JP3674394B2 - 両歯型スクロール流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮作動室の容積を減じながら気体を圧縮する旋回運動形容積式圧縮機であって、特に渦巻状に構成されたスクロール部材によって三日月状の圧縮室が旋回スクロールの両面に形成される両歯型スクロール圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクロール圧縮機は、鏡板に渦巻状のラップを直立して設けた2つのスクロール部材を互いに噛み合わせて、一方のスクロール部材を他方のスクロール部材に対して自転しないように拘束しながら相対的に旋回運動させ、スクロール部材の外周部から中央部に向かって気体を圧縮させている。この種のスクロール圧縮機において、スクロールラップによって形成される圧縮室内の気体の圧力によって旋回スクロールと固定スクロールとが相互に離反する力を受ける構造のものや、旋回スクロール鏡板の両面にラップをなしそれぞれの面に圧縮作動室を形成して圧縮機体によるスラスト力をキャンセルさせる構造のものがある。
【0003】
特開平5−52189号公報には後者の技術が記載されている。この従来技術には、固定スクロールの間に配置され両歯を持った旋回スクロールと、この旋回スクロールの外周部に2本の駆動軸が設けられ、これら駆動軸は両固定スクロールに設けられた軸受によって回転可能に軸支されている。さらに、これら駆動軸はその端部に歯車が設けられていて、電動機軸に設けられた歯車と噛み合うように配置され、電動機軸が回転することで両駆動軸すなわちクランク軸が回転するようになっている。旋回スクロールはこれら駆動軸の偏心部と係合しており、このクランク軸の回転によって駆動され、旋回スクロールが一定の半径で旋回運動するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術では、旋回スクロールが2個の並行に配置された固定スクロールに挟まれた状態で構成され、2本の旋回スクロール駆動用クランク軸がそれぞれ固定スクロールに転がり軸受を介して軸支されている。また、一般的に、固定スクロールに設けた2個の軸受の中心間距離及び旋回スクロールに設けた2個の軸受の中心間距離は、旋回スクロールの安定運動を達成するためや軸受の信頼性を高く保つために、互いに等しくなるように構成されている。上記従来技術においても、2個の固定スクロールが平行に配置されているので、固定スクロール同士で見ても、2個の軸受の中心間距離も同様に等しく構成されている。
【0005】
一方、従来のスクロール流体機械を圧縮機として運転すると、機械本体はもちろん、スクロールの中心部が圧縮熱によって高温になる。また、スクロール流体機械は原理的に固定スクロールと旋回スクロールが互いに接触(鏡面やスクロール同士、非接触が望ましいが原理的に困難)して圧縮・膨張を行うものであるため摩擦熱によってもスクロールは高温になる。このため、固定スクロール間に配置された旋回スクロールが熱膨張して半径方向に伸びてしまう。固定スクロールも熱膨張するが、外面に接しているため、全体的に加熱されやすい旋回スクロールに対して熱膨張量が相対的に小さい。
【0006】
この結果、固定スクロールに設けた2個の軸受の中心間距離と旋回スクロールに設けた2個の軸受の中心間距離とが互いに変化し、これら2個の中心間距離はもはや等しくなくなってしまい、両方の駆動軸には旋回スクロールの遠心力やガス圧縮力に加えて相対熱膨張量に見合った負荷荷重が作用することになる。この負荷荷重は両方の駆動軸間の距離を押し広げる方向(2個の駆動軸には半径方向外向き)に作用するので、駆動軸がスムーズに回転できなくなってしまう。駆動軸がスムーズに回転できなくなると、圧縮機の静寂な運転が損なわれるばかりでなく、旋回スクロールの2個の軸受の中心間距離における相対熱膨張量差が極端に大きくなると、もはや圧縮機は正常な運転を行うことができなくなる。
【0007】
また、スクロール流体機械の上記熱膨張の影響がなくなるように十分に冷却を施すと、このスクロール流体機械を用いた圧縮気体製造装置が大型化するという不具合を生じる。
【0008】
本発明の目的は、熱による膨張があっても正常な運転が可能な両歯型スクロール流体機械を実現することにある。また、本発明の他の目的は、小型軽量を実現した両歯型スクロール流体機械を実現することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の基本的な手段は一対の固定スクロールと旋回スクロールとの相対熱膨張差を吸収する構成としたことにある。
そして、本発明の具体的特徴は、鏡板の両側に渦巻状のスクロールラップを有する旋回スクロールと、この旋回スクロールの両側に配置され、旋回スクロールのラップと噛み合うラップを有する1対の固定スクロールと、この固定スクロールに取付けられ同期して回転する複数の駆動軸とを備えた両歯型スクロール流体機械において、複数の駆動軸は各々クランク部を有し、このクランク部により旋回スクロールを旋回運動させ、旋回スクロールの延びを駆動軸の並び方向に許容する手段を複数の駆動軸の少なくとも一方の軸のクランク部に備え、かつ前記一対の固定スクロールの少なくとも一方の外面には、駆動軸の並び方向に固定スクロールが延びるのを拘束しないように複数の冷却フィンが設けられ、前記複数の冷却フィンは、駆動軸の並び方向にほぼ直交する方向に形成されていることにある。
【0010】
スクロール流体機械を例えば圧縮機として運転中、旋回スクロールや固定スクロールは、上述の如く、旋回スクロールの方が大きい度合いで熱膨張する。このスクロール流体機械における旋回スクロールは、固定スクロールに設けられ同期して回転する複数の駆動軸に設けられたクランク手段によって旋回する構造となっている。旋回スクロールと固定スクロール間で熱膨張差が発生すると、駆動軸の並び方向に対して直角な方向には、後述するように、設計時に熱膨張を許容する範囲で余裕を見ているので不具合は生じない。しかし、駆動軸の並び方向については、固定スクロールに回転自在に取り付けられた駆動軸が膨張を規制する方向に働くので、旋回スクロールの膨張によって駆動軸を撓ませてしまう。
【0011】
本発明では、旋回スクロールが駆動軸の並び方向に延びるのを許容する手段を備えたので、旋回スクロールと固定スクロールとの膨張バランスが崩れて旋回スクロールがより膨張したとしても駆動軸の並び方向の延びが許容されるので駆動軸への負担が軽減され、駆動軸の回転が妨げられない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図1に示す両歯型スクロール形流体機械を用いたオイルフリー式空気圧縮機の構造を表す断面図を用いて説明する。自己潤滑性を高めるためアルミニウム合金で形成された固定スクロール1と固定スクロール2が平行に配置されておりその間に同じくアルミニウム合金で形成された旋回スクロール3がそれぞれの固定スクロールに噛み合って、旋回スクロール3の鏡板3aの両側に圧縮作動室14と15を形成している。
【0013】
固定スクロール1及び2、旋回スクロール3のそれぞれのラップ先端部には潤滑性を高めるためカーボン等の無機系材料や4フッ化エチレン樹脂やポリイミド樹脂の複合材料で形成されたチップシール1d,2d,3d,3eが設けられている。旋回スクロール鏡板3aには上側圧縮作動室14と下側圧縮作動室15に連通する複数の連通孔31と、中央部には流路8(図3に図示)が設けられている。旋回スクロール3の鏡板外周部にはクランク部を有する駆動軸4と同じ偏心量のクランク部を有する補助クランク軸5とが旋回スクロール3を挟むように配置されており、旋回スクロール3は補助クランク軸5のクランク部分で弾性支持部32を有する転がり軸受11bと駆動軸4のクランク部で転がり軸受11aを介して回転可能に係合している。
【0014】
一方、固定スクロール1はそのほぼ中央部に吐出ポート9と外表面全体に不連続的に設けられた放熱フィン1cがあり、さらに、固定スクロール1の外周部にはフランジ部1eがある。他方、固定スクロール2もその外表面に固定スクロール1に設けた物と同様な構造の放熱フィン部2cを有し、外周部にはフランジ部2eが配置されている。そして、互いの固定スクロール1と2がこのフランジ部1e、2eにおいてボルト18等によって結合されている。結合の際、両固定スクロールの相対位置を合わせる位置決め手段16(例えば図9に示したようなノックピン28b)によって、両固定スクロール1,2同士ならびに旋回スクロール3との位置関係が適正に保たれて組み立てられている。
【0015】
駆動軸4は一部分を固定スクロール2に固定された転がり軸受10aによって軸方向に固定された状態で軸支されており、駆動軸4の先端部は他方の固定スクロール1に固定された軸受12aに回転可能に係合されている。さらに、駆動軸4にはバランスウエイト17a、17bが、また補助クランク軸5にもバランスウエイト17c、17dが吸込雰囲気中に配置固定されている。他方、駆動軸4とは対称の反対側に位置している補助クランク軸5も同様に固定スクロール2に固定された転がり軸受10bによって軸方向に固定された状態で軸支されており、補助クランク軸5の先端部は他方の固定スクロール1に固定された軸受12bに回転可能に係合されている。駆動軸4にはプーリ6が設けてあり、他に設置した動力源から動力伝達手段によって回転動力が供給されるようになっている。さらに、駆動軸4と補助クランク軸5とはタイミングベルト7によって回転の同期性を保つように連結されている。
【0016】
気体の吸入口19は一例として図9に示すように駆動軸4とは直交する方向で両固定スクロールに跨って設けられている。またその反対の下側には圧縮機据付け用の足部(架台)30が配置されている。前記したように固定スクロール1,2及び旋回スクロール3はそれぞれアルミニウム合金等に代表されるように軽くて、熱伝導性の良い材料で構成することができる。また、無潤滑式圧縮機を提供するために特にシリコンが含有されたアルミニウム合金を適用することもできる。さらには、スクロールラップ表面には、ラップ同士の接触時の潤滑性を向上させるため陽極酸化皮膜等の表面処理を施すこともできる。旋回スクロールを固定スクロールに比べて熱膨張係数の小さい材料とする。
【0017】
図2は他の一実施例を示したものである。図1に示した実施例と異なる点は、駆動軸4に係合した軸受11aと旋回スクロール3との間に弾性体21を配置したことである。
【0018】
スクロール形圧縮機は、固定スクロールに対して旋回スクロールが高速に回転する構造であるため、摩擦熱によって各部が高温になる。各部を冷却するため通常潤滑油を用いているが、吐出ポート9から吐出される圧縮ガス中に油も混ざるため圧縮ガスの用途によっては油が不純物となり適当でない場合がある。このためスクロールのラップやチップシールを、前記の如く、自己潤滑性のある材料で形成してオイルフリーを実現する。
【0019】
摩擦が減少したと言えども摩擦熱は発生しており、また、吐出ポート9から吐出される圧縮空気は高温(200℃〜230℃)であるため、冷却が十分でないと圧縮機が熱膨張を起こしてしまう。この熱膨張が固定スクロールと旋回スクロール共に同程度に起これば問題がないのであるが、固定スクロールは外気に接しており、一方旋回スクロールは外気に触れていない分温度が上昇する。実測値で示すと、固定スクロールが160℃まで上昇するのに対して、旋回スクロールは160℃〜230℃まで上昇してしまう。この結果、駆動軸4と補助駆動軸5との軸間長が280mmの場合、旋回スクロールの延びが固定スクロールの延びに対して相対的に0.1mm〜0.15mm延びることが観測された。
【0020】
旋回スクロールの熱膨張は全方向に渡って発生する。この熱膨張によって、互いのラップ側面が衝突し、円滑に回動しなくなってしまう。この実施例では、この問題を回避するため旋回スクロールの旋回半径を、固定スクロールの歯形から決まる理論値よりも小さくしている。両駆動軸のクランク部の偏心量にオフセットを設け旋回スクロールの旋回半径が理論値よりも小さくなるようにしている。従って、図8に示すように、圧縮機組立て状態、すなわち、冷えている状態ではラップ側面にすきまが生じるようになっている。このため、旋回スクロールの全方向の熱膨張に対しても、ラップ側面が衝突(接触)することなく運転が可能となる。
【0021】
旋回スクロールの熱膨張を阻害するものがなければ偏心量にオフセットを設けることで何らの問題もないのであるが、図1に示されているように、駆動軸4及び補助駆動軸5は固定スクロール1に軸支されており、旋回スクロール2はこれら駆動軸にクランク部を介して支持されている。このため、旋回スクロール2の熱による駆動軸同士の軸線方向の膨張は両駆動軸により阻害されてしまう。一方、旋回スクロール2の駆動軸同士の軸線方向以外(軸線に垂直方向)の膨張は上記した偏心量のオフセットにより妨げられない。
【0022】
さて、本実施例では、駆動軸同士の軸線方向の膨張を許容する手段として、弾性支持部32や弾性体21を設けたので、旋回スクロールが膨張しても膨張が規制されることがなくスクロールの運転に支障を来すことがない。
【0023】
次に、図1ならびに図2における構成の圧縮機についてその動作を説明する。プーリ6に回転動力が伝達されると駆動軸4が回転し、さらに補助クランク軸5はタイミングベルト7によって駆動軸4と同期して回転する。すると、旋回スクロール3も同時に駆動軸4や補助クランク軸5の偏心量を半径とする旋回運動がもたらされる。その結果、気体は吸入口19から吸入され吸入室13に入る。その後、気体はさらに旋回スクロール鏡板3aの上側の圧縮作動室14や旋回スクロール鏡板3aの下側の圧縮作動室15に流入しそれぞれ所定の圧力まで圧縮される。
【0024】
圧縮作動室15で圧縮された気体は最終的に鏡板3aの中央部に設けられた連通孔8を通って上側の圧縮作動室14の中心部の吐出空間に流入し、旋回スクロール鏡板上側の圧縮作動室14で圧縮された気体と合流し、固定スクロール1に設けられた吐出ポート9から機外へ流出する。圧縮動作中、圧縮作動室には潤滑油がほとんど無いため圧縮熱の発生が盛んになるが、この熱は固定スクロール外表面に設けた放熱フィン1c、2cの回りをダクト構造として強制空冷することによって効果的に除去される。従って、旋回スクロールや固定スクロールは適当な温度に保たれる。
【0025】
また、連通孔3Cにより鏡板上下の圧縮作動室内のガスのスラスト力の総和がほぼ等しくなるので、ラップの先端面には大きなスラスト荷重は作用しない。従って、ラップ先端部での摺動損失を最小に維持することができる。さらには、旋回スクロール3に働くスラスト力がほぼバランスしているため、旋回スクロール3を支持する軸受11の位置決め手段を簡素化でき組立性の改善を図ることができる。そして、この実施例では補助クランク軸5と旋回スクロールに設けた軸受11bの間に設けた弾性体32が旋回スクロールと固定スクロールとの熱膨張差を吸収して、旋回スクロールの軸受中心間距離と固定スクロールに設けた軸受中心間距離を運転中ほぼ等しく保つことができる。図2に示した実施例では、駆動軸4と旋回スクロールに設けた軸受11aとの間に設けた弾性体21が旋回スクロールと固定スクロールとの熱膨張差を吸収して、旋回スクロールの軸受中心間距離と固定スクロールに設けた軸受中心間距離を運転中ほぼ等しく保つことができる。
【0026】
ちなみに、吐出圧力が0.5Mpa以上の高い圧力を出力する圧縮機は、圧縮機容量では数馬力以上の大きな圧縮機であり、圧縮機容量が大きいとスクロール形状が大きくなり旋回スクロールも大きくなり、運転中に発生する遠心力が大きくなる。従って、運転中の旋回スクロールの遠心力を小さくするためにはスクロールの軽量化が必要で材質をアルミニウム合金等の軽量材を利用することになる。さらには、固定スクロールの熱膨張量を旋回スクロールと出来るだけ合わせるためや、圧縮機全体の軽量化を図るため、両固定スクロールの材質も旋回スクロールと同じアルミニウム合金等の軽量材を利用することになる。
【0027】
次に、旋回スクロール3の弾性支持方式についての他の実施例を図3〜図6に従って説明する。図3は図2の実施例において、旋回スクロール3を取りだして平面図で示したものである。流路8はスクロールのほぼ中央部に設けられており、連通孔31は、スクロールラップ3b間のほぼ中央部で約180度おきに複数個設けられている。軸受11aは駆動軸4側に設けられた転がり軸受であり、旋回スクロール3との間に弾性部材21を配置している。
【0028】
図4と図5はこの弾性部材の一実施例を示したものであり、図4は図3のx−x’断面を示したもので図5は図3のy−y’断面を示したものである。図4では転がり軸受11aの周りに外周部が波形の形状をしたゴムを配設したもので、旋回スクロール3との間には若干の隙間22が構成されるようになっている。一方、図5では転がり軸受11aの周りに配設したゴムの外周部は直線的になっている。図4に示した波形の部分は図3のx−x’を基準として円周方向にプラスマイナス約30から60度の範囲で構成されている。同様に図5に示すような直線的な部分もある一定の範囲に渡って形成されている。
【0029】
このように構成することにより、二つの軸受間距離は、両軸受中心間を結ぶ方向に変位しやすくなっている。従って、旋回スクロール3が熱膨張したときには軸受11aはx方向に変位しやすく、y方向には変位を拘束されやすくなっている。y方向に変位しにくくしている理由は、旋回スクロールの自転を防止するためである。弾性部材としては、この他に、弾性作用を有するリング状の高分子(ゴム性)を適用することができる。この場合、作用する負荷荷重を考慮して、軸受の周囲に複数本配置することもできる。
【0030】
次に、さらに他の実施例を図6に従ってこの実施例特有の技術について説明する。旋回スクロール3の駆動軸側に周方向には移動できないように規制され両軸受を結ぶ方向に移動できる補助軸受箱24を配置したものである。本実施例では一例として角形溝23を形成しその中に板バネ等の金属性バネ21bとと共に軸受11aを固定した補助軸受箱24を配置したものである。本実施例では、金属性バネ21bが弾性変形して二つの軸受間距離を調整できるようになっている。また本実施例では弾性部材21の変位方向がより規制されるようになっているのでx方向(駆動軸同士の軸線方向)にのみ移動可能で、y方向(駆動軸同士の軸線に対して垂直方向)に対して規制されるため、旋回スクロール3の安定運動が達成できる。
【0031】
また、前記した実施例に比べ、弾性体を金属性としたので長期に渡って劣化することがなく、また、軸受11aが補助軸受箱に固定されているので、姿勢が一定であり、負荷の作用点と、軸受の転動面がほぼ一定となるので、軸受として正しい使い方ができるため高い信頼性が得られる。
【0032】
次に、さらに他の実施例を図7に従って説明する。本実施例は旋回スクロール3の駆動軸同士の軸線方向の膨張を許容するため、補助クランク軸5を支持する固定スクロール1に設けた軸受12bと固定スクロール2に設けた軸受10bを弾性部材33、34を弾性支持したスクロール圧縮機を示したものである。この場合には、旋回スクロール3と固定スクロール1,2との熱膨張差を固定スクロール側で吸収させようとするものである。弾性支持部材としては、前記したようにゴムなどを適用したり、金属性バネを適用することもできる。このようにすることにより、クランク部に弾性体を設けるよりもメンテナンスが容易となる。固定スクロール1,2側であるので、ねじを取り外すだけで弾性体を取りだし交換することができる。
【0033】
以上は旋回スクロール3の膨張を許容する実施例を説明したが、固定スクロール1,2も極力旋回スクロール3の膨張に追従する方が好ましい。固定スクロールには全体の温度を下げるため冷却フィン1c,2cが取り付けられている。このフィンがないとかえって熱膨張差を増大させることになる。この冷却フィンは、従来、端から端まで1枚のフィンが複数の駆動軸同士を結ぶ線に並行に配列されていた。しかし、この配列では、固定スクロールが駆動軸同士の軸線方向に延びることを妨げてしまう。この点を解決する実施例を、図9から図11を用いて説明する。
【0034】
これらの実施例は放熱フィンの構成によって、圧縮機全体を効果的に冷却すると共に二つの軸受を結ぶ方向に熱膨張しやすくさせるもので、これによって旋回スクロール3との熱膨張差を小さくさせる狙いである。固定スクロールに設けた前記放熱フィンが固定スクロールの熱膨張を拘束しないように二つの軸受を結ぶ方向には不連続に構成したり、前記方向とは直角方向に構成したりさらには、放射状に構成するなどして放熱フィンを配置したので、固定スクロール外表面に設けたフィンは効果的に圧縮機本体を冷却しながらフィン自身が固定スクロールの熱膨張を阻害することは少なく、固定スクロールは少なくとも二つの軸受を結ぶ方向には熱膨張しやすくなっているため同方向の旋回スクロールの熱膨張量との差が非常に少なくなる。以下順に実施例を説明する。
【0035】
図9は、図7においてM−M’から見た矢視図である。スクロール圧縮機は上部に吸入口19が配置され、下部には架台30が設けられている。図示したようにフィン2cは軸受カバー29a,29bの部分を除いて圧縮機表面全体に配置させている。固定スクロール1はフランジ部2eに設けたボルト18によって互いに固定されているが、この時の両固定スクロールの相対位置はノックピン28aによって規制されている。本実施例は、二つの軸受10a、10bを結ぶ方向にフィン2cを配列させ、冷却風をこのフィン2cに沿って流して圧縮機を冷却させるものである。これらのフィン2cは、二つの軸受10a、10bを結ぶ方向に複数個に分割しているため、直線上に長いフィン構造としたものに比べ固定スクロール2の両軸受を結ぶ方向の熱膨張を拘束しないようになっている。
【0036】
図10は、放熱フィンを放射状に構成したものであり、冷却風は紙面垂直方向上部から中央部に向けて吹き付けるようにし、フィンに沿って流すようにしたものである。本実施例では、冷却されたフィンが固定スクロールの両軸受10a、10bを結ぶ方向の熱膨張を拘束しないようになっている。この実施例では、固定スクロールの鏡板面に対してフィンが圧縮作動室内部の圧力に対する補強部材の役目がなされるようになる効果がある。すなわち図9に示した実施例では軸線に沿って折られる力に対して構造上弱い。さらに、冷却風が圧縮機の高温部にまず最初に供給されるので、圧縮機の冷却効果が大きくなるという効果があり、圧縮機全体の熱膨張量が小さくなる効果があり、旋回スクロール3と固定スクロールとの相対的な熱膨張差が小さくなって各軸受の負荷荷重を小さくすることが出来る。
【0037】
図11はさらに他の実施例を示したものであり、フィン2cを軸受10a、10bを結ぶ方向とは直角方向に配置させたことにある。これにより、フィン2cは冷却されて図中上下方向の熱膨張を拘束するが、反対に両軸受10a、10bを結ぶ方向に固定スクロール2を熱膨張しやすくしているものである。冷却風は当然フィン2cの配列している上下方向に流れるもので効果的に圧縮機全体を冷却することができる。
【0038】
以上図9から図11の実施例について片側の固定スクロールについてのみ説明したが基本的には一対の固定スクロールは同じ形状のフィンを配置させているが、一方の固定スクロールには中央部に吐出ポート9があるため、場合によっては両方の固定スクロールが互いに異なるフィン配置を適用することもできる。
【0039】
次に、駆動軸の並び方向に旋回スクロールが膨張することを許容する他の実施例を図12から図17に基づいて説明する。本実施例は、旋回スクロール3を複数分割し、分割面それぞれに凹部と凸部を設けて互いに嵌め合わせて一体化させ、嵌合部を軸受を結ぶ方向に移動可能なごとく構成させて、軸受中心間距離を変化できるようにしたものである。この結果、旋回スクロールの熱膨張を吸収して駆動軸や補助クランク軸には過大な負荷荷重が作用するのを防止することができる。
【0040】
図12は、図13と図15を一体化して旋回スクロールを構成したもので組立て状態においては、互いの合わせ面には隙間40,41が構成された状態で二つの軸受け間距離が図1に示したような固定スクロールの軸受間距離にほぼ等しい状態になっている。従って、運転時に旋回スクロール3が熱膨張すると隙間40,41が小さくなって、軸受に過大な荷重が作用するのを防止できる。図14は図13の側面図であり、嵌め合い部は図13に示した凸部3a2は直方体に形成されている。一方、図16は図15の側面図であり、凹部3a4は前記した凸部3a2の直方体にほぼ同じ直方体形の空間になっているが、凸部3a2の突出し長さは凹部3a4の深さより短く形成されている。従って、この嵌め合い部では、両軸受を結ぶ方向と直角の方向には動きが拘束され、並行する方向にのみ移動できるようになっている。
【0041】
図17は、他の実施例を示したものであり旋回スクロール3をスクロール部分3a5と駆動軸受側3a6そして補助クランク軸受側3a7とに3分割して構成したものである。本実施例でも互いの分割部は前記実施例と同じ考え方の継ぎ手手段で構成しても良い。ただし、継ぎ手部の隙間40は片側だけに設けることができるが、両方の継ぎ手部に設けることもできる。
【0042】
以上の実施例によれば、旋回スクロールが複数部に分断されこの分断部が軸受中心間距離だけを調節できるように構成されているので、安定した旋回運動を達成しながら固定スクロールと旋回スクロールとの熱膨張差を好適に吸収することができる。従って、上記したこれらの方策により圧縮機運転中にそれぞれのスクロール部材が熱膨張しても前記の如く軸受を弾性支持した時と同様に駆動軸には過大な荷重が作用せず、旋回スクロールの安定運動を達成すると共に駆動軸や軸受の信頼性を高く保ち圧縮機の寿命やメンテナンス時間の延長を図ることができる。
【0043】
さらに、材料について、図1に従って説明する。圧縮機運転中の温度は旋回スクロール3の方が高くなるので相対的な熱膨張差を小さくするため旋回スクロール3に固定スクロール1、2より熱膨張係数の小さな材料を適用することもできる。これによって、固定スクロールと旋回スクロールとの熱膨張差が小さくでき、軸受に対する負荷を軽減することができる。
【0044】
次に、圧縮気体製造装置の一実施例について図18により説明する。モータベース59に固定されたモータ51と圧縮機50(上記説明したスクロール流体機械)は動力伝達手段52によって連結されている。圧縮機50の吸い込み側には、サクションフィルタ53と圧縮機の容量制御を行うためのアンローダ54が配置されている。圧縮機50の吐出側には逆止弁55が配置され、圧縮機50の停止時などに高圧気体が逆流するのを防止するようになっている。逆止弁55に続き吐出配管57を配置している。圧縮機50ならびに吐出配管57の一部には外表面にフィンが設けられていて、圧縮機50及び吐出気体は冷却ファン56によって効果的に冷却されるようになっている。
【0045】
圧縮機50の運転ならびに運転制御を行うための電気品58が装備されていて、ここに電源を供給することにより圧縮機50の運転が達成されるようになっている。そして、これらをまとめて架台60に乗せられ、さらに箱体62内に収納して一つの圧縮気体製造装置を構成している。また、この箱体62の中には圧縮気体中の水分を除去するためのドライヤー61を備える場合もある。さらに、圧縮機50とモータ51の駆動軸に設けられたプーリーの大きさを種々変えることにより圧縮機の出力を容易に変えることもできる。
【0046】
このように圧縮機をオイルフリーのものとすることにより、従来必要であった油タンク、オイルクーラー、オイル循環用ポンプ及びポンプ用制御装置が必要なくなりコンパクトなオイルフリーの高圧気体を提供できる製造装置を実現することができる。ここに用いられた圧縮機は上記幾多の実施例にて説明した旋回スクロールの膨張を許容するものを用いていることは言うまでもない。また、箱体62には防音、防振手段を設けることにより圧縮機運転中でも静寂な圧縮気体製造装置を提供できる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、スクロール流体機械の安定運動を達成できると共に、振動騒音の小さな両歯型スクロール流体機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す両歯型スクロール圧縮機の全断面図。
【図2】本発明の他の一実施例を示す両歯型スクロール圧縮機の全断面図。
【図3】本発明の一実施例で旋回スクロールを示す平面図。
【図4】本発明の一実施例で旋回スクロールの軸受部を示す図3のx−x’断面図。
【図5】本発明の一実施例で旋回スクロールの軸受部を示す図3のy−y’断面図。
【図6】本発明のさらに他の一実施例で旋回スクロールを示す平面図。
【図7】本発明のさらに他の一実施例を示す両歯型スクロール圧縮機の全断面図。
【図8】熱膨張を考慮したスクロールの説明図。
【図9】本発明のさらに他の一実施例で固定スクロールの側面図(例えば図7のM−M’矢視図)。
【図10】本発明のさらに他の一実施例で固定スクロールの側面図(例えば図7のM−M’矢視図)。
【図11】本発明のさらに他の一実施例で固定スクロールの側面図(例えば図7のM−M’矢視図)。
【図12】本発明のさらに他の一実施例で旋回スクロールを示す平面図。
【図13】本発明のさらに他の一実施例で旋回スクロールの1部を示す平面図。
【図14】図13の側面図。
【図15】本発明のさらに他の一実施例で旋回スクロールの1部を示す平面図。
【図16】図15の側面図。
【図17】本発明のさらに他の一実施例で旋回スクロールを示す平面図。
【図18】本発明の一実施例を示す圧縮気体製造装置で箱体の1部をはずして示した正面図。
【符号の説明】
1……固定スクロール、2……固定スクロール、
3……旋回スクロール、3a……鏡板、
4……駆動軸、5……補助クランク軸、
6……プーリ、7……タイミングベルト、
8……流路、9……吐出ポート、
10、11、12……軸受、
13……吸入室、14、15……圧縮作動室、
17……バランスウエイト、18……ボルト、
19……吸入口、21……弾性体、
22……導入孔、24……スライダ、
28……位置決め手段、31……連通孔、
33、34……弾性体、40、41……隙間、
50……圧縮機、51……モータ、
52……ベルト、53……吸い込みフィルタ、
55……逆止弁、56……冷却ファン、
57……吐出配管、58……電気品、
60……架台。
Claims (1)
- 鏡板の両側に渦巻状のスクロールラップを有する旋回スクロールと、この旋回スクロールの両側に配置され、旋回スクロールのラップと噛み合うラップを有する1対の固定スクロールと、この固定スクロールに取付けられ同期して回転する複数の駆動軸とを備えた両歯型スクロール流体機械において、
前記複数の駆動軸は各々クランク部を有し、このクランク部により前記旋回スクロールを旋回運動させ、該旋回スクロールの延びを前記駆動軸の並び方向に許容する手段を前記複数の駆動軸の少なくとも一方の軸のクランク部に備え、かつ
前記一対の固定スクロールの少なくとも一方の外面には、駆動軸の並び方向に固定スクロールが延びるのを拘束しないように複数の冷却フィンが設けられ、前記複数の冷却フィンは、駆動軸の並び方向にほぼ直交する方向に形成されている
ことを特徴とする両歯型スクロール流体機械。
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