JP2662898B2 - 微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法 - Google Patents

微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法
に関し、更に詳しくは従来の同種顔料よりも黒度、鮮映
性、着色力、発色性等に優れた微粒子複合酸化物ブラッ
ク顔料及びその製造に関し、顔料を微粒子化することに
より新たに現れる特性を利用し、例えば、自動車用塗
料、薄膜、印刷インキ、セラミックス等の着色にも有用
な微粒子複合酸化物ブラック顔料に関する。
(従来の技術及びその問題点) 従来、複合酸化物ブラック顔料はスピネル型の化合物
であり、Cu−Cr系、Cu−Cr−Mn系、Cu−Fe−Mn系等があ
り、いずれも耐候性、耐熱性に優れた無機顔料として広
く知られ、塗料、合成樹脂の着色、建材、窯業用着色剤
として幅広く使われている。
上記複合酸化物ブラック顔料は、主として構成成分の
酸化物を混合焼結させる、いわゆる乾式法により合成さ
れており、又、一部構成成分の塩を苛性ソーダ等のアル
カリにより共沈させる湿式法にても製造が行われてい
る。
しかしながら、湿式法のCu−Fe−Mn系を除き、いずれ
の場合においても黒度があり且つ微粒子状の顔料は得ら
れにくいのが現状である。
乾式法は、構成成分の酸化物や炭酸化合物等を乾式乃
至湿式にて混合し、フラックスの存在下に所定温度にて
焼成し、次いで焼結した粒子を強力な粉砕機により粉砕
し顔料化する方法であるが、各構成酸化物が微粒子でな
い限り、焼成後の製品も微粒子にはなりにくく、仮にそ
の様な微粒子があったとしても、焼成時に焼結して粉砕
するのにより大きなエネルギーを必要とする。
一方、湿式法の場合、構成金属塩を苛性ソーダ等のア
ルカリ沈殿剤を用いて沈殿させているが、Cu−Fe−Mn系
を除いて、思ったほどの微粒子化は為されていないし、
得られる顔料の発色も不十分である。
又、いずれの場合も粒子径が大きい為着色力が低く、
黒度の点で見劣りがし、全般に白っぽさが目立ち鮮映性
も不十分であり、これら諸特性の改善が望まれていた。
従って、本発明の目的は上記従来技術の問題点を解決
し、従来の同種顔料よりも黒度、鮮映性、着色力、発色
性等に優れた微粒子複合酸化物ブラック顔料を提供する
ことである。
(問題点を解決する為の手段) 本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、
湿式法のCu−Cr系及びCu−Cr−Mn系の微粒子複合酸化物
ブラック顔料の製造において、各構成成分の共沈時に特
定の沈殿剤を用いることにより、上記の目的が容易に達
成されることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、銅塩、クロム塩及び尿素を水中に溶
解して混合溶液とし、これを加熱することによって銅の
水酸化物とクロムの水酸化物とを共沈させ、共沈物を濾
過、水洗、乾燥後焼成することを特徴とする微粒子複合
酸化物ブラック顔料の製造方法である。
(作用) 微粒子複合酸化物ブラック顔料を構成する金属の水酸
化物の沈殿剤として尿素を用いることによって、銅、ク
ロム(及びマンガン)の水酸化物の沈殿が為され、比較
的低温の焼成でも黒度があり、鮮映性のある微粒子複合
酸化物ブラック顔料が得られ、該微粒子複合酸化物ブラ
ック顔料は微細な粒子であるにもかかわらず、ソフトの
粒子で粉砕が容易である。
従って、この合成法による微粒子複合酸化物ブラック
顔料は、従来の塗料、合成樹脂、建材、窯業用の着色剤
として用いられる他に、微粒子化によって得られるこれ
までにない新たな特性を利用し、例えば、自動車用塗
料、薄膜、印刷インキ、セラミックス等の着色にも有用
である。
(好ましい実施態様) 次に好ましい実施態様を挙げて本発明を更に詳しく説
明する。
本発明で使用する各構成元素の塩は、硫酸塩、硝酸
塩、塩化物、酢酸塩等、従来複合酸化物ブラック顔料を
製造するときに使用されている塩は全て使用することが
出来る。又、クロム源としてはメッキ処理等で廃液とし
て出てくる六価クロムが混ざった溶液であっても、これ
を還元して3価にすれば本発明において充分使用するこ
とが出来る。
上記において銅とクロムの割合はモル比でCu/Cr=1/2
が適当であり、この割合に銅の代わりに適宜マンガンを
添加することが出来る。即ち銅とマンガンのモル比はMn
/Cu=4以下が適当であり、この範囲を外れる場合は黒
度が著しく低下する。
以上の如き各構成元素の金属塩を水に溶かして混合水
溶液を形成するが、その濃度はクロム濃度基準で0.1モ
ル/〜0.4モル/程度が好ましい。それにより濃度
が低い場合は作業性が悪くなり、逆に濃度が高い場合は
反応中に沈殿物の凝集が起こり顔料特性を付与すること
が難しくなる。又、同時に添加する銅イオンが未反応状
態となり、沈殿しにくくなる。
本発明においては上記混合溶液から混合水酸化物を析
出させる為に沈殿剤として尿素を使用する。上述の混合
水溶液に尿素を溶解することによって、室温付近では特
別の変化は生じないが、これを撹拌しながら昇温する
と、70℃にて上記混合塩が各成分の水酸化物として、均
一に沈殿してくる。
更に本発明によれば、上記の水酸化物の共沈工程にお
いて、系中に硫酸イオンを共存させることにより、共沈
する水酸化物がある程度の大きさを持った、ソフトな二
次凝集体とすることが出来る。この様にすることによ
り、微粒子でありながら焼成後粉砕を殆ど必要としない
程ソフトな微粒子複合酸化物ブラック顔料を得ることが
出来る。
使用する硫酸イオンはその量が多いほど二次凝集体の
大きな沈殿物が形成されるが、好ましい使用量は0.2モ
ル/以下がよい。この範囲より多い量を使用すると二
次粒子が粗大化し顔料適性が無くなってしまう。又、硫
酸イオンを添加することにより添加しない場合に比べて
黒度がアップし、市場のニーズにマッチした顔料が得ら
れる。
以上の様な沈殿剤である尿素は金属塩全体に対し、金
属1当量につき約1.0〜3.0モルの使用割合が好適であ
る。使用量が上記範囲以外であると、少ない場合は金属
水酸化物の沈殿が不十分となり、一方、多い場合は不必
要な尿素を用いることになり不経済である。
この様な金属塩の混合溶液は、溶解が完了したなら
ば、全体を撹拌しながら好ましくは70℃〜100℃の温度
範囲で、約3時間〜24時間加熱撹拌することにより水酸
化物の共沈が行われる。
次に析出した共沈物を濾過することによって含水率が
40〜60%となり、これを120℃程度の温度で乾燥し、乾
燥した顔料前駆体を酸化性の雰囲気下で約500℃〜900℃
の温度にて約0.5〜2時間焼成することにより本発明の
微粒子複合酸化物ブラック顔料は得られる。
こうして得られた微粒子複合酸化物ブラック顔料は従
来の顔料として比較して白っぽさがなく黒度があり、鮮
映性に優れたものであった。これらの顔料のBET比表面
積は20m2/g以上であり、これに対し従来のものは数m2
限界であった。
(実施例) 次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。尚、文中部又は%とあるのは特に断りのない
限り重量基準である。
実施例1 コデンサー付のセパラブルフラスコ試薬1級の硝酸ク
ロム9水塩120部及び硝酸銅3水塩36.2部に沈殿剤とし
て尿素120部を計り取り、これに溶解水として1,300部の
水を加え各構成成分を溶解させ、全体として1,600部に
なる様にする。このものをマントルヒーター上にセット
し、加熱出来る様にする。
良く撹拌し各成分を完全に溶解させた後、撹拌しなが
ら温度を上げ100℃になったら一定に保ち、そのままの
状態を保持する。しばらくすると沈殿が析出してくる
が、その後も加熱撹拌を続け5時間経過したら反応物を
取り出し、デカンテーションにより充分に水洗をし残塩
を洗い出す。このものを120℃の温度にて12時間以上乾
燥させる。
次にこの乾燥した顔料前駆体を800℃で1時間酸化雰
囲気中で焼成させる。焼成品はその後ペイントシェイカ
ーにてメラミン/アルキッド樹脂(40PHR)にて分散さ
せ、黒帯付のアート紙に6ミルアプリケーターにて展色
し色調を観察した。
この様にして得られた本発明の微粒子複合酸化物ブラ
ック顔料は、BET比表面積20m2/gで従来のものと比べて
約10倍大きくなっており微粒子化がなされた。又、この
ものは全体として白っぽさがなく黒度があり、鮮映性も
ある優れたもので分散性も良好であった。
実施例2 コンデサー付のセパラブルフラスコに試薬1級の硝酸
クロム9水塩120部、硝酸銅3水塩24.2部及び工業用の
硝酸マンガン50%溶液17.9部に沈殿剤として尿素120部
を計り取り、これに溶解水として1,300部の水を加え各
構成成分を溶解させ、全体として1,600部になる様にす
る。このものをマントルヒーター上にセットし、加熱出
来る様にする。
以下、乾燥した顔料前駆体を700℃で1時間酸化雰囲
気下で焼成させる以外は実施例1と同様に行う。
この様にして得られた本発明の微粒子複合酸化物ブラ
ック顔料は、BET比表面積25m2/gで従来のものと比べて
約10倍大きくなっており実施例1と同様の優れた特性を
示した。
実施例3 実施例1に更に硫酸ナトリウム15部を加えて溶解さ
せ、以下同様に実験を行う。乾燥した顔料前駆体は実施
例1におけるよりも乾燥ぬよる凝集が少なくソフトであ
る。このものを同様に800℃で1時間酸化雰囲気下にて
焼成し、その後実施例1と同様にペイントシェイカーに
てメラミン/アルキッド樹脂(40PHR)にて分散させ色
調を観察した。
この様にして得られた本発明の微粒子複合酸化物ブラ
ック顔料は実施例1と同様の優れた特徴を示し、黒度、
鮮映性、分散性は更に好ましいものであった。
実施例4 実施例2に更に硫酸ナトリウム15部を加えて溶解さ
せ、以下同様に実験を行う。乾燥した顔料前駆体は実施
例2におけるよりも乾燥による凝集が少なくソフトであ
る。このものを同様に700℃で1時間酸化雰囲気下にて
焼成し、その後実施例1と同様にペイントシェイカーに
てメラミン/アルキッド樹脂(40PHR)にて分散させ色
調を観察した。
この様にして得られた本発明の微粒子複合酸化物ブラ
ック顔料は、実施例2と同様の優れた特徴を示し、黒
度、鮮映性、分散性は更に好ましいものであった。又、
BET比表面積は35m2/gであった。
比較例1 試薬1級の硝酸クロム9水塩120部、硝酸銅3水塩24.
16部及び工業用の硝酸マンガン50%溶液17.9部を400部
の水に溶かし、次いで苛性ソーダ45部を400部の水に溶
かす。これらを予め用意した1,500部の沈殿水中に撹拌
しながらpHが8.0になる様に注意しながら同時に滴下を
行う。滴下が終了したならば、引き続いてそのまま撹拌
をし3時間放置し熟成を行う。以下、乾燥した顔料前駆
体を900℃で1時間酸化雰囲気下で焼成させる以外は、
実施例1と同様の手続きにより実験及び展色を行い色調
を観察した。
この様にして得られた従来例の顔料は、実施例1、
2、3及び4により得られたものと比較して粒子径が大
きく、発色も不足気味で着色力も無く黒度及び鮮映性の
点で劣るものであった。
比較例2 試薬1級の酸化クロム、酸化銅及び酸化マンガンを夫
々45.6部、7.96部、3.55部計り取り、適当量の水に入れ
て湿式混合する。次にこの混合粉体を120℃にて12時間
乾燥させ、乾燥させた混合粉体を900℃で1時間酸化雰
囲気下で焼成し、その後この焼成品を実施例1と同様に
展色し色調を観察した。
この様にして得られた従来例の顔料は、実施例1、
2、3及び4により得られたものと比較して粒子径が大
きく、発色も不十分で着色力も無く黒度及び鮮映性の点
で劣るものであった。
以上の結果をまとめて第1表に示す。
(効 果) 以上の如き本発明によれば、水酸化物の沈殿剤として
尿素を用いることによって、銅、クロム及びマンガンの
水酸化物の沈殿がなされ、比較的低温の焼成でも黒度が
あり、鮮映性のある微粒子顔料が得られ、該微粒子複合
酸化物ブラック顔料は微細な粒子であるにもかかわら
ず、ソフトな粒子で粉砕が容易である。
従って、この合成法による複合酸化物微粒子複合酸化
物ブラック顔料は、従来の塗料、合成樹脂、建材、窯業
用の着色剤として用いられる他に、微粒子化によって得
られるこれまでにない新たな特性を利用し、例えば、自
動車用塗料、薄膜、印刷インキ、セラミックス等の着色
にも有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高鴨 雅則 東京都八王子市諏訪町323 (56)参考文献 特開 昭55−149171(JP,A) 特開 昭63−45106(JP,A) 特公 昭46−30685(JP,B1) 桑原利秀、安藤徳夫著「顔料及び絵 具」改訂3刷(昭52−1−20)p.108

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅塩、クロム塩及び尿素を水中に溶解して
    混合溶液とし、これを加熱することによって銅の水酸化
    物とクロムの水酸化物とを共沈させ、共沈物を濾過、水
    洗、乾燥後焼成することを特徴とする微粒子複合酸化物
    ブラック顔料の製造方法。
  2. 【請求項2】加熱を70℃以上とする請求項1に記載の微
    粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法。
  3. 【請求項3】焼成温度が500℃以上である請求項1に記
    載の微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法。
  4. 【請求項4】塩の混合溶液の濃度が0.1〜0.4モル/
    (硝酸クロム基準)である請求項1に記載の微粒子複合
    酸化物ブラック顔料の製造方法。
  5. 【請求項5】混合溶液に硫酸イオンを共存させる請求項
    1に記載の微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法。
  6. 【請求項6】クロム塩1モルに対しマンガン塩0〜0.04
    モル及び銅塩0.1〜0.5モルを共存させる請求項1に記載
    の微粒子複合酸化物ブラック顔料の製造方法。
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