JP3675735B2 - 液展開用部材及びそれを用いたサンプル処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液展開用部材及びそれを用いたサンプル処理装置に関し、特に、細胞工学や遺伝子研究などで利用されるプレート上に担持されたサンプル(生物組織)の処理のために用いる液体を前記サンプル上で展開するための液展開用部材及びそれを用いたサンプル処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
サンプル処理装置の1つとして、生物組織の処理装置が知られている。当該装置は、生物組織サンプルに対する各種の処理を自動的に行う装置である。例えば、抗原・抗体反応、RNA・DNAに対するIn Situ Hybridization、血液塗沫処理などを行う場合に、生物組織の処理装置が利用される。そのような装置において、サンプルは一連の多数の工程(例えば20工程)によって処理される。その中には、各種の試薬による処理、加温処理、周期的な揺動によるかくはん処理(振盪処理)、洗浄処理、などが含まれる。
【0003】
上記の一連の処理に先立って、サンプル(例えば組織の切片、染色体、細胞など)がスライドガラス上に付けられる。従来においては、そのままの状態あるいはサンプルにカバーガラスを被せた状態で、試薬処理が開始される。
【0004】
前者の処理方法においては、サンプルを担持したスライドガラスを大量の試薬で満たされた試薬槽の中に投入し、その試薬槽の中で、試薬とサンプルの反応処理を開始させていた。この場合、処理終了後に、使用した試薬を廃棄することになるので、実際にサンプルを浸漬するために必要な試薬以上の試薬を試薬槽に注入する必要がある。つまり、試薬槽を利用した処理は、非経済的であると言わざるを得ない。試薬の中には高価な試薬もあり、試薬の必要量は最低限にすべきである。
【0005】
一方、後者の処理方法においては、サンプルを担持したスライドガラスに対し、サンプルを覆うようにカバーガラス(カバープレート)を被せる時に、サンプルの上に適量の試薬を滴下することにより試薬供給を行う。滴下された試薬は、カバーガラスがサンプルを挟んでスライドガラスに密着することにより、サンプル及びその周囲に押し拡げられ展開することになる。その結果、少量の試薬の供給でも、サンプル全体を試薬で浸漬することが可能になり、効率的かつ経済的な試薬処理を行うことができる。なお、サンプルが組織切片の場合、その厚みは、例えば5〜10μmであり、サンプル上に滴下した試薬は、スライドガラスとカバーガラスの間に形成された僅かな間隙に保持される。また、カバーガラスの周縁部では、表面張力により保持された試薬が流れ出ることなく保たれる。そして、余剰な試薬は、カバーガラスの周囲にはみ出し、必要に応じて排除される。このようにカバーガラスを用いることにより、試薬使用量を必要最小限に抑えることが可能になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、試薬処理の場合、試薬の反応を最適な環境で効率的に行うために、処理中のスライドガラスを振動させたり、加熱したり、逆に冷却したりすることが通常行われる。特に、反応を促進するために加熱処理がよく行われる。例えば、70℃等で十時間以上の加熱処理が行われる場合もある。このような場合、試薬の乾燥が生じる。図14(a)には、試薬の乾燥状態を説明する模式図が示されている。スライドガラス500とカバーガラス502の間には、サンプル504が挟み込まれ、初期状態では、試薬506がサンプル504を浸漬するようにスライドガラス500とカバーガラス502との間に満たされているが、加熱環境下に置かれると乾燥が始まり、時間経過と共にその乾燥は徐々に進行する。この場合、試薬506が空気と接しているカバーガラス502の周縁部から乾燥が始まり最終的にはサンプル504まで達するようになる。図14(a)に示すように、試薬506の乾燥部Aが広がり、サンプル504まで達すると、試薬反応は阻害される。つまり、所望の試薬処理が実行できなくなってしまうという問題が生じる。
【0007】
また、試薬506の乾燥を考慮し、あらかじめ試薬506を余分に保持すると共に、外気との接触を断つように、起立壁を設け実質的な密閉容器形状を呈するカバーガラス508でサンプル504及び試薬506を保持する方法も考えられる。図14(b),(c)に模式図を示す。この場合、カバーガラス508の周縁部からの試薬506の乾燥は抑制できる。しかし、加熱処理を行う場合、試薬506にとけ込んでいる空気が膨張し気泡510として現れる。この時、気泡510は起立壁の存在によりカバーガラス508から出ることができない。この場合も気泡510の存在によりサンプル504と試薬506との接触が断たれ試薬反応が阻害され、所望の試薬処理が実行されない。また、気泡510の膨張に伴い、試薬506を保持しているスライドガラス500とカバーガラス508との間の空間の内部圧力が高まり、試薬506を外部に押し出す力が働き、結果的にサンプル504及びその周囲の乾燥を促進してしまう。なお、図14(d)に示すように、カバーガラス508の両端に開放部508aを形成することにより発生した気泡510を外部に放出することも考えられる。この場合、内部で発生した気泡510の排出は良好に行うことができるが、開放部508aからの試薬506の蒸発は促進され、やはり乾燥部Aの発生は避けれれない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、サンプルに供給した少量の液体を当該サンプル上で展開し、サンプルを浸漬状態にした後、展開した液体の乾燥や展開した液体内部の気泡の滞留を抑制することが可能で、サンプルの浸漬状態を維持することができる装置、すなわち液展開用部材及びそれを用いたサンプル処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、プレート上に担持されたサンプルを覆うと共に、前記サンプルに供給された液体を当該サンプルが浸漬するようにサンプル上で展開させる展開平坦面を有する液展開用部材であって、当該液展開用部材の前記展開平坦面上には、サンプル対応領域より外側に前記液体の一部を貯留すると共に、貯留する液体を排出自在な貯留溝が形成され、前記サンプルの加熱処理時に前記液体で生じた気泡が前記展開平坦面よりも高い位置にある前記貯留溝に侵入可能であることを特徴とする。
【0010】
ここで、サンプルとは、組織の切片、染色体、細胞等である。また、サンプルを浸漬する液体とは、サンプルの処理を行う試薬やサンプルの状態を維持する保存液等である。また、サンプル対応領域とは、プレート上に担持されるサンプルの大きさより十分に大きな領域であり、液体でサンプル全体を必要かつ十分に浸漬できる広さを有する領域である。
【0011】
上述の構成によれば、サンプルを浸漬する液体が時間の経過と共に乾燥しても、貯留溝に貯留された液体が乾燥部分に順次供給され、乾燥状態がサンプル対応領域の内側に進行するのを防止することができる。また、貯留溝は液展開用部材のサンプル対応領域の外側に形成され、サンプル対応領域は、展開平坦面を有しているので、液体内部に含まれる気泡は、前記展開平坦面の平坦性によりサンプル対応領域に滞留することなくそこから容易に周縁部の貯留溝内へ排出することができる。なお、液体は、液展開用部材がサンプルを覆う時の液体展開動作時に貯留溝に貯留される。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記貯留溝は、前記サンプル対応領域の周囲を取り囲む環状溝であることを特徴とする。
【0013】
ここで、環状溝とは、実質的にサンプル対応領域を囲む形状であれば任意であり、例えば、サンプル対応領域の周囲を矩形形状で取り囲んでもよいし、円形状、楕円形状等で取り囲んでもよい。
【0014】
この構成によれば、サンプル対応領域の全周、つまりサンプル全体に対して液体が貯留できるとともに、液体は全周から排出される。貯留溝が環状に連続しているので、一部で液体の排出が行われても貯留溝上の他の部分に貯留されていた液体が移動し、貯留溝の一部で極端に早く液体の欠乏が生じることを抑制することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記貯留溝は、前記展開平坦面の周縁に沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、十分に広いサンプル対応領域を容易に確保することができる。また、サンプルから十分に離れた位置で、液体が貯留溝から供給され、乾燥の抑制及び乾燥の修復が行われるので、サンプル上で液欠乏により浸漬できない部分の発生を抑制することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、上記構成において、前記貯留溝は、前記サンプル対応領域の周囲を複数回周回する多重溝で形成されていることを特徴とする。
【0018】
ここで、多重溝とは、独立した環状溝を2重、3重等に形成してもよいし、サンプル対応領域をほぼ中心とする1本の貯留溝を渦巻き状に配置してもよい。
【0019】
この構成によれば、液体の貯留量を容易に増加することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明のサンプル処理装置は、サンプルを担持する平坦面を有するプレートと、前記プレートに担持されたサンプルを覆うと共に、前記サンプルに供給された試薬を当該サンプルが浸漬するようにサンプル上で展開させる展開平坦面を有する試薬展開用部材と、前記試薬展開用部材を前記プレート上に着脱自在に支持する支持機構と、を含み、前記試薬展開用部材の展開平坦面には、サンプル対応領域より外側に前記試薬の一部を貯留すると共に、貯留する試薬を排出自在な貯留溝が形成され、前記サンプルの加熱処理時に前記液体で生じた気泡が前記展開平坦面よりも高い位置にある前記貯留溝に侵入可能であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、支持機構により試薬展開用部材を支持した状態で、試薬の貯留及び必要な部分への排出ができるので、試薬処理を中断すること無く、容易に試薬の乾燥防止や気泡の排出を行うことができる。
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1には、本発明に係る液(試薬)展開用部材を用いたサンプル処理システムの全体構成が概念的に示されている。このサンプル処理システムは、生物組織などのサンプルに対して試薬などを利用して処理を行うシステムである。
【0023】
図1に示されるシステムは、大別して、サンプル処理装置10と、分注装置14と、開閉機構16、エア供給装置18と、吸引装置20と、で構成される。サンプル処理装置10には、1又は複数の処理ユニット12がマウントされる。具体的には、サンプル処理装置10におけるベース28上に1又は複数の処理ユニット12が着脱自在に載置される。
【0024】
本実施形態においては、1つのスライドガラス(プレート)40、すなわち1つのサンプル42に対して、1つの処理ユニット12が利用されている。すなわち、処理ユニット12は、各サンプルを個別処理するためのユニットである。ここで、スライドガラス40は、透明のプレートであり、サンプル42は生物組織の切片などである。サンプル42はスライドガラス40の上面における一方端に変偏した位置に貼付けられている。
【0025】
処理ユニット12は、本実施形態においてスライドガラス40を収容する処理タブ32と、その処理タブ32の上側を包み込むカバーカセット30と、で構成されている。処理タブ32に対してカバーカセット30は着脱自在である。
【0026】
なお、図1においては、本発明の説明のため、処理ユニット12がベース28に対して大きく描かれているが、処理ユニット12の大きさは、例えば38mm×90mm×37mmである。また、ベース28の大きさは例えば210mm×145mm×8mmである。サンプル処理装置10には、このようなベース28の他各種のテーブルやユニットが設けられているが、図1においては、それらが図示省略されている。
【0027】
サンプル処理装置10において、フレーム26内には、台座24上にベース28を揺れ動かすための揺動器29が設けられている。その揺動器29の上にはベース28を冷却するためのファンユニット31が設けられている。更に、そのファンユニットの上には、ベース28の温度制御を行うための放熱ユニット34が設けられている。そして、その放熱ユニット34の上にはペルチェユニット36が設けられ、そのペルチェユニット36の上面が、ベース28上に載置された処理タブ32の裏面に直接的にあるいは間接的に接触している。すなわち、ベース28には、処理タブ32の配置位置に対応してペルチェユニット36の上面を露出させる開口が形成されており、ペルチェユニット36と処理タブ32との間で熱交換が行われる。もちろん、ペルチェユニット36の熱量をベース28を介して処理タブ32に与えるようにしてもよい。いずれにしても、本実施形態におけるサンプル処理装置10においては、処理タブ32の温度、具体的にはサンプル42の温度を自在にコントロール可能であり、すなわちサンプル42を加温したりあるいは冷却したりすることが可能である。
【0028】
図1に示すコントローラ22は、システム全体の動作を制御しており、具体的にはサンプル処理装置10、分注装置14、開閉機構16、エア供給装置18及び吸引装置20の動作を制御している。その制御内容はサンプル42の温度管理が含まれる。
【0029】
処理ユニット12において、カバーカセット30には、窓300が設けられている。その窓300にはスライド扉46及びスライド扉48が設けられており、それらの2つのスライド扉の一方又は両方を動作させることが可能である。
【0030】
スライド扉46は、窓300の開口部を単に閉じるための扉である。一方、スライド扉48は内部機構50に連結されており、その運動により内部機構50が動作する。この内部機構50によって後に詳述する液展開部材(試薬展開部材)としてのカバープレート52をスライドガラス40の上面に載せることが可能となる。すなわち、カバープレート52は従来の薄いガラスで構成されるカバープレートと同様の機能を有しており、スライドガラス40上にカバープレート52が載せられた状態では、それらの部材間に微少空間が形成され、試薬がサンプル42の全体に展開する。これによって微量の試薬を利用しつつもサンプル42の試薬処理が可能となる。ちなみに、このカバープレート52はカバーカセット30に対して着脱自在に構成されている。
【0031】
上記の説明から明らかなように、スライド扉46は内部機構50を動作させない場合に駆動され、一方、スライド扉48は、内部機構50を動作させる場合に駆動される。それらの扉の駆動は、開閉機構16によって実行されている。具体的には、スライド扉46に設けられたノブ46Aあるいはスライド扉48に設けられたノブ48Aを操作部16Aによって水平方向に運動させることにより各スライド扉の開閉が制御されている。
【0032】
分注装置14は、試薬56をサンプル42に対して滴下するためのノズル54と、そのノズル54を三次元的に自在に駆動するための搬送機構58と、を有している。窓300が開けられた状態において、ノズル54が上方から下方へ引き下ろされ、サンプル42から所定距離だけ隔てた高さにおいてノズル54から試薬56が規定量だけ吐出される。これによってサンプル42に規定量の試薬が供給される。その後、ノズル54は上方に引き上げられ、内部空間302からノズル54が上方に待避した状態において、スライド扉46又は/及び48が駆動され、窓300が閉じられることになる。
【0033】
その状態では内部空間302には密閉空間とされ、試薬の自然蒸発などが低減され、また外部からの試薬等の進入が阻止される。すなわちコンタミネーションが防止される。
【0034】
試薬処理中にサンプル42の観察が必要になった場合には、スライド扉46あるいはスライド扉46及び48を開けることによって、窓300を介してサンプル42を目視観察あるいは撮影することが可能となる。その場合、処理タブ32からカバーカセット30を取り外すことによってもサンプル42の観察が可能である。
【0035】
本実施形態においては、処理ユニット12を構成する全ての部材が非金属部材、具体的にはプラスチックで構成されている。従って、試薬中に金属イオンが混入して試薬処理が妨げられるという問題を防止可能である。
【0036】
処理タブ32は、大別して側壁80と底壁82とで構成されている。側壁80の上端には第2係合部分80Aが構成されており、一方、カバーカセット30におけるフレーム44の下端には第1係合部分44Aが構成されており、それらの2つの係合部分44A,80Aの両者の結合によって処理タブ32に対してカバーカセット30が連結される。その状態では、上述したように、内部空間302が密閉空間とされる。
【0037】
処理タブ32には、エアーを噴出させる噴出口72Aが形成されている。具体的には、エア供給装置18から供給されるエアが、ベース28に形成されたエア供給路70及び処理タブ32に形成されたエア供給路72を介して噴出口72Aに導かれ、その噴出口72Aからスライドガラス40の上面に向けてエアが吹き付けられる。このエアの吹き付けによって、試薬処理終了後のサンプル42の乾燥や余剰液の吹き流しなどを行うことが可能となる。もちろん、そのような噴出口72Aを利用して洗浄液の供給などを行うようにしてもよい。
【0038】
以下に、エア供給装置18について説明する。ポンプ60にて発生された加圧エアはアキュムレータ62に蓄積され、そのアキュムレータ62からのエアがバルブ66を介してヒーター68に供給されている。ここで、バルブ66は上記のコントローラ22によって制御されている。ヒーター68は、エア温度調整部として機能するものであり、エアの温度を所望の値に設定するための装置である。ヒーター68から出力されるエアはチューブ69を介して上述したエア供給路70に導かれている。ちなみに、アキュムレータ62に設けられた圧力センサ64によってアキュムレータ62内の圧力が検出されている。その検出値はコントローラ22に送られている。
【0039】
したがって、上記構成によれば、噴出口72Aから噴出されるエアの温度を所望の値に設定でき、例えば試薬処理終了後のサンプル42の乾燥を速やかに行えるという利点がある。
【0040】
以下に、吸引装置20について説明する。処理タブ32には吸引路84が形成されており、処理タブ32内の液体が必要に応じて吸引路84及び吸引路86を介して外部に排出される。その排出作用は吸引装置20によって遂行されている。ドレイン98には廃液100が貯留され、そのドレイン98にはアキュムレータ102を介してポンプ106が接続されている。このポンプ106は真空ポンプである。圧力センサ104はアキュムレータ102内の圧力を検出する。その検出値はコントローラ22に出力される。一方、ドレイン98にはマニホールド96及びバルブ94を介してチューブ90が接続され、そのチューブが吸引路86に接続されている。チューブ90の途中には圧力センサ92が設けられ、その検出値がコントローラ22に出力されている。各バルブ66,94の動作はコントローラ22によって制御されている。
【0041】
したがって、以上の構成によれば、処理ユニット12内の液体が吸引路84、吸引路86、チューブ90等を介してドレイン98内に引き込まれる。よって、例えばノズル54などを利用して処理タブ32内の廃液を吸い上げる作業が不要となる。このような廃液の排出の際には、上記の噴出口72からエアを噴き出させるのが望ましく、このような作用によればスライドガラス40の上面に存在する液体を円滑にスライドガラス40の下面側に導いて、それらの液体を吸引して外部に排出することが可能となる。
【0042】
ちなみに、本実施形態においては、開閉機構16が搬送機構58の一部として構成されている。具体的には、ノズル54を水平方向に運動させる台座に操作部16Aが設けられており、そのような台座を水平運動させることによっていずれかのスライド扉を駆動することが可能となっている。
【0043】
以上のように、本実施形態を適用するシステムによれば、各サンプル42ごとに処理ユニット12を構成し、各サンプル42ごとに個別に試薬処理を実行することが可能となる。その試薬処理の最中においては、カバーカセット30によって処理タブ32が覆われるため、試薬の飛散あるいは外部からの試薬などの液体の進入といった問題を未然に防止することが可能である。更に、必要に応じて窓300を開けたりあるいはカバーカセット32を取り外したりすることによってサンプル42の観察を行うことも可能である。加えて、カバープレート52によって従来のカバーガラスと同様の機能を発揮させることが可能であるので、微量の試薬でサンプル42の処理を行うことが可能となり、また、従来のカバープレートをサンプル42上に被せる人為的労力が排除される。
【0044】
上記のようにシステム全体の動作はコントローラ22によって自動的に制御されており、ユーザーは、ベース28上に所望の個数の処理ユニット12を搭載すれば、それ以降は自動的に試薬処理を実行させることが可能となる。すなわち、開閉機構16によっていずれかのスライド扉を駆動して窓300を開け、ノズル54を利用してサンプル42に対して自動的に試薬を供給することが可能であり、その後においても、開閉機構16によって窓300を閉じることが可能となる。更に、試薬処理終了後のサンプル42の乾燥やスライドガラス40上からの液の吹き飛ばしはエア供給装置18の作用によって遂行することが可能であり、また、廃液の除去吸引は吸引装置20によって行える。
【0045】
次に、図2を用いて、図1に示した処理ユニット12の具体的な構成について詳述する。図2には処理ユニット12の分解斜視図が示されている。
【0046】
図2において、符号200はカバーカセット30の構造を示しており、図2において符号202は処理タブ32の構造を示している。
【0047】
フレーム44は、本実施形態において第1部材110、第2部材112及び第3部材114で構成されている。第1部材110はフレーム44の主要部を構成し、第2部材112及び第3部材114によって2つのスライド扉46及び48のスライド運動が案内されている。それらの3つの部材110,112,114は、複数のネジなどによって相互に連結される。
【0048】
スライド扉46は、ノブ46A及び溝46Bを有している。ノブ46Aは第3部材114に形成された開口部114Aを介して上方に突出する部分である。溝46B内にはスライド扉48の本体が挿入される。
【0049】
スライド扉48は、ノブ48A及びフック116を有している。ノブ48Aは、第3部材114の開口部114Aを介して上方に突出する部分である。フック116は、後に詳述するように、カバープレート52を駆動するための内部機構50(図1参照)の一部として機能する。ここで、フック116は下側に伸長した2つの脚部によって構成され、それらの脚部間にフック溝116Aが形成されている。
【0050】
第2部材112には開口部112Aが形成され、その開口部112Aを介して上記のフック116が下方に突出する。この開口部112Aは実質的に図1に示した窓300の開口部を構成するものである。
【0051】
第2部材112上に第3部材114を接合した状態では、第2部材112の内部にスライド空間112Bが形成される。そのスライド空間112B内をスライド扉46及びスライド扉48が水平運動する。図示されるように、2つのスライド扉46,48が開状態にある場合に、ノブ46Aを閉運動させると、スライド扉46のみが運動し、一方、2つのスライド扉46,48が開状態にある場合において、ノブ48Aを閉運動させると、そのノブ48Aに当接されるスライド扉46も閉運動する。すなわち2つのスライド扉46,48が両者共に閉じられることになる。
【0052】
第1部材110には、その内側の両側面に第1案内溝122及び第2案内溝124が形成されている。これらの2つの案内溝122,124は、カバープレート52の運動を案内するための溝である。
【0053】
ここで、カバープレート52について具体的に説明する。カバープレート52には、その左右端に2つの垂直のプレートが設けられ、それらのプレート上に水平方向に沿って第1軸118及び第2軸120が貫通している。そして、それらの軸の端部118A及び120Aがそれぞれ第1案内溝122及び第2案内溝124にはまり込んでいる。つまり、第1部材110を含むフレーム44がカバープレート52の支持機構として機能する。ちなみに、図2においては、第1部材110の一方の内側面のみが示されているが、他方側の内側面にも、一方側の内側面と同様に第1案内溝122及び第2案内溝124が形成されている。
【0054】
ここで、第1軸118の中央部分はフック116に形成されたフック溝116Aと係合する。よって、スライド扉48を開閉運動させると、フック116及び第1軸118の係合作用によってカバープレート52が前後方向(ユニット長手方向)に運動することになる。その前後運動の際には、カバープレート52の運動が第1案内溝122及び第2案内溝124によって規制される。ちなみに、カバープレート52はフック116から取り外し可能に構成されている。これは、当該カバープレート52のみをディスポーザブルとして利用するためである。
【0055】
図3(a)〜(c)には、カバープレート52の底面、つまり、スライドガラス40に対面する側の形状及びその機能を説明する図が示されている。図3(a)に示すように、カバープレート52の底面は、サンプル42に対して滴下された試薬56をほぼ均一に押し拡げて展開して、サンプル42を試薬56で浸漬するために適した平坦な展開平坦面52Aを形成している。この展開平坦面52Aの略中央部には、試薬56を介してサンプル42に接触する領域であるサンプル対応領域52Bがある。なお、サンプル対応領域52Bは、サンプル42に対応するおおよその位置であり、正確な領域区分等は行われていない仮想領域である。サンプル42は、サンプル対応領域52Bとスライドガラス40との間に挟まれることになる。したがって、少なくともサンプル42が対応する部分において、展開平坦面52Aにより試薬56のほぼ均一な展開が行われ、サンプル42の試薬56による浸漬が行われる。
【0056】
図3(a)に示すように、展開平坦面52A上のサンプル対応領域52Bより外側には、前記試薬56の一部を貯留すると共に、貯留する試薬56を必要に応じて排出自在な貯留溝53が形成されている。本実施形態において、この貯留溝53は、カバープレート52の底面、すなわち展開平坦面52Aの周縁部に沿って全周に形成されている。カバープレート52のサイズが例えば30mm×24mmの場合、貯留溝53のサイズは、例えば、幅0.5mm、深さ0.5〜1.0mmである。図3(b)には、P−P断面が示されている。貯留溝53は、断面U字形状を呈し、試薬56が容易に出入りできる形状になっている。
【0057】
図3(c)には、スライドガラス40上に担持されたサンプル42を覆うように試薬56を介してカバープレート52が配置された状態が示されている。なお、図3(c)は、理解を容易にするために各部材の大きさや隙間等は誇張表現している。後述するが、カバープレート52はスライドガラス40に対して、傾斜姿勢で降下し、カバープレート52の一方端側から徐々にスライドガラス40に接触するので、試薬56が順次貯留溝53に侵入し、カバープレート52が図3(c)の状態にセットされた時、貯留溝53は、滴下された試薬56の一部により満たされることになる。
【0058】
次に、貯留溝53の機能について説明する。前述したように、スライドガラス40上に担持されたサンプル42に試薬56を滴下して、カバープレート52で覆うと、試薬56は押し拡げられると共に、カバープレート52の周縁部では、表面張力の作用により、試薬56がスライドガラス40とカバープレート52との間に留まり、全体として試薬56の保持を行う(実際は、試薬56の上にカバープレート52が浮かんでいる状態になる)。図3(c)に示すように、試薬56に周縁は空気中に露出しているので、この部分からの乾燥が始まる。特に試薬56の最適な反応条件を満たす等のために加熱処理を行う場合には、前記乾燥が促進される。本実施形態においては、試薬56の周縁部Qで試薬56が乾燥し欠乏した場合、貯留溝53に貯留されていた試薬56が供給される。その結果、図14に示すような試薬56の乾燥部Aが、サンプル対応領域52Bに達することを抑制する。つまり、試薬56の欠乏によるサンプル42の試薬処理を阻害することを防止する。
【0059】
もちろん、貯留溝53に貯留できる試薬56の量は有限であるため、サンプル42の試薬処理時間等を考慮して、貯留溝53のサイズを決定することが望ましい。なお、貯留溝53から試薬56が流出することにより貯留溝53に空隙が形成されるが、貯留溝53は、サンプル対応領域52Bの外側に形成されているので、サンプル42の試薬処理に影響することはない。
【0060】
さらに、前述したように、試薬処理の過程において、加熱処理を行う場合、試薬56の温度が上昇し、試薬56に含まれる空気が膨張し、気泡(一般にマイクロバブル)が発生する。この時、試薬56は温度の上昇に伴って対流すると共に、展開平坦面52Aの平坦性により、発生した気泡は順次高い位置に移動しようとして、展開平坦面52Aより実質的に高い位置にある移動できる貯留溝53の中に侵入する。つまり、サンプル42の周囲から排除されることになる。なお、この時、貯留溝53に試薬56が貯留されていれば、試薬56が押し出され、前述した乾燥による試薬56の欠乏に対する試薬56の供給を積極的に行うことができる。
【0061】
なお、前述したように、加熱された試薬56は常時対流し、貯留溝53の内部でも対流が発生しているので、例えば、貯留溝53の一部で、試薬56の排出が行われても、他の部分から試薬56が供給され、貯留溝53の一部で極端に早く試薬56が欠乏して乾燥部Aに試薬56が供給できなくなってしまうということは発生しない。
【0062】
このように、貯留溝53に貯留された試薬56を必要に応じて供給することにより、サンプル42において試薬56が欠乏する乾燥部Aの形成を抑制することができるので、サンプル42の試薬処理を確実かつ適切に実施することができる。
【0063】
次に、図2に示す処理タブの構造202について説明する。処理タブ32の処理槽内にはスライドガラス40が落し込まれる。このようなスライドガラス40の落し込みは手作業によって行われるのが一般的であるが自動化してもよい。スライドガラス40の上面には中央からやや一方端側に変偏した位置にサンプル42が貼付けられている。
【0064】
上記のように、処理タブ32は底壁82及び側壁80によって構成され、底壁82、具体的には、底壁82の上面(スライドガラス40の下面と対向する面)には斜面128が形成されている。この斜面128は後述する排出口に向けて廃液を速やかに流し込むための傾斜を持った面である。側壁80の一方側には上記のように噴出口72Aが形成されている。ちなみに、処理タブ32における処理槽は図2において処理空間126として示されている。
【0065】
処理タブ32には、その下面側に、噴出口72Aに対向して突部73が設けられ、排出口に対応して突部85が設けられている。それらの突部73,85については後に詳述する。
【0066】
図4及び図5には、スライド扉46及び48の動作が示されている。ここで、図4は2つのスライド扉46,48がいずれも閉じられた状態を示すものである。一方、図5は2つのスライド扉46及び48がいずれも開けられた状態を示すものである。図4に示す状態では、開口部112Aが隠蔽され、一方、図5に示す状態では開口部112Aが外部に露出する。ちなみに、図4及び図5において符号112Cは2つのスライド扉の下面側を受ける面を示している。
【0067】
次に、図6〜図8を用いて更にスライド扉46,48の動作について説明する。
【0068】
図6には2つのスライド扉46,48が開けられた状態が示されている。この状態は図5に示した状態に対応するものである。この状態では、フック116及び2つの案内溝122,124の作用によって、カバープレート52が上昇端かつ後退端におかれる。すなわちスライドガラスからカバープレート52が待避される。そのような待避状態では窓300を介して上方から分注ノズルをカバーカセット30内に進入させることが可能になる。すなわち試薬の滴下が可能となる。
【0069】
ちなみに、図6において、フック116には上向き斜面116Bが形成されており、その上向き斜面116Bはカバープレート52がスライドガラス上に落された状態からそれを上方へ引き上げる際に機能する。
【0070】
図7には、2つのスライド扉46,48の内、スライド扉46のみが閉じられた状態が示されている。この状態では、カバープレート52は駆動されない。ちなみに、2点鎖線によってカバープレート52の運動時の途中の姿勢が示されている。カバープレート52が駆動される場合、それが平行に移動されるのではなく、そのカバープレート52の下面すなわちカバー面が傾斜されつつスライドガラス上に載置される。このような傾斜姿勢での下降によれば、カバープレート52のカバー面とスライドガラスの上面との間における空気層を確実に排除することが可能となると共に、この時、貯留溝53には、サンプル42上に滴下された試薬56の一部が侵入し保持されることになる。ちなみに、図7における52’で示される姿勢はカバープレート52が前進する場合及び後退する場合の両者において同様である。
【0071】
図8には、スライドガラス40上にカバープレート52が載置された状態が示されている。この状態では、2つのスライド扉46及び48の両者が閉状態におかれる。本実施形態においては、この状態で試薬反応処理、例えば、70℃、14時間の反応処理が実施される。この反応処理中に貯留溝53に貯留された試薬56が機能し、試薬処理中の乾燥等による反応阻害が防止される。試薬反応処理後、スライド扉46及びスライド扉48を開運動させると、フック116における上記の上向き斜面116Bによって第1軸118が斜め上方向に突き上げられ、それを契機としてカバープレート52が図において左方向かつ上方向に搬送される。そのような動きは上述した第1案内溝122及び第2案内溝124によって案内されている。
【0072】
次に、図9〜図11を用いて処理タブ32の具体的な構成例について説明する。
【0073】
図9には処理タブ32の平面図が示されている。図10には図9に示すA−A’断面が示されている。図11には図9に示すB−B’断面が示されている。
【0074】
図9において、処理空間126内にスライドガラス40を収容した状態においては、そのスライドガラス40の周囲に複数の切欠が存在し、その切欠によってスライドガラス40の上面側から下面側へ液体を落し込むことが可能となる。ちなみに、そのような液体の流れ込みが図9において矢印で示されている。上記について具体的に説明すると、処理タブ32には大型切欠134及び136が形成されている。それらの空間に親指及び人差し指を挿入することによって処理空間126からスライドガラス40を取り出したりあるいは処理空間126へスライドガラス40を装着したりすることが可能である。また、スライドガラス40の四隅に対応して、切欠138,140,142,144が設けられている。更に、斜面128の近傍には切欠146,148,150,152が設けられている。斜面128は、吸引口84Aを最も低くしつつ傾斜した面であって、斜面128には更に溝154が形成されている。
【0075】
よって、噴出口72Aからエアを噴き出させると、スライドガラス40の上面側にある液体がスライドガラス40の周囲、特にいずれかの切欠を通って下面側に流れ込み、更に、斜面128や溝154の作用によってそれらの液体も吸引口84A内に流し込まれる。上述したように吸引口84Aには吸引装置20からの吸引作用が伝達されており、その吸引口84Aを介して廃液を円滑に吸い出すことが可能となる。なお、吸引口84Aは、小孔であるため、吸引装置20を動作させない限り、処理タブ32から液の流れ出しは生じない。
【0076】
図9に示されるように、噴出口72A及び吸引口84Aは処理タブにおけるおよそ対角方向の両側に形成されており、このような2つの位置関係によって、一方での送り出し及び他方での吸い出しの共同作用による廃液除去を効率的に行うことが可能となる。
【0077】
ちなみに、図10において、エア吸引路72の下端側には突部73が形成され、吸引路84の下端側には突部85が形成されている。また、図11において処理タブ32の外側面にはロック溝130が形成されている。
【0078】
次に、図12を用いてベース28の具体的な構成例について説明する。
【0079】
図12に示すベース28上には、例えば、2×3個の処理タブ32を同時に載置させることが可能である。もちろん、同時処理される処理タブ32の個数は適宜選択可能である。処理タブ32の各載置位置には、図10に示した突部73及び突部85に対応して、孔153及び孔155が形成されている。孔153には突部73がはめ込まれ、孔155には突部85がはめ込まれる。それぞれの孔153,155にはパッキング部材としてのOリング154,156が設けられている。
【0080】
図12において、ベース28上には、所定の案内機構によって前後動が許容された2つの2連ユニット160が設けられている。この2連ユニット160は各処理タブ32をベース28上に確実に固定するための機構である。各2連ユニット160には2つの水平アーム160A,160Bが設けられており、それぞれの水平アーム160A,160Bには複数のロック機構158が設けられている。それぞれのロック機構158は図11に示したロック溝130に係合する機構である。具体的に説明すると、水平アーム160A,160Bには主軸162が設けられ、その主軸を回転軸として可動アーム164が取付けられている。この可動アーム114はバネ170によって常に一定角度に弾性的に固定されており、その可動アーム164の左右端には、副軸166に対して回転可能にローラ168が設けられている。そのローラ168が図11に示したロック溝130内に挿入される。よって、2連ユニット160を図において右方向に引き出せば、各ロック機構158のロック作用を解除でき、一方、2連ユニット160を図12において左方向に移動させれば、それぞれのロック溝130内にロック機構158を係合させることが可能となる。
【0081】
図12は処理タブ32のロック方法の一例を示すものであり、もちろん他の原理を利用することが可能である。
【0082】
複数の処理タブ32の載置エリアの周囲にはそのエリアを取り囲むように溝172が形成されている。そして、溝172に連通して複数の吸引口172Aが設けられており、溝172内に入り込んだ液体が吸引されている。このような構造により、例えば処理タブ32の外表面に結露が生じ、それにより生じた水が溝172に入り込むと、それが外部に自動的に排出される。よって、このような構成によって結露対策を行うことが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態において、図3(a)〜(c)に示すように、カバープレート52の展開平坦面52Aに形成される貯留溝53は、1重の環状溝であるが、試薬処理時の試薬56の乾燥量等を考慮して、図13(a)に示すように、貯留溝53に沿って同様な貯留溝53Aを設け、サンプル対応領域52Bの周囲を複数回周回する多重溝を形成してもよい。この場合、より多くの試薬56を展開平坦面52Aに保持できるので、より長い試薬反応処理や、より乾燥度の高い環境下での試薬反応処理を良好かつ適切に行うことができる。もちろん、必要に応じて、3重以上形成しても本実施形態と同様な効果を得ることができる。図13(b)には、1本の貯留溝53cを渦巻き状に配置した例を示している。この場合も試薬56の貯留量の増加が可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0084】
一方、図13(c)は、展開平坦面52Aの一部に貯留溝53Dを形成する例である。この場合、カバープレート52の周縁部からサンプル対応領域52Bまでの距離が近い周縁部Mに貯留溝53Dが形成されている。試薬処理における乾燥部Aによる試薬反応の阻害は、乾燥部Aが実際にサンプル42に達しなければ発生しない。つまり、カバープレート52の長手方向の周縁部Nから乾燥が始まっても実際にサンプル42に乾燥部Aが達しなければ試薬反応を阻害しない。従って、周縁部N側の貯留溝を省略することができる。一方、周縁部Mから乾燥が始まった場合は、貯留溝53Dからの試薬56の供給により乾燥部Aの形成を抑制することができる。このように、乾燥部Aの発生パターンに応じて貯留溝の形成位置や形態を適宜選択することにより、カバープレート52のシンプル化、低コスト化が可能になる。
【0085】
本実施形態においては、液(試薬)展開用部材(カバープレート52)をサンプル処理装置(システム)の中で使用する例を説明したが、液(試薬)展開用部材は、マニュアル処理、つまり、作業者が個別に、プレートに担持されたサンプルに液展開用部材を手動で被せ、試薬処理を行うような場合でも、液展開用部材に形成された貯留溝は、本実施形態と同様に機能し、同様な効果を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態において、貯留溝で貯留する液体(サンプルに滴下する液体)が試薬である場合を説明したが、貯留する液体は任意であり、例えば、サンプル保存用の保存液でも本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サンプルに供給した少量の液体を当該サンプル上で展開し、サンプルを浸漬状態にした後、展開した液体の乾燥や展開した液体内部の気泡の滞留を抑制し、サンプルの浸漬状態を維持することが可能になり、サンプルに対する液体(試薬)処理を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る装置を用いたシステムの全体構成を示す概略図である。
【図2】 本発明に係る装置を用いた処理ユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図3】 本発明に係る装置に使用するカバープレートの展開平坦面に形成された貯留溝の形状及びその機能を説明する説明図である。
【図4】 2つのスライド扉を閉じた状態を示す図である。
【図5】 2つのスライド扉を開けた状態を示す図である。
【図6】 2つのスライド扉を開けた状態を示すカバーカセットの断面図である。
【図7】 一方のスライド扉のみを閉じた状態を示すカバーカセットの断面図である。
【図8】 2つのスライド扉を閉じてカバープレートを駆動した場合の状態を示すカバーカセットの断面図である。
【図9】 処理タブの平面図である。
【図10】 図9に示すA−A’断面を示す図である。
【図11】 図9に示すB−B’断面を示す図である。
【図12】 ベースの一例を示す図である。
【図13】 本発明に係る装置に使用するカバープレートの展開平坦面に形成された貯留溝の他の形態を説明する図である。
【図14】 従来の試薬処理時に発生する乾燥部や気泡を説明する図である。
【符号の説明】
10 サンプル処理装置、12 処理ユニット、14 分注装置、16 開閉機構、18 エア供給装置、20 吸引装置、22 コントローラ、42 サンプル、52 カバープレート(液(試薬)展開用部材)、52A 展開平坦面、52B サンプル対応領域、53 貯留溝、56 試薬、Q 周縁部。
Claims (7)
- プレート上に担持されたサンプルを覆うと共に、前記サンプルに供給された液体を当該サンプルが浸漬するようにサンプル上で展開させる展開平坦面を有する液展開用部材であって、
当該液展開用部材の前記展開平坦面上には、サンプル対応領域より外側に前記液体の一部を貯留すると共に、貯留する液体を排出自在な貯留溝が形成され、
前記サンプルの加熱処理時に前記液体で生じた気泡が前記展開平坦面よりも高い位置にある前記貯留溝に侵入可能であることを特徴とする液展開用部材。 - 請求項1記載の液展開用部材において、
前記貯留溝は、前記サンプル対応領域の周囲を取り囲む環状溝であることを特徴とする液展開用部材。 - 請求項1または請求項2記載の液展開用部材において、
前記貯留溝は、前記展開平坦面の周縁に沿って形成されていることを特徴とする液展開用部材。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の液展開用部材において、
前記貯留溝は、前記サンプル対応領域の周囲を複数回周回する多重溝で形成されていることを特徴とする液展開用部材。 - サンプルを担持する平坦面を有するプレートと、
前記プレートに担持されたサンプルを覆うと共に、前記サンプルに供給された試薬を当該サンプルが浸漬するようにサンプル上で展開させる展開平坦面を有する試薬展開用部材と、
前記試薬展開用部材を前記プレート上に着脱自在に支持する支持機構と、
を含み、
前記試薬展開用部材の展開平坦面には、サンプル対応領域より外側に前記試薬の一部を貯留すると共に、貯留する試薬を排出自在な貯留溝が形成され、
前記サンプルの加熱処理時に前記液体で生じた気泡が前記展開平坦面よりも高い位置にある前記貯留溝に侵入可能であることを特徴とするサンプル処理装置。 - 請求項5記載の装置において、
前記プレートを収容する処理タブと、
前記処理タブの上側を包み込むカバーカセットと、
を含み、
前記支持機構は、前記カバーカセット内に設けられた内部機構であることを特徴とするサンプル処理装置。 - 請求項6記載の装置において、
前記カバーカセットは開閉運動する扉を備えた窓を有することを特徴とするサンプル処理装置。
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