JP3688917B2 - 冷凍麺の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α化処理が施された、うどん、そば、中華麺、パスタなどの麺線を冷凍したものであり、解凍、調理して食する冷凍麺の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷凍麺を適当な一定の形状に成形することは、生産ラインにより連続的に冷凍麺を製造する生産段階において、冷凍麺のコンベアによる移動、冷凍麺を包装する工程、箱詰する工程等を円滑に進める上で不可欠である。また、流通、消費段階においても、取り扱い上好ましく又見た目にも良く、望ましいことである。かかる観点から、冷凍麺は一般的に一定の形状に成形されている。
【0003】
このように一定の形状を有する冷凍麺の製造方法としては、従来、
(イ)麺線(生)を茹で処理もしくは蒸し処理等によりα化するα化工程、
(ロ)α化した麺線を適当な形状に成形された型枠に充填する充填工程、
(ハ)型枠に充填された状態で麺線を冷凍する冷凍工程および
(ニ)凍結して型枠の内部形状に成形された麺線群(以下、麺塊という)を型枠から取り外す離型工程
などの主工程を経ることによって所定形状の麺塊、つまり冷凍麺を製造するものである。
【0004】
しかし、上記従来の製造方法によれば、α化工程で茹で処理、蒸し処理等が施された麺線をそのまま、または水洗して、充填工程で型枠に充填するため、型枠内の麺線表面にはα化工程の茹で処理、蒸し処理等に用いられる水が付着している。このように麺線表面に水が介在する状態のまま型枠に充填すると、麺線と型枠との接触面には水の層が形成される。この状態で冷凍工程を経ると、水分が凍結し、麺線と型枠間に氷層が形成される。かかる氷層によって麺塊が型枠に強く付着するため、離型工程において、麺塊の取り外しが容易にはできないという不都合がある。
【0005】
この不都合を解決する手段としては、例えば
(a)離型工程前に、麺塊の入った型枠の底板に繰り返し衝撃力を付与する工程を設け、この衝撃力によって麺塊と型枠とを剥離することで、麺塊を型枠から容易に取り出す方法(特開平3−232469号公報参照)
(b)麺塊の入った型枠を反転させた後、シャワー装置によって型枠に上方から水を浴びせ、麺塊と型枠とを付着させている氷層を解凍することで、麺塊の取り外しを容易にする方法(特開平3−272659号公報参照)
などが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
冷凍麺の製造方法における、麺塊を型枠から容易に取り外す上述の方法には以下に示す不都合がある。すなわち、
(1)上記(a)および(b)に記載の方法によれば、確かに麺塊を型枠から取り外すことは可能であるが、(a)に記載の方法には型枠に衝撃を付与する装置が必要であり、(b)に記載の方法には型枠に水を浴びせるシャワー装置が必要である。つまり、いずれの方法も、麺塊を型枠から取り外すための特別な装置を必要とする。そのため、生産ラインが複雑化、大規模化してしまう等の不都合がある。
【0007】
(2)また、上記(a)に記載の方法による場合は、型枠に付与した衝撃によって麺塊が壊れてしまい、商品の歩留まりが低下するのみならず、破損して発生した麺屑により製造ラインが汚染される等の不都合が生じる。
【0008】
(3)さらに、上記(b)に記載の方法による場合は、型枠に浴びせた水の後処理等が必要となるので、既存の製造ラインに簡単に応用できない等の不都合がある。
【0009】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、蒸し処理若しくは茹で処理等によりα化した麺線を型枠に充填し、該麺線を型枠に充填した状態で冷凍し、その後、凍結した麺塊を型枠から取り外すことにより一定形状を有する冷凍麺を製造する冷凍麺の製造方法において、衝撃付与装置、シャワー装置などの特別な装置等を設けなくとも、凍結した麺塊を型枠から取り外すことを容易にし、また製造工程中の麺塊の破損を防止して生産歩留まりを向上させ、さらに冷凍麺の優れた食感・食味を損なわない冷凍麺の製造方法の提供を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた発明は、麺線をα化するα化工程、麺線を型枠に充填する充填工程、麺線を冷凍する冷凍工程及び冷凍した麺線を型枠から取り外す離型工程を含む冷凍麺の製造方法において、前記充填工程前に、麺線に対する浸潤性が低い低分子量物質を含む水溶液を麺線表面または型枠に付着させる付着工程を経ることを手段とする。
【0011】
この手段によれば、充填工程前に施される付着工程によって、麺線表面または型枠に上記水溶液を付着させることができる。この水溶液は麺線に対する浸潤性が低い低分子量物質が溶解しているため、付着工程を経た麺線の表面には当該水溶液が浸潤せずに存在する。よって、充填工程で充填された麺線と型枠との接触面にはこの水溶液の層が形成される。一方、当該水溶液は、上記低分子量物質が溶解しているために凝固点降下が効果的に生じ、上記冷凍工程においても凝固しないか、あるいは凝固の度合いが低い。そのため、型枠と麺線との間の水溶液の層は、冷凍工程を経た後も強固な氷層を形成せず、その結果、離型工程において型枠から麺線を容易に取り出すことができる。従って、麺塊を型枠から取り外す際に、従来の製造方法のような強い衝撃力を加えたり水を噴射したりする必要がなく、例えば、型枠を反転させ軽く振動させるだけで、麺塊を型枠から取り外すことができる。その結果、製造工程中の冷凍麺塊の破損を防止し、生産歩留まりを向上できる。
【0012】
上記浸潤性が低い低分子量物質としては、麺線中に浸潤しにくく麺線表面に存在し、かつ、水に溶解して凝固点降下を起こす物質でなければならず、さらに冷凍麺の食感・食味を損なうことがないものでなければならない。この点を考慮すると、分子量400以下の糖及び糖アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また、これらの物質の水溶液を付着させると、麺の食感を向上させる作用もある。
【0013】
上記水溶液の濃度は、5重量%以上30重量%以下の範囲が好適である(請求項)。なぜならば、水溶液の濃度が上記範囲未満であると上述の型枠からの麺塊の取り出しを容易にする作用が不十分であり、一方、上記範囲を超えると食感がゴツゴツしたものとなるからである。
【0014】
上記被覆工程における水溶液の付着処理方法としては、水溶液に麺線若しくは型枠を浸漬する方法又は麺線若しくは型枠に水溶液を噴霧する方法を用いるとよい(請求項)。この手段によれば、上記水溶液を麺線若しくは型枠の表面全体に均一に付着させることができる。そのため、上述の型枠からの麺塊の取り出しを容易にする作用が有効に発揮できる。
【0015】
上記付着工程は麺線若しくは型枠の表面に水溶液を付着させるだけでよいことを考慮すると、その処理時間は1分以内でよい(請求項)。
【0016】
なお、本明細書に記載の「分子量」とは、繰り返し数が特定できない高分子化合物などの場合は液体クロマトグラフィー法による分子量分布から算出した平均分子量を意味し、それ以外のNaClのような無機イオン結晶物質および糖、糖アルコールなどの有機物の場合は化学式量を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説するが、この実施形態の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきものではないことはもちろんである。図1は本発明の一実施形態に係る冷凍麺の製造方法を説明する工程図である。当該冷凍麺の製造方法は、図1に示すように、主工程として、麺線製造工程1、α化工程2、水冷工程3、付着工程4、充填工程5、冷凍工程6、離型工程7および包装工程8を有し、前記付着工程4を除けば普通に用いられている冷凍麺の製造方法と同様である。以下、各工程ごとに説明する。
【0018】
麺線製造工程1は生の麺線を製造する工程であり、具体的には、小麦粉等の穀粉に、食塩、かん水、増粘類、グルテン等の麺質改良剤、その他の副原料を添加し、これに水を添加して混練する工程、混練した麺生地を生麺線に成形する工程などの細部工程からなる。この生麺線に成形する工程は、麺生地をシート状に圧延し、これをカッターで線状に切断する方法や、麺生地から直接線状に押し出す方法などがある。この生麺線の種類は、特に限定されるものではなく、例えば蕎麦、うどん、中華麺、スパゲッティ、マカロニなど、いずれの麺類でも可能である。なお、当該麺線製造工程1で製造された生麺線は1食分に分けられ、1食分ごとにコンベアに連結された網状のバケットに充填され、コンベアによって後述するα化工程2や水冷工程3などの各工程に搬送される。なお、一食分に分ける操作は、α化工程2や水冷工程3の後に行ってもよい。
【0019】
α化工程2は、茹で処理や蒸し処理などを単独で、または複数組み合わせて行い、上記麺線製造工程1で製造された生麺線をα化させる工程である。
【0020】
水冷工程3は、α化した麺線を水冷する工程であり、例えば冷水への浸漬、冷水の散布又は噴霧などの方法がある。当該工程で使用する冷水は、水道水でも十分であるが、低温の冷水が好ましく、10℃以下の冷水が特に好ましい。当該工程は、水冷によってα化した麺線を引き締めると同時に、麺線表面を洗浄する目的で行われ、麺線表面のぬめり等を洗い流すことができる。
【0021】
付着工程4は、アルコール、糖、糖アルコール等の物質であって、分子量が400以下のものの水溶液を麺線表面に付着させる工程である。この水溶液の溶質の分子量を400以下とすることで水溶液に凝固点降下を生じさせ、凝固点が降下した水溶液を麺線表面に付着させることによって、麺線と型枠との間に強固な氷層が形成されることを防止し、後述する離型工程7の離型作業を容易にする。分子量が400以上のオリゴ糖やデキストリン、各種多糖類等では効果的な凝固点降下は得られないため、本発明の要旨である麺線と型枠間に強固な氷層が形成されることを防止する作用は少ない。
【0022】
また麺線と型枠間に強固な氷層を形成しないようにする手段としては、上述のように麺線表面に凝固点の低い水溶液を付着させること以外に、水溶液の麺線への浸透性、水溶液の粘性等も強く影響していると考えられる。つまり、水溶液の麺線への浸潤性が高く、また水溶液の粘性が低い場合、麺線表面に付着した凝固点の低い水溶液が麺線内部に浸潤してしまい、麺線と型枠間に介在できず、麺線と型枠間の強固な氷層の形成を防止する効果が発揮できないと考えられる。例えば、食塩水は十分低い凝固点を有しているはずだが、麺線への浸透性が高く、麺線内に容易に浸潤してしまうために、麺線の型枠からの取り外しを容易にする効果を有さないと考えられる。一般に、麺線への浸潤性は溶液の浸透圧に相関し、浸透圧が高い溶液ほど麺線への浸潤性が高いと考えられる。
【0023】
以上の説明をまとめると、本発明の効果、つまり麺線と型枠間の強固な氷層の形成を防止して麺塊の取り出しを容易にする効果を得るには、付着工程4で麺線表面に付着させる水溶液の溶質は、低分子量であり、かつ適度な粘性と麺線への浸潤非容易性を有していなければならないと考えられる。さらに、当然、食品として使用可能であり、食味・食感に対する悪影響(例えば強い塩味、酸味を呈する等)を与えないものである必要がある。かかる点を考慮すると、付着工程4で麺線表面に付着させる水溶液の溶質は、分子量が400以下のアルコール、糖、糖アルコール等の物質が最適である。
【0024】
上記分子量400以下のアルコール、糖、糖アルコール等の物質としては、特に限定されるものではなく、例えば(a)エタノール等の1価アルコール、(b)グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、(c)トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース等の単糖及びそれらのオリゴ糖、(d)前記糖類の糖アルコールなどが挙げられ、特にソルビトール、エリスリトール、ラクチトール、キシロール、グリセロール、プロピレングリコールが望ましい。これは、これらの物質が麺塊の型枠からの取り外しを容易にするだけでなく、冷凍麺の食感を向上させる効果をも有しているからである。製造する冷凍麺の種類や製造条件等によって望ましいアルコール、糖、糖アルコール等の物質を適宜選択するとよい。
【0025】
また、上記水溶液におけるアルコール、糖、糖アルコール等の物質の濃度は、5〜30重量%であることが望ましい。なぜならば、水溶液の濃度が5重量%より低いと麺塊を型枠から取り外す効果が不十分であり、一方30重量%より高いとゴツゴツした食感になるからである。
【0026】
かかる水溶液を付着させる方法としては、水溶液中に麺線を浸漬させる方法、麺線に水溶液を噴霧する方法などがある。いずれを用いても上記効果は得られるが、麺線表面に一様に十分な溶液を付着させるという点では、麺線を溶液に浸漬する方法の方がより安定した付着が得られる。また当該工程は、麺線表面に水溶液が単に付着すればよいことから、1分以下の極短時間の処理で十分な効果が発揮できる。
【0027】
なお、上記付着工程4は水溶液を麺線に付着させるが、水溶液を後述する充填工程5で使用する型枠の内面に付着させる工程とすることも可能である。かかる工程でも、麺線と型枠との間に水溶液の層が形成でき、上記と同様に、離型工程7での離型作業を容易にできる。また、当該工程で型枠に水溶液を付着させる方法も、上記と同様に、浸漬させる方法や噴霧する方法が可能である。
【0028】
充填工程5は、上記付着工程4で水溶液がコーティングされた麺線を1食分ごとの型枠に充填する工程である。この型枠の形状は、特に制限はなく、例えばカップ状、弁当箱状、角筒状等が可能である。ただし、後述の離型工程7での麺塊の取り外しを考慮すれば、底部から開口部に向かって拡がるテーパー状であることが望ましい。また型枠の材質としては、離型工程7での麺塊の取り外し作業を考慮すると、やや柔軟性のあるプラスチック容器が好ましいが、本発明の冷凍麺の製造方法は型枠からの取り外しが容易であるため、金属製等の容器でも差し支えない。当該工程は、具体的には、型枠を搬送用バケットの下に位置するように配設し、バケットの開口部を下向きに反転させ、麺線を落下させて型枠に充填する工程である。
【0029】
冷凍工程6は、上記充填工程5で麺線を充填された型枠をフリーザーに移動させ、麺線を急速に冷凍する工程である。このフリーザーの温度は、−35℃以下が望ましい。
【0030】
離型工程7は、冷凍工程6で冷凍された麺塊を型枠から取り外す工程である。本発明の冷凍麺の製造方法によれば、付着工程4を有し、麺線表面に凝固点降下を起こした水溶液をコーティングしていることから、型枠と麺線との接触面には強固な氷層が形成されていない。そのため、当該離型工程7は、型枠を反転させて開口部を下方に向ける操作のみ、あるいはかかる操作の後にゴムハンマーなどによって軽い振動を付与することで、容易に型枠から麺塊を取り外すことができる。従って、離型工程7には、従来の冷凍麺の製造方法で必要であったシャワー装置や振動装置などが不要である。また、離型工程7において、麺線の損傷を低減でき、材料歩留まりを向上させることができる。
【0031】
包装工程8は、上記離型工程7で取り外された麺塊を、この麺塊の形状に合わせたプラスチック容器、紙容器等で包装する工程である。通常は1食ごとに包装するが、複数食ごとに包装することも可能であり、複数食分を包装するための適切な形状に麺塊を成型することも可能である。かかる包装工程8を経て、冷凍麺の製造が完了する。
【0032】
本発明の冷凍麺の製造方法は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、上記麺線製造工程1での混練や成形を減圧下で行ってもよく、また麺線製造工程1や該工程とα化工程2の間に、麺線のこしや食感を向上させるために麺生地や生麺線を熟成させる工程を設けてもよい。また、水冷工程3を経た後に、麺線に付着した水分を取り除く水切り工程を設けてもよい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきものではないことはもちろんである。
【0034】
(1)実験1
従来の冷凍麺の製造方法と本発明の要旨である付着工程を付加した製造方法とについて、麺塊の取り外し容易性を比較し、また両方法で得られた冷凍麺の食感を評価した。
【0035】
[実施例1]
上述と同様の麺線製造工程、α化工程、水冷工程、付着工程、充填工程、冷凍工程および離型工程を順に経ることによって、実施例1の冷凍麺(中華麺)を得た。本実施例1の製造方法における麺線製造工程では、小麦粉100重量部に、粉末かん水1.0重量部、澱粉5.0重量部、食塩1.2重量部および水41重量部を混合し、これを真空ミキサーを用いて常圧下で3分間、真空(−760mmHg)下で8分間混練して麺生地を得、この麺生地を圧延ロールで1.3mmの厚さの麺帯とし、該麺帯を切り刃を用いて約1.4mm巾に切り出し、さらに一食毎に裁断して生麺線を得た。また当該α化工程では、得られた生麺線に50秒間、茹で処理を施し、湯切りして、α化した麺線を得た。その後、水冷工程では、15℃の水に30秒間浸漬し、さらに5℃の水に30秒間浸漬して水冷し、水切りした。次の付着工程では、水冷工程を経て表面温度が5℃程度になった麺線を、5℃に調製したエリスリトール(分子量:122.12)の10%水溶液に30秒間浸漬した。充填工程では、15.0cm×10.5cm×4.5cmの大きさのトレー状型枠に充填した。冷凍工程では、麺線を型枠に充填した状態で−35℃の雰囲気下に35分間置いて急速冷凍させた。
【0036】
[実施例2〜11]
付着工程において、水溶液の溶質をエリスリトールに替えて、それぞれキシリトール(分子量:152.15)、ソルビトール(分子量:182.17)、ラクチトール(分子量:344.33)、キシロース(分子量:150.13)、グルコース(分子量:180.16)、乳糖(分子量:342.30)、グリセリン(分子量:92.10)、プロピレングリコール(分子量:76.10)、還元澱粉加水分解物A(平均分子量:264、日研化学(株)製の商品名「エスイ−600」)及び還元澱粉加水分解物B(平均分子量395、日研化学(株)製の商品名「エスイ−20」)を用いた他は上記実施例1の冷凍麺の製造方法と同様にして実施例2〜11の冷凍麺を得た。
【0037】
[比較例1]
付着工程を経ず、水冷工程から直接充填工程に移行する他は上記実施例1の冷凍麺の製造方法と同様にして比較例1の冷凍麺を得た。
【0038】
[特性の評価]
上記実施例1〜11および比較例1の冷凍麺について、それらの製造過程の離型工程における型枠からの麺塊の取り外し容易性を評価した。この麺塊の取り外し容易性の評価基準は、取り外しが一番困難な比較例1の冷凍麺の場合を1点とし、楽に取り外しができる場合を5点(最高点)とする相対的評価とした。
【0039】
また上記実施例1〜11および比較例1の冷凍麺について、2分間の茹で処理による調理を施し、実際に食してみる官能検査を行い、その食感を評価した。その評価結果を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003688917
【0041】
上記表1に示すように、麺塊の取り外し容易性は、いずれの実施例の冷凍麺の製造方法についても、付着工程を用いない比較例1の冷凍麺の製造方法に比べて改善している。また食感についても、比較例1の冷凍麺より実施例の冷凍麺の方が優れている。さらに、実施例1〜11の中では、食感の点で、付着工程の水溶液の溶質にアルコール、糖アルコールを用いた実施例の方が、糖を用いた実施例よりも優れている。
【0042】
(2)実験2
上記実施例3の冷凍麺の製法方法を基準とし、付着工程で使用する水溶液の濃度を替えて、麺塊の取り外し容易性と食感を評価した。
【0043】
[実施例12〜15]
付着工程において、水溶液の濃度を、それぞれ1%、5%、30%および50%に替えた他は実施例3の冷凍麺の製造方法と同様にして実施例12〜15の冷凍麺を得た。
【0044】
[特性の評価]
上記実施例3および実施例12〜15の冷凍麺の製造方法について、上記実験(1)と同様にして麺塊の取り外し容易性を評価し、それらの冷凍麺についても上記実験(1)と同様にしてその食感を評価した。その評価結果を下記の表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0003688917
【0046】
上記表2に示すように、麺塊の取り外し容易性は、付着工程で用いる水溶液の濃度が5%以上で向上するが、反対に50%になるとゴツゴツした食感になる不都合が発生する。
【0047】
(3)実験3
付着工程で用いる水溶液の溶質として、平均分子量が400を超える糖アルコール等や、麺線への浸潤性がよい食塩などを用いて、麺塊の取り外し容易性と食感を評価した。
【0048】
[比較例2〜6]
付着工程において、水溶液の溶質として、それぞれ還元澱粉加水分解物C(平均分子量:920、日研化学(株)製の商品名「エスイ−100」)、オリゴ糖(平均分子量:480、(株)林原製の商品名「テトラップ」)、デキストリンA(平均分子量:2373、三和澱粉工業(株)製の商品名「サンデック#300」)、デキストリンB(平均分子量:10695、三和澱粉工業(株)製の商品名「サンデック#150」)および食塩を用いた他は上記実施例1の冷凍麺の製造方法と同様にして比較例2〜6の冷凍麺を得た。
【0049】
[参照例]
付着工程において、水溶液の溶質として、乳酸(分子量:90.1)を用いた他は上記実施例1の冷凍麺の製造方法と同様にして参照例の冷凍麺を得た。
【0050】
[特性の評価]
上記比較例2〜6および参照例の冷凍麺の製造方法について、上記実験(1)と同様にして麺塊の取り外し容易性を評価し、それらの冷凍麺について上記実験(1)と同様にしてその食感を評価した。その評価結果を下記の表3に示す。
【0051】
【表3】
Figure 0003688917
【0052】
上記表3に示すように、比較例2〜5の冷凍麺の製造方法は、麺塊の取り外し容易性が向上していない。これは、付着工程に用いる水溶液の溶質の分子量が400を超えることから、効果的な凝固点降下が得られず、冷凍工程において麺線と型枠間に強固な氷層が形成されてしまったものと考えられる。また、比較例6の冷凍麺の製造方法も麺塊の取り外し容易性が向上していない。これは、水溶液の溶質が分子量が小さい食塩であり、凝固点降下は十分に生じるが、麺線に浸潤してしまって、麺線と型枠間の強固な氷層の形成を防止する効果が発揮できなかったものと考えられる。一方、参照例の冷凍麺の製造方法は、麺塊の取り外し容易性が向上している。水溶液の溶質が分子量400以下の乳酸であり、かつ、麺線に対する浸潤性が低いためであると考えられる。ただし、乳酸の水溶液を用いると、大変酸っぱい食感を与えることに留意する必要がある。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の冷凍麺の製造方法によれば、簡易な処理の付着工程を付加することで、離型工程における型枠からの麺塊の取り出しを容易にすることができる。従って、凍結麺塊を型枠から取り外す際に、従来の製造方法のような強い衝撃力を加えたり水を噴射したりする必要がなく、その結果、製造工程中の冷凍麺塊の破損を防止し、生産歩留まりを向上できる。さらに、冷凍麺の食感を向上させる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷凍麺の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 麺線製造工程
2 α化工程
3 水冷工程
4 付着工程
5 充填工程
6 冷凍工程
7 離型工程
8 包装工程

Claims (4)

  1. 麺線をα化するα化工程、麺線を型枠に充填する充填工程、麺線を冷凍する冷凍工程及び冷凍した麺線を型枠から取り外す離型工程を有する冷凍麺の製造方法において、麺線に対する浸潤性が低い低分子量物質を含む水溶液を麺線表面または型枠に付着させる付着工程を、前記充填工程前に経り、
    前記浸潤性が低い低分子量物質として、分子量400以下の糖及び糖アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上のものを用いることを特徴とする冷凍麺の製造方法。
  2. 上記水溶液の濃度が、5重量%以上30重量%以下である請求項1に記載の冷凍麺の製造方法。
  3. 上記付着工程における水溶液の付着処理方法として、麺線若しくは型枠を水溶液に浸漬する方法又は麺線若しくは型枠に水溶液を噴霧する方法を用いる請求項1又は請求項2に記載の冷凍麺の製造方法。
  4. 上記付着工程の処理時間が1分以内である請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷凍麺の製造方法。
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