JP3682506B2 - コーティング用組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コーティング用組成物に関し、さらに詳しくは、光触媒能を有する半導体成分を含有するオルガノシラン系コーティング用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オルガノシラン系コーティング材は、耐候性、耐光性、耐汚染性等に優れたメンテナンスフリーのコーティング材として技術開発が進められているが、このようなオルガノシラン系コーティング材に対する要求性能はますます厳しくなっており、近年では塗膜外観、密着性、耐候性、耐熱性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐絶縁性、耐摩耗性、耐汚染性等に優れ、硬度の高い塗膜を形成することのできるコーティング材が求められている。
特に耐汚染性を改善するためには、塗膜表面を親水性化するとよいことが認められており、例えば親水性物質や水溶性物質を添加する方法が提案されているが、このような方法では、親水性物質や水溶性物質が次第に光により劣化したり、水により洗い流されたりして、塗膜表面の親水性を十分なレベルに長期にわたり持続することが困難であった。
また近年、光触媒成分を配合したコ−ティング用組成物が数多く提案されており、その例として、チタン酸化物、加水分解性珪素化合物(アルキルシリケートまたはハロゲン化珪素)の加水分解物、および溶媒(水またはアルコール)からなる光触媒用酸化チタン塗膜形成性組成物(特開平8−164334公報)、少なくとも2個のアルコキシ基を有するケイ素化合物、少なくとも2個のアルコキシ基を有するチタン化合物またはジルコニウム化合物、およびグアニジル基を有するアルコキシシランおよび/またはポリシロキサンで処理された酸化チタン等の親水性無機粉末からなる、抗菌防黴性を付与するための表面処理組成物(特開平8−176527公報)のほか、テトラアルコキシシラン20〜200重量部、トリアルコキシシラン100重量部およびジアルコキシシラン0〜60重量部を原料とし、該原料から調整されるポリスチレン換算重量平均分子量が900以上の無機塗料と光触媒機能を有する粉末との混合液から得られる塗膜を酸またはアルカリで処理する無機塗膜の形成方法(特開平8−259891公報)等が知られている。
しかしながら、これらの塗膜形成用の組成物や混合液は、本質的に光触媒成分あるいはグアニジル基を有するアルコキシシランおよび/またはポリシロキサン成分に基づく抗菌・防黴、脱臭や有害物質の分解を意図したものであり、これらの作用に加えて、オルガノシラン系コーティング材に求められる耐熱性、耐候性、耐汚染等を含めた塗膜性能が総合的に検討されていない。
一方、オルガノシラン系コーティング材に対する要求性能をある程度満たすコーティング用組成物として、オルガノシランの部分縮合物、コロイダルシリカの分散液およびシリコーン変性アクリル樹脂を配合した組成物(特開昭60−135465号公報)、オルガノシランの縮合物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物および加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂を配合した組成物(特開昭64−1769号公報)、オルガノシランの縮合物、コロイド状アルミナおよび加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂を配合した組成物(米国特許第4,904,721号明細書)等が提案されている。
しかしながら、前記特開昭60−135465号公報および米国特許第4,904,721号明細書に記載されている組成物から得られる塗膜は、長時間の紫外線照射により光沢が低下するという欠点がある。また、前記特開昭64−1769号公報に記載されている組成物は、保存安定性が充分ではなく、固形分濃度を高くすると短期間でゲル化し易いという問題を有している。
さらに、本出願人は既に、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、加水分解性および/または水酸基と結合したけい素原子を有するシリル基を有するビニル系樹脂、金属キレート化合物並びにβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエスエル類を含有するコーティング用組成物(特開平5−345877号公報)を提案しており、該組成物は、オルガノシラン系コーティング材に求められている前記塗膜性能のバランスに優れているが、これらの性能についても、さらなる改善が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記問題点を背景になされたものであり、その課題は、特定のオルガノシラン成分と光触媒能を有する半導体成分とを含有し、特に保存安定性が優れ、かつ耐候性、耐熱性、耐汚染等にも優れた塗膜を形成することのできるコーティング用組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)下記一般式(1)
(R1)n Si(OR2)4-n ...(1)
(式中、R1 は水素原子または炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基またはフェニル基を示し、nは1または2の整数である。)で表されるオルガノシランを全オルガノシランの90重量%以上含有する加水分解性オルガノシラン成分の部分縮合物からなり、該部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜50,000の範囲にある部分縮合物、
(B)光触媒能を有する半導体の粉体および/またはゾル、
(C)水および/または有機溶剤、並びに
(D)3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリエトキシシラン、下記一般式(2)で表される化合物あるいは該化合物の部分加水分解物、および同一の錫原子に結合した炭素数1〜10のアルキル基を1〜2個有する4価錫の有機金属化合物あるいは該有機金属化合物の部分加水分解物の群の単独または2種以上の混合物を含む、(A)成分の加水分解・縮合反応を促進する触媒
M(OR3)p (R4 COCHCOR5)q ・・・(2)
(式中、Mはジルコニウム、チタンまたはアルミニウムを示し、R3 およびR4 は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R5 は炭素数1〜6の1価の炭化水素基または炭素数1〜16のアルコキシル基を示し、pおよびqは0〜4の整数で、(p+q)=(Mの原子価)である。)
を含有することを特徴とするコ−ティング用組成物、
からなる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコ−ティング用組成物を構成する各成分について、順次説明する。
(A)成分
本発明における(A)成分は、前記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(1)」という。)を全オルガノシランの90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有する加水分解性オルガノシラン成分の部分縮合物からなり、該部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜50,000、好ましくは2,000〜30,000の範囲にある部分縮合物であり、本発明のコーティング用組成物において主たる結合剤として作用するものである。
一般式(1)において、R1 の炭素数1〜8の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基、アシル基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基等のほか、これらの基の置換誘導体を挙げることができる。
R1 の置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナ−ト基、ウレイド基、アンモニウム塩基等を挙げることができる。但し、これらの置換誘導体からなるR1 の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。
一般式(1)中に複数存在するR1 は、相互に同一でも異なってもよい。
また、R2 の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基等を挙げることができる。
一般式(1)中に複数存在するR2 は、相互に同一でも異なってもよい。
【0006】
一般式(1)のnが1であるオルガノシラン(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、
n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類のほか、メチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン等を挙げることができる。
これらのオルガノシランのうち、トリアルコキシシラン類が好ましく、さらに好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランである。
【0007】
また、一般式(1)のnが2であるオルガノシラン(1)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類のほか、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン等を挙げることができる。
本発明において、オルガノシラン(1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0008】
(A)成分の部分縮合物を構成する加水分解性オルガノシラン成分は、場合により、一般式(1)のnが0であるオルガノシラン(以下、「他のオルガノシラン」という。)を含有することもできる。
他のオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン等を挙げることができる。
これらの他のオルガノシランは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
他のオルガノシランの使用量は、(A)成分の部分縮合物を構成する加水分解性オルガノシラン成分の合計量の10重量%以下である。
【0009】
オルガノシラン(1)は、予め加水分解・部分縮合させて(A)成分として使用することもできるが、後述するように、オルガノシラン(1)を残りの成分と混合して組成物を調製する際に、適量の水を添加することにより、オルガノシラン(1)を加水分解・部分縮合させて、(A)成分とすることが好ましい。
(A)成分をなす部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、1,000〜50,000、好ましくは2,000〜30,000の範囲にある。(A)成分の好適なMwは、組成物の成膜性、あるいは塗膜の硬度や柔軟性等に応じて、前記範囲内で適宜選定される。
また、(A)成分の市販品には、三菱化学(株)製のMKCシリケート、多摩化学(株)製のシリケート、東レ・ダウコーニング社製のシリコンレジン、東芝シリコーン(株)製のシリコンレジン、日本ユニカ(株)製のシリコンオリゴマー等があり、これらをそのまま、あるいは縮合させて使用してもよい。
本発明において、(A)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0010】
(B)成分
本発明における(B)成分は、光触媒能を有する半導体の粉体および/またはゾルからなる。
光触媒能を有する半導体としては、例えば、TiO2 、TiO3 、SrTiO3 、
FeTiO3 、WO3 、SnO2 、Bi2 O3 、In2 O3 、ZnO、Fe2 O3 、
RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、
LaRhO3 、GaN、CdP、ZnS、ZnSe、ZnTe、Nb2 O5 、ZrO2 、InP、GaAsP、InGaAlP、AlGaAs、PbS、InAs、PbSe、
InSb等を挙げることができ、好ましくはTiO2 、ZnOである。
本発明においては、(B)成分の光触媒能により、微弱な光によっても短時間で塗膜表面が親水性化され、その結果他の塗膜性能を実質的に損なうことなく、塗膜の耐汚染性を著しく改善できることが明らかとなった。しかも、本発明のコーティング用組成物から得られる塗膜中では、(B)成分が前記(A)成分等と共縮合しており、塗膜の親水性、耐汚染性が長期にわたり持続される。
【0011】
(B)成分の存在形態には、粉体、水に分散した水系ゾル、イソプロピルアルコ−ル等の極性溶媒やトルエン等の非極性溶媒に分散した溶媒系ゾルの3種類がある。溶媒系ゾルの場合、半導体の分散性によっては、さらに水や溶媒で希釈して用いてもよい。これらの存在形態における半導体の平均粒子径は、光触媒能の観点では小さいほど好ましい。この場合、半導体の平均粒子径が0.1〜0.5μmであると、半導体の光隠ぺい作用により塗膜が不透明となり、また0.05〜0.1μmであると、塗膜が半透明となり、さらに0.05μm以下であると、塗膜が透明となり、半導体の平均粒子径は、コーティング用組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
(B)成分が水系ゾルあるいは溶媒系ゾルである場合の固形分濃度は、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下である。
(B)成分を組成物中に配合する方法としては、前記(A)成分と後述する(C)〜(F)成分等からなる組成物の調製後に添加してもよく、あるいは該組成物の調製時に添加して、(B)成分の存在下で(A)成分等を加水分解・部分縮合させることもできる。(B)成分を組成物の調製時に添加すると、(B)成分中の半導体化合物を(A)成分等と共縮合させることができ、得られる塗膜の長期耐久性が改善される。また、(B)成分が水系ゾルである場合は、組成物の調製時に添加するのが好ましく、さらに後述する(F)成分の配合により系内の粘性が上昇する場合にも、(B)成分を組成物の調製時に添加する方が好ましい。さらに、本発明のコーティング用組成物が着色成分を含有するエナメルとして用いられる場合は、(B)成分を組成物に添加したのち調色を行なってもよく、また(B)成分と着色成分とを同時に組成物に添加してもよい。
本発明において、(B)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(B)成分の使用量は、(A)成分におけるオルガノシラン(1)100重量部に対して、固形分で、通常、1〜500重量部、好ましくは5〜400重量部である。
【0012】
(C)成分
本発明における(C)成分は、水および/または有機溶剤からなる。
水は、本発明のコーティング用組成物を調製する際に、オルガノシラン(1)や他のオルガノシランを加水分解・部分縮合反応させ、あるいは粒子状成分を分散させるために添加される。
本発明における水の使用量は、(A)成分中の加水分解性オルガノシラン成分の合計1モルに対して、通常、0.5〜3モル、好ましくは0.7〜2モル程度である。
【0013】
また、前記有機溶剤は、主として(A)成分、(B)成分、下記する(D)〜(F)成分等を均一に混合させ、組成物の全固形分濃度を調整すると同時に、種々の塗装方法に適用できるようにし、かつ組成物の分散安定性および保存安定性をさらに向上させるために使用される。
このような有機溶剤としては、前記各成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等の1種類以上を挙げることができる。
これらの有機溶剤のうち、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等を、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明のコーティング用組成物の全固形分濃度は、好ましくは50重量%以下であり、使用目的に応じて適宜調整される。例えば、薄膜形成基材への含浸を目的とするときには、通常、5〜30重量%であり、また厚膜形成を目的で使用するときには、通常、20〜50重量%、好ましくは30〜45重量%である。組成物の全固形分濃度が50重量%を超えると、保存安定性が低下する傾向がある。
【0014】
(D)成分
本発明における(D)成分は、3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリエトキシシラン、前記一般式(2)で表される化合物(以下、「有機金属化合物(2)」という。)あるいはその部分加水分解物、および同一の錫原子に結合した炭素数1〜10のアルキル基を1〜2個有する4価錫の有機金属化合物(以下、「有機錫化合物」という。)あるいはその部分加水分解物の群の単独または2種以上の混合物を含む、(A)成分の加水分解・縮合反応を促進する触媒である。
本発明においては、(D)成分を使用することにより、得られる塗膜の硬化速度を高めるとともに、使用される加水分解性オルガノシラン成分の重縮合反応により生成されるポリシロキサン樹脂の分子量が大きくなり、強度、長期耐久性等に優れた塗膜を得ることができ、かつ塗膜の厚膜化や塗装作業も容易となる。
【0015】
一般式(2)において、R 3 、R 4 およびR 5 の炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を挙げることができ、R5 の炭素数1〜16のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等を挙げることができる。
【0016】
有機金属化合物(2)の具体例としては、
テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等の有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物
等を挙げることができる。
これらの有機金属化合物(2)およびその部分加水分解物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が好ましい。
【0017】
また、有機錫化合物の具体例としては、
(C4 H9)2 Sn(OCOC11H23)2、
(C4 H9)2 Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、
(C4 H9)2 Sn(OCOCH=CHCOOC4 H9)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(OCOC11H23)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4 H9)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC16H33)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC17H35)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC18H37)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC20H41)2、
【0018】
【化1】、
【0019】
(C4 H9)Sn(OCOC11H23)3、
(C4 H9)Sn(OCONa)3
等のカルボン酸型有機錫化合物;
(C4 H9)2 Sn(SCH2 COOC8 H17)2、
(C4 H9)2 Sn(SCH2 CH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 CH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 COOC12H25)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 CH2 COOC12H25)2、
(C4 H9)Sn(SCOCH=CHCOOC8 H17)3、
(C8 H17)Sn(SCOCH=CHCOOC8 H17)3、
【0020】
【化2】
【0021】
等のメルカプチド型有機錫化合物;
(C4 H9)2 Sn=S、(C8 H17)2Sn=S、
【0022】
【化3】
【0023】
等のスルフィド型有機錫化合物;
(C4 H9)SnCl3 、(C4 H9)2 SnCl2 、(C8 H17)2SnCl2 、
【0024】
【化4】
【0025】
等のクロライド型有機錫化合物;
(C4 H9)2 SnO、(C8 H17)2SnO等の有機錫オキサイドや、これらの有機錫オキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物
等を挙げることができる。
(D)成分は、また亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
(D)成分は、コーティング用組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階でコーティング用組成物に配合してもよく、さらにはコーティング用組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
(D)成分の使用量は、有機金属化合物(2)あるいはその部分加水分解物以外の場合、前記(A)成分における加水分解性オルガノシラン成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜80重量部、さらに好ましくは0.1〜50重量部であり、有機金属化合物(2)あるいはその部分加水分解物の場合、前記(A)成分における加水分解性オルガノシラン成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜80重量部、さらに好ましくは0.5〜50重量部である。なお、(D)成分の使用量が100重量部を超えると、組成物の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0026】
さらに、本発明のコーティング用組成物には、下記する(E)〜(F)成分を配合することができる。
(E)成分
(E)成分は、下記一般式(3)
R4 COCH2 COR5 ・・・(3)
(式中、R4 およびR5 は、有機金属化合物(2)における前記各一般式のそれぞれR4 およびR5 と同義である。)で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物の群から選ばれる少なくとも1種からなる。このような(E)成分は、特に、前記(D)成分として有機金属化合物(2)あるいはその部分加水分解物を使用する場合に併用することが好ましい。
(E)成分は、コーティング用組成物の安定性向上剤として作用するものである。即ち、(E)成分が有機金属化合物(2)あるいはその部分加水分解物の金属原子に配位することにより、該有機金属化合物(2)あるいはその部分加水分解物による前記(A)成分と(B)成分との共縮合反応を促進する作用を適度にコントロールすることにより、得られるコーティング用組成物の保存安定性をさらに向上させる作用をなすものと考えられる。
(E)成分の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、マロン酸、しゅう酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒド等を挙げることができる。これらのうち、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルが好ましい。
(E)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(E)成分の使用量は、前記有機金属化合物等における有機金属化合物1モルに対して、通常、2モル以上、好ましくは3〜20モルである。この場合、(E)成分の使用量が2モル未満では、得られる組成物の保存安定性の向上効果が不十分となる傾向がある。
【0027】
(F)成分
(F)成分は、CeO 2 の粉体および/またはゾルもしくはコロイドからなり、塗膜の所望の特性に応じて配合される。
(F)成分の存在形態には、粉体、水に分散した水系のゾルもしくはコロイド、イソプロピルアルコ−ル等の極性溶媒やトルエン等の非極性溶媒中に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドがある。溶媒系のゾルもしくはコロイドの場合、半導体の分散性によってはさらに水や溶媒にて希釈して用いてもよく、また分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。
(F)成分が水系のゾルもしくはコロイドおよび溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合の固形分濃度は、40重量%以下が好ましい。
(F)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(F)成分を組成物中に配合する方法としては、組成物の調製後に添加してもよく、あるいは組成物の調製時に添加して、(F)成分を、前記(A)成分、(B)成分等と共加水分解・部分縮合させてもよい。
(F)成分の使用量は、前記(A)成分における加水分解性オルガノシラン成分の合計100重量部に対して、固形分で、通常、0〜500重量部、好ましくは0.1〜400重量部である。
【0028】
他の添加剤
また、本発明のコーティング用組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化等のために、別途充填材を添加・分散させることもできる。
このような充填材としては、例えば、非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状のセラミックス、金属あるいは合金、並びにこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物等を挙げることができる。
前記充填材の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、顔料用酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデン等を挙げることができる。
これらの充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。 充填材の使用量は、組成物の全固形分100重量部に対して、通常、300重量部以下である。
【0029】
さらに、本発明のコーティング用組成物には、所望により、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシラン等の公知の脱水剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリりん酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコール等の分散剤;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類や、ひまし油誘導体、フェロけい酸塩等の増粘剤;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ほう素ナトリウム、カルシウムアジド等の無機発泡剤や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジン等のヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物、トリアゾール化合物、N−ニトロソ化合物等の有機発泡剤のほか、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料等の他の添加剤を配合することもできる。
また、コーティング用組成物のコーティング性をより向上させるためにレベリング剤を配合することができる。このようなレベリング剤のうち、ふっ素系のレベリング剤(商品名。以下同様)としては、例えば、ビーエムヘミー(BM-CHEMIE)社のBM1000、BM1100;エフカケミカルズ社のエフカ772、エフカ777;共栄社化学(株)製のフローレンシリーズ;住友スリーエム(株)のFCシリーズ;東邦化学(株)のフルオナールTFシリーズ等を挙げることができ、シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、ビックケミー社のBYKシリーズ;シュメグマン(Sshmegmann) 社のSshmego シリーズ;エフカケミカルズ社のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88等を挙げることができ、エーテル系またはエステル系のレベリング剤としては、例えば、日信化学工業(株)のカーフィノール;花王(株)のエマルゲン、ホモゲノール等を挙げることができる。
このようなレベリング剤を配合することにより、塗膜の仕上がり外観が改善され、薄膜としても均一に塗布することができる。
レベリング剤の使用量は、全コーティング用組成物に対して、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%である。
レベリング剤を配合する方法としては、コーティング用組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階でコーティング用組成物に配合してもよく、さらにはコーティング用組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
【0030】
本発明のコーティング用組成物を調製するに際しては、(D)成分と(E)成分とを併用しない場合は、各成分の混合方法は特に限定されないが、(D)成分と(E)成分とを併用する場合は、好ましくは、(A)〜(E)成分のうち(E)成分を除いた混合物を得たのち、これに(E)成分を添加する方法が採用される。
コーティング用組成物の調製法の具体例としては、下記イ.〜ロ.の方法等を挙げることができる。
イ. (A)成分を構成するオルガノシラン(1)、(B)成分、必要量の有機溶剤および(D)成分からなる混合物に、所定量の水を加えて加水分解・部分縮合反応を行ったのち、(E)成分を添加する方法。
ロ. (A)成分を構成するオルガノシラン(1)の一部、(B)成分および必要量の有機溶剤からなる混合物に、所定量の水を加えて加水分解・部分縮合反応を行い、さらにオルガノシラン(1)の残部と(D)成分とを添加して加水分解・部分縮合反応を行なったのち、(E)成分を添加する方法。
また、本発明のコーティング用組成物は、場合により
ハ. (B)成分を除いた各成分を用いて前記イ.〜ロ.の方法を実施したのち、(B)成分を添加する方法
によっても調製することができる。
なお、本発明においては、(A)〜(E)成分以外の成分は、組成物を調整する適宜の段階で添加することができる。
【0031】
本発明のコーティング用組成物を基材に塗布する際には、刷毛、ロ−ルコ−タ−、フロ−コ−タ−、遠心コ−タ−、超音波コ−タ−等を用いたり、ディップコート、流し塗り、スプレ−、スクリ−ンプロセス、電着、蒸着等の塗布方法により、1回塗りで厚さ1〜40μm程度、2〜3回塗りでは厚さ2〜80μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは30〜200℃程度の温度で10〜60分程度加熱して乾燥することにより、各種の基材に塗膜を形成することができる。
本発明のコーティング用組成物を適用しうる基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属;セメント、コンクリ−ト、ALC、フレキシブルボ−ド、モルタル、スレ−ト、石膏、セラミックス、レンガ等の無機窯業系材料;フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカ−ボネ−ト、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)等のプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコ−ル、ポリカ−ボネ−ト、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリウレタン、ポリイミド等のプラスチックフィルムや、木材、紙、ガラス等を挙げることができる。また、本発明のコーティング用組成物は、劣化塗膜の再塗装にも有用である。
これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付け等を目的として、予め表面処理を施すこともできる。
例えば、金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメ−ト処理、火炎処理、カップリング処理等を挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理等を挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付け等を挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理等を挙げることができ、紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理等を挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレン等を挙げることができる。
【0032】
本発明のコーティング用組成物による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、金属系基材の場合、防錆の必要があればプライマ−を用い、無機窯業系基材の場合、基材の特性(表面荒さ、含浸性、アルカリ性等)により塗膜の隠蔽性が異なるため、通常はプライマ−を用いる。また、劣化塗膜の再塗装の場合、旧塗膜の劣化が著しいときはプライマ−を用いる。
それ以外の基材、例えば、プラスチック、木材、紙、ガラス等の場合は、用途に応じてプライマ−を用いても用いなくてもよい。
プライマ−の種類は特に限定されず、基材とコ−ティング用組成物との密着性を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、使用目的に応じて選択する。プライマ−は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料等の着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まいクリヤーでもよい。
プライマ−の種類としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルエマルジョン、エポキシエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンや、本発明における(A)成分と(C)成分とからなる組成物、本発明における(A)成分と(C)成分と(F)成分とからなる組成物等を挙げることができる。また、これらのプライマーには、厳しい条件での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、エ−テル結合、エステル結合等を挙げることができる。
また、本発明のコーティング用組成物から形成した塗膜の表面には、塗膜の耐摩耗性や光沢をさらに高めることを目的として、例えば、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書等に記載されたコロイダルシリカとシロキサン樹脂との安定な分散液のようなシロキサン樹脂系塗料等からなるクリア層を形成することもできる。
【0033】
本発明のコーティング用組成物を基材に適用した形態には、次のようなものがある。
(a)基材/コーティング用組成物(クリア−、エナメル)
(b)基材/コーティング用組成物(エナメル)/コーティング用組成物(クリア−)
(c)基材/コーティング用組成物(クリア−、エナメル)/他の有機塗料/コーティ ング用組成物(クリア−)
(注) クリア−は着色成分を含まない組成物、エナメルは着色成分を含む組成物であ る。
なお、前記(a)〜(c)の場合、必要に応じて基材に予めプライマー層を設けることができるのは前述したとおりである。
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものでない。
実施例および比較例中の部および%は、特記しない限り重量基準である。
実施例および比較例における各種の測定・評価は、下記の方法により行った。
Mw
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
試料 : テトラヒドロフランを溶媒として使用し、オルガノシランの部分 縮合物1gまたはシリル基含有ビニル系樹脂0.1gを、それぞれ 100ccのテトラヒドロフランに溶解して調製した。
標準ポリスチレン: 米国プレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを使用した。
装置 ; 米国ウオーターズ社製の高温高速ゲル浸透クロマトグラム(モデ ル150−C ALC/GPC)
カラム : 昭和電工(株)製のSHODEX A−80M(長さ50cm)
測定温度 : 40℃
流速 : 1cc/分
保存安定性
硬化促進剤を添加しない組成物を、ポリエチレン製ビン内に、常温で3ヶ月密栓保存して、ゲル化の有無を目視により判定した。ゲル化を生じていないものについては、東京計器(株)製のBM型粘度計による粘度測定を行い、変化率が20%以内のものを、“変化なし”とした。
耐候性
JIS K5400により、サンシャインウエザーメーターで3,000時間照射試験を実施して、塗膜の外観(割れ、はがれ等)を目視により観察した。また、試験前後の塗膜の光沢を測定して、下記基準で評価した。
光沢保持率が90%以上 :○
光沢保持率が50%〜90%未満:△
光沢保持率が50%未満 :×
耐熱性
試験片を、電気炉内で400℃×240時間保持したのち、自然放冷したときの、塗膜の状態を目視により観察した。
親水性
塗膜に、0.05mW/cm2 ブラックライト蛍光灯で5時間照射したのち、水の接触角を測定した。
透明性
各組成物を、石英ガラス上に、乾燥膜厚10μmとなるように塗布したのち、可視光の透過率を測定して、下記基準で評価した。
透過率が80%を超える:◎
透過率が60〜80% :○
透過率が60%未満 :△
【0035】
【実施例】
実施例2
還流冷却器、撹拌機を備えた反応器に、メチルトリメトキシシラン60部、ジメチルジメトキシシラン60部、酸化チタンの水系ゾル100部(酸化チタン含量40%、水40%、アルコール20%)、i−ブチルアルコール200部、水酸化ナトリウム1部を加えて混合し、攪拌下、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ジ−n−ブチル錫ジラウレート15部を後添加して、固形分濃度20%の組成物(I−b)を調製した。組成物(I−b)におけるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のMwは、2,500であった。
次いで、組成物(I−b)をソーダガラス板に、浸漬法(ガラス板の引上げ速度=40mm/秒)により塗布し、150℃20分間加熱乾燥する塗布操作を2回繰り返して、試験片を得た。
組成物(I−b)の保存安定性の評価結果、および試験片の各種評価結果を、それぞれ表1および表2に示す。
【0036】
実施例5
配合処方を表1に示すとおりとした以外は実施例2と同様にして反応させたのち、室温まで冷却し、表1に示す後添加の(D)成分を添加して、固形分濃度20%の組成物(I−e)を調製した。
また、得られた組成物(I−e)を用い実施例2と同様にして、試験片を作製した。
組成物(I−e)の(A)成分をなす部分縮合物のMwと組成物(I−e)の保存安定性の評価結果、および試験片の各種評価結果を、それぞれ表1および表2に示す。
【0037】
実施例7〜12
配合処方を表3に示すとおりとした以外は実施例2と同様にして反応させたのち、室温まで冷却し、表3に示す後添加の(D)成分と、実施例によってはさらに表3に示す後添加の(D)成分あるいは(E)成分を添加して、固形分濃度20%の組成物(I−g)〜(I−l)を調製した。但し、実施例7の酸化チタンの水系ゾルは酸化チタン含量40%、水40%およびアルコール20%、実施例8の酸化チタンの水系ゾルは酸化チタン含量50%および水50%、実施例9の酸化チタンの水系ゾルは酸化チタン含量40%および水60%、実施例10の酸化チタンの水系ゾルは酸化チタン含量40%、水20%およびアルコール40%、実施例11の酸化チタンの水系ゾルは酸化チタン含量40%、水10%およびアルコール50%、実施例12の酸化亜鉛の溶媒系ゾルは酸化亜鉛40%およびアルコール60%である。
また、得られた各組成物を用い実施例2と同様にして、各試験片を作製した。 各組成物の(A)成分をなす部分縮合物のMwと各組成物の保存安定性の評価結果、および各試験片の各種評価結果を、それぞれ表3および表5に示す。
【0038】
実施例13
還流冷却器、撹拌機を備えた反応器に、メチルトリメトキシシラン100部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン20部、酸化チタンの溶媒系ゾル100部(酸化チタン含量40%、アルコール60%)、イオン交換水40部、i−プロピルアルコール200部を加えて混合し、攪拌下、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ジ−n−ブチル錫ジラウレート20部を後添加して、固形分濃度20%の組成物(I−m)を調製した。組成物(I−m)におけるメチルトリメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分縮合物のMwは、2,000であった。
また、組成物(I−m)を用い実施例2と同様にして、試験片を作製した。
組成物(I−m)の保存安定性の評価結果および試験片の各種評価結果を、それぞれ表3および表5に示す。
【0039】
実施例14〜16
配合処方を表4に示すとおりとした以外は実施例2と同様にして反応させたのち、室温まで冷却し、表4に示す後添加の(B)成分、(D)成分あるいは他の添加剤を添加して、固形分濃度20%の組成物(I−n)〜(I−p)を調製した。
また、得られた各組成物に、充填材、増粘剤、分散剤およびガラスビーズを添加し、サンドミルで練合して、コンパウンドを得たのち、実施例2と同様にして、各試験片を作製した。
各組成物の(A)成分をなす部分縮合物のMwと各組成物の保存安定性の評価結果、および各試験片の各種評価結果を、それぞれ表4および表5に示す。
【0040】
比較例1〜7
配合組成を表6に示すとおりとした以外は実施例2と同様にして反応させたのち、室温まで冷却し、表6に示す後添加の(D)成分、(E)成分あるいは他の添加剤を添加して、固形分濃度20%の組成物(II−a)〜(II−g)を調製した。
また、組成物(II−a)〜(II−e)はそのまま用い、組成物(II−f)〜(II−g)は、さらに充填材、増粘剤、分散剤およびガラスビーズを添加して、コンパウンドを得たのち、実施例2と同様にして、各試験片を作製した。
各組成物の加水分解性オルガノシランの部分縮合物のMwと各組成物の保存安定性の評価結果、および各試験片の各種評価結果を、それぞれ表6および表7に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【発明の効果】
本発明のコーティング用組成物は、特に保存安定性が優れており、かつ耐候性、耐熱性、耐汚染性等にも優れた塗膜を形成しうるものであり、また該塗膜はオリガノシラン系コーティング材本来の塗膜外観、密着性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐絶縁性等を具備しており、オルガノシラン系コーティング用組成物として優れた特性バランスを有するものである。
Claims (1)
- (A)下記一般式(1)
(R1)n Si(OR2)4-n ・・・(1)
(式中、R1 は水素原子または炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基またはフェニル基を示し、nは1または2の整数である。)で表されるオルガノシランを全オルガノシランの90重量%以上含有する加水分解性オルガノシラン成分の部分縮合物からなり、該部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜50,000の範囲にある部分縮合物、
(B)光触媒能を有する半導体の粉体および/またはゾル、
(C)水および/または有機溶剤、並びに
(D)3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリエトキシシラン、下記一般式(2)で表される化合物あるいは該化合物の部分加水分解物、および同一の錫原子に結合した炭素数1〜10のアルキル基を1〜2個有する4価錫の有機金属化合物あるいは該有機金属化合物の部分加水分解物の群の単独または2種以上の混合物を含む、(A)成分の加水分解・縮合反応を促進する触媒
M(OR3)p (R4 COCHCOR5)q ・・・(2)
(式中、Mはジルコニウム、チタンまたはアルミニウムを示し、R3 およびR4 は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R5 は炭素数1〜6の1価の炭化水素基または炭素数1〜16のアルコキシル基を示し、pおよびqは0〜4の整数で、(p+q)=(Mの原子価)である。)
を含有することを特徴とするコ−ティング用組成物。
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