JP3677785B2 - ケトンパ−オキサイド組成物およびそれを使用した硬化方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、新規なケトンパ−オキサイド組成物およびそれを使用した硬化方法に関する。より詳しくは、低粘度でかつ染料配合時の着色保存性に優れたケトンパ−オキサイド組成物およびそれを使用した不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂の硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マトリックス樹脂として不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂を使用した熱硬化性樹脂が知られている。この熱硬化性樹脂の成形法は、生産性の向上あるいは作業環境の改善のため、近年オープン成形法からクローズド成形法へと大きく移行している。特に、硬化剤としてケトンパーオキサイドを使用する常中温域での成形分野においては、オープンで成形するハンドレイアップ成形法から、自動化されたスプレーアップ(オートレイアップ)成形法へと移行しつつある。
【0003】
すなわち、ハンドレイアップ成形法は、金型に離型剤を塗布後、基材を金型上に置き、その上に樹脂と重合開始剤の混合液を塗布してロールにて含浸硬化させる方法である。これに対し、スプレーアップ成形法は、金型に離型剤を塗布後、基材を金型上に置き、その上に樹脂と重合開始剤の混合液をスプレー塗布して硬化させる方法である。そして、このスプレーアップ成形法には、硬化剤として、ジメチルフタレート(以下DMPという)のような可塑剤で希釈されたケトンパ−オキサイドが使用されている。
【0004】
また、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂の成形工程の中で、樹脂硬化時に即座に退色する着色硬化剤を使用する方法が一般的に行われている。これは、硬化剤の仕込みミスの防止あるいは混合および硬化終了の状態のチェックのためである。例えば、特公昭60−13843号公報には、ある特定の構造式を有する染料を添加した硬化剤組成物を用いることにより、硬化剤の混合チェックあるいは硬化終了時期のチェックが可能であることが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DMPなどの可塑剤で希釈されたケトンパ−オキサイドは、夏期と冬期との粘度差が大きく、粘度が変化するとスプレ−アップ成形時における硬化剤の吐出量調整が必要となり、粘度が高いと作業性が悪いという問題があった。そのため、夏期と冬期との粘度差が少なく、かつ冬期において粘度の低い硬化剤が望まれている。
【0006】
また、特公昭60−13843号公報に開示された硬化剤組成物は、染料により発色した色が保存中に徐々に退色してしまい、製品としての品質保証期間が短いという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来技術の問題に着目してなされたものである。その目的とするところは、低粘度でかつ染料配合時の着色保存性に優れたケトンパ−オキサイド組成物およびそれを使用した硬化方法を提供することにある。
【0008】
また、他の目的とするところは、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂の硬化に際して、良好な硬化性を確保できるとともに、染料により発色した色を硬化時に速やかに退色できる硬化方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する希釈剤を用いることによって、低粘度でかつ染料配合時の着色保存性の優れたケトンパ−オキサイド組成物が得られることを見出し、この発明を完成させた。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂硬化用ケトンパ−オキサイド組成物の発明では、ケトンパ−オキサイドと希釈剤よりなるケトンパ−オキサイド組成物において、希釈剤が前記一般式化1で示される化合物である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明では、ケトンパ−オキサイド、染料および希釈剤よりなる不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂硬化用ケトンパ−オキサイド組成物において、希釈剤が請求項1に記載の一般式化1で示される化合物である。
【0012】
さらに、請求項3に記載の不飽和ポリエステル樹脂の硬化方法の発明では、重合開始剤を用いて不飽和ポリエステル樹脂を硬化する方法において、重合開始剤が請求項1または2のケトンパ−オキサイド組成物である。
【0013】
加えて、請求項4に記載のビニルエステル樹脂の硬化方法の発明では、重合開始剤を用いてビニルエステル樹脂を硬化する方法において、重合開始剤が請求項1または2のケトンパ−オキサイド組成物である。
【0014】
以下に、この発明について詳細に説明する。
この発明で使用されるケトンパ−オキサイドとしては、ケトンを原料とする有機過酸化物であればいずれでもよい。このケトンパ−オキサイドとしては、例えばアセチルアセトンパ−オキサイド、メチルアセトアセテートパ−オキサイド、メチルエチルケトンパ−オキサイド、ジエチルケトンパ−オキサイド、メチルプロピルケトンパ−オキサイド、メチルイソブチルケトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパ−オキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパ−オキサイド等が挙げられる。これらのうち、汎用性の観点から、アセチルアセトンパ−オキサイド、メチルアセトアセテートパ−オキサイド、メチルエチルケトンパ−オキサイド、メチルイソブチルケトンパ−オキサイドが好ましい。
【0015】
この発明のケトンパ−オキサイド組成物におけるこれらケトンパ−オキサイドの含有率は5〜90重量%であり、好ましくは30〜65重量%である。
この含有率が5重量%より少ないと、硬化物に多くの希釈剤が入るため得られた硬化物の硬度などの物性が低下してしまう。また、90重量%より多いと、安全性が損なわれ好ましくない。
【0016】
次に、ケトンパ−オキサイドに配合される希釈剤について説明する。
希釈剤としては、前記一般式化1で示される化合物が使用される。この希釈剤としては、下記の一般式化2または一般式化3で示される化合物があげられる。これらの希釈剤は、すべて低粘度であり、ケトンパ−オキサイド組成物中に染料が配合された場合、その着色保存性が良いものである。
【0017】
【化2】
【0018】
式中、R3 ,R5 はCm H2m+1、R4 は(CH2 )n である。ただし、mは0,1,2または3、nは1,2,3または4である。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、R6 はCn H2n+1、R7 はCm H2m+1である。ただし、nは1,2,3または4、mは0,1,2または3である。
一般式化2で示される希釈剤としては、例えば2−ヒドロキシプロピルホルメート、3−ヒドロキシブチルホルメート、3−メトキシブチルホルメート、4−メトキシペンチルホルメート、2−エトキシプロピルホルメート、3−エトキシブチルホルメート、4−エトキシペンチルホルメート、2−ブトキシプロピルホルメート、3−ブトキシブチルホルメートなどの蟻酸エステル類、2−ヒドロキシプロピルアセテート、3−ヒドロキシブチルアセテート、4−ヒドロキシペンチルアセテート、2−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−エトキシブチルアセテート、4−エトキシペンチルアセテート、2−ブトキシプロピルアセテートなどの酢酸エステル類、2−ヒドロキシプロピルプロピオネート、3−ヒドロキシブチルプロピオネート、4−ヒドロキシペンチルプロピオネート、2−メトキシプロピルプロピオネート、3−メトキシブチルプロピオネート、4−メトキシペンチルプロピオネート、2−エトキシプロピルプロピオネート、3−エトキシブチルプロピオネート、4−エトキシペンチルプロピオネートなどのプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
【0021】
また、一般式化3で示される希釈剤としては、例えば2−ヒドルキシプロパン、3−ヒドロキシブタン、4−ヒドロキシペンタン、5−ヒドロキシヘキサン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシプロパン、1,1,1−トリメチル−2−ヒドロキシプロパン、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブタンなどの2級アルコール類、2−メトキシプロパン、3−メトキシブタン、4−メトキシペンタン、1,1−ジメチル−2−メトキシプロパン、1,1,1−トリメチル−2−メトキシプロパン、1,1−ジメチル−3−メトキシブタンなどのモノメチルエーテル類、2−エトキシプロパン、3−エトキシブタン、4−エトキシペンタン、1,1−ジメチル−2−エトキシプロパン、1,1,1−トリメチル−2−エトキシプロパンなどのモノエチルエーテル類、2−ブトキシプロパン、3−ブチキシブタン、4−ブトキシペンタン、1,1−ジメチル−2−ブトキシプロパンなどのモノブチルエーテル類などが挙げられる。
【0022】
これらの希釈剤のうち、3−メトキシブチルアセテートおよび1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブタンが好ましい。これらの希釈剤は、特にケトンパーオキサイドと混合されたときの経時的な安定性が良く、また安価で入手しやすいため経済性に優れ、しかもケトンパ−オキサイドや染料に対する安定性に優れている。
【0023】
この発明のケトンパ−オキサイド組成物におけるこれら希釈剤の含有率は10〜95重量%であり、好ましくは35〜70重量%である。希釈剤の含有率が10重量%未満では、ケトンパ−オキサイド組成物を低粘度にすることが困難になったり、ケトンパ−オキサイドの経時的な安定性や着色安定性を得ることが難しくなる。95重量%を越えると、相対的にケトンパ−オキサイドの含有量が少なくなって樹脂を硬化させる際の硬化性が低下する。
【0024】
この発明のケトンパ−オキサイド組成物には、必要に応じて通常使用される可塑剤が添加される。
この可塑剤としては、ケトンパ−オキサイドの合成および得られた硬化物の物性に悪影響を与えないものであればいずれでもよい。可塑剤としては、例えばDMP,ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジメチルグルタレート、ジブチルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルグルタレートなどのグルタル酸エステル類、ジメチルサクネート、ジブチルサクシネート、ジ−2−エチルヘキシルサクシネートなどのコハク酢酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのアジピン酸エステル類、ジメチルマレエート、ジブチルマレエート、ジ−2−エチルヘキシルマレエートなどのマレイン酸エステル類、ジメチルマレート、ジブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレートなどのフマル酸エステル類などが挙げられる。これらの可塑剤は、硬化剤の粘度調節および経時安定性の向上などの目的に使用されるため、これらの目的に応じて適量使用することができる。
【0025】
この発明のケトンパ−オキサイド組成物には、硬化剤の仕込みミスの防止あるいは混合および硬化終了の状態をチェックするために、樹脂硬化時に即座に退色する染料を配合する事ができる。
【0026】
この染料は樹脂硬化時に即座に退色し、かつケトンパ−オキサイドに悪影響を与えないものであればいずれでもよい。このような染料としては、例えばカラーインデックス名でいえば、ディスパース レード 11、13、17、24、27、60、111、132、145、152、153、154、181、ソルベント レッド 19等の赤色染料、ディスパース ブルー 106等の青色染料、ディスパース イエロー 4等の黄色染料などが挙げられる。
【0027】
この発明のケトンパ−オキサイド組成物において添加されるこれら染料の含有率は、通常5重量%以下である。
この発明のケトンパ−オキサイド組成物には、ケトンパ−オキサイドの経時安定性を向上させる目的として、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの親水性溶媒が必要により添加される。
【0028】
これら親水性溶媒の含有率は、0〜50重量%である。50重量%より多いと、溶媒が親水性であり、得られた硬化物の耐水性が悪くなることから好ましくない。
【0029】
次に、この発明の硬化方法では、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂の硬化時に、重合開始剤として上記のようなケトンパーオキサイド組成物が使用される。
【0030】
硬化方法に使用される不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸および多価アルコールを特定の割合で脱水縮合させて得られる不飽和アルキッド樹脂に、共重合性単量体を混合した混合物が使用される。そして、重合開始剤として上記のようなケトンパーオキサイド組成物を用い、不飽和アルキッド樹脂と共重合性単量体とを共重合させて、不飽和ポリエステル樹脂、すなわち不飽和アルキッド樹脂を硬化させる。
【0031】
ここで、不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。飽和二塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プトピレングリコール、ジプロピレングリコール、水素化ビスフェノールA、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどが挙げられる。共重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレートなどが挙げられる。
【0032】
また、硬化方法に使用されるビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸および不飽和二塩基酸を特定の割合で脱水縮合させて得られる不飽和アルキッド樹脂と共重合性単量体を混合した混合物が使用される。そして、重合開始剤としてケトンパーオキサイド組成物を用い、不飽和アルキッド樹脂と共重合性単量体とを共重合させて、ビニルエステル樹脂、すなわち不飽和アルキッド樹脂を硬化させる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂などが挙げられる。不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸などがあげられ、不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などがあげられる。共重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、ジアリルフタレートなどが挙げられる。
【0034】
この発明の硬化方法における硬化温度は0〜80℃であり、好ましくは常温付近、すなわち0〜40℃である。
この発明の硬化方法において、ケトンパ−オキサイド組成物と不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂との割合は、通常樹脂100重量部に対し、ケトンパ−オキサイド組成物が0.5〜3重量部である。0.5重量部より少ないと硬化時間が長くなりすぎたり、硬化物の物性が悪くなるため、加工工程上好ましくない。また、3重量部より多いと発生したラジカル同士が結合してしまい、効率の良い硬化反応にはならず、硬化物の物性が悪くなるため好ましくない。
【0035】
この発明の硬化方法においてケトンパ−オキサイド組成物は、単独あるいはレドックス系を形成する硬化促進剤を併用して不飽和ポリエステル樹脂あるいはビニルエステル樹脂を硬化させることができる。その硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルトなどの高級脂肪酸の金属塩、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン、ジメチルアニリンなどのアミン、五酸化バナジウムなどのバナジウム化合物、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのメルカプタン類、四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
これらの硬化促進剤は、硬化剤との組み合わせにより促進効果が異なるため適宜選択する必要があるが、ケトンパーオキサイド組成物中のケトンパーオキサイド純分とその硬化促進剤との割合は、所望の硬化速度に応じて90/10〜10/90(重量比)の範囲内で選択できる。
【0037】
この発明の硬化方法においては、硬化速度、最高発熱温度あるいは硬化物の物性等を調節する目的で通常使用される重合禁止剤や重合調節剤を使用することができる。その重合禁止剤としては、ハイドロキノン、1、4−ベンゾキノン、1、4−ナフトキノンなどのキノン類、ピロガロール、4、6−ジフェニルピロガロールなどのピロガロール類、カテコール、4−t−ブチルカテコールなどのカテコール類等が挙げられる。また、重合調節剤としては、最高発熱温度を高くさせるアスコルビン酸、最高発熱を低くさせるα−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0038】
これら重合禁止剤および重合調節剤の使用量は、必要に応じて適宜選択されるが、通常樹脂100重量部に対して0〜10重量部が好ましい。
この発明の硬化方法においては、成形品の強度向上の目的でロービングクロス、チョップドストランド、チョップドストランドマット等のガラス繊維、あるいは炭素繊維のような補強材や炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウムなどのような充填剤が使用される。さらに、目的に応じて酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物あるいは水酸化物等の増粘剤や、熱可塑性の単独重合体、その共重合体、あるいはブロック共重合体、グラフト共重合体等の低収縮剤、ステアリン酸亜鉛のような離型剤が使用される。
【0039】
【実施例】
次に、実施例および比較例により、この発明をさらに具体的に説明する。なお、各実施例および比較例における評価方法を次に示す。
(粘度)
30℃における動粘度(cSt)で示す。具体的には、JIS K2283に定められた方法によって測定した。なお、粘度計として、ウベローデ粘度計(柴田科学器機工業社製)を用いた。
(色劣化率)
初期および劣化後(50℃×4日)における赤色着色組成物のUVスペクトル値から色劣化率を計算した。具体的には、赤色組成物1mlを50mlメスフラスコに入れ、メタノールで全体が50mlになるまで希釈する。そして、可視紫外光光度計(島津製作所社製UV−2200型)を用い、波長525nmにおける試料の吸光度を測定し、初期値と劣化後値から色劣化率を計算した。
(硬化性)
ケトンパーオキサイド組成物を用い、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させた際の硬化物の硬度によって硬化性を判断した。具体的には、一般積層用の中反応性不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒社製 商品名:エポラック G110AL)100重量部に、6%ナフテン酸コバルト0.3重量部と、ケトンパーオキサイド組成物を混合した。そして、JIS K6901に準じた方法で一定温度における硬化試験を行い、その時の最高発熱温度を迎えた時間から24時間経過後の硬度をバーコル硬度計(バーバーコールマン社製 GYZJ 934−1型)によって測定した。
【0040】
また、ビニルエステル樹脂の硬化方法についても、不飽和ポリエステル樹脂の硬化方法と同様にして硬化を行い、硬化物の硬化性を評価した。
(実施例1)
1リットルの4つ口フラスコに、60%過酸化水素水溶液195.5gと98%硫酸35.4gを20℃以下で混合した。これに、メチルエチルケトン108gと3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業社製 商品名:メトアセ)236gの混合溶液を30分で滴下した。15分熟成後、分液ロートで有機層と水層とに分け、有機層を炭酸カルシウムで中和し、ろ過脱水して収量396.5g、活性酸素量10.6%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率54.7%のメチルエチルケトンーオキサイド組成物を得た。
【0041】
この組成物の粘度を測定した。また、樹脂に対するケトンパキーオキサイド組成物の添加量を1%、硬化温度を25℃として硬化性の評価を行なった。また、この組成物100gにMITSUI RED EX 101(三井東圧染料化学社製)0.08gを混合して色残存率を測定した。それらの結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテートの代わりに、1,1−ジメル−3−ヒドロキシブタン(協和発酵工業社製 商品名:MIBC)を236g配合した以外は、実施例1に準じてメチルエチルケトンパーオキサイド組成物の合成を行った。その結果、収量410.8g、活性酸素量10.6%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率51.2%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテートを459g配合した以外は、実施例1に準じてメチルエチルケトンパーオキサイド組成物の合成を行った。その結果、収量614.4g、活性酸素量5.8%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率30.5%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテートを200g配合した以外は、実施例1に準じてメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を合成した。その結果、収量352.6g、活性酸素量11.8%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率63.2%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例5)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業社製
商品名:メトアセ)236gの代わりに、3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業社製 商品名:メトアセ)118gとDMP(大八化学社製)118gを配合した以外は、実施例1に準じて合成を行った。その結果、収量416.0g、活性酸素量10.7%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率52.2%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例6)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテートの代わりに3−メトキシブチルホルメートを236g配合した以外は、実施例1に準じて合成を行った。その結果、収量432.6g、活性酸素量11.3%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率52.4%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例7)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテートの代わりに1,1−ジメチル−2−メトキシプロパンを236g配合した以外は、実施例1に準じて合成を行った。その結果、収量395.3g、活性酸素量10.0%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率50.8%のメチルケチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例8)
実施例1の硬化性評価において、硬化温度を10℃とした以外は実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例9)
実施例1の硬化性評価において、硬化温度を30℃とした以外は実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例10)
実施例1の硬化性評価において、ケトンパーオキサイド組成物の添加量を0.3%とした以外は実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例11)
実施例1の硬化性評価において、ケトンパーオキサイド組成物の添加量を5%とした以外は実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例12)
60%過酸化水素水490gに、酸性硫酸ナトリウム50gを加えた。続いて、メチルイソブチルケトン180gと3−メトキシブチルアセテート160g(ダイセル化学工業社製 商品名:メトアセ)との混合液を攪拌下に15℃以下で滴下し、滴下後30分攪拌を続けて熟成させた。分液ロートで有機層と水層とに分け、有機層を炭酸カルシウムで中和し、ろ過脱水して収量371.3g、活性酸素量10.2%、メチルイソブチルケトンパーオキサイド含有率50.2%のメチルイソブチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(実施例13)
実施例1において、硬化性の評価に用いる不飽和ポリエステル樹脂の代わりに、一般用ビニルエステル樹脂(昭和高分子社製商品名:リポキシR804)を用いた以外は、実施例1と同様な評価を行った。その結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業社製
商品名:メトアセ)の代わりに、DMP(大八化学社製)を配合した以外は実施例1に準じて合成を行った。その結果、収量400.6g、活性酸素量10.2%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率50.6%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。この組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1において、3−メトキシブチルアセテート(ダイセル化学工業社製
商品名:メトアセ)の代わりに、ジメチルアジペート(デュポン社製 商品名:DBE−5)を配合した以外は実施例1に準じて合成を行った。その結果、収量416.6g、活性酸素量10.4%、メチルエチルケトンパーオキサイド含有率54.6%のメチルエチルケトンパーオキサイド組成物を得た。このこの組成物につき、実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示したように、実施例1〜13のケトンパーオキサイド組成物は、いずれも粘度が3.0〜6.5cSt と低く、色劣化率が30〜46%と低く、着色保存性に優れている。従って、これらのケトンパーオキサイド組成物の製品としての品質保証期間が確保されるとともに、このケトンパーオキサイド組成物を用いて樹脂を成形する際の作業性が良い。
【0044】
また、実施例1〜12に示したように、10〜30℃における不飽和ポリエステル樹脂の硬化方法における良好な硬化性が確保される。さらに、実施例13に示したように、25℃におけるビニルエステル樹脂の硬化方法における硬化性も確保される。
【0045】
一方、比較例1,2に示したように、この発明における一般式化1で示される希釈剤を配合せず、可塑剤を配合した場合、ケトンパーオキサイドの安定性が悪く、徐々に分解し、それに伴って染料の発色団である官能基が分解する。そのため、組成物の色劣化率が大きくなる。しかも、組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0046】
なお、上記実施例より把握される請求項以外の技術的思想について、その効果とともに以下に記載する。
(1)希釈剤は、3−メトキシブチルアセテートまたは1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブタンである請求項1に記載のケトンパ−オキサイド組成物。これら希釈剤は組成物の経時安定性、経済性および染料に対する安定性に優れている。
(2)親水性溶媒が含有されている請求項1に記載のケトンパ−オキサイド組成物。この構成により、ケトンパ−オキサイドの経時安定性の向上が図られる。
【0047】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂硬化用ケトンパ−オキサイド組成物の発明によれば、低粘度なケトンパ−オキサイド組成物が得られ、スプレーアップ成形法のような成形分野において、夏期および冬期における硬化剤の吐出量調整などの作業性の向上を図ることができる。
【0048】
また、請求項2に記載の不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂硬化用ケトンパ−オキサイド組成物の発明によれば、低粘度でかつ染料配合時の着色保存性に優れたケトンパ−オキサイド組成物が得られる。
【0049】
さらに、請求項3に記載の硬化方法の発明によれば、不飽和ポリエステル樹脂の硬化に際して、良好な硬化性を確保できるとともに、硬化時に染料による着色を速やかに退色することができる。
【0050】
加えて、請求項4に記載の硬化方法の発明によれば、ビニルエステル樹脂の硬化に際して、良好な硬化性を確保できるとともに、硬化時に染料による着色を速やかに退色することができる。
Claims (4)
- ケトンパ−オキサイド、染料および希釈剤よりなるケトンパ−オキサイド組成物において、
希釈剤が請求項1に記載の一般式化1で示される化合物である不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂硬化用ケトンパ−オキサイド組成物。 - 重合開始剤を用いて不飽和ポリエステル樹脂を硬化する方法において、
重合開始剤が請求項1または2のケトンパ−オキサイド組成物である不飽和ポリエステル樹脂の硬化方法。 - 重合開始剤を用いてビニルエステル樹脂を硬化する方法において、
重合開始剤が請求項1または2のケトンパ−オキサイド組成物であるビニルエステル樹脂の硬化方法。
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