JP3675595B2 - 乗用車用空気入りタイヤ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、トレッド部近傍に設けられたパターンのネガティブ比を場所により異ならせた乗用車用空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車の燃費向上等のために、該乗用車に装着される空気入りタイヤの軽量化が注目されるようになってきた。ここで、このような空気入りタイヤの軽量化の手法としては種々のものが提案されており、例えば、トレッド部における軽量化の手法としては、トレッド部のゴムゲージを全体的に低減させるもの、あるいはトレッド部に形成された主溝、横溝のトレッド部における占有面積割合を増大、即ちネガティブ比を全域に亘って増大させるものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のようにトレッド部のゴムゲージを全体的に低減させると、耐摩耗性および耐ハイドロプレーニング性が大幅に低下してしまい、一方、ネガティブ比を全域に亘って増大、特に40%以上に増大させると、コーナリングパワーが低下して操縦安定性が悪化するという問題点があり、トレッド部の軽量化についての有効な手段は殆どないというのが実状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者はコーナリングパワーを低下させることなくトレッド部の軽量化を図ることはできないかと鋭意研究を行い、その結果、コーナリングパワーは、コーナリング走行時のトレッド部の各部位における横力の積分として求められるが、このような横力の値は、図3に示すようにトレッド部の各部位において異なっており、特に、トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点Mの内側では大きいが、点Mより外側となると、急激に小さくなってしまうことを知見した。このようなことから本発明者は前記点Mより外側の領域は、コーナリングパワーの低下を考慮することなく軽量化のために使用できる領域と考えたのである。
【0005】
本願発明は前述のような知見に基づきなされたもので、請求項1に記載の発明は、一対のビード部と、これらビード部から略半径方向外側に向かって延びるサイドウォール部と、これらサイドウォール部の半径方向外端同士を連ねる略円筒状のトレッド部とを備え、トレッド部の外表面およびサイドウォール部の半径方向外端領域の外表面に幅広の主溝、横溝が形成されている乗用車用空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部の半径方向外端領域におけるネガティブ比を50 %以下とするとともに、トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点M間に位置するトレッド中央部のネガティブ比より大としたものであり、請求項に記載の発明は、前記トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点Mとトレッド端Tとの間に位置するトレッド側端部のネガティブ比を、前記点M間に位置するトレッド中央部のネガティブ比より大としたものである。
【0006】
求項に記載の発明においては、サイドウォール部の半径方向外端領域におけるネガティブ比を50 %以下としたので、コーナリングパワー Cp が殆ど変化することはない。また、サイドウォール部の半径方向外端領域におけるネガティブ比を、前記トレッド中央部のネガティブ比より大とすることにより、サイドウォール部におけるゴム重量を低減させ、これにより、乗用車用空気入りタイヤの軽量化を図っている。さらに、請求項に記載の発明においては、トレッド部におけるゴム重量を大幅に低減させ、これにより、乗用車用空気入りタイヤの軽量化を図っている。しかも、トレッド側端部における耐ハイドロプレーニング性が向上し、これにより、トレッド部全体の耐ハイドロプレーニング性が向上する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は乗用車用の空気入りラジアルタイヤであり、このタイヤ11は一対のビード部13と、これらビード部13から略半径方向外側に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部14と、これらサイドウォール部14の半径方向外端同士を連ねる略円筒状のトレッド部15とを備えている。そして、この空気入りタイヤ11はビードコア17間をトロイダル状に延びてサイドウォール部14、トレッド部15を補強するカーカス層18を有し、このカーカス層18の内側にはインナーライナー16が配置されている。また、前記カーカス層18は両端部がビードコア17の回りに軸方向内側から軸方向外側に向かって巻き上げられるとともに、その内部にラジアル方向(子午線方向)に延びるコードが多数本埋設されている。19、20は前記トレッド部15に設けられたベルト層およびトレッドゴムであり、これらのベルト層19、トレッドゴム20は前記カーカス層18の半径方向外側に配置されている。そして、前記ベルト層19の内部には周方向に対して傾斜したコードが埋設されている。
【0008】
トレッド端T間に位置する前記トレッド部15の外表面には周方向に連続して延びる複数本の主溝25が形成され、これら主溝25は軸方向に離れて配置されている。また、前記トレッド部15の外表面には前記主溝25に交差する複数本の横溝26が形成され、これらの横溝26は周方向に互いに等距離離れて配置されている。そして、これら横溝26は周方向に対して傾斜しているが、その傾斜方向はトレッドセンターSの一側と他側とでは逆となっている。また、トレッド端Tに接する両サイドウォール部14の半径方向外端領域14aの外表面には、前記横溝26の延長線に沿って延びる複数本の横溝29が形成されており、これらの横溝29は対応する横溝26に連通するとともに、トレッド端Tから離隔するに従い深さが徐々に浅くなっている。ここで、これら横溝29は、一般に、トレッド端Tからタイヤ高さHの0.25倍だけ半径方向内側に離れた点Kと前記トレッド端Tとの間に配置されており、前記点Kを超えて半径方向内側まで延びることはない。なお、この実施形態においては、前記半径方向外端領域14aに横溝29の他に主溝を形成するようにしてもよい。
【0009】
ここで、タイヤ11のコーナリングパワーCpは、コーナリング走行時のトレッド部15の各部位における横力の積分として求められるため、該タイヤ11をコーナリング走行させてトレッド部15の各部位に発生する横力の値を求めたところ、図3に示すように、トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点Mの内側、即ちトレッド中央部15aでは横力の値は大きいが、点Mより外側、即ち点Mとトレッド端Tとの間のトレッド側端部15bとなると、急激に小さくなってしまうことを知見した。このことから前記点Mより外側の領域は、タイヤ11の軽量化のために横力の低下を招くような工夫をしても、タイヤ11のコーナリングパワーCpを低下させることは殆どないと考えられ、このようなことからネガティブ比がトレッド中央部15aのネガティブ比未満であるトレッド側端部15bおよび前記半径方向外端領域14aに、横溝26、29に沿って延びるとともに互いに連通する軽量化用の横溝32、33を複数本形成し、これにより、前記トレッド側端部15bおよび半径方向外端領域14aのネガティブ比Nb、Ncの双方を、前記トレッド中央部15aのネガティブ比Naより大としたのである。ここで、トレッド中央部15aは、コーナリングパワーCpの殆どをこの領域から発生させる必要から、ネガティブ比Naを40%未満としなければならない。そして、前述のようなことからトレッド部15、サイドウォール部14におけるゴム重量が低減され、タイヤ11の軽量化を図ることができるのである。このとき、前述のトレッド側端部15bは、コーナリング走行時に発生する横力の値が小さいため、コーナリングパワーCpにあまり寄与しておらず、一方、前述の半径方向外端領域14aは、コーナリング走行時にも接地することは殆どないため、前述のようにトレッド側端部15bのネガティブ比Nb、半径方向外端領域14aのネガティブ比Ncを大きくしても、コーナリングパワーCpの低減を招くことは殆どないのである。また、このとき、前記トレッド部15に形成されている横溝32の深さはサイドウォール部14に形成されている横溝33の深さより深いため、トレッド側端部15bのネガティブ比Nbを大とすることで大幅な軽量化を図ることができる。しかも、前述のようにトレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbを大きくすると、該部位における耐ハイドロプレーニング性が向上し、これにより、トレッド部15全体の耐ハイドロプレーニング性を向上させることができる。一方、前述の半径方向外端領域14aは接地することが殆どないため、ネガティブ比Ncを大きくしても、耐偏摩耗性等のタイヤ性能を低減させることはないのである。そして、このタイヤ11においては、ネガティブ比を変化させているだけで、トレッド部15のゴムゲージ(トレッドゴム20の肉厚)は低下させていないため、タイヤ11の耐摩耗性が低下することはない。なお、前述したトレッド中央部15a、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比とは、これらの領域にそれぞれ形成された主溝、横溝25、26、29、32、33の各領域における占有面積割合を%で表した値をいう。
【0010】
また、前述のトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naを一定とした状態でトレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbを変化させたとき、コーナリングパワーCpがどのように変化するかを求めたところ、図4に示すように、前記ネガティブ比Nbが50%以下である場合にはコーナリングパワーCpは殆ど変化しないが、50%を超えると、急激に低下した。その理由は以下の通りである。即ち、コーナリング走行時のタイヤ11の接地形状は、通常、図5に実線で示すようにコーナリング力Fの入り側で接地長が長く、出側で接地長が短い略台形状を呈しているが、前述のようにネガティブ比Nbが50%を超えると、トレッド部15全体の曲げ剛性が大きく低下して接地形状が図5に仮想線で示すように略三角形状に変化、即ちコーナリング力Fの入り側で接地面積が増大し、出側で減少するのである。ここで、前記入り側において増加した分は、コーナリングパワーCpにあまり寄与していない点Mより外側の領域のものであり、一方、出側において減少した分はコーナリングパワ−Cpの発生に寄与しているトレッド中央部15aの一部であるため、全体的なコーナリングパワーCpが急激に減少してしまうのである。さらに、前述のトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naを一定とした状態で半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比Ncを変化させたとき、コーナリングパワーCpがどのように変化するかを求めたところ、図6に示すように、前記ネガティブ比Ncが50%以下である場合にはコーナリングパワーCpは殆ど変化しないが、50%を超えると、急激に低下した。その理由は前述と同様である。なお、図4、6において、黒丸はトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naが20%のとき、白丸は40%のときの値であり、また、トレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naとトレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbおよび半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比Ncとが同一値であるときのコーナリングパワーCpをコーナリングパワー指数 100としている。前述のようなことからトレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbおよび半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比Ncは共に50%以下であることが好ましい。
【0011】
なお、前述の実施形態においては、トレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbおよび半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比Ncの双方をトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naより大としたが、この発明においては、図7に示すように、トレッド側端部15bにおけるネガティブ比Nbのみをトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naより大とし、あるいは、図8に示すように、半径方向外端領域14aにおけるネガティブ比Ncのみをトレッド中央部15aにおけるネガティブ比Naより大としてもよい。また、前述の実施形態においては、ネガティブ比Nb、Ncをネガティブ比Naより大とするため、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aに軽量化用の横溝32、33を新たに形成したが、この発明においては、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aに軽量化用の主溝を新たに形成したり、あるいは既に形成されている横溝、主溝の溝幅を広くすることでネガティブ比Nb、Ncをネガティブ比Naより大としてもよい。
【0012】
次に、試験例を説明する。この試験に当たっては、トレッド部近傍のパターンが図9に示すような形状で、トレッド中央部15aのネガティブ比Naが38%、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aのネガティブ比Nb、Ncが共に20%である従来タイヤと、パターンが図2に示すような形状で、トレッド中央部15aのネガティブ比Naが38%、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aのネガティブ比Nb、Ncが共に50%である供試タイヤ1と、パターンが図7に示すような形状で、トレッド中央部15aのネガティブ比Naが38%、トレッド側端部15bのネガティブ比Nbが50%、半径方向外端領域14aのネガティブ比Ncが38%である供試タイヤ2と、パターンが図8に示すような形状で、トレッド中央部15a、トレッド側端部15bのネガティブ比Na、Nbが共に38%、半径方向外端領域14aのネガティブ比Ncが50%である供試タイヤ3と、パターンが図10に示すような形状で、トレッド中央部15aのネガティブ比Naが38%、トレッド側端部15b、半径方向外端領域14aのネガティブ比Nb、Ncが共に75%である比較タイヤとを準備した。ここで、各タイヤのサイズは175/70 R13であった。
【0013】
次に、2.0kgf/cm2の内圧が充填されている各タイヤをMTS社製のフラットベルト試験機に装着した後、スリップアングル1、2、3度の各度においてコーナリングパワーをそれぞれ測定するとともにそれらの平均値を求め、その結果を従来タイヤをコーナリングパワー指数 100として以下の表1に示した。
【表1】
Figure 0003675595
ここで、各タイヤの負荷荷重は 350kg、走行速度は50km/hであった。また、これら各タイヤの重量を測定し、従来タイヤに比較してどの程度(%)軽量化したかを前記表1に示した。この表1から明らかなように、各供試タイヤにおいては、コーナリングパワーCpを低下させることなく軽量化を達成しているが、比較タイヤにおいては軽量化は達成できているもののコーナリングパワーCpが低下している。次に、2.0kgf/cm2の内圧が充填されている各タイヤを乗用車に装着した後、テストコースに設けられた水深10mmのプールにおいて加速しながら直進走行させるとともに、回転計が振り上がる速度を求め、そのときの速度を耐ハイドロプレーニング指数として従来タイヤを指数 100として前記表1に示した。この表1から明らかなようにネガティブ比Nbを大きくした供試タイヤ1、2において耐ハイドロプレーニング指数が大きく向上している。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、耐摩耗性およびコーナリングパワーの低下を招くことなく、効果的にタイヤの軽量化および耐ハイドロプレーニング性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示すタイヤの子午線断面図である。
【図2】トレッド部近傍の外表面形状(パターン)を示す展開図である。
【図3】トレッド部の各位置に発生する横力を示すグラフである。
【図4】コーナリングパワーとネガティブ比Nbとの関係を示すグラフである。
【図5】コーナリング走行時のタイヤの接地形状を示す説明図である。
【図6】コーナリングパワーとネガティブ比Ncとの関係を示すグラフである。
【図7】この発明の他の実施形態を示すトレッド部近傍における外表面形状の展開図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態を示すトレッド部近傍における外表面形状の展開図である。
【図9】試験に用いた従来タイヤを示すトレッド部近傍における外表面形状の展開図である。
【図10】試験に用いた比較タイヤを示すトレッド部近傍における外表面形状の展開図である。
【符号の説明】
11…空気入りタイヤ 13…ビード部
14…サイドウォール部 14a…半径方向外端領域
15…トレッド部 15a…トレッド中央部
15b…トレッド側端部 25…主溝
26、29…横溝

Claims (2)

  1. 一対のビード部と、これらビード部から略半径方向外側に向かって延びるサイドウォール部と、これらサイドウォール部の半径方向外端同士を連ねる略円筒状のトレッド部とを備え、トレッド部の外表面およびサイドウォール部の半径方向外端領域の外表面に、周方向に延びる主溝および該主溝に交差する横溝が形成されている乗用車用空気入りタイヤにおいて、前記サイドウォール部の半径方向外端領域におけるネガティブ比を50 %以下とするとともに、トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点M間に位置するトレッド中央部のネガティブ比より大としたことを特徴とする乗用車用空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッドセンターSからトレッド幅Wの 0.4倍だけ両外側に離れた点Mとトレッド端Tとの間に位置するトレッド側端部のネガティブ比を、前記点M間に位置するトレッド中央部のネガティブ比より大とした請求項1記載の乗用車用空気入りタイヤ。
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