JP3698694B2 - スルーホールめっき方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスルーホールめっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子部品の軽量化にともない、プリント配線板にも軽い材質を使う事が要求されている。この材質として電気抵抗が比較的小さく比重が小さい金属のアルミニウムが考えられる。ところが、アルミニウム上への銅めっきが十分な密着性が得られない事から、プリント配線には使用できなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、プリント配線板の導体層にアルミニウムを用いた場合においても、アルミニウムに対して銅めっきが高い密着性を持つようなスルーホールめっき方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は多層プリント配線板の中間層回路に使用したアルミニウムを銅めっきするに当って、前処理として無電解ニッケルめっきを行なうことを特徴とするスルーホールめっき方法を提供する。
【0005】
プリント配線板の製造において、良好な導電性とめっき性、はんだ付け性などから、スルーホールなどに銅めっきを採用しなければならない。一般的には、銅電気めっきの前処理として無電解銅めっきが利用されるが、下地がアルミニウムの場合、無電解めっき銅ではアルミニウムに対して良好な密着性が得られない。一方、ニッケルは銅との密着性に優れることが知られているが、本発明者は、無電解めっきニッケルがアルミニウムに対しても良好な密着性を有することを見い出して本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明が採用されるプリント配線板は中間層回路としてアルミニウムを用いているもので、例えば、アルミニウム箔樹脂シートを例えば10%塩酸(40℃)でエッチングして回路を形成後、積層して得られる多層プリント配線板などであることができる。
このようなプリント配線板にスルーホールめっきする際、スルーホール内にはアルミニウム配線層が露出しており、このアルミニウムと表層導電層(通常、銅の回路)との間の電気的接続を取るためにスルーホールめっきを行なう。スルーホールめっきとしては前述の如く電気銅めっきを行なうが、その前処理として本発明は無電解ニッケルめっきを行なうものである。
【0007】
無電解ニッケルめっき法は知られており、そのためのめっき液は市販されている。一般的には、スルーホールを形成した多層プリント配線板を脱脂処理後、Pd/Snなどの触媒を付与してから、無電解めっき液中に浸漬する。市販の無電解ニッケルめっき用触媒液及びめっき液の組成の1例を下記に示す。
【0008】
市販触媒液の組成
塩化パラジウム 0.1〜0.3g/L
塩化第一すず 10〜20 g/L
塩酸(35%容量) 50〜250ml/L
塩化ナトリウム 20〜200g/L
※塩化パラジウムと塩化第一すずはコロイドとなっている。
【0009】
市販無電解ニッケルめっき液組成
硫酸ニッケル 20g/L
次亜りん酸ナトリウム 25g/L
乳酸 5g/L
クエン酸ナトリウム 5g/L
安定剤 少量
pH 4.0〜5.0
温度 80〜90℃
無電解ニッケルめっき液の条件の特徴は、ニッケル塩の溶解によるニッケルイオンが存在する液中で次亜りん酸が還元剤となり、ニッケルイオンを金属イオンに還元し、次亜りん酸は酸化されて亜りん酸となる化学反応を有し、これを活発化するために次亜りん酸の還元力が高いpH4.0〜5.0領域にコントロールし、温度を80〜90℃と高くしたものである。
【0010】
こうして、本発明によれば、無電解ニッケルめっきを採用することによりアルミニウム中間回路下地に対する銅めっきの密着性を向上させることができるが、さらに、ただ単に無電解Niめっきを析出させるのではなく、前処理として、アルミニウム表面の酸化膜を除去した後、硫酸Niあるいは、塩化Ni・硝酸Ni等の酸性溶液中でAl表面をNi置換させて、Al表面に無電解Niが均一に成長する素地を形成後に無電解Niを析出させると、より高い密着性が得られることも見い出された。
【0011】
理論に拘束されるわけではないが、次のように考えられる。
アルミニウム表面は、酸化しやすいのでアルカリ又は、酸洗浄で酸化膜を除去する必要がある。酸化膜を除去したアルミニウム表面においても無電解ニッケルの析出は図1(ア)のように4〜5μm程度の間隔でまばらなポイントから析出が発生する。そのため、これらのまばらなニッケルが核となって成長する無電解ニッケル膜は粗で、従って下地アルミニウムとの密着性が悪いものとなる〔図1(イ)〕。一方、強酸性下でNi置換を行うとアルミニウム表面に図1(ウ)の如くサブミクロンの間隔で細かなNiが置換され、無電解ニッケルでこのNiが成長するため、ニッケルと下地アルミニウムの間に高い密着性が得られる〔図1(エ)〕。
【0012】
アルミニウム表面の酸化膜除去は酸洗浄及び/又はアルカリ洗浄すればよい。酸洗浄とアルカリ洗浄はどちらでもよいが、次工程のNi置換は酸性下で行なうので酸洗浄が好ましく、さらに好ましくはアルカリ洗浄後酸洗浄を行なう。洗浄はアルミニウム表面の酸化膜が除去されればよく、2μmもエッチングされれば十分である。一般的には、5〜30%の溶液で常温にて0.5〜1分程度の処理でよい。
【0013】
アルミニウム表面の酸化膜を除去した後、酸性下でニッケル塩を用いてアルミニウム表面のニッケル置換を行なう。例えば、ニッケル塩としてはNiNO3 ,Ni2 SO4 などのを用いることができ、濃度は0.001〜2M、好ましくは1M程度で、pHは1以下とし、温度は反応を促進するために50℃以上がよく、反応時間は均一なNi置換面が生成するまでとする。ここで均一な膜成長とは、前記の如く、アルミニウム表面にサブミクロンの間隔で均一にNiが付着した状態をいう。Ni置換で析出するNiは物性が良くないのであまり長時間の析出は好ましくない。
【0014】
Ni置換後、無電解ニッケルめっきを行なう。銅めっきの下地としてアルミニウム表面のほぼ全面をニッケルで覆う必要があるが、上記Ni置換で析出するニッケルは物性が劣るので、無電解ニッケルめっきを行なう。
無電解ニッケルめっきそれ自体は前記の如く公知であるが、本発明では、(スルーホールを形成した)多層プリント配線板に先ず触媒付与した後、アルミニウム酸化膜除去およびNi置換を行ない、それから無電解ニッケルめっき液に浸漬する。なお、触媒付与はNi置換後に行なってもよい。上記の如くアルミニウム表面のほぼ全面がニッケルで覆われればよく、一般的には1.0〜5.0μm厚程度とする。ニッケルは銅と比べて電気抵抗が大きいので厚すぎることは望ましくない。
【0015】
ニッケルめっき後、銅めっきを行なう。この銅めっきは慣用の条件に従うことができる。めっき厚としては15μm以上、30μm程度までが一般的である。こうして、本発明によれば新規なプリント配線板が得られるが、図2にこうして得られる多層プリント配線板の一例の断面を模式的に示す。複数層のアルミニウム中間層回路1を含む樹脂積層板2の表裏面は通常銅箔の回路3である。この積層板のスルーホール4内壁面から表裏銅層上へスルーホール銅めっき層6が形成され、その下地層として無電解ニッケルめっき層5が存在する。
【0016】
【作用】
本発明では、多層プリント基板の中間回路に使用されたアルミニウム表面に銅電気めっきするに当って下地として無電解ニッケルめっきを採用することにより、アルミニウムと銅めっきと両方に対する密着力を有するため、優れた銅めっきが可能になる。特に、無電解ニッケルめっき前にアルミニウム表面の酸化膜を除去し、アルミニウム表面を強酸性下でニッケル置換しておくと、無電解ニッケルめっきのアルミニウムへの密着性がさらに向上する。
【0017】
【実施例】
比較例1
この例は銅導体の多層プリント配線板に銅めっきする従来法を説明するものである。
35μm厚みの銅箔を過硫酸カリウム表面を荒らした後に市販のプリプレグを任意の厚さになるまで数枚はさんで加圧・熱積層する。この表面に市販の感光材(ドライフィルム等)を使い、露光・現像をへてエッチングレジストを形成し塩化銅溶液銅の不要部をエッチングして銅材中間層回路を形成する。その後市販のプリプレグと銅箔を重ね合わせて一般的な積層を行い孔明け加工を行う。
【0018】
得られた多層プリント配線板の孔内を高圧水で洗浄後、市販の脱脂剤で脱脂し、さらに市販の触媒液(前記の組成)でPd/Snを付与した。
その後、下記組成
硫酸銅 10g/l
EDTA 30g/l
ホルマリン 10g/l
pH 12.5
安定剤 微量
温度 20〜25℃
の無電解銅めっき液で銅を0.6μm析出させた後、下記
H2 SO4 180〜200g/l
CuSO4 50〜60g/l
Cl- 30ppm
市販光沢剤 微量
液温 20〜22℃
電流密度 1.5〜2.0A/cm2
の銅めっき液を用いて電気銅めっきを行ない、銅を25μm厚に析出させ、スルーホールめっきを完了した。
【0019】
こうして作製したスルーホールめっきの品質を評価するために、図3の断面図に示すように、0.35mmφのスルーホールの連続20個を電気的に接続した構造において電気抵抗値を測定した(初期値)。図2において、11は基材、12はアルミニウム導体、13はスルーホールめっき、A,Bは測定点である。なお、プリント配線板の厚みは1.6mmであった。次に、はんだフロート(260℃、5秒)を3回繰り返した後の同様の抵抗値を測定した(測定値A)。さらに、MIL規格の熱衝撃試験(65℃30分→25℃5分→125℃30分を1サイクルとする)を100サイクル行なった後の抵抗値を測定した(測定値B)。
【0020】
また、図4に示す如く、銅板21上に、上記と同一条件で無電解銅めっき後電気銅めっきした6mmφの銅めっき層22にリード線23をはんだ24で結合し、リード線23を銅板21に対して垂直方向に引っ張り、銅に対する銅めっきの密着力を測定した。
以上の結果を表1、表2に示す。
【0021】
比較例2
この例はアルミニウム導体を用いた多層プリント配線板に従来法に従って銅めっきする場合を説明するものである。
比較例2における中間層を35μm厚のアルミニウム箔に代え、3%苛性ソーダで表面を荒らすこととエッチング液に希塩酸を用いること以外、比較例1と同様にして積層回路を作製し、スルーホールめっき(銅めっき)を行なった。
【0022】
得られた多層プリント配線板について比較例1に記載の抵抗値測定を行なった。
また、比較例1と同様の手順でアルミニウム板上の銅めっきの密着力を引張り試験した。
結果を表1、表2に示す。
【0023】
実施例1
アルミニウム板を水洗浄、脱脂し、触媒付与した後、市販の無電解ニッケルめっき液(組成は前出)を用いて2μm厚にニッケルを析出させた。
その後、比較例1と同様にして電気銅めっきを行なった。
さらに、比較例1に記載したようにリード線をはんだ付けし、引張試験を行なった。
【0024】
また、上記のアルミニウム板を160℃、20分間熱処理して表面酸化を促進してから、上記と同様にめっきし、引張り密着試験をした。
結果を表2に示す。
実施例2
比較例2の如く、アルミニウム中間回路層を持つ多層プリント配線板のスルーホールに、比較例1に記載の如く高圧水孔内洗浄、脱脂、触媒付与した後、下記条件でアルカリ洗浄及び酸洗浄を行なった。
アルカリ洗浄:
苛性ソーダ 30g/l
グルコン酸ナトリウム 5g/l
常温、1分間
酸洗浄:
硝酸 20%
フッ化アンモニウム 50g/l
常温、1分間
その後、ひきつづいて下記条件でNi置換処理を行なった。
【0025】
硝酸ニッケル 0.1モル/l
硝酸ナトリウム 0.5モル/l
pH 1以下
温度 70℃
時間 1分
その後、比較例1と同様に無電解ニッケルめっき及び電気銅めっきを行なった。
【0026】
得られた多層プリント配線板について、比較例1と同様に抵抗値測定試験を行なった。結果を表1に示す。なお、表1には無電解ニッケルめっき後の外観も併せて記す。
実施例3
アルミニウム板上に、実施例2に試験のようにアルカリ洗浄及び/又は酸洗浄し、Ni置換してから無電解ニッケルめっき、電気銅めっきを行ない、比較例1に記載した手順でリード線をはんだ付けして引張り密着試験を行なった。
【0027】
ただし、アルミニウム板は熱処理(160℃、20分)を行なったものを加え、アルカリ洗浄、酸洗浄は一方又は両方を省略したものを加え、またNi置換の条件(温度、時間、処理液)を変えた。
結果を、無電解ニッケルめっき後の外観とともに表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
なお、表2において密着力が「20kg/6mmφ以上」と記載したのは、これ以上の引張力を加えるとアルミニウム板及び銅板が破損して試験できなくなったことを意味し、密着力が十分であることを示す。
表2を見ると、回路材料を銅からアルミニウムに代えると、銅めっきの密着力が20kg/6mmφ以上から2kg/6mmφに大幅に低下するが、下地無電解銅めっきを無電解ニッケルめっきに代えると8kg/6mmφに向上し、さらに無電解ニッケルめっきの前にアルカリ、酸洗浄及びNi置換を行なうと密着力を20kg/6mmφ以上に向上している。また、ニッケル置換だけよりもアルカリ、酸洗浄を加えた方が効果が大きいこと、アルミニウム表面の酸化膜がこれに影響していること、ニッケル置換は40℃よりも70℃位で効果が大きいこと、ニッケル置換の時間が長くなると密着力が少し低下すること、ニッケル置換は硝酸系以外でも可能であることなどが見られる。なお、無電解ニッケルめっき後の外観で「色むら」はニッケルが折出しない部分があることを示し、「凹凸」は目視できる程度である。
【0031】
また、表1から、アルミニウム回路層を持つ多層プリント配線板に従来法の銅めっき法(下地無電解銅)めっきを適用すると、めっきの密着性が著しく低下し、耐久試験で完全に剥離して絶縁体化すること、しかし本発明により下地無電解ニッケルめっき後に銅めっきした多層プリント配線板は、従来の銅回路層を持つ多層プリント配線板と同等以上の特性(めっきの密着力)を持つことがわかる。特に、MIL熱衝撃試験は約15〜20年の加速劣化寿命試験であるため、本発明によれば十分に信頼性の高いアルミニウム材を回路材とした多層プリント配線板が製造できることが認められる。なお、MIL規格は10%以内の抵抗値変化を合格としている。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミニウムの中間回路層を持つプリント配線板においてスルーホール銅めっきを高い密着力で行なうことができ、プリント配線板の軽量化、信頼性向上に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】無電解ニッケルめっきにおけるニッケル置換の作用を説明する図である。
【図2】多層プリント配線板の模式断面図である。
【図3】スルーホールめっきの密着力を試験する抵抗値測定法を説明する図である。
【図4】銅めっきの密着力を試験する引張り試験を説明する図である。
【符号の説明】
1…アルミニウム中間層回路
2…樹脂積層板
3…表裏銅箔回路
4…スルーホール銅めっき層
21…アルミニウム板(銅板)
22…銅めっき層
23…リード線
24…はんだ
Claims (3)
- アルミニウム中間層とプリント配線板の表面導電層とをスルーホールを介して接続するに当たって、前処理としてスルーホール内に露出したアルミニウム中間層の表面の酸化膜除去および酸性溶液によるニッケル置換処理を行ない、その後に無電解ニッケルめっきを行なってから、銅めっきをしてアルミニウム中間層とプリント配線板の表面導電層とを接続することを特徴とするスルーホールめっき方法。
- 前記ニッケル置換処理の酸性溶液のpHが1以下である請求項1記載のスルーホールめっき方法。
- 前記酸化膜除去がアルカリ洗浄及び/又は酸洗浄である請求項1又は2記載のスルーホールめっき方法。
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JP2002237428A JP3698694B2 (ja) | 2002-08-16 | 2002-08-16 | スルーホールめっき方法 |
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- 2002-08-16 JP JP2002237428A patent/JP3698694B2/ja not_active Expired - Lifetime
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