JP3670606B2 - 農用車輪 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用田植機、灌水直播機等の水田用または管理機等の畑地用等に利用される農用車輪に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用田植機、灌水直播機等の水田用車両に装着される車輪として、従来、特開2000−225807号公報(以下、従来例という)に記載されたものが知られている。
この従来例では、「円環状のリムを芯としてその全体を弾性材料で被覆した弾性輪体を備え、該弾性輪体の外周に周方向リブと側ラグとを有するラグ部分を突隆形成している農用車輪において、前記ラグ部分を除く弾性輪体の最大幅部分が、前記リムの外径部よりも径外位置にて左右方向に突隆した左右の膨出部で形成されていることを特徴とする農用車輪」が提案されており、このような構成とすることによって、車輪における接地幅を増加させて接地圧を低下させることによって、水田、畑地を問わず車輪の沈下を抑制できる(以下、沈下抑制機能という。)ようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、弾性輪体に膨出部を形成したことにより(同公報図3,図4等参照)、弾性輪体の剛性が過大となって、衝撃力緩和性が低下してしまったり、また、弾性材料の増加、加硫(焼付)時間の増加により製品の単価が増大してしまっていた。
このことを解決するには膨出部の膨出量を減らせばよいのであるが、やみくもに膨出量を減らしたのでは、膨出部の持つ、車輪の沈下抑制機能を損なってしまうという不具合があった。
【0004】
そこで、本発明は、土中への沈下抑制機能を損なうことなく、衝撃緩和性を向上させ、尚、安価な農用車輪を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、土中への沈下防止機能を損なうことなく、泥ハケ性を向上した農用車輪を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した課題を解決するために以下の技術的手段を講じた。
すなわち、円環状のリム(8)を芯として弾性材料で被覆した弾性輪体(10)を有し、該弾性輪体(10)の外周にラグ(12)と、センターリブ(9)を形成している農用車輪(3)において、前記弾性輪体(10)の側面(10a)に側面リブ(15)が形成され、該側面リブ(15)は、車輪周方向においてラグ(12)同士間に架け渡されるように形成されるとともに弾性輪体(10)の左右に設けられており、これら左右の側面リブ(15)の左右方向突出長さは一方の長さが他方の長さよりも短くされており、短くされた側面リブ(15)が回転軸方向外側に設けられ、かつこの側面リブ(15)は接地面(16)と反接地面(17)とを有しており、接地面(16)が回転軸方向(X)に対して平行な面を有していることである。
これによって、側面リブに備えた接地面が、土中に入り込むときの車輪の沈下を抑制することができる。
【0006】
したがって、接地面を設けたことにより側面リブは沈下抑制機能を発揮する部分となり、さらにこの側面リブの大きさ、厚み等を調節する(減らす)ことによって従来例において膨出部であった部分の弾性材料を減らすことができ、これによって弾性輪体の剛性を軽減して、ここに農用車輪の衝撃緩和性を向上させるとともに弾性材料の量を減らして加硫(焼付)時間を短縮して生産コストを低下させ、安価な製品を供給できる。
また、前記側面リブは、リムの外径部よりも径外位置に形成されていることが望ましい。
【0007】
本発明における他の技術的手段としては、側面リブの厚みは、走行中に車輪径内方向に可撓な厚みとされていることである。
本発明における他の技術的手段としては、前記側面リブは輪体の左右に設けられており、これら左右の側面リブの左右方向突出長さは一方の長さが他方の長さよりも短くされており、短くされた側面リブが回転軸方向外側に向いて設けられていることである。
本発明における他の技術的手段としては、接地面が有する回転軸方向に対して平行な面とは、接地面が回転軸方向に対して径内方へ傾くことを許容しており回転軸方向に対する接地面の傾きが0°以上10°以下であることが望ましい。
【0008】
本発明における他の技術的手段としては、反接地面は回転軸方向に対して平行な面を有し、該面の平行とは、反接地面が回転軸方向に対して径外方に傾くことを許容しており、回転軸方向に対する反接地面の傾きが0°以上30°以下であることである。
反接地面の傾きが0°以上30°以下の範囲内であれば、側面リブが接地時に径内方向に撓みやすく、衝撃緩和性を発揮できるからである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図9に示すものは本発明の農用車輪を装着したリヤーマウント方式の乗用四輪田植機である。この車両1は後部植え付け装置2を備えており、前輪3および後輪4によって走行する。
この種車両1は、水田等の走行時には泥面上に浮かせるフロート5を有し、路上走行時には植え付け装置2をフロート5ごと上方に持ち上げるようになっている。
【0010】
図1乃至図5は本発明における農用車輪の第1実施形態を示している。
この第1実施形態における農用車輪は前記車両1の前輪3として用いられている。
本発明に係る農用車輪3は、中心に車軸取付用のボス6を有する。このボス6まわりにはスポーク7が放射状に設けられている。スポーク7は例えば丸パイプ材で形成されるものである。
スポーク7の外周には円環状のリム8が形成されており、このリム8は、金属製のものが用いられ、
例えば丸パイプ材で形成されるものである。このリム8を芯としてその全体をゴム等の弾性材料で被覆して弾性輪体10が形成されており、この農用車輪3は、いわゆるゴム焼き付け型車輪となっている。
【0011】
ボス6とこのまわりのスポーク7とは互いに補強板6Aが溶着されている。
弾性輪体10の外周にはセンターリブ9とラグ12が形成されている。
センターリブ9は、車輪径外方向へ突出して赤道外周で周方向に延びて形成されている。センターリブ9には、周方向に一定間隔をおいて設けられた切欠部9aによってその外周面は凹凸に形成されている。
ラグ12は、センターリブ9の凸部の一側面より回転軸方向一方に突出形成されている。
【0012】
この凸部の他側面にはラグは形成されていない。ラグ12はセンターリブ9を介して左右千鳥状に配置されている。
このようにラグ12を千鳥状に配置すればセンターリブ9の右側および左側のそれぞれにおいて、周方向におけるラグ12同士の間隔を広くとれるので、水田走行中のトラクションを十分にしつつ、ラグ間における泥の詰まりを防止し、また排泥効果が効率よく得られるものとなる。
ラグ12は、その側面形状が三角形状乃至台形状をしており、図2で示した前進時(記号Cの矢印で示した方向への回転)において路面に先に達する側の斜面を蹴り面12aとし、この蹴り面12aの反対側面であって路面からの離反を見送る側の斜面を反蹴り面12bとしている。また、これら蹴り面12aとを反蹴り面12bとの中間位置で頂点部を成す直線面を頂点部接地面12cとしている。
【0013】
頂点部接地面12cは、回転軸方向(図3において記号Xで示す矢印の方向。以下、他の図において同じ)と平行に延伸され、蹴り面12aと反蹴り面12bとで囲まれるラグ12の端面に、材料の減少、加硫(焼付)時間の短縮、ラグ12の剛性低下等のため、くりぬき凹部12dが形成されている。
このような構成を採用したことによって、センターリブ9の左右ふらつきがラグ12により抑制され、直進性が向上できるだけでなく、衝撃緩和性も向上できるのであり、また、くりぬき凹部12dを形成したことにより、センターリブ9およびラグ12の過剛性を軽減して振動・衝撃を緩和しつつ蹴り面12aによる牽引力向上が図れるのである。
【0014】
弾性輪体10の側面において、側面リブ15(15L、15R)が形成されている。この側面リブ15は車輪周方向においてラグ同士間に架け渡されるように形成されている。
側面リブ15は弾性輪体10の側面10aであればどのような場所に形成してもよい。すなわち、図4において記号Bの矢印で示す範囲であればよいが、リム8の外径部8aよりも径外位置に側面リブ15を形成するのが望ましい。その方が車輪3にかかる抵抗を小さくできるからである。
【0015】
接地面16は、回転軸方向Xに対して平行な面とされている。接地面16はその全体が回転軸方向Xに対して平行な面とされていなくてもよく、その一部に回転軸方向Xに対して平行な面を有していてもよい。
また、接地面16を回転方向に対して径内方に傾けて形成してもよい。接地面16の傾きについては、図5に示している接地面16と回転軸方向Xとが成す角αが0°以上10°以下であることが望ましい(許容される)。
反接地面17は、上述した接地面と同様に、回転軸方向Xに対して平行な面とされている。
【0016】
反接地面17は、回転軸方向Xに対して径外方に傾いて形成されてもよい。反接地面17の回転軸方向Xに対する傾きについては、反接地面17と回転軸方向Xとが成す角βが0°以上30°以下であることが望ましく、より望ましくは0°以上10°以下とされているのがよい。このβが30°よりも大きくなると、側面リブ15が撓みにくくなり、衝撃緩和性を発揮できないからである。
このように側面リブ15に、回転軸方向に対して平行な接地面16を設けたことによって、この接地面16が地面に接触して浮力を得て、沈下を抑制することができる。
【0017】
また、上述したように、接地面16と反接地面17とを回転軸方向Xに対して平行(この平行とは0°≦α≦10°、0°≦β≦30°の場合を含む)な面に形成すると、側面リブ15の厚さを厚くしたり、薄くしたりといった調節が容易となって、ゴム材料の使用量を調節することができる。したがって従来例のように膨出部を形成するために必要とされていたゴム材料を低減して加硫(焼付)時間を短縮でき、さらに材料コストを低減することが可能となる。
また、ゴム材料を低減したことによって、従来例において過大であった弾性輪体の剛性を低減することができ、これによって車輪が対地から抜けるときの泥土の持ち上げ量および持ち回り量を少なく抑えたままでこの農用車輪3の衝撃吸収性を向上させることができる。
【0018】
側面リブ15は図4において2点鎖線で示すように走行中に地面から受ける垂直抗力によって、車輪径内方向に撓むような(可撓な)厚さに形成されている。側面リブ15をこのような厚さにすることにより、農用車輪3が地面に入り込むときに、この側面リブ15は径内方に撓んで、走行中の衝撃・振動を緩和することができることとなる。
また、この側面リブ15が撓んだり元の形にもどったりすることによって弾性輪体10に付着した泥土を弾き飛ばして除去することができる。
【0019】
図6は本発明における農用車輪の第2実施形態を示している。
この第2実施形態では側面リブは輪体の左右に設けられており、これら左右の側面リブの左右方向突出長さは一方の長さが他方の長さよりも短くされており、そして、この農用車輪が車両1に取付けられたときには、短くされた側面リブ15は回転軸方向外側に向くようになっている。
これによって、短くされた側面リブ15は、長い方の側面リブ15よりも付着する泥土の量が少なくなり、車輪外側の圃場に植え付けられた植付苗等に泥土が被さるという問題点を解消できる。
【0020】
図7は本発明における農用車輪の第3実施形態を示している。
側面リブ15の裾部は弾性輪体10の側面と一体とされた曲面となっている。この曲面は弾性輪体10における回転軸方向中央側に凹んだ形状になっている。
図8は本発明における農用車輪の第4実施形態を示している。
前述した第1実施形態においては、側面リブ15は車輪周方向で隣り合うラグ同士間に架け渡されるように形成されていたが、この第4実施形態では側面リブを車輪周方向のラグ12間に断続的に設けている。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に限らず以下のように種々の変形が可能である。
本発明にかかる農用車輪はゴム焼き付け車輪である限りにおいて、歩行形田植機、灌水直播機、水田管理機等の水田用走行作業機にも適用可能である。
本発明における農用車輪は作業機の後輪として用いることも可能である。
側面リブに備えた接地面は平面に限らず、例えば、曲面、凹凸を有する面等であってもよい。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば沈下防止機能を損なうことなく、膨出部の剛性を抑えて衝撃吸収性を向上することができると共に排土性に優れ、より安価な車輪を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における農用車輪の第1実施形態を示す一部省略断面図であり、図2におけるA−A矢印断面図である。
【図2】本発明における農用車輪の第1実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明における農用車輪の第1実施形態を示す平面図である。
【図4】第1実施形態における弾性輪体の拡大図である。
【図5】側面リブの拡大断面図である。
【図6】本発明における農用車輪の第2実施形態を示す部分拡大図である。
【図7】本発明における農用車輪の第3実施形態を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明における農用車輪の第4実施形態を示す部分拡大図である。
【図9】田植機を示す側面図である。
【符号の説明】
7 スポーク
8 リム
9 センターリブ
10 弾性輪体
10a 弾性輪体の側面
12 ラグ
15 側面リブ
16 接地面
17 反接地面
X 回転軸方向

Claims (5)

  1. 円環状のリム(8)を芯として弾性材料で被覆した弾性輪体(10)を有し、該弾性輪体(10)の外周にラグ(12)と、センターリブ(9)を形成している農用車輪(3)において、
    前記弾性輪体(10)の側面(10a)に側面リブ(15)が形成され、該側面リブ(15)は、車輪周方向においてラグ(12)同士間に架け渡されるように形成されるとともに弾性輪体(10)の左右に設けられており、これら左右の側面リブ(15)の左右方向突出長さは一方の長さが他方の長さよりも短くされており、短くされた側面リブ(15)が回転軸方向外側に設けられ、かつこの側面リブ(15)は接地面(16)と反接地面(17)とを有しており、接地面(16)が回転軸方向(X)に対して平行な面を有していることを特徴とする農用車輪。
  2. 側面リブ(15)はリム(8)の外径部(8a)よりも径外位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の農用車輪。
  3. 側面リブ(15)の厚みは、走行中に車輪径内方向に可撓な厚みとされていることを特徴とする請求項1または2に記載の農用車輪。
  4. 請求項1に記載の平行とは、接地面(16)が回転軸方向(X)に対して径内方へ傾くことを許容しており、回転軸方向(X)に対する接地面(16)の傾きが0°以上10°以下であることを特徴とする農用車輪。
  5. 前記反接地面(17)は回転軸方向(X)に対して平行な面を有し、該面の平行とは、反接地面(17)が回転軸方向(X)に対して径外方に傾くことを許容しており、回転軸方向に対する反接地面の傾きが0°以上30°以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の農用車輪。
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