JP3675491B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、特にオートマチックトランスミッションを用いた車両において、エンジンブレーキが作用する減速時のエンスト対策に係るものであり、急激なパニックブレーキに際しても安定した減速制御が行えるようにする車両制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オートマチックトランスミッションを用いた車両にあっては、アクセルペダルが解放された状態においてエンジンブレーキが作用されるように、オートマチツトランスミッション機構においてロックアップ結合が行われるようにしている。ここで、ロックアップとはエンジンと変速機構とを結合する流体継ぎ手(トルクコンバータ)の中に設けられ、エンジンと変速機構とを直結する機構である。
【0003】
この様なロックアップ制御を行う車両制御装置においては、例えば実開平3−36554号に見られるように、車速の低下率をモニタし、緩減速状態と判定されたときにロックアップ結合が行われるようにすることが知られている。
【0004】
例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)車のように比較的制動力の弱い後輪ブレーキで駆動軸を制動する車両にあっては有効に作用する。一般的に、後輪ブレーキよりも前輪ブレーキが制動力が強力であるため、FF(フロントドライブ)車のように強力な力によって駆動軸を制動する車両にあっては、緩減速判定後のロックアップ制御システムではレスポンスが悪く、エンジン回転速度の低下によってエンジンが停止するエンストの可能性が大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような点に鑑みなされたもので、急激な制動装置によるパニックブレーキが行われたような場合においても、確実に内燃機関を用いた制動制御が行われるようにすると共に、減速時におけるブレーキ入力の判定等に基づいて、オートマチックトランスミッションのロックアップを解除した上でスロットル制御を行うことで機関出力を低下させ、走行中におけるパニックブレーキに際してもエンストの発生が確実に防止できるようにする車両制御装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両制御装置は、内燃機関の動力を車輪に伝達するオートマチックトランスミッションを備えた車両において、アクセル開度計測手段、ブレーキ操作検出手段、前記内燃機関の回転速度計測手段を備え、アクセル閉じ検出手段で前記アクセル開度計測手段からの計測情報に基づいて急激なアクセル閉じ動作を検出し、このアクセル閉じ検出に伴って前記オートマチックトランスミッションのロックアップを解放制御する。そして、アクセル閉じ操作から所定時間範囲の減速制御判定区間を設定し、この減速制御判定区間内でブレーキオン点が検出されたとき、スロットル制御すると共に前記ロックアップの解放状態を継続するロックアップ制御をするようにしている。
【0007】
【作用】
この様に構成される車両制御装置にあっては、定常走行時にアクセルが急激に解放されるとアクセル閉じ動作が検出され、トランスミッション機構のロックアップが解除されると共に減速制御判定区間が設定される。通常の走行状態でこの様なアクセルに伴ってブレーキ操作がされない場合は、このロックアップ解除の状態は減速制御区間の終了と共にロックアップが結合状態とされるが、この減速制御区間内でブレーキが踏み込み操作された場合には、車速の低下と共に内燃機関の回転速度が急激に低下し、エンストを起こす。しかし、減速制御区間においてブレーキが操作されたときには、オートマチックトランスミッションのロックアップが解除されるものであるため、トランスミッション部においてスリップが生じ、エンストの発生が効果的に回避されるようになる。すなわち、走行中にパニックブレーキ操作されたような場合においてエンストの発生が回避され、安全運転状態が確実に確保される。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。図1は全体的な構成を示すもので、内燃機関11の出力軸111 に結合されるようにしてオートマチックトランスミッション12が設けられる。内燃機関11には、その回転速度を検出するための回転角センサ13、吸気管に設定されるスロットル弁14に連結されたスロットルアクチュエータ15、スロットル弁14に連結されてその開度を検出するスロットル開度センサ16等が設けられている。そして、回転角センサ13からの検出信号に基づく回転数信号Ne 、スロットル開度センサ16からのスロットル開度信号TAが、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置17に入力される。
【0009】
オートマチックトランスミッション12は、ロックアップクラッチ121 を備えるもので、このトランスミッション12は内燃機関11の出力軸111 の出力を流体によって伝達するものであるが、ロックアップクラッチ121 が結合されることによって機関11の軸出力が機械的に変速機構122 に結合されるようにする。
【0010】
この変速機構122 はオートマチックトランスミッション12の一部を構成するもので、機関11の軸出力を変速して出力する機構である。また、この変速機構122 の出力軸には一体的に回転する歯車123 が設けられ、この歯車123 の外周に近接して歯車123 の回転速度に対応したパルス状の信号を検出する車速センサ124 が設けられる。すなわち、歯車123 は車輪回転速度に対応した速度で回転されるもので、この歯車123 の外周の各歯に対応するパルス信号が、この車速センサ124 からの車速検出信号SPDとして制御装置17に入力される。
【0011】
制御装置17には、吸気管に設定された吸気管気筒を検出する吸気圧センサ18からの吸気圧信号PMが供給され、さらにアクセルペダルに設定されたアクセル開度センサ19からのアクセル開度信号AP、ブレーキペダルに連結され、このブレーキが踏まれた時を検出するブレーキスイッチ20からの検出信号BRが供給されている。
【0012】
この制御装置17においては、前記各センサからの入力情報に基づいて、このシステムの搭載される車両において最適な内燃機関11のスロットル開度THCMDを算出し、このスロットル開度情報に基づいてスロットルアクチュエータ15を駆動してスロットル弁14の開度を制御する。また、最適なロックアップ状態を算出してロックアップクラッチ121 に駆動信号LCを出力する。その他、内燃機関11の運転状態等に対応して最適な気筒別燃料噴射量を演算し、この演算された噴射量に対応して燃料噴射弁21の開弁時間を制御して、適正な量の燃料が内燃機関11の気筒内に噴射されるようにしている。
【0013】
図2はこの様な車両制御装置を機能ブロック化して示したもので、内燃機関11に設定された回転角センサ13に対応する回転速度測定装置131 から回転速度情報Ne 、およびオートマチックトランスミッション12の車速センサ124 に対応する車速計測装置125 からの車速信号SPDが、制御装置17を構成する減速制御装置171 に入力される。また、スロットル開度センサ16に対応するスロットル開度検出装置161 からのスロットル開度情報TA、アクセル開度センサ19に対応するアクセル開度計測手段191 からのアクセル開度情報AP、およびブレーキスイッチ20に対応するブレーキON点検出装置201 からのブレーキ情報BRが、それぞれ減速制御装置171 に入力される。
【0014】
この減速制御装置171 において、車両並びに内燃機関11の運転状態を判断しているもので、例えばロックアップ状態で減速時に急ブレーキが操作されたようなエンストの危険が生じるような場合にこれを検知し、制御装置17を構成するスロットル制御装置172 およびロックアップ制御装置173 に制御信号を出力し、オートマチックトランスミッション12のロックアップクラッチ121 を解放してエンストが回避されるようにする。
【0015】
制御装置17を構成する燃料制御装置174 は、スロットル開度情報TA、機関回転数情報Ne 、車速情報SPD、さらに吸気圧センサ18で構成される吸気負荷検出装置181 からの吸気圧情報PMに基づいて、内燃機関11の運転状態に対応した燃料噴射量を演算し、燃料噴射弁21を制御するものであるが、減速時のフューエルカット(F/C)領域の判定時に燃料噴射弁21に対してF/C信号を供給し、この噴射弁21を閉じて燃料を停止するようにしている。これにより燃費の低減が図れる。
【0016】
この様に構成される車両制御装置の動作について、図3を用いてその概要を説明する。まず(A)図は定常の走行状態において減速するには、まずアクセルペダルの踏み込み状態が解放され、アクセル開度APが零の状態とされる。この場合、アクセル開度APの閉速度(APの微分値)ΔPを監視し、この微分値ΔPの値が予め実験等に基づいて求められた設定値KDLTAP以上の状態が検知されたときに、急激なアクセルペダルの戻し操作があったものと判断する。この様なアクセルペダルの急激な戻し操作が検知されたときに、所定時間KJUDの範囲で減速判定区間の判定フラグXNSTALをオンする。
【0017】
この場合、ロックアップクラッチ信号LCは、フラグXNSTALがオンされる時に同期してオフ状態とされ、オートマチックトランスミッション12のロックアップクラッチ121 を切り離して、ロックアップが解放されるようにする。このロックアップクラッチ信号LCは、フラグXNSTALがオンの間ブレーキ信号BRをモニタしているもので、フラグXNSTALがオフとなるまでブレーキの操作がなければ、フラグXNSTALに同期して時間KJUD後にロックアップクラッチ信号LCがオンされ、ロックアップが再び締結状態とされる。このロックアップクラッチ信号LCのオンに同期して、スロットル出力TAが閉操作される。
【0018】
図3の(B)は急激なアクセル戻し操作があった場合に、減速判定区間の判定フラグXNSTALがオンされている間にブレーキが踏み込み操作された場合を示しているもので、ブレーキの踏み込み操作と共にブレーキ信号BRがオンされる。
【0019】
この様に判定フラグXNSTALがオンされた期間KJUDに、ブレーキ信号BRがオンされた場合には急ブレーキと判定されるもので、予めフラグXNSTALの立上がりと同期してオフされているロックアップ操作は、KJUDの経過後もそのまま解放のまま保持される。すなわち、フラグXNSTALがオフされてもロックアップの再結合は行われない。なお、ブレーキ信号BRのオンに同期してただちにスロットルTAを閉操作することにより、制動距離の長化を防止することができる。
【0020】
この様にアクセルペダルの装置によって減速状態を判定し、この減速判定と共に所定時間XNSTALの範囲でロックアップを解放制御するもので、通常の減速状態ではその所定時間後にロックアップを再締結して内燃機関の回転速度の低下を遅らせ、燃料停止状態を長く保つことにより燃費の向上が図れるようにしている。
【0021】
そして、この所定時間のロックアップ解放区間において急ブレーキの操作が検知されたときには、ロックアップの再締結を中止すると共に、急ブレーキに同期してスロットルが閉操作されるようになり、ロックアップが解放されている時間(ロックアップクラッチは油圧によって制御されるため、その完全解放まで信号操作後に所定時間を要する)をかせぎ、エンストを回避することができる。
【0022】
なお、図3の(B)中での破線は、減速領域においてロックアップが締結されたままの状態で急ブレーキによる制動が加えられた場合、駆動系より内燃機関側へ急制動が加えられ、内燃機関がストールする領域を示している。
【0023】
ここで、図4を用いて定常走行状態から減速走行状態に移行する場合のフューエルカット(F/C)領域の相違を、従来のロックアップクラッチ制御の場合と比較して説明する。なお、F/C領域の判定は一般に知られているものであり、スロットル全閉信号、車速、さらに機関回転速度等に基づいて判定され、アイドル回転速度以上のストールを回避できる所定機関回転速度においてF/Cが禁止されるものである。
【0024】
この図の(A)は従来の制御状態を示しているもので、スロットル開度TAの全閉を判定し、且つ機関回転速度Ne が所定以上の値であって、車速が所定値以上(例えば5Km/h以上)の時に減速と判定する。そして、F/Cを許可すると共にロックアップを解放側(LC=0)へ制御する。
【0025】
この様に制御することにより機関の回転速度Neは、ロックアップ解放によりトランスミッションのトルクコンバータ内でのスリップが生じ、車両側駆動系からの機関を回そうとする力が半減される。そして、機関回転速度NeがF/C復帰回転速度に低下された状態でF/Cが禁止され、機関回転速度Neはアイドル回転速度で安定する。したがって、機関回転速度NeのF/C回転速度に至る到達時間の早い分、F/Cゾーンは短い。
【0026】
これに対して実施例で示した制御にあっては、同図の(B)で示すようにロックアップクラッチLCは急ブレーキの判定がなければ、所定時間XNSTAL後に再締結(LC=1)される。(A)図の場合と同様に減速判定後にF/Cが許可されるものであるが、この状態ではロックアップクラッチLCが締結されているため、機関回転速度Ne は従来のようにトルクコンバータ内でスリップが生ずることがなく、マニュアルミッション車と同様にエンジンブレーキ作用によって徐々に回転速度Ne が低下する。そして、F/C復帰回転速度でF/Cが禁止されてアイドル回転速度で安定する。この場合、ロックアップクラッチLCは所定の機関回転速度(F/C復帰回転速度に連動)で解放側に制御されるもので、F/Cゾーンは(A)図に比較して広がり、燃費の低減効果が大きい。
【0027】
この様な制御は減速制御装置171 に格納された減速時制御プロセスにしたがって実行されるもので、図5はこの減速制御プロセスの流れを示している。この図で示した減速制御のベースルーチンは例えば10m秒毎に実行されるもので、ステップ301 においてアクセル開度の閉側への移行速度にしたがって減速制御を行うべきか否かを判定する減速時制御許可判定ルーチンを呼び出す。
【0028】
次に、ステップ302 において急ブレーキ操作の有無並びに連動したロックアップクラッチ操作を行う急ブレー判定並びにロックアップ操作サブルーチンを呼び出し、ステップ303 で目標スロットル開度THCMDの算出サブルーチンを呼び出す。そして、ステップ304 において目標スロットル開度THCMDをスロットル制御装置172 に出力する出力処理サブルーチンを呼び出す。
【0029】
図6はステップ301 で呼び出される減速制御許可判定サブルーチンを示すもので、このサブルーチンは10m秒毎に実行される。まずステップ401 においてアクセル開度APの10m秒毎の微分値ΔAPを求める。具体的には10m秒前のアクセル開度をBAPとした場合、“ΔAP=BAP−AP”の計算式より、アクセルの閉側への戻り速度を求める。
【0030】
ステップ402 においてはこの様にして求められたアクセル戻り速度ΔAPが負であるか否かを判定するもので、もし正と判定されたときは減速側と判定してステップ403 に進み、ΔAPを所定の値KDLTAPと比較するもので、この判定でアクセルが急操作されたかあるいは緩操作であるかが判定される。もしアクセルが急戻り操作と判定されたときは減速中と判断し、ステップ404 において減速フラグXNSTALを“1”とする。そして、次のステップ405 においてロックアップクラッチ信号LCを“0”とし、ロックアップを解放する。
【0031】
ステップ403 において緩やかなアクセル戻し操作と判定されたときは、ステップ406 において、すでにフラグXNSTALが“1”となっているか否かを判定し、“XNSTAL=1”で減速中と判断してステップ407 に進んでカウンタCNSTLをインクリメントする。ステップ408 ではこのカウンタCNSTLが所定時間KJUDに到達しているか否かを判定し、KJUDの時間経過を満足していたならばステップ409 においてフラグXNSTALを“0”とする。
【0032】
この様なステップ403 〜409 において急激なアクセル戻りによる減速中であることが判断され、所定の時間KJUDで指示された時間の間のみフラグXNSTALが“1”とされる。
【0033】
ステップ402 においてΔAPが負であると判定された場合は、アクセルペダルが開側に操作されているものと判断され、ステップ410 および411 において所定の値KDLTAP2 以上の開き速度であるか否かを判定する。もし、ΔAPがこの所定値以上と判定されたときは明らかな加速と判断し、ステップ412 において加速フラグXACCを“1”すると共に、ステップ413 および414 でそれぞれブレーキ信号検出フラグXPANICおよびカウンタCNSTLをクリアする。この様にステップ411 〜414 において、アクセル開度の操作より加速判定したときには、減速制御用のフラグおよびカウンタをクリアし、加速フラグがセットされるようにする。
【0034】
図7はステップ302 によって呼び出される急ブレーキ判定並びにロックアップ操作サブルーチンを示すもので、このルーチンも10m秒毎に実行される。まずステップ421 においては図6で説明した減速判定時にセットされるフラグXNSTALの状態に基づいて減速直後か否かを判定する。もしフラグXNSTAL=1で減速直後と判定されたときは、ステップ422 に進んで加速フラグXACCをクリアし、ステップ423 でブレーキスイッチ信号BRの状態を判定する。このステップ423 でブレーキが踏まれていないと判定されたときは、何もせずにリターンする。
【0035】
ブレーキスイッチ信号BR=1と判定されたときは、これは急ブレーキであると判断してステップ424 に進んでブレーキ信号検出フラグXPANICを“1”にセットし、さらにステップ425 でロックアップクラッチ操作指示をLC=0に設定して、ロックアップの解放操作を行う。
【0036】
ステップ421 においてフラグXNSTALが“0”と判定されたときは、ステップ426 においてブレーキ信号検出フラグXPANICの状態を判別し、もしブレーキが踏まれていると判定されたときは、ステップ425 でロックアップの解放を行う。このブレーキ信号検出フラグがXPANIC=1でセットされた後は、BR=0となってもXPANIC=0とはせず、次の加速判定XACC=1までクリアされない(図6のステップ413 参照)。
【0037】
ステップ426 においてXPANIC=0と判定されたときには、急ブレーキの発生がなかったものと判断されるもので、ステップ427 において加速判定フラグXACCを判定する。このステップ426 で加速していないと判定されたならば、ステップ428 でロックアップを締結する(LC=1)。ステップ427 で加速状態が判定されたならば、そのままサブルーチンにリターンする。
【0038】
図8はこの様な制御の流れを説明するタイミングチャートを示すもので、アクセルペダルが解放された状態でその微分信号ΔAPが発生され、減速中を判定するフラグXNSTALが“1”の状態のときにブレーキスイッチ信号BR=1が判定されたならば、このブレーキスイッチ信号が“0”になってもブレーキ判定フラグXPANIC=1の状態が、次の加速判定XACC=1となるまで維持される。そして、この加速判定フラグXACC=0の間は、LC=0としてロックアップの再締結を行わない。
【0039】
また、減速判定フラグXNSTAL=1の状態中において、ブレーキスイッチ信号BR=1の判定がなければ、減速判定フラグXNSTAL=0となるときに同期してLC=1とし、ロックアップの再締結が行われるようになる(ステップ426 〜428 )。
【0040】
図9はベースルーチン303 において呼び出される目標スロットル開度THCMDの算出サブルーチンを示すもので、このルーチンも10m秒毎に実行される。まずステップ431 において減速判定フラグXNSTALの状態をみて減速状態にあるか否かを判定する。このステップ431 でXNSTAL=0が判定され、減速直後ではないと判断されたときは、ステップ432 でカウンタCAPをクリアすると共に、ステップ433 でそのときのアクセル開度APを、目標スロットル開度THCMDとして記憶させる。
【0041】
ステップ431 において減速直後(XNSTAL=1)と判定されたときは、ステップ434 においてCAP=0の関係にあるか否かを判定するもので、XNSTAL=1となった後初めてステップ434 を通過するのか否かを判定する。もし初めてであるならば、ステップ435 において減速判定フラグXNSTALが0から1となったときのアクセル開度AP、すなわち減速判定に同期したアクセル開度APをMAPという記憶装置に格納する。ステップ434 でCAP=1の関係が判定されたときは、ステップ435 をバイパスしてステップ436 に進み、カウンタCAPをインクリメントする。
【0042】
次のステップ437 においては、ブレーキ判定フラグXPANIC=1であるか否かを判定し、ブレーキが踏まれていないと判定されたときはステップ438 でステップ435 でMAPに記憶した減速判定時のアクセル開度を目標スロットル開度THCMDとしてセットする。
【0043】
すなわち、減速判定フラグXNSTAL=1によって減速が判定されると、急ブレーキの操作がされないときはXNSTAL=1の区間(KJUD時間分)はスロットル開度TAがMAPの値に維持される。そして、XNSTAL=0に同期してそのときのアクセル開度APにスロットル開度TAを戻す。
【0044】
もし、減速判定フラグXNSTAL=1のときに急ブレーキが踏まれると、ブレーキ判定フラグXPANIC=1に同期して直ちにアクセル開度APにスロットル開度TAを戻すものであり、もし減速判定されていなければ、アクセル開度APと同じ値でスロットルTAを操作する。
【0045】
この様にして図3で示した減速領域におけるロックアップ操作を行い、通常の減速状態においてはロックアップの締結による燃費の向上を図り、急ブレーキが踏まれた場合にはロックアップの解放とスロットル操作の遅延によって、エンストの回避を行うようになる。
【0046】
なお、実施例においてはアクセル開度APの微分値ΔAPの値に基づいて減速を判定しているが、これはスロットル開度の微分値に基づいて減速判定を行うようにしてもよい。また内燃機関の回転速度の低下の微分値、あるいは車両の車輪速低下の微分値によって減速を判定することもできる。
【0047】
また急ブレーキの判定をブレーキスイッチ信号BRによって行っているが、これも内燃機関の回転速度、車輪速の低下の微分値によって急ブレーキ判定を行うようにしても同様に実施できる。さらに、急ブレーキの有無を判定する区間、つまりフラグXNSTAL=1の状態の区間は、KJUDの固定値に設定されているが、内燃機関の運転状態や車両の運転状態に対応して可変するようにしてもよいもので、この様にすればより正確な制御並びに制動距離の管理が行える。
【0048】
【発明の効果】
以上のようにこの発明に係る車両制御装置によれば、急激な制動装置によるパニックブレーキが行われたような場合においても、確実に内燃機関を用いた制動制御が行われるもので、減速時におけるブレーキ入力の判定等に基づいて、オートマチックトランスミッションのロックアップを解除した上でスロットル制御を行うことで機関出力を低下させ、走行中におけるパニックブレーキに際してもエンストの発生が確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る車両制御装置を説明する構成図。
【図2】上記実施例の制御部の説明する構成図。
【図3】(A)および(B)は定常時および急ブレーキ時における動作状態を説明するタイミングチャート。
【図4】(A)および(B)はそれぞれ従来の制御状態および実施例における制御状態を対比して示すタイミングチャート。
【図5】この実施例の減速時プロセスの制御ルーチンを説明する図。
【図6】この制御ルーチンにおける減速制御許可判定サブルーチンを説明するフローチャート。
【図7】同じく急ブレーキ判定サブルーチンを説明するフローチャート。
【図8】このサブルーチンを説明するタイミングチャート。
【図9】前記制御ルーチンの目標スロットル開度算出サブルーチンを説明するフローチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、12…オートマチックトランスミッション、121 …ロックアップクラッチ、124 …車速センサ、13…回転数センサ、14…スロットル弁、15…スロットルアクチュエータ、16…スロットル開度センサ、17…制御装置、19…アクセル開度センサ、20…ブレーキスイッチ、21…燃料噴射弁、171 …減速制御装置。
【産業上の利用分野】
この発明は、特にオートマチックトランスミッションを用いた車両において、エンジンブレーキが作用する減速時のエンスト対策に係るものであり、急激なパニックブレーキに際しても安定した減速制御が行えるようにする車両制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オートマチックトランスミッションを用いた車両にあっては、アクセルペダルが解放された状態においてエンジンブレーキが作用されるように、オートマチツトランスミッション機構においてロックアップ結合が行われるようにしている。ここで、ロックアップとはエンジンと変速機構とを結合する流体継ぎ手(トルクコンバータ)の中に設けられ、エンジンと変速機構とを直結する機構である。
【0003】
この様なロックアップ制御を行う車両制御装置においては、例えば実開平3−36554号に見られるように、車速の低下率をモニタし、緩減速状態と判定されたときにロックアップ結合が行われるようにすることが知られている。
【0004】
例えばFR(フロントエンジン・リアドライブ)車のように比較的制動力の弱い後輪ブレーキで駆動軸を制動する車両にあっては有効に作用する。一般的に、後輪ブレーキよりも前輪ブレーキが制動力が強力であるため、FF(フロントドライブ)車のように強力な力によって駆動軸を制動する車両にあっては、緩減速判定後のロックアップ制御システムではレスポンスが悪く、エンジン回転速度の低下によってエンジンが停止するエンストの可能性が大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような点に鑑みなされたもので、急激な制動装置によるパニックブレーキが行われたような場合においても、確実に内燃機関を用いた制動制御が行われるようにすると共に、減速時におけるブレーキ入力の判定等に基づいて、オートマチックトランスミッションのロックアップを解除した上でスロットル制御を行うことで機関出力を低下させ、走行中におけるパニックブレーキに際してもエンストの発生が確実に防止できるようにする車両制御装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両制御装置は、内燃機関の動力を車輪に伝達するオートマチックトランスミッションを備えた車両において、アクセル開度計測手段、ブレーキ操作検出手段、前記内燃機関の回転速度計測手段を備え、アクセル閉じ検出手段で前記アクセル開度計測手段からの計測情報に基づいて急激なアクセル閉じ動作を検出し、このアクセル閉じ検出に伴って前記オートマチックトランスミッションのロックアップを解放制御する。そして、アクセル閉じ操作から所定時間範囲の減速制御判定区間を設定し、この減速制御判定区間内でブレーキオン点が検出されたとき、スロットル制御すると共に前記ロックアップの解放状態を継続するロックアップ制御をするようにしている。
【0007】
【作用】
この様に構成される車両制御装置にあっては、定常走行時にアクセルが急激に解放されるとアクセル閉じ動作が検出され、トランスミッション機構のロックアップが解除されると共に減速制御判定区間が設定される。通常の走行状態でこの様なアクセルに伴ってブレーキ操作がされない場合は、このロックアップ解除の状態は減速制御区間の終了と共にロックアップが結合状態とされるが、この減速制御区間内でブレーキが踏み込み操作された場合には、車速の低下と共に内燃機関の回転速度が急激に低下し、エンストを起こす。しかし、減速制御区間においてブレーキが操作されたときには、オートマチックトランスミッションのロックアップが解除されるものであるため、トランスミッション部においてスリップが生じ、エンストの発生が効果的に回避されるようになる。すなわち、走行中にパニックブレーキ操作されたような場合においてエンストの発生が回避され、安全運転状態が確実に確保される。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。図1は全体的な構成を示すもので、内燃機関11の出力軸111 に結合されるようにしてオートマチックトランスミッション12が設けられる。内燃機関11には、その回転速度を検出するための回転角センサ13、吸気管に設定されるスロットル弁14に連結されたスロットルアクチュエータ15、スロットル弁14に連結されてその開度を検出するスロットル開度センサ16等が設けられている。そして、回転角センサ13からの検出信号に基づく回転数信号Ne 、スロットル開度センサ16からのスロットル開度信号TAが、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置17に入力される。
【0009】
オートマチックトランスミッション12は、ロックアップクラッチ121 を備えるもので、このトランスミッション12は内燃機関11の出力軸111 の出力を流体によって伝達するものであるが、ロックアップクラッチ121 が結合されることによって機関11の軸出力が機械的に変速機構122 に結合されるようにする。
【0010】
この変速機構122 はオートマチックトランスミッション12の一部を構成するもので、機関11の軸出力を変速して出力する機構である。また、この変速機構122 の出力軸には一体的に回転する歯車123 が設けられ、この歯車123 の外周に近接して歯車123 の回転速度に対応したパルス状の信号を検出する車速センサ124 が設けられる。すなわち、歯車123 は車輪回転速度に対応した速度で回転されるもので、この歯車123 の外周の各歯に対応するパルス信号が、この車速センサ124 からの車速検出信号SPDとして制御装置17に入力される。
【0011】
制御装置17には、吸気管に設定された吸気管気筒を検出する吸気圧センサ18からの吸気圧信号PMが供給され、さらにアクセルペダルに設定されたアクセル開度センサ19からのアクセル開度信号AP、ブレーキペダルに連結され、このブレーキが踏まれた時を検出するブレーキスイッチ20からの検出信号BRが供給されている。
【0012】
この制御装置17においては、前記各センサからの入力情報に基づいて、このシステムの搭載される車両において最適な内燃機関11のスロットル開度THCMDを算出し、このスロットル開度情報に基づいてスロットルアクチュエータ15を駆動してスロットル弁14の開度を制御する。また、最適なロックアップ状態を算出してロックアップクラッチ121 に駆動信号LCを出力する。その他、内燃機関11の運転状態等に対応して最適な気筒別燃料噴射量を演算し、この演算された噴射量に対応して燃料噴射弁21の開弁時間を制御して、適正な量の燃料が内燃機関11の気筒内に噴射されるようにしている。
【0013】
図2はこの様な車両制御装置を機能ブロック化して示したもので、内燃機関11に設定された回転角センサ13に対応する回転速度測定装置131 から回転速度情報Ne 、およびオートマチックトランスミッション12の車速センサ124 に対応する車速計測装置125 からの車速信号SPDが、制御装置17を構成する減速制御装置171 に入力される。また、スロットル開度センサ16に対応するスロットル開度検出装置161 からのスロットル開度情報TA、アクセル開度センサ19に対応するアクセル開度計測手段191 からのアクセル開度情報AP、およびブレーキスイッチ20に対応するブレーキON点検出装置201 からのブレーキ情報BRが、それぞれ減速制御装置171 に入力される。
【0014】
この減速制御装置171 において、車両並びに内燃機関11の運転状態を判断しているもので、例えばロックアップ状態で減速時に急ブレーキが操作されたようなエンストの危険が生じるような場合にこれを検知し、制御装置17を構成するスロットル制御装置172 およびロックアップ制御装置173 に制御信号を出力し、オートマチックトランスミッション12のロックアップクラッチ121 を解放してエンストが回避されるようにする。
【0015】
制御装置17を構成する燃料制御装置174 は、スロットル開度情報TA、機関回転数情報Ne 、車速情報SPD、さらに吸気圧センサ18で構成される吸気負荷検出装置181 からの吸気圧情報PMに基づいて、内燃機関11の運転状態に対応した燃料噴射量を演算し、燃料噴射弁21を制御するものであるが、減速時のフューエルカット(F/C)領域の判定時に燃料噴射弁21に対してF/C信号を供給し、この噴射弁21を閉じて燃料を停止するようにしている。これにより燃費の低減が図れる。
【0016】
この様に構成される車両制御装置の動作について、図3を用いてその概要を説明する。まず(A)図は定常の走行状態において減速するには、まずアクセルペダルの踏み込み状態が解放され、アクセル開度APが零の状態とされる。この場合、アクセル開度APの閉速度(APの微分値)ΔPを監視し、この微分値ΔPの値が予め実験等に基づいて求められた設定値KDLTAP以上の状態が検知されたときに、急激なアクセルペダルの戻し操作があったものと判断する。この様なアクセルペダルの急激な戻し操作が検知されたときに、所定時間KJUDの範囲で減速判定区間の判定フラグXNSTALをオンする。
【0017】
この場合、ロックアップクラッチ信号LCは、フラグXNSTALがオンされる時に同期してオフ状態とされ、オートマチックトランスミッション12のロックアップクラッチ121 を切り離して、ロックアップが解放されるようにする。このロックアップクラッチ信号LCは、フラグXNSTALがオンの間ブレーキ信号BRをモニタしているもので、フラグXNSTALがオフとなるまでブレーキの操作がなければ、フラグXNSTALに同期して時間KJUD後にロックアップクラッチ信号LCがオンされ、ロックアップが再び締結状態とされる。このロックアップクラッチ信号LCのオンに同期して、スロットル出力TAが閉操作される。
【0018】
図3の(B)は急激なアクセル戻し操作があった場合に、減速判定区間の判定フラグXNSTALがオンされている間にブレーキが踏み込み操作された場合を示しているもので、ブレーキの踏み込み操作と共にブレーキ信号BRがオンされる。
【0019】
この様に判定フラグXNSTALがオンされた期間KJUDに、ブレーキ信号BRがオンされた場合には急ブレーキと判定されるもので、予めフラグXNSTALの立上がりと同期してオフされているロックアップ操作は、KJUDの経過後もそのまま解放のまま保持される。すなわち、フラグXNSTALがオフされてもロックアップの再結合は行われない。なお、ブレーキ信号BRのオンに同期してただちにスロットルTAを閉操作することにより、制動距離の長化を防止することができる。
【0020】
この様にアクセルペダルの装置によって減速状態を判定し、この減速判定と共に所定時間XNSTALの範囲でロックアップを解放制御するもので、通常の減速状態ではその所定時間後にロックアップを再締結して内燃機関の回転速度の低下を遅らせ、燃料停止状態を長く保つことにより燃費の向上が図れるようにしている。
【0021】
そして、この所定時間のロックアップ解放区間において急ブレーキの操作が検知されたときには、ロックアップの再締結を中止すると共に、急ブレーキに同期してスロットルが閉操作されるようになり、ロックアップが解放されている時間(ロックアップクラッチは油圧によって制御されるため、その完全解放まで信号操作後に所定時間を要する)をかせぎ、エンストを回避することができる。
【0022】
なお、図3の(B)中での破線は、減速領域においてロックアップが締結されたままの状態で急ブレーキによる制動が加えられた場合、駆動系より内燃機関側へ急制動が加えられ、内燃機関がストールする領域を示している。
【0023】
ここで、図4を用いて定常走行状態から減速走行状態に移行する場合のフューエルカット(F/C)領域の相違を、従来のロックアップクラッチ制御の場合と比較して説明する。なお、F/C領域の判定は一般に知られているものであり、スロットル全閉信号、車速、さらに機関回転速度等に基づいて判定され、アイドル回転速度以上のストールを回避できる所定機関回転速度においてF/Cが禁止されるものである。
【0024】
この図の(A)は従来の制御状態を示しているもので、スロットル開度TAの全閉を判定し、且つ機関回転速度Ne が所定以上の値であって、車速が所定値以上(例えば5Km/h以上)の時に減速と判定する。そして、F/Cを許可すると共にロックアップを解放側(LC=0)へ制御する。
【0025】
この様に制御することにより機関の回転速度Neは、ロックアップ解放によりトランスミッションのトルクコンバータ内でのスリップが生じ、車両側駆動系からの機関を回そうとする力が半減される。そして、機関回転速度NeがF/C復帰回転速度に低下された状態でF/Cが禁止され、機関回転速度Neはアイドル回転速度で安定する。したがって、機関回転速度NeのF/C回転速度に至る到達時間の早い分、F/Cゾーンは短い。
【0026】
これに対して実施例で示した制御にあっては、同図の(B)で示すようにロックアップクラッチLCは急ブレーキの判定がなければ、所定時間XNSTAL後に再締結(LC=1)される。(A)図の場合と同様に減速判定後にF/Cが許可されるものであるが、この状態ではロックアップクラッチLCが締結されているため、機関回転速度Ne は従来のようにトルクコンバータ内でスリップが生ずることがなく、マニュアルミッション車と同様にエンジンブレーキ作用によって徐々に回転速度Ne が低下する。そして、F/C復帰回転速度でF/Cが禁止されてアイドル回転速度で安定する。この場合、ロックアップクラッチLCは所定の機関回転速度(F/C復帰回転速度に連動)で解放側に制御されるもので、F/Cゾーンは(A)図に比較して広がり、燃費の低減効果が大きい。
【0027】
この様な制御は減速制御装置171 に格納された減速時制御プロセスにしたがって実行されるもので、図5はこの減速制御プロセスの流れを示している。この図で示した減速制御のベースルーチンは例えば10m秒毎に実行されるもので、ステップ301 においてアクセル開度の閉側への移行速度にしたがって減速制御を行うべきか否かを判定する減速時制御許可判定ルーチンを呼び出す。
【0028】
次に、ステップ302 において急ブレーキ操作の有無並びに連動したロックアップクラッチ操作を行う急ブレー判定並びにロックアップ操作サブルーチンを呼び出し、ステップ303 で目標スロットル開度THCMDの算出サブルーチンを呼び出す。そして、ステップ304 において目標スロットル開度THCMDをスロットル制御装置172 に出力する出力処理サブルーチンを呼び出す。
【0029】
図6はステップ301 で呼び出される減速制御許可判定サブルーチンを示すもので、このサブルーチンは10m秒毎に実行される。まずステップ401 においてアクセル開度APの10m秒毎の微分値ΔAPを求める。具体的には10m秒前のアクセル開度をBAPとした場合、“ΔAP=BAP−AP”の計算式より、アクセルの閉側への戻り速度を求める。
【0030】
ステップ402 においてはこの様にして求められたアクセル戻り速度ΔAPが負であるか否かを判定するもので、もし正と判定されたときは減速側と判定してステップ403 に進み、ΔAPを所定の値KDLTAPと比較するもので、この判定でアクセルが急操作されたかあるいは緩操作であるかが判定される。もしアクセルが急戻り操作と判定されたときは減速中と判断し、ステップ404 において減速フラグXNSTALを“1”とする。そして、次のステップ405 においてロックアップクラッチ信号LCを“0”とし、ロックアップを解放する。
【0031】
ステップ403 において緩やかなアクセル戻し操作と判定されたときは、ステップ406 において、すでにフラグXNSTALが“1”となっているか否かを判定し、“XNSTAL=1”で減速中と判断してステップ407 に進んでカウンタCNSTLをインクリメントする。ステップ408 ではこのカウンタCNSTLが所定時間KJUDに到達しているか否かを判定し、KJUDの時間経過を満足していたならばステップ409 においてフラグXNSTALを“0”とする。
【0032】
この様なステップ403 〜409 において急激なアクセル戻りによる減速中であることが判断され、所定の時間KJUDで指示された時間の間のみフラグXNSTALが“1”とされる。
【0033】
ステップ402 においてΔAPが負であると判定された場合は、アクセルペダルが開側に操作されているものと判断され、ステップ410 および411 において所定の値KDLTAP2 以上の開き速度であるか否かを判定する。もし、ΔAPがこの所定値以上と判定されたときは明らかな加速と判断し、ステップ412 において加速フラグXACCを“1”すると共に、ステップ413 および414 でそれぞれブレーキ信号検出フラグXPANICおよびカウンタCNSTLをクリアする。この様にステップ411 〜414 において、アクセル開度の操作より加速判定したときには、減速制御用のフラグおよびカウンタをクリアし、加速フラグがセットされるようにする。
【0034】
図7はステップ302 によって呼び出される急ブレーキ判定並びにロックアップ操作サブルーチンを示すもので、このルーチンも10m秒毎に実行される。まずステップ421 においては図6で説明した減速判定時にセットされるフラグXNSTALの状態に基づいて減速直後か否かを判定する。もしフラグXNSTAL=1で減速直後と判定されたときは、ステップ422 に進んで加速フラグXACCをクリアし、ステップ423 でブレーキスイッチ信号BRの状態を判定する。このステップ423 でブレーキが踏まれていないと判定されたときは、何もせずにリターンする。
【0035】
ブレーキスイッチ信号BR=1と判定されたときは、これは急ブレーキであると判断してステップ424 に進んでブレーキ信号検出フラグXPANICを“1”にセットし、さらにステップ425 でロックアップクラッチ操作指示をLC=0に設定して、ロックアップの解放操作を行う。
【0036】
ステップ421 においてフラグXNSTALが“0”と判定されたときは、ステップ426 においてブレーキ信号検出フラグXPANICの状態を判別し、もしブレーキが踏まれていると判定されたときは、ステップ425 でロックアップの解放を行う。このブレーキ信号検出フラグがXPANIC=1でセットされた後は、BR=0となってもXPANIC=0とはせず、次の加速判定XACC=1までクリアされない(図6のステップ413 参照)。
【0037】
ステップ426 においてXPANIC=0と判定されたときには、急ブレーキの発生がなかったものと判断されるもので、ステップ427 において加速判定フラグXACCを判定する。このステップ426 で加速していないと判定されたならば、ステップ428 でロックアップを締結する(LC=1)。ステップ427 で加速状態が判定されたならば、そのままサブルーチンにリターンする。
【0038】
図8はこの様な制御の流れを説明するタイミングチャートを示すもので、アクセルペダルが解放された状態でその微分信号ΔAPが発生され、減速中を判定するフラグXNSTALが“1”の状態のときにブレーキスイッチ信号BR=1が判定されたならば、このブレーキスイッチ信号が“0”になってもブレーキ判定フラグXPANIC=1の状態が、次の加速判定XACC=1となるまで維持される。そして、この加速判定フラグXACC=0の間は、LC=0としてロックアップの再締結を行わない。
【0039】
また、減速判定フラグXNSTAL=1の状態中において、ブレーキスイッチ信号BR=1の判定がなければ、減速判定フラグXNSTAL=0となるときに同期してLC=1とし、ロックアップの再締結が行われるようになる(ステップ426 〜428 )。
【0040】
図9はベースルーチン303 において呼び出される目標スロットル開度THCMDの算出サブルーチンを示すもので、このルーチンも10m秒毎に実行される。まずステップ431 において減速判定フラグXNSTALの状態をみて減速状態にあるか否かを判定する。このステップ431 でXNSTAL=0が判定され、減速直後ではないと判断されたときは、ステップ432 でカウンタCAPをクリアすると共に、ステップ433 でそのときのアクセル開度APを、目標スロットル開度THCMDとして記憶させる。
【0041】
ステップ431 において減速直後(XNSTAL=1)と判定されたときは、ステップ434 においてCAP=0の関係にあるか否かを判定するもので、XNSTAL=1となった後初めてステップ434 を通過するのか否かを判定する。もし初めてであるならば、ステップ435 において減速判定フラグXNSTALが0から1となったときのアクセル開度AP、すなわち減速判定に同期したアクセル開度APをMAPという記憶装置に格納する。ステップ434 でCAP=1の関係が判定されたときは、ステップ435 をバイパスしてステップ436 に進み、カウンタCAPをインクリメントする。
【0042】
次のステップ437 においては、ブレーキ判定フラグXPANIC=1であるか否かを判定し、ブレーキが踏まれていないと判定されたときはステップ438 でステップ435 でMAPに記憶した減速判定時のアクセル開度を目標スロットル開度THCMDとしてセットする。
【0043】
すなわち、減速判定フラグXNSTAL=1によって減速が判定されると、急ブレーキの操作がされないときはXNSTAL=1の区間(KJUD時間分)はスロットル開度TAがMAPの値に維持される。そして、XNSTAL=0に同期してそのときのアクセル開度APにスロットル開度TAを戻す。
【0044】
もし、減速判定フラグXNSTAL=1のときに急ブレーキが踏まれると、ブレーキ判定フラグXPANIC=1に同期して直ちにアクセル開度APにスロットル開度TAを戻すものであり、もし減速判定されていなければ、アクセル開度APと同じ値でスロットルTAを操作する。
【0045】
この様にして図3で示した減速領域におけるロックアップ操作を行い、通常の減速状態においてはロックアップの締結による燃費の向上を図り、急ブレーキが踏まれた場合にはロックアップの解放とスロットル操作の遅延によって、エンストの回避を行うようになる。
【0046】
なお、実施例においてはアクセル開度APの微分値ΔAPの値に基づいて減速を判定しているが、これはスロットル開度の微分値に基づいて減速判定を行うようにしてもよい。また内燃機関の回転速度の低下の微分値、あるいは車両の車輪速低下の微分値によって減速を判定することもできる。
【0047】
また急ブレーキの判定をブレーキスイッチ信号BRによって行っているが、これも内燃機関の回転速度、車輪速の低下の微分値によって急ブレーキ判定を行うようにしても同様に実施できる。さらに、急ブレーキの有無を判定する区間、つまりフラグXNSTAL=1の状態の区間は、KJUDの固定値に設定されているが、内燃機関の運転状態や車両の運転状態に対応して可変するようにしてもよいもので、この様にすればより正確な制御並びに制動距離の管理が行える。
【0048】
【発明の効果】
以上のようにこの発明に係る車両制御装置によれば、急激な制動装置によるパニックブレーキが行われたような場合においても、確実に内燃機関を用いた制動制御が行われるもので、減速時におけるブレーキ入力の判定等に基づいて、オートマチックトランスミッションのロックアップを解除した上でスロットル制御を行うことで機関出力を低下させ、走行中におけるパニックブレーキに際してもエンストの発生が確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る車両制御装置を説明する構成図。
【図2】上記実施例の制御部の説明する構成図。
【図3】(A)および(B)は定常時および急ブレーキ時における動作状態を説明するタイミングチャート。
【図4】(A)および(B)はそれぞれ従来の制御状態および実施例における制御状態を対比して示すタイミングチャート。
【図5】この実施例の減速時プロセスの制御ルーチンを説明する図。
【図6】この制御ルーチンにおける減速制御許可判定サブルーチンを説明するフローチャート。
【図7】同じく急ブレーキ判定サブルーチンを説明するフローチャート。
【図8】このサブルーチンを説明するタイミングチャート。
【図9】前記制御ルーチンの目標スロットル開度算出サブルーチンを説明するフローチャート。
【符号の説明】
11…内燃機関、12…オートマチックトランスミッション、121 …ロックアップクラッチ、124 …車速センサ、13…回転数センサ、14…スロットル弁、15…スロットルアクチュエータ、16…スロットル開度センサ、17…制御装置、19…アクセル開度センサ、20…ブレーキスイッチ、21…燃料噴射弁、171 …減速制御装置。
Claims (1)
- 内燃機関の動力を車輪に伝達するオートマチックトランスミッションと、
アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測するアクセル開度計測手段と、
ブレーキペダルの踏み込み操作点を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記内燃機関の回転速度を計測する回転速度計測手段と、
前記アクセル開度計測手段からの計測情報に基づいて急激なアクセル閉じ動作を検出するアクセル閉じ検出手段と、
前記アクセル閉じ動作から所定時間範囲の判定区間を設定する減速制御判定区間設定手段と、
前記判定区間内で前記ブレーキ操作検出手段からの出力を監視し、前記判定区間内でのブレーキオン点を検知するブレーキオン点検出手段と、
前記アクセル閉じ検出に伴って、前記オートマチックトランスミッションのロックアップを解放制御すると共に、前記判定区間の終了に伴い前記解放されたロックアップを結合制御し、前記ブレーキオン点の検出に伴い前記ロックアップの解放状態を継続させるロックアップ制御手段と、
前記ブレーキオン点検出手段からの検出信号に基づいてスロットル開度を制御するスロットル制御手段とを具備し、
ブレーキ操作を伴う急制動時に、前記ロックアップが解放状態に保持されるようにしたことを特徴とする車両制御装置。
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