JP3694966B2 - 熱間連続圧延のミルペーシング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱炉から所定の加熱温度に焼き上げられた金属片を抽出し、粗圧延した後、先行材の後端部と後行材の先端部とを接合し、仕上圧延を行う熱間連続圧延のミルペーシング方法に係り、特に、加熱炉の加熱能力が粗圧延機及び仕上圧延機の圧延能力を上回っている熱間圧延設備に用いるのに好適な、金属片の焼き上がり温度を確保しつつ先頭材から最終材まで確実に接合することが可能な、熱間連続圧延のミルペーシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱間圧延ラインでは、製鋼工程等で製造された処理材である各鋼片(スラブとも称する)10が、図1に示すように所定のピッチで加熱炉12に搬入され、炉内で当該所定のピッチを維持しながら所定の温度に加熱された後、加熱炉12から抽出される。この加熱炉12から抽出された鋼片10は、搬送ライン14を通って圧延設備に送られ、ここで所定の厚さに圧延される。
【0003】
従って従来は、各種手段を有する場合においても、先行材が仕上圧延を終了してから当該材が仕上圧延を開始するまでの時間間隔が所定の時間になるように、先行材と当該材の処理時間を予測し、加熱炉12からの抽出時刻を決定していた。
【0004】
更に、加熱炉12から抽出された先行材は、複数の圧延スタンドを通る過程で、前進及び後退を繰り返しながら所定の厚さに圧延されていくことから、先行材の圧延状況を考慮しながら、当該先行材と衝突しないように加熱炉12から後行材を抽出しなければならず、従って、この面からも、先行材と後行材との抽出ピッチを適切に設定する必要がある。
【0005】
このような目的で、従来、加熱炉12から抽出される後行材の抽出ピッチの決定は、まず、先行材の圧延パターンをシミュレーションして、先行材の先端及び尾端と、後行材の先端及び尾端との位置軌跡を知り、先行材の尾端と後行材の先端が重なって衝突しないように、且つ、各鋼片10が所定の温度まで加熱されるように、その加熱炉12内における在炉時間が確保するように抽出ピッチを決定することも行われていた。
【0006】
例えば、特開平7−188785では、圧延ライン側の予期しない変動であっても処理材の加熱精度を維持し、炉温の急激な変化を抑制するべく、チェック用データと現在の圧延状況を比較して、抽出ピッチを補正する必要があると判断したときには、チェック用データと現在の圧延状態のずれから、将来の圧延パターンの推移を予測し、このようにして予測された将来の圧延パターンと先行処理材の予測圧延パターンとから抽出ピッチの補正値を求めることが記載されている。
【0007】
しかしながら、前記のように加熱炉12より抽出した鋼片10を1本ずつ粗圧延、仕上圧延していたのでは圧延能率が悪く、特に、仕上圧延工程においては、板材先端の噛込不良や板材後端での絞り込み、搬送テーブル上での走行トラブル等を起こし易い不利があった。そこで、最近では特開昭58−112601に記載されているように、図2に示す如く、加熱炉12出側の粗圧延機16で粗圧延を終えた先行材の後端部と後行材の先端部を、粗圧延機16出側のバー接合装置18で相互に接合した後、仕上圧延機20に送給して連続的に仕上圧延し、仕上圧延機20出側のストリップ切断装置22で切断して、巻取り設備24によりコイル26とする完全連続圧延が実施されるようになってきており、これによって上記のような諸問題を少なくし、圧延能率を飛躍的に向上させることができるようになっている。
【0008】
一般に、圧延材の粗圧延時間や仕上圧延時間は、各圧延材の材長や圧延速度、板厚等の圧延条件によって変化する。前記のような熱間連続圧延では、粗圧延後にシートバーを接合する必要があるため、粗圧延機16の出側(仕上圧延機20の入側)のバー接合装置18の位置で、先行材の尾端に後行材の先端を追い付かせる必要がある。即ち、後行材の加熱炉12からの抽出が遅い場合には、後行材の先端が先行材の尾端に追い付かないため接合が不可能となり、逆に、抽出が速い場合には、先行材の尾端がバー接合装置18に入るまで後行材を粗圧延機16の出側で待たせる必要があるため、後行材の温度が低下し、仕上圧延機20で初期の圧延が実現できないことになる。
【0009】
又、圧延材の加熱温度は重要な管理項目の1つであり、加熱炉12から抽出されるときには、所定温度まで加熱されていることが必須の条件となる。しかし、所定の温度まで加熱されていないという理由で、抽出時刻を遅らせてしまうと、後行材の先端が先行材の尾端に追い付くことができず、やはり接合が不可能になる。
【0010】
このような問題を解決するものとして、出願人は、特開平6−226320で、完全連続圧延における板材のミルペーシング方法を提案している。これは、粗圧延を経た先材と、これに続いて搬送される次材、及びこの次材に続いて後材が搬送されている場合に、接合しようとする板の相互間の長さの差が小さい場合には、バー接合装置18において先材の後端に次材の先端が追い付くようなタイミングで次材の粗圧延を開始するようにし、又、接合しようとする板材の中に板材相互の長さの差が大きくなる短尺材が含まれている場合には、その板材に先行指定される板材の長さを当該短尺材の長さよりも長いものとし、且つ短尺材の粗圧延の開始時刻を、それに続く後材の先端がバー接合装置18において短尺材の後端にちょうど追い付くことができるような時刻とするものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−226320で提案したミルペーシング方法では、先材、次材、後材の3つの材料のタイミングしか考慮していないため、必ずしも十分な効果を発揮することはできなかった。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、各金属片の焼き上げ温度を確保しつつ、先頭材から最終材まで、確実に接合可能とすることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、加熱炉から所定の加熱温度に焼き上げられた金属片を抽出し、粗圧延した後、先行材の後端部と後行材の先端部とを接合し、仕上げ圧延を行う熱間連続圧延において、各金属片の焼き上げ予測時刻を求め、各金属片相互を、粗圧延後であって仕上げ圧延前に接合するために要する、加熱炉からの抽出ピッチを求め、前記焼き上げ予測時刻と抽出ピッチとから、接合する全ての金属片が、それぞれの焼き上げ予測時刻以後に抽出されるように、接合する1本目を抽出し、2本目以後、前記抽出ピッチで抽出するようにして、前記課題を解決したものである。
【0014】
又、接合する1本目の抽出時刻を、i本目の金属片の焼き上げ時刻をTi 、i本目とi+1本目の間の金属片の抽出ピッチをPi としたとき、iに1〜Nを代入したTi −(0+P1+P2+P3+・・・+Pi-1 )のN個のうちで最大となる時刻以降としたものである。
【0015】
本発明は、加熱炉の加熱能力が粗圧延機及び仕上圧延機の圧延能力を上回っている熱間圧延設備に好適に適用できる。
【0016】
本発明による抽出時刻決定に際しては、粗圧延や仕上圧延での圧延速度、板厚、先進率、テーブル搬送速度といった各種圧延条件を用いて、連続圧延材の先頭材から最終材までの各々について、圧延に要する所要時間を予測し、粗圧延後の後行材の先端を先行材の尾端に接合するために必要な、先行材の加熱炉からの抽出から後行材の抽出までの時間間隔(抽出間隔)を決定する。
【0017】
一方、連続圧延材の先頭材から最終材までの各々について、加熱炉での焼き上げ時刻を予測し、接合する全て金属片が、それぞれの焼き上げ予測時刻以降に抽出されるように、先頭材の抽出時刻を決定する。
【0018】
従って、焼き上がり温度を確保しつつ、先頭材から最終材まで、確実に接合することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図3は、本発明の実施形態における連続圧延材の抽出ピッチ決定手順を示す流れ図である。
【0021】
図2に示したように、熱間圧延の粗圧延後のシートバーを仕上圧延機20入側のバー接合装置18で接合するためには、i本目のシートバー尾端にi+1本目の先端を追い付かせる必要がある。粗圧延では、材料により、圧延速度、圧延パス回数や材料長さといった圧延条件が異なるため、加熱炉12抽出から粗圧延終了までの時間は、材料によって変化する。抽出時刻が遅ければ、先行材の尾端に追い付くことが不可能であり、又、抽出時刻が速いと、途中で不要な待機を引き起こし、圧延材の温度低下をまねき圧延不能となる。従って、抽出時刻の決定に際しては、図2中に示した如く、i本目の尾端がバー接合装置18に到達するまでの時間Aと、i+1本目の先端がバー接合装置18に到達するまでの時間Bを予測して、その差の時間を抽出ピッチPi とすればよい。
【0022】
例えば、粗圧延機あるいは仕上圧延機での圧延時間は、圧延スケジュールから圧延前後の厚みと長さ、又、先進率fと後進率bが予測できるから、先端が圧延機に入ってから、尾端が圧延機を抜けるまでの時間は、圧延前の鋼片長さをL、設定の圧延速度(ロール速度)をVとして、次式で計算できる。
【0023】
(圧延時間)=L/V(1−b) …(1)
【0024】
又、圧延機と圧延機間の搬送時間は、テープル搬送速度と設備間距離から容易に計算できる。
【0025】
図4に先尾端の搬送時間計算の一例を示す。例えば図4に示すように、圧延速度v1、v3、搬送速度v2、搬送距離、加減速率α1、β1といった圧延条件を入力し、この条件から各時間を求め、加熱炉抽出から積み上げていくことにより、接合を行う先頭材(i=1)から最終材(i=N)について、それぞれ先尾端の通過時間を計算する(図3のステップ100及び110)。
【0026】
次いで、同じく先頭材から最終材まで、それぞれの間の抽出ピッチPi (i =1〜N−1)を求める(ステップ120及び130)。
【0027】
一方、加熱炉12でのスラブ温度計算により、接合を行う先頭材(i=1)から最終材(i=N)までを所定の焼き上げ温度まで加熱するのに必要な焼き上げ予測時刻Ti (i =1〜N)を計算する(ステップ150及びステップ160)。
【0028】
次に、この焼き上げ予測時刻Ti とステップ130で求めた抽出ピッチPi を用いて、先頭材(i =1)の抽出時刻t1を決定する(ステップ170)。このステップ170における先頭材の抽出時刻t1の決定方法を、図5を用いて詳細に説明する。
【0029】
図5(a)は、図3のステップ160で計算された、各材料の焼き上げ予測時刻Ti (i =1〜N)、同じく(b)は、図3のステップ130で計算された、各材料間の抽出ピッチPi (i =1〜N−1)を示す。
【0030】
図5(c)は、1本目の焼き上げ予測時刻T1に、1本目の抽出時刻t1を一致させた場合であり、1本目の抽出時刻t1は次式に示す如くとなる。
【0031】
t1=T1−0 …(2)
【0032】
図5(d)は、2本目の焼き上げ可能時刻T2に、2本目の抽出時刻t2を一致させた場合であり、1本目の抽出時刻t1は、次式に示す如くとなる。
【0033】
t1=T2−P1 …(3)
【0034】
図5(e)は、3本目の焼き上げ予測時刻T3に3本目の抽出時刻t3を一致させた場合であり、1本目の抽出時刻t1は、次式に示す如くとなる。
【0035】
t1=T3−(P1+P2) …(4)
【0036】
以下同様にして、図5(i)は、最終材であるN本目の焼き上げ予測時刻TN に、N本目の抽出時刻tN を一致させた場合であり、1本目の抽出時刻t1 は、次式に示す如くとなる。
【0037】
t1 =TN −(P1 +P2 +P3 +・・・+PN-1 ) …(5)
【0038】
本発明では、図5の(c)〜(i)に示したような、N個についての1本目の抽出時刻t1 のうちで、最大となる抽出時刻以後で1本目を抽出するようにしたものである。例えば図5では、(f)に示すように、4本目の焼き上げ可能時刻T4 に、4本目の抽出時刻t4 を一致させた場合の、1本目の抽出時刻t1 が最大値となっているため、この時刻以降で1本目を抽出し、2本目からN本目まで、図5(b)に示す抽出ピッチで抽出する。
【0039】
このようにして、全ての鋼片が、それぞれの焼き上げ可能時刻以後にそれぞれ抽出され、粗圧延機の出側であって仕上圧延機の入側において、先行材の後端部に後行材の先端部が追い付き、先行材の後端部と後行材の先端部を接合した後、仕上圧延できる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明においては、熱間連続圧延において、各金属片の焼き上げ完了時刻を考慮して、先頭材の抽出タイミングを決定するようにしたので、先頭材から最終材まで、確実に接合可能な抽出タイミングで、焼き不足なく抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱炉から鋼片を搬送ラインに抽出していく様子を示す平面図
【図2】熱間連続圧延での圧延材搬送の概念図
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示す流れ図
【図4】同じく先尾端通過時間計算方法を示す概念図
【図5】同じく先頭材の抽出時刻決定方法を説明する線図
【符号の説明】
10…鋼片(スラブ)
12…加熱炉
14…搬送ライン
16…粗圧延機
18…バー接合装置
20…仕上圧延機
Pi …抽出ピッチ
Ti …焼き上げ予測時刻
ti …抽出時刻
Claims (2)
- 加熱炉から所定の加熱温度に焼き上げられた金属片を抽出し、粗圧延した後、先行材の後端部と後行材の先端部とを接合し、仕上げ圧延を行う熱間連続圧延において、
各金属片の焼き上げ予測時刻を求め、
各金属片相互を、粗圧延後であって仕上げ圧延前に接合するために要する、加熱炉からの抽出ピッチを求め、
前記焼き上げ予測時刻と抽出ピッチとから、接合する全ての金属片が、それぞれの焼き上げ予測時刻以後に抽出されるように、接合する1本目を抽出し、2本目以後、前記抽出ピッチで抽出することを特徴とする熱間連続圧延のミルペーシング方法。 - 請求項1において、接合する1本目の抽出時刻を、i本目の金属片の焼き上げ時刻をTi 、i本目とi+1本目の間の金属片の抽出ピッチをPi としたとき、iに1〜Nを代入したTi −(0+P1+P2+P3+・・・+Pi-1 )のN個のうちで最大となる時刻以後とすることを特徴とする熱間連続圧延のミルペーシング方法。
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