JP4219126B2 - 車両の運動制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の前輪及び後輪の各車輪に付与される制動力を制御することにより同車両の運動を制御する車両の運動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の旋回時、車体に過大なロール角が発生することにより車両の旋回状態が不安定にならないように車両の運動を制御することが要求されている。このロール角の大きさは、車両に働く加速度の車体左右方向の成分である実横加速度の大きさに依存し、同実横加速度の増加に応じて大きくなる。一方、車両に働く実横加速度の大きさは、車両の旋回方向と反対方向にヨーイングモーメントを発生させることにより、又は車両を減速させることにより小さくなる。
【0003】
以上のことから、例えば、特開平10−278762号公報に開示された車両の自動減速制御装置は、路面の摩擦係数の増加に応じて許容横加速度が上昇するとともに路面の摩擦係数が高いとき同摩擦係数の増加に対する同許容横加速度の上昇が制限されるように同許容横加速度を設定し、車両の旋回時、車両に働く実横加速度を前記許容横加速度以下にするべく車両を減速させるようになっている。
【0004】
これによれば、車両の実横加速度が上記のように設定された許容横加速度を超えたとき、車両が自動的に減速されることにより実横加速度が許容横加速度以下に抑えられる。そして、路面の摩擦係数が高く車体に過大なロール角が発生しやすい状況に車両があるとき、許容横加速度の大きさは路面の摩擦係数の増加に対する同許容横加速度の上昇が制限されるように比較的小さく設定されるので、車体に過大なロール角が発生しない所定の速度まで車両が減速させられて車体に過大なロール角が発生することが防止され得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、車両が急旋回を開始して実横加速度が許容横加速度を過度に超えたとき、上記開示された装置により車両が減速を開始しても減速開始後から車両が所定の速度まで減速完了するまでの間、車両に働く実横加速度が許容横加速度を超えた状態が発生し得る。
【0006】
また、上記開示された装置は、車両に働く実横加速度を許容横加速度以下にするべく車両を減速させるとき、車両の旋回方向における外側の後輪を除く3輪(又は4輪全て)に対して同一の制動力が発生するように構成されている。従って、上記開示された装置は車両減速時において同車両の旋回方向と反対方向のヨーイングモーメント等を発生させて積極的に実横加速度を低減させ得る構成とはなっていない。従って、上記開示された装置においては、車両が急旋回を開始したとき、急旋回開始直後において車体に過大なロール角が発生することにより車両の旋回状態が不安定になる場合があるという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、車両が急旋回を開始したとき等においても、車体に過大なロール角が発生することを防止し得る車両の運動制御装置を提供することにある。
【0008】
【発明の概要】
本発明の特徴は、車両の運動制御装置が、車両の車体速度を取得する車体速度取得手段と、前記車両の操舵輪の転舵角を変更するステアリングの操作量を取得するステアリング操作量取得手段と、前記車両に作用する横加速度の実際量を実横加速度として取得する実横加速度取得手段と、前記横加速度の目標量である目標横加速度の絶対値が、前記横加速度の基準量である基準横加速度の絶対値より小さくなるように且つ前記基準横加速度の絶対値の増加に伴って増加するように同目標横加速度を算出する目標横加速度算出手段と、前記実横加速度が前記目標横加速度に近づくように前記車両の前輪及び後輪の各車輪に付与される制動力を制御する制動力制御手段とを備え、前記基準横加速度が少なくとも前記車体速度及び前記ステアリング操作量に基いて車両の運動モデルを用いて算出される、前記車体速度及び前記ステアリング操作量が共に一定である状態で車両が旋回する定常円旋回時に車両に作用する横加速度の理論値に決定されたことにある。
【0009】
ここにおいて、前記制動力制御手段は、前記車両に対して前記実横加速度関連量が前記目標横加速度関連量に近づく方向に所定のヨーイングモーメントを発生させるように構成されることが好適である。以下、「横加速度関連量」は、「横加速度」と同義であるものとする。
【0010】
これによれば、例えば、基準横加速度関連量は、車両の運動モデルから導かれる理論式による予め定められた所定の規則に従って、車体速度取得手段により取得された車体速度、ステアリング操作量取得手段により取得されたステアリング操作量(例えば、基準位置から(回転)操作されることにより車両の操舵輪の転舵角を同車両が直進する基準角度から変更するステアリングの同基準位置からの操作量(回転角度))、及び車両の所定の実際の諸元値(例えば、ギヤ比、スタビリティファクタ)を使用することにより決定され、目標横加速度関連量算出手段は、目標横加速度関連量の絶対値が、この基準横加速度関連量の絶対値より小さくなるように且つ基準横加速度関連量の絶対値の増加に伴って増加するように目標横加速度関連量を算出する。
【0011】
そして、制動力制御手段は、実横加速度関連量取得手段により取得された実横加速度関連量が上記のように算出される目標横加速度関連量に近づくように車両の前輪及び後輪の各車輪に付与される制動力を制御する。従って、車両が旋回中であるとき、又は旋回を開始したとき、上記基準横加速度関連量(の絶対値)よりも小さい横加速度関連量(の絶対値)が車両に発生するように各車輪の制動力が制御される。
【0012】
この結果、例えば、車両が急旋回を開始して実横加速度関連量が増大する傾向にあるとき、車両に対して実横加速度関連量の大きさが低減する方向にヨーイングモーメントを発生させることにより実横加速度関連量が上記基準横加速度関連量よりも小さい量まで直ちに低減され得るので、車体に過大なロール角が発生することにより車両の旋回状態が不安定になることが防止され得る。
【0013】
この場合、前記目標横加速度関連量算出手段が、前記基準横加速度の絶対値が大きくなるほど、前記基準横加速度の絶対値に対して前記目標横加速度の絶対値が小さくされる量が大きくなるように前記目標横加速度を算出するよう構成されることが好適である。先に説明したように、車体に発生するロール角の大きさは、車両に働く実横加速度の増加に応じて大きくなる。従って、車両の運動モデルから導かれる理論式等による所定の規則に従って決定される基準横加速度関連量の絶対値が大きくなるほど車体に過大なロール角が発生しやすくなる。
【0014】
従って、上記のように、基準横加速度関連量の絶対値が大きくなるほど、基準横加速度の絶対値に対して目標横加速度の絶対値が小さくされる量が大きくなるように目標横加速度を算出することで、車体に過大なロール角が発生しやすくなる程度に応じて車体に過大なロール角が発生することを防止する程度が過不足なく設定され、車両の運動状態(旋回状態)がより理想に近い状態とされ得る。
【0015】
また、上記車両の運動制御装置において、前記目標横加速度関連量算出手段は、前記目標横加速度関連量の絶対値が前記車両に発生するロール角の大きさに影響を与える同車両の実際の諸元値に応じて設定される目標横加速度関連量制限値を超えないように同目標横加速度関連量を算出するように構成されることが好適である。ここにおいて、「目標横加速度関連量制限値」は、所定の幅を有する値であってもよい。また、「車両に発生するロール角の大きさに影響を与える同車両の実際の諸元値」は、例えば、左右輪の各タイヤ踏面の路面との接触面の中心間の車体左右方向の距離であるホイールトレッドに対する車両の重心と路面との鉛直方向の距離である重心高さの割合であり、これに限定されない。
【0016】
これによれば、目標横加速度関連量制限値が、上記車両の実際の諸元値を考慮したとき車体に過大なロール角が発生し得ないような横加速度関連量の範囲内の値になるように設定され得るので、目標横加速度関連量の絶対値もかかる範囲内の値に設定され得る。従って、車体に過大なロール角が発生することがより確実に防止され得る。
【0017】
また、上記車両の運動制御装置が、前記車両が走行している路面と同車両のタイヤとの間の摩擦係数である路面摩擦係数を取得する路面摩擦係数取得手段と、前記路面摩擦係数に応じて目標横加速度関連量制限値を設定するとともに前記目標横加速度関連量の絶対値が同目標横加速度関連量制限値より大きいとき同目標横加速度関連量の絶対値が同目標横加速度関連量制限値になるように同目標横加速度関連量を制限する目標横加速度関連量制限手段とを備えるように構成されることが好適である。ここにおいて、「目標横加速度関連量制限値」は、所定の幅を有する値であってもよい。
【0018】
一般に、車両に発生し得る横加速度(関連量)の最大値は、車両が走行している路面の路面摩擦係数の値に依存し路面摩擦係数の値が小さくなるほど小さくなる。従って、路面摩擦係数の値を考慮せずに目標横加速度関連量算出手段が目標横加速度関連量を算出すると、路面摩擦係数が小さい路面を旋回走行する場合等、車両の運転状態によっては目標横加速度関連量の大きさが路面摩擦係数の値に依存するその時点で車両に発生し得る横加速度関連量の範囲を超える場合がある。
【0019】
このような場合、例えば、実横加速度関連量を目標横加速度関連量に近づけるために目標横加速度関連量と実横加速度関連量との偏差に応じた制動力を車両の各車輪に付与しようとすると、同偏差が過度に大きいとき各車輪に過度の制動力が働いて各車輪がロックすること等により車両の旋回状態が不安定になることがある。
【0020】
これに対し、上記のように、目標横加速度関連量の絶対値が路面摩擦係数に応じて設定される目標横加速度関連量制限値より大きいとき目標横加速度関連量の絶対値が目標横加速度関連量制限値になるように目標横加速度関連量を制限するように構成すれば、目標横加速度関連量の絶対値が路面摩擦係数の値に依存するその時点で車両に発生し得る横加速度関連量の範囲内の値に制限され得るので、路面摩擦係数が小さい路面を車両が旋回走行する際に目標横加速度関連量と実横加速度関連量との偏差が過度に大きくなることがなく、その結果、各車輪に過度の制動力が発生して車両の旋回状態が不安定になることが防止され得る。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両の運動制御装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置10を搭載した車両の概略構成を示している。この車両は、操舵輪であり且つ非駆動輪である前2輪(左前輪FL及び右前輪FR)と、駆動輪である後2輪(左後輪RL及び右後輪RR)を備えた後輪駆動方式の4輪車両である。
【0022】
この車両の運動制御装置10は、操舵輪FL,FRを転舵するための前輪転舵機構部20と、駆動力を発生するとともに同駆動力を駆動輪RL,RRに伝達する駆動力伝達機構部30と、各車輪にブレーキ液圧によるブレーキ力を発生させるためのブレーキ液圧制御装置40と、各種センサから構成されるセンサ部50と、電気式制御装置60とを含んで構成されている。
【0023】
前輪転舵機構部20は、ステアリング21と、同ステアリング21と一体的に回動可能なコラム22と、同コラム22に連結された転舵アクチュエータ23と、同転舵アクチュエータ23により車体左右方向に移動させられるタイロッドを含むとともに同タイロッドの移動により操舵輪FL,FRを転舵可能なリンクを含んだリンク機構部24とから構成されている。これにより、ステアリング21が中立位置(基準位置)から回転することで操舵輪FL,FRの転舵角が車両が直進する基準角度から変更されるようになっている。
【0024】
転舵アクチュエータ23は、所謂公知の油圧式パワーステアリング装置を含んで構成されており、ステアリング21、即ちコラム22の回転トルクに応じてタイロッドを移動させる助成力を発生し、同ステアリング21の中立位置からのステアリング角度θsに比例して同助成力によりタイロッドを中立位置から車体左右方向へ変位させるものである。なお、かかる転舵アクチュエータ23の構成及び作動は周知であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0025】
駆動力伝達機構部30は、駆動力を発生するエンジン31と、同エンジン31の吸気管31a内に配置されるとともに吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁THの開度を制御するDCモータからなるスロットル弁アクチュエータ32と、エンジン31の図示しない吸気ポート近傍に燃料を噴射するインジェクタを含む燃料噴射装置33と、エンジン31の出力軸に接続されたトランスミッション34と、同トランスミッション34から伝達される駆動力を適宜分配して後輪RR,RLに伝達するディファレンシャルギヤ35とを含んで構成されている。
【0026】
ブレーキ液圧制御装置40は、その概略構成を表す図2に示すように、高圧発生部41と、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生部42と、各車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれ配置されたホイールシリンダWfr,Wfl,Wrr,Wrlに供給するブレーキ液圧をそれぞれ調整可能なFRブレーキ液圧調整部43,FLブレーキ液圧調整部44,RRブレーキ液圧調整部45,RLブレーキ液圧調整部46とを含んで構成されている。
【0027】
高圧発生部41は、電動モータMと、同電動モータMにより駆動されるとともにリザーバRS内のブレーキ液を昇圧する液圧ポンプHPと、液圧ポンプHPの吐出側にチェック弁CVHを介して接続されるとともに同液圧ポンプHPにより昇圧されたブレーキ液を貯留するアキュムレータAccとを含んで構成されている。
【0028】
電動モータMは、アキュムレータAcc内の液圧が所定の下限値を下回ったとき駆動され、同アキュムレータAcc内の液圧が所定の上限値を上回ったとき停止されるようになっており、これにより、アキュムレータAcc内の液圧は常時所定の範囲内の高圧に維持されるようになっている。
【0029】
また、アキュムレータAccとリザーバRSとの間にリリーフ弁RVが配設されており、アキュムレータAcc内の液圧が前記高圧より異常に高い圧力になったときに同アキュムレータAcc内のブレーキ液がリザーバRSに戻されるようになっている。これにより、高圧発生部41の液圧回路が保護されるようになっている。
【0030】
ブレーキ液圧発生部42は、ブレーキペダルBPの作動により応動するハイドロブースタHBと、同ハイドロブースタHBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。ハイドロブースタHBは、液圧高圧発生部41から供給される前記高圧を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合で助勢し同助勢された操作力をマスタシリンダMCに伝達するようになっている。
【0031】
マスタシリンダMCは、前記助勢された操作力に応じたマスタシリンダ液圧を発生するようになっている。また、ハイドロブースタHBは、マスタシリンダ液圧を入力することによりマスタシリンダ液圧と略同一の液圧である前記助勢された操作力に応じたレギュレータ液圧を発生するようになっている。これらマスタシリンダMC及びハイドロブースタHBの構成及び作動は周知であるので、ここではそれらの詳細な説明を省略する。このようにして、マスタシリンダMC及びハイドロブースタHBは、ブレーキペダルBPの操作力に応じたマスタシリンダ液圧及びレギュレータ液圧をそれぞれ発生するようになっている。
【0032】
マスタシリンダMCとFRブレーキ液圧調整部43の上流側及びFLブレーキ液圧調整部44の上流側の各々との間には、3ポート2位置切換型の電磁弁である制御弁SA1が介装されている。同様に、ハイドロブースタHBとRRブレーキ液圧調整部45の上流側及びRLブレーキ液圧調整部46の上流側の各々との間には、3ポート2位置切換型の電磁弁である制御弁SA2が介装されている。また、高圧発生部41と制御弁SA1及び制御弁SA2の各々との間には、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である切換弁STRが介装されている。
【0033】
制御弁SA1は、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときマスタシリンダMCとFRブレーキ液圧調整部43の上流部及びFLブレーキ液圧調整部44の上流部の各々とを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときマスタシリンダMCとFRブレーキ液圧調整部43の上流部及びFLブレーキ液圧調整部44の上流部の各々との連通を遮断して切換弁STRとFRブレーキ液圧調整部43の上流部及びFLブレーキ液圧調整部44の上流部の各々とを連通するようになっている。
【0034】
制御弁SA2は、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときハイドロブースタHBとRRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々とを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときハイドロブースタHBとRRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々との連通を遮断して切換弁STRとRRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々とを連通するようになっている。
【0035】
これにより、FRブレーキ液圧調整部43の上流部及びFLブレーキ液圧調整部44の上流部の各々には、制御弁SA1が第1の位置にあるときマスタシリンダ液圧が供給されるとともに、制御弁SA1が第2の位置にあり且つ切換弁STRが第2の位置(励磁状態における位置)にあるとき高圧発生部41が発生する高圧が供給されるようになっている。
【0036】
同様に、RRブレーキ液圧調整部45の上流部及びRLブレーキ液圧調整部46の上流部の各々には、制御弁SA2が第1の位置にあるときレギュレータ液圧が供給されるとともに、制御弁SA2が第2の位置にあり且つ切換弁STRが第2の位置にあるとき高圧発生部41が発生する高圧が供給されるようになっている。
【0037】
FRブレーキ液圧調整部43は、2ポート2位置切換型の常開電磁開閉弁である増圧弁PUfrと、2ポート2位置切換型の常閉電磁開閉弁である減圧弁PDfrとから構成されており、増圧弁PUfrは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときFRブレーキ液圧調整部43の上流部とホイールシリンダWfrとを連通するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときFRブレーキ液圧調整部43の上流部とホイールシリンダWfrとの連通を遮断するようになっている。減圧弁PDfrは、図2に示す第1の位置(非励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWfrとリザーバRSとの連通を遮断するとともに、第2の位置(励磁状態における位置)にあるときホイールシリンダWfrとリザーバRSとを連通するようになっている。
【0038】
これにより、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧は、増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrが共に第1の位置にあるときホイールシリンダWfr内にFRブレーキ液圧調整部43の上流部の液圧が供給されることにより増圧され、増圧弁PUfrが第2の位置にあり且つ減圧弁PDfrが第1の位置にあるときFRブレーキ液圧調整部43の上流部の液圧に拘わらずその時点の液圧に保持されるとともに、増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrが共に第2の位置にあるときホイールシリンダWfr内のブレーキ液がリザーバRSに戻されることにより減圧されるようになっている。
【0039】
また、増圧弁PUfrにはブレーキ液のホイールシリンダWfr側からFRブレーキ液圧調整部43の上流部への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV1が並列に配設されており、これにより、制御弁SA1が第1の位置にある状態で操作されているブレーキペダルBPが開放されたときホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧が迅速に減圧されるようになっている。
【0040】
同様に、FLブレーキ液圧調整部44,RRブレーキ液圧調整部45及びRLブレーキ液圧調整部46は、それぞれ、増圧弁PUfl及び減圧弁PDfl,増圧弁PUrr及び減圧弁PDrr,増圧弁PUrl及び減圧弁PDrlから構成されており、これらの各増圧弁及び各減圧弁の位置が制御されることにより、ホイールシリンダWfl,ホイールシリンダWrr及びホイールシリンダWrl内のブレーキ液圧をそれぞれ増圧、保持、減圧できるようになっている。また、増圧弁PUfl,PUrr及びPUrlの各々にも、上記チェック弁CV1と同様の機能を達成し得るチェック弁CV2,CV3及びCV4がそれぞれ並列に配設されている。
【0041】
また、制御弁SA1にはブレーキ液の上流側から下流側への一方向の流れのみを許容するチェック弁CV5が並列に配設されており、同制御弁SA1が第2の位置にあってマスタシリンダMCとFRブレーキ液圧調整部43及びFLブレーキ液圧調整部44の各々との連通が遮断されている状態にあるときに、ブレーキペダルBPを操作することによりホイールシリンダWfr,Wfl内のブレーキ液圧が増圧され得るようになっている。また、制御弁SA2にも、上記チェック弁CV5と同様の機能を達成し得るチェック弁CV6が並列に配設されている。
【0042】
以上、説明した構成により、ブレーキ液圧制御装置40は、全ての電磁弁が第1の位置にあるときブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を各ホイールシリンダに供給できるようになっている。また、この状態において、例えば、増圧弁PUrr及び減圧弁PDrrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWrr内のブレーキ液圧のみを所定量だけ減圧することができるようになっている。
【0043】
また、ブレーキ液圧制御装置40は、ブレーキペダルBPが操作されていない状態(開放されている状態)において、例えば、制御弁SA1,切換弁STR及び増圧弁PUflを共に第2の位置に切換るとともに増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWfl内のブレーキ液圧を保持した状態で高圧発生部41が発生する高圧を利用してホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧のみを所定量だけ増圧することもできるようになっている。このようにして、ブレーキ液圧制御装置40は、ブレーキペダルBPの操作に拘わらず、各車輪のホイールシリンダ内のブレーキ液圧をそれぞれ独立して制御し、各車輪毎に独立して所定のブレーキ力を付与することができるようになっている。
【0044】
再び図1を参照すると、センサ部50は、各車輪FL,FR,RL及びRRが所定角度回転する度にパルスを有する信号をそれぞれ出力するロータリーエンコーダから構成される車輪速度センサ51fl,51fr,51rl及び51rrと、ステアリング21の中立位置からの回転角度を検出し、ステアリング角度θsを示す信号を出力するステアリング操作量取得手段としてのステアリング角度センサ52と、運転者により操作されるアクセルペダルAPの操作量を検出し、同アクセルペダルAPの操作量Accpを示す信号を出力するアクセル開度センサ53と、車両に働く実際の加速度の車体左右方向の成分である横加速度を検出し、横加速度Gy(m/s2)を示す信号を出力する実横加速度関連量取得手段としての横加速度センサ54と、運転者によりブレーキペダルBPが操作されているか否かを検出し、ブレーキ操作の有無を示す信号を出力するブレーキスイッチ55とから構成されている。
【0045】
ステアリング角度θsは、ステアリング21が中立位置にあるときに「0」となり、同中立位置からステアリング21を(ドライバーから見て)反時計まわりの方向へ回転させたときに正の値、同中立位置から同ステアリング21を時計まわりの方向へ回転させたときに負の値となるように設定されている。また、横加速度Gyは、車両が左方向へ旋回しているときに正の値、車両が右方向へ旋回しているときに負の値となるように設定されている。
【0046】
電気式制御装置60は、互いにバスで接続されたCPU61、CPU61が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、定数等を予め記憶したROM62、CPU61が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM63、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM64、及びADコンバータを含むインターフェース65等からなるマイクロコンピュータである。インターフェース65は、前記センサ51〜55と接続され、CPU61にセンサ51〜55からの信号を供給するとともに、同CPU61の指示に応じてブレーキ液圧制御装置40の各電磁弁及びモータM、スロットル弁アクチュエータ32、及び燃料噴射装置33に駆動信号を送出するようになっている。
【0047】
これにより、スロットル弁アクチュエータ32は、スロットル弁THの開度がアクセルペダルAPの操作量Accpに応じた開度になるように同スロットル弁THを駆動するとともに、燃料噴射装置33は、スロットル弁THの開度に応じた吸入空気量に対して所定の目標空燃比(理論空燃比)を得るために必要な量の燃料を噴射するようになっている。
【0048】
(本発明による車両の運動制御の概要)
本発明による車両の運動制御装置10は、車両の運動モデルから導かれる所定の規則としての理論式である下記数1に基いて基準横加速度Gybase(m/s2)を算出する。この基準横加速度Gybaseは、車両が左方向へ旋回しているとき(ステアリング角度θs(deg)が正の値のとき)に正の値、車両が右方向へ旋回しているとき(ステアリング角度θsが負の値のとき)に負の値となるように設定される。なお、この理論式は、ステアリング角度及び車体速度が共に一定である状態で車両が旋回するとき(定常円旋回時)に車両に働く横加速度の理論値を算出する式である。
【0049】
【数1】
Gybase=(Vso2・θs)/(n・l)・(1/(1+Kh・Vso2))
【0050】
上記数1において、Vsoは後述するように算出される推定車体速度(m/s)である。また、nは操舵輪FL,FRの転舵角度の変化量に対するステアリング21の回転角度の変化量の割合であるギヤ比(一定値)であり、lは車体により決定される一定値である車両のホイールベース(m)であり、Khは車体により決定される一定値であるスタビリティファクタ(s2/m2)である。
【0051】
次に、本装置は、上記数1により得られた基準横加速度Gybaseの絶対値と、同基準横加速度Gybaseの絶対値と目標横加速度Gytの絶対値との関係を表す図3に示したテーブルとに基いて目標横加速度Gyt(m/s2)を算出する。この目標横加速度Gytの絶対値は、図3に示すように、基準横加速度Gybaseの絶対値よりも所定の偏移量だけ小さくなるように設定されるとともに、この所定の偏移量は基準横加速度Gybaseの絶対値が大きくなるほど大きくなるように設定される。また、目標横加速度Gytの絶対値は、「0.7」(後述する目標横加速度制限値Gytlimit(H/T))を超えないように設定される。
【0052】
目標横加速度Gytの符号は、基準横加速度Gybaseの符号と同一の符号となる。従って、例えば、基準横加速度Gybaseの値が0.7(m/s2)であるとき、目標横加速度Gytは0.6(m/s2)として計算され、基準横加速度Gybaseの値が-0.7(m/s2)であるとき、目標横加速度Gytは-0.6(m/s2)として計算される。
【0053】
一方、本装置は、下記数2に基いて、現時点で走行している路面の路面摩擦係数μを推定する。
【0054】
【数2】
μ=(DVso2+Gy21/2
【0055】
上記数2において、DVsoは後述するように算出される推定車体加速度(m/s2)であり、Gyは上述したように横加速度センサ54により得られる実際の横加速度(m/s2)である。
【0056】
また、本装置は、上記数2により推定した路面摩擦係数μの値と、路面摩擦係数μと同路面摩擦係数μに基づく目標横加速度制限値Gytlimit(μ)(m/s2)との関係を表す図4に示したテーブルとに基いて路面摩擦係数μに基づく目標横加速度制限値Gytlimit(μ)を算出する。このとき、図4に示すように、目標横加速度制限値Gytlimit(μ)は正の値であって路面摩擦係数μが大きくなるほど線形的に大きくなるように算出される。この図4に示した特性線図の勾配は、路面摩擦係数μの値に応じてその時点で車両に発生し得る実際の横加速度の最大値近傍の値を各種実験等により求めることにより決定される。
【0057】
加えて、本装置は、図5に示すように、左右後輪RR,RLの各タイヤ踏面の路面との接触面の中心間の車体左右方向の距離であるホイールトレッドをT、車両の重心Grと路面との鉛直方向の距離である重心高さをHとすると、車体により決定される一定値である「重心高さ-トレッド比H/T」(ホイールトレッドTに対する重心高さHの割合)の値と、「重心高さ-トレッド比H/T」と同「重心高さ-トレッド比H/T」に基づく目標横加速度制限値Gytlimit(H/T)(m/s2)との関係を表す図6に示したテーブルとに基いて「重心高さ-トレッド比H/T」に基づく目標横加速度制限値Gytlimit(H/T)を予め算出している。
【0058】
図6に示すように、目標横加速度制限値Gytlimit(H/T)は正の値であって「重心高さ-トレッド比H/T」が大きくなるほど小さくなるように算出される。「重心高さ-トレッド比H/T」が大きくなるほど同一の横加速度に対するロール角が大きくなるからである。この図6に示した特性線図は、「重心高さ-トレッド比H/T」の値を考慮したとき車体に発生したとしても同車体に過大なロール角が発生することがないような実際の横加速度の範囲内の最大値近傍の値を各種実験等により求めることにより決定される。
【0059】
ここにおいて、「重心高さ-トレッド比H/T」は、車両に発生するロール角の大きさに影響を与える同車両の実際の諸元値に対応している。本例では、目標横加速度制限値Gytlimit(H/T)は上述したように「0.7」に設定されており、図3に示すように、目標横加速度Gytの絶対値が「0.7」を超えることはない。
【0060】
そして、本装置は、上記のように算出した目標横加速度Gytの絶対値が、上記路面摩擦係数μに基づく目標横加速度制限値Gytlimit(μ)より大きいとき、目標横加速度Gytの絶対値が目標横加速度制限値Gytlimit(μ)になるように目標横加速度Gytを制限する。
【0061】
次に、本装置は、下記数3に基いて、上述したように計算した目標横加速度Gytの絶対値と横加速度センサ54により得られる実際の横加速度Gyの絶対値との偏差である横加速度偏差ΔGy(m/s2)を算出する。
【0062】
【数3】
ΔGy=|Gyt|-|Gy|
【0063】
そして、この横加速度偏差ΔGyの値が正の値であるとき、車両は目標横加速度Gytが同車両に発生していると仮定したときの旋回半径よりも同旋回半径が大きくなる状態(以下、「アンダーステア状態」と称呼する。)にあるので、本装置は、アンダーステア状態を抑制するためのアンダーステア抑制制御を実行する。具体的には、本装置は、旋回方向内側の後輪に上記横加速度偏差ΔGyの値に応じた所定のブレーキ力を発生させて車両に対して旋回方向と同一方向のヨーイングモーメントを強制的に発生させる。これにより、実際の横加速度Gyの絶対値が大きくなり、実際の横加速度Gyが目標横加速度Gytに近づくように制御される。
【0064】
また、横加速度偏差ΔGyの値が負の値であるとき、車両は目標横加速度Gytが同車両に発生していると仮定したときの旋回半径よりも同旋回半径が小さくなる状態(以下、「オーバーステア状態」と称呼する。)にあるので、本装置は、オーバーステア状態を抑制するためのオーバーステア抑制制御を実行する。具体的には、本装置は、旋回方向外側の前輪に上記横加速度偏差ΔGyの値に応じた所定のブレーキ力を発生させて車両に対して旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントを強制的に発生させる。これにより、実際の横加速度Gyの絶対値が小さくなり、実際の横加速度Gyが目標横加速度Gytに近づくように制御される。
【0065】
このようにして、アンダーステア抑制制御又はオーバーステア抑制制御(以下、これらを併せて「制動操舵制御」と総称する。)を実行することにより、本装置は、各車輪に付与すべきブレーキ力を制御して実際の横加速度Gyが上記のように計算される目標横加速度Gytに近づく方向に車両に対して所定のヨーイングモーメントを発生させる。また、制動操舵制御を実行する際に、後述するアンチスキッド制御、前後制動力配分制御、及びトラクション制御のうちのいずれか一つも併せて実行する必要があるとき、本装置は、同いずれか一つの制御を実行するために各車輪に付与すべきブレーキ力をも考慮して各車輪に付与すべきブレーキ力を最終的に決定する。以上が、本発明による車両の運動制御の概要である。
【0066】
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明による車両の運動制御装置10の実際の作動について、電気式制御装置60のCPU61が実行するルーチンをフローチャートにより示した図7〜図11を参照しながら説明する。なお、各種変数・フラグ・符号等の末尾に付された「**」は、同各種変数・フラグ・符号等が各車輪FR等のいずれに関するものであるかを示すために同各種変数・フラグ・符号等の末尾に付される「fl」,「fr」等の包括表記であって、例えば、車輪速度Vw**は、左前輪速度Vwfl, 右前輪速度Vwfr, 左後輪速度Vwrl, 右後輪速度Vwrrを包括的に示している。
【0067】
CPU61は、図7に示した車輪速度Vw**等の計算を行うルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで各車輪FR等の車輪速度(各車輪の外周の速度)Vw**をそれぞれ算出する。具体的には、CPU61は各車輪速度センサ51**が出力する信号が有するパルスの時間間隔に基いて各車輪FR等の車輪速度Vw**をそれぞれ算出する。
【0068】
次いで、CPU61はステップ710に進み、各車輪FR等の車輪速度Vw**のうちの最大値を推定車体速度Vsoとして算出する。なお、各車輪FR等の車輪速度Vw**の平均値を推定車体速度Vsoとして算出してもよい。ここで、ステップ710は車体速度取得手段に対応している。
【0069】
次に、CPU61はステップ715に進み、ステップ710にて算出した推定車体速度Vsoの値と、ステップ705にて算出した各車輪FR等の車輪速度Vw**の値と、ステップ715内に記載した式とに基いて各車輪毎の実際のスリップ率Sa**を算出する。この実際のスリップ率Sa**は、後述するように、各車輪に付与すべきブレーキ力を計算する際に使用される。
【0070】
次に、CPU61はステップ720に進んで、下記数4に基いて推定車体速度Vsoの時間微分値である推定車体加速度DVsoを算出する。
【0071】
【数4】
DVso=(Vso-Vso1)/Δt
【0072】
上記数4において、Vso1は前回の本ルーチン実行時にステップ710にて算出した前回の推定車体速度であり、Δtは本ルーチンの演算周期である上記所定時間である。
【0073】
そして、CPU61はステップ725に進み、ステップ720にて算出した推定車体加速度DVsoの値と、横加速度センサ54により得られる実際の横加速度Gyの値と、上記数2の右辺に対応するステップ725内に記載した式とに基いて路面摩擦係数μを推定する。ここで、ステップ725は、路面摩擦係数取得手段に対応している。
【0074】
なお、ステップ725における計算に使用される推定車体加速度DVsoの値及び実際の横加速度Gyの値として、それぞれ、所定回前の本ルーチン実行時から今回の本ルーチン実行時までに取得された値のうちの最大値を採用してもよい。そして、CPU61はステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
次に、横加速度偏差の算出について説明すると、CPU61は図8に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで、ステアリング角度センサ52により得られるステアリング角度θsの値と、図4のステップ710にて算出した推定車体速度Vsoの値と、上記数1の右辺に対応するステップ805内に記載した式とに基いて基準横加速度Gybaseを算出する。
【0076】
次に、CPU61はステップ810に進み、ステップ805にて算出した基準横加速度Gybaseの絶対値と、上述した図3に示したテーブルと同一のテーブルであるステップ810内に記載したテーブルとに基いて目標横加速度Gytの絶対値を算出するとともに、目標横加速度Gytの絶対値に基準横加速度Gybaseの符号を付した値を目標横加速度Gytとして算出する。ここで、ステップ810は、目標横加速度関連量算出手段に対応している。
【0077】
次いで、CPU61はステップ815に進み、図7のステップ725にて推定した路面摩擦係数μの値と、上述した図4に示したテーブルと同一のテーブルであるステップ815内に記載したテーブルとに基いて正の値である路面摩擦係数μに基く目標横加速度制限値Gytlimit(μ)を算出する。
【0078】
次に、CPU61はステップ820に進んで、ステップ810にて算出した目標横加速度Gytの絶対値が、ステップ815にて算出した路面摩擦係数μに基く目標横加速度制限値Gytlimit(μ)以下であるか否かを判定する。そして、目標横加速度Gytの絶対値が目標横加速度制限値Gytlimit(μ)を超えていれば、CPU61はステップ820にて「No」と判定してステップ825に進み、目標横加速度制限値Gytlimit(μ)に現時点での目標横加速度Gytの符号を付した値を目標横加速度Gytとして格納した後ステップ830に進む。一方、ステップ820の判定において、目標横加速度Gytの絶対値が目標横加速度制限値Gytlimit(μ)以下であればステップ820にて「Yes」と判定して直接ステップ830に進む。ここで、ステップ825は、目標横加速度関連量制限手段に対応している。
【0079】
次いで、CPU61はステップ830に進んで、目標横加速度Gytの値と、横加速度センサ54により得られる実際の横加速度Gyの値と、上記数3の右辺に対応するステップ830内に記載した式とに基いて横加速度偏差ΔGyを算出する。そして、CPU61はステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
次に、上記した制動操舵制御のみを実行する際に各車輪に付与すべきブレーキ力を決定するために必要となる各車輪の目標スリップ率の算出について説明すると、CPU61は図9に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで、横加速度センサ54により得られる実際の横加速度Gyの値が「0」以上であるか否かを判定し、実際の横加速度Gyの値が「0」以上である場合には同ステップ905にて「Yes」と判定してステップ910に進み、旋回方向表示フラグLを「1」に設定する。また、実際の横加速度Gyの値が負の値である場合には同ステップ905にて「No」と判定してステップ915に進み、旋回方向表示フラグLを「0」に設定する。
【0081】
ここで、旋回方向表示フラグLは、車両が左方向に旋回しているか右方向に旋回しているかを示すフラグであり、その値が「1」のときは車両が左方向に旋回していることを示し、その値が「0」のときは車両が右方向に旋回していることを示している。従って、旋回方向表示フラグLの値により車両の旋回方向が特定される。
【0082】
次いで、CPU61はステップ920に進み、図8のステップ830にて算出した横加速度偏差ΔGyの絶対値と、ステップ920内に記載したテーブルとに基いて制動操舵制御により車両に発生させるべきヨーイングモーメントの大きさに応じた制御量Gを算出する。ステップ920内に記載したテーブルに示すように、制御量Gは、横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy1以下のときには「0」になるように設定され、横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy1以上であって値Gy2以下のときには同横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy1から値Gy2まで変化するに従い「0」から正の一定値G1まで線形的に変化するように設定され、横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy2以上のときには正の一定値G1に維持されるように設定される。換言すれば、横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy1以下のときには制動操舵制御が実行されない一方で、横加速度偏差ΔGyの絶対値が値Gy1以上のときにはステップ920内に記載したテーブルに基き、制御量Gが横加速度偏差ΔGyの絶対値に応じて決定される。
【0083】
次に、CPU61はステップ925に進んで、図8のステップ830にて算出した横加速度偏差ΔGyの値が「0」以上であるか否かを判定する。ここで、横加速度偏差ΔGyの値が「0」以上である場合には、CPU61は先に説明したように車両がアンダーステア状態にあると判定し、上記アンダーステア抑制制御を実行する際の各車輪の目標スリップ率を計算するためステップ930に進んで、旋回方向表示フラグLの値が「1」であるか否かを判定する。
【0084】
ステップ930の判定において旋回方向表示フラグLが「1」であるとき、CPU61はステップ935に進んで、正の一定値である係数Krにステップ920にて計算した制御量Gの値を乗算した値を左後輪RLの目標スリップ率Strlとして設定するとともに、その他の車輪FL,FR,RRの目標スリップ率Stfl,Stfr,Strrを総て「0」に設定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、車両が左方向に旋回している場合における旋回方向内側の後輪に対応する左後輪RLにのみ横加速度偏差ΔGyの絶対値に応じた目標スリップ率が設定される。
【0085】
一方、ステップ930の判定において旋回方向表示フラグLが「0」であるとき、CPU61はステップ940進んで、上記係数Krにステップ920にて計算した制御量Gの値を乗算した値を右後輪RRの目標スリップ率Strrとして設定するとともに、その他の車輪FL,FR,RLの目標スリップ率Stfl,Stfr,Strlを総て「0」に設定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、車両が右方向に旋回している場合における旋回方向内側の後輪に対応する右後輪RRにのみ横加速度偏差ΔGyの絶対値に応じた目標スリップ率が設定される。
【0086】
他方、ステップ925の判定において、横加速度偏差ΔGyの値が負の値である場合には、CPU61は先に説明したように車両がオーバーステア状態にあると判定し、上記オーバーステア抑制制御を実行する際の各車輪の目標スリップ率を計算するためステップ945に進んで、旋回方向表示フラグLの値が「1」であるか否かを判定する。
【0087】
ステップ945の判定において旋回方向表示フラグLが「1」であるとき、CPU61はステップ950に進んで、正の一定値である係数Kfにステップ920にて計算した制御量Gの値を乗算した値を右前輪FRの目標スリップ率Stfrとして設定するとともに、その他の車輪FL,RL,RRの目標スリップ率Stfl,Strl,Strrを総て「0」に設定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、車両が左方向に旋回している場合における旋回方向外側の前輪に対応する右前輪FRにのみ横加速度偏差ΔGyの絶対値に応じた目標スリップ率が設定される。
【0088】
一方、ステップ945の判定において旋回方向表示フラグLが「0」であるとき、CPU61はステップ955進んで、上記係数Kfにステップ920にて計算した制御量Gの値を乗算した値を左前輪FLの目標スリップ率Stflとして設定するとともに、その他の車輪FR,RL,RRの目標スリップ率Stfr,Strl,Strrを総て「0」に設定し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、車両が右方向に旋回している場合における旋回方向外側の前輪に対応する左前輪FLにのみ横加速度偏差ΔGyの絶対値に応じた目標スリップ率が設定される。以上のようにして、制動操舵制御のみを実行する際に各車輪に付与すべきブレーキ力を決定するために必要となる各車輪の目標スリップ率が決定される。
【0089】
次に、車両の制御モードの設定について説明すると、CPU61は図10に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1000から処理を開始し、ステップ1005に進んで、現時点においてアンチスキッド制御が必要であるか否かを判定する。アンチスキッド制御は、ブレーキペダルBPが操作されている状態において特定の車輪がロックしている場合に、同特定の車輪のブレーキ力を減少させる制御である。アンチスキッド制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0090】
具体的には、CPU61はステップ1005において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていることが示されている場合であって、且つ図7のステップ715にて算出した特定の車輪の実際のスリップ率Sa**の値が正の所定値以上となっている場合に、アンチスキッド制御が必要であると判定する。
【0091】
ステップ1005の判定にてアンチスキッド制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1010に進んで、制動操舵制御とアンチスキッド制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「1」を設定し、続くステップ1050に進む。
【0092】
一方、ステップ1005の判定にてアンチスキッド制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1015に進んで、現時点において前後制動力配分制御が必要であるか否かを判定する。前後制動力配分制御は、ブレーキペダルBPが操作されている状態において車両の前後方向の減速度の大きさに応じて前輪のブレーキ力に対する後輪のブレーキ力の比率(配分)を減少させる制御である。前後制動力配分制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0093】
具体的には、CPU61はステップ1015において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていることが示されている場合であって、且つ図7のステップ720にて算出した推定車体加速度DVsoの値が負の値であり同推定車体加速度DVsoの絶対値が所定値以上となっている場合に、前後制動力配分制御が必要であると判定する。
【0094】
ステップ1015の判定にて前後制動力配分制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1020に進んで、制動操舵制御と前後制動力配分制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「2」を設定し、続くステップ1050に進む。
【0095】
ステップ1015の判定にて前後制動力配分制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1025に進んで、現時点においてトラクション制御が必要であるか否かを判定する。トラクション制御は、ブレーキペダルBPが操作されていない状態において特定の車輪がエンジン31の駆動力が発生している方向にスピンしている場合に、同特定の車輪のブレーキ力を増大させる制御又はエンジン31の駆動力を減少させる制御である。トラクション制御の詳細については周知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0096】
具体的には、CPU61はステップ1025において、ブレーキスイッチ55によりブレーキペダルBPが操作されていないことが示されている場合であって、且つ図7のステップ715にて算出した特定の車輪の実際のスリップ率Sa**の値が負の値であり同実際のスリップ率Sa**の絶対値が所定値以上となっている場合に、トラクション制御が必要であると判定する。
【0097】
ステップ1025の判定にてトラクション制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1030に進んで、制動操舵制御とトラクション制御とを重畳して実行する制御モードを設定するため変数Modeに「3」を設定し、続くステップ1050に進む。
【0098】
ステップ1025の判定にてトラクション制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1035に進んで、現時点において上記制動操舵制御が必要であるか否かを判定する。具体的には、CPU61はステップ1035において、図8のステップ830にて算出した横加速度偏差ΔGyの絶対値が図9のステップ920内に記載のテーブルにおける値Gy1以上となっている場合に、図9にて設定された目標スリップ率St**の値が「0」でない特定の車輪が存在するので制動操舵制御が必要であると判定する。
【0099】
ステップ1035の判定にて制動操舵制御が必要であると判定したとき、CPU61はステップ1040に進んで、制動操舵制御のみを実行する制御モードを設定するため変数Modeに「4」を設定し、続くステップ1050に進む。一方、ステップ1035の判定にて制動操舵制御が必要でないと判定したとき、CPU61はステップ1045に進んで、車両の運動制御を実行しない非制御モードを設定するため変数Modeに「0」を設定し、続くステップ1050に進む。この場合、制御すべき特定の車輪は存在しない。
【0100】
CPU61はステップ1050に進むと、制御対象車輪に対応するフラグCONT**に「1」を設定するとともに、制御対象車輪でない非制御対象車輪に対応するフラグCONT**に「0」を設定する。なお、このステップ1050における制御対象車輪は、図2に示した対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**の少なくとも一方を制御する必要がある車輪である。
【0101】
従って、例えば、ブレーキペダルBPが操作されていない状態であって上述した図9のステップ950に進む場合等、右前輪FRのホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧のみを増圧する必要がある場合、図2に示した制御弁SA1,切換弁STR及び増圧弁PUflを共に第2の位置に切換るとともに増圧弁PUfr及び減圧弁PDfrをそれぞれ制御することにより、ホイールシリンダWfl内のブレーキ液圧を保持した状態で高圧発生部41が発生する高圧を利用してホイールシリンダWfr内のブレーキ液圧のみを増圧することになる。従って、この場合における制御対象車輪には、右前輪FRのみならず左前輪FLが含まれる。そして、CPU61はステップ1050を実行した後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このようにして、制御モードが特定されるとともに、制御対象車輪が特定される。
【0102】
次に、各車輪に付与すべきブレーキ力の制御について説明すると、CPU61は図11に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ1100から処理を開始し、ステップ1105に進んで、変数Modeが「0」でないか否かを判定し、変数Modeが「0」であればステップ1105にて「No」と判定してステップ1110に進み、各車輪に対してブレーキ制御を実行する必要がないのでブレーキ液圧制御装置40における総ての電磁弁をOFF(非励磁状態)にした後、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、ドライバーによるブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧が各ホイールシリンダW**に供給される。
【0103】
一方、ステップ1105の判定において変数Modeが「0」でない場合、CPU61はステップ1105にて「Yes」と判定してステップ1115に進み変数Modeが「4」であるか否かを判定する。そして、変数Modeが「4」でない場合(即ち、制動操舵制御以外のアンチスキッド制御等が必要である場合)、CPU61はステップ1115にて「No」と判定してステップ1120に進み、図10のステップ1050にてフラグCONT**の値が「1」に設定された制御対象車輪に対して図9にて既に設定した制動操舵制御のみを実行する際に必要となる各車輪の目標スリップ率St**を補正した後ステップ1125に進む。これにより、制動操舵制御に重畳される変数Modeの値に対応する制御を実行する際に必要となる各車輪の目標スリップ率分だけ図9にて既に設定した各車輪の目標スリップ率St**が制御対象車輪毎に補正される。
【0104】
ステップ1115の判定において変数Modeが「4」である場合、CPU61はステップ1115にて「Yes」と判定し、図9にて既に設定した各車輪の目標スリップ率St**を補正する必要がないので直接ステップ1125に進む。CPU61はステップ1125に進むと、図10のステップ1050にてフラグCONT**の値が「1」に設定された制御対象車輪に対して、目標スリップ率St**の値と、図7のステップ715にて算出した実際のスリップ率Sa**の値と、ステップ1125内に記載の式とに基いて制御対象車輪毎にスリップ率偏差ΔSt**を算出する。
【0105】
次いで、CPU61はステップ1130に進み、上記制御対象車輪に対して同制御対象車輪毎に液圧制御モードを設定する。具体的には、CPU61はステップ1125にて算出した制御対象車輪毎のスリップ率偏差ΔSt**の値と、ステップ1130内に記載のテーブルとに基いて、制御対象車輪毎に、スリップ率偏差ΔSt**の値が所定の正の基準値を超えるときは液圧制御モードを「増圧」に設定し、スリップ率偏差ΔSt**の値が所定の負の基準値以上であって前記所定の正の基準値以下であるときは液圧制御モードを「保持」に設定し、スリップ率偏差ΔSt**の値が前記所定の負の基準値を下回るときは液圧制御モードを「減圧」に設定する。
【0106】
次に、CPU61はステップ1135に進み、ステップ1130にて設定した制御対象車輪毎の液圧制御モードに基いて、図2に示した制御弁SA1,SA2、切換弁STRを制御するとともに制御対象車輪毎に同液圧制御モードに応じて増圧弁PU**及び減圧弁PD**を制御する。
【0107】
具体的には、CPU61は液圧制御モードが「増圧」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**を共に第1の位置(非励磁状態における位置)に制御し、液圧制御モードが「保持」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**を第2の位置(励磁状態における位置)に制御するとともに対応する減圧弁PD**を第1の位置に制御し、液圧制御モードが「減圧」となっている車輪に対しては対応する増圧弁PU**及び減圧弁PD**を共に第2の位置(励磁状態における位置)に制御する。
【0108】
これにより、液圧制御モードが「増圧」となっている制御対象車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧は増大し、また、液圧制御モードが「減圧」となっている制御対象車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧は減少することで、各制御車輪の実際のスリップ率Sa**が目標スリップ率St**に近づくようにそれぞれ制御され、この結果、図10に設定した制御モードに対応する制御が達成される。ここで、ステップ1135は、制動力制御手段に対応している。
【0109】
なお、図10のルーチンの実行により設定された制御モードがトラクション制御を実行する制御モード(変数Mode=3)又は制動操舵制御のみを実行する制御モード(変数Mode=4)であるときには、エンジン31の駆動力を減少させるため、CPU61は必要に応じて、スロットル弁THの開度がアクセルペダルAPの操作量Accpに応じた開度よりも所定量だけ小さい開度になるようにスロットル弁アクチュエータ32を制御する。そして、CPU61はステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0110】
以上、説明したように、本発明による車両の運動制御装置によれば、目標横加速度Gyt(の絶対値)が車両の運動モデルから導かれる理論式に基いた理論値である上記基準横加速度Gybase(の絶対値)以下となるように設定される。そして、実際の横加速度Gyが目標横加速度Gytに近づくように車両の各車輪の目標スリップ率St**が設定され、各車輪の実際のスリップ率Sa**が同目標スリップ率St**になるように同各車輪のブレーキ力が制御される。従って、車両が急旋回を開始して実際の横加速度Gyが増大する傾向にあるとき、車両に対して実際の横加速度Gyの大きさが低減する方向にヨーイングモーメントを発生させることにより実際の横加速度Gyの大きさが上記基準横加速度Gybaseよりも小さい量まで直ちに低減されるので、車体に過大なロール角が発生することにより車両の旋回状態が不安定になることが防止された。
【0111】
また、基準横加速度Gybaseの絶対値が大きくなるほど上記基準横加速度Gybaseからの目標横加速度Gytの偏移量が大きく設定されているので、車体に過大なロール角が発生しやすくなる程度に応じて車体に過大なロール角が発生することを防止する程度が過不足なく設定され、車両の運動状態(旋回状態)がより理想に近い状態となった。
【0112】
また、目標横加速度Gytの絶対値が、ホイールトレッドTに対する車両の重心Grと路面との鉛直方向の距離である重心高さHの割合である「重心高さ-トレッド比H/T」を考慮したとき車体に過大なロール角が発生し得ないような横加速度の範囲内の値になるように設定されるので、車体に過大なロール角が発生することがより確実に防止された。
【0113】
また、上記目標横加速度Gytの絶対値が路面摩擦係数μに応じて設定される目標横加速度制限値Gytlimit(μ)より大きいとき、目標横加速度Gytの絶対値が目標横加速度制限値Gytlimit(μ)になるように目標横加速度Gytが制限される。従って、目標横加速度Gytの絶対値が路面摩擦係数μの値に依存するその時点で車両に発生し得る横加速度の範囲内の値に制限されるので、路面摩擦係数μが小さい路面を車両が旋回走行する際に目標横加速度Gytと実際の横加速度Gyとの偏差が過度に大きくなることがなく、その結果、各車輪に過度の制動力が発生して車両が不安定になることが防止された。
【0114】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、実際の横加速度Gyを目標横加速度Gytに近づけるための制御目標として車両の各車輪のスリップ率を使用しているが、例えば、各車輪のホイールシリンダW**内のブレーキ液圧等、各車輪に付与されるブレーキ力に応じて変化する物理量であればどのような物理量を制御目標としてもよい。
【0115】
また、上記実施形態においては、路面摩擦係数μに基く目標横加速度制限値Gytlimit(μ)は図4に示すように路面摩擦係数μが大きくなるほど線形的に大きくなるように算出されるが、路面摩擦係数μが大きくなるほど目標横加速度制限値Gytlimit(μ)が大きくなるように設定されれば、路面摩擦係数μと目標横加速度制限値Gytlimit(μ)との関係はどのような関係であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】 図1に示したブレーキ液圧制御装置の概略構成図である。
【図3】 図1に示したCPUが目標横加速度を計算する際に使用する目標横加速度の絶対値と基準横加速度の絶対値との関係を示したテーブルである。
【図4】 図1に示したCPUが目標横加速度を計算する際に使用する路面摩擦係数に基く目標横加速度制限値と路面摩擦係数との関係を示したテーブルである。
【図5】 左右後輪の各タイヤ踏面の路面との接触面の中心間の車体左右方向の距離であるホイールトレッドと、車両の重心と路面との鉛直方向の距離である重心高さとを示した図である。
【図6】 図1に示したCPUが算出する目標横加速度の絶対値の上限値である「重心高さ-トレッド比」に基く目標横加速度制限値と「重心高さ-トレッド比」との関係を示したテーブルである。
【図7】 図1に示したCPUが実行する車輪速度等を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図8】 図1に示したCPUが実行する横加速度偏差を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図9】 図1に示したCPUが目標スリップ率を算出するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図10】 図1に示したCPUが制御モードを設定するためのルーチンを示したフローチャートである。
【図11】 図1に示したCPUが各車輪に付与するブレーキ力を制御するためのルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…車両の運動制御装置、20…前輪転舵機構部、30…駆動力伝達機構部、40…ブレーキ液圧制御装置、50…センサ部、51**…車輪速度センサ、52・・・ステアリング角度センサ、54・・・横加速度センサ、60…電気式制御装置、61…CPU。

Claims (4)

  1. 車両の車体速度を取得する車体速度取得手段と、
    前記車両の操舵輪の転舵角を変更するステアリングの操作量を取得するステアリング操作量取得手段と、
    前記車両に作用する横加速度の実際量を実横加速度として取得する実横加速度取得手段と、
    前記横加速度の目標量である目標横加速度の絶対値が、前記横加速度の基準量である基準横加速度の絶対値より小さくなるように且つ前記基準横加速度の絶対値の増加に伴って増加するように同目標横加速度を算出する目標横加速度算出手段と、
    前記実横加速度が前記目標横加速度に近づくように前記車両の前輪及び後輪の各車輪に付与される制動力を制御して前記車両の車体に過大なロール角が発生することを抑制する制動力制御手段と、
    を備え、
    前記基準横加速度は、少なくとも前記車体速度及び前記ステアリング操作量に基いて車両の運動モデルを用いて算出される、前記車体速度及び前記ステアリング操作量が共に一定である状態で車両が旋回する定常円旋回時に車両に作用する横加速度の理論値に決定される車両の運動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の運動制御装置において、
    前記目標横加速度算出手段は、前記基準横加速度の絶対値が大きくなるほど、前記基準横加速度の絶対値に対して前記目標横加速度の絶対値が小さくされる量が大きくなるように前記目標横加速度を算出するよう構成された車両の運動制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置において、
    前記目標横加速度算出手段は、前記目標横加速度の絶対値が前記車両に発生するロール角の大きさに影響を与える同車両の実際の諸元値に応じて設定される目標横加速度制限値を超えないように同目標横加速度を算出するように構成された車両の運動制御装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置であって、
    前記車両が走行している路面と同車両のタイヤとの間の摩擦係数である路面摩擦係数を取得する路面摩擦係数取得手段と、
    前記路面摩擦係数に応じて目標横加速度制限値を設定するとともに前記目標横加速度の絶対値が同目標横加速度制限値より大きいとき同目標横加速度の絶対値が同目標横加速度制限値になるように同目標横加速度を制限する目標横加速度制限手段を備えた車両の運動制御装置。
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