JP2004017285A - 薄肉発泡成形体の成形方法及び薄肉発泡成形体並びに発泡体成形装置 - Google Patents

薄肉発泡成形体の成形方法及び薄肉発泡成形体並びに発泡体成形装置 Download PDF

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Abstract

【課題】流動性の低い樹脂材料でも、薄肉で、発泡密度は高く、しかも微細で均一な発泡成形体が得られる薄肉発泡成形体の成形方法を提供する。
【解決手段】金型(1、10)のキャビティ(12)に、二酸化炭素ガスによりカウンタ圧力をかけた後、シュートショットの状態で二酸化炭素が溶解された溶融樹脂を射出する射出工程と、射出工程で射出された溶融樹脂を、可動金型(10)をキャビティ(12)の容積が減少する方向に駆動して、溶融樹脂を押し広げる充填完了工程と、充填完了工程時の金型(10)の位置を、射出・充填された溶融樹脂の温度が所定の発泡温度に降下するまで保持する保持工程と、保持工程の終了後、キャビティ(12)のカウンタ圧力を開放すると共に、可動金型(10)をキャビティ(12)の容積が増加する方向に所定位置まで駆動して発泡させる発泡工程とから構成する。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不活性ガスが溶解されている溶融樹脂を、金型のキャビティに射出・充填して発泡させる、薄肉発泡成形体の成形方法及びこの方法の実施により得られる薄肉発泡成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発泡成形品の成形方法は、発泡剤にアゾ化合物、ヒトラジン誘導体等を使用する化学的発泡成形方法と、炭酸ガス、窒素ガス等を使用する物理的発泡成形方法とに大別できる。化学的発泡成形方法には、発泡剤が混合されている樹脂ペレットを例えば加熱シリンダとスクリュとからなる射出機により溶融混練し、そして予めカウンタ圧力を加えておいた金型のキャビティに射出し、射出後一定時間経過後、カウンタ圧力を開放して発泡させるカウンタ圧力成形方法が知られている。上記成形方法によると、射出後一定時間経過させるので、金型のキャビティの内面に接した表皮部が冷却され、ソリッド状のスキン層が形成される。そして、カウンタ圧力を開放するので、固化していないスキン層の内部が発泡し、表面にスキン層を有する発泡成形品が得られる。
【0003】
上記のような化学的発泡成形方法をベースとして、その改良された成形方法が例えば特開2000−210969、特開2001−88161等により提案されている。前記特開2000−210969には、金型内のキャビティの容積を最終目標とする容積以下に設定すると共に、金型の表面温度をガラス転移温度Tg以上に加熱し、続いて金型のキャビティに発泡剤を含んだ溶融樹脂を射出・充填し、続いてキャビティの容積を最終目標容積になるように金型を開き、そして冷却して発泡成形品を得る発泡体の成形方法が開示されている。また、上記特開2001−88161には、金型のキャビティに溶融樹脂を射出、または射出圧縮して充填し、次いで金型のキャビティの容積を拡大して膨張させる成形品の製造方法において、金型の主要部のキャビティ間隔が0.1〜1.5mmであり、金型の温度が結晶性樹脂の場合には結晶化温度(Tc)を基準に(Tc−50℃)〜(Tc)の温度範囲、非晶性樹脂の場合にはガラス転移温度(Tg)を基準に(Tg−50℃)〜(Tg)の温度範囲、そして射出時間が4sec以下である薄肉軽量樹脂成形品の製造方法が示されている。
【0004】
一方、発泡剤に炭酸ガス、窒素ガス等の非反応性ガスを使用した物理的発泡成形方法の改良された成形方法は、例えば特開2001−315153、特許第3218397号、特開平11−245256等により提案されている。すなわち、特開2001−315153には、非反応性ガスを含浸させた溶融樹脂を金型のキャビティに充填して発泡させて発泡成形品を得るとき、未充満状態で充填し、非反応性ガスの発泡圧力により発泡させると共に、ガスの発泡圧力によりキャビティ内に充満させる発泡成形品の製造方法が開示されている。また、特許第3218397号には、二酸化炭素を溶解し溶融粘度を低下させた溶融樹脂を、予め金型のキャビティを溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上に二酸化炭素ガスで加圧状態にして、金型のキャビティに充填し、その後、樹脂を加圧し冷却固化する成形方法が開示されている。さらには、特開平11−245256には、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを予め金型のキャビティに注入し、次いで溶融樹脂を射出充填する成形方法において、金型の表面温度と非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度と二酸化炭素ガスの圧力との関係を究明し、最適な金型温度を選定した非晶性熱可塑性樹脂の射出成形方法が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2000−210969に開示されている発泡射出成形方法によると、金型内のキャビティの容積と金型の表面温度とが制御されるので、スキン層は薄く、そして気泡を肉厚内に均一に形成できることは認められる。しかしながら、金型のキャビティの容積は最終目標とする容積以下に設定されるので、薄肉の発泡成形品は得難い。特に、流動性の低い樹脂を使用するときは、薄いキャビティの容積をさらに小さく設定するので、充填し難くショウートショットになったり、あるいは微細な均一なセルを有する発泡成形品は得難いと予想される。また、特開2001−88161に記載の製造方法によると、金型のキャビティ容積を、縮小、拡大できる金型が使用されているので、薄肉軽量成形品を一応得ることはできると認められる。しかしながら、この製造方法に使用される金型は、そのキャビティの容積を縮小、拡大することはできるが、溶融樹脂の転写性を向上させるために圧縮するもので、流動抵抗の大きい熱可塑性樹脂から高品質の薄肉発泡成形品は得られないことが予想される。
【0006】
上記特開2001−315153に記載の発明によると、物理的発泡剤である炭酸ガスが使用されているので、溶融樹脂の粘性が低くなって充填しやすくなってはいる。しかしながら、この発泡成形品の製造方法は、金型のキャビティには単に充填するだけで、充填方法に格別な手段が採られていないので、狭いキャビティの隅々まで充填することは困難で、高品質の薄肉発泡成形品は得られ難い。また、特許第3218397号あるいは特開平11−245256に記載されている発明によると、溶融樹脂中に炭酸ガスが溶解されているので、粘度は低くなり、転写性及び外観形状に優れた発泡成形品は得られるにしても、薄肉発泡成形品を得るための、狭いキャビティの隅々まで溶融樹脂が充填される保証はない。
【0007】
以上のように、従来の発泡成形品の成形方法は、溶融状態における流動性の低い樹脂に、炭酸ガス、窒素ガス等の不活性ガスを混合・混練して流動性を改善し、そして狭いキャビティ空間に射出・充填するのを容易にした方法、あるいは発泡剤が溶解された溶融樹脂を射出する前に、金型のキャビティを最終の成形品寸法よりも狭くし、射出後発泡作用に即して金型のキャビティを最終状態に広げ、発泡を助ける方法を、カウンタ圧力成形方法に付加した成形品の成形方法といえる。このように、従来から薄肉の発泡成形品の成形方法あるいは均一な発泡セルを有する厚肉成形品の成形方法において技術的向上は図られている。しかしながら、これらの従来の技術では、流動性の低い樹脂から微細な均一なセルを有する薄肉の発泡成形品を得ることは、前述したような理由により困難である。
【0008】
また、シュウ酸誘導体、アゾ化合物、ヒトラジン誘導体、アジド化合物等の熱により分解してガスを発生する化学的発泡剤は、樹脂ペレットとこれらの発泡剤とをコンパウンドしたペレットを溶融混練して樹脂中で化学反応させることにより、発泡の基になるガスが発生する。したがって、樹脂中に反応させて発生するガスの量は自ずと限られ、この結果、発泡倍率及び発泡セルの育成も限度があり、50μm以下の小さなセルは得られないばかりか、発泡セルの分散も混合・混練の良否でバラツキが生じ、安定した均一な発泡構造体は得られない。さらには、化学的発泡剤のフロン、メタン等は、地球の温暖化にも影響し、使用が大幅に制限されている。
本発明は、上記のような従来の問題点あるいは欠点を解消した薄肉発泡成形体の成形方法及び薄肉発泡成形体を提供することを目的とし、具体的には流動性の低い樹脂からでも、薄肉で、発泡セル密度は高く、しかも微細で均一な発泡成形体が得られる薄肉発泡成形体の成形方法及びこの成形方法の実施により得られる薄肉発泡成形体を提供するとを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、発泡剤には物理的発泡剤が適用される。物理的発泡剤を適用することにより、溶融樹脂と物理的発泡剤を混練溶融すると流動抵抗が小さくなり、高粘度の溶融樹脂でも射出圧力の低減が図れる。また、地球環境に悪影響を及ぼす可能性が少なくなる。さらには、充填はショートショットの状態で充填する。そして、金型を閉じ方向に駆動する。これにより、ショートショットの溶融樹脂は、押し潰されたようにして金型のキャビティの末端までいきわたる。また、射出時にゲートを出たところで金型のキャビティが大気圧の状態で充填すると、ゲートを出たところで急激な圧力開放となり発泡し、末端まで微細で均一に発泡した発泡成形体は得られない。そこで、射出・充填前に金型のキャビティには不活性ガスによるカウンタ圧力を封入する。カウンタ圧力が封入されると、ゲートを出たところでの発泡を抑止できると共に不活性ガスはフローフロントのキャビティ壁面近傍から潜り込むため、流動性が上がり充填が容易になる。また、固化速度をゆるめる作用もする。このようにして充填された溶融樹脂を均一に微細に発泡させるために、予め決められた発泡倍率に応じた射出量と不活性ガスの充填重量パーセントからなる空間をキャビティに確保する。また、目的により微細な発泡を制御するにはキャビティの拡大・移動距離を目的の成形品厚さから算出し、発泡に適した温度まで降下するのを待って、カウンタ圧力を開放する。この動作は、温度を検知してカウンター圧力開放信号としてフィードバックしても良い。また、安定した下降時間が判れば、充填完了後からの時間で制御しても良い。そして、金型のキャビティを拡大すると共にセルが成長し発泡が進み目的の停止位置で停止する。冷却固化までこの状態を維持する。また、微細な発泡を得るために、キャビティの容積の拡大と相俟って、拡大速度すなわち型開き速度と型開き抵抗すなわち型開き背圧とを制御する。さらに詳しくは、少し遅れ気味の速度と少し強めの背圧により発泡抑止力をもたせながら金型を徐々に開いていくことでさらに微細で均一な発泡を制御する構成である。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、不活性ガスが溶解されている溶融樹脂を、金型のキャビティに射出・充填して発泡させる発泡成形方法において、前記金型のキャビティに、ガスによりカウンタ圧力を封入した後、ショートショットの状態で前記溶融樹脂を射出する射出工程と、この射出工程で射出された溶融樹脂を、前記金型を前記キャビティの容積が減少する方向に駆動して、押し広げる充填完了工程と、この充填完了工程時の金型の位置を、射出・充填された前記溶融樹脂の温度が所定の発泡温度に降下するまで保持する保持工程と、この保持工程の終了後、前記キャビティのカウンタ圧力を開放すると共に、前記金型を前記キャビティの容積が増加する方向に所定位置まで駆動して発泡させる発泡工程とからなるように構成される。
請求項2に記載の発明は、不活性ガスが、二酸化炭素ガスまたは窒素ガスであるように、請求項3に記載の発明は、射出工程でかけられるカウンタ圧力が、不活性ガスの超臨界圧力以上であるように、請求項4に記載の発明は、溶融樹脂が結晶性樹脂からなり、保持工程における所定の発泡温度が結晶化温度(Tc)−15Kから結晶化温度(Tc)であるように、請求項5に記載の発明は、発泡工程において、カウンタ圧力開放絞り弁の開度調整により圧力開放時間を制御し、さらに精密な発泡を制御するように、請求項6に記載の発明は、発泡工程において、カウンタ圧力を開放すると同時に金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動し、その駆動量を制御して発泡倍率を制御するように、そして請求項7に記載の発明は、発泡工程において、金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動する速度と駆動抵抗により発泡セル径と発泡密度を制御するように構成される。請求項8に記載の発明は、厚さ0.5mm以下の結晶性樹脂の薄肉発泡成形体のように構成される。
請求項9記載の発明は、シリンダ状容器と、該シリンダ状容器内に移動自在に設けられているピストンと、不活性ガス供給装置とからなり、前記シリンダ状容器内は、前記ピストンによりピストンヘッド室とピストンロッド室とに分けら、前記ピストンヘッド室は、可塑化室の作用を奏すると共に、キャビティの作用も奏するようになっていると共に、前記ピストンロッド室には前記ピストンを前記ピストンヘッド室の容積を減じる方向に付勢するバネが設けられ、前記ピストンヘッド室には前記不活性ガス供給装置から、少なくとも圧力において超臨界状態の不活性ガスが供給されるように構成される。
【0011】
以下、本発明が上記のように構成された理由をさらに詳しく説明する。本発明に適用される発泡剤は、常温常圧で気体又は液体で、対象とする樹脂と化学反応を示さない無機質であれば格別に限定されないが、入手の容易性、価格問題等から二酸化炭素あるいは窒素が選択される。そして、これらの不活性ガスは、混練・溶融された高圧状態の樹脂中に注入するように構成される。このような高圧状態の樹脂は、加熱シリンダと該加熱シリンダ内で回転駆動されるスクリュとからなる射出機で得るように実施するのが望ましい。加熱シリンダ内の溶融樹脂の圧力は、スクリュによる混練作用で高くなっている。したがって、不活性ガスの注入圧力は、昇圧ポンプにより加熱シリンダ内の溶融状態の樹脂の圧力よりも若干高くする方がよい。
【0012】
溶融樹脂中に不活性ガスを均一に混合、分散させるためには、超臨界状態の不活性ガスを注入するのが望ましいが、高圧の溶融樹脂に注入した後、超臨界状態になっても良い。。二酸化炭素あるいは窒素を、気体でもなく液体でもない超臨界状態で溶融樹脂中に注入すると、気体並みの拡散性と液体並みの反応性を示す。したがって、不活性ガスは容易に溶融樹脂中に溶け込み、短時間に拡散し溶解する。この結果、発泡の基となる不活性ガスが溶融樹脂中に均一に混合分散される。また、溶融樹脂中への溶解量は、樹脂原料に対して一定量を制御して注入する。これにより、期待通りの発泡倍率の発泡成形品が得られる。また、他の効果として溶融樹脂中に不活性ガスを溶解させると、溶融樹脂の粘度が低下し、狭いキャビティの中への射出が容易になり、射出・充填圧力も小さくなる。
【0013】
二酸化炭素は、温度304.1K、圧力7.38MPa以上で超臨界状態になり、窒素は温度126K、圧力3.4MPa以上で超臨界状態になる。したがって、発泡成形体の製造装置には、これらの不活性ガスを超臨界温度以上に加熱するヒータと超臨界圧力以上に加圧する加圧ポンプ又はブースターが設けられ、さらには流量制御弁も設けられる。上記したような射出機には、一定量の樹脂材料が供給され、そして可塑化される。したがって、溶融樹脂中に注入する不活性ガスを流量制御弁で調節することにより、超臨界状態の不活性ガスの溶解量を制御し、所望の発泡倍率の発泡成形体が得られる。ちなみに、溶融樹脂がポリプロピレンの場合、炭酸ガスの溶解量は重量パーセントで約6wt%、窒素ガスは2wt%と言われているので、この範囲内で制御できることになる。
【0014】
従来の方法で薄肉成形部に樹脂を充填すると、ショートショットであったり、射出圧力を高くして無理やりに充填すると発泡のためのキャビティ内の空き容積がなくなる。また、ショートショットの場合においても、従来の一般に用いられる標準的な金型構造の場合は発泡力によってショートショットからフル充填まで容積を埋めることは困難である。また、ゲートを出たところで急激な圧力開放で発泡が始まり不均一な発泡となる。これに対し、本発明によると、発泡剤に不活性ガスが適用されるので、溶融樹脂の粘度は低くなり、キャビティへ容易に充填される。射出される前に、キャビティ内にも予め不活性ガスを封入する。すなわち、本発明では、金型のキャビティに溶融樹脂を射出する前に、カウンタ圧力を封入し、妄りな発泡を抑える。金型のキャビティに、ショートショットすなわち未充満部分が存在するような状態で充填が完了する。そうして、所定の型厚まで型を閉じる。そうすると、射出された溶融樹脂が押し潰されキャビティの末端まで広がり、隅々まで充填される。この充填状態を維持しながら溶融樹脂が時間の経過と共に発泡に適切な温度に低下するのを待つ。その後、発泡に適した温度に降下した時点で、キャビティ内に封入した圧力を急激に開放する。そうすると、溶融樹脂中に溶解されている不活性ガスによる発泡作用が始まり、成形体の末端まで均一に発泡する。前記カウンタ圧力は、前述したように、型開動作と連動して開放する。カウンタ圧力を封入するガスは、不活性ガス特に二酸化炭素ガスまたは窒素ガスが望ましいが、樹脂の種類によっては空気でもよい。また、溶融樹脂中に混合したガスと同じガスであることが望ましい。
【0015】
表面にソリッド状のスキン層を成形し、そしてスキン層の内部は成形体の末端まで微細で均一に発泡した発泡成形体を得るには、発泡に適した温度と圧力とが要求される。そこで、本発明では、結晶性樹脂では、その樹脂のもつ結晶化温度付近の温度、非晶性樹脂ではガラス転移温度Tgよりも30℃程度低い温度を目安とし、カウンタ圧力を開放する。また、微細な発泡セルを得る好適な圧力開放時の圧力は、超臨界以上の圧力であればよい。微細な発泡セルを得るにためには、10MPa以上、さらに最適には15MPa〜25MPaが望ましい。
【0016】
さらに、セル密度が高く微細な発泡成形体を得るには、発泡セルの基になるセル核が多く存在することが必要で、そのために樹脂材料に適合した不活性ガスの選定と、最適な溶解量(重量パーセント)を制御することが求められる。例えば不活性ガスが二酸化炭素であれば、二酸化炭素の溶解量はポリプロプレンの場合6%程度、同様な樹脂材料で不活性ガスが窒素の場合2%程度が限度である。これ以上多くなると、セルが成長し破泡が起こり、また隣のセルとの合一が起こり大きなセルに成長し全体として不均一な発泡セルからなる発泡成形体となる。そこで、本発明では、例えば樹脂材料がポリプロピレン(PP)の時は、不活性ガスには二酸化炭素が選定され、6wt%程度溶解するように、また樹脂材料がポリプロピレンで不活性ガスが窒素の場合、2wt%程度溶解するように制御される。また、セル密度を上げるために核剤を混合することも、さらに微細なセル成形には望ましい。核剤としては、タルク、炭酸カルシウム等を使用できる。
【0017】
熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂と非晶性樹脂とに分けられる。非晶性樹脂は融点がないため、温度変化に対する粘度の変化が小さく、発泡に適した温度範囲は、比較的広い。一方、結晶性(半結晶性)樹脂は融点近傍で急激に粘度が変化するため、発泡に適した温度範囲は狭くなる。このような状況において、結晶性樹脂では発泡条件温度の影響を受ける。したがって、結晶性樹脂においてはセル密度が高く微細な発泡体を得るには、圧力開放時の温度の影響は重要であり、ゲート付近の温度と、温度降下したキャビティの末端部の温度との間に極端な差が生じると、温度の高いゲート付近のセルの成長は大きく、末端部では小さく、アンバランスな発泡体となる。よって、キャビティ内の圧力開放時の温度及び圧力を一定の範囲内に制御することが必要で、本発明では、金型の温度コントロールが要求されるのでヒータ及び冷却管が埋設されている金型が望ましい。
【0018】
また、圧力開放時の温度は、発泡成形体の材質にも影響される。例えば、ポリプロピレン(PP)の場合、結晶化温度付近での圧力開放が微細なセルの形成に望ましい。さらには、結晶化温度は不活性ガスを混合することにより、約10℃程度低下することが実験結果判明した。さらに、溶融した樹脂を金型のキャビティの末端まで充填するには、通常の成形方法では高圧、高速の射出条件で瞬時に充填して、充填途中での固化を防止する必要があるが、発泡成形においてパーティング面がありキャビティの容積が変わらない金型では、フル充填すると発泡空間がなく、殆ど発泡のないまばらな発泡体となる。これに対し、ショートショットで充填して発泡空間を確保するような条件で成形すると、流動性の良くない樹脂、あるいは固化速度の速い樹脂は、発泡力で溶融樹脂を押し広げる力がなくキャビティの末端まで届かない結果となる。
【0019】
以上のように、薄肉成形品で、しかも微細な発泡セルを有する発泡体成形を得るには、上記したような相反する成形条件を満たし、微細な発泡条件となる圧力開放時の圧力及び温度条件を上記したように満たすことが必要なことが実験の結果判明した。次に、その条件を満たす望ましい実施の形態を説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施に使用される可塑化装置自体は、従来周知であるので詳しい説明はしないが、本実施の形態に係わる可塑化装置KSは、図1の(イ)に示されているように、概略的にはスクリュシリンダ30と、このスクリュシリンダ30の内部に可塑化方向に回転駆動されると共に、軸方向すなわち射出方向にも駆動可能に設けられているスクリュ31と、スクリュ31を可塑化方向と射出方向とに駆動するスクリュ駆動装置32とから構成されている。
【0021】
スクリュシリンダ30は、その軸方向の略中間位置においてスクリュシリンダ30の外部から内部に達するガス供給孔33が開けられている。そして、このガス供給孔33に不活性ガス供給装置35に連なっているガス管34が気密的に接続されている。本実施の形態では、不活性ガス供給装置35は、二酸化炭素ガスが充填されているガスボンベ36、二酸化炭素ガスを超臨界圧力以上に昇圧する昇圧ポンプ37、圧力制御弁38、流量制御弁等からなっている。なお、可塑化中のスクリュシリンダ30内は、通常は不活性ガスの超臨界温度以上になっているので、直接スクリュシリンダ30に供給しても超臨界温度になるので、同程度の作用は得られることもある。
【0022】
スクリュ駆動装置32は、射出用電動サーボモータと、可塑化用電動サーボモータとを備えている。そして、これらのサーボモータの出力軸は、ボールネジ、スプライン機構等を介して従来周知の態様でスクリュ軸に接続されている。したがって、スクリュ31を回転駆動して可塑化することも、また軸方向に駆動して射出することもできる。さらには、背圧をかけることもできる。
【0023】
本実施の形態によると、制御器、タイマー等からなるコントローラ40も備えている。そして、射出用電動サーボモータ、可塑化用電動サーボモータ等は、コントローラ40により、後述するように設定通りに制御されるようになっている。また、コントローラ40に備わっている設定器により、可塑化に必要な各種の値、例えば不活性ガスの圧力の上下限値、不活性ガスの供給開始時期、及び停止時期等を設定するタイマーの設定、スクリュ駆動装置32の電動サーボモータの回転速度、可塑化時の背圧値、スクリュ式フィーダの駆動装置の駆動速度、スクリュシリンダ30及び射出ノズルの外周部に設けられている加熱ヒータの温度等が設定できるようになっている。そして、上記の各種の値が設定値に維持されるように、コントローラ40により例えばフィードバック制御により制御される。
【0024】
スクリュシリンダ30のガス供給孔33の下流側には第1の圧力計41が、そして計量室43は第2の圧力計42がそれぞれ設けられ、これらの圧力計41、42により計測される圧力は、コントローラ40に入力されるようになっている。
【0025】
スクリュ31は、可塑化時及び射出時には軸方向に移動するが、図1の(イ)に示されているように、スクリュシリンダ30に一応対応して、後端部が第1ステージ、先端部が第2ステージとなっている。第1ステージの供給部は、スクリュシリンダ30の材料供給孔に対応し、そのスクリュ溝は比較的深くなっている。このスクリュ溝は、供給部の溝深さから下流のスクリュ溝深さまで暫時変化し、浅くなっている。スクリュ31の回転により、供給部から送られてくる熱可塑性樹脂材料Pは、スクリュシリンダ30の外周部に設けられた加熱ヒータからの熱を受けると共に、圧縮と剪断作用を受けながら溶融されている。この溶融樹脂により、注入される不活性ガスが供給部の方へ漏れることが防止される。すなわち、溶融樹脂によりシールされることになる。
【0026】
第2ステージの低圧部のスクリュ溝は、深くなっている。これにより、第1ステージから送られてくる溶融樹脂は、減圧され、溶融樹脂が満たされない飢餓フィード部が生じる。その結果、不活性ガスの注入が容易になる。また、この低圧部は、スクリュ31が軸方向に移動してもガス供給孔33をカバーできる長さに選定されている。第2ステージの下流側のスクリュ溝は浅くなっており、溶融樹脂で満たされている。これにより、注入された不活性ガスは、溶融樹脂によりシールされることになる。
【0027】
成形装置SSは、図1の(ロ)に示されているように、金型から構成されている。金型は固定金型1と可動金型10とからなり、固定金型1のパーティングライン側には凹部2が、そして可動金型10のパーティングライン側には、凹部2に対応した大きさのコア11が形成され、これらの凹部2とコア11とによりキャビティ12が構成されている。このような可動金型10は、気密状態で軸方向に移動自在で、所定の位置に保持される構造いわゆる食い切り構造になっている。すなわち、可動金型10を所定の位置に止めて、キャビティ12の容積あるいは厚みが調節できる構造になっている。
【0028】
このような金型には、キャビティ12を加熱するヒータ、冷却する冷却管等の温度調節手段3が設けられている。この温度調節手段3は、図示の実施の形態によると固定金型1の方に設けられている。また、固定金型1には、キャビティ12内の温度を計測する温度センサ5が設けられ、さらにはキャビティ12に達するスプル4も設けられている。
【0029】
固定金型1の凹部2と可動金型10のコア11の摺動面には、シール手段としての例えばOリング6が設けられている。キャビティ12には、カウンタ圧力付加装置20のガス供給管21が開口している。キャビティ12にカウンタ圧力を付加するカウンタ圧力付加装置20は、二酸化炭素ガスが充填されているガスボンベ22、超臨界圧力以上に昇圧する昇圧ポンプ26、圧力制御弁23、流量制御弁、開閉弁24、カウンタ圧力開放絞り弁25等からなり、これらを接続しているガス供給管21が上記した位置に開口している。なお、本実施の形態によると、型締装置は射出圧縮機能も有するが、型締装置は図1の(ロ)には示されていない。
【0030】
次に、薄肉発泡成形品の成形例について説明する。可塑化装置KSにより熱可塑性樹脂Jを可塑化する。上記可塑化装置KSを使用した可塑化方法は、当業者には容易に理解されるので、詳しい説明はしないが、コントローラ40に付属している設定器により、各種の値を設定する。そして、スクリュ31を回転駆動する。そうすると、熱可塑性樹脂Jは、設定された割合でスクリュシリンダ30に供給される。熱可塑性樹脂材料Jは、スクリュ31の回転作用で送られる過程で、従来周知のように外部から加えられる熱と、スクリュ31の回転による剪断作用、摩擦作用等により生じる熱とにより溶融し、計量室43へと送られ、蓄積される。蓄積量に比例して樹指圧によりスクリュ31は背圧を与えられて後退する。このときの、スクリュシリンダ30内の温度は、不活性ガスの超臨界温度以上の例えば473K以上になっている。そして、スクリュシリンダ30の前方の計量室43に蓄積される。
【0031】
上記のようにして計量しているときに、コントローラ40のタイマーがタイムアップを計時すると、二酸化炭素ガス、窒素ガス等の超臨界状態の不活性ガス、あるいはガス圧力において超臨界ガス圧力以上の圧力の不活性ガスが、ガス供給孔33から所定の割合で注入される。注入された不活性ガスは、スクリュシリンダ30内は例えば373K以上の超臨界温度以上になっているので、スクリュ31の回転により溶融樹脂中に容易に浸透する。このとき、計量室43の圧力は第2の圧力計42で計測され、計測される圧力が超臨界圧力以下にならないように、スクリュ31を射出方向に加圧して計量する。所定量後退したら、これを検知して計量を終わる。
【0032】
なお、上記のようにして計量するとき、セル数を発泡核で制御することもできる。例えば、不活性ガスの溶解量を調整する。また、混入装置は図には示されていないが、スクリュシリンダ30に、制御された量のタルク、炭酸カルシウム等の核剤を混入することもできる。
【0033】
以下、成形装置SSを使用して、次の(a)〜(g)の順序で薄肉発泡成形体を得る例を図2を参照しながら説明する。なお、図2においては、温度調節手段3、温度センサ5、カウンタ圧力付加装置20等は示されていない。
(a)キャビティ12が所定大きさになるように型締めする。キャビティ12にカウンタ圧力付加装置20からカウンタ圧力をかける、あるいは封入する。そうして、上記のようにしてホッパに原料Pを投入しスクリュ31を回転して可塑化し計量した溶融樹脂Jをスプル4からキャビティ12に所定の空間を残した状態すなわちショートショットの状態で充填する。この状態が図2の(イ)に示されている。
(b)未充填空間がなくなるように、可動金型10を型締め方向すなわちキャビティ12の容積が減少する方向にに駆動する。この駆動により、ショートショット状態の溶融樹脂は、図2の(ロ)に示されているように、押し潰されキャビティ12の末端まで広がる。
【0034】
(c)この状態で溶融樹脂の温度降下の動作を入れる。このとき、温度調節手段3の例えば冷却管に冷水を流し温度降下を促進することができる。この温度降下の動作により、溶融樹脂は射出時の温度から徐々に降下し、融点を過ぎ、結晶化温度付近に到達する。この間、キャビティ12内は超臨界状態に保つ。
(d)結晶化温度付近まで降下した溶融樹脂の、金型1、10のキャビティ12の内表面に接している部分は、金型1、10からの吸熱により、未発泡のソリッド状のスキン層Ssが形成される。スキン層Ssが形成されている状態が図2の(ハ)に示されている。
【0035】
(e)今は、スキン層Ssが形成され、その内部の温度は結晶化温度付近になっている。開閉弁24を開きカウンタ圧力を一気に開放する。同時に可動金型10を微少開く。この圧力開放により、発泡が始まる。可動金型10が微少開かれ、発泡が始まっている状態は、図2の(ニ)に示されている。また、この圧力開放時間をカウンタ圧力開放絞り弁25の調整により制御することにより、圧力開放速度の違いによる発泡セルサイズの制御も可能となる。
(f)可動金型10の型開き停止位置は決められている。あるいは、得ようとする発泡成形品の肉厚になる位置は決められている。例えば、2倍の発泡を目指すときは、図2の(ロ)に示されている未発泡の容積が2倍の容積になる位置に決められている。この決められている位置まで拡張し、そして停止する。この状態で発泡セルを所定時間成長させる。成長させている状態が図2の(ホ)に示されている。なお、このとき発泡セルの大きさと、セル密度を、可動金型10の開き速度と型開き抵抗(背圧)を制御して制御する。例えば、発泡力及び発泡速度に対して型開き抵抗は強めに制御し、型開き速度は遅めに制御して、発泡セルの成長を抑止することにより、セルサイズの小さい微細な発泡セルを得る。
(g)発泡成形品の冷却固化を待って、可動金型10を開き発泡成形品HSを取り出す。以下同様にして成形する。
【0036】
次に、図3によりテスト装置として好適なバッチ式発泡体の成形装置の実施の形態を説明する。本バッチ式成形装置は、概略的にはシリンダ状容器50、この容器50内に上下動自在に設けられているピストン51、不活性ガス供給装置60等からなっている。シリンダ状容器50内は、ピストン51によりピストンヘッド室52とピストンロッド室53とに分けられている。このピストンヘッド室52は、試料Tを溶融する可塑化室の作用を奏すると共に、キャビティの作用も奏するようになっている。シリンダ状容器50の上方の開放端は、蓋体54で開閉自在に密閉されるようになっている。シリンダ状容器50の下方の外周部には、固体状の試料Tを溶融すると共に、内部を二酸化炭素ガスの超臨界温度以上に加熱することができる加熱ヒータ55が設けられ、ピストン51と蓋体53との間のピストンロッド室53には、発泡抑止用のバネ56「加重10kfg(抵抗力=1.5MPa)」が設けられている。なお、ピストンには複数個の透孔57、57、…が開けられている。したがって、ピストンヘッド室52とピストンロッド室53は、気体的に連通している。
【0037】
不活性ガス供給装置60は、ガスボンベ61、加圧ポンプ62、圧力制御弁63等とかなっている。そして、その供給管64はピストンロッド室53に開口している。また、供給管64から分岐した排気管65には開閉弁66が設けられている。また、ピストンロッド室53の圧力および温度をそれぞれ計測する圧力センサ67と温度センサ68も設けられている。
【0038】
バッチ式発泡体の成形装置は、上記のように構成されているので、次のようにして発泡体をバッチ的に得ることができる。すなわち、発泡テストをすることができる。固体状の試料Tをシリンダ状容器50のピストンヘッド室52に入れ、加熱ヒータ55により加熱し、溶融する。そして、不活性ガス供給装置60の圧力制御弁63により制御された超臨界圧力以上のカウンタ圧力を所定時間封入する。二酸化炭素は透孔57、57、…を通ってピストンヘッド室52にも封入される。これにより、二酸化炭素が溶融樹脂に含浸される。所定時間経過したら、加熱ヒータ55による加熱を停止し、溶融樹脂の温度を低下させる。そして、所定温度に降下したら開放弁66を開いてカウンタ圧力を開放する。そうすると、溶融樹脂はバネ56に抗してピストン51を押し上げ発泡する。蓋体54を開いて、ピストンを抜き発泡体を取り出す。以下同様にして発泡体を得る。
【0039】
実施例:カウンタ圧力の開放と該開放時の温度が、発泡状態に及ぼす影響についてテストした。
(1)テストに使用した装置:図3に示されているような、バッチ式発泡体の成形装置を使用した。
【0040】
(2)テストに供した試料:結晶性のポリマーは、非晶性のポリマーに比較して発泡に適した温度範囲が非常に狭いので、狭い方の結晶性のポリマーでテストした。すなわち、チッソ株式会社製のポリプロピレン(PP、FH3400、MI=4、結晶化温度398K)で、φ30mm、厚さ0.5mmを試験片とした。また、不活性ガスには二酸化炭素ガスを使用した。
【0041】
(3)テスト条件:上記試験片をシリンダ状容器50内のピストンヘッド室52に入れ、加熱ヒータ55により473Kに加熱し、試験片を溶融した。そして、不活性ガス供給装置60の圧力制御弁63により制御された超臨界圧力以上の17MPaのカウンタ圧力を加え、60分間保持した。この保持により、13.2wt%の二酸化炭素ガスが含浸した。また、12MPaのカウンタ圧力を同様に加え、60分間保持した。この保持により、7.0wt%の二酸化炭素ガスが含浸した。加熱ヒータ55による加熱を停止し、溶融樹脂の温度を低下させた。そして、373〜403Kの範囲の所定の温度で開放弁66を開いてカウンタ圧力を開放するテストを計15回行った。
【0042】
(4)上記テストの結果を表1に示す。また、発泡倍率とセル径と開放温度・圧力との関係を図4に、そして発泡密度と開放圧力・温度の関係を図5にそれぞれ示す。また、発泡状態のSEM写真を図6に示す。
Figure 2004017285
【0043】
上記テストから次のようなことが判明した。
(a)好適な発泡成形体を得る温度範囲は、封入圧力が17MPaのときは383〜388K、12MPaのときは388〜393Kであることが判明した。
(b)封入圧力の違いにより二酸化炭素の含浸量が違い、これが発泡密度に影響する。すなわち、封入圧力が低く含浸量が少ないと、好適な発泡温度範囲は圧力開放時の温度が高い方へシフトすることが判明した。
(c)それにもまして、発泡セルの成長は、ある温度条件から急激な成長をすることが図4から理解される。この成長の基点温度は、ある圧力開放時の圧力が17MPaのときは384Kであり、12MPaのときは385Kであった。したがって、微細な発泡セルを形成させるには、この温度から約5〜10Kの範囲で圧力を開放するのが望ましい。
(d)発泡セルの成長を抑止するには、成長を抑える抵抗すなわち発泡速度及び発泡力抑止加重を加えることも必要で、微細な発泡セルを得るもう一つの要因であることが分かった。
【0044】
本テストに使用したバッチ式発泡体成形装置は、シリンダ状容器50と、この容器内に上下動自在に設けられているピストン51と、不活性ガス供給装置60とからなる、バッチ式試験装置になっている。しかしながら、射出成形装置と金型とからなる発泡体成形機も、上記バッチ式試験装置と原理的には同じであるので、上記バッチ式試験の結果は、射出成形装置と金型とからなる発泡体成形機にも当てはまるといえる。したがって、射出成形装置と金型と使用した薄肉発泡成形品の成形には、次のような要件を具備するのが望ましいと言える。
【00045】
(イ)射出前の溶融・混練工程では、不活性ガスを溶融樹脂中へ高い圧力で注入し、高い溶解圧力と均一な分散、混合及び含浸時聞(滞留時間)が必要である。不活性ガスの注入、溶解圧力は、超臨界圧力以上、好ましくは12MPa以上、さらに好ましくは、17MPa以上である。
(ロ)金型においては射出前に予め超臨界状態のカウンタ圧力(発泡剤と同種のガスが好ましい)を封入し、適度な冷却工程中(PPの場合は、383〜398K、好ましくは383〜388K)に一気に圧力開放すると同時に金型を開き方向すなわちキャビティの容積を増加させる方向に作動させ、発泡を容易にする。
(ハ)均一な発泡を起こさせるには圧力開放時の温度が、発泡成形品の各部において差が生じないように制御することが必要である。
(ニ)発泡工程において、金型の型開き速度及び抵抗加重(背圧)を制御すると、発泡の成長を制御することができる。
(ヘ)発泡成形品が規定の厚さになる位置で型開きを停止し、その位置を冷却完了まで保持する。そうすると、厚さの変化も発泡倍率にほぼ追従する厚さ0.5〜1.25mmとなる。
(ト)発泡体成形機には、制御器、設定器等を備えたコントローラを設け、不活性ガスの注入圧力、金型の温度等はフイードバック制御により制御し、また金型の開き位置及び開き遠度もコントローラにより制御することが望ましい。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、金型のキャビティに、ガスによりカウンタ圧力をかけた後、ショートショットの状態で前記溶融樹脂を射出する射出工程と、この射出工程で射出された溶融樹脂を、前記金型を前記キャビティの容積が減少する方向に駆動して、押し広げる充填完了工程と、この充填完了工程時の金型の位置を、射出・充填された前記溶融樹脂の温度が所定の発泡温度に降下するまで保持する保持工程と、この保持工程の終了後、前記キャビティのカウンタ圧力を開放すると共に、前記金型を前記キャビティの容積が増加する方向に所定位置まで駆動して発泡させる発泡工程とからなるので、次のような本発明に特有の効果が得られる。
(1)射出工程時には、金型のキャビティに、ガスによりカウンタ圧力を封入後、ショートショットの状態で射出するので、すなわち溶融樹脂を金型のキャビティに射出・充填するとき、金型のキャビティの封入ガスにより、溶融樹脂を金型のキャビティに射出・充填するとき可塑化作用が生じ、充填が容易になる。また、ショートショットの状態で射出するので、比較的低圧で射出・充填することができ、さらには流動性の悪い、あるいは固化速度の速い樹脂も容易に射出・充填することもできる。
(2)充填完了工程時には、金型をキャビティの容積が減少する方向に駆動して、射出された溶融樹脂を押し広げるので、薄肉成形の場合でも、溶融樹脂はキャビティの末端まで充填され、形状品質に優れた薄肉発泡成形体を得ることができる。
(3)保持工程時には、溶融樹脂の温度が所定の発泡温度に降下するまで保持し、そして発泡工程時には、好適な温度でキャビティのカウンタ圧力を開放すると共に、金型を前記キャビティの容積が増加する方向に作用させて発泡させるので、均一な発泡セルを有する発泡成形体を得ることができる。また、表面はソリッド状のスキン層で光沢があり、内部のみ発泡した薄肉軽量は発泡成形体を得ることができる。
請求項2に記載の発明によると、不活性ガスが、二酸化炭素ガスまたは窒素ガスであるので、上記のような効果に加えて、溶融樹脂との化学反応の恐れがなく、取り扱いは容易で、また比較的安価に入手できるので、薄肉発泡成形体を安価に成形できる効果が得られる。請求項3に記載の発明によると、射出工程でかけられるカウンタ圧力が、不活性ガスの超臨界圧力以上であるので、また請求項4に記載の発明によると、溶融樹脂が結晶性樹脂からなり、保持工程における所定の発泡温度が結晶化温度(Tc)−15Kから結晶化温度(Tc)であるので、品質の高い薄肉発泡成形体を得ることができる。請求項5に記載の発明によると、発泡工程において、カウンタ圧力を開放すると同時に金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動し、その駆動量を制御して発泡倍率を制御するので、また請求項6に記載の発明によると、発泡工程において、金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動する速度と駆動抵抗により発泡セル径と発泡密度を制御するので、所望のセル径、セル密度、発泡倍率を有する薄肉発泡成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用される発泡成形装置を示す図で、その(イ)は射出成形機すなわち可塑化装置の実施の形態を一部断面にして示す正面図、その(ロ)は成形装置の実施の形態を示す断面図である。
【図2】成形装置による成形過程を示す図で、その(イ)は、ショートショットの充填状態を示す断面図、その(ロ)は金型を型閉じ方向に駆動してキャビティの末端部まで押し広げられた状態を示す断面図、その(ハ)はスキン層が成形された状態を示す断面図、その(ニ)はカウンタ圧力を解放後、金型を後退させ発泡が始まった状態を示す断面図、その(ホ)は目的の成形品厚さまで金型をさらに後退させた発泡状体を示す断面図である。
【図3】バッチ式発泡成形装置の模式的断面図である。
【図4】テストの結果を、発泡倍率&セル径と開放温度・圧力との関係で示すグラフである。
【図5】テストの結果を、発泡密度と開放温度・圧力との関係で示すグラフである。
【図6】テストの結果の、それぞれ異なる温度条件による発泡状態を示すSEM写真である。
【符号の説明】
1   固定金型     2   コア
3   温度調節手段   5   温度センサ
10  可動金型            11  凹部
12  キャビティ           20  カウンタ圧力付加装置
21  ガス供給管           22  ガスボンベ
25  カウンタ圧力開放絞り弁     23  圧力制御弁
50   シリンダ状容器        51  ピストン
52   ピストンヘッド室(キャビティ)60  不活性ガス供給装置
KS   不活性ガス供給装置       SS  成形装置
HS   発泡成形体          Ss  スキン層

Claims (9)

  1. 不活性ガスが溶解されている溶融樹脂を、金型のキャビティに射出・充填して発泡させる発泡成形方法において、
    前記金型のキャビティに、ガスによりカウンタ圧力を封入した後、ショートショットの状態で前記溶融樹脂を射出する射出工程と、
    この射出工程で射出された溶融樹脂を、前記金型を前記キャビティの容積が減少する方向に駆動して、押し広げる充填完了工程と、
    この充填完了工程時の金型の位置を、射出・充填された前記溶融樹脂の温度が所定の発泡温度に降下するまで保持する保持工程と、
    この保持工程の終了後、前記キャビティのカウンタ圧力を開放すると共に、前記金型を前記キャビティの容積が増加する方向に所定位置まで駆動して発泡させる発泡工程とからなる、薄肉発泡成形体の成形方法。
  2. 不活性ガスが、二酸化炭素ガスまたは窒素ガスである、請求項1に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  3. 射出工程でかけられるカウンタ圧力が、不活性ガスの超臨界圧力以上である、請求項1または2に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  4. 溶融樹脂が結晶性樹脂からなり、保持工程における所定の発泡温度が結晶化温度(Tc)−15K〜結晶化温度(Tc)である、請求項1〜3のいずれかの項に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  5. 発泡工程において、カウンタ圧力開放絞り弁の開度調整により圧力開放時間を制御し、さらに精密な発泡を制御する、請求項1〜4のいずれかの項に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  6. 発泡工程において、カウンタ圧力を開放すると同時に金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動し、その駆動量を制御して発泡倍率を制御する、請求項1〜5のいずれかの項に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  7. 発泡工程において、金型をキャビティの容積が増加する方向に駆動する速度と駆動抵抗により発泡セル径と発泡密度を制御する、請求項1〜6のいずれかの項に記載の薄肉発泡成形体の成形方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかの項に記載の薄肉発泡成形体の成形方法により得られる、厚さ0.5mm以下の結晶性樹脂の薄肉発泡成形体。
  9. シリンダ状容器と、該シリンダ状容器内に移動自在に設けられているピストンと、不活性ガス供給装置とからなり、
    前記シリンダ状容器内は、前記ピストンによりピストンヘッド室とピストンロッド室とに分けら、前記ピストンヘッド室は、可塑化室の作用を奏すると共に、キャビティの作用も奏するようになっていると共に、前記ピストンロッド室には前記ピストンを前記ピストンヘッド室の容積を減じる方向に付勢するバネが設けられ、前記ピストンヘッド室には前記不活性ガス供給装置から、少なくとも圧力において超臨界状態の不活性ガスが供給されるようになっている発泡体成形装置。
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