JP3694350B2 - 環境殺菌剤組成物の製造方法 - Google Patents

環境殺菌剤組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヨードホールを含有する環境殺菌剤(サニタイザー)組成物の製造方法に関するもので、より詳細には、殺菌性の持続性に優れた環境殺菌剤組成物に関する。本発明は更に、台所用及びトイレタリー用のぬめり防止剤にも関する。
【0002】
【従来の技術】
食品を取り扱う環境、或いは事業所、家庭等の環境においては、有害微生物を防除する必要がある。環境の殺菌には、蒸気、熱水、紫外線照射等が重要な手段となっているが、より手軽に利用できるものとして、環境殺菌剤(サニタイザー、Sanitizer)の使用がある。
【0003】
一般的な環境殺菌剤としては、ハロゲン系、界面活性剤系、アルデヒド系、ビグアナイド系、フェノール系、酸素系等の各種のものが知られているが、ヨードホール(Iodophor)、例えばポビドンヨード(ポリビニルピロリドンとヨウ素(ヨード)とのコンプレックス)も注目されている。
【0004】
米国特許第5043090号明細書には、ヨードホールを含有し、トイレに自動的に清浄化剤を放出する固体ケーキを製造するために、2水石膏、無水石膏、気相法シリカ、ヨードホール、ポビドン、染料及びポリエチレンオキサイドポリマー等を配合したものを打錠成形することが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポビドンヨード等のヨードホールは、殺菌作用を有するがヨウ素に固有の不快臭を有しない複合体であり、水中で徐々にヨウ素を放出するという作用を有するが、ヨードホール自体水に易溶性であり、水との接触で容易に溶出してしまうという欠点を有している。
【0006】
上記従来例に見られるように、ヨードホールを2水石膏等の吸収剤乃至吸着剤に保持させた固体ケーキは、このケーキ中にヨードホールが保持されるため、ある程度のヨードホールの徐放性があるが、元々粉体に液体のヨードホールを吸収させ、これを打錠成形したものであるため、水中で固体ケーキが崩壊したり、或いは固体ケーキ中のヨードホールが先に溶出したりして、未だ徐放性において十分満足しうるものではない。
【0007】
従って、本発明の目的は、ヨードホールが取り扱いの容易な固体の形に固定されており、ヨウ素の徐放性と殺菌作用の持続性とに優れている環境殺菌剤組成物、特に台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤の製造方法を提供するにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ヨードホールが石膏中に固定されており、石膏の溶出とヨードホールの溶出とがバランスして行われ、その結果として、ヨウ素の徐放性と抗菌作用の持続性とが達成される環境殺菌剤組成物、特に台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤の製造方法を提供するにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、固体の環境殺菌剤組成物の製造が簡単な手段でしかも少ない工程数で生産性よく製造できる方法を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ヨードホールとα型半水石膏とを、水の存在下に混合し、この混合物を成形し、硬化させることを特徴とする固体環境殺菌剤組成物の製造方法が提供される。
【0011】
ヨードホールとしては、それ自体公知の任意のものを使用できるが、ポビドンヨードが好適である。また、ヨードホールは5乃至15%、特に9乃至12%の有効ヨウ素量を有するものであることが、殺菌性の点で好ましい。
【0012】
ヨードホールとα型半水石膏とを固形分基準で2:98乃至50:50、特に5:95乃至50:50の重量比で混合することが、成形体の強度と抗菌性及び持続性との組み合わせの点で好ましい。
【0013】
混合物の成形に際し、有機乃至無機の結合剤或いは賦形剤を添加すると、固体成形体の強度とヨウ素の徐放性とを向上させることができる。
【0014】
本発明によればまた、上記の方法で得られる固体の成形硬化物に、水溶性乃至アルコール可溶性のヨウ化物とヨウ素との溶液を含浸させることができ、これにより抗菌作用をより強化することもできる。
【0015】
本発明によれば更に、ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合し、この混合物を成形し、硬化させて成る固体の環境殺菌剤組成物から成ることを特徴とする台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明では、ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合し、この混合物を成形し、硬化させることが特徴である。
【0017】
石膏には、結晶水の状態によって、2水石膏、無水石膏、半水石膏(焼石膏)があるが、本発明では、これらの石膏の内でも、α型半水石膏を選択し、ヨードホールと組み合わせる。
【0018】
即ち、半水石膏には、大別してα型のものと、β型のものとがあるが、α型半水石膏はβ型半水石膏に比して少ない混水量で硬化しうることが大きな特徴であり、組織が緻密でしかも強度の大きい固体硬化物を与える。
【0019】
後述する例に示すとおり、本発明による固体の環境殺菌剤組成物では、水との接触を続けた場合、その外形が最初の剤形とほぼ相似形を保ちつつ寸法のみが小さくやせる傾向を示し、ヨードホールが石膏中に有効に固定されていると共に、石膏の溶出とヨードホールの溶出とがバランスして行われ、その結果として、ヨウ素の徐放性と殺菌作用の持続性とが達成される。また、水中での強度も優れていて、崩壊傾向も全く示さない。
従って、本発明の環境殺菌剤組成物には、実用上の好適な特性として、水中で崩壊することがなく、ヨードホールの溶出が10日以上、特に好ましくは20日以上持続されることが望まれる。
【0020】
半水石膏として、β型のものを使用した場合、ヨードホールとの硬化成形体は形成できても、水中での強度が低く、崩壊傾向があると共に、崩壊が生じない場合にも、石膏硬化体中のヨードホールのみが水中に優先的に溶出する傾向がある(後述する比較例2参照)。
【0021】
本発明によれば、ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合するので、両者の均質且つ均一な混合が可能となるばかりではなく、混合媒体として使用した水分を利用してα型半水石膏の硬化が可能となるので、極めて均質且つ緻密な硬化成形体を製造でき、しかも固体の環境殺菌剤組成物の製造が簡単な手段でしかも少ない工程数で生産性よく製造できるという利点がある。
また、α型半水石膏では、硬化時にわずかの体積膨張が生じるので、成形性もよいという利点を与える。
また、本発明の環境殺菌剤組成物は、殺菌剤として、金属を腐食しにくいヨードホールを使用しているので、例えば、金属製流し台などの金属腐食が懸念される台所各所にも長期間にわたり設置することが可能であり、実用的であるという利点も備えている。
【0022】
[ヨードホール]
本発明において、ヨードホールとしては、それ自体公知の任意のヨードホール製剤が使用され、このヨードホールは殺菌作用を有するがヨウ素に固有の不快臭を有しない複合体から成っている。この複合体では、中性の重合体から成る担体にヨウ素がコンプレックスの形で組み込まれている。
【0023】
一例として、ポビドンヨードの場合、下記式(1)
【化1】
Figure 0003694350
の構造式(式中、nは正の整数である)に示すとおり、ポリビニルピロリドンと分子ヨウ素とがコンプレックスを形成している。
【0024】
ヨードホールの担体重合体としては、ポリビニルピロリドンの他に、ポリエーテルグリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリオキシアルキレン、カデキソマー、ポロクサマー、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリメタアクリル酸等があげれる。
【0025】
ヨードホール製剤の具体的なものとして、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドンヨード錯体)、ヨウ素・アルキルポリエーテルアルコール錯体(G.S.I.)、ポリエトキシポリプロポキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体(Iocline)、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加植物油・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪酸・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪アルコール・ヨウ素錯体、脂肪酸アミド・ヨウ素錯体、第4級有機アンモニウム・ヨウ素錯体等が挙げられるが、ポビドンヨードが好適である。
【0026】
ヨードホールが5乃至15%、特に9乃至12%の有効ヨウ素量を有するものが、殺菌性やその持続性の点で有利であり、有効ヨウ素量が上記範囲よりも少ないものでは、抗菌性が不十分であり、一方上記範囲よりも多いものでは安定性が低かったり、臭いの点で不満足である。
有効ヨウ素量が上記範囲内のヨードホールを使用すれば、得られる殺菌剤組成物中のヨードホールと石膏の量比を好適な範囲に維持しつつ、該組成物の有効ヨウ素量を実用上有効な範囲内に維持することができる。
【0027】
ヨードホールとしては、液体で入手しうるものと、粉末で入手しうるものとがあるが、本発明ではどちらも使用可能であるが、粉末のものが水分量を調節しうる点で有利である。
【0028】
[石膏]
本発明では、α型半水石膏を使用する。α型半水石膏としては、それ自体市販されているα型半水石膏の内任意のものを使用できるが、粒径は、特に制限はないが、一般に5乃至200μmのものが使用される。粒径の小さいものは混水量が多くなる可能性があり、一方粒径の大きいものは成形硬化体の強度が低下する傾向があるので、用途により、上記の粒径内で適当な粒度のものを用いるのがよい。
【0029】
α型半水石膏を硬化させるに必要な水分量は、理論上α型半水石膏1分子当たり1.5分子の水に相当するものであるが、α型半水石膏100重量部当たりの水分量(混水量)は20乃至100重量部、特に35乃至60重量部の範囲が適当である。混水量が上記範囲よりも低いと硬化の程度が不十分であり、一方上記範囲よりも多いと硬化成形体の緻密さが失われる傾向がある。
【0030】
[組成物]
本発明では、ヨードホールとα型半水石膏とを好ましくは固形分基準で2:98乃至50:50、特に好ましくは5:95乃至50:50の重量比で、水の存在下に混合するとよい。
【0031】
混合するα型半水石膏の量が上記範囲よりも低いと、十分な強度の硬化成形体が得られず、また満足すべきヨウ素の徐放性も得られない。例えば、石膏とヨードホール(ポビドンヨード)との混合物100重量%に対して、ヨードホール(ポビドンヨード)を約60重量%以上混合した場合には、十分な強度の硬化成形体を得ることが困難となり易い。
一方、α型半水石膏の量が上記範囲よりも多いと十分なヨウ素の濃度が得られず、満足すべき殺菌作用やその持続性が得られない。
【0032】
本発明において、α型半水石膏を硬化させるための水は、ヨードホールやα型半水石膏とは別の形で混合系に供給することができ、またヨードホールの水溶液或いはα型半水石膏の水性スラリーの形で供給することができる。
【0033】
この組成物には、種々の添加剤や助剤を配合することができる。
例えば、硬化成形体に強度や緻密性を付与するために、種々の結合剤や賦形剤を配合することができる。これらの例として、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、CMC、メチルセルロース、PVA,ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、リグニン、水ガラス、ベントナイト、ピッチ、アスファルト、ホウ酸、マニトール、珪酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
α型半水石膏の硬化を遅延させる薬剤として、布海苔、つのまた(すぎのり科の紅藻類)、ゼラチン、ペプトン、でんぷん等の有機物や、硼砂、燐酸ソーダ等の無機物を配合することができる。硬化遅延剤としては、酒石酸アルカリ、クエン酸アルカリ、コハク酸アルカリ等も有用である。
【0035】
α型半水石膏の硬化は迅速であり、一般に必要でないが、混合系に硬化を遅延させる物質が含有されている場合には、硬化促進剤を含有させることもできる。また必要に応じてゼオライト、酸性白土、ベントナイト、フィロケイ酸マグネシウム、フィロケイ酸亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ハイドロタルサイト、セピオライト等をα型半水石膏100部に対して0.1〜50重量部添加することもできる。硬化促進剤としては、硫酸塩が適当である。
【0036】
[成形硬化]
ヨードホールとα型半水石膏との成形硬化は、任意の手段で行うことができる。例えば、この組成物を混練した後、押出成形し、適当な寸法で切断することにより、成形体を得ることができる。また、組成物を型内に充填することにより、鋳造成形を行うことができる。更に、組成物を打錠成形することもできる。
【0037】
成形体の形状は、球状、タブレット状、円柱状、角柱状、不定形状等の任意の形状であってよく、成形体の寸法は、最大方向の寸法で5乃至200mm、特に15乃至50mmとなるようなものであってよい。
【0038】
石膏成形体の硬化は、室温で行うことができるが、必要により冷却したり、或いは加温したりすることもできる。硬化時間は、特に制限はないが、一般に5分乃至30分が適当である。
【0039】
得られた成形硬化体には、所望により種々の後処理を行うことができる。例えば、殺菌作用を増強するために、上記の方法で得られる固体の成形硬化物に、水溶性乃至アルコール可溶性のヨウ化物、ヨウ化カリとヨウ素との溶液を含浸させることができる。この方法によれば、ヨウ素がヨウ化カリ中によく溶け込むので、ヨウ素を石膏硬化成形体中に有効に固定することができる。含浸量は、ヨウ素として、0.1乃至20重量%が適当である。
【0040】
本発明による環境殺菌剤は、種々の微生物に対して有用な殺菌作用を呈する。実験的に殺菌作用が確認されている微生物として次のものが挙げられる。
エシェリヒア・コリ(Escherichia coli 大腸菌)、
シュウドモナス・エルギノウザ(Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌)、
シゲラ・フレキシネリ(Shigella flexneri 赤痢菌)、
サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis サルモネラ菌)、
クレブシエラ・オキシトウカ(Klebsiella oxytoca クレブシエラ菌)、
ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus 腸炎ビブリオ)、
カンピロバクター・スピーシズ(Campylobacter sp. カンピロバクター菌)、
スタフィロコッカス・オウレウス(Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌)、
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus )、
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis 腸球菌)、
カンジダ・アルピカンス(Candida albicans カンジダ菌)。
【0041】
本発明の環境殺菌剤は、食品を取り扱う環境、或いは事業所、家庭等の環境においては、有害微生物を防除する目的に使用できる。例えば、台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤として特に有用であり、この場合、ぬめりの発生し、かつそれを防止すべき部位に、ヨードホール−石膏硬化成形体を置くことにより、所望の防止効果が得られる。
【0042】
【実施例】
以下の各例における測定は、次のとおり行った。
【0043】
有効ヨウ素及びヨウ化物イオン量
ヨウ素化合物の消毒、殺菌効果はヨウ素(I2)自体であり、従って当該供試体の全ヨウ素量のうち、イオン性ヨウ素量とそれ以外の有効ヨウ素量(ヨウ素分子自体)とを下記の方法で評価する必要がある。
1.有効ヨウ素量は、2gの試料粉末を水100mlに懸濁させ、0.005Nチオ硫酸ナトリウム液でのヨウ素−デンプン反応滴定で有効ヨウ素%(Ia)を定量する。
2.ヨウ化物イオンは、2gの試料粉末を水100mlに懸濁させ、ヨウ素の色が消失するまで亜硫酸水素ナトリウム液を加え、ついで0.1N硝酸銀液10mlと硝酸4mlとを加え、適量の硝酸銀を用いて0.05Nチオシアン酸アンモニウム液で滴定(指示薬:硫酸第二鉄アンモニウム)して全ヨウ素量%(I)を求め、
(I)−(Ia)
の差がヨウ化物イオン(%)量である。
【0044】
殺菌活性測定
検定用寒天培地としてはペプトン 1g/l、KH2PO4 3.0g/l、K2HPO4 0.45g/l、NaCl 4g/l、agar 15g/lをpH6に調合し、全面に菌を塗抹後、その中心に環境殺菌剤組成物を置き一定条件下で培養する。
Figure 0003694350
緑膿菌は、シュウドモナス・エルギノウザIFM3011を使用する。ぬめり原因菌は、流し台に付着したぬめり塊を採取しテフロンホモジュナイザーで均一にホモジュナイズした物を使用する。
培養後、菌の増殖の阻止帯幅(mm)を測定する。(図1参照)
【0045】
金属腐食試験
気密容器(1000ml)に環境殺菌剤組成物約20gを入れ、これに被験金属であるステンレス製スプーン、鉄製釘、銅製びょうと水50mlを入れ、室温下(約20℃)で腐食性を観察する。
評価基準を下記に示す。
0 全く錆が発生しない
1 わずかな錆が発生する
2 一部分錆が発生する
3 大半の部分に錆が発生する
【0046】
ヨードホールの溶出度測定
ビーカ(50cc)に環境殺菌剤組成物約20gを入れ水道水(約20℃)を500ml/分の速度で注ぎ続ける、一定期間後、環境殺菌剤組成物を半分に割りその断面の中心のほとんどが白色又は淡黄色になるまでの日数を測定し溶出度とした。
【0047】
(実施例1)
イオン交換水7.6gを30mlのプラスチック製容器に取り、それにポビドンヨード(日宝化学製)3gを溶かしポビドンヨード溶液を得た。このポビドンヨード溶液とα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)17gを充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ15mm、重さ21.3gの円盤状の環境殺菌剤組成物を得た。
上記環境殺菌剤組成物の有効ヨウ素量を表1に示した。
殺菌活性を緑膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表2に示した。
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0048】
(実施例2)
イオン交換水6.3gを30mlのプラスチック性容器に取り、それにポビドンヨード(日宝化学製)6gを溶かしポビドンヨード溶液を得た。このポビドンヨード溶液とα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)14gを充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ14mm、重さ20.8gの円盤状の環境殺菌剤組成物を得た。
上記抗菌性組成物の有効ヨウ素量を表1に示した。
殺菌活性を緑膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表2に示した。
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0049】
(実施例3)
ポビドンヨード(日宝化学製)10gとα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)10gを30mlのプラスチック性容器に取り、充分に混合する。この混合物にイオン交換水4.5gを加え充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ13mm、重さ20.1gの円盤状の環境殺菌剤組成物を得た。
上記抗菌性組成物の有効ヨウ素量を表1に示した。
抗菌活性を緑膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表2に示した。
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0050】
(実施例4)
イオン交換水8.8gを30mlのプラスチック性容器に取り、それにポビドンヨード(日宝化学製)0.5gを溶かしポビドンヨード溶液を得た。このポビドンヨード溶液とα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)19.5gを充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ15mm、重さ21.9gの円盤状の環境殺菌剤組成物を得た。
上記環境殺菌剤組成物の有効ヨウ素量を表1に示した。
殺菌活性を緑膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表2に示した
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0051】
(実施例5)
イオン交換水8.9gを30mlのプラスチック性容器に取り、それにポビドンヨード(日宝化学製)0.2gを溶かしポビドンヨード溶液を得た。このポビドンヨード溶液とα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)19.8gを充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ15mm、重さ22.6gの円盤状の環境殺菌剤組成物を得た。
上記抗菌性組成物の有効ヨウ素量を表1に示した。
抗菌活性を緑膿菌とぬめり原因菌を用いて調べた結果を表2に示した
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0052】
(比較例1)
トリクロルイソシアヌル酸(試薬1級)14gとα型半水石膏(吉野石膏製:ハイストーンB)4g、及びバインダーとしてホウ酸2gを充分に混合し、内径25mm、高さ22mmの塩化ビニル製パイプに詰め込む、それに油圧プレス機を用いて5トンの圧力を加え、直径3cm、高さ14mmの成型物を得た。
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0053】
(比較例2)
イオン交換水13gを30mlのプラスチック性容器に取り、それにポビドンヨード(日宝化学製)3gを溶かしポビドンヨード溶液を得た。このポビドンヨード溶液とβ型半水石膏(吉野石膏製:A級)17gを充分に混合し、内径30mmの塩化ビニル製パイプの型枠に流し込んだ。30分後脱型し、室温にて3時間放置後60℃の恒温乾燥機にて10時間乾燥し、直径30mm、高さ15mm、重さ22.1gの円盤状の抗菌性組成物を得た。
上記環境殺菌剤組成物の有効ヨウ素量とポビドンヨード溶出量を表1に示した。
金属に対する腐食性について調べた結果を表3に示した。
【0054】
【表1】
Figure 0003694350
【0055】
【表2】
Figure 0003694350
【0056】
【表3】
Figure 0003694350
【0057】
表1から、α型半水石膏を使用する本発明の環境殺菌剤組成物(実施例1乃至5)では、ヨードホール溶出度がいずれも10日以上であるのに対して、β型半水石膏を使用する環境殺菌剤組成物(比較例2)では、ヨードホール溶出度が7日程度であることが理解できる。即ち、α型半水石膏を使用する本発明の組成物が、β型半水石膏を使用する比較例2の組成物に比べてヨードホール溶出度の点で実用的であることが理解できる。
表2から、本発明の環境殺菌剤組成物は、良好な殺菌活性を有することが理解できる。
表3から、金属腐食試験において、殺菌剤成分としてヨードホールを使用した場合は、試料に全く錆が発生しないか、試料を鉄として5日以上試験した特定の場合にのみ試料にわずかな錆が発生した程度という良好な結果を与えたのに対して、殺菌剤成分としてトリクロルイソシアヌル酸を使用した場合は鉄、銅及びステンレスのいずれの場合も錆の発生を避けることができなかった。即ち、殺菌剤としてヨードホールを使用する本発明の組成物は、金属腐食性の点でも優れている。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、ヨードホールが取り扱いの容易な固体の形に固定されており、ヨウ素の徐放性と殺菌作用の持続性とに優れている環境殺菌剤組成物が提供される。この組成物では、ヨードホールが石膏中に固定されており、石膏の溶出とヨードホールの溶出とがバランスして行われるので、ヨウ素の徐放性と抗菌作用の持続性とが達成される。従って、この組成物は、特に台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤として有用である。
また、この環境殺菌剤組成物は、殺菌剤として金属を腐食しにくいヨードホールを使用しているので、例えば、金属製流し台などの金属腐食が懸念される台所各所にも長期間にわたり設置することが可能であり、実用性に優れている。
本発明の環境殺菌剤組成物は、ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合し、この混合物を硬化させて固体に成形するという簡単な手段でしかも少ない工程数で製造できる。従って、この組成物及びその製造方法は、生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】菌の増殖の阻止帯幅を説明する為の図である。
【符号の説明】
1 シャーレ
2:環境殺菌剤組成物
3:菌の増殖の阻止帯幅(mm)
4:菌のコロニー

Claims (7)

  1. ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合し、この混合物を成形し、硬化させることを特徴とする固体環境殺菌剤組成物の製造方法。
  2. ヨードホールがポビドンヨードである請求項1記載の製造方法。
  3. ヨードホールが5乃至15%の有効ヨウ素量を有するものである請求項1または2記載の製造方法。
  4. ヨードホールとα型半水石膏とを固形分基準で2:98乃至50:50の重量比で混合する請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
  5. 混合物の成形に際し、有機乃至無機の結合剤或いは賦形剤を添加する請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の方法で得られる固体の成形硬化物に、水溶性乃至アルコール可溶性のヨウ化物とヨウ素との溶液を含浸させることを特徴とする環境殺菌剤組成物の製造方法。
  7. ヨードホールとα型半水石膏とを水の存在下に混合し、この混合物を成形し、硬化させて成る固体の環境殺菌剤組成物から成ることを特徴とする台所用或いはトイレタリー用ぬめり防止剤。
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