JP3687319B2 - フロントフェンダ取り付け構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のフロントフェンダの取り付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
フードリッジレインフォースとフェンダーパーティングラインとの距離が比較的大きい構造の自動車では、プレスの限界からフロントフェンダの内側端部を直接フードリッジレインフォースに接続できるほど深く確保することができず、何らかの中継部材を用いて接続せざるを得ない。また、中継部材を用いるとしても、フロントフェンダとフードリッジパネルとの間の隙間がエンジンルームから見えると見栄えが悪いため、この隙間を隠すための部材も必要となる。
【0003】
図3は、従来のフロントフェンダ取り付け構造が適用された自動車のボディ1を示す斜視図である。図中の符号2がフロントフェンダである。図4(A)、(B)は、それぞれ第1、第2の従来例を示し、共に図3のIV−IV線に沿う断面に相当する部分の断面図である。
【0004】
図4(A)に示す第1の従来例では、フードリッジ3の上面車外側に、断面「L」字状のフードリッジレインフォース4が接合されており、このフードリッジレインフォース4の上面に断面「コ」字状のブラケット5を介してフロントフェンダ2が取り付けられている。ブラケット5の下面は、ボルト6aとナット6bとを用いてフードリッジレインフォース4にトリム付けされ、このブラケット5の上面にフロントフェンダ2をボルト7aとナット7bとを用いてトリム付けしている。
【0005】
ブラケット5は、車体の前後方向に長い単一の部材であり、車体内側に側面が位置するよう固定され、上記の中継部材としての機能と、隙間を隠す部材としての機能とを併せ持つ。
【0006】
一方、図4(B)に示す第2の従来例では、フードリッジレインフォース4に断面「L」字状のブラケット8を配置すると共に、その「L」字状のブラケット8の上に断面「コ」字状のブラケット9を複数配置し、これらをボルト6aとナット6bとを用いてフードリッジレインフォース4にトリム付けする。また、「コ」字状ブラケット9にボルト7aとナット7bとを用いてフロントフェンダ2を固定している。「L」字状のブラケット8は、車体の前後方向に長い単一の部材であり、隙間を隠す部材として機能する。また、「コ」字状のブラケット9は、所定の間隔で複数設けられ、中継部材としての機能を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来例では、それぞれ以下に示す問題がある。すなわち、図4(A)に示す第1の従来例では、「コ」字状ブラケット5にスプリングバックがあるため、その高さ方向における寸法のバラツキが大きく、フロントフェンダ2の高さ方向の精度を確保することができないという問題がある。また、ブラケット5のフードリッジレインフォース4への固定箇所と、フロントフェンダ2のブラケット5への固定箇所とで2段階のトリム付けをする必要があるため、いずれかを溶接する場合と比較して前後左右方向の位置精度が低くなりがちである。
【0008】
一方、図4(B)に示す第2の従来例では、「L」字状のブラケット8および「コ」字状のブラケット9をフードリッジ3への接合前に予めフードリッジレインフォース4に溶接しておくこともできるが、その場合には、フードリッジ3とフードリッジレインフォース4との溶接に支障をきたさないように、ブラケット8の位置や形状につき造形上の制約が大きい。造形状の自由度を求める場合には、ブラケット8、9をトリム付けする必要があり、図4(A)の例と同様に2段階のトリム付けが必要となり、いずれかを溶接する場合と比較して前後左右方向の位置精度が低くなりがちである。また、ブラケットの端縁は一般に錆が発生しやすいが、第2の従来例では「L」字状のブラケット8の上端面がエンジンルームから見えるため、この部分が錆びたときに見栄えが悪いという問題もある。
【0009】
この発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、フロントフェンダの高さ方向、および前後左右方向の位置精度を高く保つことができ、しかも、ブラケットの造形上の自由度を大きく確保することができるフロントフェンダ取り付け構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかるフロントフェンダ取り付け構造は、車両のフードリッジレインフォースに取り付けブラケットを介してフロントフェンダを取り付けるフロントフェンダ取り付け構造において、取り付けブラケットが、フロントフェンダに沿って延設された略「L」字状のブラケット本体と、該ブラケット本体が固定される複数の車体側固定部とを備え、ブラケット本体が、「L」字型の一方の側面となる被覆面を車体内側に向けた状態で、他方の側面となる接合面をフロントフェンダ下面に予め接合することにより固定されると共に、車体前方側には、被覆面の下端と同一の高さで接合面とほぼ平行な固定片が形成され、車体側固定部が、予め車体側に一体に固定されると共に、車体前方側の車体側固定部が、ラジエタコアアッパ部材に形成され、固定片がラジエタコアアッパ部材に形成された車体側固定部に対応していることを特徴とする。
【0011】
車体後方側の車体側固定部は、車体側に固定されたフードヒンジと一体に形成することができる。なお、フロントフェンダに「L」字状ブラケット本体を予めスポット溶接する場合、フロントフェンダに形成された固定孔に対向してブラケット本体に形成された挿通孔の径を固定孔の径より大きく設定することが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかるフロントフェンダ取り付け構造の実施形態を説明する。図1は、この発明にかかるフロントフェンダ取り付け構造の実施形態を示す断面図であり、図2は図1のフロントフェンダ取り付け構造の全体を示す分解斜視図である。
【0013】
実施形態のフロントフェンダ取り付け構造では、フードリッジ10の上面車外側に、断面「L」字状のフードリッジレインフォース11が接合されており、このフードリッジレインフォース11の上面に取り付けブラケットを介してフロントフェンダ12が取り付けられている。そして、取り付けブラケットは、フロントフェンダ12に沿って延設された略「L」字状のブラケット本体21と、このブラケット本体21が固定される第1、第2、第3の車体側固定部22、23、24とを備えている。ブラケット本体21は、車体の前後方向に長い単一の部材であり、隙間を隠す部材としての機能を有する。また、第1、第2、第3の車体側固定部22、23、24は、中継部材としての機能を有している。
【0014】
車体後方側の第1の車体側固定部22は、予め溶接により車体側に固定されたフードヒンジ13と一体に形成されている。また、車体前方側の第2の車体側固定部23は、ラジエタコアアッパ部材14に形成されている。これらの中間部における第3の車体側固定部24は、図2に示すようなクランク状の部材であり、予め溶接により車体側に固定されている。
【0015】
ブラケット本体21は、「L」字型の一方の側面となる被覆面21aを車体内側に向けた状態で、他方の側面となる接合面21bをフロントフェンダ12の下面に予め溶接することによりフロントフェンダ12に固定される。図2中に示される4カ所の黒点が、フロントフェンダ12とブラケット本体21とのスポット溶接の位置を示している。
【0016】
フロントフェンダ12には、ブラケット本体21が接合される面に、第1、第3の車体側固定部22,24に対応して第1、第2の固定孔12a、12bが穿設されており、ブラケット本体21の接合面21bには、これらの固定孔12a、12bに対応する位置に、固定孔より大径の挿通孔21d、21fが形成されている。
【0017】
なお、この例では、フロントフェンダ12の先端が車体前方側の第2の車体側固定部23に達する位置まで延びておらず、第2の車体側固定部23に対しては、ブラケット本体21のみが固定されるように構成されている。このため、ブラケット本体21の車体前方側には、被覆面21aの下端と同一の高さで接合面21bとほぼ平行な固定片21cが一体に形成されており、この固定片21cに、第2の車体側固定部23に対応する固定孔21eが穿設されている。
【0018】
図1は、第3の車体側固定部24の位置での断面を示しており、この部分では、フードリッジレインフォース11に接合された車体側固定部24に対して、ブラケット本体21が接合されたフロントフェンダ12がボルト30とナット31とを用いてトリム付けされている。なお、ナット31は車体側固定部24を車体に取り付ける前に溶接、固定しておく。他の車体側固定部22、23についても同様であり、あらかじめナットを固定しておき、フロントフェンダ12、ブラケット本体21を固定する際にボルトを螺合させる。
【0019】
次に、上記の実施形態にかかるフロントフェンダ取り付け構造の組み付け手順について説明する。
最初に、車体側固定部22、23、24を車体側に溶接により取り付ける。第3の車体側固定部24は、フードリッジ10とフードリッジレインフォース11とを接合する前の段階で固定される。ただし、第3の車体側固定部24は部材自体が小さく、特に設計上の制約をしなくともフードリッジ10とフードリッジレインフォース11とを接合する際の支障にはならない。また、ブラケット本体21については、フードリッジ側の溶接の支障となるか否かを考慮しなくともよいため、造形上自由な設計が可能である。
【0020】
続いて、フードリッジ10とフードリッジレインフォース11溶接して車体に組み付ける一方、フロントフェンダ12の車内側下面にブラケット本体21をスポット溶接により固定する。このとき、フロントフェンダ12に形成された固定孔12a、12bと比較して、ブラケット本体21に形成された挿通孔21d、21fの方が径が大きく設定されているため、溶接位置が多少ずれた場合にも、後の固定の支障となることがない。フロントフェンダ12の位置精度は、ブラケット本体21の位置精度による影響を受けないため、ブラケット本体固定時の多少のズレは許容される。
【0021】
最後に、一体に固定されたフロントフェンダ12とブラケット本体21とを固定孔12a、12b、21eがそれぞれ車体側固定部22、24、23に合うように位置決めして配置し、ボルトにより固定する。フロントフェンダ12の位置精度は、車体側固定部22、23、24の位置精度により決定されるが、実施形態の構成によれば、従来の「コ」字状のブラケットを利用するより高さ方向の誤差を小さくすることができ、しかも、車体側固定部22、23、24は車体側に溶接されるため、1回のトリム付けによる誤差を受けるのみなので、従来のように2段階のトリム付けをする場合と比較すると、前後左右方向の位置精度も高く保つことができる。また、取付工程数の増大を抑制し、製造コストを減少させることが出来る。
【0022】
なお、ブラケット本体21は、端縁が見えないように配置されているため、たとえ端縁錆が発生した場合にも、エンジンルームからは見えず、見栄えの劣化を防ぎ、外観品質を良好に保つことができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、取り付けブラケットを、フロントフェンダに沿って延設された略「L」字状のブラケット本体と、ブラケット本体が固定される複数の車体側固定部とから構成し、ブラケット本体をフロントフェンダに予め固定すると共に、車体側固定部を車体側に予め固定しておくことにより、フロントフェンダの高さ方向、および前後左右方向の位置精度を高く保つことができ、しかも、ブラケットの造形上の自由度を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施形態にかかるフロントフェンダ取り付け構造を示す断面図である。
【図2】 図1のフロントフェンダ取り付け構造の全体を示す分解斜視図である。
【図3】 従来のフロントフェンダ取り付け構造が適用された自動車のボディを示す斜視図である。
【図4】 図3のIV−IV線に沿う断面図であり、(A)は第1の従来例、(B)は第2の従来例を示す。
【符号の説明】
10 フードリッジ
11 フードリッジレインフォース
12 フロントフェンダ
13 フードヒンジ
21 ブラケット本体
21a 被膜面
21b 接合面
22,23,24 車体側固定部
Claims (3)
- 車両のフードリッジレインフォースに取り付けブラケットを介してフロントフェンダを取り付けるフロントフェンダ取り付け構造において、
前記取り付けブラケットは、前記フロントフェンダに沿って延設された略「L」字状のブラケット本体と、該ブラケット本体が固定される複数の車体側固定部とを備え、
前記ブラケット本体は、「L」字型の一方の側面となる被覆面を車体内側に向けた状態で、他方の側面となる接合面を前記フロントフェンダ下面に予め接合することにより固定されると共に、車体前方側には、前記被覆面の下端と同一の高さで前記接合面とほぼ平行な固定片が形成され、
前記車体側固定部は、予め車体側に一体に固定されると共に、車体前方側の前記車体側固定部は、ラジエタコアアッパ部材に形成され、
前記固定片は、前記ラジエタコアアッパ部材に形成された車体側固定部に対応していることを特徴とするフロントフェンダの取り付け構造。 - 車体後方側の前記車体側固定部は、車体側に固定されたフードヒンジと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントフェンダ取り付け構造。
- 前記フロントフェンダに「L」字状ブラケット本体を予めスポット溶接すると共に、前記フロントフェンダに形成された固定孔に対向して前記ブラケット本体に形成された挿通孔の径を前記固定孔の径より大きく設定したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のフロントフェンダ取り付け構造。
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