JP3677811B2 - 生物的脱窒方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は生物的脱窒方法に係り、特に、排水を硝化処理した後、硝化処理液に有機炭素源を添加して液中の硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素(以下「NOx −N」と略記する。)を活性汚泥により窒素に還元して除去する生物的脱窒方法において、有機炭素源の添加量を低減して効率的な処理を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
排水の生物的脱窒処理は、一般に、排水中のアンモニア性窒素を硝化工程(好気性)で硝化細菌等によりNOx −Nとし、次いで、脱窒工程(嫌気性)で脱窒細菌により硝化処理液中のNOx −NをN2 ガスまで還元して水中から除去することにより行われている。この際、脱窒工程では、硝化処理液中のNOx −N量に見合う有機炭素源を必要とする(通常、BOD/NOx −Nで2.5〜3)。通常は、得られる処理水中にNOx −Nが残留するのを防止するために、脱窒工程で硝化処理液中のNOx −NがすべてN2 に還元除去され、脱窒処理液中のNOx −Nが0となる理論量以上の過剰の有機炭素源が添加されている。
【0003】
しかし、このように過剰量の有機炭素源を添加する方法では、有機炭素源の添加コストが高くつくことから、有機炭素源の添加量を必要最少限に抑えるために、硝化処理液中のNOx −Nの量を測定又は推定し、この量に対応するように有機炭素源の添加量を制御する方法が提案されている(特開昭50−147154号公報、特公昭63−22877号公報、特開昭58−98195号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
硝化処理液中のNOx −Nの量に対応する有機炭素源を添加する方法であれば、有機炭素源添加量の低減を図ることができるが、なお更に有機炭素源の添加量を低減することが望まれている。
【0005】
本発明は上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、生物学的脱窒処理における有機炭素源の添加量を硝化処理液中のNOx −N量に対応する量よりも更に低減することができる生物的脱窒方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の生物的脱窒方法は、排水の硝化処理液に有機炭素源を添加して硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素を活性汚泥により還元除去する脱窒工程と、該脱窒工程から得られる活性汚泥を含む脱窒処理液の滞留工程とを有する生物的脱窒方法において、前記脱窒工程における有機炭素源の添加量を、脱窒処理液中のNO x −Nをゼロにする理論量よりも少なくし、脱窒処理液中にNO x −Nを残留させ、残留したNO x −Nを後工程の滞留工程で分解除去するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の生物的脱窒方法は、請求項1の方法において、硝化工程と脱窒工程とを繰り返し行う回分式生物処理槽により処理する方法であって、該生物処理槽内の液が導入される補助槽を設け、該補助槽内の液中の硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素量を測定し、この測定値に基いて、前記生物処理槽への有機炭素源の添加量を制御することを特徴とする。
請求項3の生物的脱窒方法は、請求項1又は2の方法において、脱窒処理液中に残留させるNO x −N量を、初期NO x −N量の30%以下とすることを特徴とする。
【0008】
【作用】
生物的脱窒処理は、排水を硝化槽及び脱窒槽に順次通水する連続式処理法、或いは、1つの反応槽で硝化処理を行った後、脱窒処理を行う回分式処理法で行われるが、いずれの方式を採用する場合でも、通常の活性汚泥法では脱窒工程終了後、脱窒処理液中の汚泥と処理水とを分離するために固液分離を行う。
【0009】
例えば、この固液分離のために沈殿槽を用いる場合には、沈殿槽に活性汚泥を含む脱窒処理液を所定時間滞留させて沈降分離を行うが、この際、沈殿槽では酸素が供給されないため、液中にNOx −Nが存在すると、NOx −N中の酸素を利用して汚泥の内生呼吸による自己消化が起こり、NOx −Nが分解除去される。
【0010】
また、固液分離のために膜分離装置を用いる場合には、脱窒工程と膜分離装置との間に中継槽、循環槽などの滞留槽が設置されるため、これらの滞留槽においても、上記と同様な反応によりNOx −Nの分解除去が行われる。
【0011】
本発明は、活性汚泥を含む脱窒処理液の滞留期間中に汚泥の内生呼吸による自己消化でNOx −Nが分解除去される点に着目し、脱窒工程における有機炭素源の添加量を、脱窒処理液中のNOx −Nをゼロにする理論量よりも少なくし、脱窒処理液中にNOx −Nを残留させ、残留したNOx −Nを後工程の滞留工程で分解除去するようにした。
【0012】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の生物的脱窒方法を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の生物的脱窒方法の一実施例方法を説明する系統図である。
【0014】
1は、原水を間欠的に投入し、曝気による硝化処理と、硝化処理後曝気停止による脱窒処理とを一つの反応槽で行う回分式活性汚泥硝化脱窒反応槽であり、循環ポンプP1 の流量を調整してイジェクター2からの空気の取り込みを調節することにより、好気状態と嫌気状態とを繰り返して硝化、脱窒処理するように構成されている。硝化処理後の脱窒処理においては、薬注ポンプP2 によりメタノール等の有機炭素源が反応槽1に添加される。
【0015】
3はこの反応槽1に隣接して設けられた補助槽であり、反応槽1内の液を取り入れると共に補助槽3内の液を反応槽1へ返送するための自動切替弁V1 〜V4 と、槽内液の撹拌のための循環ポンプP3 が設けられている。また、槽内液にメタノール等の有機炭素源を添加する薬注ポンプP4 と槽内液のORP(酸化還元電位)を測定するORP計4が設けられている。
【0016】
5は演算装置であり、ORP計4の測定値が入力されると共に、薬注ポンプP2 ,P4 及び切替弁V1 〜V4 の制御信号が出力される。
【0017】
反応槽1に原水が投入され、曝気による硝化工程が終了した後は、曝気を停止して脱窒工程に移行するが、この脱窒工程開始時に、切替弁V2 ,V3 を開いて、補助槽3内に反応槽1内の硝化処理液を活性汚泥と共に所定量取り込む。
【0018】
そして、補助槽3へのメタノール添加流速を反応槽1へのメタノール添加流速よりも速く(例えば、1.5倍)して、反応槽1及び補助槽3で脱窒を行う。補助槽3内で脱窒が終了して液中のNOx −Nが除去されると、ORPが急激に低下する。従って、演算装置5において、ORP計4の測定値から補助槽3における脱窒の終了を検知し、脱窒終了までのメタノール添加量及び補助槽3に取り込んだ硝化処理液量から最初に取り込んだ硝化処理液中のNOx −N濃度(以下「初期NOx −N量」と称する場合がある。)を算出する。そして、この初期NOx −N量と反応槽1へのメタノール添加速度とから、反応槽1の脱窒終了時点を推定し、その推定時より前に反応槽1の脱窒を終了させる。或いは、初期NOx −N量から反応槽1の脱窒処理液中に所望量のNOx −Nを残留させる理論量より少ないメタノール添加量を算出し、この算出されたメタノール添加量と反応槽1のメタノール添加速度とから、メタノール添加終了時点を求め、その時点でメタノールの添加を停止して脱窒を終了する。
【0019】
或いは、初期NOx −N量から脱窒すべきNOx −N量(初期NOx −N量から残留させるNOx −N量を差し引いたNOx −N量)を求め、このNOx −N量に対応する理論量のメタノールを反応槽1に添加するように、薬注ポンプP2 を制御する。
【0020】
反応槽1の脱窒終了後は、切替弁V1 ,V4 を開として補助槽3内の脱窒処理液を反応槽1に戻す。
【0021】
反応槽1内の脱窒処理液は、補助槽3から返送された脱窒処理液と共に図示しない後工程の滞留工程へ送られ、その滞留工程において、残留するNOx −Nは、前述の汚泥の内生呼吸による自己消化で分解除去される。
【0022】
上述の方法においては、補助槽3において、初期NOx −N量を求めることにより有機炭素源添加量を算出して制御する方法を示したが、次のような自動制御を行うこともできる。
【0023】
即ち、例えば、硝化脱窒反応槽1の容量に対して1/10の容量の補助槽3を隣設し、補助槽3へのメタノール添加流速Aを反応槽1へのメタノール添加流速Bの1/9として運転する。補助槽3のORP計4が急激に低下した時点、即ち、補助槽3の脱窒が完了した時点で、反応槽1のメタノール添加を止めて、脱窒工程を終了させる。これにより、反応槽1のメタノール添加量は理論量(初期NOx −Nを全量脱窒するに要するメタノール量)の9/10で、脱窒率は9/10となり、反応槽1には初期NOx −Nの10%を残留させることができる。補助槽3の液を反応槽1に返送すると、反応槽1の脱窒処理液と補助槽3の脱窒処理液とを合わせた全体の残留NOx −Nは約9%(10%÷1.1)となる。
【0024】
この方法によれば、上記メタノール添加流速A,B,及び補助槽容量を任意に設定して、脱窒処理液中のNOx −N残留量を自動制御にて容易に調整することができる。しかも、この方法であれば、反応槽1へのメタノール添加流速を途中で変更しなくて良いため、薬注ポンプの運転が簡便である。
【0025】
なお、本発明において、脱窒処理液中に残留させるNOx −N量は、脱窒工程後の滞留工程の滞留条件等や要求される処理水水質等によって適宜決定されるが、通常の場合、初期NOx −N量の30%以下、特に10〜20%とするのが好ましい。
【0026】
本発明の生物的脱窒方法は、活性汚泥を含む脱窒処理液の滞留工程を有する処理方式であれば、任意の方式のものに適用することができ、硝化、脱窒方式についても図示の回分方式の他、連続方式にも好適に適用可能である。
【0027】
本発明の生物的脱窒方法が適用可能な処理方式としては、例えば次の▲1▼〜▲4▼のように順次通水するものが挙げられる。
【0028】
▲1▼ 硝化槽→脱窒槽→沈殿槽→処理水
▲2▼ 硝化槽→脱窒槽→曝気槽→脱窒槽→沈殿槽→処理水
▲3▼ 硝化槽→脱窒槽→貯留槽→膜分離装置(濃縮水は貯留槽に循環)→処理水
▲4▼ 回分式生物処理槽→中継槽→循環槽→膜分離処理装置(濃縮水は循環槽に循環)→処理水
なお、硝化槽、脱窒槽などの生物処理槽は、浮遊法、生物膜法(固定床,流動床)などのいずれの方式であっても良い。
【0029】
本発明の方法における有機炭素源添加量の制御は、脱窒工程に流入するNOx −N量を求めることができれば、有機炭素源の理論量を計算により求めることができ、その計算値より少ない有機炭素源添加量を設定することにより容易に実施することができる。
【0030】
このNOx −N量の測定方法としては、上述の方法の他、比色法による測定,モニター槽によるN2 発生量の測定等任意の手段を採用することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の生物的脱窒方法によれば、後工程の滞留工程での汚泥の内生呼吸による脱窒機能を有効に利用して、脱窒工程における有機炭素源の添加量を、硝化処理液中のNOx −Nに対応する理論量よりも更に低減することができ、このため、不要な有機炭素源の消費を防止して有機炭素源の添加コストを低減し、効率的な脱窒処理を行うことができる。
【0032】
請求項2の生物的脱窒方法によれば、回分式生物処理において、有機炭素源の添加量の制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生物的脱窒方法の一実施例方法を説明する系統図である。
【符号の説明】
1 硝化脱窒反応槽
2 イジェクター
3 補助槽
4 ORP計
5 演算装置
Claims (3)
- 排水の硝化処理液に有機炭素源を添加して硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素を活性汚泥により還元除去する脱窒工程と、該脱窒工程から得られる活性汚泥を含む脱窒処理液の滞留工程とを有する生物的脱窒方法において、前記脱窒工程における有機炭素源の添加量を、脱窒処理液中のNO x −Nをゼロにする理論量よりも少なくし、脱窒処理液中にNO x −Nを残留させ、残留したNO x −Nを後工程の滞留工程で分解除去するようにしたことを特徴とする生物的脱窒方法。
- 請求項1の方法において、硝化工程と脱窒工程とを繰り返し行う回分式生物処理槽により処理する方法であって、該生物処理槽内の液が導入される補助槽を設け、該補助槽内の液中の硝酸性窒素又は亜硝酸性窒素量を測定し、この測定値に基いて、前記生物処理槽への有機炭素源の添加量を制御することを特徴とする生物的脱窒方法。
- 請求項1又は2の方法において、脱窒処理液中に残留させるNO x −N量を、初期NO x −N量の30%以下とすることを特徴とする生物的脱窒方法。
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