JP3701380B2 - スローアウエイチップ - Google Patents

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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Milling Processes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば直角肩削り型の回転切削工具のチップの改良に関する。ここで回転切削工具というのは、回転体の周縁部に複数の着脱可能なチップを取り付け、軸周りに回転体を回転することによって対象物を切削するものである。刃物の回転軌跡を想定し刃物が円周方向に描く面を切削周面という。これは本発明において重要な役割をする。しかしそれらは、カッタ本体(ホルダ−、台金)自身の周面とは違う。
【0002】
スローアウエイチップは2度或いは3度(4度、6度のものもある)向きを変えて使用できるようにするために、二回対称性、或いは三回対称性のある形状に作ってある。三回対称性のあるものは三角形に近い概六角形である。二回対称性のあるものは、平行四辺形、長方形状である。
【0003】
ホルダ−には周辺にM個の取付座を設けてここにM個のチップをネジなどによって固定する。取付座の直前にはチップポケットと呼ばれる窪みがある。回転方向からみると、チップポケットがあってチップ取付座がある。これがM箇所に設けられる。図6と図7によって直角肩削りのエンドミルを説明する。これはスローアウイチップ1が3つある例を示す。円柱形のホルダ−2には周面三箇所に取付座4、4、4が設けられる。取付座4の上にチップ1がネジ6によって固定される。チップ1の上面が掬い面である。ここにはチップポケット5が穿たれている。軸3を中心にしてホルダ−2が回転すると、チップの掬い面が対象物を切削する。
【0004】
図1にスローアウエイチップの基本形を示す。これは直方体のチップを示す。基本形であってこのようなものが実際に使用されるというわけではない。ここでは直方体の稜線を定義するために描いている。表面はABIH、裏面はDCJKである。
【0005】
二回対称性があるから、AとI、BとH、CとK、DとJは等価の点である。以後の記述において、一方の点、一方の面だけを挙げて両者を代表させることもある。
【0006】
表面の四辺形をABIHとする。これが掬い面となる。底面の四辺形をDCJKとする。ホルダ−の取付座に接触固定される面である。側面ADCBとHKJIが逃げ面である。表面から裏面に抜けるようにネジ穴wが穿孔される。これはホルダ−(カッタ本体、台金)の円周方向とはおおむね直角な面をもつ取付座に、円周方向を向くボルトなどによって固定される。横置き型(平置き型)のスローアウエイチップである。表面ABIHが掬い面、側面ADCBと側面IJKHが逃げ面になる。端面HKDAとIJCBも逃げ面になる。
【0007】
【従来の技術】
チップ逃げ角Φは切削性能に強く影響する。逃げ面というのは刃先によって創成された面に対向する刃物の後部の部分である。逃げ面が創成面となす角度が逃げ角である。逃げ角が小さいと刃物が創成面と擦りあって摩耗、発熱が大きいし抵抗も大きい。反対に逃げ角が大きいと刃先が欠けやすくなる。このようなことから適切な逃げ角がチップの種類によって異なる。それぞれのチップに対し、適当な逃げ角がいくらかということは経験的に大体分かっている。
【0008】
例えばショルダーエンドミルのチップの場合は、最適の逃げ角は6度程度である。切刃全体において、逃げ角が3度〜8度になるようにチップの形状を設計するのが望ましいが実際にはできない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
直角肩削りチップは、横置き型であって切断辺ABの一部叉は全体で対象物を切削するという条件がある。図1のように単純な長方形で厚み方向の辺が等しい(AD=BC)の場合は、底辺を軸に平行な取付座に固定したとき、辺ABが軸から等距離にあるので、掬い面ABIHが創成面となす角度を同じ値にすることができる。つまり辺BAの全体(或いは辺IH)において逃げ角Φを6度にすることができる。或いは端面AHKD、逃げ面ADCBが等脚台形(AD=HK=CB=JI)の場合も、逃げ角を6度にする事ができる。しかし実際このような単純な直方体チップを軸に平行な座に固定してつかうことはない。
【0010】
切削能力を高めるためにチップあるいは取付座にアキシャルレーキ角を付ける。チップにアキシャルレーキ角を付けた場合のチップを図2に示す。アキシャルレーキ角があるので、切断刃の先頭部分(A)が後端部(B)より高い。つまりAD>CB(IJ>KH)である。稜線AB、HIが底面に対して傾斜する。端面の稜線HA、IBも傾斜する。するともはや表面IHABは平面にならない。側面ADCBも端面HKDAも非対称になる。この場合でも点Aも点Bも半径rの切削周面(円筒面)に接触しなければならない。軸中心から点Aまでの距離はr、軸中心から点Bまでの距離もrである。
【0011】
図1の場合はチップ自身のアクシャルレーキ角が0度である。図2ではチップ自身にアキシャルレーキ角を付けている。
【0012】
これとは別に取付座を軸に対して傾けて形成する場合もある。軸に対する取付座の傾き角は取付座のアキシャルレーキ角である。傾いた取付座にスローアウエイチップを固定すると、実際のアキシャルレーキ角は取付座の傾きと、チップ切刃ABの傾きの和になる。つまり実際のアキシャルレーキ角は取付座のアキシャルレーキ角とチップアキシャルレーキ角の和である。
【0013】
もう一つの掬い角(レーキ角)がある。それは円周面と掬い面HABがなす角度である。これはラジアルレーキ角Ψと呼ぶ。辺ABで対象を切る場合の掬い角になる。本発明では問題にしないがこれも重要な因子である。
【0014】
図2のようなチップを軸平行取付座に固定した場合、或いは図1、図2のチップを軸に対して傾いた取付座に固定した場合、A点、I点が高く、B点、H点が低くなる。どのような場合でも従来は逃げ面つまり側面ADCBと側面IHKJは平坦面であった。アキシャルレーキ角をチップ、取付座によって与えるが、チップ逃げ面は常に平面で構成されていた。これが問題である。
【0015】
実際には、図3に示すように端面にも段部S’R’W’Aのような副切れ刃を付ける場合がある。実際には、他の点において、チップ形状はより複雑である。
【0016】
しかし本発明は逃げ面ADCBの形状の改良を目的にするから端面の形状は問題にしない。端面に凹凸があるから逃げ面も単純な台形などではない。しかし逃げ面は従来平面であった。本発明は逃げ面の大きさはどうでもよくて、平坦性を問題にする。そこで逃げ面はADCB、IHKJによって表現し、∠ADC=∠R(直角)、∠BCD=∠R(直角)であるような点D、Cをつかって、AとBを含む逃げ面を表現する。つまりD、Cは切刃辺ABから底辺に直角に下した垂線の足と考えるべきである。
【0017】
∠ADK=∠BCJ=∠HKD=∠IJC=χであったとする。これは直角或いは鈍角である。逃げ面ADCBという表現をするが、実際には逃げ面はこれより小さい面積しかない。しかし逃げ面はこの面に含まれるから、逃げ面ADCBという表現は妥当である。底辺DCの長さをdとする。端面の底辺の長さKDをgとする。当然に点Hの高さはksinχ、A点の高さはhsinχである。
【0018】
チップ取付座自体を軸に対して斜めにして取付座によってアキシャルレーキ角を与えることもある。しかし問題を単純化するためここでは、取付座のアキシャルレーキ角は0度とする。つまりホルダ−の取付座は底面JKDCが軸方向(Z軸)に平行であるようにする。
【0019】
図4にこの事情を説明する。これは切削周面Σ、チップなどを、xy平面に投影した投影図である。図において、辺AD(h)がCB(k)よりも長い。点Aの方が点Bよりも高い。しかし点A、点Bともに半径rの切削周面Σに接触しなければならない。そうなると、底辺DCが軸方向(Z軸)からずれてきて、点Cが点Dよりも外側に飛び出してくる。底辺DCが軸線に対して非平行になる。DCが軸に対して傾いてくる。条件を整理しよう。
(1)逃げ面ADCB、IHKJは平面でなければならない。
(2)点A、Bともに切削周面Σに接触しなければならない。
(3)チップ自身または取付座或いは両方に傾き角(アキシャルレーキ角)を与えるので、切刃稜線の内、点Aの方が点Bより高い。
【0020】
点Aでの逃げ角をΦA 、点Bでの逃げ角をΦB とする。点A、Bでの逃げ角は、その点で切削周面に引いた接線と辺AD、BCのなす角度である。
ADが長く、BCが短い。点A、Bは切削周面に接触する。このため点Cは外側へ移動する。底辺DCがZ軸に対して斜めになる。このために点Aでの逃げ角ΦA が、点Bでのげ角ΦB よりも大きくなる。ΦA >ΦB である。するとΦB =6゜にしても、ΦA は最適逃げ角にならない。ΦA はこれまでの例では15゜以上にもなる場合もあった。
【0021】
図4に於いて、軸中心がO点であり、これを中心として半径rの円を描きこれによって切削周面Σを表す。チップの端面HKDAが描かれる。その向こうに辺CBが見える。チップ底面KDCJが線分KDCによって表現される。辺DCが軸に平行でなく、点Dは点Cより内側にある。
【0022】
先述のように図4はXY平面への投影図である。この投影図において、Oから辺ADに下した垂線の足をTとする。0から辺BCに下した垂線の足をSとする。
【0023】
点Aでの逃げ角ΦA は点Aで円Σに引いた接線と辺ADのなす角度である。点Bでの逃げ角ΦB は点Bで円Σに引いた接線と辺BCのなす角度である。∠OTA=∠OSB=90゜である。これは逃げ面ADCBの平坦性による。逃げ面の平坦性がこの式によって表される。三角形OAT、OBSにおいて、∠AOTが逃げ角ΦA であり、∠BOSが逃げ角ΦB である。
【0024】
sinΦA =(h+DT)/r (1)
sinΦB =(k+CS)/r (2)
である。h>k、CSはほぼDTに等しいから、ΦA >ΦB である。
【0025】
すると後端B点では逃げ角が6゜にできても、前端Aでは逃げ角が最適値(5゜〜7゜)を大きく外れる。ΦA は15゜を越える場合もある。先端での逃げ角が大きすぎる。図4で説明したものはチップ取付座の傾きが0度の場合である。取付座に傾き(アキシャルレーキ角)をつけると、ΦA とΦB の比はより一層大きくなる。
【0026】
先端(点A)で逃げ角ΦA が大きくなり、チップに掛かる力が過大になってA点近傍でチップ刃先が破損する可能性もある。このような問題がある。しかし従来はそのような問題を解決する手段がなかった。尖点Aは最も力が掛かり、欠け易いところである。その部位の逃げ角がこのように大きいというのは問題である。刃先でチッピングが起こり易いからである。刃先強度を損なうのでこのように大きい逃げ角は望ましくない。
【0027】
このような欠点を解決し、切断刃の稜線ABの先端Aでも逃げ角をもっと小さくし、切断刃の破損(チッピング)の可能性をなくしたチップを提供する事が本発明の目的である。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明のスローアウエイチップは逃げ面ADCB、IHKJを凸型の曲面とする。逃げ面を凸曲面とすることによって、チップ先端部A、Iでの逃げ角ΦA をより小さくすることができる。凸曲面の形状を工夫することによって、切断辺ABにそって逃げ角を常に一定に保つ事も可能である。
【0029】
【発明の実施の形態】
逃げ面ADCBには先述のように3つの条件(1)〜(3)が課されていた。ために切断辺ABの尖点Aで過大な逃げ角ΦA が生じていた。
【0030】
本発明はこの難問を解決するために、(1)の条件を外す。(2)と(3)は維持する。(1)の平坦性条件を捨て、逃げ面ADCB、IHKJを凸曲面とする。逃げ面を凸曲面とすることによって、点Aでの逃げ角を下げ、点Bでの逃げ角の下がりを抑える事ができる。もちろんどのような凸曲面でも良いという訳ではない。点Aでの逃げ角ΦA を小さくできるという条件が必要である。そのような条件を含んでいても尚、底辺DCを直線状にするか、或いは底辺DCをも円弧状にするかによって、曲面設計の自由度が異なってくる。
【0031】
底辺DCを直線(線分)にする場合においても、曲面を一軸性のものにするか、二軸性にするかの選択枝がある。
【0032】
▲1▼一般的条件
最も一般的な要求を述べる。任意の点での周方向(Y方向)の曲率をξ、軸線方向(Z方向)の曲率をζで表す。いずれも外向きを正と定義する。凸曲面というのは、その領域の全ての点でξ+ζ>0が成り立つ事である。本発明では少なくとも稜線ABを含む一部で凸曲面であればよい。
点Aでの曲面の周面方向の曲率をξA 、軸線方向の曲率をζA とする。点Bでの曲面の周面方向の曲率をξB ,軸方向の曲率をζB とする。図4、図2の座標を使って、これらの定義を再確認する。ホルダ−の回転軸線をZ軸とし、ホルダ−の取付座の底面をZX面とする。つまり底面はY軸に垂直であるとする。円周方向というのは、XY平面で切削周面の接線方向である。つまり点(x,y)で円周方向というのは、ベクトル(ーy,x)の方向である。半径方向というのは、ベクトル(x,y)の方向である。ξA というのは点Aで、円周方向の曲率である。逃げ角は軸方向の曲率ζには無関係であり、円周方向の曲率ξによって決まる。
【0033】
点Aでの逃げ角の減少分をΔΦA 、点Bでの逃げ角の減少分をΔΦB とする。点Aでの減少分というのは、D点から曲率ξA の円弧を引きその上に点Aを取った場合と、点Dでその円弧に接する直線を引きその上に点Aを取った場合(ADの長さは同じ)を比較し、円弧にしたことによる逃げ角の減少分である。点Bでの減少分も同様である。
ΔΦA =hξA (3)
ΔΦB =kξB (4)
である。すこしでも点Aでの減少分が大きければ良いので、
ΔΦA >ΔΦB (5)
であればそれなりに効果がある。つまり、
ξA /ξB >k/h (6)
であれば良い。これは一般条件である。
【0034】
▲2▼一軸性一様曲率曲面の場合
もともとh>kなのであるから周方向の曲率が同じであっても点Aでの逃げ角の減少分の方が大きい。つまりξA =ξB であっても、(5)の不等式を満足できる。(6)はそのような場合も含めて、たとえξA がξB よりも小さくても、つまり、点Aでの曲率半径が、点Bでの曲率半径よりも大きくても、効果があるということを述べている。
【0035】
▲3▼AB間の全ての点で逃げ角が等しいもの
これは理想的なものであって、辺AB間の全ての点において、逃げ角が例えば6度にできて、さらに、曲面の方向が円周方向つまりY軸方向だけであるというものである。そのような曲面が果たして存在するのか?存在するのである。
【0036】
図5はスローアウエイチップの逃げ面ADCBの図である。これは座標系を説明するための図でもある。底辺DCはXY面に投影されるとZ軸に対して僅かな角度wをなす。これは先ほど説明したように(3)式によって与えられる。
【0037】
4点A、D、C、Bは同一平面上にある。これは図2、図3に示す平坦逃げ面である。本発明はこの平面を基礎として、凸曲面とする。Y方向の曲率をξとする。つまりZ軸に直交する全ての面において曲線は単一の曲率を持つとする。これはzの関数であるからξ(z)とする。稜線ABの高さをy(z)とすると、
y(z)=h−(h−k)z/d=hーqz (7)
によって表現する事ができる。但しq=(h−k)/dである。zを独立変数、yやxを従属変数として考える。逃げ角Φはzの関数である。Φをラジアン単位で表して、
Φ(z)=sin-1(y+c)/r−ξ(z)y(z) (8)
cはh、g、r、d、kによって決まる定数である。逃げ角Φ(z)を一定にするためには、rがyよりも十分に大きいと仮定して、
ξ(z)=(1/r)+(c/ry)ー(Φ/y) (9)
とすればよい、(9)に(7)を代入して、ξのzに関する式を得る。取付座自身に傾きが有る場合は、(7)において、傾きqを両者の傾きを含めた傾きq’によって置き換えて計算できる。辺ABの全体が切削周面に接触するために、辺AB自身が凸曲線でなければならない。この凸曲線の曲率半径はr/q2 である。
【0038】
【実施例】
図6、図7によって本発明の実施例を説明する。円柱形のホルダ−2に、3箇所の切り欠きが設けられる。この切り欠きには、平面の取付座4が形成される。これに略長方形状のスローアウエイチップ1が固定される。固定はボルト6によってなされる。このチップは横置き型である。ネジの方向が円周方向を向いている。5が切り屑空間(チップポケット)である。チップの上面が掬い面になる。図3はチップの概略斜視図である。これはネジ穴を省略している。中央に縦方向にネジ穴が穿孔される。チップ底面DCJKがカッタ本体の平坦な取付座に固定される場合、辺ABの水平からの傾きがアキシャルレーキ角である。面AHBの傾きが径掬い角である。
【0039】
図8は本発明の実施例にかかるスローアウエイチップの概略の斜視図である。簡単のため穴の図示は省略してある。このチップは平面の底面KDCJを持つ。端面間距離はdである。DK=gである。その上に頂点I、Aが高く、頂点H、Bが低い二回対称の形状を持つ。線分AD=h、線分HK=kであり、h>kである。辺ABはアキシャルレーキ角を与えるので傾斜している。傾斜角はtan-1(h−k)/dである。線分ADは底辺KDにたいしχだけ傾いている。
【0040】
本発明において重要な点は、面ADCBが、凸型の曲面になっているということである。辺ADは曲線、BCも曲線である。この曲線は辺ABにそって逃げ角を小さくする作用がある。点Aに近づくに従って逃げ角を下げる作用が大きくなるから、点Aと点Bでの逃げ角の差が小さくなる。
【0041】
図9は同じスローアウエイチップの端面から見た図である。曲線AD、曲線IKなどによって囲まれた形状である。チップは超硬合金の粉末を加熱加圧してチップを製造する。図8、図9に見るように、チップはこのように滑らか曲線によって囲まれており、しかも上方が広く、底部が狭い。つまり逃げ面ADCB、IHKJが凸曲面の抜け勾配に形成されるから、金型によって粉末を固めて作り、ピンで押す事によって簡単に金型から抜き取る事ができる。
【0042】
図10は同じチップを図9よりもすこし回転させた状態を示す。曲線ADの向こうに曲線CBが見える。この二つの曲線の曲率が同じであっても十分に効果がある。
【0043】
図11はホルダ−の取付座に固定した状態のチップをしめす。辺ABが切削周面に接触しなければならないが、辺ABの傾きのために辺DCが軸方向に平行でないようになる。その場合に曲面ADのために、逃げ角ΦA が減少するという事を表している。
【0044】
ホルダ−の取付座には逃げ面に対応して、凹曲面としても良い。そうするとチップと取付座の接触面積が増加する。しかしながら、平坦面を持つ逃げ面と平坦面の取付座の場合であっても、チップと本体の製作誤差などにより、微視的にみれば接触は点接触にすぎない。平坦面といってもやはり凹凸があるからである。してみれば本発明のチップにおいても取付座の面は平坦面であってもよい。点接触になるが差し支えない。凹面にしたところで厳密に両面を沿わせる事は容易でないからである。
【0045】
図12は取付座にもアキシャルレーキ角を付けた場合のチップ、切削周面の説明図である。辺ABが直線の場合を示す。これは取付座にもアキシャルレーキ角がついている。点A、点Bを通る切削周円の接線と底辺DCが平行でない。チップ自体の傾きと取付座の傾きの合計が実質的なアキシャルレーキ角になる。そのようにアキシャルレーキ角が大きくても、ADCBが曲率の大きい凸曲面になっているから、点Aと点Bでの、切削周面の接線とチップ逃げ面のなす角(逃げ角)の差(θ1 ーθ2 )が小さくなっている事が分かる。
【0046】
図13は辺ABが凸円弧の場合に、本発明の効果を説明するためのより具体的なチップと切削周面の斜視図である。これも取付座に傾きがある。ADCBが凸曲面になっているおり、ABが凸円弧となっている。円弧になっているから辺ABは全長で切削周面に接触できる。点Aと点Bでの逃げ角の差(θ1 ーθ2 )が一層小さくなっている事が分かる。
【0047】
なおこれまでに示された実施例では、クランプ面ABIHから底面DCJKにかけてその中央にネジ穴を持ち、該ネジ穴からクランプネジをホルダ−にねじ込むようにしてチップをホルダ−にクランプさせるようになっているが、必ずしもこの構造に限定されることはなく、例えばレバークランプ、クランプオン、あるいはウエッジオンクランプ手段などの周知のクランプ手段でチップをホルダ−にクランプさせる事ができる事は言うまでもない。
【0048】
【発明の効果】
横置き型のスローアウエイチップにおいて、アキシャルレーキ角を大きくとると、切断辺ABの回転軸線に対する傾きが大きくなる。高い方の切断点Aの高さh、低い方の切断点Bの高さkの差(h−k)をチップの長さdで割ったものが傾きになる。回転するチップによって被削材を切削する場合、最適の逃げ角は3〜7度である。従来のように平坦面を逃げ面とすると、背の高い方の頂点で逃げ角が過大になるが、これに対し、本発明は、逃げ面を凸曲面としているので、曲面によって逃げ角が下がる。点Aでの逃げ角方向の曲率をξA 、点Bでの逃げ角方向の曲率をξB とし、高い頂点での逃げ角の低下分hξA を低い頂点での逃げ角の低下分kξB より大きくする事によって、切断辺ABでの逃げ角の均一化をはかることができこれがために切刃強度が格段に改善される。
【0049】
また本発明は、アキシャルレーキ角、ラジアルレーキ角を大きく取りつつ、チップの刃先強度を大きく保つことができ、工具の寿命が大幅に延びることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横置き型スローアウエイチップの基本形を示す斜視図。
【図2】切断片ABにおいて、アキシャルレーキ角を取るために、前端点Aを高く後端点Bを低くしたスローアウエイチップの原理型を示す斜視図。
【図3】切断端面に段部を設けたチップの概略斜視図。
【図4】傾斜した切断辺ABをもつチップによって被対象物を切削するときに切断片ABが切削周面に接触するように保持し、逃げ角が点Aと点Bにおいて異なる事を説明する図。
【図5】本発明のチップの逃げ面を示す概略図。逃げ面に凸曲面が形成されている。
【図6】直角肩削り型のカッタの前端面図。
【図7】直角肩削りのカッタの側面図。
【図8】本発明のチップの概略の外形を示す斜視図。
【図9】同じチップの端面図。
【図10】同じチップを底面において少し廻して点Aと点Bが切削周面に接するようにした状態の端面図。
【図11】凸曲面逃げ面を持つ本発明のチップがABにおいて切削周面に接したときに、点A、点Bでの逃げ角の差異が小さくなる事を説明する端面方向からの図。
【図12】直線状の切れ刃ABと凸曲面逃げ面を持つ本発明のチップがABにおいて切削周面に接したときに、点A、点Bでの逃げ角の差異が小さくなる事を説明する掬い面方向からみた斜視図。
【図13】凸曲線状の切れ刃ABと凸曲面逃げ面を持つ本発明のチップがABにおいて切削周面に接したときに、点A、点Bでの逃げ角の差異が一層小さくなる事を説明する掬い面方向からみた斜視図。
【符号の説明】
1 チップ
2 ホルダー
3 軸
4 取付座
5 チップポケット(切り屑窪み)
6 ネジ
DCJK チップ底面
ABIH チップ表面
ADCB 逃げ面
IHKJ 逃げ面
AHKD 端面
IJCB 端面

Claims (2)

  1. 略長方形の形状となし、その中央部を中心として切刃部が二回対称に形成され、底面DCJKがホルダ−の取付座に固定される面であり、表面ABIHが対象物を切削する掬い面且つチップをホルダ−にクランプさせるクランプ面であり、側面ADCB、IHKJが主逃げ面であって、切断辺AB、IHがアキシャルレーキ角を与えるために底面に対して傾斜しており、線分AD=hが線分BC=kより長く(h>k)、逃げ面ADCB、IHKJが凸曲面であり、点Aでの凸曲面の曲率ξA と点Bでの凸曲面の曲率ξB が不等式ξA /ξB >k/hを満たすようにしてあることを特徴とするスローアウエイチップ。
  2. 同一半径を持つ刃先軌跡の包絡面として定義される切削周面に接触する切り刃線ABのすべての点において逃げ角Φが3度〜7度の一定角度であることを特徴とする請求項に記載の凸曲面の逃げ面を持つスローアウエイチップ。
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