JP3681514B2 - 電子写真用キャリア及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリア表面に熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂を被覆コートし、尚かつ任意のキャリア抵抗値を有し、高耐久性に優れ色汚れのしない電子写真用キャリアに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トナーを用いて静電潜像を現像する方法としては、カスケード現像法(米国特許第2618552号明細書参照)や磁気ブラシ現像法(米国特許第2874063号明細書参照)が知られている。このいずれの方法においても2成分系乾式現像剤が用いられている。この2成分系乾式現像剤は、比較的大きなキャリア粒子表面に微小なトナー粒子が、両粒子の摩擦により発生した電気力により保持されており、静電潜像に近接すると、静電潜像が形成する電界によるトナー粒子に対する該潜像方向への吸引力がトナー粒子とキャリア粒子間の結合力に打ち勝ってトナー粒子は静電潜像上に吸引付着されて、静電潜像が可視化されるものである。そして、現像剤は現像によって消費されたトナーを補給しながら反復使用される。この場合、トナー粒子は必ず光導電体上の所望の像領域へ優先的に引きつけられるような正確な帯電性及び電荷の大きさを有していなければならない。また、キャリアは、長期間の使用中、常にトナー粒子を所望とする極性で、かつ充分な帯電量に摩擦帯電していなければならない。特にキャリアを磁気ブラシ現像法で用いる場合には、キャリアは適切な磁性も帯びなければならない。そこで、磁気ブラシ現像法で用いるキャリアとして、鉄粉キャリア、フェライトキャリアあるいはバインダー型キャリア(磁性体微粒子を分散させた樹脂粒子)等が開発され、実用化されている。しかし、これらキャリアは複写を重ねることにより、キャリア表面にトナーの一部が融着する現象いわゆるスペント化現象が発生したり、キャリアの表面抵抗が変化するなどして画像特性が変化して寿命が短くなっている。このように鉄粉キャリア等は、現像機内での攪拌による現像剤のストレスが大きくなる為に現像剤の劣化が速いという問題がある。この問題を改善する為にキャリアの表面を樹脂でコーティングする等の手法がとられている。しかしながら、現像剤のストレスは改善されないため、根本的な対策にはなっていない。そこで、これら鉄粉キャリアの欠点を克服するため最近ではフェライトキャリアが広く用いられるようになった。
【0003】
フェライトキャリアは、球状であって、真比重は4.5から5.5ぐらいであり、嵩密度は2g/mlから3g/mlぐらいであるため、鉄粉キャリアの欠点である重さをある程度解消し得るが、現像スリーブまたはスリーブ内の磁石の回転数が大きい高速複写機や汎用コンピューターの高速レーザープリンター等に対応するためにはまだ十分でない。キャリアへのスペント化を防止する為、従来よりキャリア表面に種々の樹脂を被覆する方法が提案されているが、いまだ満足のいくものは得られていない。
【0004】
キャリア粒子の表面を被覆するコート樹脂は、表面の臨界表面張力が低い材料が用いられる。その代表例として、四フッ化エチレン重合体やシリコーン樹脂等が提案されている。しかし、四フッ化エチレン重合体はスペント化は防止できるが、負極性が強い為、トナーを負極性に帯電させようとする場合には用いる事が出来ない。また、シリコーン樹脂の場合、耐スペント性は向上するが、キャリアの見かけ比抵抗が高くなるので、周辺効果を生じやすく、広い黒領域、中間調領域の再現性が悪くなる欠点がある。また、トナー脱離時のカウンターチャージも過大となるので、静電潜像による非画像部へのキャリア付着が発生しやすくなる。特にこの現象は高バイアス時に顕著に現れる。そこで、シリコーン樹脂からなる被覆層にカーボンブラック等の導電性を有する物質を混在させることが提案されている。たとえば、特開昭56−126843号公報には、カーボンブラックと樹脂とを主成分とする材料で被覆したキャリアが開示され、特開昭62−45984号公報には、多孔性カーボンブラックを被覆層中に含有させたキャリアが開示されている。しかし、これらの方法は現像剤混合作成時や連続複写時に被覆層中のカーボンが脱落し、現像スリーブ汚染や感光体汚染、更には複写機内の汚染を起こす問題がある。また、カラー現像剤用キャリアについては、前記方法で作成したキャリアを使用すると、脱落カーボンとカラートナーとの混色により、くすんだ複写画像になる問題を抱えている。そこで、色汚れが問題とならない白色系金属酸化物等を混入することが提案されている。例えば、特開昭64−35561号公報には、酸化チタン系、酸化亜鉛系及び酸化スズ系粒子を1種あるいは2種以上、シリコーン樹脂被覆層中に含有させたキャリアが開示されている。このようにフェライトキャリア表面に導電性物質を含有するシリコーン樹脂を被覆すると耐スペント性は著しく向上し、かつキャリアの抵抗も容易に調整できるが、その画質については、現在市場で求められている更なる写真原稿再現性や更なる細線再現性等の高画質化の水準には至っていない。このような高画質化を達成させる為、トナーやキャリア粒径を小粒径化する開発が進められている。小粒径キャリアについては、前記した導電性物質を均一に被覆層に含有させるためには、カーボンブラックのように微粒化する必要があると同時に、微粒化した場合コート樹脂液の粘度が急激に増粘し、スプレー法では、対応出来なくなる。また、前記微粒化した導電性物質を使用するためには、あらかじめ前工程で微粉砕処理が必要となり、処理工程増によるコストアップにつながる問題もある。一方、導電性物質を用いずキャリア抵抗を調整する方法として、膜厚を薄くする方法や低抵抗の無機微粒子を添加する方法が提案されている。膜厚を薄くした方法では、特開平4−40472号公報、特開平3−233464号公報、特開平7−104522号公報等が提案されており、これら提案は画像色調への影響はないが、コート膜材料によっては膜の厚みを薄くしても低抵抗化できなかったり、或いは、膜厚調整で抵抗調整できたとしても、連続複写(ランニング)した際、薄膜の為耐久性に問題が起こる。また、キャリア粒子表面に凹凸膜を形成させ、凸部を露出させる方法も提案(特開平4−93954号公報)されているが、前記提案工法(流動床法等)では凸部を露出させる事は工法上困難である。また、露出できたとしても、露出部にトナーがスペント化しやすく、帯電劣化を招き長期連続複写には耐えられない問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を解決するもので、特に
(1)低抵抗なキャリアを提供することにある。
(2)高耐久性を持ちかつ高画質な電子写真画像を得ることのできるキャリアを提供する事にある。
(3)色汚れが問題とならないキャリアを提供する事にある。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
1)凸部薄膜部面積比率を55〜90%とする。
2)凹凸部膜厚比率を(凹:凸=2:1〜100:1とする。
3)樹脂被覆時に,大気圧雰囲気を0mm Hg とした場合、−50〜ー500mm Hg の減圧雰囲気で加熱乾燥することにより製造される。
ことによりキャリアは、低抵抗となり課題(1)が達成されることを見出した。
4)熱硬化性樹脂としては特にシリコーン樹脂が好ましい。
上記1)、2)、3)の条件を満たし、かつ、
5)赤外吸収波数領域[1100±100]の吸光度のスペクトル強度(Absモード)が0.8以上
6)赤外吸収波数領域[1250±50]、[800±100]の各吸光度のスペクトル強度(Absモード)が0.5以上
の条件を満たすものは、抵抗の他、耐久性にも優れる事を見出した。
7)本被覆層は、導電性物質を含まなくとも十分特性を満たすが、含んでいてもよい。含んでいる場合は更に低抵抗化する。
8)本発明の請求項1〜5に示すキャリアは、実際には請求項6〜9の特別な製法及び条件によって製造される。
【0007】
本発明のコートキャリアは、薄膜部面積制御と凹凸部の厚み制御によって、課題を達成できる。図4に本発明コートキャリアの電子顕微鏡写真を示し、Aが凸部(薄膜部)、Bが凹部(厚膜部)を示す。
薄膜部と厚膜部の識別は、例えばシリコーン樹脂の場合、樹脂中のSiをX線マイクロ分析法(EPMA)によりマッピング測定を行う。
【0008】
そして、マッピング後の撮影写真をコンピューターによりX線強度の強い部分(厚膜部)とX線強度の弱い部分(薄膜部)に識別化処理(色分け)を行い薄膜部分と厚膜部分の層別化した画像を得る。又、同時にマッピングに用いたコートキャリアの断面撮影を行い、厚膜部と薄膜部の膜厚を求める。各膜厚は、精度を上げる為、10粒子の断面撮影を行い、1粒子につき各膜厚部を10点づつを膜厚計測し、平均値を求める。次いで、各膜厚部の厚みとマッピング画像の色調と対応をとり、平均薄膜値の5倍以上の部分(厚膜部すなわち凹部)とそれ以下の部分(薄膜部すなわち凸部)の各部分を白黒画像に2値化変換させる。変換後、全マッピング画像の粒子表面を全て画像に変換し、画像解析処理装置に取り込み、面積を求める。次に白黒画像に変換した黒色部分(厚膜部)の面積部分の面積を求め、全表面積から黒色部分の面積を差し引き、白色部分(薄膜部)の面積を求める。以上が凹凸部の膜厚値及び厚膜/薄膜部の面積算出法である。各計測においては、ばらつきをなくす為、1サンプル当たりn=5のサンプリングを行い実施した。
【0009】
本発明は、任意の粒径を有するキャリアを、熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液中に浸漬或いはスプレー噴霧又は滴下させ、コーティング工程から乾燥工程までの雰囲気を加熱/減圧状態でおこない、キャリアの体積抵抗が[108〜1014LogΩcm]の抵抗にキャリア抵抗を制御できる事を特徴とする電子写真用キャリア及び製造方法に関する。本発明に使用されるコーティング装置は、図1に示すような混合攪拌槽を有し、槽内圧力を大気圧(0mmHg)より低い減圧雰囲気を作る事ができる装置を使用する。コート・攪拌・乾燥工程は、加熱/減圧雰囲気下で行われる。本発明のコーティング装置は、槽内にキャリアを攪拌・混合させる混合攪拌羽根と解砕させる解砕羽根を有し、混合攪拌羽根によって槽内にキャリア粒子の転動流動状態を形成させ、解砕羽根によって被覆時に発生する造粒物(凝集物)を解砕させるが、装置は冷却・加熱可能なジャケットを有する。本発明の電子写真用キャリアは、コート時及び乾燥時の混合攪拌羽根の周速制御と槽内雰囲気と乾燥時間の制御、更には次工程の焼結処理によって、任意の抵抗値を有するキャリアを得る事ができる。本発明の電子写真用キャリアは、キャリア粒子表面に例えばカップリング剤を含有したシリコーン樹脂を被覆形成し得られるが、コート膜中には必ずしも導電性物質を含有させずとも、前記装置・方法によって低抵抗化させる事ができる。このカップリング剤としては、好ましくはシランカップリング剤が使用され、特にその化学構造を特定する事により次の性能を付与あるいは向上させることができる。
【0010】
1:カップリング剤がシランカップリング剤であることにより、該キャリアとシリコーン樹脂被覆層の接着性が向上し、被覆層の剥がれない高耐久のキャリアとなる。
2:シランカップリング剤にアミノ基を含有させる事により、キャリア自体の帯電性を正極性にすることができる為、負極性トナーに対し均一な帯電を付与することが可能である。
3:シランカップリング剤にクロロ基あるいはグリシドキシ基を含有させることで、キャリア自体の帯電性を負極性にできるので、正極性トナーに対し均一な帯電性を付与できる。
本発明の該キャリアは、コート被覆層から溶出する特定のシリコーン樹脂成分量を制御する事により、耐久性に優れたコートキャリアを提供できる。
【0011】
【作用】
本発明のコート膜は、キャリア粒子表面の凹凸部に於ける膜形成状態が、不均一に全面被覆形成される。該キャリア粒子表面の凹凸部に形成されるコート膜は、凸部が薄膜形成され、凹部が厚膜形成される。
【0012】
薄膜形成部は、キャリア粒子全表面積の(55〜90%)に制御される。好ましくは(65〜75%)が良い。薄膜形成部が90%を超える場合、低抵抗化効果をもたらす薄膜部の占有面積が大きくなり、所望とする帯電能力を得る事ができなくなり、地肌汚れ等の異常画像が出易くなる。一方、薄膜部の占有面積が55%未満になると、キャリア抵抗が高抵抗化すると同時に、帯電能力も高くなりすぎ、画像濃度が得にくくなる。また、ベタ画像をコピーした場合、ベタのエッジ部が強調される異常画像が発生し易くなる。
【0013】
図2の太枠内が適性キャリア抵抗域を示し、適性キャリア抵抗域を達成させる為には、薄膜面積で55〜90%の範囲に制御する必要がある。
【0014】
本発明のコート膜は、キャリア粒子表面の凹凸部に於ける膜形成状態が、不均一に形成され凸部と凹部の膜厚比は、(凹:凸=2:1〜100:1より好ましくは5:1〜100:1)の比率に制御・形成されたものであることが好ましい。キャリア粒子間の接触は、凸部同士の接触が圧倒的に多く存在するので、前記膜厚比率に制御・形成する事によって接触部の膜厚は薄膜部同士の接触になり低抵抗を示す。しかし、前記比率が同率比あるいは逆転した場合、接触部の膜厚は厚膜同士の接触になり、抵抗値が高まる傾向がある。また、反対に比率が大きくなりすぎ、凸部の膜厚が薄膜になりすぎると長期コピー時にキャリア表面が露出し、スペント化による地汚れが出易くなる。
【0015】
本発明の該キャリアコート膜を構成する樹脂として、特定溶媒(クロロホルム)に浸漬させた時、コート膜表面から溶出した樹脂成分の溶出液の成分が、赤外吸光分析計測で示される特定赤外吸収波数領域[800±100、1100:100、1250±50(cm-1)、の3領域]で、吸光度のスペクトル強度(Absモード)が[800±100][1250±50(cm-1)]で0.5以上に、[1100±100]で0.8以上のものを用いると、高耐久のキャリアを得ることができる。
【0016】
前記特定赤外吸収領域[1100±100]のスペクトル吸収強度が0.8未満、[800±100]のスペクトル吸収強度が0.5未満、[1250±50]のスペクトル吸収強度が0.5未満になるとコート膜の結合状態がより強固になる。その場合、キャリア粒子表面に形成されたコート膜部へ局部的に外的応力が加わると、膜内に存在するシランカップリング剤のシラノール基で破断が起こりやすく、膜内を中心に膜削れが発生しやすくなる。削り出された膜は、トナーとともに画像上に転写され地肌汚れや定着不良等の問題を引き起こす。また、現像部内ではトナーとの帯電を阻害したり、前記膜剥れが進行し、キャリア芯材部が露出しトナースペント化が発生し易くなる。前記領域の吸収強度は、コート/乾燥時の装置内雰囲気と時間及び次工程の焼結処理条件(温度・時間等)で制御できる。前記スペクトル吸収強度は、コート/乾燥時の強乾燥条件及び弱焼結条件で達成される。装置内雰囲気は、大気圧(0mmHg)より低い減圧雰囲気で行われ、−50から−500mmHgの範囲が好ましい。減圧雰囲気が大気圧に近い0〜−50mmHgの範囲では、コート/乾燥時の溶媒沸点と同じ或いは低い為、溶媒蒸発が遅くなりコート/乾燥処理時間が長くなる。また、弱減圧状態で処理すると、コート前のキャリア表面に存在する気泡(ボイド)が完全に除去されないままコートされる為、膜とキャリアの密閉性が悪くなる。この状態で膜硬化処理(焼結処理)を行うと、外的応力により膜剥離が起きやすいので好ましくない。また、減圧雰囲気が−500mmHgより更に低い状態(真空に近い状態)で処理すると、急激に溶媒が除去されると同時に樹脂分/キャリアも同時に排出され、設定膜厚よりも低い膜厚となり、薄膜部の占有比率が大きくなり、急激な低抵抗化や低帯電化を招き所望の品質が得られなくなる。また、キャリアが排出される為、製品収率も低くなり生産性低下を招き好ましくない。本発明の加熱処理は、溶媒沸点±10℃の範囲で加熱される。加熱温度が溶媒沸点より10℃以上低いと強減圧処理が必要となり前記問題が発生し好ましくない。また、溶媒沸点より10℃以上高温ですると、強減圧処理同様に急激な蒸発により樹脂分も排出され、設定膜厚よりも低くなり同様な問題が起こり好ましくない。本発明の浸漬コート/乾燥時における混合攪拌羽根の回転数は、溶媒蒸発時に周速で1.4〜2.0m/SECの範囲で処理され、溶媒蒸発後の混合攪拌羽根の回転数は、周速で2.5〜5.5m/SECで処理される。溶媒蒸発時の混合攪拌羽根回転数が1.4m/SEC以下で処理すると、良好な転動流動状態が出来ない為、全キャリア粒子へ一様に被覆コートできなくなり、コート状態にむらが発生し好ましくない。また、周速が2.0m/SEC以上で処理すると、回転数が速い為キャリアが舞い上がりすぎ、上蓋内側へ多量に付着したり、溶媒排出口から樹脂分/キャリアが排出されやすくなり、生産性低下を招き好ましくない。一方、溶媒蒸発後の混合攪拌羽根回転数が2.5m/SEC以下で処理されると、各キャリア粒子にかかる力が弱い為、粒子同士の凝集発生や膜の延展作用が起きにくくなる。また、5.5m/SEC以上で処理すると、混合攪拌エネルギーが強くなりすぎ膜の表面粉砕や削れが多発し、膜の粉砕カスや膜削れカスとなる。その結果、多量の樹脂カスがコート後のキャリア表面(凹凸部全体)に付着するため、薄膜部の電気伝導性が低下し、高抵抗化を招く。また、トナーと混合処理をした場合は、前記カスがトナーとキャリア粒子との摩擦帯電を阻害し、所望の帯電特性が得られなくなる。本発明のスプレー噴霧方法及び滴下方法でコートする場合、コート/乾燥時における混合攪拌羽根の回転数は、被覆形成液がスプレー噴霧終了及び滴下終了までは周速で1.4〜2.0m/SECで処理を行い、被覆形成液終了後は、混合攪拌羽根回転数が周速で2.5〜5.5/SECで処理する。スプレー噴霧方法及び滴下方法も浸漬方法同様に被覆形成液がなくなる前に低速や高速にすると、同様な問題が発生し好ましくない。
【0017】
本発明の電子写真用キャリアは、コート膜中にカーボン等の導電性物質を含有させないでも、低抵抗/高耐久化を達成させているので、導電性物質を含有させた時に発生する問題がない。例えば、導電性物質を被覆形成液に含有させないでコート膜を形成するので、導電性物質の存在むらによるばらつきがない。また、カラー現像剤作成時にコート膜から脱落する心配もないので、トナーの色調ずれの問題もない。更には、長期に渡り複写したときに見られる現像部内及び複写機内の汚染やコピー画像の不鮮明化等の問題もなくなる。
【0018】
次に本発明を具体的に説明する。
本発明の電子写真用キャリアに使用されるキャリアは、任意の粒子径を有するものが使用され、フェライト・鉄粉・マグネタイト等の材料が使用でき、限定されない。本発明で用いられるキャリア表面被覆用樹脂としては、凸部樹脂膜の占有比率が特定条件にあれば特に限定されないが、シリコーン樹脂が好ましい。このシリコーン樹脂としては、従来から知られているいずれかのものであってもよく、下記式に示されるオルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂及びアルキッド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂が特に好ましい。
【0019】
◇
【化1】
(上記式中R1は、水素原子、炭素数1〜4アルキル基又はフェニル基、R2及びR3は水素基、炭素原子1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エチレンオキシド基、グリジニル基又は下記で示される基である。)
【0020】
◇
【化2】
(上記式中R4、R5はヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基、k、l、m、n、o、pは1以上の正数を示す。)
【0021】
上記各置換基は未置換のもののほか、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルキル基、フェニル基、エチレンオキシド基、ハロゲン原子のような置換基を有してもよい。例えば、市販品としてストレートシリコーン樹脂は、信越化学社製のKR271、KR255、KR152、東レダウコーニング社製のSR2400、SR2405等があり、変性シリコーン樹脂は、信越化学社製のKR206(アルキッド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レダウコーニング社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキッド変性)などがある。
【0022】
シリコーン樹脂と共に用いられるカップリング剤としては、シランカップリング剤が用いられるが、そのほかチタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等も挙げられる。
【0023】
好ましく用いられるシランカップリング剤としては例えばγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニュウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(以上トーレ・シリコン社製)、アリルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1.3−ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニュウムクロライド(以上チッソ社製)等が挙げられる。
【0024】
シランカップリング剤の使用は、シリコーン樹脂固形分に対し、1〜25wt%が好ましい。シランカップリング剤の含有量が1wt%より少ないとその効果が発揮されず、該キャリアとシリコーン被覆層の接着が劣る為、長期間の使用で被覆層の剥がれが生じる場合がある。また、含有量が25wt%を越えるとシリコーン膜の耐スペント性が悪化する可能性があり、やはり長期間でのトナーのスペント化が発生しやすい。
【0025】
本発明のシリコーン被覆層の形成方法について例をあげて説明する。
(浸漬方法による形成方法)
製造方法は、まずシリコーン樹脂溶液にカップリング剤を添加し、適宜のミキサーで分散・調整し、被覆形成液とする。次に減圧雰囲気を作れる混合ミキサーに任意の粒径のキャリアを投入し、混合ミキサージャケットを所望の温度に加熱する。キャリア粒子が所望温度に達したら、前記被覆形成液を注ぎ、キャリア粒子を浸漬させる。浸漬後、槽内を所望とする抵抗値になるように減圧雰囲気に調整し、コート・攪拌・混合・乾燥処理を施し、コートキャリアを得る。本発明に於いて、被覆層の膜厚はあまり薄くても、又、あまり厚くても不都合を生じやすく、平均膜厚で0.1〜3μmが好ましい。
【0026】
次に本発明の特徴について以下に説明する。
本発明は、コート後の膜表面に存在する樹脂成分の溶出量と耐久性の関係を鋭意研究する事により、見いだした。まず、赤外分光光度計で計測される樹脂成分の現れる領域に於けるスペクトル吸収強度と耐久性の関係について検討した結果を以下に示す。図3は耐久性評価指標を示すグラフであり、−12以上に高耐久化領域があり、赤外吸収波数領域[1100±100]のスペクトル吸収強度が0.8未満、赤外吸収波数領域[1250±50]と[800±100]のスペクトル吸収強度がそれぞれ0.5未満になると、目的とする耐久性達成が難しくなる。特に、赤外吸収波数領域[1100±100]スペクトル吸収強度を0.8以上に制御すると耐久性は格段に向上する。
前記各スペクトル吸収強度を前記数値以上になるように制御すると、耐久性指標は正側に移行する。
耐久性指標は、主として耐久性試験前後の帯電特性の変化を指標に置き換え、負側の数値が大きい程帯電特性が悪くなる(帯電劣化が激しい)事を示している。
【0027】
【実施例】
次に本発明を実施例と比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例及び製造例に記載の各成分の量(部)は総て重量部である。
【0028】
実施例−1
(コートキャリア製造例−1)
・シリコーン樹脂溶液:固形分20wt% 200部
(SR2411:東レダウコーニング社製)
・γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン 6部
・トルエン 200部
上記混合物をホモミキサーで10分間分散し、被覆形成液を調整した。
【0029】
次に平均粒径が50μmのフェライトキャリア(パウダーテック社製:F−300)を、多機能型混合ミキサー(深江工業社製)に、2000部投入しジャケット加熱温度を100℃に設定した。その状態で、混合攪拌羽根と解砕羽根を20分間回転させ、フェライトキャリア温度を100℃にした。ついで、前記被覆形成液を400部投入し、該ミキサー内の雰囲気を−350mmHgに設定し、被覆形成液が蒸発するまでの混合攪拌羽根の周速を1.5m/SEC、蒸発後の周速を5.0m/SECに設定し、コート・攪拌/乾燥処理を行い、ついで弱焼結処理を行ない、実施例−1のキャリアAを得た。薄膜部すなわち凸部面積占有率は75.5%、厚膜部膜厚すなわち凹部が6.2μm、薄膜部膜厚が0.06μmであった。キャリアAの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.91、赤外吸光波数領域[1250±50]で、0.52、赤外吸光波数領域[800±100]で0.47であった。
【0030】
次にトナーの製造例を以下に示す。
(トナー製造例−1)
・ポリエステル樹脂(Mn=5000、Mw=55000、Tg=61℃) 95部
・スチレン−アクリル樹脂(三洋化成社製) 20部
・Symuler Fast Yellow(大日本インキ社製) 5部
・ボントロンE−84(オリエント化学社製) 1部
【0031】
上記トナー原料を混合し、熱ロールミルで混練後、冷却固化し、更に粉砕分級して平均粒径7μmのイエロートナーを得た。このトナー100部に0.01μmのZnOを1部混合し、画像出し用トナーAとした。前記該キャリアA:95重量部と該トナーA:5重量部を、ボールミルで混合攪拌し、現像剤Aを得た。
【0032】
(トナー製造例−2)
・ポリエステル樹脂(Mw=250000) 85部
・脱遊離脂肪酸型カルナバワックス(酸価2) 5部
・カーボンブラック(#44:三菱カーボン社製) 10部
・含クロムアゾ染料(ボントロンS34:オリエント化学社製) 1部
【0033】
上記トナー原料を混合し、熱ロールミルで混練後、冷却固化し、更に粉砕・分級して平均粒径8μmのトナーを得た。このトナー100部に対し、コロイダルシリカを2部混合し、トナーBを得た。
【0034】
実施例−2
実施例−1のコートキャリア製造法の溶媒蒸発迄の羽根周速を1.4m/SEC、蒸発後の周速を3.0m/SECに変え、ジャケット加熱温度を120℃に変えた以外は、実施例−1と同様にして、キャリアBを得た。このときのキャリアBの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.86、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.48、赤外吸光波数領域[800±100]で0.45であった。また、薄膜部面積占有率は60%、厚膜部膜厚が4.1μm、薄膜部膜厚が0.08μmであった。ついでキャリアBを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、現像剤Bを得た。
【0035】
実施例−3
実施例−1のキャリア製造方法のジャケット加熱温度を110℃に設定し、コート/乾燥条件を装置内雰囲気を−500mmHgで実施例−1と同条件で、キャリアCを得た。このときのキャリアCの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.85、赤外吸光波数領域は[1250±50]で0.46、赤外吸光波数領域[800±100]で0.45であった。また、薄膜部面積占有率は80%、厚膜部膜厚が5.5μm、薄膜部膜厚が0.1μmであった。ついでキャリアCとトナーBを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、現像剤Cを得た。
【0036】
実施例−4
実施例−1のキャリア製造方法をスプレー噴霧による方式に変え、減圧雰囲気を−150mmHgに設定し被覆形成液400gを毎分300mlの液流量で噴霧した。混合攪拌羽根の回転数は、被覆形成液を噴霧中は、周速で1.8m/SEC、噴霧終了後は周速を4.0m/SECに設定した。また、ジャケット加熱温度は100℃に設定し、中焼結条件で処理してキャリアDを得た。このときのキャリアDの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.81、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.41、赤外吸光波数領域[800±100]で0.42であった。また、薄膜部面積占有率は72%、厚膜部膜厚が6.9μm、薄膜部膜厚が0.07μmであった。ついでキャリアDを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、現像剤Dを得た。
【0037】
実施例−5
実施例−4のコートキャリア製造方法を滴下方式に変え、減圧雰囲気を−200mmHgに変えた他は、全て実施例−4と同条件にして、キャリアEを得た。このときのキャリアDの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.82、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.42、赤外吸光波数領域[800±100]で0.43であった。また、薄膜部面積占有率は66%、厚膜部膜厚が7.0μm、薄膜部膜厚が0.8μmであった。ついでキャリアEを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、現像剤Eを得た。
【0038】
実施例−6
実施例−1のコートキャリア製造方法で、減圧雰囲気を−100mmHg、ジャケット加熱温度を115℃、被覆形成液蒸発迄の混合攪拌羽根回転数を周速で2.0m/SEC、蒸発後の周速を5.5m/SECに変えた他は全て実施例−1と同条件でキャリアFを得た。このときのキャリアFの膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.90、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.49、赤外吸光波数領域[800±100]で0.51であった。また、薄膜部面積占有率は78%、厚膜部膜厚が6.30μm、薄膜部膜厚が0.07μmであった。ついでキャリアFを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、現像剤Fを得た。
【0039】
比較例−1
実施例−1の製造条件の乾燥雰囲気を大気圧(0mmHg)に変え、ジャケット加熱温度を125℃に変えた他は、全て実施例−1と同条件で比較例−1のキャリア1を得た。このときのキャリア1の膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.86、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.46、赤外吸光波数領域[800±100]で0.43であった。また、薄膜部面積占有率は58%、厚膜部膜厚が13.2μm、薄膜部膜厚が0.06μmであった。また、焼結処理後のキャリア表面には、多量のコート膜の小径削れカスが付着していた。ついでキャリア1を用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、比較用現像剤1を得た。
【0040】
比較例−2
キャリアコート方式を転動流動層によるスプレー法にして、実施例−1と同条件の材料を使用し、比較例−2のキャリア2を得た。このときのキャリア2の膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.85、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.46、赤外吸光波数領域[800±50]で0.44であった。また、薄膜部面積占有率は12%、厚膜部膜厚が0.81μm、薄膜部膜厚が0.17μmであった。ついでキャリア2を用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、比較用現像剤2を得た。尚、転動流動層は、(株)岡田精工製スピラコーターSP−40を用い、槽内温度は、実施例−1同様に100℃に設定し、スプレー噴霧は実施例−4同様に毎分30mlで処理した。
【0041】
比較例−3
実施例−1のコートキャリア製造方法で、減圧雰囲気を−600mmHg、ジャケット加熱温度を100℃、混合攪拌羽根回転数は全工程周速で5.0m/SECに設定した他は、全て実施例−1と同条件で比較例−3のキャリア3を得た。このときのキャリア3の膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.84、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.42、赤外吸光波数領域[800±100]で0.41であった。また、薄膜部面積占有率は75.6%、厚膜部膜厚が4.3μm、薄膜部膜厚が0.05μmであった。尚、装置上蓋内壁部には、多量のコートキャリアが付着していた。また、キャリア粒径の1/2程度の膜削れ粒子が多く見られた。ついでキャリア3を用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、比較用現像剤3を得た。
【0042】
比較例−4
実施例−1のコートキャリア製造方法で、減圧雰囲気を−100mmHg、ジャケット加熱温度を90℃、混合攪拌羽根回転数は全工程周速を2.0m/SECに設定した他は、全て実施例−1と同条件で比較例−4のキャリア4を得た。このときのキャリア4の膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.87、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.44、赤外吸光波数領域[800±100]で0.45であった。また、薄膜部面積占有率は35%、厚膜部膜厚が4.6μm、薄膜部膜厚が0.07μmであった。尚、焼結処理後のキャリアを観察すると、多量の凝集体が見られた。ついでキャリア4とトナーBを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、比較用現像剤4を得た。
【0043】
比較例−5
実施例−6の条件でコート/乾燥処理を行い、強焼結処理で比較例−5のキャリア5を得た。この時のキャリア5の膜表面から溶出した樹脂組成のスペクトル強度は、赤外吸光波数領域[1100±100]で0.66、赤外吸光波数領域[1250±50]で0.38、赤外吸光波数領域[800±100]で0.33であった。また、薄膜部面積占有率は72%、厚膜部膜厚が7.6μm、薄膜部膜厚が0.05μmであった。ついでキャリア5とトナーBを用いて、実施例−1と同条件で現像剤を作成し、比較用現像剤5を得た。
【0044】
図5、図6は本発明中キャリアの代表例で、図5が全体、図6が部分の電子顕微鏡写真であるが、削りカスの付着がなく、良品であった。一方、図7、図8は比較品で、削りカスが発生していた。
前記方法で得られたキャリアの品質を確認する為、以下に示す各計測評価を行い比較した。
【0045】
【0046】
2.コートキャリアの断面処理及び断面部撮影
1-1、1-2で使用したキャリアを以下の方法で、処理を行い、各コート膜部の断面撮影をする。
【0047】
前記方法・条件で得られたコート膜断面撮影部の厚膜/薄膜部の膜厚を各10点計測する。
【0048】
各10点の平均値を求め、厚膜部膜厚と薄膜部膜厚の比率を算出する。そして、平均薄膜部膜厚の5倍以上の膜厚部のマッピング画像の色調との対応をとり、5倍以上の膜厚部を黒色、それ以下の膜厚部を白色に2値化処理を行う。また、1−1、1−2で取り込んだ画像を用いて、キャリア粒子全体の表面積Aを求める。次いで、前記2値化した黒色部(厚膜部)の面積Bを求め、更に全表面積Aから黒色部面積を差し引き、白色部面積(薄膜部面積)Cを求める。
【0049】
3:コート膜分離・溶出成分の分析−1(赤外分光光度分析)
【0050】
4:抵抗計測
平行電極:ギャップ2mmの電極間に計測するキャリアを投入し、DC200Vを印加し、30sec後の抵抗値をハイレジスト計で計測し、その値を体積抵抗率に変換し評価する。
【0051】
5:帯電量測定・評価
20℃・60%相対湿度(RH)の常温常湿にトナー5部とキャリア100部を5Hr調湿する。その後、150mlのステンレスポットにトナーとキャリアを投入し、10分間攪拌し、ブローオフ法により帯電量を求める。この時の帯電量を、初期の帯電量とする。
【0052】
6:耐久性評価法
リコー複写機:プリテール550で連続80万枚複写試験後の現像剤を、ブローオフしてキャリアのみにする。そのキャリアを用いて帯電量評価法と同一条件で再度現像剤を作成する。その現像剤の帯電量を計測し、初期帯電量と耐久性試験後の帯電量との変化率を求める。
変化率の度合いをランク化し、変化しない状態を(0)、初期帯電量に対し小さく成る状態をマイナス(−)、大きく成る物をプラス(+)とした。
また、耐久性試験後の樹脂膜存在状態をEPMA法により樹脂(Si)存在状態を確認する。
【0053】
7:膜削れカス評価
各コートキャリアを電子顕微鏡写真で撮影し、各粒子表面及び近傍に存在する膜削れ粒子の発生量/粒径を計測・判定し、5ランクに層別しランク分けする。
発生の無い物をランク5、多量発生の物をランク1とする。
【0054】
【表1】
【0055】
結果を表1に示す。
【0056】
◇
【表1】
【0057】
【発明の効果】
本発明のキャリアの効果について以下に示す。
1:任意の粒径キャリアに、必ずしも導電物質をコート膜中に添加させなくと も、所望とする低抵抗(LogR:10〜14)キャリアが得られる。
2:コート膜中に、カーボン等の導電物質を添加しないので、色汚れの無い鮮明なフルカラー画像を得ることができる。
3:膜厚(薄膜化)による抵抗調整をしないので、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コート装置の一例を示す説明図である。
【図2】適性キャリア抵抗域を示すグラフである。
【図3】高耐久化領域を示すグラフである。
【図4】キャリアの凹部、凸部を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明キャリアの全体の電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明キャリアの部分の電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例キャリアの全体の電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例キャリアの部分の電子顕微鏡写真である。
Claims (13)
- キャリア粒子表面全面に熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂被覆膜層を有するキャリアに於いて、凸部樹脂膜部が薄膜形成され、凹部樹脂膜部が厚膜形成され、凸部樹脂膜部の占有比率がキャリア全面積の55%〜90%であり、凹凸部に形成される樹脂膜厚状態が以下に示される構成比率であり,かつ、樹脂膜被覆時に、大気圧雰囲気を0mmHgとした場合、−50〜−500mmHgの減圧雰囲気で加熱乾燥することにより製造されたものであることを特徴とする電子写真用キャリア。
[凹凸部膜厚比率 凹:凸=2:1〜100:1] - 該熱硬化性樹脂がシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用キャリア。
- 該キャリア粒子をクロロホルムに浸漬させコート膜表面から溶出する樹脂組成が下記の条件で計測したとき、赤外吸収波数領域[1100±100]の吸光度のスペクトル強度(Absモード)が0.8以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用キャリア。
計測器:[フーリェ変換赤外分光光度計 JIR−100(日本電子製)]
計測条件:KBr錠剤法(KBr disk 0.5ml)
SAMPLING RATE 1
RESOLUTION 4
TIME 30
POSITION 800±100cm-1・1100±100c
m-1・1250±50cm-1のスペクトル吸収
強度(ABSORBANCE) - 該キャリア粒子をクロロホルムに浸漬させコート膜表面から溶出する樹脂組成が請求項3の条件で計測したとき、赤外吸収波数領域[800±100]及び[1250±50]の各吸光度のスペクトル強度(Absモード)がそれぞれ0.5以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用キャリア。
- 該熱硬化性樹脂で被覆コーティングされた樹脂被覆膜は、導電性物質を含まない事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア。
- 該キャリアは、熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液を浸漬或いはスプレー噴霧又は滴下方法でコート/乾燥処理で得られ、樹脂被覆コート/乾燥工程が加熱/減圧状態で行われる事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリアの製造方法。
- 該キャリアは、熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液に浸漬コートする方法において、被覆形成液が蒸発するまでは、混合攪拌羽根の周速が1.4〜2.0m/SECで処理し、蒸発後の混合攪拌羽根の周速が2.5〜5.5m/SECで処理する事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリアの製造方法。
- 該キャリアは、熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液でスプレー噴霧及び滴下方法でコートする方法に於いて、該被覆形成液がスプレー噴霧及び滴下終了までは、混合攪拌羽根の周速が1.4〜2.0m/SECで処理し、スプレー噴霧及び滴下終了後の混合攪拌羽根の周速が2.5〜5.5m/SECで処理する事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリアの製造方法。
- 請求項6記載の加熱は、被覆形成液の溶媒沸点に対し、該溶媒沸点±10℃の加熱温度の範囲で処理する事を特徴とする電子写真用キャリアの製造方法。
- 熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液を浸漬或いはスプレー噴霧又は滴下方法でコート/乾燥処理で製造された電子写真用キャリアであって、樹脂被覆コート/乾燥工程が加熱/減圧状態で行われることにより製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア。
- 熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液を浸漬コートする方法で製造された電子写真用キャリアであって、被覆形成液が蒸発するまでは、混合攪拌羽根の周速が1.4〜2.0m/SECで処理し、蒸発後の混合攪拌羽根の周速が2.5〜5.5m/SECで処理することにより製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア。
- 熱硬化性樹脂を主成分とする被覆形成液でスプレー噴霧及び滴下方法でコートする方法で製造された電子写真用キャリアであって、被覆形成液がスプレー噴霧及び滴下終了までは、混合攪拌羽根の周速が1.4〜2.0m/SECで処理し、スプレー噴霧及び滴下終了後の混合攪拌羽根の周速が2.5〜5.5m/SECで処理することにより製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア。
- 請求項10記載の加熱は、被覆形成液の溶媒沸点に対し、該溶媒沸点±10℃の加熱温度の範囲で処理することにより製造されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用キャリア。
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