JP3681558B2 - ポリスチレン系樹脂発泡シート並びに発泡ポリスチレン系樹脂積層シート、該成形品、及び該製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品容器等に広く用いられる発泡ポリスチレン系樹脂積層シートに関し、特に発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを形成するためのポリスチレン系樹脂発泡シートと、発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを用いて形成した成形品と、その製造方法に関し、更に詳しくは、曲面への印刷性と成型性に優れ、外観の美麗な成形品を得ることができる発泡ポリスチレン系樹脂積層シート、及び、その発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを安定的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、食品容器や包装材として発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを所定形状に成型したものが広く用いられている。これら発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを成型してなる容器には外観が美麗であることが強く要求されており、これまでそのための改善がなされてきた。また更に、インスタント食品用等の用途では、その表面に直接インクを塗布して印刷できることが要求されるため、良好な印刷が可能で有ることも重要である。
【0003】
このため、良好な印刷性を有する容器を得るために鋭意研究した。その結果、図6に示すように、押出発泡成形時に、ダイ1から押し出されたポリスチレン系樹脂発泡シート2の表面をノズル3から噴出させた空気により冷却して、そのポリスチレン系樹脂発泡シート2の表層部を高密度とし、更に好ましくは、その表面に非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムを積層して発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを得た後、それを容器に成型する。このようにすれば、ポリスチレン系樹脂発泡シートの非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム側境界部に長径50μm以下の微細な気泡が形成し、印刷性の良好な容器が得られることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、発泡シート2の密度と厚みの均一性の間には相関関係があり、押出発泡成形時に発泡シート2の表面の密度を増加させるために、ノズル3から噴出させる冷却気体の流量を増加させると、発泡シート2の厚みが不均一となり、後工程である非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムとの積層工程でのトラブルや成形不良を引き起こし、安定的な製造は困難となる。更に、得られた積層シートも厚みが不均一であるため、それを成形して得られた容器の強度が低くなる等の問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、厚み1〜3mm、密度0.2g/cm3 以下のポリスチレン系樹脂発泡シートについて、その巾方向の厚みばらつきが一定値以下で、全巾の任意の位置における150mm巾での厚みの平均値と全巾での厚みの平均値の比が一定範囲内にあれば、工程トラブルや成形不良を引き起こさないことを見出した。そこで、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの要旨とするところは、全巾は650mm以上であり、全巾における平均の厚みが1〜3mmで、任意の位置における150mm巾での厚みの平均値と全巾での厚みの平均値の比が1.03〜0.97の範囲にあり、且つ、全体の密度が0.2g/cm3 以下で、少なくとも一方の表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上であることにある。
【0006】
さらに、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面から厚み方向100μmの部分の密度が一定値以上である表面に所定のフィルムを積層すれば、良好な曲面印刷性を有する成形品が得られることを見出した。そこで、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの要旨とするところは、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上である表面に、厚み50〜300μmの非発泡樹脂フィルムを積層してなることにある。
【0007】
また、上記ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造において、冷却気体の流れが発泡シートの厚みの均一性に大きな影響を与え、この冷却気体の流れが乱れたり、押出直後の軟化状態にある発泡シートへの冷却気体からの圧力が局所的に増加することにより、厚みが不均一となることを見出した。更には、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を押出機内で溶融混合した後、ダイから押出発泡シートを連続的に製造する方法において、一定の冷却気体を一定条件下で発泡シートに吹き付けることにより、冷却気体の流れを乱さず、軟化状態にある発泡シートへの圧力を低くしたままで、シート表面が冷却できることを見出した。その結果、発泡シートの厚みが均一で、表層部の密度が十分に高いポリスチレン系樹脂発泡シートが得られることを見出した。
【0008】
そこで、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法の要旨とするところは、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を押出機内で溶融混練した後、ダイを用いて押出発泡シートを連続的に製造する方法において、押し出された発泡シートの表面に冷却気体を該発泡シートの表面に沿った流れを形成するように吹き付けて、発泡シートの表面を冷却することにある。また、特にこの製造方法において、前記押出機中でポリスチレン系樹脂を150℃から250℃の温度範囲に加熱して溶融させるとともに、発泡剤を圧入し、次いで、その混合物を冷却して100℃から160℃の温度範囲に調整しながら、圧力150から300kg/cm2 でダイに供給して大気圧下に押し出すことにある。更に、この製造方法において、前記製造されたポリスチレン系樹脂発泡シートを、35℃以下の温度、好ましくは20〜30℃の温度条件で7〜30日間、好ましくは10〜25日間養生する工程を含むことにある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シート並びに発泡ポリスチレン系樹脂積層シートとその成形品、及びその製造方法を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明に係る発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10は、ポリスチレン系樹脂発泡シート12の片面に非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14を熱融着により積層して構成されている。
【0010】
また、図2に示すように、本発明に係る成形品の1例である容器16は、上記の発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10を、例えば約130℃から160℃程度の温度で加熱処理することにより、2次発泡させるとともに可塑化させた後、プレス成形、または真空成形等の公知の方法により容器状に成型することで得られる。
【0011】
ポリスチレン系樹脂発泡シート12の基材樹脂であるポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が用いられる。
このポリスチレン系樹脂発泡シート12は、全巾たとえば650mm以上における平均の厚みが1〜3mmで、任意の位置の150mm巾における厚みの平均値と全巾での厚みの平均値の比が1.03〜0.97の範囲にあり、且つ全体の密度が0.2g/cm3 以下で、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムと積層される表面部分の表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上であるものが用いられる。そして更に、このポリスチレン系樹脂発泡シート12は特に巾方向の厚みばらつきが0.2mm以下のものが用いられるのが好ましい。
【0012】
ここで、厚みばらつき、及び150mm巾の厚みの平均値と全巾での厚みの平均値との比は、接触式厚み計などの一般に用いられる測定機を用い、巾方向に一定間隔たとえば2cm間隔で測定した結果から求められる。全巾における厚みばらつきが0.2mmより大きい場合で、厚み平均値の比が1.03より大きいか、もしくは、0.97より小さい場合には後述する工程でのトラブルの原因となる。また、全巾における厚みばらつきが0.2mmより小さい場合で、厚み平均値の比が1.03より大きいか、もしくは、0.97より小さい場合も同様に工程でのトラブルが生じ、安定的に製造することができない。厚みが不均一な発泡シート12に非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14を積層してなる積層シート10を容器16に成形した場合、成形不良を生じたり、厚みの薄い部分の強度が低くなる等の問題が生じる。
【0013】
また、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14と積層される表面から厚み方向100μm部分の密度は、該当部分を切り出し、体積と重量を測定して求められる。この密度が0.35g/cm3 より小さい場合には、容器16を成形する段階で十分な量の微細気泡が生じないため、良好な印刷性を得ることができない。
一方、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14の基材樹脂としては、ポリスチレン系樹脂発泡シート12と熱融着する樹脂であればよく、同様にポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が用いられる。
【0014】
次に、ポリスチレン系樹脂発泡シート及び発泡ポリスチレン系樹脂積層シートの製造方法について説明する。
まず、ポリスチレン系樹脂発泡シート12は、前述のポリスチレン系樹脂を押出機に供給し、押出機中で加熱,溶融,混練した後、発泡剤を注入して、図3に示すように、押出機の先端に取り付けたサーキュラーダイ18から環状に押出して、厚み1〜3mmの範囲で、密度0.2g/cm3 以下の環状に成形される。押出発泡の条件は、押出機中でポリスチレン系樹脂を150℃から250℃の範囲に加熱することにより溶融させるとともに発泡剤を圧入し、次いで、それを冷却して100℃から160℃の温度に調整しながら、圧力150から300kg/cm2 でサーキュラーダイ18に供給して押し出すことが望ましい。溶融させた樹脂の温度が160℃以上であれば、樹脂の粘度が低くなりすぎて、気泡が破壊されてしまい、100℃以下では充分な大きさの気泡が形成できず、溶融した樹脂の粘度を適正な範囲にしなければ、発泡させることができず、また発泡させた気泡を樹脂中に止めることができない。
【0015】
ここで用いる押出機は、当該分野で一般に使用されている装置をいずれも使用することができるが、タンデム押出機を用い、一段目でポリスチレン系樹脂を溶融させるとともに、発泡剤を圧入し、二段目で冷却を行うことが望ましい。
押出機から押し出されたポリスチレン系樹脂発泡シート20の表面の冷却は、例えば前述の図3に示した装置で実現することができる。まず、サーキュラーダイ18から押し出された直後の充分に発泡していない、すなわち発泡が進行する途中である環状の発泡シート20には、環状のノズル22から冷却気体が発泡シート20の表面とほぼ平行に吹き付けられ、その片側表面が急冷される。この冷却気体は、給気パイプ24を通じてその先端部に設けられた供給孔26から供給され、サーキュラーダイ18の端面と円錐形状のフード28の端部との間に形成されたノズル22から吹き出される。ノズル22から吹き出された冷却気体は、発泡シート20の表面とほぼ平行に流れた後、サイジング装置30に配置された排気パイプ32から外部に排気される。一方、環状の発泡シート20は下流に配置されたサイジング装置30により拡径された後、半円状に2分割されて図示しない巻取機でロール状に巻き取られる。
【0016】
この冷却工程により、発泡シート20の冷却された表面部分の発泡が抑制されて、発泡シート表面の密度がほぼ一定乃至若干の低下にとどまることになる。また、発泡シート20の冷却されない反対面へいく程、発泡が促進して、密度は低下することになる。この冷却気体には通常加圧空気が使用され、冷却気体の温度は押出し直後のシート表面の温度より低い温度であればよく、100℃以下の温度が好ましい。このような装置を用いて吹き付けられた冷却気体は、発泡シート20面に平行な流れを形成し、冷却気体の流れに乱れが生じず、また、発泡シート20が冷却気体から局所的に圧力を受けることがないため、厚みの均一な発泡シート20を得ることができる。
【0017】
巻取機によりロール状に巻き取られた発泡シート20は、35℃以下の温度、好ましくは20〜30℃の温度条件で7〜30日間、好ましくは10〜25日間養生した後、押出ラミネーションにて厚み50〜300μmの非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14を積層し、発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10が得られる。
【0018】
この養生工程をより詳しく説明すれば、養生工程により発泡シート20の内部の気泡への空気の侵入と、内部に残留する発泡剤ガスの散逸が行われる。すなわち、養生後の発泡シート20が2次発泡能を発現するのに必要な空気を気泡内に取り込むとともに、その発泡シート20に非発泡フィルム14を積層する工程、及び得られた積層シート10を成形する工程において、フィルム積層部で発泡層が破泡しない程度に、発泡シート20の表面に残留する発泡剤量を低下させることが必要であり、この条件を満たすように養生が実施される。
【0019】
この養生工程は発泡シート20をロ−ル状に巻き取った形で実施されるが、この際、押出発泡時の歪みの緩和や残留発泡剤の散逸により、発泡シート20は収縮する。その際、発泡シ−ト20の厚みが厚い部分はあまり収縮せず、薄い部分はよく収縮する。その結果、発泡シ−ト20の幅方向の厚みが不均一であると、厚みの厚い部分と薄い部分で、幅方向のシ−ト長さに差が生じる。このシ−ト長さの差が大きくなると、次の工程である積層工程において、発泡シ−ト20が蛇行してしまい、非発泡フィルム14が発泡シ−ト20からはみ出したり、ロ−ルから発泡シ−ト20の一部が浮き上がり積層できない部分が生じたり、更にひどい場合には発泡シ−トがライン上で折れ曲がるなどのトラブルが発生する。
【0020】
この発泡シート20の厚みばらつきについて、図を用いてさらに詳しく説明する。一般的なポリスチレン系樹脂発泡シ−ト20の厚み分布パタ−ンを、図4(a)及び(b)に示す。図に示すように、数cm幅から数10cm幅の凹凸が、厚みパターンには存在する。同図(a)及び(b)に示した厚みパタ−ンは、どちらも厚みばらつき(最大値と最小値の差)は約0.2mmであるが、前述の養生工程で発生する発泡シート20の長さの差は同図(b)に示した厚みパタ−ンの方が大きくなる。
【0021】
同図(a)に示すように、厚み分布において幅の短い凹凸が支配的である場合には、発泡シ−ト20が有する剛性によりその厚み差が緩和され、収縮不均一は小さくなる。しかし、同図(b)に示すように、幅の広い凹凸が支配的である場合には、その厚み差を緩和できず、収縮不均一が生じる。このことは、全幅での厚みの平均値と任意の位置における150mm幅の厚みの平均値の比によって定量化できる。この厚み平均値の比を同図中に、細線で示した。同図(b)に示すように、全幅での厚みの平均値と任意の150mmの厚みの平均値の比が1.03以上若しくは0.97以下であった場合、前述の発泡シ−ト20の収縮不均一に起因する発泡シ−ト20の長さの差は重大なものとなり、前述の工程トラブルの原因となる。
【0022】
また、全体の厚みばらつきが0.2mm以上あると、薄い部分を成形した成形体の強度が低くなる。したがって、成形品の強度を考慮すると、全体の厚みばらつきは0.2mm以下であることが必要である。
以上、説明したように、この養生はポリスチレン系樹脂発泡シート20の二次発泡能を決定づける重要な工程であり、発泡シート20中のガスの散逸によりシートは収縮する。ポリスチレン系樹脂発泡シート20の厚みが不均一な場合、すなわち、厚みばらつきが0.2mmより大きい場合、あるいは厚み平均値の比が1.03より大きい場合、もしくは厚み平均値の比が0.97より小さい場合、ポリスチレン系樹脂発泡シート20の収縮が不均一となり、巾方向でのシート長さに差が生じる。このようにして、巾方向での発泡シート20の長さに差が生じた場合、押出ラミネーション工程でシートやフィルムにシワが発生し、良好な積層シート10を得ることができない。
【0023】
以上、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シート並びに発泡ポリスチレン系樹脂積層シート、該成形品、及び該製造方法を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。なお、上述の実施形態と同じ箇所は、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
例えば図5に示すように、必要に応じて、環状の発泡シート20内面を冷却すると同時に、外面を同様な方法により冷却気体を吹き付けて冷却するように構成してもよい。すなわち、サーキュラーダイ18の外周に沿って、円環状のノズル36を設けるのである。この構成により、サーキュラーダイ18から押し出された環状の発泡シート38は、内面だけでなく外面も発泡が抑制され、内外両表面部の密度が高く、内部の密度が低い構造になる。得られた発泡シ−ト38の一方の片面には、一定条件下で養生した後,非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム14がラミネ−トされる。
【0024】
ここで、発泡シ−ト20,38の少なくとも一方の表面に形成される密度の高い部分は、少なくとも表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上である必要があり、冷却気体の温度・流量で制御可能である。
さらに、図3などに示すように、サーキュラーダイ18、それから押し出されたポリスチレン系樹脂発泡シート20、及びサイジング装置30によって囲まれた空間38は密閉された空間をなしている。そこで、ノズル22から噴出される冷却空気量と、排気パイプ32から排出される空気量とを制御し、空間38の内圧を外気圧よりも高く設定して、ポリスチレン系樹脂発泡シート20に皺が生じないようにするのが好ましい。
【0025】
以上、本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シート及び発泡ポリスチレン系樹脂積層シートと、それらの製造方法について説明したが、これらに限定されるものではない。また、発泡ポリスチレン系樹脂積層シートによって成形される成形品として、茶碗やどんぶり形状の器、皿などの容器に成形されるのが好ましい。その他、製造装置の押し出し方向を上下方向にするなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものであり、いずれも本発明の範囲に属するものである。
【0026】
【実施例】
(実施例1)
ポリスチレン系樹脂をタンデム押出機に供給し、一段目の押出機にて230℃の温度で溶融した後、発泡剤を圧入し、二段目の押出機にて120℃まで冷却を行い、サーキュラーダイ18より押し出して発泡させ、厚さ2.01mm、発泡倍率8.5倍、巾1045mm、長さ300mのポリスチレン系樹脂発泡シート20を得た。この押出発泡成形は、図3に示す装置を用い、サーキュラーダイ18から押し出された発泡シート20の表面に80℃の温度の空気を5.2m3 /min でシート表面にほぼ平行に吹き付けて冷却し、発泡シート20の表面に未発泡層を形成した。押出した発泡シート20を巻き取り、25℃の温度で20日間養生した後、その発泡シート12(20)の未発泡層を形成した面に押出しラミネーションにより150μmの非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム14を積層し、発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10を得た。
【0027】
また、得られた発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10をフィルム14面が容器の外側になるように成形し、図2に示す形状の容器を得た。
得られた発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10について、ポリスチレン系樹脂発泡シート12の厚みばらつき、150mm巾の厚み平均値と全巾での厚み平均値の差、表面部分の密度について測定し、また容器外側側面への印刷を実施した結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例2)
実施例1で示したポリスチレン系樹脂発泡シート20の製造方法において、サーキュラーダイ18から押し出された発泡シート20の表面に吹きつける冷却空気の風量を6.0m3 /min に設定した以外は、同じ条件で発泡シート12(20)を製造した。そして更に、発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10及び容器を得た。
【0030】
実施例1と同様に、得られた発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10について、ポリスチレン系樹脂発泡シート12の厚みばらつき、150mm巾の厚み平均値と全巾での厚み平均値の差、表面部分の密度について測定し、また容器外側側面への印刷を実施した結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1で示したポリスチレン系樹脂発泡シートを、図6に示す従来の装置を用いて表面冷却用の気体を風量4.0m3 /min で吹き付けて製造した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。そして、得られたポリスチレン系樹脂発泡シートを用いて、実施例1と同様の条件で発泡ポリスチレン系樹脂積層シート、更には容器を得た。
【0031】
実施例1と同様に、得られた発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10について、ポリスチレン系樹脂発泡シート12の厚みばらつき、150mm巾の厚み平均値と全巾での厚み平均値の差、表面部分の密度について測定し、また容器外側側面への印刷を実施した結果を表1に示した。
この従来装置においては、冷却気体は押出直後の自己支持性に欠ける発泡シート20面にほぼ垂直に吹き付けられ、しかもシート20に衝突した直後に冷却気体が大きく乱れ、且つ、冷却気体が衝突する部分で発泡シートが局所的に大きな圧力を受けるため、厚みが不均一となった。それ故、厚みが均一で表層部の密度が十分に高いシートを得ることができなかった。
【0032】
(比較例2)
実施例1で示したポリスチレン系樹脂発泡シートを、図6に示す従来の装置を用いて表面冷却用の気体を風量5.2m3 /min で吹き付けて製造した以外は、実施例1と同様の条件で製造した。そして、得られた発泡シート20を巻き取り、25℃の温度で20日間養生した後、その発泡シート20(12)の未発泡層を形成した面に押出しラミネーションにて150μmの非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム14を積層した。この際、シートにシワが発生し、良好な発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10を得ることができなかった。
【0033】
実施例1と同様に、得られた発泡ポリスチレン系樹脂積層シート10について、ポリスチレン系樹脂発泡シート12の厚みばらつき、150mm巾の厚み平均値と全巾での厚み平均値の差、表面部分の密度について測定し、また容器外側側面への印刷を実施した結果を表1に示した。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートは、一定条件で構成されているため、その発泡シートの表面に非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムをラミネートするとき、工程トラブルや成形不良を引き起こすことはなく、安定的な製造が可能となる。
【0035】
また、少なくとも一方の表面から厚み方向100μmの部分の密度が0.35g/cm3 以上であるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムを積層して発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを構成したため、良好な印刷性が得られ、さらに、その発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを使用して成形品を構成したため、良好な曲面印刷性が得られた。
【0036】
更に、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法において、押し出された発泡シートの温度よりも低い温度の冷却気体を、その発泡シートの表面に沿った流れを形成するように吹き付けて、発泡シートの表面を冷却するようにしたため、冷却気体の流れを乱さず、軟化状態にある発泡シートへの圧力を低くしたままで、シート表面が冷却でき、発泡シートの厚みが均一で、表層部の密度が十分に高いポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発泡ポリスチレン系樹脂積層シートの1構成を示す要部拡大断面図である。
【図2】本発明に係る発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを用いて成形した成形品の1例を示す断面図である。
【図3】本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの製造装置の1例を示す要部断面説明図である。
【図4】ポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みパターンと厚み平均値の比を示す1実施例の図であり、同図(a)は本発明に係る図、同図(b)は比較例に係る図である。
【図5】本発明に係るポリスチレン系樹脂発泡シートの製造装置の更に他の例を示す要部断面説明図である。
【図6】従来のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造装置の例を示す要部断面説明図である。
【符号の説明】
10:発泡ポリスチレン系樹脂積層シート
12,20:ポリスチレン系樹脂発泡シート
14:非発泡ポリスチレン系樹脂フィルム
16:容器(成形品)
18:サーキュラーダイス
22,36:ノズル
24:給気パイプ
30:サイジング装置
32:排気パイプ
Claims (6)
- 全巾は650mm以上であり、全巾における平均の厚みが1〜3mmで、任意の位置における150mm巾での厚みの平均値と全巾での厚みの平均値の比が1.03〜0.97の範囲にあり、且つ、全体の密度が0.2g/cm3 以下で、少なくとも一方の表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シート。
- 巾方向の厚みばらつきが0.2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載するポリスチレン系樹脂発泡シート。
- 前記請求項1又は請求項2に記載するポリスチレン系樹脂発泡シートの表面から厚み方向100μmまでの部分の密度が0.35g/cm3 以上である表面に、厚み50〜300μmの非発泡樹脂フィルムを積層してなることを特徴とする発泡ポリスチレン系樹脂積層シート。
- 前記非発泡樹脂フィルムが、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムであることを特徴とする前記請求項3に記載する発泡ポリスチレン系樹脂積層シート。
- 前記請求項3又は請求項4に記載する発泡ポリスチレン系樹脂積層シートを適宜形状に成形してなることを特徴とする成形品。
- ポリスチレン系樹脂と発泡剤を押出機内で溶融混練した後、ダイを用いて押出し発泡シートを連続的に製造する方法において、押し出された発泡シートの表面に冷却気体を該発泡シートの表面に沿った流れを形成するように吹き付けて、発泡シートの表面を冷却することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
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