JP3816824B2 - 熱可塑性樹脂発泡シートとその製造方法および製造装置 - Google Patents

熱可塑性樹脂発泡シートとその製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂発泡シート、特に環状冷却マンドレルを通過した円筒状の発泡シートを水平方向にカットして得られる上下2枚取りの熱可塑性樹脂発泡シートと、そのような熱可塑性樹脂発泡シートを得るのに好適な製造装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を押出機に取り付けたサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させた後、水平方向にカットして得られる上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートは知られている。また、そのような熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置および製造方法も知られている(例えば、特公昭54−40109公報、特開2001−191391号公報など参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載される熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置は、基本的に、図5に示す構成を備えている。すなちわ、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートの押出発泡において、押出機10内でポリスチレン系樹脂は発泡剤や気泡調整剤などと共に、高温・高圧条件下で混練され、該溶融混練物は溶融軟化した状態で、押出機10の先端部に接続したサーキュラーダイ11のスリット部より筒状発泡中間体aとして押し出される。該筒状発泡中間体aは、大気中でエアー冷却されて発泡制御されながら、サーキュラーダイ11と同じ中心線L上で同心円状に位置する環状冷却マンドレル13に到達し、その円筒外周面に接触通過する過程で、冷却と延伸制御を受け、冷却・固化された円筒状の発泡シートbとなる。そして、発泡シートbは、カッター14にて水平方向に切断されて上下2枚に切り開かれ、例えば幅約1000mmの上ポリスチレン発泡シートb1と下ポリスチレン発泡シートb2となる。上発泡シートb1と下発泡シートb2は、それぞれ、案内ロール16、17、18を通過して巻取ロール19に巻き取られ、上原反ロールB1および下原反ロールB2となる。
【0004】
前記筒状発泡中間体aが環状冷却マンドレル13に到達する際に、樹脂への力の方向が変化する。また、通常、サーキュラーダイ11から押し出された直後の溶融軟化している樹脂はスムースに環状冷却マンドレル13に到達できずに、重力により樹脂が下部に向かい、いわゆる垂れ下がり現象が生じる。そのため、下部の密度が大きくなる現象が表れる。
【0005】
この影響は、環状冷却マンドレル13を通過する際にも影響する。すなわち、密度の小さい上部は環状冷却マンドレル13の冷却効果を強く受け、抵抗が大きくなり過延伸を受け易く、一方、密度の大きい下部は冷却効果を受け難いという現象が生じる。その結果、カッター14にて上下2枚にカットされた上発泡シートb1と下発泡シートb2の間で、密度や延伸度合いなどの物性値に違いが生じる。
【0006】
このようにしてでき上がった発泡シートの上原反ロールB1および下原反ロールB2から巻き出される発泡シートSは、一定期間を経た後、図6に示すように、案内ロール21、22から送りロール23を通過して、加熱ゾーン30で加熱され、成形ゾーン40に送られ、一定の型で数秒間プレス成形されて、発泡樹脂製の容器などとなる。その中で、いわゆるトレー容器のような浅い型の容器では、上記の物性差(密度差や延伸差など)は成形に大きな影響を与えず容易に成形が可能であるが、複雑な形状やシャープなコーナーを有する成形品や、図7に示すような深物成形品1のように、発泡シートに大きな伸びを必要とする成形品の場合には、容器上面部2(一般的にフランジ部と呼ばれている)に亀裂が生じたり、成型品のコーナー部3などの厚みが薄くなったりする現象が起きることがある。このことは、特に、発泡ポリスチレンシートに顕著であるが、発泡ポリプロピレンシート、発泡ポリエチレンシート、発泡ポリエステルシートのような熱可塑性樹脂発泡シート一般に共通して発生する。
【0007】
そのために、上記した2枚同時に採取できる生産方法で製造される熱可塑性樹脂発泡シートの原反ロールでは、熱成形時に、密度差とその微妙な延伸差の違いにより、ロール単位ごと、つまり上下の原反ロールB1,B2ごとに、成形条件を微調整する必要があり、多大な工数を要している。成形条件の微調整を回避するためには、上下の原反ロールB1,B2ごとに分別する必要があり、このことも多大な工数を必要とする。従来の熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置あるいは製造方法では、このように上発泡シートと下発泡シートとの間で物性差が生じるのは当然のことと受容し、それを回避するための格別の技術は講じられていない。
【0008】
前記した特公昭54−40109号公報に記載の装置と方法では、サーキュラーダイから出た管形押出成形体が環状冷却マンドレルと接触する直前でわずかな距離で非冷却接触リング上を通すようにしているが、その目的は、管形押出成形体が冷却マンドレルの表面に付着するのを防止するためであり、上発泡シートと下発泡シートの間で生じる物性差に対してはなんの言及もなされていない。特開2001−191391号公報に記載の装置と方法では、より高発泡倍率で全体の発泡状態の均一性の高い熱可塑性樹脂発泡体を製造することを目的に、筒状発泡シート体を押し出すサーキュラーダイと連結した減圧室に内筒部とその内筒部を覆う外筒部とを設けるようにしている。しかし、ここでも、上発泡シートと下発泡シートとの間で生じる物性差に対しては、何の言及もなされていない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、押出機に取り付けたサーキュラーダイを通して押し出した筒状発泡中間体を環状冷却マンドレルの外周面に沿わせて、冷却、延伸させた後、カッターで水平方向に切断して得られる上熱可塑性樹脂発泡シートと下熱可塑性樹脂発泡シートとの間の物性差をきわめて近いものとした上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シート、および、そのような熱可塑性樹脂発泡シートを製造するのに好適な製造装置と製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明による熱可塑性樹脂発泡シートでは、上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートの間の物性差はきわめて小さく、従来のように、上原反ロールと下原反ロールとを意識的に区別して使い分ける必要がなく、成形時での成形条件の微調整あるいは原反ロールの分別などに要していた多大な工数を省略することが可能となる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、熱可塑性樹脂発泡シートの押出成形装置とその製造プロセスについて多くの実験と研究を行うことにより、前記筒状発泡中間体aが環状冷却マンドレル13に到達するときの、特に環状冷却マンドレル頂部近傍での筒状発泡中間体の入り角度と、それ以降の曲率の変化とが、上下の発泡シート間の物性差に大きな影響を与えることを知った。理由は定かでないが、前記入り角度と曲率の変化は、サーキュラーダイからでた筒状発泡中間体が環状冷却マンドレルに到達する際の力の方向および変化率に大きな影響を持つものであり、それらを所要の範囲内のものとすることにより、該力の方向をスムースに変え、結果として、上記した重力による影響を極力少なくできるものと考えられる。
【0012】
本発明は上記の知見に基づいており、本発明による製造装置は、押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記押出機に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造装置において、前記環状冷却マンドレルは、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rが15mm〜80mmの曲面とされており、かつ、当該曲面に対して当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが30°〜75°の範囲であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による製造方法は、押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記押出機に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、前記環状冷却マンドレルとして、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rが15mm〜80mmの曲面とされているものを用い、かつ、当該環状冷却マンドレルとサーキュラーダイとの位置関係を、前記曲面に対して当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが30°〜75°の範囲となるようにして行うことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明による熱可塑性樹脂発泡シートは、上記の製造装置または製造方法により得られる、上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートであって、その上発泡シートの押出方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向の加熱収縮率との差の絶対値が3%以下のものである。また、上発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率との差の絶対値が2%以下のものである。これらの熱可塑性樹脂発泡シートは、単層のシートであってもよく、少なくとも片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層されている積層シートであってもよい。
【0015】
本発明によれば、環状冷却マンドレルとして、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が、曲率半径Rが一定でありかつ所定の範囲(15mm〜80mm)内の曲面とされているものを用い、かつ、その環状冷却マンドレルとサーキュラーダイとの位置関係を、前記曲面に対して当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが所定の範囲(30°〜75°)となるようにしたことにより、サーキュラーダイから押し出される筒状発泡中間体が環状冷却マンドレルに到達するときの、特に環状冷却マンドレル頂部近傍での力の方向の変化とその変化率をスムースなものとすることができ、結果として、上記した重力による影響を小さくできて、上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートの間の物性差をきわめて小さいものとすることができる。
【0016】
そのために、成形現場では、同時に採取された上原反ロールと下原反ロールとを意識的に区別して使い分けなくても、安定的に種々の成形品を成形することが可能となり、現在、成形現場で恒常的に行われている、成形条件の微調整あるいは原反ロールの分別などに要していた多大な工数を省略することができる。
【0017】
なお、前記曲率半径Rが15mmより小さい、または、前記角度θが75°より大きいと、環状冷却マンドレルに到達する際に筒状発泡中間体の作用する力の方向をスムースに変えることができない。また、前記曲率半径Rが80mmより大きい、または、前記角度θが30°より小さいと、環状冷却マンドレル上で筒状発泡中間体が変動し、安定的な熱可塑性樹脂発泡シートを得ることができない。より好ましい曲率半径Rの範囲は20mm〜60mmであり、より好ましい前記角度θの範囲は40゜〜60゜である。
【0018】
また、本発明による上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートにおいて、その上発泡シートの押出方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向の加熱収縮率との差の絶対値が3%を越えるものは、複雑な形状やシャープのコーナーを有する成形品を成形する際には、上原反ロールと下原反ロールとを同一の成形条件で成形できないため、成形条件を変更するか、あるいは上下の原反ロールに分別する必要があるので、好ましくはない。また、上発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率との差の絶対値が2%を越えるものは、同様に、複雑な形状やシャープのコーナーを有する成形品を成形する際には、上原反ロールと下原反ロールとを同一の成形条件で成形できないため、成形条件を変更するか、あるいは上下の原反ロールに分別する必要があるので、やはり好ましくはない。
【0019】
本発明において、用いる熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカードネート系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独でもよく、2種類以上組み合わせてもよい。これらの樹脂のうち、ポリスチレン系樹脂は特に好適である。その理由は、ポリスチレン系樹脂は、発泡適正の温度域が広く発泡性がよいために、発泡シート厚みの制御が容易である。それゆえに、従来の製造方法で得られたものは、上原反ロールと下原反ロールとの間での発泡シート厚みに差がないものが得られる反面、一方では、その他の物性(密度、加熱収縮率など)の差が顕著となりやすいからである。
【0020】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどのモノマーから製造される樹脂が挙げられる。また、スチレン単独重合樹脂、共重合樹脂、3元以上の共重合樹脂でもよい。より具体的には、ポリスチレンなどの単独重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−メタクリル酸、スチレン−アクリル酸(アクリル酸エステルなどを含む)、スチレン−アクリロニトリルなどの共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンなどの3元共重合樹脂が挙げられる。
【0021】
発泡剤は、公知のものをいずれも使用できる。具体的には、分解型発泡剤、気体または揮発性の発泡剤が使用できる。これらの発泡剤は単独でもよく、2種類以上組み合わせてもよい。気体の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、tert−ブタン、メチルエーテルなどが挙げられる。なお、ここで気体とは、20℃・1気圧で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。また、上記以外にも水を使用することができる。これらの発泡剤は、単独でも組み合わせてもよい。上記発泡剤のうち、n−ブタン、i−ブタン、窒素、炭酸ガスが好ましい。
【0022】
本発明による熱可塑性樹脂発泡シートに積層する熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、メタクリル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独でもよく、2種類以上組み合わせてもよい。これらの樹脂フィルムを熱可塑性樹脂発泡シートに積層することで、熱可塑性樹脂発泡シートの強度の向上や印刷性の向上といった効果が得られる。特にポリスチレン系樹脂フィルムを使用して、このフィルム樹脂にゴム分を含有させると脆性改善効果が得られるので好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂発泡シートに樹脂フィルムを積層するには、前記熱可塑性樹脂発泡シートに樹脂フィルムを共押出により積層する方法や、後から加熱ロールや接着剤などを使用して積層する方法などいずれの方法も使用できる。また、熱可塑性樹脂発泡シートに積層する樹脂フィルムは、発泡シートの片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。
【0024】
具体的な樹脂フィルムの積層方法としては、(1)発泡シートと樹脂フィルムを合流・積層させてから、ダイから押出して、フィルムが積層された発泡シートを得る共押出と呼ばれる方法、(2)インラインまたはアウトラインで、押出機より押出された樹脂フィルムを冷却しきらないうちに、直接、発泡シートに積層する方法、(3)インラインまたはアウトラインで、押出機より押出された樹脂をバインダーとして、あらかじめ準備された樹脂フィルム(あらかじめ印刷を施してあるものでも、無地のものでもよい)を発泡シートに積層する方法、(4)あらかじめ準備された樹脂フィルム(無地または印刷品)を加熱ロールで加熱しながら、発泡シートに圧着して積層する方法などが採用できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものでないことは当然である。
[実施例1]
ポリスチレン系樹脂(商品名G0002:(株)A&M社製)100重量部に、気泡調整剤(商品名 MO−60:キハラ化成)を2.2重量部添加し、内径90mm−150mmの押出機のホッパーより供給した。90mm押出機(シリンダー温度は最高温度230℃)内で溶解され、発泡剤としてブタンガス(i/n=50/50)を4.5重量部加えた後、150mmの押出機にて樹脂温度153℃に調整された。図1に中心線Lを通る断面で示すように、該溶融樹脂は、吐出量173kg/hで直径D1:180mmのサーキュラーダイ11のスリット11aから押し出され、直後でバルーンの内側と外側にエアーを吹き付けて発泡を制御しながら、該筒状発泡中間体は、環状冷却マンドレル13に到達し、そこを通過して冷却、固化した。引取りスピートは5.5m/minであった。
【0026】
環状冷却マンドレル13は、口径D2:673mm、長さ600mmで、内部に水を流す事によって冷却できるスパイラル構造となっている。そして、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部は曲率半径Rが30mmの曲面13aとされており、かつ、当該曲面13aに対して、当該曲面13aから最短距離にあるサーキュラーダイ11のスリット部11a先端を通過する仮想接線S1を引いたときの、該仮想接線S1と中心線Lとのなす角度θ1(図1では、角度θ1を、該仮想接線S1と中心線Lに平行な線L3とのなす角度として標記している)は42.72°である。環状冷却マンドレル13のサーキュラーダイ側端面とサーキュラーダイのスリット部11a先端との距離L2は246.5mmに設定した。
【0027】
環状冷却マンドレル13を通過した円筒状の発泡シートbは、カッター14にて水平方向に切断されて上下2枚に切り開かれ、巾が共に1045mmである上発泡シートb1(上ロール)と下発泡シートb2(下ロール)を得た。上ロールは、厚み2.37mm,密度0.105g/cm3、下ロールは、厚みが2.32mm,密度0.108g/cm3であった。
【0028】
得られた上下ロールの発泡シートの延伸状態を測定するため、図3に示すように、各シートの切片60を押出方向(以後MD方向とする)の同じ位置から採取し、押出後24時間経過後に押出方向に対して直角方向(以後TD方向とする)に100mm×100mmの大きさで3点の試験片61を採取した。図4aに示すように、各試験片61のTD,MDの中央部の内側、外側に直線をひき、これを加熱前の長さ(100mm)とした。次に125℃、150秒間、オーブンで(FINE OVEN(DH−41):ヤマト科学(株)製)加熱し、加熱後のMD方向、TD方向の外側と内側の長さをそれぞれ測定し、その平均をとった。図4bに示すように、加熱前に引いた外側と内側の直線が加熱によって変形したが、その変形した長さを測定した。
【0029】
加熱収縮は以下の式で求め、上下のロールからの発泡シートでの試験片の加熱収縮の差の絶対値を比較した。その結果を表1に示す。
加熱収縮(%)=[(加熱後の外側の長さ+加熱後の内側の長さ)/2]/加熱前の長さ×100
【0030】
また、成形性については、得られた発泡シートにハイインパクトポリスチレン樹脂(商品名E641N:東洋スチレン社製)を樹脂温度230℃でTダイから押出し積層した後、成形機にてリップ直径140mm、深さ70mmの図7に示す形状のどんぶり型容器にて、最初に下ロール(下発泡シートb2)で成形条件を整えて成形品を得たのち、同条件で引き続き上ロール(上発泡シートb1)の成形を行った。その時の条件は、加熱ゾーンのヒーター最高温度330℃で、成形秒数は5.2秒であった。その下ロールと上ロールで成形された容器の外観状態により成形評価を行った。その結果を表1に示す。なお、
○:フランジに亀裂がなく、厚みが均一な容器が得られた。
×:フランジに亀裂が入ったり、厚みが出ない部分が発生した。
【0031】
表1に示すように、上下の発泡シートで密度差および加熱収縮率の差(MD方向で1.0%、TD方向で0.1%)が非常に少なく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形しても同等の容器が得られたことがわかる。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様の押出条件にて押し出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが50mmの曲面13bとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。このときの当該曲面13bに対して、当該曲面13bから対短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S2を引いたときの、該仮想接線S2と中心線L(L3)とのなす角度θ2は41.23である。得られた上発泡シートb1は、厚み2.35mm,密度0.107g/cm3、下発泡シートb2は、厚みが2.33mm,密度0.109g/cm3であった。巾については共に1045mmであった。
【0033】
得られた上下の発泡シートについて、加熱収縮、成形評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。結果として、上下の発泡シートで密度差および加熱収縮率の差(MD方向で1.5%、TD方向で0.9%)が非常に少なく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形しても同等の容器が得られた。
【0034】
[実施例3]
実施例1と同様の押出条件にて押し出したのち、図2に示すように、環状冷却マンドレル13のサーキュラーダイ側端面とサーキュラーダイのスリット部11a先端との距離L2を213.5mmに設定した以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た(サーキュラーダイ側先端の周縁部は曲率半径Rが30mmの曲面13a)。このときの当該曲面13aに対して、当該曲面13aから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S3を引いたときの、該仮想接線S3と中心線Lとのなす角度θ3(図2では、角度θ3を、該仮想接線S3と中心線Lに平行な線L3とのなす角度として標記している)は57.43゜である。得られた上発泡シートb1は、厚み2.31mm,密度0.107g/cm3、下発泡シートb2は、厚みが2.27mm,密度0.110g/cm3であった。巾については共に1045mmであった。
【0035】
得られた上下の発泡シートについて、加熱収縮、成形評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。結果として、上下の発泡シートで密度差および加熱収縮率の差(MD方向で1.5%、TD方向で0.6%)が非常に少なく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形しても同等の容器が得られた。
【0036】
[実施例4]
実施例1と同様の押出条件にて押し出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが50mmの曲面13bとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例3と同様にして発泡シートを得た。このときの当該曲面13bに対して、当該曲面13bから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S4を引いたときの、該仮想接線S4と中心線L(L3)とのなす角度θ4は55.62゜である。得られた上発泡シートb1は、厚み2.34mm,密度0.106g/cm3、下発泡シートb2は、厚みが2.31mm,密度0.109g/cm3であった。巾については共に1045mmであった。
【0037】
得られた上下の発泡シートについて、加熱収縮、成形評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。結果として、上下の発泡シートで密度差および加熱収縮率の差(MD方向で2.0%、TD方向で1.0%)が非常に少なく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形しても同等の容器が得られた。
【0038】
[比較例1]
実施例1と同様の押出条件にて押出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが8mmの曲面13cとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。このときの当該曲面13cに対して、当該曲面13cから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S5を引いたときの、該仮想接線S5と中心線L(L3)とのなす角度θ5は44.39°である。
【0039】
得られた上発泡シートb1は、厚み2.37mm,密度0.105g/cm3、下発泡シートb2は、厚みが2.25mm,密度0.111g/cm3であった。巾については共に1045mmであった。
【0040】
得られた上下の発泡シートについて、加熱収縮の差、成形評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。成形評価については、下ロールで成形条件を整えて、成形品を得たのち、上ロールを成形すると成形容器のフランジ部に亀裂が発生し、満足な成形容器が得られなかった。この比較例では、上下の発泡シートで密度差、加熱収縮率の差(MD方向で4.0%、TD方向で3.6%)が大きく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形すると同等の容器が得られなかった。
【0041】
[比較例2]
実施例1と同様の押出条件にて押出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが150mmの曲面13dとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得ようとした。なお、このときの当該曲面13dに対して、当該曲面13dから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S6を引いたときの、該仮想接線S6と中心線L(L3)とのなす角度θ6は34.23°である。しかし、この条件では、環状冷却マンドレル上で発泡シートが変動し、安定的な発泡シートを得ることができなかった。
【0042】
[比較例3]
実施例1と同様の押出条件にて押し出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが8mmの曲面13cとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例3と同様にして発泡シートを得た。このときの当該曲面13cに対して、当該曲面13cから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S7を引いたときの、仮想接線S7と中心線L(L3)とのなす角度θ7は59.33゜である。
【0043】
得られた上発泡シートb1は、厚みが2.28mm、密度0.105g/cm3、下発泡シートb2は、厚みが2.25mm、密度0.113g/cm3であった。巾については共に1045mmであった。
【0044】
得られた上下の発泡シートについて、加熱収縮の差、成形評価を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。成形評価については、下ロールで成形条件を整えて、下ロールで成形品を得たのち、上ロールを成形すると成形品のフランジ部に亀裂が発生し、満足な成形容器が得られなかった。この比較例では、上下の発泡シートで密度差、加熱収縮率の差(MD方向で4.5%、TD方向で3.8%)が大きく、その成形評価では上下のロールを同条件で成形すると同等の容器が得られなかった。
【0045】
[比較例4]
実施例1と同様の押出条件にて押し出したのち、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部を曲率半径Rが150mmの曲面13dとした環状冷却マンドレルを用いた以外は、実施例3と同様にして発泡シートを得ようとした。なお、このときの当該曲面13dに対して、当該曲面13dから最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部11a先端を通過する仮想接線S8を引いたときの、仮想接線S8と中心線L(L3)とのなす角度θ8は45.91゜である。しかし、この条件では、環状冷却マンドレル上で発泡シートが変動し、安定的な発泡シートを得ることができなかった。
【0046】
【表1】
Figure 0003816824
【0047】
これらの結果、環状冷却マンドレルのダイ側先端の周縁部を所定範囲の曲率半径Rを持つ曲面とし、かつ、当該曲面に対して当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θを所定範囲内のものとすることにより、上下発泡シートで密度、加熱収縮率の差の小さい発泡シートを得ることができ、成形において上下の発泡シートの差がなく、同条件で成形しても同一の容器が得られる樹脂発泡シートを見いだすことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および比較例での、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部曲面の曲率半径Rと、そこに当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線Sを引いたときの、該仮想接線Sと中心線Lのなす角度θを説明するための図。
【図2】本発明および比較例での、環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部曲面の曲率半径Rと、そこに当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線Sを引いたときの、該仮想接線Sと中心線Lのなす角度θを説明するためのもう一つの図。
【図3】本発明および比較例で用いた試験片の調整方法を説明するための図。
【図4】図3に示す試験片を用いて加熱収縮の差を測定する態様を説明するための図。
【図5】押出機を用いて上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートを製造するための装置と方法を説明するための図。
【図6】製造された熱可塑性樹脂発泡シートを用いて製品を熱成形する態様を説明するための図。
【図7】熱可塑性樹脂発泡シートを用いて成形された容器の一例を示す図。
【符号の説明】
10…押出機、11…マンドレル、11a…サーキュラーダイのスリット部先端、13…環状冷却マンドレル、13a〜13d…環状冷却マンドレルのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rで規定された曲面、S1〜S8…環状冷却マンドレルの曲率半径Rで規定された曲面に対してサーキュラーダイのスリット部先端から引いた仮想接線、L…環状冷却マンドレルとサーキュラーダイに共通な中心線、θ1〜θ8…仮想接線と中心線とのなす角度、b1…上発泡シート、b2…下発泡シート

Claims (5)

  1. 押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記押出機に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造装置において、
    前記環状冷却マンドレルは、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rが15mm〜80mmの曲面とされており、かつ、当該曲面に対して当該曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが30°〜75°の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造装置。
  2. 押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混練物を前記押出機に取り付けているサーキュラーダイを通して低圧領域に押し出して発泡させ、前記発泡により得られた筒状発泡中間体を、同じ中心線上で同心円状に位置する環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する製造方法において、
    前記環状冷却マンドレルとして、そのサーキュラーダイ側先端の周縁部が曲率半径Rが15mm〜80mmの曲面とされているものを用い、かつ、当該環状冷却マンドレルとサーキュラーダイとの位置関係を、前記曲面に対して前記曲面から最短距離にあるサーキュラーダイのスリット部先端を通過する仮想接線を引いたときの、該仮想接線と中心線とのなす角度θが30°〜75°の範囲となるようにして行うことを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法。
  3. 請求項2に記載の製造方法で製造される熱可塑性樹脂発泡シートであって、前記環状冷却マンドレルの円筒状外周面に沿わせて、冷却、延伸させた後、水平方向でカットして得られる上下2枚取り熱可塑性樹脂発泡シートにおける、上発泡シートの押出方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向の加熱収縮率との差の絶対値が3%以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡シート。
  4. 上発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率と下発泡シートの押出方向に対して直角方向の加熱収縮率との差の絶対値が2%以下であること特徴とする請求項3記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
  5. 発泡シートの少なくとも片面に熱可塑性樹脂フィルムが積層されていることを特徴とする請求項3または4記載の熱可塑性樹脂発泡シート。
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