JP3678368B2 - 水中盛土材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水中に盛土などの人工地盤材を構築する場合に用いられる、打設時の微粒子分離による水質汚濁を防止した水中盛り土材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海洋空間の有効利用のために人工島の建設などが行われている。この人工島の地盤を早期に安定化させるために締め切った堤防の内部に土砂を埋め立ててセメントなどを深層混合し、地盤を改良する工法が知られている。しかし、この工法では後でセメントを添加するため、均一な安定した地盤が得られないという欠点があった。
これに対して、予めセメント、砂または土砂、粘土などと水を混合し、水中盛土材(この種の盛土材を一般にソイルセメントと呼んでいる)として水中に投入する方法が行われている。しかし、この方法は材料に粘着力がないため砂または土砂、セメントに含まれている微粒子が施工時に分離して水質を汚濁するという問題があった。
この解決のため、従来のソイルセメントに増粘剤である水溶性セルロースエーテルまたは水溶性ポリアクリルアミドを配合して混練した水中盛土材を水中に投入する方法が開発された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの増粘剤を用いることにより水中打設時の濁りを抑制することはできるが、水溶性ポリアクリルアミドを用いた場合には、その凝集性のために流動性に劣り、ポンプ圧送性、施工性に問題があった。
他方、セメント系で使用可能な非イオン性水溶性セルロースエーテルであり、本発明と同様、水中打設する水中不分離性コンクリートにも使用されているヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略す)を用いた場合には、上記のような問題はないが、ソイルセメントの材料に粘土分が多いと水中打設時の濁りを防止できないという問題がある。この現象は粘土分がソイルセメント1m3当りシルト以下(0.02mm以下)の重量が100kg以上の場合に顕著に現れている。
粘土分はブリージング抑制、ポンプ圧送性改善のために重要な成分であり、またソイルセメントは元来現場で入手可能な材料を用いることが多く、現場によっては粘土分が多くコストなどの関係から他の材料を選択できない場合もあり、粘土分の多いソイルセメントの濁り防止が問題となっていた。
したがって、本発明の目的は、ソイルセメント1m 3 当りシルト以下( 0.02 mm以下)の粘土分の重量が 100 kg以上であるソイルセメントにおいて、ワーカビリティに優れ、ブリージングが少なく、流動性に優れていてポンプ圧送性がよく、しかも水中打設時の濁りが少なくて水質汚濁を低減させることのできる水中盛土材を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明による水中盛土材は、セメントなどの水硬性粉体物質、砂・土砂、粘土および水などを配合してなり、ソイルセメント1m3当りシルト以下(0.02mm以下)の粘土分の重量が100kg以上であるソイルセメントに対し、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種の非イオン性水溶性セルロースエーテルを添加、混練してなるものである。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは上記課題の解決のために、まず粘土分の多いソイルセメントにおいて、なぜ非イオン性水溶性セルロースエーテルであるHPMCを使用すると、濁りが低下しにくいかを検討した。粘土分の量、HPMCの添加量を変え、実験を行った結果、濁りの大部分は粘土粒子であることがわかった。このことから次の仮説を立てた。HPMCはセメント系で増粘しソイルセメント系全体の粘度も上昇するが、水溶液中では界面活性作用を有し、粘土粒子に吸着して保護コロイド作用を呈する。これにより粘土粒子は安定化し濁りの原因になると考えられる。また増粘剤による微粒子分離防止効果については、増粘剤が粘土微粒子、セメントなど水硬性粉体物質に吸着し、粒子間に橋架け構造を形成し、粒子同士を強く結び付けるためと考えた。そこで、保護コロイド作用を低減させ、粘土粒子と強く結び付け、しかも流動性に悪影響を与えない物質について探索した。検討の結果、非イオン性水溶性セルロースエーテルの化学構造と前述の粘土分の多い系での濁りとに相関のあることがわかり、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種の非イオン性水溶性セルロースエーテルが有効であることが判明し、本発明に到達した。
【0006】
一般にセルロースエーテルは下記の化1式で表される構造をしていて、ここでRは以下のものである。
1)−H、2)−CH3、3)−CH 2 CH2OHおよび
4)−CH 2 CH(OH)CH3
【化1】
【0007】
これらの内、本発明の盛土材に増粘剤として使用されるセルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合わせで使用することができる。
また、その粘度は1%水溶液において100〜50,000cPであることが望ましい。これが100cP未満では水中打設時の濁り防止に必要な粘着力が得られず、また50,000cPを超えると経済的な工業生産が困難となる。
【0008】
本発明の水中盛土材においてソイルセメントに使用される水硬性粉体物質としては、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント)、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、特殊セメント(アルミナセメント、膨張セメント)などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の組み合わせとして使用される。
粘土には粘性土、ベントナイトなどの粘土鉱物、マサ土などが挙げられる。
さらに、このソイルセメントには気泡を減少し硬化体の比重を調整する目的で、トリブチルホスフェートなどの消泡剤を併用することもできる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の具体的態様を実施例および比較例により説明する。
実施例1〜4、比較例1〜4
高炉セメントB種(日本セメント社製)220kg/m3と信濃川産川砂(最大粒径:5mm)300kg/m3と表1に示す種類と量のセルロースエーテルとをホバート式ミキサーに入れて30秒混合し、ついで水500kg/m3と粘性土(新潟県産、シルト分以下85%[0.02mm以下75%])300kg/m3とを入れて3分間混合した後、下記に示す方法でテーブルフロー、ブリージング率、水中盛土材の水中分離抵抗性およびポンプ圧送性の測定を行い、その値に基づいて下記の基準で総合評価を行い、結果を表1に併記した。
なお、試験に使用した上記セルロースエーテルの明細は次の通りである。
・非イオン性水溶性セルロースエーテル:
a)ヒドロキシエチルセルロース(信越化学工業社製、1%水溶液粘度: 5,100cP、表中 HECと示す)
b)ヒドロキシエチルメチルセルロース(同前、1%水溶液粘度: 4,900cP、表中HEMCと示す)
c)ヒドロキシエチルエチルセルロース(同前、1%水溶液粘度: 4,800cP、表中HEECと示す)
d)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(同前、1%水溶液粘度: 6,500cP、表中HPMCと示す)
・イオン性セルロースエーテル:
カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬社製、1%水溶液粘度: 5,000cP、表中 CMCと示す)
【0010】
・テーブルフロー:
JIS R 5201によるモルタルのフロー試験に準じて行った。
・ブリージング率:
土木学会基準、プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリージング率および膨張率試験方法に準ずる。
・水中盛土材の水中分離抵抗性:
水中不分離性コンクリート・マニュアル、付録1、水中不分離性コンクリートの試験、水中での分離抵抗性試験(懸濁物質量・pH測定試験)に準ずる(1000mlのビーカーに 800mlの水を入れたものに、水中盛土材 500gを10等分に分割投入し、3分経過後、上澄み液を 600ml採取し懸濁物質量とpHを測定)。
・ポンプ圧送性:
水中盛土材を圧送ポンプ(チューブポンプ)で50リットル/分の量をポンプ圧送した時の圧送ポンプの吐出状態を下記の評価基準で判定した。
◎‥‥極めて良好、 ○‥‥良好、 △‥‥やや吐出困難、
×‥‥骨材沈降などにより吐出困難。
・総合評価の基準:
1)テーブルフロー: 180mm以上。
2)ブリージング率: 2.0%以下。
3)水中分離抵抗性(懸濁物質量):150mg/リットル以下。
4)ポンプ圧送性:○以上。
【0011】
【表1】
【0012】
表1から明らかなように、実施例1〜4はいずれも水中での濁り防止、流動性、ポンプ圧送性などに優れている。
これに対して、比較例1〜3は増粘剤としてHPMCを用いた場合で、そのコロイド作用により添加量を増やしても濁りが多い。また比較例4は水溶性セルロースエーテルとしてカルボキシメチルセルロースを使用した場合で、これがイオン性があって溶解しないため、濁り、ブリージング共に多い。
また、プレーン(増粘剤無添加)は濁りが多い。
【0013】
【発明の効果】
本発明の水中盛土材によれば、ソイルセメント1m 3 当りシルト以下( 0.02 mm以下)の粘土分の重量が 100 kg以上である場合でも水中打設時の濁りを防止し、しかもポンプ圧送性に優れた人工地盤材を提供することができる。
Claims (1)
- セメントなどの水硬性粉体物質、砂・土砂、粘土および水などを配合してなり、ソイルセメント1m3当りシルト以下(0.02mm以下)の粘土分の重量が100kg以上であるソイルセメントに対し、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種の非イオン性水溶性セルロースエーテルを添加、混練してなる水中盛土材。
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JP8722593A JP3678368B2 (ja) | 1993-04-14 | 1993-04-14 | 水中盛土材 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP8722593A JP3678368B2 (ja) | 1993-04-14 | 1993-04-14 | 水中盛土材 |
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JPH06298558A JPH06298558A (ja) | 1994-10-25 |
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JP8722593A Expired - Lifetime JP3678368B2 (ja) | 1993-04-14 | 1993-04-14 | 水中盛土材 |
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-
1993
- 1993-04-14 JP JP8722593A patent/JP3678368B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH06298558A (ja) | 1994-10-25 |
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