JP3700562B2 - 熱交換器の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として空気調和機などに使用される熱交換器と、これを製作するための製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術を、図8、図9に従い説明する。図8は、熱交換器100の斜視図で、所定間隔に並べられたフィン群101と、このフィン群101に略直角に挿入し貫通する伝熱管群102とから構成されている。熱交換器の外部を流れる気流は矢印110方向に流れ、伝熱管102内を流れる冷媒は矢印111の方向に流れ、A側から流入しB側へ流出する。熱交換器を凝縮器として用いた場合、冷媒は気相状態で流入し気液二相状態を経て液相状態で流出する。また、熱交換器を蒸発器として用いた場合、冷媒は気液二相状態で流入し気液二相状態または気相状態で流出する。
【0003】
図9は、フィンと伝熱管の固定化の方法を示した図である。図9に示すように、フィン101に設けられた貫通口106に伝熱管102を通し、その後、前記伝熱管102の内部に、伝熱管の内径より大きい真円に近い拡管ビレット104を圧入して矢印107方向に動かすことにより、前記伝熱管102を拡管し、フィン101と密着させる。
【0004】
また特開昭56−66341号公報に記載のように、表面に凹凸を有する拡管ビレットを回転させながら、伝熱管に挿入することにより、熱交換チューブを拡管するとともに、同時に管中心軸に対して傾斜した溝を内面に形成するようにしたものがある。
【0005】
また特開平10−5910号公報に記載のように、拡管ビレットに、伝熱管内面の凹凸に対応した凸凹部を形成し、これらの凹凸をあわせて伝熱管に挿入し、回転させながら押し込むことにより拡管するものもある。
また、特開昭62−64421号公報に記載のように、複数の溝付きプラグを用いて複数の交差する溝を伝熱管内に形成し、管内を流れる冷媒の乱流促進により伝熱性能を向上させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、次のような課題を有している。
【0007】
まず、伝熱管内の伝熱性能としての課題について説明する。管内を流れる冷媒の流速が遅い場合、気液二相状態では気液が分離した状態で冷媒が流れる分離流という流動状態になり易く、特に蒸発時の伝熱性能を低下させてしまう。図10は、伝熱管内面が平滑な伝熱管内を流れる冷媒の状態を示した断面図である。102は伝熱管、108は冷媒の液相部、109は冷媒の気相部である。冷媒は液相部108で蒸発し、この液相部108が接する伝熱管内面では潜熱変化が行われるため非常に熱伝達率が高くなる。一方、気相部109が接する伝熱管内面は、蒸発する冷媒がないため気体の顕熱変化のみであり、熱伝達率は著しく低くなってしまう。これにより、伝熱性能は大幅に低下し、熱交換能力の著しい低下を招いてしまう。また、冷媒の流速が速い場合、管壁面を流れる液相の冷媒は密度が低く流速の速い気相部に剥ぎ取られ、滴状になって気相中を流れる。したがって、液相の冷媒は伝熱管の管壁でなく中央付近で蒸発してしまうドライアウトと呼ばれ現象を生じてしまい、管壁で蒸発するより著しく伝熱性能を低下させてしまう。これらの現象は、特に伝熱管内面に溝加工されていない平滑管の場合、頻繁に発生しやすい。
【0008】
次に、製造方法としての課題について説明する。従来の拡管しながら溝を形成する方法では、伝熱管を拡管する役割と、溝を形成する2つの役割をになうため、拡管ビレットを押し推める推力が多大になり、装置が大掛かりなものになり、コストアップの要因になってしまう。また、溝を形成する際、管内面を削り取ってしまい不要な切削屑が発生し、冷凍サイクル内に混入してしまうと、キャピラリチューブなどの絞り部分の詰まりや圧縮機の故障など切削屑に起因する動作不良が発生しやすく、これを防止するには拡管後に管内の清浄工程を追加しなければならず、さらにコストアップになってしまう。
【0009】
また、凹凸をあわせて、拡管ビレットを回転させながら押し込み拡管する方法では、拡管に要する時間(拡管ビレットが前方に進むのに要する時間)がかかり効率的でなく、また、拡管ビレットを前方に進めた後、凹凸にあわせて後方に引き抜くための微妙な調整も必要となる。
【0010】
また、伝熱管内に複雑な溝を加工する場合、複数のプラグを用いることで加工速度が大幅に低下し、加工コストが著しく上昇してしまう。
【0011】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、乱流促進による熱交換器の性能向上と、その熱交換器を、容易でかつ効率的な拡管方法で製造する方法を提案するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、熱交換器の伝熱管を多角形状に変形させる。この構成により、伝熱管内を流れる冷媒は乱され、これにより伝熱管内面での熱伝達を促進でき、熱交換能力の著しい向上が図れる。また、拡管に要する時間は従来とほとんど変わらず、容易にかつ効率的に行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
第1の発明の実施の形態は、所定間隔に平行に並設し、その間を気体が流動するフィン群と、このフィン群を略直角に貫通して列を成し、内部を流体が流動する伝熱管群とを備え、伝熱管の中心軸に対する直角断面形状が、多角形状の断面で形成された熱交換器であって、フィンに形成された挿通孔に伝熱管を挿通した後、伝熱管の内径より大きい径を持つ拡管器具を押込んで伝熱管を拡管し、フィンと伝熱管を密着させ、同時に回転する機構を有する拡管器具を用いると共に、拡管器具の拡管部の最短径より大きく、最大径より小さい平行な距離を形成する穴を有する板を、伝熱管直前に設け、拡管器具がこの板の穴を通過した後、伝熱管に挿通する拡管装置を用いて熱交換器を製造する。
【0014】
これにより、伝熱管の中心軸に対する直角断面形状が、円弧と弦とで形成する稜線が伝熱管の中心軸に対し傾斜し螺旋状にねじれた多角形状の伝熱管を有する熱交換器を製造できる。
【0015】
さらに、拡管器具を、伝熱管入口にねじ込むことができ、拡管器具がこの板を通り抜けた後は、強制的に回転を加えなくても、入口のねじ込まれた螺旋形状に倣って拡管器具が回転する。これにより、容易に回転する機構を設けることができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の熱交換器の製造方法の実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
参考例1)
図1(a)は、熱交換器の断面図、(b)は同熱交換器の中心軸方向の断面図である。
【0018】
図1(a)、(b)において、内面に多数の溝13が形成された多角形状伝熱管12bは、その外周に沿っての多角形状に変形したフィンカラー11b部分でフィン11と密着し、伝熱管12bの外面は、円弧14と弦15とが交互に繰り返され、その両者の境界は複数の稜線16で形成される。また、伝熱管12bの内面には多数の螺旋状の溝13以外に、管外面に設けられた稜線16の管内面側で谷部18が形成される。
【0019】
このような構成により、伝熱管内を流れる冷媒は、多数の螺旋状の溝と複数の谷部により、伝熱管を抽伸ダイスとフローティングプラグで引き抜き加工する際、相異なる2個の溝を有する溝加工プラグを二段に配置し、伝熱管内面に互いに交差する螺旋状の溝を形成する方法で加工された複合溝付き管に近い形状にすることができ、コストの高い複合溝を用いずに、管内を流れる冷媒の乱流促進が図れ、伝熱性能の向上が図れる。また、伝熱管の断面を多角形状に変形させるのみであり、従来のように拡管時の溝加工による切削屑の発生がなく、また、加工速度を低下させることもない。
【0020】
なお、図1は4つの円弧14と4つの弦15で形成する略8角形を示したが、特に多角形の数を限定するものではない。12角形や24角形など真円に近い形状になってもフィンと伝熱管との密着性を阻害しなければ同様の効果が得られるものである。また、弦15が円弧14より半径の大きい円弧であっても稜線16が形成され、伝熱管内面の谷部18が形成できれば同様の効果が得られる。
【0021】
参考例2)
次に図2を用いて参考例2について説明する。参考例1との相違点は、管内面の谷部28を、多角形状伝熱管22bの中心軸に対し、角度αだけ傾斜させ、螺旋状にねじれた谷部28を有する多角形状の伝熱管22bを形成する点である。
【0022】
このような構成により、参考例1に比べ、管内を流れる冷媒の乱流促進を増大でき、さらに伝熱性能の向上が図れるものである。その他の効果については参考例1と同様の効果が得られる。
【0023】
参考例3)
次に図3を用いて本発明の参考例3について説明する。参考例1や参考例2との相違点は、図2では円弧24の長さは4ヶ所とも同じで、また弦25の長さも4ヶ所とも同じ長さとしていたが、この参考例3では、図3に示すように、円弧34の長さはすべて同じであるが、弦の長さは異なり、弦35aの長さは弦35bの長さより長い弦としたものである。これにより伝熱管32bは距離L1と距離L2との長さが異なり、楕円に近い形状となる。
【0024】
このような構成により、図3に示すように谷部38が伝熱管中心軸に対し角度α傾斜させた螺旋状の多角形状伝熱管では、伝熱管内を流れる冷媒に参考例2では見られない大きなうねりを生じさせることができ、乱流促進をさらに加速させることができ、熱伝達率の向上が図れる。また、稜線がねじれのない多角形状の伝熱管の場合、縦横比の短い方の中心線が気流と直角方向に配置することで楕円管と類似の効果である通風抵抗の低減を図ることができる。その他の効果については参考例1、2と同様の効果が得られる。
【0025】
なお、図3では弦の長さが異なる場合を示したが、円弧の長さを異なる様に配置しても同様の効果が得られる。また、弦及び円弧ともすべて不均一にしても同様の効果が得られる。
【0026】
参考例4)
次に図4を用いて本発明の参考例4について説明する。これまでの参考例との相違点は、図4に示すように、管内面には溝形状がない平滑管を用いることである。管外面に形成された稜線46の管内面側では谷部48の形状が螺旋状に形成されている。
【0027】
この構成により伝熱管内を流れる気液二相状態の冷媒は螺旋状の谷部48に沿って流れ、平滑管であっても管上部に押し上げられる。一方、重力に影響しやすい液冷媒は伝熱管下面に流れ落ちる。この二つの作用により冷媒は攪拌され、気液が混合され、熱伝達率を向上させることができる。また、伝熱管内面に溝加工がないことで、大幅な軽量化または低コスト化を図ることができる。
【0028】
(実施例
次に図5を用いて本発明の実施例について説明する。フィン11に形成された挿通孔510に伝熱管52aを挿通した後、伝熱管の内径より大きい径を持つ拡管器具511を押込んで伝熱管52aを拡管し、フィンカラー11b部と拡管後の伝熱管52bを密着させることで熱交換器が形成される。拡管器具511は、マンドレル512の先端にナット513で外れないように取り付けられているが、ナット513と拡管器具511との間にはわずかな隙間514があり、拡管器具はマンドレルのまわりを自由に回転できるように取り付けられている。
【0029】
このような拡管器具を用いると、傾斜した稜線511aにより伝熱管52bには螺旋状の谷部58が形成され、次に、拡管器具を矢印515方向に推し進めると、拡管器具511は稜線511a部分で伝熱管の螺旋状の谷部58に拘束され、回転しながら矢印515方向に進むことで伝熱管52aが螺旋状に谷部を持つ伝熱管52bに拡管され、螺旋状でかつ多角形状の伝熱管52bを有する熱交換器が形成される。回転可能な拡管器具を溝付きの伝熱管に用いることで、拡管の速度を落とすことなく、容易に参考例1〜4の形状を形成することができる。
【0030】
(実施例
次に図6及び図7を用いて本発明の実施例について説明する。図6(a)は拡管部の正面図、図6(b)はその側面図である。図6(a)、(b)において、拡管器具611は、マンドレル612の先端にナット613で取り付けられており、拡管器具611はマンドレル612との間にはわずかな隙間614があり、マンドレル612のまわりを回転できる構造となっている。一方、拡管器具回転用板617には、拡管器具611の最短径LB1より長く、最大径LB2より短い平行な距離LG1と拡管器具611の最大径LB2より長いLG2とで形成する略鼓形状のガイド穴616が形成されており、これにより拡管器具611はガイド穴内616では自由に回転することはできない。一方、拡管器具611の稜線611aは中心軸に対し傾斜角αの傾きを有することで、拡管器具611はガイド穴616を通過しながら確実に回転することになる。図7(a)、(b)、(c)、(d)は、順に拡管が進んでいくようすを表す説明図である。拡管器具回転用板615を伝熱管62aの入口直前に設けることで、伝熱管62aの入口近傍で拡管器具611を確実に回転させながら拡管でき、拡管器具611がガイド穴616を通過した後は、実施例と同様に螺旋状の拡管がなされる。
【0031】
このように、拡管器具回転用板615を伝熱管直前に設けることで、拡管器具611を伝熱管62aに押し込みながら矢印615方向に進めることで、拡管器具611は進むと同時に確実に回転することができ、このような簡単な拡管器具回転用板のみで容易にしかも安定して螺旋状の多角形状伝熱管を有する熱交換器を製造することができる。
【0032】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明は、螺旋状でかつ多角形状の拡管器具を用いることで容易に螺旋状の多角形伝熱管を有する熱交換器を形成できる。さらに、簡単な拡管器具回転用板を用いることで確実にしかも安定して螺旋状の多角形伝熱管を有する熱交換器を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)本発明の参考例1における伝熱管中心軸に直角方向の断面図
(b)同熱交換器の伝熱管中心軸方向の断面図
【図2】 (a)本発明の参考例2における伝熱管中心軸に直角方向の断面図
(b)同熱交換器の伝熱管中心軸方向の断面図
【図3】 (a)本発明の参考例3における伝熱管中心軸に直角方向の断面図
(b)同熱交換器の伝熱管中心軸方向の断面図
【図4】 (a)本発明の参考例4における伝熱管中心軸に直角方向の断面図
(b)同熱交換器の伝熱管中心軸方向の断面図
【図5】 本発明の実施例における伝熱管の拡管の方法を説明する図
【図6】 (a)本発明の実施例における拡管部構造の正面図
(b)同拡管部構造の側面図
【図7】 (a)〜(d)本発明の実施例における伝熱管の拡管の方法を説明する図
【図8】 熱交換器の斜視図
【図9】 伝熱管の拡管の方法を説明する図
【図10】 管内を流れる冷媒の流動状態を説明する図
【符号の説明】
11 フィン
11a 拡管前のフィンカラー
11b 拡管後のフィンカラー
12a、52a 拡管前の伝熱管
12b、22b、32b、52b 拡管後の伝熱管
13 溝
14、24、34 円弧
15、25、35a、35b 弦
16、46 稜線
18、28、38、48、58 谷部
510 挿通孔
511、611 拡管器具
511a、611a 稜線
512、612 マンドレル
513、613 ナット
514、614 拡管器具が締め付けられていないことを示す隙間
515、615 拡管方向を示す矢印
616 拡管器具回転用板に設けられたガイド穴
617 拡管器具回転用板

Claims (1)

  1. 所定間隔に平行に並設し、その間を気体が流動するフィン群と、このフィン群を略直角に貫通して列を成し、内部を流体が流動する伝熱管群とを備え、前記伝熱管の中心軸に対する直角断面形状が、多角形状で形成された熱交換器であって、前記フィンに形成された挿通孔に前記伝熱管を挿通した後、前記伝熱管の内径より大きい径を持つ拡管器具を押込んで前記伝熱管を拡管し、前記フィンと前記伝熱管を密着させ、同時に回転する機構を有する拡管器具を用いると共に、前記拡管器具の拡管部の最短径より大きく、最大径より小さい平行な距離を形成する穴を有する板を、伝熱管直前に設け、拡管器具がこの板の穴を通過した後、伝熱管に挿通する拡管装置を用いたことを特徴とする熱交換器の製造方法
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