JP3691546B2 - 電解コンデンサ駆動用電解液 - Google Patents

電解コンデンサ駆動用電解液 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電解コンデンサの低インピーダンス化を実現するために、溶媒としてγ−ブチロラクトンを主体としたものを用い、これに溶解させる溶質及び添加物に改良を施した電解コンデンサ駆動用電解液に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種電気・電子機器の重要な構成要素の一つであるアルミニウム電解コンデンサは、一般に、表面に酸化被膜を生成したアルミニウムフィルムを陽極とし、この酸化皮膜を誘電体として、集電陰極との間に介在させたセパレータにより駆動用電解液を保持させることにより形成されている。この駆動用電解液は、誘電体に直接接して実質的な陰極として作用するため、電解コンデンサの特性は、使用される駆動用電解液の性質に大きく依存することとなる。このような電解コンデンサの駆動用電解液の溶媒として、旧来から用いられてきたものがエチレングリコールを主体とするものである。そして、このエチレングリコールを主体とする溶媒に溶解される溶質としては、有機カルボン酸及びホウ酸あるいはその塩が用いられてきた。
【0003】
ところで、近年のスイッチングレギュレータの高周波化に伴い、電解コンデンサの低インピーダンス化が要請されている。しかし、上記のような組成の駆動用電解液では十分な低抵抗化を図ることができないため、このような電解液を用いた電解コンデンサは低インピーダンス化の要請に沿わないこととなる。
【0004】
そこで、最近では、電解コンデンサの低インピーダンスを実現するための低抵抗の電解液として、γ−ブチロラクトンを主体とする溶媒を用いたものが開発されている。そして、この溶媒に溶解させる溶質としては、フタル酸、マレイン酸又はマロン酸などの有機カルボン酸あるいはその塩が使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような組成による電解コンデンサ駆動用電解液には、以下のような問題点があった。すなわち、γ−ブチロラクトンを溶媒として用いても、溶質としてフタル酸の塩を用いた場合には、生成される電解液の比抵抗の値が大きくなる。したがって、このような電解液を電解コンデンサに適用した場合には、所望の低抵抗値を得ることが困難となる。
【0006】
また、溶質としてマレイン酸やマロン酸の塩を用いた場合には、高温での安定性に問題がある。特に、負荷電圧が上昇し、誘電体の物性変化が進行して誘電率の変化が生じる結果、電解コンデンサの電気化学的状態が動揺する現象をシンチレーションといい、このようなシンチレーションが認められる電圧をシンチレーション電圧(以下、火花発生電圧という)というが、マレイン酸やマロン酸の塩を溶質として用いた場合、フタル酸の塩を用いた場合と比べても、電解液の火花発生電圧が低い。火花発生電圧は、それが高いほど電解コンデンサの耐電圧性が大きいことを示すから、上記のような溶質はそれが用いられる電解コンデンサの信頼性に影響を与える可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、その主たる目的は、比抵抗の値が十分に小さく、低インピーダンスの電解コンデンサを構成することができる電解コンデンサ駆動用電解液を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、高温でも安定で火花発生電圧が高く、信頼性の高い電解コンデンサを構成できる電解コンデンサ駆動用電解液を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、γ−ブチロラクトンを主体とする溶媒を用いた電解コンデンサ駆動用電解液において、前記溶媒に溶解された溶質が、ピリジンジカルボン酸と、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウムより選択される3級アミン若しくは4級アンモニウムよりなる塩の1種又は2種以上の塩を主体としていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1の電解コンデンサ駆動用電解液において、パラニトロフェノール、パラニトロ安息香酸及びメタニトロアセトフェノンのうちの1種又は2種以上のニトロ化合物が添加されていることを特徴とする。
【0011】
【作用】
以上のような構成を有する電解コンデンサ駆動用電解液の作用は以下の通りである。すなわち、請求項1記載の発明では、電解液を組成する溶媒がγ−ブチロラクトンを主体とし、溶質がピリジンジカルボン酸の塩のトリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウムのうちの1種又は2種以上を主体としているので、電解液の比抵抗が低くなる。また、かかる組成にすることによって、高温でも電解液が安定し、火花発生電圧が高くなる。
【0014】
請求項3記載の発明では、上記電解液に、パラニトロフェノール、パラニトロ安息香酸及びメタニトロアセトフェノンのうちの1種又は2種以上のニトロ化合物が添加されているので、ハロゲン化炭化水素系洗浄剤による腐食や漏れ電流による水素ガスの発生が抑制される。
【0015】
【実施例】
以下、本発明による電解コンデンサ駆動用電解液の実施例について説明する。なお、ここでは、それぞれ組成種類の異なる電解コンデンサ駆動用電解液として実施例1〜6を作成した。また、これらの実施例との比較例のために、従来技術による電解コンデンサ駆動用電解液として、それぞれ組成種類の異なる比較例1〜3を作製した。
【0016】
(1)組成、比抵抗及び火花発生電圧
まず、実施例1〜6及び比較例1〜3を構成する組成物質及びその割合を以下の表1に示す。また、これらの組成を有する実施例1〜6及び比較例1〜3の電解コンデンサ駆動用電解液の25℃での比抵抗及び火花発生電圧を示す。
【0017】
【表1】
【0018】
以上の実施例1〜6と比較例1〜3の比抵抗及び火花発生電圧とを比較した表1から明らかなように、本発明では、γ−ブチロラクトンを主体とする溶媒に、2,3-ピリジンジカルボン酸テトラメチルアンモニウム、3,4-ピリジンジカルボン酸テトラエチルアンモニウム、2,4-ピリジンジカルボン酸トリエチルアミン、2,5-ピリジンジカルボン酸ジメチルエチルアミン、3,5-ピリジンジカルボン酸ジエチルメチルアミン又は2,6-ピリジンジカルボン酸トリメチルアミンを溶解することにより、比抵抗を低下させ、且つ火花発生電圧を30〜80V上昇させることができる。
【0019】
(2)初期値、高温負荷試験
次に、実施例1〜6及び比較例1〜3の電解コンデンサ駆動用電解液を使用して製作したアルミニウム電解コンデンサ(63V−220μF)各20個の初期段階における容量、tanδ並びに漏れ電流を示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜3の駆動用電解液を使用して製作したアルミニウム電解コンデンサ(63V−220μF)各20個をハロゲン化炭化水素(1,1,1−トリクロロエタン)で、5分間蒸気洗浄した後に高温負荷試験(105℃ 1000時間)を行った結果の容量変化率、tanδ、漏れ電流、外観、腐食等の特性を示す。
【0020】
【表2】
【0021】
表2により明らかなように、本実施例による電解液を使用したアルミニウム電解コンデンサは、従来の電解コンデンサと比較して、初期段階で比較例2のように63Vの製品でもエージング中に防爆弁が動作せず、また、火花発生電圧が高いために漏れ電流、tanδも小さい。
【0022】
さらに、表2から明らかなように、高温負荷試験において、本発明の駆動用電解液を用いた実施例1〜6のものは、従来の駆動用電解液を用いた比較例1〜3と比較して、容量変化率、tanδ変化、漏れ電流変化が大幅に少ない。また、比較例3のものが弁ふくれとなったのに対して、実施例のものすべて弁ふくれ現象は皆無であった。
【0023】
そして、通常の電解コンデンサは、プリント基板上へハンダ付けされた後、ハンダフラックスの除去のためにハロゲン化炭化水素によって洗浄される。この時、電解コンデンサ内に侵入したハロゲン化炭化水素が熱等によって分解して塩素イオンを遊離すると、電極箔のアルミニウムを腐食させる。しかし、本実施例においては、このハロゲン化炭化水素の分解を抑制するニトロ化合物、すなわちメタニトロアセトフェノン、パラニトロ安息香酸又はパラニトロフェノールが添加されているので、ハロゲン化炭化水素洗浄による腐食も認められなかった。
【0024】
(3)実施例の効果以上のような本実施例の効果は以下の通りである。すなわち、電解液の組成を上記実施例のようにすることにより、従来技術よりも比抵抗が低下する。したがって、上記実施例を適用した電解コンデンサは、十分な低抵抗を実現できる。
【0025】
また、上記実施例は、従来技術よりも火花発生電圧を20〜40V上昇させることができるため、上記実施例を適用した電解コンデンサは、漏れ電流、tanδも小さい。さらに、かかる電解コンデンサは、105℃、1000時間の高温負荷試験後において、容量変化率、tanδ変化、漏れ電流変化が大幅に少なく、弁ふくれ現象は皆無であり、ハロゲン化炭化水素洗浄による腐食も認められない。したがって、上記実施例を適用した電解コンデンサは、十分な信頼性を備えることができる。
【0026】
なお、以上のような実施例における各組成物質の組み合わせ、重量%は適宜変更可能である。例えば、本発明の効果を得るために適した重量%の数値は、以下の通りである。すなわち、ピリジンジカルボン酸又はその塩の中の1種若しくは2種以上の溶質の濃度は10重量%から25重量%が望ましい。これは、10重量%未満では比抵抗の低減に効果がなく25重量%を越えると溶質が析出するからである。また、ニトロ化合物の濃度は、0.5重量%未満では効果がなく3重量%を越えると比抵抗が上昇するため0.5重量%から3重量%が望ましい。
【0027】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、比抵抗の値が十分に小さく、低抵抗の電解コンデンサを構成することが可能な電解コンデンサ駆動用電解液を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、高温でも安定で火花発生電圧が高く、信頼性の高い電解コンデンサを構成可能な電解コンデンサ駆動用電解液を提供することができる。

Claims (2)

  1. γ−ブチロラクトンを主体とする溶媒を用いた電解コンデンサ駆動用電解液において、前記溶媒に溶解された溶質が、ピリジンジカルボン酸と、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウムから選択される3級アミン若しくは4級アンモニウムとの塩を主体とすることを特徴とする電解コンデンサ駆動用電解液。
  2. パラニトロフェノール、パラニトロ安息香酸及びメタニトロアセトフェノンのうちの1種又は2種以上のニトロ化合物が添加されていることを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
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