JP4148583B2 - 難成形樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難成形樹脂成形体の製造方法に関し、更に詳しくは、溶融粘度が高く溶融成形が困難な難成形樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリテトラフルオロエチレンや超高分子量ポリエチレン等は、耐衝撃性、耐磨耗性、自己潤滑性、耐薬品性等が優れている。しかし、溶融粘度が高く流動性が悪いため押出成形や射出成形等の成形が非常に難しい樹脂とされ、一般に難成形樹脂と称されている。
従来、これらの難成形樹脂は、粉末状態の樹脂を圧縮成形、焼結成形又はラム押出成形等により板状もしくは棒状の簡単な形状の成形体を作製し、これらの成形体を切削加工等の二次加工によって所望形状の製品とする方法が一般に用いられていた。
【0003】
しかしながら、上記方法では、いずれも板状もしくは棒状の簡単な形状の成形体しか得られず、これら以外の形状の成形体を得るためには、更に、板状体や棒状体のこれら成形体を切削加工等の二次加工によって所望形状の製品とするものであるため、多くの工数と、高価な材料から切削加工等の加工屑を大量に発生させるという極めて非効率的な生産手段となるばかりか、二次加工自体にも自ずとその形状に加工限界があり、微細形状の精密成形等の総てに適用できる方法ではなかった。
【0004】
こうした難成形樹脂を射出成形法で成形しようとする試みとして、例えば、特開昭51−81861号公報には、超高分子量ポリエチレンを粉末状態で、50000sec-1以上の高剪断速度により僅かに開いた状態の金型キャビティ内に射出し、次いで、キャビティ内の樹脂が溶融状態にある間にキャビティを圧縮する(以下、射出後圧縮と略称する)工程を付加した射出成形法が開示されている。
【0005】
しかし、上記公報に開示された射出成形法では、粉末状態の難成形樹脂を融着させ、得られる成形体の物性低下を抑制するために射出後圧縮工程が付加されているので、複雑な形状の成形体の製造が難しくなる。又、上記融着を向上させるために過充填を行うと得られる成形体の表面層と内層間で剥離を惹き起こすという問題がある。
【0006】
又、特公平4−47608号公報には、超高分子量ポリエチレンからなるフィルム又はシートの製造に際して、超高分子量ポリエチレンの粉末に有機溶媒を加えてフィルム状又はシート状に押出成形し、得られるフィルム又はシートを加熱して有機溶媒を揮散させる超高分子量ポリエチレンフィルム又はシートの製造法が開示されている。
【0007】
しかし、上記公報に開示された押出成形法では、難成形樹脂にこれを溶解ないし膨潤する能力をもつ有機溶媒を加えて賦形し、賦形された難成形樹脂成形体を加熱して有機溶媒を揮散させるものであるので、難成形樹脂に強い親和性を有する有機溶媒を分離し、揮散させるためには大掛かりな加熱、乾燥装置が必要であり、且つ、加熱、乾燥工程に多くの工数、コストを要するものであり、更に、有機溶媒を大気中や作業場内に排出させ、大気汚染公害や労働衛生上の諸問題を惹き起こさないために、溶媒回収設備と溶媒回収工程が付加され、益々生産性を低下させるものであるという問題点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の諸問題を解決し、射出後圧縮工程を付加することなく、又、溶融樹脂の流動性を向上するために有機溶媒を用いることなく、気泡を含まない中実組織の任意形状の成形体を生産性高く製造し得る難成形樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、フッ素系樹脂、超高分子量ポリエチレン、超高重合度ポリ塩化ビニルまたはポリイミドからなる熱可塑性難成形樹脂に、常温、常圧で気体状態の非反応性ガスを溶解させて熱可塑化し、該熱可塑化難成形樹脂が粒子状になる速度で賦型金型内に充填することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項1記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法において、賦型金型内に充填される非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力の最小値が10MPa以上である。
【0011】
請求項3記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項1記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法において、賦型金型内に充填を完了したときの非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力が、難成形樹脂に溶解させた非反応性ガスの量に相当する飽和溶解圧力よりも高い値である。
【0012】
請求項4記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項1、2又は3記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法において、製造方法が射出成形法によるものである。
【0013】
請求項5記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項4記載の発明の射出成形法による難成形樹脂成形体の製造方法において、金型キャビティに難成形樹脂を充填した後、金型キャビティの流動末端の樹脂圧力が10MPa以上になるまで引き続いて難成形樹脂の充填を行うものである。
【0014】
請求項6記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項1〜4又は5記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法において、熱可塑性難成形樹脂がポリテトラフルオロエチレンもしくは超高分子量ポリエチレンである。
【0015】
請求項7記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項6記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法において、超高分子量ポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量が、2.0×106 g/mol以上である。
請求項8記載の発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、請求項1〜7のいずれかに記載の難成形樹脂成形体の製造方法において、熱可塑化難成形樹脂の賦型金型への充填速度は、剪断速度が10 2 〜10 3 sec −1 以上であるように設定される。
【0016】
本発明で用いられる熱可塑性難成形樹脂は、相対的に溶融粘度が高く溶融成形が困難な熱可塑性樹脂であって、特定の溶融粘度等熱的性質を限定するものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体等のフッ素系樹脂、超高分子量ポリエチレン、超高重合度ポリ塩化ビニル、ポリイミド等が挙げられる。
【0017】
上記難成形樹脂のうち、ポリテトラフルオロエチレンもしくは超高分子量ポリエチレン、特に、粘度平均分子量が2.0×106 g/mol以上の超高分子量ポリエチレンからなる難成形樹脂は、通常の押出成形や射出成形が特に難しいものであるが、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法を用いることによって容易に成形することができる。
【0018】
本発明で用いられる非反応性ガスは、常温、常圧で気体状態であり、難成形樹脂に非反応性であって、これらを劣化させないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、酸素等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいが、2種以上が併用されてもよい。中でも二酸化炭素は、難成形樹脂に対する溶解度が高く、溶融粘度の低下に大きく寄与するので最も好ましい。
【0019】
難成形樹脂に非反応性ガスを溶解する手段は、特に限定されるものではないが、例えば、非反応性ガスを固体状態の難成形樹脂に高圧下で溶解させる方法、非反応性ガスを溶融状態の難成形樹脂に高圧下で溶解させる方法等が挙げられる。これらの方法は単独で用いられてもよいが、併用されてもよい。
【0020】
非反応性ガスを固体状態の難成形樹脂に高圧下で溶解させる方法としては、具体的に例えば、耐圧溶解槽内に粉末状態もしくはペレット状の難成形樹脂及び所定圧力に調整された非反応性ガスを充填し、加熱加圧下に、必要に応じて攪拌しながら、難成形樹脂に非反応性ガスを含浸、溶解させる方法である。
又、上記耐圧溶解槽等の特別の溶解槽を用いることなく、ホッパーより押出機の固体輸送部において固体状態の難成形樹脂に所定圧力に調整された非反応性ガスを接触させ、難成形樹脂に非反応性ガスを含浸、溶解させる方法が採られてもよい。この場合には、ホッパー部及び可塑化装置のスクリュー軸受部等の摺動部が圧力シールされることが好ましい。
上記非反応性ガスを難成形樹脂に含浸、溶解させる際の圧力は、難成形樹脂及び非反応性ガスの種類等によって決められるものであるが、通常、3MPa以上である。
【0021】
又、非反応性ガスを溶融状態の難成形樹脂に高圧下で溶解させる方法として、具体的に例えば、スクリューのコンプレッションゾーンの前方の圧力緩和部分付近においていて、可塑化装置のシリンダーの途中から所定圧力に調整された非反応性ガスを圧入する方法であり、この場合、非反応性ガスの供給は、ガスボンベから直接行われてもよいが、プランジャーポンプ等を用いて加圧供給されてもよい。
圧入される非反応性ガスの圧力は、上記同様3MPa以上であり、圧入された非反応性ガスはシリンダー内の溶融樹脂で圧力シールされるので、特に圧力シールを補強しなくてもよいが、必要に応じて、難成形樹脂投入口や可塑化装置のスクリュースラスト部等の摺動部が圧力シールされてもよい。
【0022】
非反応性ガスを溶解した難成形樹脂は、可塑化・充填装置によって可塑化され、可塑化装置の先端から賦形金型に、該難成形樹脂が粒子状になる速度で充填される。
上記溶融難成形樹脂の粒子径は、難成形樹脂の種類、非反応性ガスの種類及び溶解量ないしは充填速度等によって決まるものであるが、好ましくは100μmφ〜10mmφ程度である。溶融難成形樹脂の粒子径は可及的小さいものであることがこのましいが、100μmφ未満にするには装置が膨大なものとなるばかりか、生産性も低下するものであり、10mmφを超えると、賦形金型への均質な充填が阻害されるおそれがある。
【0023】
又、このような粒子径の溶融難成形樹脂を充填するための可塑化・充填装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、充填口の径が1〜5mmφ、好ましくは3mmφである。
【0024】
難成形樹脂の上記賦形金型への充填速度は、難成形樹脂の種類、可塑化温度、非反応性ガスの含有量等によって決められるものであるので、特に限定することはできないが、充填速度が余り小さいと難成形樹脂の粒子化が十分に行われず、賦形金型への難成形樹脂の均質な充填が行われ難くなるので、剪断速度が102 〜103 sec-1以上であることが好ましい。
【0025】
このように難成形樹脂が粒子化され賦形金型のキャビティ内に充填されるが、上記充填圧力が余り低いと、得られる難成形樹脂成形体内部に気泡等の空隙部を発生させ、脆弱な組織を形成したり、表層部と内層部との間に層状の組織を形成したりするので、賦形金型のキャビティ内の樹脂圧力が10MPa以上であり、且つ、非反応性ガスの溶解量に相当する飽和圧力以上であることが好ましい。
【0026】
上記難成形樹脂が粒子化して賦形金型のキャビティ内に充填する手段は、特に限定されるものではないが、例えば、可塑化された非反応性ガスを溶解した難成形樹脂をガス圧によって注入するガス注入法、可塑化された非反応性ガスを溶解した難成形樹脂をプランジャー等で押圧して充填口から射出する方法等が挙げられる。
【0027】
上記充填圧力は、上記可塑化装置及び賦形金型を含む成形装置を用いる製造方法が射出成形法である場合、難成形樹脂が粉末化され賦形金型のキャビティ内を充満した後、難成形樹脂の流動末端の樹脂圧力が10MPa以上になるまで引き続いて難成形樹脂の充填が行われるが、粒子化された難成形樹脂がキャビティ内を充満する工程と難成形樹脂の流動末端の樹脂圧力が10MPa以上にする工程とは引き続いて速やかに短時間で行われることが好ましく、このように動作させることによって、粒子化された難成形樹脂粒子同士が融着して強固な組織を形成し得るものとなり、該組織内に気泡が発生することを抑制して、高性能の中実の難成形樹脂成形体を製造し得るものとなる。
【0028】
上記のように賦形金型のキャビティに充填された難成形樹脂は、賦形金型内で固化温度以下に冷却され、賦形金型より取り出される。
【0029】
本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、上述のように、非反応性ガスを溶解させた熱可塑化難成形樹脂が粒子状になる速度で賦型金型内に充填されるものであるので、複雑な形状の成形体であっても、溶融熱可塑化難成形樹脂が賦型金型内に均質に充填され、相互に融着し合い、得られる難成形樹脂成形体は、層状破壊やブロック状破壊等の脆弱な組織となることなく、強固な中実組織を形成した優れた物性を有する難成形樹脂成形体を製造し得るものである。
【0030】
更に、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、賦型金型のキャビティを溶融難成形樹脂を射出して充填した後、キャビティ容積を射出樹脂量の2.0倍以下に圧縮するための複雑な機構の射出成形機や精密な金型加工を必要とせず、又、用いる難成形樹脂の可塑化を助けるために有機溶媒を添加させることもないので、これら有機溶媒を成形された後、難成形樹脂成形体から揮散させるための新たな乾燥設備と煩わしい乾燥工程とこれに付帯して要する有機溶媒の回収設備等を全く必要としないので、高い生産性で難成形樹脂成形体を製造し得るものである。
【0031】
又、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、賦型金型内に充填される非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力の最小値が10MPa以上であるので、粒子状で充填された溶融熱可塑化難成形樹脂が賦型金型内で気泡の発生や空隙を形成することなく相互に融着し合い、得られる難成形樹脂成形体は、層状破壊やブロック状破壊等の脆弱な組織となることなく、強固な中実組織を形成した優れた物性を有する難成形樹脂成形体を製造し得るものである。
【0032】
又、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、賦型金型内に充填を完了したときの非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力が、難成形樹脂に溶解させた非反応性ガスの量に相当する飽和溶解圧力よりも高い値であるので、賦型金型内で気泡の発生がなく、得られる難成形樹脂成形体は、層状破壊やブロック状破壊等の脆弱な組織となることなく、強固な中実組織を形成した優れた物性を有する難成形樹脂成形体を製造し得るものである。
【0033】
本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、叙上のように構成されているので、ポリテトラフルオロエチレンもしくは超高分子量ポリエチレン、特に、粘度平均分子量が、2.0×106 g/mol以上である超高分子量ポリエチレンからなる難成形樹脂の射出成形法として好適に用いられるものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の難成形樹脂成形体の製造方法を実施するための成形機の一例を示す概念図である。
成形機は、気体溶解装置1、熱可塑化装置2、金型3及びこれら各装置の付属装置からなり、以下に示すような手順で難成形樹脂成形体が製造される。
先ず、難成形樹脂は、気体溶解装置1のホッパー11から耐圧バルブa、b、c及びdによって減圧空間を形成し得る耐圧ホッパー12に間欠的に供給され、バルブa、b及びcが閉じられた後、バルブdより図示されていない減圧装置によって耐圧ホッパー12内を減圧した後、バルブbのみを開き、供給用ボンベ13より供給される非反応性ガスを、圧力調整バルブeによって所定圧力に調整して耐圧ホッパー12に供給し、耐圧ホッパー12内を所定温度及び圧力に保持して難成形樹脂に非反応性ガスを溶解させ、耐圧バルブdを開いて熱可塑化装置2に非反応性ガスを溶解した難成形樹脂を成形サイクルに合わせて間欠的に供給しされる。
【0035】
次いで、非反応性ガスを溶解した難成形樹脂は、熱可塑化装置2内で熱可塑化され、該装置の充填部に貯溜された後、低温度に設定されている賦形金型3内に難成形樹脂が粒子状になる速度で充填し、流動末端の樹脂圧力が10MPa以上となるまで難成形樹脂を圧入し、金型3内の難成形樹脂を冷却して難成形樹脂成形体が製造される。
【0036】
(実施例)
超高分子量ポリエチレン(Hoechst 社製、商品名「Hostalen GUR4120」、平均分子量440万)からなる難成形樹脂を、図1に示す射出成形機を用いて、直径225mm、厚さ3mm成形体(図2)を以下に示す条件で作製した。
【0037】
先ず、減圧された耐圧ホッパー12内に、超高分子量ポリエチレン及び5.0MPaに調整された炭酸ガスを導入し、温度65℃で3時間保持して超高分子量ポリエチレンに炭酸ガスを溶解させた。
【0038】
次いで、炭酸ガスを溶解させた超高分子量ポリエチレンを180℃に加熱された熱可塑化装置2内に導き熱可塑化し、計量部に一時貯溜された熱可塑化樹脂を剪断速度103 〜104 sec-1で40℃の金型に粒子状に射出して充填し、キャビティ末端の圧力が10MPa(炭酸ガスの飽和圧力)になった時点で充填を停止し、金型内の樹脂温度が70℃になるまで冷却して脱型した。
【0039】
得られた成形体の性能を評価するため、得られた10個の成形体を、屈折試験として図3の(イ)の状態から図3の(ロ)の状態に真半分に偏平になるまで折り曲げて成形体の折り目の断面の状態を観察したが、いずれも内部に気泡は認められず、強固な中実組織となっており、層状に剥離したり、ブロック状の割れを惹き起こすこともなかったし、又、そのおそれもないものであった。
【0040】
(比較例1)
実施例の炭酸ガスを溶解させた超高分子量ポリエチレンを金型へ充填するに際し、キャビティ末端の圧力が1MPaになった時点で充填を停止したこと以外、実施例と同様にして成形体を作製した。
得られた成形体の性能を、実施例と同様に評価したが、10個の成形体のいずれも、表層部と内層部が層状剥離を起こしており、又、折り曲げ部分以外にも多数の気泡の存在が認められ、強固な中実組織が形成されていなかったことが分かる。
【0041】
(比較例2)
実施例の成形機の気体溶解装置1を用いないで、超高分子量ポリエチレンを直接熱可塑化装置2に導入したこと以外、実施例と同様にして成形体を作製した。
得られた成形体の性能を、実施例と同様に評価したが、10個の成形体のいずれも、表層部と内層部が層状剥離を起こしており、折り曲げ部分以外には気泡の存在は認められなかったが、強固な中実組織が形成されていなかったことが分かる。
【0042】
(比較例3)
実施例の成形機の気体溶解装置1を用いないで、超高分子量ポリエチレンを直接熱可塑化装置2に導入したことと、可塑化樹脂を金型へ充填するに際し、キャビティ末端の圧力が1MPaになった時点で充填を停止したこと以外、実施例と同様にして成形体を作製した。
得られた成形体の性能を、実施例と同様に評価したが、10個の成形体のいずれも、多数の粉末状粒子が表面に付着しており、表層部と内層部が層状剥離を起こしており、又、折り曲げ部分から完全に2つにブロック状の割れを惹き起こし、強固な中実組織が形成されていなかったことが分かる。
【0043】
実施例及び比較例1〜3の難成形樹脂成形体の製造方法の成形条件及び得られた成形体の性能を表1にとりまとめて示した。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明の難成形樹脂成形体の製造方法は、叙上のように構成されているので、内部に気泡が認められず、強固な中実組織となっており、層状に剥離したり、ブロック状の割れを惹き起こすことも、又、そのおそれもない優れた諸物性を保持した難成形樹脂成形体を確実に製造し得るものでる。
又、使用する製造手段は、射出後圧縮工程を付加した複雑な構造の成形装置を用いる必要もなく、又、溶融樹脂の流動性を向上するために有機溶媒を用いる必要もなく、通常、汎用熱可塑性樹脂の成形に用いられる成形装置を用いることができ、上記のような気泡を含まない中実組織の任意形状の成形体を生産性高く製造し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の難成形樹脂成形体の製造方法を実施するための成形機の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例で得られた難成形樹脂成形体(評価用試験片)の形状をその寸法と共に示す平面図である。
【図3】図2に示した評価用試験片を用いて実施した屈折試験の説明図である。
【符号の説明】
1 気体溶解装置
11 ホッパー
12 耐圧ホッパー
13 ガスボンベ(非反応性ガス)
a、b、c、d バルブ
e 圧力調整バルブ
2 熱可塑化・充填装置
3 賦形金型
4 難成形樹脂成形体(評価用試験片)
Claims (8)
- フッ素系樹脂、超高分子量ポリエチレン、超高重合度ポリ塩化ビニルまたはポリイミドからなる熱可塑性難成形樹脂に、常温、常圧で気体状態の非反応性ガスを溶解させて熱可塑化し、該熱可塑化難成形樹脂が粒子状になる速度で賦型金型内に充填することを特徴とする難成形樹脂成形体の製造方法。
- 賦型金型内に充填される非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力の最小値が10MPa以上である請求項1記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 賦型金型内に充填を完了したときの非反応性ガスを溶解させた難成形樹脂圧力が、難成形樹脂に溶解させた非反応性ガスの量に相当する飽和溶解圧力よりも高い値である請求項1記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 製造方法が射出成形法によるものである請求項1、2又は3記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 射出成形法による難成形樹脂成形体の製造方法において、金型キャビティに難成形樹脂を充填した後、金型キャビティの流動末端の樹脂圧力が10MPa以上になるまで引き続いて難成形樹脂の充填を行う請求項4記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 熱可塑性難成形樹脂がポリテトラフルオロエチレンもしくは超高分子量ポリエチレンである請求項1〜4又は5記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 超高分子量ポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量が、2.0×106 g/mol以上である請求項6記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
- 熱可塑化難成形樹脂の賦型金型への充填速度は、剪断速度が10 2 〜10 3 sec −1 以上であるように設定される請求項1〜7のいずれかに記載の難成形樹脂成形体の製造方法。
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