JP3688412B2 - 熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂、特に、溶融粘度が高くて溶融押出が困難な樹脂や、熱分解しやすい樹脂、低沸点の添加剤もしくは熱分解しやすい添加剤を含有する樹脂等の難成形樹脂の成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超高分子量ポリエチレンや、超高重合度ポリ塩化ビニルなどの樹脂は、溶融粘度が高い、分解しやすい等の理由で成形が非常に難しい樹脂とされ、一般に難成形樹脂と称されている。
【0003】
従来、このように溶融粘度が非常に高い難成形樹脂では、同樹脂から成形体を製造するのに、つぎのような方法が採られている。
【0004】
(1) 圧縮成形またはラム押出成形により、板状あるいは棒状の成形体を作成し、この成形体を切削等の切出し加工により所望の製品に賦形する方法、
(2) 難成形樹脂を有機溶媒に溶解し、キャスティング法によりフィルム化またはシート化する方法、
(3) 特公平4−47608号公報記載のように難成形樹脂の粉末に有機溶媒を加えて得られる分散物または混合物を加熱溶融したあと押出成形し、成形後に有機溶媒を揮散させる方法。
【0005】
しかしながら、上記(1) の方法は、生産性が極めて低いという欠点がある。また、上記(2) および(3) の方法では、溶媒が成形体中に残っていると成形体の物性の低下を招くため、成形体を加熱して溶媒を揮散させなければならないが、溶媒の完全揮散のためには大掛りな装置が必要であると共に、長時間を要し、やはり生産性が低い。加えて、溶媒をそのまま大気中に揮散させたのでは公害を招く恐れがあるため、溶媒の回収を行わなければならず、回収設備等の設備コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、分解温度と成形温度が近接している難成形樹脂では、樹脂に安定剤や可塑剤を加え、樹脂の分解を極力抑えて成形をする方法が採られている。しかし、この方法では、安定剤や可塑剤の添加量に比例して樹脂の物性が低下してしまい、逆に安定剤や可塑剤を添加せずに成形すると樹脂の分解による成形体外観の劣化や分子量減少による成形体の品質低下が避けられない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機溶媒の除去や回収の手間が必要でなく、また成形時に分子量減少を起こすことなく、高い生産性で難成形樹脂成形体を得ることができる難成形樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成すべく工夫されたものであり、請求項1に記載の難成形樹脂成形体の製造方法(発明1)は、難成形樹脂を耐圧ホッパから押出機に供給して押出機内で固相から溶融相へ変態せしめ、この溶融樹脂を金型に導入して押出賦形するに当たり、耐圧ホッパから非反応性ガスを供給し、該難成形樹脂に高圧状態で非反応性ガスを溶解させながら樹脂を固相から樹脂の溶融粘度が成形に適した粘度の溶融相に変態させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明(発明2)は、上記非反応性ガスが炭酸ガスである発明1の熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明(発明3)は、上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型内を液体潤滑剤を用いて潤滑に押出しながら冷却固化させて非発泡成形体を得る発明1または2の熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明(発明4)は、上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型に振動を与えて壁面と樹脂表面との摩擦抵抗を小さくし金型内で冷却固化させながら押出して非発泡成形体を得る発明1または2の熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0012】
請求項5記載の発明(発明5)は、上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型出口から圧力を保持したまま急冷サイジングを行うことにより非発泡成形体を得る発明1または2の熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【0013】
本発明における難成形樹脂としては、溶融粘度が高くて溶融押出が困難な樹脂や、熱分解しやすい樹脂、低沸点の添加剤もしくは熱分解しやすい添加剤を含有する樹脂等が挙げられる。
【0014】
溶融粘度が高くて溶融押出が困難な樹脂としては、超高分子量ポリエチレン、超高重合度ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等のエンジニアリング用プラスチック、いわゆるスーパーエンプラ系の樹脂等が挙げられる。
【0015】
また、熱分解しやすい樹脂としては、高塩素化度ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸等の生分解性樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0016】
本発明において使用される非反応性ガスは、常温常圧で気体であって、上記難成形樹脂と反応を起こさず同樹脂を劣化させないものであれば、特に限定されず使用できる。例えば、炭酸ガス、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、酸素等が挙げられる。これらは単独で使用されても良いし、2種以上併用されても良い。このうち、発明2におけるように、炭酸ガスは樹脂に対する溶解度が高く、樹脂の溶融粘度の低下が大きいため最も好ましい。
【0017】
樹脂に非反応性ガスを溶解させる具体的な方法としては、特に限定されないが、たとえば、成形装置の耐圧ホッパから押出機の固体輸送部に至る領域に非反応性ガスを供給し樹脂中に溶解させる方法が挙げられる。上記領域への非反応性ガスの供給は、ガスをガスボンベから押出機へ直接供給してもよいし、加圧ポンプ等を用いて高圧にして供給してもよい。
【0018】
非反応性ガスの高圧状態を保持するためには押出機にスクリュー駆動軸およびホッパの耐圧シール構造を組み入れることが好ましい。さらにスクリュー駆動軸を押出機先端側に設置することによって同駆動軸を溶融樹脂に対する耐圧シール構造とすることが比較的容易にできる。この方法は耐圧性を高めるのにより好ましい。
【0019】
非反応性ガスの溶解量は、溶解によって樹脂の溶融粘度が成形に適した粘度になるような値であれば特に限定されず、樹脂の種類、非反応性ガスの種類によって適宜選択することができる。
【0020】
つぎに、金型へ溶融樹脂を導入するに際しては、樹脂を加圧状態に維持しておくのが好ましい。一旦圧力が低下すると溶融樹脂に溶解していた非反応性ガスが揮散したり気泡化する恐れがある。このような場合、金型内での溶融樹脂の流動中に樹脂中の非反応性ガスの溶解量が低下し、溶融粘度が上昇して賦形が困難となる。また後述するような非発泡成形体が得られなかったり、発泡成形体が気泡径のばらついた成形体となる。
【0021】
なお、本発明による成形体の製造方法は、発泡成形体および非発泡成形体のいずれの成形体の製造にも適用できる。
【0022】
発泡成形体を得る場合には、押出成形時に従来の押出発泡用の構造の金型を用いれば良く、金型出口での圧力降下度合いに影響を与える金型形状、樹脂流動粘度、または金型温度、押出量等の成形条件を適宜設定することによって気泡の形態および気泡径をコントロールすることができる。
【0023】
一方、非発泡成形体を得る場合には、以下のような方法を採用することができる。
【0024】
(1) 金型内で樹脂を充分冷却させて固化状態で押し出す方法。この方法では、発明3の通り、金型内での樹脂流動抵抗を小さくするために液体潤滑剤を用いたり、発明4の通り、金型に振動を与えて壁面と樹脂表面との摩擦抵抗を小さくする等の対策を講じることも好ましい。
(2) 発明5の通り、金型出口から圧力を保持したまま急冷サイジングを行う方法。
(3) 金型出口から発泡した成形体を賦形する時に塑性変形の温度領域でこれを加圧することにより成形体から気泡を除去する方法。
【0025】
上記(1) の方法において液体潤滑剤を用いる方法としては、従来公知の方法が任意に適用できる。この方法に用いられる液体潤滑剤としては、成形温度で分解、沸騰などが起こりにくく、かつ樹脂に溶解せず、樹脂の劣化を促進することのない化学的に安定な物質が好ましい。このような条件を満足する潤滑剤の例としては、液状のポリシロキサン、エチレングリコール等の多価アルコール、およびそのアルキルエステル並びにアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンおよびそのアルキルエステル並びにアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンおよびその2種以上のアルキレンオキサイドのランダム、ブロックまたはグラフトコポリマー等が挙げられる。中でも成形体の表面に付着した後の除去が容易な点で上記のような多価アルコール等の水溶性の潤滑剤が好ましい。
【0026】
また、樹脂表面が潤滑剤で一様に覆われるためには金型壁面は多孔質体で構成されていることが望ましい。多孔質体の材質としては例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、金、銀、銅等を主体とした金属系材料とアルミナ、ムライト、ケイ酸、ジルコニア等を主体とした非金属系材料がある。潤滑剤供給に必要な圧力および流量は使用する潤滑剤の種類と、金型壁面を構成する多孔質体の気孔径、気孔率、金型壁厚で決定される。
【0027】
潤滑剤を樹脂界面に均一に塗布するためには、金型壁面を構成する多孔質体として、細孔分布曲線がシャープで、細孔が均一に分散したものを選定することが好ましい。このような条件を満足する多孔質体としては、非鉄金属系材料を使用することが望ましい。
【0028】
また、金型に振動を与える手段としては、従来公知のものが適用でき、たとえば、振動モーター、バイブレーター、超音波等を用いて金型に振動を与える。この場合、振動の周波数は、特に限定されないが、好ましくは100〜100000Hz、より好ましくは500〜30000Hzである。振動数が100Hz未満では壁面での摩擦抵抗を充分低下できずに押出不可になる恐れがあり、100000Hzを越えると振動を与えるために多くのエネルギーを要し、製造コストが嵩む場合がある。
【0029】
一方、振動の振幅は好ましくは0.5〜1000μm、より好ましくは1〜500μmである。振幅が0.5μm未満では壁面での摩擦抵抗を充分低下できずに押出不可になる恐れがあり、1000μmを越えると成形体の外観を劣化させる恐れがある。
【0030】
上記(3) の方法において、難成形樹脂が結晶性樹脂である場合、塑性変形の温度領域は、好ましくは(融点−20℃)〜(融点+100℃)の温度範囲、より好ましくは(融点)〜(融点+50℃)の温度範囲である。(融点−20℃)より低い温度で成形体を賦形すると、樹脂内部に発泡が残り均一な形状の成形体が得られず、所望の物性も十分に発現しなくなる恐れがあり、(融点+100℃)より高いと、賦形後に重ねられた成形体の剥離が困難となる場合がある。
【0031】
一方、難成形樹脂が非晶性樹脂である場合、塑性変形の温度領域は、好ましくは(ガラス転移温度−10℃)〜(ガラス転移温度+150℃)の温度範囲、より好ましくは(ガラス転移温度)〜(ガラス転移温度+80℃)の温度範囲である。(ガラス転移温度−10℃)より低い温度で成形体を賦形すると、樹脂内部に発泡が残り均一な形状の成形体が得られず、所望の物性も充分に発現しなくなる恐れがあり、(ガラス転移温度+150℃)より高いと、賦形後に重ねられた成形体の剥離が困難となる場合がある。
【0032】
賦形に際して成形体に掛ける圧力は、好ましくは2〜300kgf/cm2、より好ましくは5〜250kgf/cm2、特に好ましくは10〜200kgf/cm2 である。この圧力が2kgf/cm2 未満であると樹脂内部に発泡が残り均一な形状の成形体が得られず、所望の物性も充分に発現しなくなる恐れがあり、300kgf/cm2を越えると、成形体が過剰に圧延され、所望の厚み精度のものが得られなくなる恐れがある。
【0033】
加圧下の賦形に要する時間(以下、「賦形時間」と記す)は好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上である。賦形時間が1秒未満であると樹脂内部に発泡が残り均一な形状の成形体が得られず、所望の物性も充分に発現しなくなる恐れがある。また、賦形時間の上限は特にないが、この時間があまり長いと生産性が低くなるので好ましくない。
【0034】
成形体に圧力を掛ける方法としては、上記所定の圧力および賦形時間を満足できるものであれば特に限定されないが、たとえば、成形体を、ダブルベルトプレスのように面圧で賦形する方法や、ベルトとロールの間で賦形する方法や、ロールとロールとの間で賦形する方法等が挙げられる。
【0035】
また、賦形に際してロールやベルト表面にエンボス模様などの凹凸模様を施しておくことによって、成形体表面にも凹凸模様が転写され、装飾性に優れた難成形樹脂成形体を得ることができる。
【0036】
賦形後の冷却温度は樹脂の熱変形温度未満である。冷却温度が熱変形温度以上であると、巻取り等の工程で成形体が変形してしまう恐れがある。
【0037】
(作用)
発明1は、難成形樹脂に高圧状態で非反応性ガスを溶解させながら樹脂を固相から樹脂の溶融粘度が成形に適した粘度の溶融相に変態させることを特徴とするが、その理由は次の通りである。
【0038】
固相例えばペレットやパウダー状態の樹脂に非反応性ガスを溶解させ、次いで非反応性ガスの非存在下に樹脂を加熱溶融させると、温度を上げていく過程では、拡散により樹脂に溶解していた非反応性ガスが揮散したり、発泡化したりする恐れがある。また、溶融した樹脂に非反応性ガスを溶解させる際に、溶融粘度が非常に高い樹脂の場合には、例えばスクリューで樹脂を可塑化する際にトルクの急激な上昇によりスクリューが回転不能に陥る等の問題が起きる恐れがあり、さらに熱に非常に敏感な樹脂の場合には、溶融状態では非反応性ガスの溶解前に樹脂の分解が進む恐れがある。
【0039】
発明1による方法では、樹脂を固相から溶融相へ変態している間、該難成形樹脂に高圧状態の非反応性ガスを溶解させ樹脂と非反応性ガスの完全相溶状態を形成するため、樹脂に溶解した非反応性ガスは、樹脂が溶融される前に樹脂から揮散したり発泡を来たすことがない。したがって、非反応性ガスによって樹脂が可塑化する際のエネルギーが下がり、トルクが低減し、スクリューの回転がスムーズに行えると共に、溶融時の成形温度も低下できる。しかも、非反応性ガスは難成形樹脂中の溶解状態を維持しているために樹脂の溶融粘度が低下し、押出機からスムーズに溶融樹脂を押し出すことができる。さらに溶融粘度の低下度合いに依存して成形温度も低下させることができる。
【0040】
発明2では、上記非反応性ガスが炭酸ガスであるので、難成形樹脂に対する溶解度が高く、樹脂の溶融粘度の低下が大きいため最も好ましい。
【0041】
発明3は、溶融相の難成形樹脂を賦形する時に、金型内での溶融樹脂の急冷によって溶融粘度が上がり流動性が低下するが、金型 には潤滑剤が供給されているため、この潤滑剤が流動性の低下した溶融樹脂と金型 の内壁面との間で層流を生じ、壁面抵抗を小さくし、スムーズな押出を可能にするので、容易に難成形樹脂の非発泡成形体を得ることができる。
【0042】
発明4は、溶融相の難成形樹脂を賦形する時に、金型内での溶融樹脂の急冷によって溶融粘度が上がり流動性が低下するが、金型 には振動を与えることで壁面と樹脂表面との摩擦抵抗を小さくし、スムーズな押出を可能にするので、容易に難成形樹脂の非発泡成形体を得ることができる。
【0043】
発明5は、金型出口から圧力を保持したまま急冷サイジングを行うので、押し出された成形体は気泡化することがなく、容易に非発泡成形体を得ることができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0045】
図1は、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法に使用される成形装置の一例を模式的に示したものである。
【0046】
図1において、この成形装置(A) は、押出機(1) 、耐圧ホッパ(2) および潤滑冷却金型(3) から主として構成されている。押出機(1) は、シリンダー(11)とその内部に配されたスクリュー(12)とからなり、シリンダー(11)の基端部に耐圧ホッパ(2) の下端が開閉弁(6) を介して接続され、シリンダー(11)の先端部に潤滑冷却金型(3) が取付けられている。また、シリンダー(11)の基端部にある固体輸送部にガス供給口(13)が設けられる。非反応性ガスはガスボンベ(15)から加圧ポンプ(16)および開閉弁(14)(22)を経てガス供給口(13)および耐圧ホッパ(2) へ高圧で給送される。スクリュー軸は耐圧シール構造となっており、供給された非反応性ガスを高圧状態に保持することができる。
【0047】
潤滑冷却金型(3) は、押出機(1) から加圧状態を維持して導かれて来る溶融樹脂原料を所望の形状に成形しつつ押出すようになっていると共に、金型外壁面に設けられた潤滑剤供給口(31)から金型内面(32)に潤滑剤を供給できるようになっている。ここで押出機(1) と潤滑冷却金型(3) はいずれも温度コントロール装置(図示省略)を備え、所定の温度に制御できるようになっている。
【0048】
本発明の難成形樹脂成形体の製造方法では、上記構成の成形装置(A) を用い、まず、耐圧ホッパ(2) に充填された難成形樹脂(4) をシリンダー(11)内に供給し、シリンダー(11)内のスクリュー(12)によって前方へ輸送しながら溶融する。
【0049】
この時、開閉弁(14)を開くことによって、シリンダー(11)の固体輸送部内へガス供給孔(13)から非反応性ガスを高圧で供給し、シリンダー(11)内で難成形樹脂(4) が固相から溶融相に変態するときに同樹脂に非反応性ガスを高圧状態で溶解させる。また、必要に応じて、開閉弁(22)を開くことによって、予め難成形樹脂(4) を充填した密閉状態の耐圧ホッパ(2) に非反応性ガスを高圧で注入し、難成形樹脂(4) に非反応性ガスを溶解させる。
【0050】
非反応性ガスが溶解した溶融樹脂をスクリュー(12)により完全に溶融状態とし、潤滑冷却金型(3) へ加圧状態を維持して供給し、金型内を潤滑に押出しながら冷却固化させ、所定の成形体(5) を得る。
【0051】
この製造方法では、以上のように、押出機(1) 内で難成形樹脂(4) が溶融混練される前に、難成形樹脂(4) に予め非反応性ガスが溶解しているため、非反応性ガスによって難成形樹脂(4) が可塑化する際にエネルギーが下がり、トルクが低減し、スクリュー(12)の回転がスムーズになしえる上に、溶融樹脂温度も低下できる。しかも、非反応性ガスが難成形樹脂中に溶解後も溶解状態を維持しているために溶融粘度が低下し、溶融樹脂を押出機(1) からスムーズに潤滑冷却金型(3) に導入し、ここから押出賦形することができる。さらに溶融粘度の低下度合いに依存して成形温度も低下させることができる。
【0052】
また、潤滑冷却金型 (3) は温度コントロール装置によって低温に保たれているため、潤滑冷却金型(3) に導かれた溶融樹脂は金型内で急冷され、溶融樹脂中に溶解した非反応性ガスが金型内で揮発膨張することがない。さらに、金型 (3) 内での溶融樹脂の急冷によって溶融粘度が上がり流動性が低下するが、金型 (3)には潤滑剤が供給されているため、この潤滑剤が流動性の低下した溶融樹脂と金型 (3) の内壁面との間で層流を生じ、壁面抵抗を小さくし、スムーズな押出を可能にする。
【0053】
したがって、押出された成形体(5) は、発泡もなく、金型 (3) の形状に沿う、表面が平滑なものである。
【0054】
しかも、得られた成形体中には非反応性ガスが溶解しているが、非反応性ガスは自然に樹脂から抜け出るために、樹脂を有機溶媒で可塑化させる従来方法のような溶媒回収工程が必要でなく、生産性が高い上に、設備の小型化および製造コストの低減が可能である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
超高粘度樹脂として超高分子量ポリエチレン樹脂であるハイゼックス・ミリオン240M(三井石油化学社製、重量平均分子量230万、融点136℃)を図1に示す成形装置(A) の耐圧ホッパ(2) から単軸押出機(1) (スクリュー径40mm、L/D=30)に供給した。非反応性ガスとしては炭酸ガスを用い、これをガス供給口(13)から押出機の固体輸送部に200kg/cm2の圧力で圧入した。この時、押出機(1) はスクリュー軸駆動の高圧軸シール機構と耐圧ホッパ構造で炭酸ガスの高圧状態を保持した。押出機(1) に供給された樹脂は、その内部で押出量2kg/h、スクリュー回転数30rpm、バレル設定温度200℃の条件下で充分に溶融混練することができた。
【0057】
続いてこの溶融樹脂を80℃に設定された潤滑冷却金型(3) に導き、同金型に潤滑剤としてポリアルキレングリコールを5cc/minの割合で供給した。溶融樹脂を押出賦形時に金型内で冷却固化させ、超高分子量ポリエチレンのロッドを得た。なお、この金型は、潤滑剤をその溜り部から金型壁面の多孔質体を通して溶融樹脂との界面全周にわたって溶融樹脂に均一に塗布するようになっている。
【0058】
得られた超高分子量ポリエチレンのロッドは直径20mmのものであり、その断面を顕微鏡観察したところ、気泡や層構造は確認されず、また表面は平滑で均一であった。
【0059】
実施例2
熱分解し易い樹脂として、ポリ乳酸樹脂であるRESOMER L209(BoehringerIngelheim 社製、重量平均分子量50万)を用い、固体輸送部への炭酸ガスの圧入圧力を150kg/cm2 とし、バレル設定温度を150℃として点を除いて、実施例1と同じ条件で成形を行い、ポリ乳酸のロッドを得た。
【0060】
得られたポリ乳酸のロッドは直径10mmのものであり、その断面を顕微鏡観察したところ、気泡や層構造は確認されず、表面も平滑で均一であった。また、ゲル透過クロマトグラフィーによる分子量測定を行ったところ、押出の前後で分子量減少は見られず、樹脂の熱分解等は起っていないことが分かった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、非反応性ガスを高圧下で樹脂の固相から溶融相に変態せしめる状態に溶解させるので、樹脂を効果的に可塑化させることができ、超高粘度樹脂の溶融押出や熱分解し易い樹脂の低温成形が可能である。また、非反応性ガスは押出後樹脂から自然に抜け出るために、有機溶媒で可塑化させる従来方法のような溶媒回収工程が必要でない。加えて、金型の形状や成形条件または後加工等により発泡および非発泡の成形体を任意に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1および2で用いた成形装置の垂直縦断図である。
【符号の説明】
(A) :成形装置
(1) :押出機
(2) :耐圧ホッパ
(3) :潤滑冷却金型
(11):シリンダー
(12):スクリュー
(13):ガス供給口
(14):開閉弁
(22):開閉弁
(15):ガスボンベ
(16):加圧ポンプ
(31):潤滑剤供給口
(32):金型内面
Claims (5)
- 難成形樹脂を耐圧ホッパから押出機に供給して押出機内で固相から溶融相へ変態せしめ、この溶融樹脂を金型に導入して押出賦形するに当たり、耐圧ホッパから非反応性ガスを供給し、該難成形樹脂に高圧状態で溶解させながら樹脂を固相から樹脂の溶融粘度が成形に適した粘度の溶融相に変態させることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 上記非反応性ガスが炭酸ガスである請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型内を液体潤滑剤を用いて潤滑に押出しながら冷却固化させて非発泡成形体を得る請求項1または2記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型に振動を与えて壁面と樹脂表面との摩擦抵抗を小さくし金型内で冷却固化させながら押出して非発泡成形体を得る請求項1または2記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 上記溶融相に変態された樹脂を金型へ加圧状態を維持して供給し、金型出口から圧力を保持したまま急冷サイジングを行うことにより非発泡成形体を得る請求項1または2記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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