JP3687152B2 - 撥水制電性布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯耐久性のある撥水性と、制電性の両方の性能を兼ねそなえた布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、撥水性と制電性の両者の性能を同時に得ることは難しく、撥水性は繊維を疎水化することにより得られる性能であり、また制電性は繊維を親水化することにより繊維表面の電気抵抗を低減し得られる性能である。この両者全く相反する性能を両立させることは非常に困難であった。
【0003】
一般には、撥水加工時にカチオン系界面活性剤やポリカチオン誘導体等の高分子電解質の帯電防止剤を併用する方法が行なわれているが、制電性能は一時的なものであり洗濯耐久性には乏しいものであった。また、この帯電防止剤が洗濯により脱落するのと同時に、撥水剤をも脱落させてしまうため、撥水性、制電性共に洗濯後の性能は大幅に低下するものであった。
【0004】
特開昭56-144274 号公報には、あらかじめ帯電防止剤で処理された織物の片面に撥水剤を塗布して得られた撥水性と制電性を有する両面異質の織物が提案されている。しかしながら、洗濯耐久性に乏しく、また織編物の糸条の間から入り込んだ水が片面の吸水面にしみ込み、衣服にした場合着用感を著しく低下されるものであった。
【0005】
また特開昭57-106776 号公報には、フッ素系化合物とポリアルキレンオキサイドの共重合体による被膜を有する繊維構造物が、撥水性および制電性の両性能を有するものとして提案されている。しかし撥水性能は発現しにくく、洗濯耐久性についても満足できるものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、洗濯耐久性のある撥水性と制電性の両方の性能を兼ねそなえた布帛を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の課題を満足するため以下の構成を有する。
【0008】
すなわち、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも2個以上のアクリルまたは/およびメタクリル基を有する単量体を重合させてなる被膜で表面が覆われた単繊維からなる布帛であって、該被膜上にポリフルオロアルキル基含有アクリル共重合体が固着しており、さらにアミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂の反応物のうち少なくともいずれかを有することを特徴とする撥水制電性布帛である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のアクリルまたは、およびメタクリル基を2個以上含有する化合物として、ポリエチレングライコールジアクリレート、ポリエチレングライコールポリプロピレングライコールジメタクリレート、ポリエチレングライコールw−(α,α−ジメタクリロキシメチル)アセテートw′アクリレート、および下記一般式[I ]、[II]のごとき主鎖の側鎖にビニル基を含有するものを用いることができる。
【0011】
【化1】
【化2】
(但し、R1 、R2 は水素またはメチル基、l=5〜500である。)
該化合物の重合された被膜を単繊維表面に形成させる方法としては、該化合物と、重合開始剤を含む水溶液を布帛に付与し、次いで80〜140℃で蒸熱処理し、該化合物の重合反応を開始させ、重合完了後、未反応物を湯洗、乾燥するのが好ましい。
【0012】
処理液を布帛に付与する手段としては、特に限定されるものではなく、浸漬法、パッド法、スプレー法、捺染法など、いかなる方法でもよいが、本発明では、パッド法が最も好ましい。
【0013】
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモン、過硫酸カリ、アゾビスイソブチロニトリル等、一般的なビニル重合開始剤が利用でき、また、かかる重合開始剤の種類を選択することにより適宜所望処理条件で繊維表面上に被膜を形成することができる。
【0014】
このように形成された該被膜は、制電性や風合の観点から、単繊維表面に厚み0.01〜10μmで存在するのが好ましく、0.1〜5μmで存在するのはより好ましい。この被膜は前記化合物の重合体によって連続または非連続に形成されたものであるのが好ましい。
【0015】
本発明は、該被膜の上に、さらにポリフルオロアルキル基含有アクリル共重合体を主成分とする撥水剤(以下、フッ素系撥水剤という)とアミノプラスト樹脂または多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂の反応物が接合された布帛である。
【0016】
あるいはフッ素系撥水剤とアミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂の反応物が接合された布帛である。
【0017】
本発明でいうフッ素系撥水剤は、特に限定されるものではないが、例えば、C3 〜C20のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基を有する単量体のみの単独重合により製造されるものや、前記ビニル単量体とポリフルオロアルキル基およびポリフルオロアルキル基を有しない他のビニル単量体との共重合により製造されるものを用いることができる。ポリフルオロアルキル基またはポリフルオロアルキル基を有するビニル単量体としては、例えば、下記に示すものを用いることができる。
【0018】
CH2 =CHCOOCH2 C7 F15
CH2 =C(CH3 )COOCH2 C6 F12CF3 (CF3 )
CH2 =CHCOO(CH2 )2 N(C3 H7 )SO2 C8 F17
C6 F13CH2 CH2 OH
C8 F17SO2 (C3 H7 )CH2 CH2 OH
C8 F17SO2 (C3 H7 )CH2 OOCNH(CH2 )6 NH(CH2 CH2 O)11CH3
ポリフルオロアルキル基およびポリフルオロアルキル基を有しない他のビニル単量体としては、例えば、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、スチレン、ベンジルアクリレート、ビニルアルキルケトン、無水マレイン酸、イソプレン、シロキサン、ブロックイソシアネートのビニル単量体などを含む共重合体を主成分とするフッ素系撥水剤が好適である。
【0019】
アミノプラスト樹脂としては、公知のものを用いることができるが、具体的には、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのメラミン樹脂、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールヒドロキシ尿素などの尿素系樹脂、ジメチロールウロンなどのウロン樹脂を用いることができる。
【0020】
また、アミノプラスト樹脂と共に、硬化触媒を用いてもよく、例えば、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸のアンモニウム、アルミニウム、また亜鉛などの塩類、ギ酸、酢酸、アクリル酸、こはく酸などの有機酸の塩類などを用いることができる。
【0021】
他官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂は、分子中に2個以上のブロックイソシアネート官能基を含む有機化合物であれば特に限定されるものではない。具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニールメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニールメタンジイソシアネート、トリフェニールトリイソシアネート、キシレジンイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、グリセリントリレンジイソシアネートアダクトなどに70〜200℃の加熱時に解離して活性なイソシアネート基が再生できるようなブロッキング化合物としてフェノール、マロン酸ジエチル、メチルエチルケトオキシム、重亜硫酸ソーダε−カプロラクタムなどを反応させた多官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂を用いることができる。多官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂は、少量の界面活性剤を配合して強制的に乳化した水分散液体として使用することが好ましい。上記の中でも、ジフェニールメタンジイソシアネートのメチルエチルケトオキシムや、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクトのメチルエチルケトオキシムの水分散液体は好適である。
【0022】
また、ブロックイソシアネートの熱分離速度の向上と、熱解離温度の低下を促進するため解離触媒を使用してもよく、例えばジブチルスズジオレート、ジブチルスズジステアレート、ステアリル亜鉛、有機アミン化合物が好ましい。
【0023】
上記フッ素系撥水剤とアミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂の反応物を該被膜上に接合させる方法については、特に限定されるものではなく、フッ素系撥水剤、アミノプラスト樹脂もしくは多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂を一浴に含む処理液またはフッ素系撥水剤、アミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂を一浴に含む処理液を、該被膜が形成された布帛に付与し、加熱処理するのが好ましい。
【0024】
該被膜で覆われた布帛上で、洗濯耐久性のある撥水性を得るためには、布帛100重量部に対し、フッ素系撥水剤は、固形分で0.01〜10重量部であるのが好ましく、0.03〜5重量部使用するのがより好ましく、アミノプラスト樹脂については同じく固形分で0.01〜2重量部が好ましく、0.02〜1重量部であるのがより好ましい。
【0025】
また多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂についても、同じく固形分で0.01〜4重量部であるのが好ましく、0.03〜1重量部使用するのはより好ましい。
【0026】
これらを一浴に含む処理液を該被膜が形成された布帛に、パッド法、コーティング法、スプレー法などの方法により均一に付与し、100℃前後で乾燥し、好ましくは120〜200℃、より好ましくは、140〜180℃で15秒〜5分、熱処理することにより、該被膜上に、該反応物を接合することができる。
【0027】
本発明で言う接合とは、接着あるいは、化学的に結合していることをいう。接合が接着であろうが、化学的結合であろうが、本発明の効果の有無を直接左右するものではない。
【0028】
本発明に係る布帛に、他の性能を付与するために、一般に用いられる処理剤、例えば、アミノやハイドロゼンポリシロキサン系シリコン柔軟剤、ポリエステルやフッ素系防汚剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、セラミック、抗菌剤、消臭剤、色素などをフッ素系撥水剤を含有し、さらにアミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂のうち少なくともいずれかを含む処理液に混合して処理することもできる。
【0029】
本発明でいう布帛とは、天然繊維、合成繊維およびこれらの混紡、交撚、交編、交織物などのことをいう。特に、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリ塩化ビニール繊維などにより構成された布帛が好ましい。
【0030】
上記のように、繊維上に、該被膜と、また該被膜に接合された該反応物とを形成することにより、従来には得られなかった、洗濯20回(JIS L-103法) での撥水性が70点(JIS L-1096 スプレー法) 以上、摩擦帯電圧が2000V以下(JIS L-1094 (20℃×30%RH)) という撥水性と制電性を両立させた布帛を得ることができる。
【0031】
【実施例】
本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。
【0032】
なお、実施例および比較例中に示す、撥水性は、JIS L−1092スプレー法による撥水性点数によって表わした。また摩擦帯電圧については、JIS L−1094(20℃×30%RH)法で測定した。
【0033】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
ポリエステル100%の加工糸織物を通常の方法により、リラックス精練、乾燥、染色、還元洗浄、乾燥した後、式〔III 〕のポリエチレングライコールジメタクリレート3重量%の水溶液に、重合開始剤APSを0.3重量%添加した処理液をパッディングして、付着量を88重量%に調整した。
【0034】
【化3】
次いで、105℃×5分間の蒸熱処理を行なった。引きつづき未反応物をサンデットG−29 1g/l (三洋化成(株)製界面活性剤)を用い、浴比1:100、60℃×20分ソーピングを行なった後、水洗乾燥した。この処理を〔A〕とする。
【0035】
また表1に示す配合で調合した処理液を付着量を60重量%にパッディングし、120℃×2分乾燥し、次いで、160℃×45秒間乾燥処理をした。
【0036】
処理順序は1、2の順で行なった。
【0037】
【表1】
(表中、マックスガード EC−243(フッ素系撥水剤):株式会社京絹化成製、スミテックスレジン MK(ヘキサメチロールメラミン):住友化学工業株式会社製、カタリスト RC−W(有機アミン系触媒):株式会社京絹化成製、スーパーフレッシュ JB−7200(多官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂):株式会社京絹化成製、カタリスト WL−2(有機スズ系触媒):株式会社京絹化成製、ナイスポール FE−26(カチオン系帯電防止剤):日華化学株式会社製)
表1より明らかなごとく、本発明法による加工布は、洗濯20回後も撥水性70点、摩擦帯電圧2000V以下を示し、優れた耐久撥水性と耐久制電性を有していた。
【0038】
なお、〔A〕による皮膜の厚さは、電顕による検鏡の結果0.8μmであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、従来困難であった、洗濯耐久性に優れた撥水性と制電性を両立した布帛を得ることができ、コート、ブルゾン等のカジュアル衣料として最適なものを得ることができる。
Claims (3)
- ポリアルキレンオキサイドセグメントを主体とする主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも2個以上のアクリルまたは/およびメタクリル基を有する単量体を重合させてなる被膜で表面が覆われた単繊維からなる布帛であって、該被膜上にポリフルオロアルキル基含有アクリル共重合体が固着しており、さらにアミノプラスト樹脂および多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂の反応物のうち少なくともいずれかを有することを特徴とする撥水制電性布帛。
- 洗濯回数20回後(JIS-L-130) の撥水性が70点以上(JIS L-1096スプレー法)、摩擦帯電圧が2000V以下(JIS L-1094 (20℃×30%RH)) であることを特徴とする請求項1に記載の撥水制電性布帛。
- 被膜が、0.01〜10μmの厚さの重合体によって形成された連続または非連続の被膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水制電性布帛。
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