性の接着剤として、本例においては
紫外線照射と加熱により硬化するエポキシ系の接着剤を
用いている。
【0031】SAW共振片は片持ちマウントされること
によって、固定端以外は空間に浮いた状態となり、従来
の全面接着マウントされた場合と比較し他の部材、例え
ば、ベースなどから圧力や歪みなどの力学的影響や熱的
影響を受けない。固定端はリードや接着剤などによって
歪みなどの影響を受けるが、歪みを受ける部分を振動エ
ネルギーを閉じ込めるIDTを挟んだ2つの反射器の外
側とすることによって、実際に振動する部分への影響を
排除することができる。従って、上記のような片持ちの
マウント方法によって加工歪みの影響のないSAW共振
子がえられ、環境の変化等の影響を受けない高品質のS
AWデバイスを提供できる。
【0032】[共振片を収納したハウジング内の雰囲気]
環境の影響を受けずにSAWデバイスを実装するため
に、SAW共振片は筒型のケースや、箱状などの平らな
ケース、あるいはセラミックケースなどの中空のハウジ
ング内に収納される。そこで、図12および図13に、
ハウジング内の雰囲気による共振子への影響を示してあ
る。
【0033】図12は、図7で説明した筒型で一方が開
口となった金属ケースにSTカットのレーリー波14
5MHzのSAW共振片を1×10-5torr以下の真
空状態で封止したSAW共振子と、大気圧で封止した共
振子の等価直列抵抗Rrの値を示してある。本図にて判
るように大気中で封止したSAW共振子と比較し、真空
中で封止することにより等価直列抵抗Rrは3〜5Ω程
度減少する。これによって、SAWデバイスは圧電体の
弾性表面波を用いたデバイスであるが、デバイスを取り
囲む雰囲気の影響を受けることが判り、SAW共振片を
囲む雰囲気を真空雰囲気とすることによって低損失の共
振子を実現できることが判る。また、等価直列抵抗Rr
の値を減少でされば、大きなQ値を備えたSAW共振子
を提供できる。
【0034】図13は、100〜300MHzの共振周
波数を持ったSTカットのレーリー波SAW共振片を大
気中と真空中で封止したSAW共振子のQ値を示してあ
る。Q値は、周波数が高くなるに連れて減少してしま
う。従って、高周波帯でQ値の大きなSAW共振子を得
ることが高安定の高周波の発振器を実現するために必要
であることは上述した通りである。本図にて判るよう
に、真空中で封入することにより、大気中で封入したも
のと比較し、概ね200MHzにおいて60%程度高い
Q値を持った共振子を提供できる。
【0035】ハウジング内を真空で封止するには、図5
に示したような筒型のケースが好適である。図5に示し
た形状は、気密封止するための圧入型の筒型形状と呼ば
れるものであり、ケース21は洋白等の素材で形成され
ており、プラグ体を圧入するとケース21に発生する締
めつけ力で気密保持できるようになっている。さらに、
ケース21とプラグ体との間には、展延性のある軟金属
として半田や金等、本例では安価で量産性に優れた半田
を用いたケースメッキおよびプラグメッキが施されてい
るので、これらがシール材として作用し、ケースとプラ
グ体との間の隙間が埋まる。これらは一般にバレル法や
ディッピング法などのメッキ加工技術を用いてメッキさ
れており、ケースにおいてはケースの少なくともプラグ
体が接触する内面の部分に、また、プラグ体においては
金属環およびリードにメッキされている。シール性の高
い展延性のあるメッキはプラグ体あるいはケースのいず
れかに施されていれば良く、他方のメッキはニッケル等
のメッキであっても良い。
【0036】このような圧入型のケースを採用すると、
このケースをSAW共振片の固着されたプラグ体を被せ
て密封するだけで、ケース内を封止作業の雰囲気と同じ
環境にできる。従って、真空雰囲気で加工すればケース
内を真空にでき、また、窒素雰囲気で加工すればケース
内を窒素雰囲気にできる。従って、ケース内を真空とし
たQ値の高いSAW共振子を真空中で治具によって位置
合わせして圧入するだけで製造でき、大量に、また安価
に提供できる。
【0037】さらに、SAW共振片を封止したハウジン
グ内を真空にすることにより電極の酸化を防止でき、ま
た、ミクロンオーダーで形成されたIDTが結露によっ
てショートするのも防止でき、エージング性を向上でき
る。電極の酸化を防止したり、結露によるショートを防
止する効果は、ハウジング内を不活性気体、例えば窒素
などで封止しても得られる。ハウジング内に不活性気体
を封止して、内部圧力を高めておくと、接着剤などから
有害なガスが発生するのを抑止する効果も得られる。
【0038】[接続ランドとリードなどとの導通]上述し
た本例のSAW共振片は、アルミニウムあるいはアルミ
ニウム系素材を用いて電極が構成されている。このよう
なアルミニウム系の電極を用いた場合、表面が自然酸化
して酸化膜か形成されてしまい半田付けができない。ア
ルミ用フラックスを用いて半田付けを行ってもよいが、
その後に品質保持のため洗浄などの工程が必要となり、
量産性が落ち、製造コストも上昇してしまう。そこで、
図14に示すように接続ランド7は、リード25あるい
は導出パターンなどと導電性接着剤26を用いて接続し
てある。この導電性接着剤26には、電極の酸化を防止
するために酸化防止材を混入しておくことが望ましい。
また、良好な電気的導通を得るために、フィラー(導電
性接着剤の中で導電性を得るための材料)として銀また
は銅を用いることが望ましい。
【0039】このような導電性の接着剤を用いることに
より、低コストで抵抗の小さなSAW共振子が得られ
る。しかし、アルミニウム電極の表面には酸化膜37が
未処理のまま残っているので、直流導通はとれない。従
って、等価直列抵抗Rrを削減し、Q値のさらに大きな
SAW共振子を得るためには酸化膜37を処理する必要
がある。
【0040】図15に、接続ランド7にバンプ40を設
けた例を示してある。アルミニウムあるいはアルミニウ
ム銅合金製の接続ランド7に、酸化しにくく導電性の高
い金属、例えば、金、銀、半田等を蒸着、スパッタ、あ
るいはイオンプレーティング等の加工技術を用いて積層
し、バンプ40を形成する。このようなバンプ40は酸
化膜などの影響を受けない。従って、このバンプ40を
含んで接続ランド7の上に、リード25などを導電性の
接着剤26で取り付ければ、直流導通も取れ、等価直列
抵抗Rrが低く、Q値の高いSAW共振子が得られる。
導電性の接着剤で固着する替わりに、リード25を覆っ
た半田メッキを溶融させれば、フラックスを用いなくと
もバンプ40と接続できる。この場合は、SAW共振片
1を片持ちマウントするために必要な強度を得るために
非導電性の接着剤によって補強しておくことが望まし
い。
【0041】図16に、接続ランド7にリード25を接
続した様子を主面3の上方から見た様子を示してある。
本例のリード25の接続端25cは平坦に潰され、二股
に分かれており、この二股に分かれた部分がバンプ40
の両側に延びるように導電性の接着剤26によって取り
付けられている。リードの接続端25cを潰すことによ
って導電性の接着剤26と接触する面積が増加するの
で、接触抵抗を小さくでき、それと同時に大きな付着力
が得られる。さらに、接続端25cを二股、あるいはそ
れ以上に分岐させることによって、接続ランド7に形成
されたバンプ40と組み合わせて配置することが簡単に
できる。従って、接続ランド7の面積を有効に活用で
き、バンプ40ともより良好な導通が得られる。また、
このような分岐を設けることにより接着剤26によって
リード25が強固に固定されるので、リード25を用い
てSAW共振片1を片持ちマウントするのに好適であ
る。
【0042】図17に、ワイヤーボンディングによって
接続ランド7にスタッドバンプ41を設けた例を示して
ある。スタッドバンプ41は、超音波振動により酸化膜
37を削除して、金、銅などの金属をワイヤーボンディ
ングすることによって形成でき、酸化膜37が比較的厚
い場合であっても安価に簡単な加工で設けることができ
る。蒸着などによってバンプを付ける場合は、酸化膜が
厚くなると高いエネルギーが必要となり、コストがかか
るので、本例のようなスタッドバンプの方が量産性に優
れ廉価に製造できる。スタッドバンプは、接続ランド7
の上にワイヤーを張った状態であっても同様の効果が得
られることはもちろんである。このように接続ランド7
にバンプを設けることにより、リードとの接触抵抗を大
幅に低減できる。発明者が実験を繰り返した結果による
と、バンプを接続ランドに設けていない、SAW共振子
(筒型で共振周波数が145MHzのSAW共振子)の
等価直列抵抗Rrが20〜40Ω程度と広く分布してい
るのに対し、バンプを設けることによって等価直列抵抗
Rrが10〜20Ω程度まで減少することが確認できて
いる。また、バンプを設けることによって等価直列抵抗
Rrのばらつきは狭い範囲に収まり、性能の安定したS
AW共振子を得ることができる。
【0043】図18に、接続ランド7との導通を取るた
めの異なった手段を示してある。本例では、接続ランド
7にリード25を載せ、導電性の接着剤26を塗布した
後、この接着剤26が硬化するまえに接着剤26で覆わ
れた接続ランド7の表面を先端の尖った治具などを用い
て傷つけてある。傷42は1筋、あるいは2筋以上でも
良く、リード25と平行に設けても、垂直に設けても良
い。このような傷42を設けることによって酸化膜37
を削除した部分を形成でき、接続ランド7のアルミニウ
ム金属が露出するので、導電性の接着剤26を介して接
続ランド7とリード25との間に直流導通が得られる。
ただし、接着剤26の範囲の外に達する傷を設けると、
外に出た部分から酸化し、酸化膜が再合成されてしまう
ので注意が必要である。また、傷42によって接続ラン
ドを分離してしまうと電極の導通が取りづらくなり、ま
た接着剤からはみ出した傷が酸化膜を再形成する原因と
なるのでこの点でも注意が必要である。
【0044】このような傷42は、リード25を接続ラ
ンド7に押しつけて超音波振動などの機械的な振動を与
えても設けることができ、あるいは、接着剤26をディ
スペンサなどで塗布するのであればその塗布時にディス
ペンサのノズル先端で傷を付けても良い。あるいは、リ
ード以外の金属を振動させたり、あるいは擦って傷を設
けても良い。また、傷を付けると汚れなどによる接続ラ
ンドの導通損失を軽減できる。ただし、接着剤26の硬
化前にこれらの処理を行うことが必要である。
【0045】接続ランドに上記のような傷を設けること
によっても、バンプを設けた場合と同様に等価直列抵抗
Rrの値が改善されることが発明者の実験により確認さ
れている。特に、傷は点で設けるよりも筋で設けること
が望ましく、さらに、傷を3筋以上あるいはランダムに
設けることによってバンプと同様、あるいはそれ以上の
効果が得られることが確認されている。等価直列抵抗R
rの他に、発明者によって直流抵抗値の変動も測定され
ている。この測定結果によると、酸化膜の処理を行って
いないものについては、直流抵抗が5Ω〜無限大といっ
た広い範囲を示すのに対し、傷を設けたり、バンプを設
けた場合は1〜2Ω程度の値に精度良く収束する。この
ように、傷、あるいはバンプを設けることによって酸化
膜の影響を排除でき、低接続抵抗(直流抵抗)でQ値の
高いSAW共振子を実現できる。
【0046】このような効果を得るためには、酸化膜の
除去された状態の傷が接続ランドに必要となる。このた
め、導電性の接着剤を塗布した後に接続ランドに傷を設
けるようにしており、逆に、傷の付けられた接続ランド
とリードが低接続抵抗の状態で接続されている場合は、
それらの傷は導電性の接着剤の塗布された後に形成され
たものであるといえる。傷が形成された後、この傷の内
面が再酸化してしまうと良好な導通状態は得られない。
そこで、導電性の接着剤として酸化防止材を配合したも
のが適当である。酸化防止材としては、ハイドロキノ
ン、カテコール、フェノールなどの還元性のものが用い
られる。さらに、銀粒子の他に、ニッケルなどの異種金
属を混入し接触抵抗の安定化を図り、同時に酸化膜の形
成防止効果を得ることも可能である。
【0047】酸化防止材の効果についても、発明者の実
験によって確認されており、酸化防止材が未混入の接着
剤を用いたSAW共振子では、接着剤が硬化したのち2
30°Cで10時間アニールすると共振周波数が100
ppm以上変化し、等価直列抵抗Rrの値もアニール以
前が20Ω以下なのに対し30〜40Ωまで上昇してし
まうといった結果が得られている。これに対し、酸化防
止材を混入した接着剤を用いると、共振周波数の変化は
20ppm程度に収まり、等価直列抵抗Rrの値も20
Ω以下と良好な値を保持できる。
【0048】[電極の保護]本発明においてはSAW共振
片を片持ちマウントして、筒型のケースやセラミックケ
ースなどのハウジングから浮かして支持している。そし
て、SAW共振片の周囲に空間を設け、SAW共振片か
周囲の環境から影響を受けづらいようにしてある。この
ようなSAW共振子では、SAW共振片の周囲に形成さ
れた空間がSAW共振片を封入する際に混入する可能性
のあるSUSあるいは半田くずといった異物の移動可能
なスペースとなってしまう。そして、このような異物が
SAW共振片の電極、例えば、IDTやIDTと接続ラ
ンドを結ぶ電極に食い込むことがあり得る。特に、ID
Tはミクロンオーダーで配置されているため、電極間に
上記のような導電性の異物が存在するとショートの原因
となり、SAW共振子の安定した動作の妨害となる。ま
た、ミクロンオーダーの小さなこのような異物の混入を
完全に防ぐのは困難である。さらに、SAW共振子は様
々な用途に用いられ、実装中や運搬中の衝撃、あるいは
実装された角度などによってこのような異物が移動して
しまうので、SAW共振子を組み立てたり、実装する段
階で上記のようなトラブルを完全に防止することは難し
い。
【0049】異物によるトラブルを防止するために、例
えば、IDTなどを酸化けい素などによってコーディン
グすることも可能である。しかし、チップ上に異なった
物質の層ができるので共振周波数の変動やQ値の低下に
繋がり、片持ちマウントした効果が削減されてしまう。
そこで、発明者は、アルミニウム系の電極の表面に形成
される酸化膜の効果に着目した。アルミニウム系の電極
の表面に酸化膜が自然に形成されてしまうことは上述し
た通りであり、これらによってショートを防止すること
ができる。しかし、自然に形成される酸化膜は厚みが1
0〜30オングストロームと薄いため強度が不足し、落
下等の衝撃によって移動する異物から電極を完全に保護
することは困難である。
【0050】そこで、本発明においては、SAW共振片
に形成された一対の交差指電極のいずれか一方のアルミ
ニウム系電極を陽極酸化することによって、膜厚が28
0オングストローム前後、あるいはこれより厚い酸化膜
を電極の表面に形成し、異物によるトラブルを防止する
ようにしている。
【0051】図20に示すような圧電体のウェハ50に
複数のSAWパターン51が形成された状態のものを用
いて陽極酸化を行う。本例では、IDT5を構成する一
対の電極4aおよび4bのうち、一方の電極のみに陽極
酸化を施すようにしている。このため、ウェハ50に
は、SAWパターンに加え、これらのSAWパターン5
1の一方の電極4aを繋ぐ接続線52と、陽極酸化用の
電源と接続するターミナル53を設けてある。
【0052】図21に、陽極酸化を行う装置の概要を示
してある。槽55の中には、陽極酸化液59が入ってお
り、クリップ56でウェハ50のターミナル53を保持
してウェハ50を酸化液59に浸す。そして、電源57
からウェハ50側を陽極として電流を流す。電源57に
は酸化液59に覆った陰極58も接続されている。本例
では、陽極酸化によって無孔性の酸化膜を形成するよう
にしており、そのため、酸化液59としては燐酸塩の水
溶液又はほう酸塩の水溶液の混合液を用いている。この
他に、クエン酸塩やアジピン酸塩などの中性近傍の塩の
水溶液を用いることができる。また、液温は、多孔性の
被膜となるのを避けるため室温程度が望ましく、例え
ば、ほう酸塩の水溶液を用いた場合は20〜30°C程
度が望ましい。
【0053】このような条件下で陽極酸化を行うと、印
加電圧に略比例した膜厚の酸化膜を電極の表面に形成で
きる。酸化膜の膜厚を制御し、さらに電流投入時に流れ
る電流を一定以下と制御するために、プロセス用の電源
として定電圧・定電流電源を用いることが望ましい。ま
た、電極のうち、接続ランドに相当する部分では、上述
したように酸化膜を取り除く処理を行うことが望ましい
ので、接続ランドに相当する部分にはレジストなどを塗
布し、酸化膜の厚みの増加を防止することが望ましい。
【0054】発明者によって、筒型のケース内にSUS
の異物(5〜10μm径のSUS製の粉)を強制的に混
入した場合のトラブルの発生頻度測定されている。そ
の結果、陽極酸化を行わなかった共振子においては繰り
返しの落下試験(75〜150cmの高さから5回の落
下試験を繰り返した結果)を行うとほぼ100%のもの
がショートする。これに対し、上記のようにDTの片
側の電極のみに陽極酸化を行ったSAW共振子ではショ
ートする頻度は減少し、陽極酸化電圧を30V程度でシ
ョートの発生頻度は略半減する。さらに、陽極酸化電圧
を上げ、50V以上にするとショートの発生頻度がほぼ
0になることが確認できた。図2に示すように、陽極
酸化電圧が20Vで酸化膜の厚みはほぼ280オングス
トロームであり、50Vではほぼ700オングストロー
ムである。
【0055】IDTの片側の電極のみに酸化被膜を強制
的に作製することにより、IDTの一方の電極を各パタ
ーン毎に独立して形成できるので、チップにカットする
前のウェハの状態でそれぞれの各パターン毎に共振周波
数を予め測定することができる。この測定された共振周
波数に基づいて酸化被膜を形成するプロセスを繰り返せ
ば、ウェハ状態での粗調や、SAW共振片個々における
微調などの製造過程における共振周波数の調整作業を行
える。
【0056】図2に、陽極酸化電圧が50V近傍の、
陽極酸化電圧に対する複数のウェハの共振周波数の変化
を示してある。本図にて判るように、酸化電圧を調整す
ることによってppm単位で共振周波数の調整が可能で
ある。従って、IDTの一方の電極のみに陽極酸化を施
せば、ウェハの段階で共振周波数の測定が可能であり、
その結果に基づきさらに陽極酸化を行って、予め共振周
波数の整ったSAW共振片を容易に得ることができる。
このように、電極に陽極酸化を施すことによって上述し
たような優れた特性を維持したまま、ごみなどのトラブ
ルに対する耐性の強いデバイスを実現できる。
【0057】[表面実装型のデバイス] 図2に、図5に基づき説明したSAW共振片を筒型の
ケース内に片持ち収納したSAW共振子20を表実装
デバイス60とした例を透視図で示してある。このデバ
イス60では、SAW共振片が気密封止されたケース2
1から外側に突き出たリード25aおよび25bがそれ
ぞれリードフレーム61aおよび61bと溶接、半田付
け、あるいは導電性接着剤などの方法により取り付けら
れている。さらに、筒型のケース21のリードの突き出
た反対側にもリードフレーム62が配置されており、こ
れらのリードフレーム61および62とケース21が直
方体状に成形された樹脂65によって一体化されてい
る。リードフレーム61aおよび61bは、この表面実
装型のSAW共振子60の電気的な接続を得るために使
用される。また、リードフレーム62はこのSAW共振
子60を基板へ実装する際に強度を確保するためのダミ
ーリードとして用いられる。さらに、これらが樹脂65
によって直方体に一体成形されているので自動実装技術
を用いて基板に実装できる。
【0058】図2に、上記ではダミーリードとして用
いられているリードフレーム62を筒型のケース21に
電気的に接続したタイプの表面実装型のSAW共振子6
0を示してある。リードフレーム62は、ケース21と
接触する個所69で、接触、圧入、半田付けあるいは導
接着剤などの方法によってケース21と電気的に接
続できる。このようにリードフレーム62をケース21
と接続しておくと、リードフレーム62を介して金属製
のケース21をグラウンドに接続、すなわち接地でき
る。SAW共振子は、数百MHz以上の高周波において
用いられることが多い。そこで、ケース21を接地する
ことによって電波として空間に存在するノイズをシール
ドすることができ、逆にSAW共振子がノイズの発生源
となることも防止できる。筒型のケースに限らず、箱状
のケースなど金属のケースをリードフレームを介して
接地することによって、ノイズに強い表面実装型のSA
Wデバイスを提供できる。
【0059】これらのSAWデバイスは、ケースの内部
に上記のようなSAW共振片が片持ちマウントされてお
り、共振周波数の非常に安定したSAW共振子が得られ
る。さらに、このSAW共振子は、低い等価直列抵抗、
そして高いQ値といった優れた特性を兼ね備えている。
また、樹脂によってリードフレームと一体に形成される
ことによって、実装性に優れた表面実装型のデバイスと
することも簡単である。また、SAW共振片はリードと
導電性接着剤あるいは非導電性の接着剤を用いて片持ち
マウントされているので耐衝撃性も優れており、さら
に、電極に陽極酸化膜を形成することによって衝撃にな
どによってショートなどのトラブルが発生するともな
い。このように、本発明によって、高周波領域で使用可
能な高品質の弾性表面波共振子を安価に提供することが
できる。
【0060】
【発明の効果】高周波領域で使用可能な高性能の弾性表
面波共振片、およびSAW共振子を提供でき、SAWフ
ィルターなどの各種のデバイスに適用可能である。特
に、本発明のSAWデバイスは、等価直列抵抗が低く、
高いQ値を必要とする高安定発振器に好適なデバイスで
ある。さらに、表面実装が可能な形状として提供するこ
とも容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るSAW共振片の構成を示す斜視
図である。
【図2】 片持ちマウントした場合と、全面接着マウン
トした場合のSAW共振子の特性を比較したグラフであ
る。
【図3】 片持ちマウントした場合のエージング特性を
示すグラフである。
【図4】 全面接着マウントした場合のエージング特性
を示すグラフである。
【図5】 SAW共振片を筒型のケース内に片持ちマウ
ントしたSAW共振子の構成を示す断面図である。
【図6】 図5と直角な方向からSAW共振子の構造を
示す断面図である。
【図7】 図5と異なるマウント方法を採用したSAW
共振子のマウントした部分を示す断面図である。
【図8】 箱型のケースにSAW共振片を片持ちマウン
トしたSAW共振子を示す展開斜視図である。
【図9】 (a)は、図8に示したSAW共振子の断面
であり、図9(b)は、リードとの接続部分を拡大して
示す図である。
【図10】 (a)は、セラミックケースにSAW共振
片を片持ち収納する様子を示し、(b)はセラミックケ
ースを用いたSAW共振子の構造を示す断面図である。
【図11】 異なった片持ちマウント方法を採用したS
AW共振子の構造を示す断面図である。
【図12】 ハウジング内の雰囲気と、それによる等価
直列抵抗の値を比較したグラフである。
【図13】 ハウジング内が大気状態と真空状態のとき
のQ値と共振周波数との関係を表したグラフである。
【図14】 接続ランドとリードとの接続部分を拡大し
て示す断面図である。
【図15】 接続ランドにバンプを形成してリードを接
続した状態を示す断面図である。
【図16】 先端が二股に分かれたリードを接続ランド
に接続した状態を示す平面図である。
【図17】 接続ランドにスタッドバンプを形成してリ
ードを接続した状態を示す断面図である。
【図18】 接続ランドに傷をつけてリードを接続した
状態を示す平面図である。
【図19】 図18の接続ランドにリードを接続した状
態を示す断面図である。
【図20】 陽極酸化用にウェハ上に形成された、片側
の電極のみを酸化するパターンを示す図である。
【図21】 陽極酸化用の器具の構成を示す図である。
【図22】 陽極酸化電圧に対する酸化膜厚の変化を示
すグラフである。
【図23】 陽極酸化電圧によって共振周波数が変化す
る様子を示すグラフである。
【図24】 図5に示したSAW共振子をモールドして
表面実装型としたデバイスを示す透視図である。
【図25】 SAW共振子を接地できるタイプの表面実
装型デバイスを示す図である。
【図26】 従来のSAW共振子の構造を示す断面図で
ある。
【図27】 図27と異なる従来のSAW共振子の構造
を示す図である。
【図28】 従来用いられているSAW共振片の構造を
示す平面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−143813(JP,A) 特開 昭52−99742(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03H 3/10 H03H 3/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1個の陽極ターミナル電極と、1組以上の
    交差指電極と、前記交差指電極のいずれか一方のみと前
    記陽極ターミナル電極とを接続する接続線と、を圧電体
    ウェハに形成する第1の工程と、前記陽極ターミナル電
    極に通電し前記一方の交差指電極に陽極酸化を行う第2
    の工程と、前記陽極ターミナル電極に接続されない他方
    の交差指電極のランド部と前記陽極ターミナル電極によ
    弾性表面波の共振周波数を測定する第3の工程とか
    らなり、前記第2の工程と前記第3の工程を交互に行
    い、共振周波数を所望の値に合わせ込むことを特徴とす
    る弾性表面波共振片の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記第1の工程により
    形成された前記陽極ターミナル電極につながる前記交差
    指電極の接続ランド部にマスク材を印刷もしくは塗布
    し、前記第2の工程と前記第3の工程を交互に行い、共
    振周波数が所望の値に合わせ込まれた前記圧電体ウェハ
    を切断して弾性表面波共振片を作製し、前記弾性表面波
    共振片をその長手方向の一方の端部を支持体に接続する
    ことにより弾性表面波共振子を製造することを特徴とす
    る弾性表面波共振子の製造方法。
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