JP3681921B2 - 赤味の色調を有する微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法に関し、更に詳しくは、より赤味の冴えた色調を有し、透明で着色力があり、分散性の良好なコバルトブルー系顔料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コバルトブルー系顔料は、耐熱性、耐薬品性などに優れた、堅牢度の高い無機顔料として、例えば、塗料、合成樹脂の着色剤、窯業用、更には蛍光体の着色剤等として幅広く使用されている。
近年、微粒子タイプのコバルトブルー系顔料が開発され、その光の波長によって高い選択性透過性を有する特徴からCRT用等の光学的カラーフィルター及び顔料付き蛍光体の着色剤としての利用が進められつつある。
これらの用途においては、充分な透過性と外光反射の抑制を両立させるために、分散性が良好で、しかも着色力の大きい顔料が求められる。更に、青色蛍光体の発光スペクトル波長に比べてコバルトブルーの透過スペクトル波長が長波長にシフトしていることから、カラーフィルターの特性上、より赤味を呈するコバルトブルー系顔料が求められている。
【0003】
上記の微粒子型コバルトブルー系顔料を製造する方法として、本出願人は尿素の加水分解を利用する方法を提案した(特公平6−96454号公報、特開平2−283771号公報、特願平7−282422号)。
しかしながら、特公平6−96454号公報による方法では、色相は赤味であるものの、一次粒子が微細で、粒子間の凝集力が大きく、分散に多大なエネルギーを必要とする上、焼成時に充分な発色を得るためにはコバルトの含有量を低くする必要があり、着色力が不充分であるという欠点があった。
一方特願平7−282422号による方法では、コバルト含有量を増加させるため鉱化剤を利用することが提案されているが、色相的には充分な赤味があるとはいえない。
【0004】
又、従来の技術で赤味の色調を有する顔料を製造することは、顔料中のコバルト含有量を低くすることで可能である。しかしながら、この方法で得られる顔料は着色力が低下し、顔料として品質上好ましいものではない。
更に、これら提案方法は、いずれも尿素の加水分解を利用するため、反応終了後、アンモニア性窒素が排水へ流出することは避けられず、河川等の富栄養化の原因となることから、大量に生産した場合あまり好ましい方法とはいえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、透明で分散性が良く、着色力も高く、色相がより赤味の微粒子型コバルトブルー系顔料を尿素等の窒素源の発生を伴わなずに製造する方法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、アルミニウム及びコバルトの水酸化物又は炭酸塩を沈澱させるアルカリ剤として炭酸ソーダを利用し、それぞれの沈澱条件を最適に制御することにより、更には、沈澱生成時にリン化合物を共存させることにより、透明で分散性の良い、着色力が高く、より赤味の色相を有する微粒子型コバルトブルー系顔料が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達せられる。即ち、本発明は、アルミニウム塩水溶液及びコバルト塩水溶液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液とを接触させて生成させたアルミニウム及びコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を焼成して複合酸化物顔料を製造するに際し、先ず、アルミニウム及びコバルトのいずれか一方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させ、次いで、この沈澱の存在下に他方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩を沈澱させることを特徴とする微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法である。
本発明によれば、酸化アルミニウム及び酸化コバルトより成る複合酸化物顔料であって、BET法による比表面積が40〜60m 2 /gであることを特徴とする微粒子型コバルトブルー系顔料が得られる。又、本発明によれば、上記の少なくとも一方の沈澱生成をリン化合物の存在下に行うことによって、顔料中にリン換算で0.2〜1.0重量%のリン化合物を含有する更に赤味の色調を呈し、上記の比表面積を有する微粒子型コバルトブルー系顔料が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明において得られる微粒子型コバルトブルー系顔料は、BET比表面積が40〜60m2の高表面積を有するにも拘らず、高着色力、高分散性を有することが特徴であり、顔料中に更にリン化合物を含むことでより赤味の色調を有することが特徴である。
又、上記顔料を製造する際、主原料のアルミニウム塩及びコバルト塩と沈澱剤であるアルカリ金属の炭酸塩とを接触させてこれらの金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させる際に、先ず一方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させ、次いで、この沈澱の存在下に他方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させる2段階沈澱生成を行うことが特徴である。沈澱生成に際して、少なくともいずれか一方の沈澱生成をリン化合物の存在下に行うことよって、より赤味のある顔料が得られることも特徴である。
【0008】
本発明で使用するアルミニウム塩及びコバルト塩としては、アルミニウム及びコバルトの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等の従来のコバルトブルー系顔料の製造に使用されるいる塩はいずれも使用することができ、特に限定されない。アルミニウム塩として塩化物を使用する場合には、赤味及び高着色力の顔料が得られ易く、硫酸塩を使用する場合にはより微粒子の顔料が得られ易い。
又、上記の必須成分に加え、クロムやマグネシウム、亜鉛等の金属塩も少量併用することができる。
【0009】
本発明では、上記の主原料塩を沈澱剤によって二段階にわけて主原料塩の金属をそれぞれ水酸化物及び/又は炭酸塩として順次沈澱させる際に、各沈澱段階の条件を厳密に規定することが重要であり、その上で、少なくとも一方の沈澱段階をリン化合物の存在下に実施することが好ましい。リン化合物は主原料塩の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱と共に沈澱し、主原料塩の金属の上記の沈澱と共存する。リン化合物の存在は、焼成後の顔料の色相をより赤味にさせることができるばかりでなく、顔料中のコバルト含有量を増加させることができ、着色力を向上させる。
【0010】
本発明で使用するリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の水溶性リン酸塩であればいずれも使用することができ、特に限定されない。
その使用量は、生成顔料に対してリン基準換算で0.2〜1.0重量%含まれるように使用することが好ましい。含有量が0.2重量%未満ではリン化合物使用の効果が不充分であり、1.0重量%を超えて含有させても効果は変わらないばかりか色相に悪影響を与えるので好ましくない。好ましいリン化合物の使用量は、生成顔料に対して1.0〜3.0重量%である。
【0011】
本発明で使用する沈澱剤(アルカリ剤)は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩であり、炭酸ソーダ(ナトリウム)が好ましい。以下では炭酸ソーダを例に説明する。
【0012】
本発明の顔料を製造するには、先ず、上記のいずれか一方の主原料塩の水溶液と沈澱剤の水溶液を接触させて一方の主原料金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させ、この沈澱の存在下に同様にして他方の主原料金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させる。その際、沈澱条件を厳密に制御することで本発明の目的の大部分は達成される。又、厳密な沈澱条件下に、リン化合物を沈澱生成反応系中に均一に共存させることが好ましい。リン化合物の共存により、より赤味のある、高着色力の顔料を得ることができる。リン化合物は2段階沈澱のいずれか一方又は両方に共存させてもよい。
リン化合物の共存のさせ方は特に制限されないが、例えば、予め用意した共沈媒体中に、あるいはアルミニウム塩水溶液及び/又は炭酸ソーダ水溶液に必要量のリン化合物を完全に溶解させておく等の態様が好ましいものして挙げられる。
【0013】
主原料金属の沈澱を生成させるために、先ず、前記のアルミニウム塩、コバルト塩及び炭酸ソーダをそれぞれ水に溶解して、別々の塩水溶液及びアルカリ水溶液を形成する。各塩の水溶液の濃度は最終顔料換算濃度として2〜10重量%程度となる範囲が好ましい。
本発明におけるアルミニウム塩とコバルト塩の使用量は、モル比でCo/Al=1/2〜1/5程度の範囲が好ましい。
又、水溶液中のアルミニウム塩及びコバルト塩の濃度は、0.5〜2.0モル/リットルの範囲が好ましい。アルミニウム塩及びコバルト塩の濃度、更に全体としての濃度が、上記の下限未満では、得られる顔料の前駆体及び顔料が微細になりすぎて凝集力が大きく、分散性の悪いものになり、生産効率も低下する。一方、上記の上限を超えると、前駆体及び得られる顔料の嵩が大きくなりすぎて取り扱いが困難になるだけでなく、顔料の吸油量、吸水量も増加し、分散性が悪くなり、透明性が不足する傾向にある。
【0014】
本発明における主原料塩をその金属の水酸化物及び/又は炭酸塩として沈澱させる好ましい方法は、先ず、アルミニウム塩水溶液と炭酸ソーダ水溶液を用い、予め用意した水等の沈澱媒体中にこれらの水溶液を同時に滴下させてアルミニウムの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させ、その後、この沈澱を含む沈澱媒体中にコバルト水溶液と炭酸ソーダ水溶液を同時に滴下させてコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させる方法である。リン化合物を沈澱系に共存させる場合には、上記のアルミニウム塩水溶液、コバルト塩水溶液及び炭酸ソーダ水溶液の少なくとも1種に溶解させて使用する。通常は、アルミニウム塩水溶液か炭酸ソーダ溶液に溶解させる。
【0015】
この方法においては、アルミニウムの水酸化物及び/又は炭酸塩を沈澱させる沈澱媒体の温度は、40〜60℃の範囲が望ましい。40℃未満では沈澱物がゲル化し易くなり、顔料適性が悪くなる。又、60℃を超えても特に問題となる悪影響はないが、最終顔料の分散性がやや悪くなる。
又、沈澱生成時の沈澱媒体のpHは、3.5〜4.5の範囲が好ましい。pHが3.5未満では沈澱が非常に微細な粒子になってゲル化し易く、得られる顔料は顔料適性が低下し、最終顔料の分散性が極めて悪くなる。又、pHが4.5を超えると顔料前駆体及び得られる顔料の嵩が大きくなりすぎ、顔料の吸油量、吸水量の増大を招き、分散不良を起こし易くなる。
【0016】
一方、コバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させる時の沈澱媒体の温度は、50〜80℃の範囲が好ましい。50℃未満ではコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱とアルミニウムの水酸化物及び/又は炭酸塩との沈澱との組成偏在等の均一性に欠ける傾向にあり、最終顔料の発色が悪くなる傾向にある。又、80℃を超えると沈澱時のpH制御が難しくなるだけでなく、エネルギーの無駄でもある。更に好ましい沈澱時の温度は60〜70℃である。
又、沈澱生成時の沈澱媒体のpHは6.5〜7.5の範囲が望ましい。pHが6.5未満ではコバルトの水酸化物又は炭酸塩の沈澱が非常に微細な粒子になってゲル化し易く、顔料適性が低下し、最終顔料の分散性が悪くなる。又、pHが7.5を超えると顔料の前駆体及び顔料自体の嵩が大きくなりすぎ、吸油量、吸水量の増大を招き、最終顔料の分散性にあまりよい結果を生じない。
【0017】
このようにして本発明では、沈澱系にリン化合物が共存しない場合も共存する場合も、アルミニウム及びコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱物を2段階に分けて生成させるが、かかる2種の沈澱物を同一pHで同時に1段階で共沈澱させる方法も当然ながら考えられる。
しかしながら、両者の沈澱物の性状が大幅に異なるため、この共沈方法ではどのような条件下でも均一性に欠けた顔料適性の乏しい顔料しか得られない。
本発明によれば、リン化合物の共存の有無に拘らず、アルミニウム及びコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩を別々の条件下で沈澱させる方法を提案しているが、両者の性状を詳細に検討した結果、本発明の前記の沈澱条件下にそれぞれ沈澱を生成させれば、顔料適性の最も優れた前駆体が得られ、通常の共沈法と全く遜色のない顔料が得られる。
【0018】
アルミニウム及びコバルトの水酸化物又は炭酸塩の沈澱を生成させた後、更に加熱、熟成して沈澱反応を完了させる。
次に、得られた生成沈澱物を水洗、濾過し、100〜120℃程度の温度で乾燥させ、得られた乾燥物を酸化性雰囲気下で約1000〜1200℃の温度で30〜90分焼成することにより、本発明の微粒子型コバルトブルー系顔料及びリン含有微粒子型コバルトブルー系顔料が得られる。
【0019】
上記本発明の方法により、BET比表面積が40〜60m2/gの、酸化アルミニウム及び酸化コバルトより成る赤味の複合酸化物微粒子型コバルトブルー系顔料及びこの顔料中にリン換算で0.2〜1.0重量%のリン化合物を含有する、より赤味の複合酸化物微粒子型コバルトブルー系顔料が得られる。いずれも高着色力、高分散性を有する顔料である。
【0020】
既に述べた如く、本発明の特徴は、高着色力、高分散性を有する、赤味の微粒子型コバルトブルー系顔料及びより赤味のリン含有微粒子型コバルトブルー系顔料を、沈澱剤として尿素を用いることなく、一般的なアルカリである炭酸ソーダを使用することで、アンモニア等の窒素負荷の全くない方法で製造することができることにある。
又、アルミニウム及びコバルトの水酸化物又は炭酸塩の反応濃度、沈澱温度、沈澱pH等の合成条件をそれぞれ精密に制御することで反応性の良好な前駆体を得ることが可能であり、この反応に要するエネルギー、時間も尿素法に比べて極めて少ないことも特徴である。更に、従来本発明者らが提示している鉱化剤であるモリブデン酸塩又はタングステン酸塩などを共存させ、粒子の大きさを制御することも勿論可能である。
【0021】
又、アルミニウム及びコバルトの原料としてこれらの塩化物を使用すると、前記の沈澱条件下では沈澱中に少量の塩素が塩基性塩として取り込まれ、これが沈澱物の焼成時に反応促進剤として働くために、顔料粒子がやや大きめになるものの、赤味で、高着色力、高分散性の微粒子型コバルトブルー顔料が得られる。
一方、上記の原料として硫酸塩を用いた場合には、上記のような効果はなく、赤味は少ないものの、より微細で透明な顔料を得ることができる。但し、着色力はやや不足する。
【0022】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本文中の部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
【0023】
実施例1
塩化アルミニウム6水塩412部を計り、水を加えてこれを完全に溶かして1000部とする。次に沈澱剤として無水炭酸ソーダ256部及びリン酸2水素ナトリウム2水塩5部を計り採り、水を加えて700部とし、約40℃に加熱して完全に溶解する。
又、塩化コバルト6水塩178部を計り採り、水を加えてこれを完全に溶かして350部とする。次に、塩化コバルト用沈澱剤として無水炭酸ソーダ98部を計り採り、水を加えて250部とし、約40℃に加熱して完全に溶解する。
【0024】
予め用意しておいた沈澱媒体である水約2000部を加熱して約50℃に調整し、ここに塩化アルミニウム水溶液とリン酸塩を含んだ炭酸ソーダ水溶液とを同時に滴下し、約30分から1時間かけて沈澱反応を完了させる。
この際のpHは4.0前後になるように注意し、塩化アルミニウム水溶液の滴下が終了した後、リン酸塩を含む過剰の炭酸ソーダ水溶液を続けて加えpHを約6.7とした後、70℃まで徐々に加熱しながら、60分間程度熟成する。
次にこの媒体スラリー中に塩化コバルト水溶液とこれ用の炭酸ソーダ水溶液を同時に滴下し、20〜25分かけて沈澱反応を完了させる。
この際のpHは6.8〜7.0位になるように注意し、炭酸ソーダ水溶液の滴下が終了した後、塩化コバルトの水溶液を全量加えてpHが6.4〜6.5位にする。その後90℃まで加熱し、2時間程度熟成する。
【0025】
次に沈澱媒体から生成沈澱物を取り出し、デカンテーションにより充分に水洗し、残塩を洗い流し、濾過を行う。次いで100〜120℃の温度にて12時間以上乾燥させる。この乾燥物を1150℃で1時間、酸化雰囲気にて焼成した後冷却した。
このようにして得られた本発明のコバルトブルー顔料の比表面積をBET法で測定した。
又、得られた顔料(40部)をペイントシェイカーにてメラミンアルキッド樹脂ワニス(100部)中に分散させて塗料化し、従来の微粒子型コバルトブルー顔料を用いたものとの対比で色調を観察した。その結果、本発明の顔料は透明性、分散性は従来のものと同等に良好で、色調が赤味であった。以上の結果を表1に示す。
【0026】
実施例2
塩化コバルト水溶液を沈澱させる炭酸ソーダ水溶液にモリブデン酸ナトリウム2水塩4部を添加及び溶解する以外は実施例1と同様にして顔料の合成を行った。
この様にして得られた顔料は実施例1と同様に透明で冴えた赤味の色調を有し、やや隠蔽性が大きく、分散性も良好であった。BETによる比表面積と共に結果を表1に示す。
【0027】
実施例3
塩化アルミニウム水溶液を沈澱させる炭酸ソーダ水溶液にリン酸2水素ナトリウム2水塩を添加溶解しない以外は実施例1と同様にして顔料の合成を行った。 この様にして得られた顔料は、色調にやや赤味が少ないものの、透明性、分散性は良好であった。比表面積と共に以上の結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
コンデンサー付きのセパラブルフラスコに硝酸アルミニウム9水塩36.3部、硫酸アルミニウム18水塩6.6部、硝酸コバルト6水塩15.6部、モリブデン酸ソーダ2水塩0.4部及び尿素16.8部と水を加え、全体を500部とした。これとは別に、無水炭酸ソーダ7.7部を水55部に溶解したアルカリ水溶液を用意した。
フラスコの内容物をよく撹拌して各成分を完全に溶解させて原料塩溶液を調製した。原料塩溶液を撹拌しながら温度を上げ、温度が100℃になったらその温度を一定に保った。5時間程度経過すると沈澱が析出してくる。沈澱が生じてから約1.5時間後、このスラリー中にアルカリ水溶液を滴下した。滴下後約1時間熟成した後は、焼成温度を1100℃とする以外は実施例1と同様にして顔料を得た。
この様にして得られた顔料は、透明性、分散性は優れているものの、隠蔽性がやや高く、緑味の色調をしている。比表面積と共に以上の結果を表1に示す。
【0029】
実施例4
塩化アルミニウム6水塩412部の代わりに硫酸アルミニウム16水塩537.6部を使用する以外は実施例1と同様にして顔料の合成を行った。
得られた顔料は、赤味は少ないものの、透明性、分散性は良好であった。比表面積とともにこれらの結果を表1に示す。
【0030】
【0031】
【発明の効果】
以上の発明によれば、合成(沈澱)条件を厳密に制御することにより、高透明性、高着色力、高分散性を有する赤味の複合酸化物微粒子型コバルトブルー系顔料が提供される。又、この顔料中にリン化合物を含有させることにより色調的により赤味の複合酸化物微粒子型コバルトブルー系顔料が提供される。
本発明によれば、これらの顔料を、尿素等の窒素源を全く含まない沈澱剤を用い、且つ簡便な方法で製造することができる。
従って、本発明による複合酸化物微粒子型コバルトブルー系顔料は、従来の複合酸化物微粒子型にはない赤みの色調を有し、鮮明な発色と良好な分散性、高い着色力を合わせ持ち、塗料や合成樹脂の着色剤等に用いられる他、これらの特性を生かした光学的カラーフィルター等への応用が期待できる。
Claims (6)
- アルミニウム塩水溶液及びコバルト塩水溶液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液とを接触させて生成させたアルミニウム及びコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を焼成して複合酸化物顔料を製造するに際し、先ず、アルミニウム及びコバルトのいずれか一方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱を生成させ、次いで、この沈澱の存在下に他方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩を沈澱させることを特徴とする微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
- アルミニウム塩水溶液とアルカリ金属の炭酸塩水溶液でアルミニウムの水酸化物及び/又は炭酸塩を沈澱させた後、この沈澱スラリー中でコバルト塩水溶液と炭酸ソーダ水溶液によってコバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩を沈澱させる請求項1に記載の微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
- アルミニウム水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱温度が40〜60℃、沈澱時のpHが3.5〜4.5の範囲である請求項1又は2に記載の微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
- コバルトの水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱温度が60〜70℃、沈澱時のpHが6.5〜7.5の範囲である請求項1又は2に記載の微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
- アルミニウム及びコバルトの少なくとも一方の金属の水酸化物及び/又は炭酸塩の沈澱の生成を、リン化合物の存在下に行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
- リン化合物の使用割合が生成顔料に対して1.0〜3.0重量%であり、リン化合物をアルミニウム塩水溶液、コバルト塩水溶液、アルカリ金属の炭酸塩水溶液並びにアルミニウム及びコバルを上記の沈澱として沈澱させる際の沈澱媒体の少なくとも1種に溶解する請求項5に記載の微粒子型コバルトブルー系顔料の製造方法。
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