JP3694871B2 - 目的成分の分離・回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、発酵工業、製薬工業、製糖工業、蛋白質アミノ酸工業、食品工業、染料工業、顔料工業、化学工業等において、広く行われている目的成分である有価物や不純物である塩等を分離・回収する方法に係るものである。
より詳しくは、目的成分を含有している処理原液から、洗浄操作と膜処理とを組み合せて、効率的に目的成分を分離・回収する方法である。
【0002】
【従来の技術】
前述した各種の工業では、例えば発酵工業、蛋白質アミノ酸工業、製薬工業の場合には微生物を培養してアミノ酸の製造、醸造、抗生物質の製造等が行われ、発酵ブロス等から、分離膜、遠心分離機等を用いてアミノ酸等の有価物の含有されている製品液を分離し、さらに製品液からスチームを用いた蒸発操作等の方法により目的物質(有価物)を製造する一方で、分離された微生物菌体が残渣として残される。
また、染料工業、顔料工業、化学工業等において、製造工程で塩析操作が行われており、その後に不純物となる塩分を除去することが必要となる。
分離残渣中に残留する有価物を回収するに際しては、従来の濾過分離等の方法に代わって、膜処理を適用することが多くなっている。前述した塩分の除去に際しても膜処理が利用されている。
【0003】
以下に発酵工業、蛋白質アミノ酸工業を例に説明すると、発酵ブロスから製品液(有価物含有液)を分離した後に、残された分離残渣である濃縮菌体と共に残留している有価物を回収するためには、分離膜を用いて加圧操作により有価物を透過液側に移行させ、先に分離した製品液と併せて、後工程として蒸発操作等により製品(有価物)を取り出すための処理を施すことが行われる。
尚、本明細書では前記した各種産業において発酵液等から分離して取り出すべきアミノ酸等の有用な物質が有価物であり、当該有価物は最終的な製品のみならず、中間体であってもよい。そして、以下の説明では、有価物を含有する液体を製品液と称する場合もある。
【0004】
しかしながら、濃縮菌体は最初に製品液(有価物含有液)を分離する過程で、既に濃縮され、粘度が高くなっているのが普通である。このため、そのまま膜処理を行うことが困難であり、水を加えて液の粘度を低下させ、製品液として取り出す際のフラックス値(リットル/m・hr)を考慮し、好ましい粘度に調整すると共に、菌体と混在している有価物を液中に拡散・希釈させて、膜処理を行うようにする。膜処理を利用して濃縮菌体中に残留している有価物を回収する場合に用いられる装置としては、図5−(1)のバッチ式と図6−(1)のような連続式がある。
【0005】
図図5−(1)のバッチ式では、攪拌機構を備えた容器1内に、有価物が残留している濃縮菌体を処理原液2としてバッチ式にて一定量供給し、これに連続的に洗浄水を添加する。
洗浄工程では、容器内の液の一部をポンプ3を介して容器外に送り出し膜分離装置4に供給し、回収した製品液を透過液(回収製品液)として分離し、膜分離の残りは容器1内へ還流させる。このため回収製品液の分離に伴って容器1内の液量が減少し、液面レベルが低下するので、容器内の液面を図示していない液面レベル計で監視し、一定の水位を維持するように洗浄水が追加・供給される。このようにして濃縮菌体中の有価物は、大部分が液中に移り、膜分離装置により透過液側に取り出される。
尚、図5−(1)の場合は、処理原液はバッチ方式で供給されるが、洗浄水が連続的に供給されるため、厳密な意味ではバッチ式ではなく、いわゆるセミバッチ式の概念に分類されるものである。
【0006】
液中の有価物を精製するために、膜処理設備を多段に設置して処理することは、例えば特公昭59−18088号公報等に記載されているごとく、かなり以前から知られている。
図6−(1)は多段連続式の一例で、攪拌機構を備えた容器1と、容器1内の液の一部を容器外に取り出すと共に液を循環させるためのポンプ3、および膜分離装置4をセットとして、複数セット備え、この間の通液を直列多段に行うものである。
連続式は同一段数においては、セミバッチ式に比べると、製品(有価物)の回収効率が低く、洗浄水の使用量が多くなるため、回収製品液中の有価物濃度が低くなり、その後工程で製品(有価物)製造のための濃縮等にエネルギーを要することになる。
【0007】
一方、染料工業、顔料工業、化学工業等において、製造工程で塩析操作が行われ、その後に不純物となる塩分を除去する場合にも、前述の濃縮菌体中に残留している有価物を回収する場合と原理的には同じことが行われている。すなわち、塩分を含んでいる染料原液等に洗浄水を加えて、塩分を液中に拡散・希釈させた状態で、膜処理を行い塩分を除去している。
濃縮菌体液中に残留している有価物を回収する場合と異なることは、膜処理によって透過液側に移行するものが、有価物ではなく塩等の不純物であって、これらが原則的には廃棄物として処理されることになり、膜処理により濃縮側の残留液となるものが、染料原液を処理する場合には有価物(染料)であることである。
したがって、このような場合に膜処理を行うには、前述の従来の方法と同様に、セミバッチ式と連続式がある。しかしこれまでの方法では、洗浄水の量が多くなるために廃水量が増大し、廃水処理設備が大規模となり、また透過液側に染料等の有価物が移行するために染料等のロスが多く問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発酵ブロス等から製品液(有価物含有液)を分離した後に、残された分離残渣である濃縮菌体のように有価物が混在している処理原液から、有価物を回収する際の回収率を改善し、できるだけ高濃度で有価物を分離・回収する方法、あるいは、染料原液等のように塩析により含まれる塩等の不純物を除去する際の除去率を改善し、有価物に残存する塩等の不純物を少なくして分離・回収する方法を提供するものである。
また、本発明では、使用する水等の洗浄媒液の使用量を低減し、廃水の量を少なくすることが可能な、効率的で経済的な方法を提案するものである。
本発明の別の目的は、目的成分の回収率を良好にすることで経済性の向上を図ると共に、回収製品液における有価物の濃度を高濃度とすることで、その後の製品とするために濃縮等に要するスチーム等のエネルギーの低減を意図したものである。装置としては、連続式のように設置に場所を要するものではなく、コンパクトで簡易なものを狙いとしている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、目的成分を含有している処理原液を用い、該処理原液を貯留した容器内に洗浄液を添加し混合しながら、膜処理によって目的成分を透過液側に移行させるセミバッチシステムであって、別途用意された一または複数の目的成分濃度の異なる洗浄液を、目的成分濃度の高い順番に洗浄に使用し、最終の洗浄には水等の洗浄媒液のみを使用する時間差的な多段向流洗浄操作を行い、前記の洗浄操作に並行して膜処理を行うことを特徴とする目的成分の分離・回収方法である。
さらには、前記の方法において、最も目的成分濃度の高い洗浄液を用いた際の膜処理によって得られる透過液を系外に取り出し、最終の水等の洗浄媒液のみを使用した洗浄の際の膜処理によって残留液を得、途中の膜処理による透過液を洗浄液として利用することを特徴とする処理原液を透過液と残留液とに分離する目的成分の分離・回収方法である。
上記の目的成分の分離・回収方法においては、目的成分である有価物を含有している処理原液から、有価物を含む透過液を系外に取り出すケースと、目的成分と共に有価物を含有している処理原液から、有価物を多く含む残留液を分離するケースとがある。
尚、各種の物質の洗浄等に水を用いることが多く、本発明においても洗浄媒液としては水の利用が望ましい。
【0010】
【作用】
本発明では、前記課題を解決するために製品(有価物)の回収率および塩分等の除去率を考慮して、処理原液をバッチ式に供給し、洗浄液を連続的に供給するセミバッチ式を採用し、洗浄工程に改良を加えたものである。すなわち、セミバッチ式の操作において、これまでのように洗浄の開始時に水等の洗浄媒液を直接・大量に用いるのではなく、目的成分濃度の異なる複数の洗浄液を準備しておき、目的成分濃度の高い順番に洗浄液として用い、最終の洗浄には水等の洗浄媒液のみを使用するようにしたことが特徴である。
これにより、使用する水等の洗浄媒液の使用量を低減することができ、製品(有価物)の回収率または塩分等の除去率を高めることができる。さらには、廃水の発生量を少なくすることが可能である。
尚、本発明では、膜を用いた洗浄操作において、有価物が透過液側に移行する場合と、塩分のような不純物等が透過液側に移行し、濃縮される残留液側に有価物が残る場合があるが、いずれの場合にも原理的には同じ現象として説明できる。
このため、本明細書では、膜分離操作によって透過液側に移行させる成分を目的成分と称している。前者の例としては、発酵ブロスからアミノ酸等の有価物の回収が挙げられ、この場合には透過液側にアミノ酸等を移行させており、処理原液中の目的成分と回収すべき有価物とが一致しているケースである。後者の例となる染料原液等からの脱塩の場合には、膜処理により透過液側に移行させるべき目的成分が塩分であり、残留液中に残る染料が有価物ということになる。
【0011】
本発明の操作について、発酵ブロス等からアミノ酸等の目的成分を回収する場合を例として、図面を基に詳細に説明する。
図1は本発明を実施するための装置の一例で、3段処理の場合の説明図である。
図1の中央部にある容器Aは、洗浄操作を行うための攪拌機構を備えており、別工程で発酵原液から製品液(有価物含有液)を回収された後の濃縮液となっている処理原液と洗浄液をこの容器に供給し、容器内で混合させながら、ポンプP−1で膜処理装置Gに送り、ここで回収されるべき製品液は透過液側に移行する。一方、前記の膜処理によって透過されずに残った分の液は、容器Aへ戻される。
尚、この説明における処理原液は、発酵に使用された菌体の分離残渣と残留している有価物(目的成分)と水からなり、流動性を有しスラリー状を呈することが普通である。
【0012】
具体的な操作手順を、図1によって容器Aが空の状態から説明する。
スタートの際には、弁i,k,lは開、その他の弁は全て閉の状態である。また、ポンプP−1は、膜分離装置の洗浄や故障等の際に停止するだけで、原則的には停止することはなく、連続して稼働させている。これは、一旦ポンプP−1を停止すると、チキソトロピー現象により液の粘度が増大し、膜分離装置につながっているポンプの再起動が困難になるおそれがあるためである。
この際にポンプP−1を連続稼働させるように、容器A内にごく少量の液を残すようにしてもよいし、制御系の操作によって容器A内には液がほとんど残らないように制御することも可能である。
また、処理原液は容器Bに供給され貯留されるが、処理原液の容器Bへの供給は、連続的であっても、間歇的であってもよい。
【0013】
最初に弁nを開として、膜分離装置Gの分離膜にショックを与え破損することがないように弁aをゆっくりと開としながら、弁kをゆっくりと閉として、容器Bに貯留されている処理原液をポンプP−1を経由して供給し、膜分離装置内の残留液や配管内に残っている目的成分濃度が低くほとんど固形物と水分となったホールドアップ分を容器A内に押出すようにする。
この操作により、処理原液の供給に見合う分の液量が、容器Aからオーバーフローして、残留液貯槽に送り込まれ、ホールドアップ分と処理原液とが置換される。前述の置換操作は、処理原液がホールドアップ分によって希釈され、本発明の効果が低下するようになることを防止するために行うものである。
予めホールドアップ液量を実測しておき、それに見合った処理原液量を液面制御またはタイマーで制御して供給することで、ホールドアップ分の置換操作は完了する。
【0014】
次いで、弁kを開、弁nを閉として、処理原液が供給され、容器A内の液量が所定量に達した時点で、弁aは閉となる。
この後、弁lを閉、弁mを開とし、もしも予備濃縮を行う場合には、この状態で洗浄液を加えずに、液を膜分離装置Gへ送って処理し、目的成分を透過液側に移行させる。予備濃縮を行えばそれだけ洗浄液の量を低減できるため、この操作の適用は、全体の効率性を考慮して決定すればよい。
【0015】
次に、弁bを操作して中濃度洗浄液の供給を開始し、容器AからはポンプP−1を介して膜分離装置Gへ液が送られて、膜処理され、高濃度の目的成分を含む透過液すなわち回収製品液が分離され、回収製品液貯槽に送られる。膜処理により透過液が分離されると容器A内の液面が低下するために液面制御弁LCが作動して、透過液量に見合う量の中濃度の洗浄液が容器Cから容器Aに補給される。このように目的成分濃度の高い洗浄液で洗浄することにより、膜処理された透過液側の目的成分濃度を高め、水等の洗浄媒液の使用量が少なくとも、目的成分(有価物)の高い回収率が実現できる。
尚、図1では容器A内の攪拌装置を図示していないが、ポンプの稼働により、処理原液と洗浄液との混合が十分に行うことが可能であれば攪拌装置を省略することは可能であるし、他の攪拌装置を使用してもよいことは当然である。
【0016】
容器Cが空になると、弁b,弁mは閉、弁g,弁cが開となり、容器Dから低濃度の洗浄液が容器Aに供給され、膜分離装置Gを透過した中濃度の透過液は、これを利用するため容器Cに送られ中濃度の洗浄液として溜められる。
【0017】
膜処理された透過液の容量が、供給された低濃度の透過液に相当する量になり、容器Dが空になると、弁c,弁gは閉、弁d,弁fが開となり、最終の洗浄として容器Eの洗浄水が容器Aに供給され、膜分離装置Gを透過した低濃度の透過液が容器Dに送られ低濃度の洗浄液として溜められる。
【0018】
容器Eが空になると、弁d,弁fは閉、弁eは開となり、洗浄水Wmと容器Bに貯留されていた処理原液Vmとの容積比であるR=W/Vで定義されるR値により定められた量の洗浄水が供給される。その後、弁hを開とし、洗浄工程を経て残された菌体等を主とする残留液は、残留液貯槽に送られ、ポンプP−1による空引きを防止するために容器Aに液が少し残るように容器Aの底部のレベルスイッチLSまで液面が下がった時点で弁hを閉じる。尚、前記のR値は任意の値に設定することが可能であり、処理原液の特性、分離・回収する目的成分の物性、処理時間等の操作条件や設計仕様等を考慮して決定すればよい。
また、膜分離装置としては、透過液側のホールドアップ分の極力少ない構造のものを用いることが望ましい。
上記のようにホールドアップ分を処理原液で置換する代わりに、ホールドアップ分と処理原液を一旦混合し、洗浄液を加える前に予備濃縮し、その際の透過液を容器Cに送って洗浄液として利用してもよい。尚、残溜液の排出に先立って、回収率を上げるために必要に応じて後濃縮を行ってもよい。
容器Aがほぼ空になった時点で最初の状態に戻り、以後は同様のサイクルが繰返される。
【0019】
本発明では、上述のように目的成分濃度の高い順に洗浄液が時間差をおいて順次供給されることと、途中の過程の透過液が次工程で洗浄に使用されることを併せ、本発明における特徴であり、これを時間差的な多段向流洗浄操作と表現している。尚、膜処理装置Gを透過した透過液を洗浄液として利用する際に、直接容器に戻すように説明したが、装置の設計上の都合や、後工程の都合により、一旦貯留槽に入れてから、各洗浄液の容器に移すようにしてもよいし、その際に濃度調整を行ってもよいことは当然である。
前述の図1では、洗浄液の目的成分濃度として、中濃度の洗浄液(容器C),低濃度の洗浄液(容器D)および洗浄媒液の水のみ(容器E)の3段処理を説明したが、処理段数を多くするほど理論的には洗浄液を少なくすることができる。しかしながら、処理段数を多くすることは現実には困難な部分があるので、これに代えて、容器内に保持されている透過液に濃度勾配をつけることによって、効率を改善することができる。
例えば、洗浄液を貯留している容器の壁面に沿って液をゆっくりと供給する、鎖に沿わせて液をゆっくりと貯留容器内に供給する、さらには貯留容器内を板により仕切る方法等を適用したり、貯留容器を縦長にすることで実現可能である。
【0020】
以上の説明から理解されるように、本発明で対象とする処理原液とは、発酵工業、製薬工業、製糖工業、蛋白質アミノ酸工業、食品工業等において、目的成分である有価物を、各種の固液分離工程を経て取り出した後に残ったもので、分離残渣等と共に目的成分を含むものや、染料工業、顔料工業、化学工業等において、塩析を経た不純物となる塩分等と共に有価物を含むようなもの、さらにはそれらと類似のものである。本発明を適用することが可能な処理原液は、これまでの説明から当業者に容易に理解されるものである。
処理原液中の目的成分を分離・回収するために使用する膜分離装置としては、公知の各種分離膜、例えば精密濾過膜、限外濾過膜、ルーズRO膜(ナノフイルトレーション膜)等を用いることができる。
【0021】
洗浄媒液は、目的成分および処理原液の特性、物性等によって適宜選択することが望ましく、各種の有機性,無機性の溶液が利用可能であり、水、アルコール、酸、アルカリ液等を例示でき、多くの場合には水の使用が効果的で好ましいものである。また、洗浄媒液には、回収する有価物に悪影響を及ぼすことがなければ、凝集剤、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤等を添加し併用してもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
リジンを生産する能力のある微生物を培養することによりアミノ酸の一種であるリジンを含有する発酵ブロスを得、精密濾過膜処理により発酵ブロスの5倍濃縮を行い、透過液側に菌体を含有しない清澄なリジン含有液(製品液)を取り出した。前記膜処理により濃縮液側に残る発酵ブロスの5倍濃縮液(リジン濃度6.8g/dl)を、本発明の処理原液として用いた。
本実施例では図1の装置を使い、限外濾過膜(日東電工(株)社製、NTU−3250,分画分子量;20,000)を用いて、前記処理原液50リットルよりリジンの回収を行った。尚、本実施例において処理原液中に含有されている目的成分は、有価物のリジンであり、洗浄媒液としては水を使用している。
【0024】
図1の容器A(内容積7リットル)に、容器Bに貯留されていたリジン濃度6.8g/dlの処理原液5リットルを移し、ポンプP−1と容器Aの液面制御弁LCが作動している状態で、容器Cから処理原液5リットルの1.33倍量(R=1.33)に相当するリジン濃度2.35g/dlの中濃度の洗浄液が容器Aに徐々に供給され、容器AからはポンプP−1を介して膜分離装置Gへ混合液が送られて、膜処理される。膜処理により透過液側に取り出された回収製品液は、回収製品液貯槽に送られる。前記の回収製品液におけるリジンの平均濃度は4.81g/dlとなる。
この時には、液面制御弁LCにより容器A内の液量が一定容積に保つように、透過液量と同一容量の中濃度の洗浄液が追加・供給される。(第1段階)
【0025】
膜分離装置Gによって膜処理された透過液量が、供給された中濃度の洗浄液に相当する6.65リットルになり、容器Cが空になると、容器Dからリジン濃度0.88g/dlの低濃度の洗浄液6.65リットルが容器Aに徐々に供給され、膜分離装置Gを透過したリジンの平均濃度2.35g/dlの液は容器Cに送られ溜められる。この液は、次の洗浄操作において、中濃度の洗浄液として利用される。(第2段階)
【0026】
第2段階と同様に膜処理された透過液量が、供給された低濃度の透過液に相当する6.65リットルになり、容器Dが空になると、容器Eより最終の洗浄として6.65リットルの洗浄水が容器Aに徐々に供給され、膜分離装置Gを透過したリジンの平均濃度0.88g/dl濃度の液は容器Dに送られ溜められる。この液は、次の洗浄操作において、低濃度の洗浄液として利用される。(第3段階)
6.65リットルの洗浄水が供給されると、残された菌体等の残留物は、残留物貯槽に送られる。この時の残留物中のリジン濃度は0.42g/dlであった。
尚、全ての段階において、液面コントローラーにより容器A内の液量を定められた一定容積に保つように、膜分離装置の透過液量に相当する予め貯留されていた洗浄液及び洗浄水が追加・供給される。
【0027】
以上のサイクルを各バッチ毎に10回繰返して、処理原液50リットルをR=1.33の条件で処理した。その結果、処理原液からの有価物であるリジンの回収率は93.8%である。
尚、上記の本発明の3段処理で使用された新しい洗浄水は、第3段階で使用された洗浄水の合計66.5リットルであり、中濃度と低濃度の洗浄液は透過液が順次入れ替わりつつ洗浄液として再利用されている。
また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図3に◇印で示した。図3の横軸はR=洗浄水/処理原液で示されるR値で、縦軸はリジンの回収率である。
【0028】
比較例1
比較のために、実施例1と同様の処理原液50リットルを使用して、図5−(1)の装置を用い、1段セミバッチ式によりリジンの回収を行った。尚、膜分離装置には実施例1と同じ限外濾過膜を用いた。
容器1にリジン濃度6.8g/dlの処理原液50リットルを仕込み、R=2の条件で処理した。すなわち、処理原液の2倍量の100リットルの洗浄水を徐々に供給し、2.94g/dlのリジン含有液を回収した。その結果、残された菌体等の残留物中のリジン濃度は0.92g/dlであり、処理原液からのリジン回収率は86.4%であった。
また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図3に□印で示した。
【0029】
さらに比較のために図6−(1)の装置で、膜分離装置には実施例1と同じ限外濾過膜を用いて、上記と同様の処理原液50リットルを使用して、連続3段の向流処理を行いリジン含有液を回収した。この場合には、R=1.5の条件でリジンの回収率は87.7%であった。また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図3に△印で示した。
【0030】
図3は、上記の実施例1,比較例1の結果を示したグラフであり、この図からも明らかなように、代表的な従来法である1段セミバッチ式や、3段連続向流処理に比べ、本発明の方法は高い有価物回収率が得られることが判る。
しかも、本発明の方法による回収液中の有価物濃度が高く、新たに使用する洗浄水を少なくすることができる。
【0031】
本発明では、回収液中の有価物濃度が高いため、これから有価物を取り出すために、後工程でスチーム等を使用して水分を蒸発させ濃縮する場合、従来の方法に比較してスチーム等の使用量を節減でき、その経済的な効果にも大なるものがある。
【0032】
実施例2
デキストラン(Dextran、分子量2百万)と塩化ナトリウム(NaCl)の混合水溶液を処理原液として、有価物であるデキストランを分離・回収し、不純物である塩化ナトリウムの除去を行った。尚、この場合には、膜処理により透過液側に取り出すべき処理原液中の目的成分は、塩化ナトリウムであり、有価物であるデキストランは濃縮液側に回収される。
実施例1と基本的な部分が同様な図2の装置で、実施例1と同じ限外濾過膜を用いて、アミノ酸の回収と同様の操作手順により、処理原液であるデキストラン(2mg/dl)−NaCl(2g/dl)混合水溶液から不純物であるNaClの除去を行った。尚、本実施例は、洗浄媒液として水を使用した。
【0033】
図2の容器A(内容積7リットル)に、容器Bに貯留されていたNaCl濃度2g/dlの処理原液5リットルを移し、ポンプP−1と容器Aの液面制御弁LCが作動している状態で、容器Cから処理原液5リットルの1.33倍量(R=1.33)に相当するNaCl濃度0.69g/dlの中濃度の洗浄液(6.65リットル)が容器Aに徐々に供給され、容器AからはポンプP−1を介して膜分離装置Gへ混合液が送られて、膜処理される。膜処理により透過液側に取り出されたNaCl含有透過液は、廃液槽に送られる。前記のNaCl含有透過液のNaCl平均濃度は1.42g/dlであった。
この時には、液面制御弁LCにより容器A内の液量が一定容積を保つように、透過液量と同一容量の中濃度の洗浄液が追加・供給される。(第1段階)
【0034】
膜分離装置Gによって膜処理された透過液量が、供給された中濃度の洗浄液に相当する6.65リットルになり、容器Cが空になると、容器DからNaCl濃度0.26g/dlの低濃度の洗浄液6.65リットルが容器Aに徐々に供給され、膜分離装置Gを透過したNaClの平均濃度0.69g/dlの液は容器Cに送られ溜められる。この液は、次の洗浄操作において、中濃度の洗浄液として利用される。(第2段階)
【0035】
第2段階と同様に膜処理された透過液量が、供給された低濃度の洗浄液に相当する6.65リットルになり、容器Dが空になると、容器Eより最終の洗浄として6.65リットルの洗浄水のみが容器Aに徐々に供給され、膜分離装置Gを透過したNaClの平均濃度0.26g/dl濃度の液は容器Dに送られ溜められる。この液は、次の洗浄操作において、低濃度の洗浄液として利用される。(第3段階)
6.65リットルの洗浄水が供給されると、デキストランを含む残留物は製品として、回収製品貯槽に送られる。この時の製品中のNaCl濃度は0.12g/dlであった。
尚、全ての段階において、液面コントローラーにより容器A内の液量を定められた一定容積に保つように、膜分離装置の透過液量に相当する予め貯留されていた洗浄液及び洗浄水が追加・供給される。
【0036】
以上のサイクルを各バッチ毎に10回繰返して、処理原液50リットルをR=1.33の条件で処理した。その結果、処理原液(デキストラン−NaCl混合水溶液)からの不純物であるNaClの除去率は93.2%であった。
尚、上記の本発明の3段処理で使用された新しい洗浄水は、第3段階で使用された洗浄水の合計66.5リットルであり、中濃度と低濃度の洗浄液は透過液が順次入れ替わりつつ洗浄液として再利用されている。
また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図4に◇印で示した。図4の横軸はR=洗浄水/処理原液で示されるR値で、縦軸は不純物除去率である。
【0037】
比較例2
比較のために、実施例2と同様の処理原液(デキストラン−NaCl混合水溶液)50リットルを使用して、図5−(2)の装置を用い、1段セミバッチ式によりNaClの除去を行った。尚、膜分離装置には実施例1と同じ限外濾過膜を用いた。
容器1にデキストラン(2mg/dl)−NaCl(2g/dl)混合水溶液の処理原液50リットルを仕込み、R=2の条件で処理した。すなわち、処理原液の2倍量の100リットルの洗浄水を徐々に供給し、不純物濃度の低いデキストラン含有液を回収した。その結果、回収されたデキストラン含有液中のNaCl濃度は0.27g/dlであり、処理原液からの不純物除去率は85.5%であった。
また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図4に□印で示した。
【0038】
さらに比較のために、図6−(2)の装置で、膜分離装置には実施例1と同じ限外濾過膜を用いて、上記と同様の処理原液50リットルを使用して、連続3段の向流処理を行った。R=1.5の条件で不純物であるNaClの除去を行ったところ、不純物除去率は87.2%であった。また、R値(=洗浄水/処理原液)を種々変化させて、同様の膜処理を行った結果をまとめて図4に△印で示した。
【0039】
図4は、上記の実施例2,比較例2の結果を示したグラフであり、この図からも明らかなように、代表的な従来法である1段セミバッチ式や、3段連続向流処理に比べ、本発明の方法は高い不純物除去率が得られることが判る。
しかも、本発明の方法による回収液中の有価物濃度が高く、新たに使用する洗浄水を少なくすることができる点で優れている。
【0040】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、発酵ブロス等から製品液(有価物含有液)を分離した後に、残された分離残渣である濃縮菌体と共に残留している有価物を回収する際の回収率を改善し、高濃度の有価物含有液を回収することができる。あるいは、染料原液等のように含まれる塩等の不純物を除去する際の除去率を改善し、有価物に残存する塩等の不純物を少なくして分離・回収することができる。
【0041】
また、本発明では、使用する水等の洗浄媒液の使用量が低減できると共に、廃水の量を少なくできるため、効率的で経済的な方法である。
本発明では、回収液中の有価物が高濃度であり、その後の工程で濃縮等に要するスチーム等のエネルギーの節減ができ、その効果も大きなものである。最も普通の連続式膜処理に改良が加えられ、最近普及し始めた方式である一段セミバッチ式に比べて、本発明の場合にはスチーム代を半分に低減することが可能である。
さらには、システム全体として有価物回収率が良好になるため、排出される排液中の有機物等を低減することになり、その後の排水処理の負担の軽減に寄与することは、当業者にとって容易に理解できるところである。
装置としても、連続式に比べ設置場所が少なく、コンパクトで簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に用いる装置の一例を示す概略図である。
【図3】R値とリジン回収率との関係を示すグラフである。
【図4】R値と不純物除去率との関係を示すグラフである。
【図5】従来法のセミバッチ式の処理装置の説明図である。
【図6】従来法の多段連続向流式の装置の説明図である。
【符号の説明】
1 容器
2 処理原液
3 ポンプ
4 膜分離装置
A,B,C,D,E 容器
a,b,c,d,e,f,g,h,i,k,l,m,n 弁
P−1,2 ポンプ
G 膜分離装置

Claims (5)

  1. 目的成分を含有している処理原液を用い、該処理原液を貯留した容器内に洗浄液を添加し混合しながら、膜処理によって目的成分を透過液側に移行させるセミバッチシステムであって、別途用意された一または複数の目的成分濃度の異なる洗浄液を、目的成分濃度の高い順番に洗浄に使用し、最終の洗浄には洗浄媒液のみを使用する時間差的な多段向流洗浄操作を行い、前記の洗浄操作に並行して膜処理を行うことを特徴とする目的成分の分離・回収方法。
  2. 最も目的成分濃度の高い洗浄液を用いた際の膜処理によって得られる透過液を系外に取り出し、最終の水等の洗浄媒液のみを使用した洗浄の際の膜処理によって残留液を得、途中の膜処理による透過液を洗浄液として利用することを特徴とする処理原液を透過液と残留液とに分離する請求項1記載の目的成分の分離・回収方法。
  3. 目的成分である有価物を含有している処理原液から、有価物を含む透過液を系外に取り出す請求項1または2記載の目的成分の分離・回収方法。
  4. 目的成分と共に有価物を含有している処理原液から、有価物を含む残留液を分離する請求項1または2記載の目的成分の分離・回収方法。
  5. 洗浄媒液が水である請求項1〜4のいづれかに記載の目的成分の分離・回収方法。
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