JP3581789B2 - 農用車輪形走行装置および農用車輪 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪形走行装置および車輪に係り、田植機、水田管理機等の水田用農機及び野菜移植機等の畑作用農機の走行装置に利用される。
【0002】
【従来の技術】
図12および図13に例示する乗用田植機1の走行装置は、左右一対のスポーク形前輪2と左右一対のスポーク形後輪3とで構成されており、左右の前輪2は操向機能を有し、左右の後輪3は車軸にボス3Aを固着してこのボス3Aから放射状に配置したスポーク3Bの先端にパイプ等の円環体を芯としてこの周りをラグ3Cを有する弾性輪体3Dで被覆した所謂ゴム焼付け車輪であり、該後輪3を回転駆動することで走行機体4を支持しながら矢符方向に進行しつつ植付装置5によって田植を行うものである。
【0003】
上記走行装置の車輪(後輪でも前輪でも良い)として、特開平8−156502号公報で開示の水田走行用総ゴム車輪、実開平1−107602号公報で開示の水田作業機のホイールキャップ等々があり(以下、水田用車輪という)、また、特開平7−9801号公報で開示の農用車輪(以下、畑作用車輪という)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の水田用車輪は、トレッド踏面部に隆起形成したラグを有し、該ラグは周方向成分を有するリブラグ(直進ラグともいう)と軸方向成分を有する牽引ラグとを備えており、リブラグによって直進性を確保し、牽引ラグで牽引力を確保してスリップすることなく走行しようとするものである(これらの点は、畑作用車輪でも同じである)。
【0005】
ところで、前述した牽引ラグは、牽引力の増進を主眼とするのであれば、車輪回転方向の後退角を0°(すなわち、車輪の赤道面に対して直交し、車輪方向に平行する)にすることが有利であるが、このように構成すると、該牽引ラグで泥土を持上げることとなって泥ハケが悪くなり、万一、持上げられた泥土が回転途中で圃場に落下すると、図13で示す植付け苗Aを乱すことになるおそれがあった。
【0006】
このため、牽引ラグの後退角を60°以上に設定すると泥ハケは良好とはなるものの、牽引力不足を招くものであった。
そこで、従来では上記のような相反する性能を折衝するかたちの形態を採用しており、前述した特開平8−156502号公報の図8および図10で示してあるように、牽引ラグの後退角は15°〜20°に設定してあり、相反する性能である牽引性能と泥ハケ性能を犠牲にした設計をしていたのである。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑み、車輪のトレッド踏面部に隆起形成されるラグ(軸方向成分を有する牽引ラグ)の後退角に工夫をし、かつ後退角の異なるラグの配列に工夫をすることによって、相反する性能である牽引性能と泥ハケ性能のいずれも犠牲にすることがなく、併せて枕地での旋回性能を向上できるようにした車輪形走行装置および車輪を提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、弾性輪体の外周部に形成されたトレッド踏面部に周方向の間隔をおいてラグが隆起形成され、該ラグは中心部に位置する周方向成分と該周方向成分の左右両側に千鳥状に配置された軸方向成分とを有する車輪を農用機械の車体の左右両側に備えた農用車輪形走行装置において、前記車体に対する車輪内側における前記ラグの軸方向成分に対して車輪外側における前記ラグの軸方向成分の車輪回転方向に対する後退角が大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
このような構成を採用したことによって、車輪外側におけるラグの軸方向成分の後退角が大きく設定されていることによって泥ハケ性能を確保し、泥土の持上げ量は少なくなって隣接苗の乱れ等は確実に防止する一方で、車輪内側におけるラグの軸方向成分によって牽引力は充分に確保されてスリップすることが少なくなるのである。
【0010】
また、車輪内側におけるラグの軸方向成分の後退角が小さく設定されていることによって、枕地での旋回半径は小さくできるのである。
ここで車輪形走行装置は、図12および図13で例示している乗用田植機の2軸4車輪形走行装置を初め、1輪2輪形走行装置を有する歩行形田植機等のように、水田作業等に適用できるし、野菜移植機のように、畑作用にも適用できるのである。
【0011】
前述の構成において、車輪内側におけるラグの軸方向成分の車輪回転方向に対する後退角が0°〜10°に設定されており、車輪外側におけるラグの前記後退角が15°〜50°に設定されていることが推奨される(請求項2)。
また、前述の構成において、前記ラグは、前記軸方向成分と周方向成分とを一体に有していることが、推奨される(請求項3)。
【0012】
このように、ラグに周方向成分(リブラグ)を形成することによって、直進性を確保できるし、このリブラグと後退角が大きな軸方向成分とを組合わせることによって、図5で示すように周方向のラップ部分が形成でき、これは、振動の軽減に寄与するのである。
更に、本発明においては、前述した請求項1〜3において、周方向の間隔をおいて隆起形成しているラグ間に、該ラグの頂面幅より広幅とした凹みが形成されていることによって、凹みによって牽引力を増進することが可能となったのである。(請求項4)。
【0013】
前述の構成において、前記車輪は、円環体に弾性材料を被覆した弾性輪体又は空気入りタイヤ車輪であることが推奨される(請求項5)。
また、本発明に係る車輪は、請求項1〜5の何れか一つの農用車輪形走行装置に用いられるものである(請求項6)。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明に係る車輪形走行装置および車輪は、図12及び図13に示している乗用田植機の2軸4車輪形走行装置を初め、歩行形田植機の1軸2輪形走行装置、湛水直播機等の水田用作業機、野菜移植機のように畑作用作業機にも適用可能である。
【0017】
図1〜4は本発明の第1実施形態を示しており、車輪10は、放射状に配置したスポーク11の先端にパイプ材で示す円環体12を芯としてこの周りにゴム等の弾性材料を被覆した弾性輪体13を有する所謂ゴム焼付車輪を示している。
弾性輪体13の外周部、すなわち、トレッド踏面部14には周方向の間隔をおいてラグ15が隆起形成されていて、本実施の形態ではトレッド踏面部14の中心、すなわち、赤道面上に位置する周方向成分(所謂直進ラグであり、リブラグとされている)16と軸方向成分(牽引ラグ)17とを一体に有し、トレッド踏面部14の内外に左右振分けて千鳥状に配列されている。
【0018】
図1はトレッド踏面部14を一部展開して示しており、矢符B方向に車輪が回転するとすると、トレッド踏面部14の左側(走行機体の内側又は外側)の軸方向成分17の車輪回転方向に対する後退角0°すなわち、車軸と平行にされており、一方、トレッド踏面部14の右側(走行機体の外側又は内側)の軸方向成分の前述した後退角θは15°とされている。
【0019】
左右の軸方向成分17は車輪回転方向Bの先行側が蹴面17Aで後行側が支え面17Bであり、図2および図3で示すように側面視で三角形乃至台形状とされており、一方、周方向成分16は図4で示すように断面視で先細り台形状とされており、周方向で隣接する周方向成分16間にはその頂面よりも広幅とされた凹み18が形成されている。
【0020】
なお、図4で示しているように、左右の軸方向成分17の頂面は外方下向の傾斜面に形成することによって、回向時(旋回時)の抵抗を軽減しているのである。
上述構成の車輪10を、図12及び図13で示した田植機の2軸4車輪形走行装置に適用するとき、本発明に係る走行装置ではその後輪に、軸方向成分17の後退角が小さい方(便宜上17Lという)を機体側(内側)に、軸方向成分17の後退角が大きい方(便宜上17Rという)を反機体側(外側)にして装着して、矢示B方向に回転駆動して圃場(水田)を走行しながら田植を行うのである。
【0021】
この作業中、17Lによって大きな牽引力を発揮する一方で泥土の持ち上げが生じ、17Rによって小さな牽引力を発揮する一方で泥土の持上げは少なく泥ハケ性に優れることになる。
17L,17Rの総合(左右車輪を含む)の牽引力は大きいことから、スリップすることなく走行するとともに枕地での旋回半径が小さくなるのであり、一方、17Lによって泥土を持上げたとしても、この泥土は隣接苗Aではなく、これより離れた走行機体側に落下することとなって、隣接苗Aの倒れ等を招くことは少ないのである。
【0022】
また、凹み18によっても牽引力は増進される一方で周方向成分16によって直進性を確保するのである。
図5は第2実施形態を示しており、右側(反機体側)の軸方向成分17の後退角θを50°としたものであり、このように構成することによって、符号Lで示すオーバーラップ部分が造成されることとなり、走行振動を軽減できて、特に、一般路上を走行するときに有利となるのである。
【0023】
図6及び図7は第3及び第4実施形態を示しており、ラグ15の周方向成分16を赤道0−0上より左又は右にずらしたものである。
図8〜11は第5〜8の実施形態を示しており、まず、図8は左右(内外)に振り分けたラグ15は周方向成分がなく軸方向成分17だけで構成されたものであり、図9は左右(内外)に振り分けたラグ15は所謂への字形ラグとL字形ラグで構成したものであり、図10は左右(内外)に振り分けたラグ15は、、所謂Y字形ラグとL字形ラグで構成したものであり、Y字形ラグは、後退角が0°の軸方向成分17Cを一部に形成している。
【0024】
なお、図10において成分17Cについては、点線で示すように、後退角を有するものであっても良い。
図11は、左右(内外)に振り分けたラグ15において内側の軸方向成分17が後退角θを10°程度としたもので外側の軸方向成分17の後退角θを50°程度としたものである。
【0025】
図14は、第9実施形態を示し、周方向成分16をトレッド踏面部14の全周に亘って形成したものであり、これによって直進性、走行振動性が良好となる。又、図15に示す第10実施形態では周方向成分16を左右2列としたものであり、(全周に亘らなくなるものでも良い)、図16に示す第11実施形態では周方向成分16に対して軸方向成分17の断面形状を大きく形成することによって、牽引力をより一層増進したものである。
【0026】
なお、図5〜図11および図14〜16に示した各実施の形態において、図1〜4にて示した部分と共通するものについては共通符号で示しており、また、図1〜11および図14〜16に示したトレッド踏面部14の左右の軸方向成分17は、図14の仮想線で示すように左右振分けても良く、これらのラグパターンであれば、車輪(図13の左右後輪)は空気入りタイヤであっても良く、また、図13の左右前輪に本発明を適用することも可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば水田用農機又は畑地用農機を問わず牽引性能と泥ハケ性能(排土性能)をいずれも犠牲にすることはなく、また、枕地での旋回性能を向上できる車輪およびこの車輪を利用した走行装置を提供できたのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示した一部展開平面図である。
【図2】図1のC矢示図である。
【図3】図1のD矢示図である。
【図4】図2および図3の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図9】本発明の第6実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図10】本発明の第7実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図11】本発明の第8実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図12】本発明を適用する乗用田植機の側面図である。
【図13】図12の概略平面図である。
【図14】本発明の第9実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図15】本発明の第10実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【図16】本発明の第11実施形態を示したトレッド踏面部の一部平面図である。
【符号の説明】
10 車輪
14 トレッド踏面部
15 ラグ
16 周方向成分
17 軸方向成分
Claims (6)
- 弾性輪体(13)の外周部に形成されたトレッド踏面部(14)に周方向の間隔をおいてラグ(15)が隆起形成され、該ラグ(15)は中心部に位置する周方向成分(16)と該周方向成分(16)の左右両側に千鳥状に配置された軸方向成分(17)とを有する車輪(10)を農用機械の車体の左右両側に備えた農用車輪形走行装置において、
前記車体に対する車輪内側における前記ラグ(15)の軸方向成分(17)に対して車輪外側における前記ラグ(15)の軸方向成分(17)の車輪回転方向に対する後退角(θ)が大きく設定されていることを特徴とする農用車輪形走行装置。 - 車輪内側におけるラグの軸方向成分の車輪回転方向に対する後退角が0°〜10°に設定されており、車輪外側におけるラグの前記後退角が15°〜50°に設定されていることを特徴とする請求項1記載の農用車輪形走行装置。
- 前記ラグは、前記軸方向成分と周方向成分とを一体に有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の農用車輪形走行装置。
- 周方向の間隔をおいて隆起形成しているラグ間に、該ラグの頂面幅より広幅とした凹みが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農用車輪形走行装置。
- 車輪は、円環体に弾性材料を被覆した弾性輪体又は空気入りタイヤ車輪であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農用車輪形走行装置。
- 請求項1〜5の何れか一つの農用車輪形走行装置に用いられる農用車輪。
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