JP3697738B2 - 車両の安定制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の各車輪に付与する制動力を所定の特性に制御する車両の安定制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時の車両の安定制御装置は、アンチスキッド制御をはじめ、トラクション制御、前後制動力配分制御、制動操舵制御等種々の制御機能を有している。これらの制御に加え、車両旋回時の制動性能を向上させる制動力制御装置も提案されており、例えば、特開平4−238762号公報においては、摩擦係数が大きい路面では前後配分制御により操舵反力の発生を回避しつつ旋回制動性能を向上させ、摩擦係数の小さい路面では左右配分制御により旋回制動性能を向上させることとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来装置においては、各車輪毎に制動力を制御する手段が用いられ、上記公報に記載の装置においては、更に制動力左右配分制御手段と制動力前後配分制御手段が設けられている。然し乍ら、車両の全ての車輪に関し、旋回走行中の各車輪に付与すべき制動力の相互の関係については言及されておらず、検討もなされていない。
【0004】
車両が旋回走行中には車輪に横すべりが生ずるが、この横すべりが大となると、操舵量を増加しても車両が旋回半径から外側にはみ出す状態となる。この状態を図24に示し、左方へ旋回走行中の車両MVが道路RDから外側へはみ出し、ドリフトアウト状態(MVdo)となっている。更に、後輪の横すべりが過大となるとスピンが生じドリフトスピン状態(MVds)となる。また、通常の走行状態から旋回方向の内側に旋回するスピンイン状態(MVsi)も生じ得る。これらの状態は、図25に示すように横加速度(Gy)に対するヨーレイト(γ)及び車体速度(Vso)の積(γ・Vso)の関係で表すことができる。即ち、このGyとγ・Vsoとの関係は、車両の横すべり角速度を求める式dβ/dt=Gy/Vso−γから得られるVso・dβ/dt=Gy−γ・Vsoの式の右辺の関係を表すもので、通常走行が二点鎖線nmの関係にあるのに対し、スピンインが実線siで示す関係にあり、更にドリフトスピンが破線dsで示す関係にあって、ドリフトアウトが一点鎖線doで示す関係にある。このような関係は、ドリフトアウトをアンダーステア(US)、スピンインをオーバーステア(OS)と表すこともできる。
【0005】
上記のようなスピンを防止するには、例えば図26に示すように左旋回中の車両にスピンモーメントMsが加わっているとき、車両前方の車輪FL,FRに対する各車輪の進行方向の制動力(以下、前後力という)Bfl,Bfr、及び各車輪の進行方向に対して直交する方向の横力(以下、単に横力という)Cfl,Cfrのうち右側の車輪FRの前後力Bfrを破線で示すように増加すると共に横力Cfrを破線で示すように減少させ、同時に車両後方左側の車輪RLの前後力Brlを破線で示すように減少させると共に横力Crlを破線で示すように増加させると、アンチスピンモーメントMaが生ずる。従って、平面で対角線上にある一対の車輪に対する制動力を適宜制御しヨーモーメント制御を行なうことによって、スピンモーメントMsを相殺するアンチスピンモーメントMaを発生させることが可能である。尚、ヨーモーメント制御のみでは不十分な場合には、更に残りの車輪に対し減速制御を行なうこととすればよい。
【0006
そこで、本発明は車両の安定制御装置において、各車輪に対する前後力及び横力から成る制動力を適宜制御し車両のヨーモーメントを制御することにより、車両のスピン及びドリフトアウトを防止し、車両の安定性を維持しつつ適切な制動力を付与することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧し前記ホイールシリンダの各々にブレーキ液圧を付与する液圧発生装置と、該液圧発生装置と前記ホイールシリンダの各々との間に介装し前記ブレーキ液圧を制御する液圧制御装置と、前記車輪の各々の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記液圧制御装置を駆動し、前記各車輪に付与する制動力を制御する制動力制御手段と、前記車両走行時の状態を判定する車両状態判定手段とを備え、前記車両状態判定手段の判定結果に基づき前記制動力制御手段を制御して前記車両の操縦安定性を維持する車両の安定制御装置において、前記各車輪のうち少くとも車両前方の車輪の操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記各車輪に対する車輪進行方向の前後力及び車輪進行方向に直交する方向の横力から成る制動力を検出する車輪制動力検出手段を具備し、前記車両状態判定手段が、少くとも前記操舵角検出手段及び前記車輪制動力検出手段の検出結果に応じて前記各車輪の前後力及び横力によるヨーモーメントを演算すると共に、前記各車輪のヨーモーメントを合成し前記車両のヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算手段と、前記車両の進行方向に対するすべり量を角度に変換して車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段と、該車体横すべり角演算手段の演算結果に基づき各車輪毎に車輪横すべり角を演算する車輪横すべり角演算手段とを含むと共に、前記制動力制御手段が、前記車輪横すべり角演算手段の演算結果に基づき、前記車両の対角線上に位置する一対の車輪を前記車両の旋回方向に応じて選択し、選択された各車輪に付与する制動力を、少くとも前記ヨーモーメント演算手段の演算結果に基づき制御し、前記車両のヨーモーメントを制御するヨーモーメント制御手段を含み、前記車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪に対する制動力を制御すると共に、前記ヨーモーメント演算手段の演算結果に基づき前記選択された各車輪に対する制動力を制御するように構成したものである。
【0008】
上記の構成に加え、更に請求項2に記載のように、前記車両状態判定手段は、更に前記車両の進行方向に対する前記各車輪の減速度を合成し前記車両の減速度を演算する減速度演算手段を含むと共に、前記制動力制御手段が、更に前記車輪横すべり角演算手段の演算結果に基づき、前記一対の車輪以外の車輪のうち少くとも一つの車輪に付与する制動力を、当該車輪の減速度が増大するように制御する減速制御手段を含み、前記車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪に対する制動力を制御すると共に、前記ヨーモーメント演算手段の演算結果及び前記減速度演算手段の演算結果に基づき前記各車輪に対する制動力を制御するように構成することが望ましい。
【0009
更に、請求項3に記載のように、前記各車輪に対する路面摩擦係数を検出する摩擦係数検出手段前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段前記車両の横加速度を検出する横加速度検出手段前記車輪速度検出手段検出結果に基づき前記車両の車体速度を推定する車体速度推定手段具備し、前記車体横すべり角演算手段前記ヨーレイト検出手段検出結果、前記横加速度検出手段検出結果、及び前記車体速度推定手段推定車体速度に基づき前記車体横すべり角を演算すると共に、前記車輪制動力検出手段が前記摩擦係数検出手段検出摩擦係数に基づき前記各車輪の制動力を演算するように構成することもできる。
【001
また、請求項4に記載のように、更に、前記制動力制御手段前記車体速度推定手段推定した車体速度と前記各車輪の車輪速度に基づき前記各車輪の車輪スリップ率を演算するスリップ率演算手段前記車両状態判定手段判定結果に応じて前記各車輪の目標スリップ率を設定する目標スリップ率設定手段目標スリップ率設定手段設定した目標スリップ率と前記スリップ率演算手段演算したスリップ率とのスリップ率偏差を演算するスリップ率偏差演算手段スリップ率偏差演算手段演算したスリップ率偏差に基づき前記液圧制御装置制御量を演算する液圧制御演算手段を備えたものとし、該液圧制御演算手段の演算結果に応じて前記液圧制御装置制御するように構成するとよい。
【001
更に、請求項5に記載のように、前記スリップ率演算手段演算結果のスリップ率及び前記摩擦係数検出手段検出摩擦係数に基づきスリップ率補正量を設定する補正量設定手段と、前記スリップ率演算手段演算結果のスリップ率に前記スリップ率補正量を加算する補正量加算手段を備えたものとし、前記スリップ率偏差演算手段前記スリップ率補正量を加算したスリップ率と前記目標スリップ率に基づき前記スリップ率偏差を演算するように構成してもよい。
【001
【作用】
上記の構成になる安定制御装置において、ブレーキペダル操作すると液圧発生装置らホイールシリンダ各々にブレーキ液圧が供給され、各車輪対し制動力が付与されるが、液圧発生装置少くとも各ホイールシリンダとの間には液圧制御装置介装されており、この液圧制御装置よって、各ホイールシリンダに付与されるブレーキ液圧が制御される。この場合において、車輪速度検出手段よって各車輪の車輪速度が検出され、これらの検出車輪速度に基づき車両状態判定手段て車両走行時の状態が判定される。そして、車両状態判定手段判定結果に基づき制動力制御手段制御され車両の操縦安定性が維持される。また、操舵角検出手段より、各車輪のうち少くとも車両前方の車輪操舵角が検出されると共に、車輪制動力検出手段より、各車輪に対する車輪進行方向の前後力及び車輪進行方向に直交する方向の横力から成る制動力が検出される。そして、車両状態判定手段おいては、ヨーモーメント演算手段て少くとも操舵角検出手段び車輪制動力検出手段検出結果に応じて各車輪の前後力及び横力によるヨーモーメントが演算された後、各車輪のヨーモーメントが合成されて車両のヨーモーメントが演算されると共に、車体横すべり角演算手段て車体横すべり角が演算される。更に、この車体横すべり角演算手段演算結果に基づき、車輪横すべり角演算手段よって各車輪毎に車輪横すべり角が演算され、その演算結果に基づき、ヨーモーメント制御手段て、車両の対角線上に位置し車両の旋回方向に応じて一対の車輪選択され、その各々に付与される制動力が、少くともヨーモーメント演算手段演算結果に基づき制動力制御手段よって制御される。
【001
請求項2に記載の安定制御装置においては、上記に加え、減速度演算手段て車両の進行方向に対する各車輪の減速度が合成され、車両の減速度が演算される。そして、車輪横すべり角演算手段WAの演算結果に基づき、前記一対の車輪以外車輪のうち少くとも一つの車輪付与される制動力が、減速制御手段よって、当該車輪の減速度が増大するように制御される。而して、ヨーモーメント演算手段演算結果及び減速度演算手段演算結果に基づき各車輪に対する制動力が制御される。
【001
請求項3に記載の安定制御装置においては、摩擦係数検出手段て各車輪に対する路面摩擦係数が検出され、ヨーレイト検出手段てヨーレイトが検出され、横加速度検出手段て車両の横加速度が検出されると共に、車体速度推定手段て車輪速度検出手段検出結果に基づき車両の車体速度が推定される。そして、車体横すべり角演算手段おいては、ヨーレイト検出手段検出結果、横加速度検出手段検出結果、及び車体速度推定手段推定車体速度に基づき車体横すべり角が演算される。一方、車輪制動力検出手段おいては、摩擦係数検出手段検出摩擦係数に基づき各車輪の制動力が演算される。尚、路面摩擦係数は、車体速度推定手段推定車体速度及び横加速度検出手段検出結果に基づき演算することもできる。
【0015
また、請求項4に記載の安定制御装置においては、スリップ率演算手段より推定車体速度と各車輪の車輪速度に基づき各車輪の車輪スリップ率が演算されると共に、目標スリップ率設定手段よって車両状態判定手段判定結果に応じて目標スリップ率が設定され、この目標スリップ率とスリップ率演算手段て演算されたスリップ率とのスリップ率偏差が、スリップ率偏差演算手段て演算され、このスリップ率偏差に基づき、液圧制御演算手段て液圧制御装置制御量が演算され、この演算結果に応じて液圧制御装置制御される。
【0016
更に、請求項5に記載の安定制御装置においては、補正量設定手段にてスリップ率演算手段演算結果のスリップ率及び摩擦係数検出手段検出摩擦係数に基づきスリップ率補正量が設定され、このスリップ率補正量が補正量加算手段によってスリップ率演算手段演算結果のスリップ率に加算される。而して、スリップ率偏差演算手段おいては、スリップ率補正量が加算されたスリップ率と目標スリップ率に基づいてスリップ率偏差が演算される。
【0017
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。先ず、図27は車両が旋回運動中に制動力を付与した場合の幾何学的関係を示す図で、同図を参照すれば車両旋回時における各車輪に対する前後力と横力の関係が明らかとなる。先ず図27に示す各符号を説明すると、Lは車両のホイールベース長で、L f は重心GCから前方の車軸までの距離、L r は重心GCから後方の車軸までの距離を表す。また、T df は前方のトレッド長、T dr は後方のトレッド長を表す。従って、重心GCから前方の車輪FR(又はFL)までの距離L xf は下記数1式に示すとおりとなる。
【数1】
Figure 0003697738
Rは車両の旋回半径で近似的にV so /γとして求めることができる。γはヨーレイトで、例えば後述するヨーレイトセンサによって検出される。尚、V so は推定車体速度を表す。δ f は前方の車輪FL,FRの操舵角(以下、単に舵角という)を表し、δ r は後方の車輪RL,RRの舵角を表すが、後輪舵角制御装置を具備していなければδ r =0となる。
【0018】
従って、車輪FRの進行方向の軸と重心GCから車輪FRの中心に至る軸がなす角θ fr は下記数2式に示すとおりとなり、車輪FLの進行方向の軸と重心GCから車輪FLの中心に至る軸がなす角θ fl は下記数3式に示すとおりとなる。
【数2】
Figure 0003697738
【数3】
Figure 0003697738
fl ,B fr ,B rl ,B rr は夫々車輪FL,FR,RL,RRに対する車輪進行方向の制動力、即ち前後力を表し、C fl ,C fr ,C rl ,C rr は各々の車輪の横力を表す。車体横すべり角βは、車両の進行方向に対する車体のすべりを角度で表したもので、次のように演算し推定することができる。即ち、車体横すべり角βの微分値dβ/dtをDβで表すと、前述のように、Dβ=G y /V so −γとして求めることができ、これを積分しβ=∫(G y /V so −γ)dtとして求めることができる。あるいは、進行方向の車速V x とこれに 垂直な横方向の車速V y の比に基づき、β=tan -1 (V y /V x )として求めることもできる。そして、上記車体横すべり角βに基づき、車両後方の車輪RL,RRにおける車輪横すべり角β r と、車両前方の車輪FL,FRにおける車輪横すべり角β f をLr,L<<Rのとき近似的に夫々β r =L r /R−β、β f =δ f +β r −L/Rとして求めることができる。
【0019】
而して、図27において、車両旋回時の重心GCを中心とするヨーイング運動によるヨーモーメントTvは下記数4式に基づいて求められる。
【数4】
Figure 0003697738
ここで、T cf** ** は車輪 FL,FR,RL,RR を代表して表す)は各車輪に付与される横力C ** によって生ずる各車輪のヨーモーメントを表し、T bf** は各車輪に付与される前後力B ** によって生ずる各車輪のヨーモーメントを表す。従って、各車輪に対する横力C ** に基づくヨーモーメントT cf** と各車輪に対する前後力B ** に基づくヨーモーメントT bf** の総和が車両に対するヨーモーメントTvとして求められる。
【0020】
同様に、車両の進行方向(旋回方向)に対する減速度Bvは下記数5式に基づいて求められる。
【数5】
Figure 0003697738
ここで、B cf** は各車輪に付与される横力C ** の分力を表し、B bf** は各車輪に付与される前後力B ** の車輪進行方向成分の前後力を表す。従って、各車輪に対する横力C ** に基づく前後力B cf** と,各車輪に対する前後力B ** の車輪進行方向成分に基づく前後力B bf** の総和が車両の進行方向に対する減速度Bvとして求められる。このように、前述の車両のスピン及びドリフトアウトを防止し車両の安定性を制御しつつ、適切な制動力を付与するには、各車輪に対する前後力及び横力を適宜制御し車両に対するヨーモーメントTv及び/又は減速度Bvを制御することが望ましい。
【0021】
尚、図28は各車輪のスリップ率とタイヤに働く力との関係を示すものであるが、両者の関係は各車輪の車輪横すべり角β * (前輪の場合はβ f で、後輪の場合はβ r )の大きさによって異なる。例えば、車輪横すべり角β * が0付近のときは車輪進行方向の前後力B ** 及び車輪進行方向に直交する方向の横力C ** は実線の特性B **1 ,C **1 を示すのに対し、車輪横すべり角β * が大きいときには両者は破線の特性B **2 ,C **2 を示すようになる。従って、摩擦係数μがピークに達するまでは、スリップ率が所定の値となるように制御するスリップ率サーボ制御を行なうことが可能であるが、摩擦係数μがピークに達した後は横力C ** によるヨーモーメント制御が有効となる。また、車輪横すべり角β * が小さいときには摩擦係数μがピーク時のホイールシリンダ液圧が大となり、車輪横すべり角β * が大きいときには摩擦係数μがピーク時のホイールシリンダ液圧が小となる。従っ て、ホイールシリンダ液圧制御の条件を車輪横すべり角β * の値に応じて変更する必要がある。
【0022】
図1は本発明の安定制御装置の一実施例を示すもので、車両の各車輪FL,FR,RL,RRに装着し制動力を付与するホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrと、ブレーキペダルBPの操作に応じてブレーキ液を昇圧し各ホイールシリンダにブレーキ液圧を付与する液圧発生装置PGと、この液圧発生装置PGと各ホイールシリンダとの間に介装しブレーキ液圧を制御する液圧制御装置FVと、各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段WS1乃至WS4と、これらの車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき液圧制御装置FVを駆動し、各車輪に付与する制動力を制御する制動力制御手段BCと、車両走行時の状態を判定する車両状態判定手段DRとを備え、この車両状態判定手段DRの判定結果に基づき制動力制御手段BCを制御して車両の操縦安定性を維持するように構成されている。
【0023】
そして、各車輪のうち少くとも車両前方の車輪FL,FRの操舵角を検出する操舵角検出手段STと、各車輪に対する車輪進行方向の前後力及び車輪進行方向に直交する方向の横力から成る制動力を検出する車輪制動力検出手段WBを具備し、車両状態判定手段DRが、少くとも操舵角検出手段ST及び車輪制動力検出手段WBの検出結果に応じて各車輪の前後力及び横力によるヨーモーメントを演算すると共に、各車輪のヨーモーメントを合成し車両のヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算手段MAと、車両の進行方向に対するすべり量を角度に変換して車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段SAと、この車体横すべり角演算手段SAの演算結果に基づき各車輪毎に車輪横すべり角を演算する車輪横すべり角演算手段WAとを含むと共に、制動力制御手段BCが、車輪横すべり角演算手段WAの演算結果に基づき、車両の対角線上に位置し車両の旋回方向に応じて選択した一対の車輪(例えばFR,RL)の各々に付与する制動力を制御し車両のヨーモーメントを制御するヨーモーメント制御手段MCを含み、少くともヨーモーメント演算手段MAの演算結果に基づき各車輪に対する制動力を制御するように構成したものである。
【0024】
上記の車両状態判定手段DRは、更に車両の進行方向に対する各車輪の減速度を合成し車両の減速度を演算する減速度演算手段DAを含むと共に、制動力制御手段BCが、更に車輪横すべり角演算手段WAの演算結果に基づき、前記一対の車輪(FR,RL)以外の車輪のうち少くとも一つの車輪(例えばRR)に付与する制動力を、当該車輪の減速度が増大するように制御する減速制御手段DCを含み、ヨーモーメント演算手段MAの演算結果及び減速度演算手段DAの演算結果に基づき各車輪に対する制動力を制御するように構成することが望ましい。
【0025】
更に、各車輪に対する路面摩擦係数を検出する摩擦係数検出手段CFと、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段YDと、車両の横加速度を検出する横加速度検出手段ADと、車輪速度検出手段WS1乃至WS4の検出結果に基づき車両の車体速度を推定する車体速度推定手段VEを具備し、車体横すべり角演算手段SAが、ヨーレイト検出手段YDの検出結果、横加速度検出手段ADの検出結果、及び車体速度推定手段VEの推定車体速度に基づき車体横すべり角を演算すると共に、車輪制動力検出手段WBが摩擦係数検出手段CFの検出摩擦係数に基づき各車輪の制動力を演算するように構成することもできる。尚、路面摩擦係数は、車体速度推定手段VEの推定車体速度及び横加速度検出手段ADの検出結果に基づき演算することもできる。
【0026】
また、制動力制御手段BCを、車体速度推定手段VEが推定した車体速度と各車輪の車輪速度に基づき各車輪の車輪スリップ率を演算するスリップ率演算手段SCと、車両状態判定手段DRの判定結果に応じて各車輪の目標スリップ率を設定する目標スリップ率設定手段SPと、この目標スリップ率設定手段SPが設定した目標スリップ率とスリップ率演 算手段SCが演算したスリップ率とのスリップ率偏差を演算するスリップ率偏差演算手段SDと、このスリップ率偏差演算手段SDが演算したスリップ率偏差に基づき液圧制御装置FVの制御量を演算する液圧制御演算手段WCを備えたものとし、この演算結果に応じて液圧制御装置FVを制御するように構成するとよい。
【0027】
更に、スリップ率演算手段SCの演算結果のスリップ率及び摩擦係数検出手段CFの検出摩擦係数に基づきスリップ率補正量を設定する補正量設定手段と、スリップ率演算手段SCの演算結果のスリップ率にスリップ率補正量を加算する補正量加算手段を備えたものとし、スリップ率偏差演算手段SDが、スリップ率補正量を加算したスリップ率と目標スリップ率に基づきスリップ率偏差を演算するように構成してもよい。
【0028】
而して、図1において、ブレーキペダルBPを操作すると液圧発生装置PGからホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrの各々にブレーキ液圧が供給され、各車輪FL,FR,RL,RRに対し制動力が付与されるが、液圧発生装置PGと少くとも各ホイールシリンダとの間には液圧制御装置FVが介装されており、この液圧制御装置FVによって、各ホイールシリンダに付与されるブレーキ液圧が制御される。この場合において、車輪速度検出手段WS1乃至WS4によって各車輪の車輪速度が検出され、これらの検出車輪速度に基づき車両状態判定手段DRにて車両走行時の状態が判定される。そして、車両状態判定手段DRの判定結果に基づき制動力制御手段BCが制御され車両の操縦安定性が維持される。また、操舵角検出手段STにより、各車輪のうち少くとも車両前方の車輪FL,FRの操舵角が検出されると共に、車輪制動力検出手段WBにより、各車輪に対する車輪進行方向の前後力及び車輪進行方向に直交する方向の横力から成る制動力が検出される。そして、車両状態判定手段DRにおいては、ヨーモーメント演算手段MAにて少くとも操舵角検出手段ST及び車輪制動力検出手段WBの検出結果に応じて各車輪の前後力及び横力によるヨーモーメントが演算された後、各車輪のヨーモーメントが合成されて車両のヨーモーメントが演算されると共に、車体横すべり角演算手段SAにて車体横すべり角が演算される。更に、この車体横すべり角演算手段SAの演算結果に基づき、車輪横すべり角演算手段WAによって各車輪毎に車輪横すべり角が演算され、その演算結果に基づき、ヨーモーメント制御手段MCにて、車両の対角線上に位置し車両の旋回方向に応じて一対の車輪(例えばFR,RL)が選択され、その各々に付与される制動力が、少くともヨーモーメント演算手段MAの演算結果に基づき制動力制御手段BCによって制御される。
【0029】
図2は上記実施例の具体的構成例を示すもので、エンジンEGはスロットル制御装置TH及び燃料噴射装置FIを備えた内燃機関で、スロットル制御装置THにおいてはアクセルペダルAPの操作に応じてメインスロットルバルブMTのメインスロットル開度が制御される。また、電子制御装置ECUの出力に応じて、スロットル制御装置THのサブスロットルバルブSTが駆動されサブスロットル開度が制御されると共に、燃料噴射装置FIが駆動され燃料噴射量が制御されるように構成されている。本実施例のエンジンEGは変速制御装置GS及びディファレンシャルギヤDFを介して車両後方の車輪RL,RRに連結されており、所謂後輪駆動方式が構成されているが、駆動方式をこれに限定するものではない。
【0030
次に、制動系については、車輪FL,FR,RL,RRに夫々ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrが装着されており、これらのホイールシリンダWfl等とマスタシリンダMCとを接続する液圧路に液圧制御装置FVが介装されている。尚、車輪FLは運転席からみて前方左側の車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方左側、車輪RRは後方右側の車輪を示しており、本実施例では前輪の液圧制御系と後輪の液圧制御系に区分された前後配管が構成されているが、所謂X配管としてもよい。マスタシリンダMCはブレーキペダルBPの操作に応じて駆動され、マスタシリンダMCとホイールシリンダWfl等との間には液圧制御装置FVが介装されている。この液圧制御装置FVは各車輪毎のホイールシリンダ液圧を制御するもので、従来装置と同様の種々の態様のものを用いることができる。
【0031
図2に示すように、車輪FL,FR,RL,RRには車輪速度センサWS1乃至WS4が配設され、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ブレーキペダルBPが踏み込まれたときオンとなるブレーキスイッチBS、車両前方の車輪FL,FRの舵角δf を検出する前輪舵角センサSSf、車両の横加速度を検出する横加速度センサYG及び車両のヨーレイトを検出するヨーレイトセンサYS等が電子制御装置ECUに接続されている。ヨーレイトセンサYSにおいては、車両重心を通る鉛直軸回りの車両回転角(ヨー角)の変化速度、即ちヨー角速度(ヨーレイト)が検出され、実ヨーレイトγとして電子制御装置ECUに出力される。
【0032
尚、従動輪側の左右の車輪(本実施例では車輪FL,FR)の車輪速度差Vfd(=Vwfr −Vwfl )に基づき実ヨーレイトγを推定することができるので、車輪速度センサWS1及びWS2の検出出力を利用することとすればヨーレイトセンサYSを省略することができる。更に、車輪RL,RR間に舵角制御装置(図示せず)を設けることとしてもよく、これによれば電子制御装置ECUの出力に応じてモータ(図示せず)によって車輪RL,RRの舵角を制御することができる。
【0033
本実施例の電子制御装置ECUは、図2に示すように、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニットCPU、メモリROM,RAM、入力ポートIPT及び出力ポートOPT等から成るマイクロコンピュータCMPを備えている。上記車輪速度センサWS1乃至WS4、ブレーキスイッチBS、前輪舵角センサSSf、ヨーレイトセンサYS、横加速度センサYG等の出力信号は増幅回路AMPを介して夫々入力ポートIPTからプロセシングユニットCPUに入力されるように構成されている。また、出力ポートOPTからは駆動回路ACTを介してスロットル制御装置TH及び液圧制御装置FVに夫々制御信号が出力されるように構成されている。マイクロコンピュータCMPにおいては、メモリROMは図3乃至図9に示したフローチャートに対応したプログラムを記憶し、プロセシングユニットCPUは図示しないイグニッションスイッチが閉成されている間当該プログラムを実行し、メモリRAMは当該プログラムの実行に必要な変数データを一時的に記憶する。尚、スロットル制御等の各制御毎に、もしくは関連する制御を適宜組合せて複数のマイクロコンピュータを構成し、相互間を電気的に接続することとしてもよい。
【0034
上記図2の構成例においては、電子制御装置ECUにより制動操舵制御、アンチスキッド制御等の一連の処理が行なわれ、イグニッションスイッチ(図示せず)が閉成されると図3乃至図9のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始する。図3は制動力制御手段を用いた車両の安定制御作動を示すもので、先ずステップ101にてマイクロコンピュータCMPが初期化され、各種の演算値がクリアされる。次にステップ102において、車輪速度センサWS1乃至WS4の検出信号が読み込まれると共に、前輪舵角センサSSfの検出信号(舵角δf )、ヨーレイトセンサYSの検出信号(実ヨーレイトγ)及び横加速度センサYGの検出信号(即ち、実横加速度であり、Gyaで表す)が読み込まれる。
【0035
続いてステップ103に進み、各車輪の車輪速度Vw** が演算され、これらの演算結果に基づきステップ104にて車体速度が推定され、各車輪毎に推定車体速度Vso**が求められ、更に、必要に応じ、車両旋回時の内外輪差等に基づく誤差を低減するため正規化が行われる。即ち、正規化推定車体速度NVso**がNVso**=Vso**(n) −ΔVr** (n) として演算される。ここで、ΔVr**(n)は旋回補正用の補正係数で、例えば以下のように設定される。即ち、補正係数ΔVr**(**は各車輪FR等を表し、特にFWは前二輪、RWは後二輪を表す)は、車両の旋回半径R及びγ・VsoFW(≒横加速度Gya)に基づき、基準とする車輪を除き各車輪毎のマップ(図示省略)に従って設定される。例えば、ΔVrFLが基準とすると、これは0とされるが、ΔVrFRは内外輪差マップに従って設定され、ΔVrRLは内々輪差マップに従い、ΔVrRRは外々輪差マップ及び内外輪差マップに従って設定される。
【0036
そして、ステップ105において、上記ステップ104で求められた推定車体速度Vso(=MAX[Vw**])が微分されて前後方向の車体加速度DVsoが求められると共に、この車体加速度DVsoと横加速度センサYGの検出信号の実横加速度Gyaに基づき、各車輪に対する路面摩擦係数μが近似的に(DVso2 +Gya2)1/2 として求められる。この路面摩擦係数μの値と各車輪のホイールシリンダ液圧Pw**の推定値に基づいて各車輪の路面摩擦係数μ**が決定される。尚、路面摩擦係数を検出する手段としてはこれに限るものではなく、直接路面摩擦係数を検出するセンサ等、種々の手段を用いることができる。
【003
また、ステップ105においては、上記ステップ103及び104で求められた各車輪の車輪速度Vw** と推定車体速度Vso(本実施例では、正規化推定車体速度NVso**)に基づき各車輪の車輪スリップ率Sa** (以下、単にスリップ率Sa** という)が求められる。特に本実施例においては、種々の制御モードに応じたスリップ率Sa** が演算される。即ち、アンチスキッド制御等の制御モードにおけるスリップ率Sa** の演算に際し、各制御モードに応じて、基準となる車輪(以下、基準車輪という)が選択されると共に、この基準車輪及び演算対象(制御対象)の車輪(以下、対象車輪という)の各々における正規化推定車体速度NVso**が適宜選択される。例えば制動操舵制御モードにおいては、下記の数6式及び数7式に基いてスリップ率Sa** が求められる。即ち、車両の旋回方向が右側(右旋回)であるときには下記の数6式が用いられ、左旋回であるときには下記の数7式が用いられる(この場合において、各式の* は基準車輪及び対象車輪に応じてR もしくはL が選択される)。尚、Vdc* はバイアス速度を表し、路面状態に応じて設定される。
【数6】
Figure 0003697738
【数7】
Figure 0003697738
【003
制動時のアンチスキッド制御においては、下記の数8式に基づいてスリップ率Sa** が求められる。
【数8】
Figure 0003697738
また、制動時の前後制動力配分制御では下記の数9式に基づいてスリップ率SaR* が求められる。
【数9】
Figure 0003697738
そして、駆動時のトラクション制御においては駆動輪に関し下記の数10式に基づいてスリップ率Sa** が求められる。
【数10】
Figure 0003697738
【003
次に、ステップ106にて初期特定制御が行なわれた後、ステップ107に進み、後述する制動操舵制御が行なわれ、車両の運転状態に応じて前述の液圧制御装置FVが制御され各車輪に対する制動力が制御される。この制動操舵制御は、後述する全ての制御モードにおける制御に対し重畳される。初期特定制御は制動操舵制御開始前に行なわれ、後段のトラクション制御開始前にも行なわれるが、アンチスキッド制御が開始するときには直ちに終了とされる。この後ステップ108に進み、アンチスキッド制御開始条件を充足しているか否かが判定され、開始条件を充足しアンチスキッド制御開始と判定されると、ステップ109にて初期特定制御は直ちに終了しアンチスキッド制御に移行する。
【0040
ステップ108にてアンチスキッド制御開始条件を充足していないと判定されたときには、ステップ110に進み前後制動力配分制御開始条件を充足しているか否かが判定され、開始条件を充足しておればステップ111に進み前後制動力配分制御が行なわれ、充足していなければステップ112に進みトラクション制御開始条件を充足しているか否かが判定される。この開始条件を充足しておればステップ113にてトラクション制御が行なわれ、充足していない場合、もしくはステップ109,111,113にて各制御が行なわれた後に、ステップ114にて液圧サーボ制御が行なわれ、更にステップ115にて終了特定制御が行なわれた後にステップ102に戻る。尚、ステップ109,111,113においては、必要に応じ、車両の運転状態に応じてスロットル制御装置THのサブスロットル開度が調整されエンジンEGの出力が低減され、駆動力が制限される。
【0041
図4は図3のステップ107における制動操舵制御の具体的処理内容を示すもので、先ずステップ201においてアンチスピン制御の開始もしくは終了が判定された後ステップ202に進むが、この開始・終了判定については後述する。ステップ201の判定結果に基づきステップ202にてアンチスピン制御中と判定されると、ステップ203乃至206の処理が行なわれる。アンチスピン制御中でない場合には、ステップ207においてアンチドリフト制御の開始・終了判定(これについても後述する)が行なわれ、ステップ208にてアンチドリフト制御中と判定されると、ステップ209以降に進み、アンチドリフト制御中でない場合、従って制動操舵制御が行なわれない場合には、ステップ212にてスリップ率補正量ΔSa** がクリア(0)された後ステップ206に進む。
【0042
ステップ203においては、アンチスピン制御量KspがK1・Dβ+K2・β(但し、K1,K2は定数)として求められる。次に、ステップ204に進み、図10に示すマップに基づき制御対象の車輪が決定される。即ち、全車輪のうち制御対象とする車輪が制御量Kspの値に応じて選択される。図10の横軸は制御量Kspの大きさを表し、制御量Kspが大きいときは前方・外側の車輪のホイールシリンダ液圧が加圧対象とされると共に、後方・内側の車輪のホイールシリンダ液圧が減圧対象とされる。更に、制動力を増大すべく、後方・外側の車輪のホイールシリンダ液圧が加圧対象とされる。従って、この場合には四つの車輪のうち三つの車輪のホイールシリンダ液圧が制御されることになるが、車両の安定化、車体速度推定等に鑑み最後の一輪のホイールシリンダ液圧はそのままとされる。一方、制御量Kspが小さいときには、図10に破線で示すように後方・外側の車輪の制御は行なわれず、前方・外側及び後方・内側の両車輪のみが制御される。尚、前方及び後方という語を用いたが、車両が後退運動をする際には車両後部が前方となる。
【0043
上記ステップ204において、各車輪のホイールシリンダ液圧が加圧対象もしくは減圧対象とされると、図10の括弧内に示すように当該車輪のスリップ率補正量ΔSa** が夫々正(>0)の値もしくは負(<0)の値とされる。また、図10に示すように加圧又は減圧制御開始時をオン(ON)で表し、加圧又は減圧制御開始時をTonとし、制御終了時をToff とすると、Ton=Kon/Ksp、Toff =Koff ×Kspと設定され(Kon,Koff は定数)、図11に示すように設定される。従って、この開始時Tonと終了時Toff の時間差の不感帯(図10では省略)を以って、各車輪の制動力配分が制御される。
【0044
而して、ステップ204においてスリップ率補正量ΔSa** が設定される制御対象の車輪と、その符号(正、負)が決定された後、ステップ205に進みスリップ率補正量ΔSa** が図5のフローチャートに従って演算される。ここでは、図28のスリップ率特性に基づいて設定された図12乃至図14の特性(これらについては後述する)が用いられる。なお、トラクションコントロール(TRC)の領域においては前述の数10式から明らかなようにスリップ率補正量ΔSa** の符号は全て反転する(正負逆となる)。即ち、先ず図5のステップ301において図12に基づき摩擦係数対応ゲインK3が設定されると共に、ステップ302において図13に基づきスリップ率対応ゲインK4が設定される。そして、ステップ303において、図14に基づき|β|/|Dβ|の領域が判定され、この領域と制御モードに応じて各車輪のスリップ率補正量ΔSa** が設定され、このスリップ率補正量ΔSa** に対しステップ304にて上記ゲインK3及びK4が乗算される。このようにして求められたスリップ率補正量ΔSa** は、図5のステップ206にてそのときの車輪のスリップ率Sa** に加算されて、新たなスリップ率Sa** とされる。
【0045
図12において、横軸は各車輪の摩擦係数μ**とタイヤ荷重Fz**の積であり、この積に対し、各車輪の進行方向の前後力(B**)と横力(C**)の合成力たる制動力が比例する関係にある。従って、図12の縦軸が各車輪の摩擦係数対応ゲインK3とされ、各車輪の車輪横すべり角β* が大となる程図12の特性の傾きが緩やかになる。また、図13において、横軸は各車輪のスリップ率Sa** で縦軸が各車輪のスリップ率対応ゲインK4である。図14はアンチスピン制御時の領域判定に供するもので、横軸の|Dβ|と縦軸の|β|によってA0乃至A7の領域が設定されており、この領域に応じて、制御モード毎に各車輪のスリップ率補正量ΔSa** が設定される。例えば、後段で行なわれるアンチスキッド(ABS)制御時及びその他の制御モード時には、A0の領域ではΔSa** =0(%;以下同じ)、A1ではΔSa** =2、A2ではΔSa** =4とされ、A3乃至A7の領域ではΔSa** =6(%)に設定される。また、トラクション(TRC)制御時にはA0の領域ではΔSa** =0、A1ではΔSa** =4、A2ではΔSa** =8とされ、A3乃至A7の領域ではΔSa** =12(%)に設定される。尚、減圧時には負の値とされる。
【0046
一方、図4のステップ208にてアンチドリフト制御中と判定されると、ステップ209にてアンチドリフト制御量KdrがK5・|Gyt−Gya|として演算される。ここで、K5は定数で、Gytは目標横加速度、Gyaは実横加速度即ち横加速度センサYGの出力値を夫々表す。次に、ステップ210において、図15に示すマップに基づき制御対象の車輪が決定される。図15は横軸が制御量Kdrとされ、図10と同様に作成されているが、後方・内側の車輪のホイールシリンダ液圧に対する加圧と減圧の関係が逆であり、従ってスリップ率補正量ΔSa** の符号が図10とは逆になっている。そして、図4のステップ211に進みスリップ率補正量ΔSa** が演算されるが、ここではアンチドリフト制御量Kdrの値がそのままスリップ率補正量ΔSa** として設定される(ΔSa** ←Kdr)。
【004
図6及び図7は図3のステップ114で行なわれる液圧サーボ制御の処理内容を示すもので、各車輪についてホイールシリンダ液圧のスリップ率サーボ制御が行なわれる。先ず、ステップ401にて目標スリップ率So** が設定される。このステップ401では、スリップ率補正量ΔSa** がそのまま目標スリップ率So** として設定される(So** ←ΔSa** )。次に、ステップ402に進みアンチスキッド制御中か否かが判定され、そうであればステップ403にて目標スリップ率So** にアンチスキッド用のスリップ率補正量ΔSs** が加算されて、目標スリップ率So** が更新される。アンチスキッド制御中でなければ、ステップ404に進み前後制動力配分制御中か否かが判定される。ステップ404で前後制動力配分制御中と判定されると、ステップ405にて、目標スリップ率So**にスリップ率補正量ΔSb** が加算されて更新され、そうでなければステップ406に進む。ステップ406ではトラクション制御中か否かが判定され、そうであればステップ407にて目標スリップ率So** にスリップ率補正量ΔSt** が加算されて更新される。ステップ403,405及び407で目標スリップ率So** が更新された後、あるいはステップ406にてトラクション制御中でもないと判定されたときにはそのままで、ステップ408に進み各車輪毎にスリップ率偏差ΔSo** が演算されると共に、ステップ409にて車体加速度偏差ΔDVso**が演算される。
【004
上記ステップ408においては、各車輪の目標スリップ率So** と実スリップ率Sa** の差が演算されスリップ率偏差ΔSo** が求められる(ΔSo** =So** −Sa** )。また、ステップ409においては基準車輪(非制御対象の車輪)と制御対象の車輪における車体加速度DVso**の差が演算され、車体加速度偏差ΔDVso**が求められる。このときの各車輪の実スリップ率Sa** 及び車体加速度偏差ΔDVso**はアンチスキッド制御、トラクション制御等の制御モードに応じて演算が異なり、前者については前述のステップ105において説明したとおりであり、後者については説明を省略する。
【004
続いて、ステップ410に進みスリップ率偏差ΔSo** が所定値K6と比較され、所定値K6以上であればスリップ率偏差ΔSo** の積分値が更新される。即ち、今回のスリップ率偏差ΔSo** にゲインGI** を乗じた値が前回のスリップ率偏差積分値IΔSo** に加算され、今回のスリップ率偏差積分値IΔSo** が求められる。スリップ率偏差|ΔSo** |が所定値K6を下回るときにはステップ412にてスリップ率偏差積分値IΔSo** はクリア(0)される。次に、図7のステップ413乃至416において、スリップ率偏差積分値IΔSo** が上限値K7以下で下限値K8以上の値に制限され、上限値K7を超えるときはK7に設定され、下限値K8を下回るときはK8に設定された後、ステップ417に進む。
【0050
ステップ417においては、各制御モードにおけるブレーキ液圧制御に供する一つのパラメータY**がGs** ・(ΔSo** +IΔSo** )として演算される。ここでGs** はゲインであり、車体横すべり角βに応じて図17に実線で示すように設定される。また、ステップ418において、ブレーキ液圧制御に供する別のパラメータX**がGd** ・ΔDVso**として演算される。このときのゲインGd** は図17に破線で示すように一定の値である。
【0051
而して、ステップ419に進み、各車輪毎に、上記パラメータX**,Y**に基づき、図16に示す制御マップに従って液圧制御モードが設定される。図16においては予め急減圧領域、パルス減圧領域、保持領域、パルス増圧領域及び急増圧領域の各領域が設定されており、ステップ419にてパラメータX**及びY**の値に応じて、何れの領域に該当するかが判定される。
【0052
更に、ステップ419にて今回判定された領域が、前回判定された領域に対し、増圧から減圧もしくは減圧から増圧に切換わる場合には、ブレーキ液圧の立下りもしくは立上りを円滑にする必要があるので、ステップ420において増減圧補償処理が行われる。例えば急減圧モードからパルス増圧モードに切換るときには、パルス増圧領域内の所定値に達するまで増圧デューティの増圧時間が0から漸増するように制御される。
【0053
図8はアンチスピン制御の開始・終了判定を示すもので、ステップ501にて既にアンチスピン制御中か否かが判定され、制御中でなければステップ502乃至505において開始判定が行われ、制御中であるときにはステップ507及び508において終了判定が行われる。開始判定については、先ずステップ502,503にて車両がスピン傾向(オーバーステア傾向)にあるか否かが判定される。即ち、横すべり角速度Dβとヨーレイトγの積が負(<0)であって両者が逆方向にあり、且つ横加速度Gyaとヨーレイトγの積が正(>0)であって両者が同方向にあると判定されたときには、スピン傾向にあると判定されてステップ504に進む。ステップ504では横すべり角速度Dβと推定車体速度Vsoが図18に示すマップにおける開始域SZ1の領域内か否かが判定される。この領域内にあればステップ506に進みアンチスピン制御開始と判定される。ステップ504にて開始域SZ1の領域外と判定された場合にはステップ505に進み、既に過度のスピン状態にあるか否かが判定される。即ち、ステップ505においては、車体横すべり角βと推定車体速度Vsoが図19に示すマップにおける開始域SZ2の領域内か否かが判定され、領域内にあればステップ506にてアンチスピン制御開始と判定される。
【0054
一方、ステップ501にてアンチスピン制御中と判定された場合には、ステップ507にて横すべり角速度Dβと推定車体速度Vsoが図20に示すマップにおける終了域EZ1の領域内か否かが判定され、領域内にあれば更にステップ508にて車体横すべり角βと推定車体速度Vsoが図21に示すマップにおける終了域EZ2の領域内か否かが判定され、ここでも領域内と判定されるとステップ509にてアンチスピン制御が終了と判定される。ステップ507又は508で終了域EZ1,EZ2の領域外と判定されたときには図4のルーチンに戻る。
【0055
図9はアンチドリフト制御の開始・終了判定を示すもので、ステップ601にてGye=Vso2 ・δf /〔(1+Kh ・Vso2 )〕・N・Lに基づき横加速度Gyeが演算される。ここで、δf は前輪の舵角、Nはオーバーオールステアリング比、Lはホイールベース長、Kh はスタビリティファクタを示す。続いて、ステップ602にて前輪の舵角δf の舵角速度Dδf (=δf (n) −δf(n-1))が演算される。次に、ステップ603において図22に示すマップに基づき舵角速度Dδf に応じて遅れ時間Tdoが設定されると共に、図23に示すマップに基づき推定車体速度Vsoに応じて遅れ係数Kd が設定され、ステップ604にて遅れ時間td (=Tdo・Kd )が演算される。そして、ステップ605において、現在の推定横加速度Gyoが以下のように演算される。
Gyo=〔Δt/(Δt+td )〕・Gye(n) +〔td /(Δt+td )〕・Gye(n-1) ここで、Δtはサンプリング周期を表し、Gye(n) は今回の横加速度Gyeの演算値、Gye(n-1) は前回の横加速度Gyeの演算値を夫々表す。
【0056
而して、ステップ606において実横加速度Gyaに対する推定横加速度Gyoの比Gya/Gyoが所定値K9より小さいと判定され、且つステップ607において実横加速度Gyaが所定値K10を上回ると判定されたときのみ、ステップ608に進みアンチドリフト制御が開始と判定され、ステップ606,607の何れか一方の条件を充足しなければステップ609にてアンチドリフト制御が終了と判定されて図4のルーチンに戻る。
【005
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。
即ち、本発明の車両の安定制御装置においては、車輪横すべり角演算手段の演算結果に基づき、車両の対角線上に位置し車両の旋回方向に応じて選択した一対の車輪の各々に付与する制動力を制御することによって、ヨーモーメントを制御するように構成されているので、車両のスピン及びドリフトを確実に防止し、車両の安定性を維持しつつ適切に制動力を付与することができる。
【005
請求項2に記載の安定制御装置においては、更に、前記一対の車輪以外の車輪のうち少くとも一つの車輪に付与する制動力を、当該車輪の減速度が増大するように制御し、ヨーモーメント及び減速度に基づき各車輪に対する制動力を制御するように構成されているので、車両の安定性を維持するために制動力を大きく犠牲にするといったことを防止し、適切に安定制御を行なうと共に制動力を確保することができる。
【005
請求項3に記載の安定制御装置においては、車体横すべり角演算手段がヨーレイト検出手段、横加速度検出手段及び車体速度推定手段の検出結果に基づき車体横すべり角を演算すると共に、車輪制動力検出手段が摩擦係数検出手段の検出摩擦係数に基づき各車輪の制動力を演算するように構成されているので、車体横すべり角演算手段等を簡単且つ安価に構成することができるので、装置全体として安価となる。
【0060
請求項4に記載の安定制御装置においては、制動力制御手段が、推定車体速度と各車輪の車輪速度に基づいて演算した各車輪の車輪スリップ率と、車両状態判定手段の判定結果に応じて設定した各車輪の目標スリップ率とのスリップ率偏差に基づき液圧制御装置の制御量を演算し、この演算結果に応じて液圧制御装置を制御するように構成されているので、容易且つ適切に車両の安定制御を行なうことができる。
【0061
請求項5に記載の安定制御装置においては、スリップ率演算手段の演算結果のスリップ率及び摩擦係数検出手段の検出摩擦係数に基づいてスリップ率補正量を設定し、このスリップ率補正量を加算したスリップ率と目標スリップ率に基づきスリップ率偏差を演算するように構成されているので、容易且つ適切に車両の安定制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両の安定制御装置の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の安定制御装置の一実施例の全体構成図である。
【図3】本発明の一実施例における車両の安定制御の全体を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例における制動操舵制御のための処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例におけるスリップ率補正量の演算処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例における液圧サーボの演算処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施例における液圧サーボの演算処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例におけるアンチスピン制御の開始・終了判定の処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施例におけるアンチドリフト制御の開始・終了判定の処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例におけるアンチスピン制御量と制御対象の車輪との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施例におけるアンチスピン制御量と液圧制御の開始・終了時の関係を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施例における摩擦係数とタイヤ荷重との積と摩擦係数対応ゲインの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施例におけるスリップ率とスリップ率対応ゲインの関係を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施例において車体横すべり角と横すべり角速度に応じてアンチスピン制御時のスリップ率補正量を設定するための領域を示すグラフである。
【図15】本発明の一実施例におけるアンチドリフト制御量と制御対象の車輪との関係を示すグラフである。
【図16】本発明の一実施例においてブレーキ液圧制御に供するパラメータと液圧制御モードとの関係を示すグラフである。
【図17】本発明の一実施例における車体横すべり角とパラメータ演算用のゲインとの関係を示すグラフである。
【図18】本発明の一実施例においてアンチスピン制御の開始判定に供する推定車体速度と横すべり角速度の関係を示すグラフである。
【図19】本発明の一実施例においてアンチスピン制御の開始判定に供する推定車体速度と車体横すべり角の関係を示すグラフである。
【図20】本発明の一実施例においてアンチスピン制御の終了判定に供する推定車体速度と横すべり角速度の関係を示すグラフである。
【図21】本発明の一実施例においてアンチスピン制御の終了判定に供する推定車体速度と車体横すべり角の関係を示すグラフである。
【図22】本発明の一実施例においてアンチドリフト制御の開始・終了判定に供する舵角速度と遅れ時間の関係を示すグラフである。
【図23】本発明の一実施例においてアンチドリフト制御の開始・終了判定に供する推定車体速度と遅れ係数の関係を示すグラフである。
【図24】一般的な車両の旋回走行時におけるスピン及びドリフト状態を示す説明図である。
【図25】一般的な車両の旋回走行時におけるヨーレイトと推定車体速度の積と横加速度との関係を示すグラフである。
【図26】一般的な車両の左旋回中の車両の各モーメントの関係を示すグラフである。
【図27】一般的な車両の左旋回時における幾何学的関係を示す説明図である。
【図28】一般的な車両のスリップ率とタイヤの前後力及び横力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
BP ブレーキペダル
BS ブレーキスイッチ
MC マスタシリンダ
Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイールシリンダ
WS1〜WS4 車輪速度センサ
FR,FL,RR,RL 車輪
FV 液圧制御装置
ST サブスロットルバルブ
EG エンジン
GS 変速制御装置
YS ヨーレイトセンサ
YG 横加速度センサ
FI 燃料噴射装置
DF ディファレンシャルギヤ
SSf 前輪舵角センサ
CMP マイクロコンピュータ
IPT 入力ポート
OPT 出力ポート
ECU 電子制御装置
AMP 増幅回路
ACT 駆動回路

Claims (5)

  1. 車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧し前記ホイールシリンダの各々にブレーキ液圧を付与する液圧発生装置と、該液圧発生装置と前記ホイールシリンダの各々との間に介装し前記ブレーキ液圧を制御する液圧制御装置と、前記車輪の各々の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、該車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記液圧制御装置を駆動し、前記各車輪に付与する制動力を制御する制動力制御手段と、前記車両走行時の状態を判定する車両状態判定手段とを備え、前記車両状態判定手段の判定結果に基づき前記制動力制御手段を制御して前記車両の操縦安定性を維持する車両の安定制御装置において、前記各車輪のうち少くとも車両前方の車輪の操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記各車輪に対する車輪進行方向の前後力及び車輪進行方向に直交する方向の横力から成る制動力を検出する車輪制動力検出手段を具備し、前記車両状態判定手段が、少くとも前記操舵角検出手段及び前記車輪制動力検出手段の検出結果に応じて前記各車輪の前後力及び横力によるヨーモーメントを演算すると共に、前記各車輪のヨーモーメントを合成し前記車両のヨーモーメントを演算するヨーモーメント演算手段と、前記車両の進行方向に対するすべり量を角度に変換して車体横すべり角を演算する車体横すべり角演算手段と、該車体横すべり角演算手段の演算結果に基づき各車輪毎に車輪横すべり角を演算する車輪横すべり角演算手段とを含むと共に、前記制動力制御手段が、前記車輪横すべり角演算手段の演算結果に基づき、前記車両の対角線上に位置する一対の車輪を前記車両の旋回方向に応じて選択し、選択された各車輪に付与する制動力を、少くとも前記ヨーモーメント演算手段の演算結果に基づき制御し、前記車両のヨーモーメントを制御するヨーモーメント制御手段を含み、前記車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪に対する制動力を制御すると共に、前記ヨーモーメント演算手段の演算結果に基づき前記選択された各車輪に対する制動力を制御するように構成したことを特徴とする車両の安定制御装置。
  2. 前記車両状態判定手段が、更に前記車両の進行方向に対する前記各車輪の減速度を合成し前記車両の減速度を演算する減速度演算手段を含むと共に、前記制動力制御手段が、更に前記車輪横すべり角演算手段の演算結果に基づき、前記一対の車輪以外の車輪のうち少くとも一つの車輪に付与する制動力を、当該車輪の減速度が増大するように制御する減速制御手段を含み、前記車輪速度検出手段の検出車輪速度に基づき前記各車輪に対する制動力を制御すると共に、前記ヨーモーメント演算手段の演算結果及び前記減速度演算手段の演算結果に基づき前記各車輪に対する制動力を制御するように構成したこと特徴とする請求項1記載の車両の安定制御装置。
  3. 前記各車輪に対する路面摩擦係数を検出する摩擦係数検出手段と、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段と、前記車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、前記車輪速度検出手段の検出結果に基づき前記車両の車体速度を推定する車体速度推定手段を具備し、前記車体横すべり角演算手段が、前記ヨーレイト検出手段の検出結果、前記横加速度検出手段の検出結果、及び前記車体速度推定手段の推定車体速度に基づき前記車体横すべり角を演算すると共に、前記車輪制動力検出手段が前記摩擦係数検出手段の検出摩擦係数に基づき前記各車輪の制動力を演算するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の安定制御装置。
  4. 前記制動力制御手段が、前記車体速度推定手段が推定した車体速度と前記各車輪の車輪速度に基づき前記各車輪の車輪スリップ率を演算するスリップ率演算手段と、前記車両状態判定手段の判定結果に応じて前記各車輪の目標スリップ率を設定する目標スリップ率設定手段と、該目標スリップ率設定手段が設定した目標スリップ率と前記スリップ率演算手段が演算したスリップ率とのスリップ率偏差を演算するスリップ率偏差演算手段と、該スリップ率偏差演算手段が演算したスリップ率偏差に基づき前記液圧制御装置の制御量を演算する液圧制御演算手段とを備え、該液圧制御演算手段の演算結果に応じて前記液圧制御装置を制御するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の安定制御装置。
  5. 前記スリップ率演算手段の演算結果のスリップ率及び前記摩擦係数検出手段の検出摩擦係数に基づきスリップ率補正量を設定する補正量設定手段と、前記スリップ率演算手段の演算結果のスリップ率に前記スリップ率補正量を加算する補正量加算手段を備え、前記スリップ率偏差演算手段が、前記スリップ率補正量を加算したスリップ率と前記目標スリップ率に基づき前記スリップ率偏差を演算するように構成したことを特徴とする請求項4記載の車両の安定制御装置。
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