JP3674175B2 - 自動車の車体下部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車体下部構造、とりわけ、フロア骨格部材であるリヤサイドメンバとサイドシル、およびリヤシートクロスメンバとの結合部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動車の車体下部構造としては、リヤシートクロスメンバの端部をサイドシルのシルインナに突き合わせて接合し、リヤサイドメンバの前端部の前縁をこのリヤシートクロスメンバに突き合わせて接合すると共に、該前端部の車外側の側部を湾曲してリヤホイールハウスインナの前方に廻り込ませてシルインナに突き合わせて接合し、そして、前記リヤシートクロスメンバとリヤサイドメンバ前端部およびシルインナとが集合した隅角部にタイダウンブラケットを接合配置したものが知られている(特開平4−59490号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、リヤシートクロスメンバとリヤサイドメンバの前端部およびシルインナとが集合した結合剛性の高い隅角部にタイダウンブラケットを接合配置して、タイダウン剛性を高めると共に、このタイダウンブラケットによって、これらリヤシートクロスメンバ,リヤサイドメンバおよびシルインナの結合剛性をさらに高められるようにしてあっても、リヤサイドメンバの車外側の側壁はリヤホイールハウスインナの前方に廻り込むように湾曲してシルインナに突き合わせて接合してあるため、後面衝突時にこの湾曲した車外側の側壁とシルインナとの接合部に応力が集中し易い傾向にあり、この応力集中に対抗するためには専用の補強部材を前記接合部に別途設ける必要がある。
【0004】
そこで、本発明は専用の補強部材を用いることなく、フロア骨格部材であるリヤサイドメンバとシルインナ、およびリヤシートクロスメンバの結合剛性を全体的に高めることのできる自動車の車体下部の結合構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1にあっては、フロアパネル下面に車幅方向に接合配置したリヤシートクロスメンバの両端部を、該フロアパネルの両側縁部に前後方向に接合配置したサイドシルのシルインナの側面に接合し、かつ、底壁と左右両側壁とを備えて該フロアパネル下面に前後方向に接合したリヤサイドメンバの前端部を、その車外側の側壁を湾曲してリヤホイールハウスインナの前方に廻り込ませて配置し、該前端部を前記リヤシートクロスメンバおよびシルインナの側面に接合し、前記車外側の側壁の湾曲した部分とシルインナとで成す隅角部に、底壁にフック係合孔を有するタイダウンブラケットを、これらリヤサイドメンバとシルインナとに跨って接合配置した自動車の車体下部構造であって、前記リヤサイドメンバの車外側の側壁は、リヤホイールハウスインナの前方に廻り込んで湾曲した部分を形成止端部とし、該形成止端部の前端を前記シルインナの側面に突き合わせて接合することにより、前記形成止端部とシルインナとの間に前記タイダウンブラケットを配設したことを特徴としている。
【0006】
請求項2にあっては、請求項1に記載のタイダウンブラケットは、その底壁に続く縦壁を備え、該縦壁の上縁をリヤサイドメンバに接合すると共に、該タイダウンブラケットの底壁と縦壁の前,後側縁とをシルインナに接合して、これらタイダウンブラケットとシルインナとで閉断面部を構成したことを特徴としている。
【0007】
請求項3にあっては、請求項1,2に記載のタイダウンブラケットは、その後端にリヤサイドメンバの側壁またはシルインナ等の縦壁に接合される立ち上がり部を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項4にあっては、請求項3に記載のタイダウンブラケットの立ち上がり部は、その頂端にリヤサイドメンバの車外側の側壁の上縁フランジに接合する平面部を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項5にあっては、請求項1〜4の何れかに記載のリヤシートクロスメンバの両端部を斜め後方に向けて曲折成形したことを特徴としている。
【0010】
【発明の効果】
請求項1によれば、リヤサイドメンバ前端部の車外側の側壁の湾曲した部分とシルインナとで成す隅角部に、底壁にフック係合孔を有するタイダウンブラケットを、これらリヤサイドメンバとシルインナとに跨って接合配置してあるため、該タイダウンブラケットが補強部材として機能するので、専用の補強部材を用いることなく前記リヤサイドメンバ前端部の車外側の側部とシルインナとの接合部の結合剛性を格段に高めることができ、ひいては、フロア骨格部材であるリヤサイドメンバとサイドシルおよびリヤシートクロスメンバの結合剛性を全体的に高めることができる。
【0011】
請求項2によれば、請求項1の効果に加えて、タイダウンブラケットは、その底壁に続く縦壁を備え、該縦壁の上縁をリヤサイドメンバに接合すると共に、該タイダウンブラケットの底壁と縦壁の前,後側縁とをシルインナに接合して、これらタイダウンブラケットとシルインナとで閉断面部を構成してあるため、リヤサイドメンバの閉断面積が該リヤサイドメンバ前端部とシルインナとの接続部分で拡大されるので、前記リヤサイドメンバ前端部とシルインナとの接合部の結合剛性をより一層高めることができると共に、タイダウン剛性も格段に高めることができる。
【0012】
請求項3によれば、請求項1,2の効果に加えて、タイダウンブラケットは、その後端にリヤサイドメンバの側壁またはシルインナ等の縦壁に接合される立ち上がり部を備えているため、該タイダウンブラケットとリヤサイドメンバおよびシルインナとの接合部分の接合代を拡大することができて、これら三者の結合剛性をさらに高めることができることは勿論、タイダウン時の下向きの荷重を強度的に有利なせん断方向で受けることのできる接合面積が拡大されるからタイダウン剛性をより一層高めることができる。
【0013】
請求項4によれば、請求項3の効果に加えて、タイダウンブラケットの立ち上がり部は、その頂端にリヤサイドメンバの車外側の側壁の上縁フランジに接合する平面部を備えているため、タイダウン時の下向きへの荷重に対する効力を高められて、タイダウン剛性を一段と高めることができる。
【0014】
請求項5によれば、請求項1〜4の効果に加えて、リヤシートクロスメンバの両端部を斜め後方に向けて曲折成形してあるため、該リヤシートクロスメンバの上方に配置されるリヤシートの両側部の足元周辺のスペースを確保することができて、リヤシートの乗降性を高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0016】
図1〜5において、1はフロアパネル2の左右両側に前後方向に配設されるサイドシルのシルインナで、該シルインナ1は上下に図外のシルアウタと接合するフランジ1a,1aを有し、開口部を車外側に向けた横向きの断面略ハット型に形成して、その上面1bをフロアパネル2の側縁2aの下面に接合してある。
【0017】
前記フロアパネル2のキャビン部分はスペース確保のために下向きに曲折成形してあり、このキャビン後部の縦壁2bおよびフロアパネル2の下面に、前後のフランジ3a,3bを接合して閉断面を形成する断面略L字型のリヤシートクロスメンバ3を車幅方向に配設し、かつ、該リヤシートクロスメンバ3の端部3cを前記シルインナ1の側面1cに突き合わせて接合してある。
【0018】
4は底壁4Aと車両センター側および車外側の両側壁4B,4Cとを有するリヤサイドメンバで、該リヤサイドメンバ4はこの両側壁4B,4Cの上縁フランジ4a,4aを前記フロアパネル2の下面に接合して車両前後方向に配設してある。
【0019】
また、リヤサイドメンバ4はリヤホイールハウスインナ5の車両センター側の側面5aにその車外側の側壁4Cを接合し、かつ、該側壁4Cの前端部を該リヤホイールハウスインナ5の前方に廻り込むように湾曲させてある。
【0020】
前記リヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cは、この実施形態ではリヤホイールハウス5の前方に廻り込んで湾曲した部分を形成止端部としてあって、その前端のフランジ4bを前記シルインナ1の側面1cに突き合わせて接合してある。
【0021】
つまり、リヤサイドメンバ4の前端部は底壁4Aと車両センター側の側壁4Bとで断面略L字型に形成され、この前端部の前縁フランジ4cを前記リヤシートクロスメンバ3の端部3cの後部縦壁3dに後方から突き合わせて接合すると共に、該前端部の車外側の側縁フランジ4dをシルインナ1の側面1cに突き合わせて接合してある。
【0022】
また、前記リヤサイドメンバ4の底壁4Aには、その車外側の側縁フランジ4dの後側部に位置する、車外側の側壁4Cの湾曲した部分とシルインナ1とで成す隅角部にタイダウン時に図外のフックを係合させるフック係合孔7を備えたタイダウンブラケット6を接合配置してある。
【0023】
本実施形態では、前記隅角部に略半円状の切欠部を形成し、該切欠部に弧状の縦壁6Aと底壁6Bとで形成されたタイダウンブラケット6を嵌合して、リヤサイドメンバ4とシルインナ1とに接合し、前記隅角部に閉断面部9を構成してある。
【0024】
前記タイダウンブラケット6は具体的には、弧状の縦壁6Aの上縁のフランジ6aを切欠部の略半円形状に沿ってリヤサイドメンバ4の底壁4A面上に接合し、かつ、前,後側縁6b,6cをシルインナ1の側面1cに突き合わせて接合すると共に、底壁6Bから下側のフランジ6dに亘る部分をシルインナ1の下面1dから下縁のフランジ1aに亘って重合して接合してある。
【0025】
また、タイダウンブラケット6は、その上縁のフランジ6aの後端部と後側縁6cとを上方に向けて延設して、リヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cと略同じ高さの立ち上がり部8を形成し、該立ち上がり部8をこの車外側の側壁4Cとサイドシルインナ1の側面1cとに重合して接合してある。
【0026】
加えて、前記立ち上がり部8の頂端に平面部8aを形成し、該平面部8aをリヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cの上縁フランジ4aに重合し、該平面部8aを上縁フランジ4aとフロアパネル2の下面とで挟み込んで、3枚パネル打ちとしてスポット溶接してある。
【0027】
一方、リヤシートクロスメンバ3はその両端部を、斜め後方に向けて曲折成形して、端部3cをシルインナ1の側面1cに突き合わせて接合してある。
【0028】
以上の実施形態の構造によれば、リヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cの湾曲した部分とシルインナ1とで成す隅角部に、底壁6Bにフック係合孔7を有するタイダウンブラケット6を、これらリヤサイドメンバ4とシルインナ1とに跨って接合配置してあるため、該タイダウンブラケット6が補強部材として機能するので、専用の補強部材を用いることなく前記リヤサイドメンバ4前端部の車外側の側縁フランジ6dとシルインナ1の側面1cとの接合部の結合剛性を格段に高めることができ、ひいては、フロア骨格部材であるリヤサイドメンバ4とシルインナ1およびリヤシートクロスメンバ3の結合剛性を全体的に高めることができる。
【0029】
特に本実施形態では、タイダウンブラケット6は、その底壁6Bに続く弧状の縦壁6Aを備え、該縦壁6Aの上縁のフランジ6aがリヤサイドメンバ4の底壁4Aに接合されると共に、前,後側縁6b,6cをシルインナ1の側面1cに突き合わせて接合し、かつ、底壁6Bから下側のフランジ6dに亘る部分をシルインナ1の下面1dから下縁のフランジ1aに亘って重合して接合して、前記隅角部に閉断面部9を構成してあるため、リヤサイドメンバ4の閉断面積が前記隅角部の部分で拡大されるので、前記リヤサイドメンバ4の前端部の車外側の側縁フランジ4dとシルインナ1との接合部の結合剛性をより一層高めることができると共に、タイダウン剛性も格段に高めることができる。
【0030】
しかも、該タイダウンブラケット6をリヤサイドメンバ4に嵌合して上縁のフランジ6aをリヤサイドメンバ4の底壁4A上に接合してあるため、タイダウン時の下向きへの荷重に対してこの上縁のフランジ6aで大きな抗力を得ることができて、タイダウン剛性をより一層高めることができる。
【0031】
また、前記タイダウンブラケット6は、その後端部にリヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cと略同じ高さの立ち上がり部8を備えているため、該立ち上がり部8をリヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cおよびシルインナ1の側面1cに接合できるので、これらタイダウンブラケット6とリヤサイドメンバ4およびシルインナ1との接合部分の接合代を拡大することができ、これら三者の結合剛性をさらに高めることができることは勿論、タイダウン時の下向きの荷重を強度的に有利なせん断方向で受けることのできる接合面積が拡大されるからタイダウン剛性をさらに高めることができる。
【0032】
加えて、タイダウンブラケット6の立ち上がり部8は、その頂端にリヤサイドメンバ4の車外側の側壁4Cの上縁フランジ4aに接合する平面部8aを備えていて、特に、該平面部8aは上縁フランジ4aとフロアパネル2の下面とで挟み込んで3枚パネル打ちとしてスポット溶接するようにしてあるので、タイダウン時の下向きへの荷重に対して該平面部8aで大きな抗力を得ることができ、タイダウン剛性をより一層高めることができる。
【0033】
一方、このような強度,剛性上の効果とは別に、リヤシートクロスメンバ3はその両端部を斜め後方に向けて曲折成形して、端部3cをシルインナ1の側面1cに突き合わせて接合してあるため、該リヤシートクロスメンバ3の上方に配置されるリヤシートの両側部の足元周辺のスペースを確保することができて、リヤシートの乗降性を高めることができる。
【0034】
なお、前記実施形態では、タイダウンブラケット6をリヤサイドメンバ4の底壁4A上に嵌合してリヤサイドメンバ4の内側とシルインナ1の側面1cに接合した最も好ましい例を開示したが、該タイダウンブラケット6をリヤサイドメンバ4の外側、つまり、底壁4Aの下面および車外側の側壁4Cの外面とシルインナ1の側面1cに接合するようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】同実施形態の要部を示す斜視図。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図。
【図4】図1のB−B線に沿う断面図。
【図5】図1のC−C線に沿う断面図。
【符号の説明】
1 シルインナ
1c 側面
2 フロアパネル
3 リヤシートクロスメンバ
4 リヤサイドメンバ
4A 底壁
4a 上縁フランジ
5 リヤホイールハウスインナ
6 タイダウンブラケット
6A 縦壁
6B 底壁
7フック係合孔
8 立ち上がり部
8a 平面部
9 閉断面部
Claims (5)
- フロアパネル下面に車幅方向に接合配置したリヤシートクロスメンバの両端部を、該フロアパネルの両側縁部に前後方向に接合配置したサイドシルのシルインナの側面に接合し、かつ、底壁と左右両側壁とを備えて該フロアパネル下面に前後方向に接合したリヤサイドメンバの前端部を、その車外側の側壁を湾曲してリヤホイールハウスインナの前方に廻り込ませて配置し、該前端部を前記リヤシートクロスメンバおよびシルインナの側面に接合し、前記車外側の側壁の湾曲した部分とシルインナとで成す隅角部に、底壁にフック係合孔を有するタイダウンブラケットを、これらリヤサイドメンバとシルインナとに跨って接合配置した自動車の車体下部構造であって、
前記リヤサイドメンバの車外側の側壁は、リヤホイールハウスインナの前方に廻り込んで湾曲した部分を形成止端部とし、該形成止端部の前端を前記シルインナの側面に突き合わせて接合することにより、前記形成止端部とシルインナとの間に前記タイダウンブラケットを配設したことを特徴とする自動車の車体下部構造。 - タイダウンブラケットは、その底壁に続く縦壁を備え、該縦壁の上縁をリヤサイドメンバに接合すると共に、該タイダウンブラケットの底壁と縦壁の前,後側縁とをシルインナに接合して、これらタイダウンブラケットとシルインナとで閉断面部を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体下部構造。
- タイダウンブラケットは、その後端にリヤサイドメンバの側壁またはシルインナ等の縦壁に接合される立ち上がり部を備えたことを特徴とする請求項1,2に記載の自動車の車体下部構造。
- タイダウンブラケットの立ち上がり部は、その頂端にリヤサイドメンバの車外側の側壁の上縁フランジに接合する平面部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の自動車の車体下部構造。
- リヤシートクロスメンバの両端部を斜め後方に向けて曲折成形したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車の車体下部構造。
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