JP3669946B2 - 構造物の緑化構造 - Google Patents

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    • Y02B80/32Roof garden systems

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  • Cultivation Of Plants (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は構造物の緑化構造に関し、特に植栽下地の保水性と安定性に富み、例えば事務所ビル等のRC構造物の屋上、傾斜屋根、ベランダ、アトリウムなどの緑化を容易におこなえるものとして開発されたものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境保全や自然嗜好の風潮にともなってRC建物の屋上や壁面、さらにはRC構造の擁壁や橋脚などといった土木構造物の壁面をも積極的に緑化することにより、自然的潤いのある景観を創出する試みがなされ、このようなRC構造物の緑化は今後益々重要度を増しつつある。
【0003】
特に、RC建物の屋上や壁面の緑化は、緑化によって建物自身の美観を高めるだけでなく、太陽熱による建物自体の温度上昇を抑え、いわゆる「ヒートアイランド現象」を抑制して省エネに大いに役立つだけでなく、近年の地中温暖化の抑止策としても、今後に大いに期待されている。
【0004】
また、世界的規模で懸念されている、近年の地球温暖化の問題に対処すべく、建物の周囲だけでなく、建物自体をも一定面積以上緑化するように法的にも義務づけられつつある。
【0005】
ところで、これまでビル等のRC建物の屋上を広い範囲にわって緑化する方法としては、例えば図5に図示するように防水処理が施された屋上スラブ20の上に下地用のマット21を敷設し、その上に客土を所定の厚さに敷き詰めて植栽用下地22とし、これに植栽する方法が一般に採用されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、植栽下地材22に充分な保水性と排水性を持たせるには、植栽下地材22を厚く敷き詰める必要があることから屋根重量が相当嵩み、このため新規建物の場合、植栽下地材22の重量を加味して躯体の構造設計を行う必要があり、建設コストが大幅に嵩む等の課題があった。
【0007】
また、既存建物の場合に至っては、屋根重量が嵩みすぎて必要な厚さに植栽下地22を敷き詰めることができない等の課題があった。
【0008】
また、たとえ植栽下地22を必要な厚さに敷き詰めることができたとしても、このような目的で使用される植栽下地22の保水性は一般に低く、このため、せっかく植え付けた植物も根付きが悪く、短期間のうちに枯れてしまうことが多い等の課題があった。
【0009】
また、植栽下地22が乾燥して風化しやすく、このため植物の植え替えや植栽下地22の補充などに要するランニングコストが大幅に嵩むだけでなく、植栽下地22の風化によって周辺環境を汚染し兼ねない等の課題があった。さらに、傾斜屋根に至っては、風雨で植栽下地材22が流されてしまうことが多く、植栽下地材22の安定性が劣る等の課題もあった。
【0010】
この発明は以上の課題を解決するためになされたもので、特に植栽下地材の保水性、排水性、さらに安定性にすぐれ、RC建物の屋上などを容易に緑化できるようにした構造物の緑化構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の構造物の緑化構造は、躯体の上に不透水下地層を形成し、当該不透水下地層の上に布製格子状枠体を布設し、かつ当該布製格子状枠体内に植栽下地材を充填してなる構造物の緑化構造において、前記布製格子状枠体は、樹脂を含浸しかつ積層された複数の布製帯状部材から形成され、当該布製帯状部材を縫い糸または縫い糸と接着材の両方によって長手方向に所定間隔おきに接合された接合部と、当該接合部間が前記布製帯状部材の軸直角方向に開いた伸展部からなる多数のセルを有し、かつ前記各セル内に植栽下地材を充填してなることを特徴とするものである。
【0012】
この場合の不透水下地層としては、例えば防水シート等でよいが、RC構造の建物の場合、屋上スラブの上には通常アスファルト防水層が形成されているので、このアスファルト防水層を不透水下地層とすることができる。
また、布製格子状枠体を用いることで、布目に雨水などが吸水されることで保水性を持たせることができる。また、樹脂を含浸させた布製の帯状部材を複数、互いに交差することで植栽下地材を充填可能な、平面円形や矩形状をなすセルを多数形成するように配置して形成されたもの等を使用することができる。
【0013】
植栽下地材としては、例えば客土、軽量骨材、ピートモス、腐食土、さらには間伐材などから形成された木くずやチップ、さらにはこれを発酵させたものを使用することができる。
布製格子状枠体の成形方法としては、例えば樹脂を含浸させた複数の布製帯状部材を例えば図2(b)に図示するように積層するとともに、その長手方向に所定間隔おきに接着材またはホチキスなどで接着した後、図2(a)に図示するように帯状部材の軸直角方向に伸展する等して形成することができる。
【0014】
この場合、帯状部材の軸直角方向に伸展することで、接着部分以外の部分が引っ張られて変形することにより、例えば図2(a)に図示するような平面六角形状のセルが多数形成される。このように樹脂を含浸させた不織布を用いて枠材を形成することで、この枠材は通常の剛性を与えられるので、形状保持性があり、かつ透水性を保持することができる。
【0015】
したがって、例えば屋上などの緑化に際しては、布製格子状枠体は、布製帯状部材が図2(b)に図示するように重ね合わせられたままの状態で屋上まで運び、屋上で大きく伸展して床の上に布設し、そして各セル内に植栽下地材を充填すればよいので、作業性がきわめてよい。
【0016】
請求項2記載の構造物の緑化構造は、躯体の上に不透水下地層を形成し、当該不透水下地層の上に布製格子状枠体を布設し、かつ当該布製格子状枠体内に植栽下地材を充填してなる構造物の緑化構造において、前記布製格子状枠体は所定間隔おきに配置された複数の帯状部材と隣接する各布製帯状部材間に配置され、両端が前記布製帯状部材に縫い糸または縫い糸と接着材の両方によって接合された複数の連結部材とからなる多数のセルを有して形成され、前記布製帯状部材は10g/m 2 〜50g/m 2 量の樹脂を含浸し、かつ前記各セル内に植栽下地材を充填してなることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3記載の構造物の緑化構造は、請求項1または2記載の構造物の緑化構造において、不透水下地層の上にシート、ペーパードレーンまたは波板からなる排水層が形成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4記載の構造物の緑化構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構造物の緑化構造において、不透水下地層の上に発泡板からなる断熱層が形成され、当該断熱層には上下方向に貫通する複数の排水用孔と誘水用溝が所定間隔おきに形成され、かつ下面側に複数の排水用溝が一方向または二方向に所定間隔おきに形成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
この場合の断熱層は、主に太陽熱を遮断して構造物のヒートアイランド現象を抑制するためのもので、例えば発泡スチロール等の発泡材が軽量で、しかも加工しやすいため望ましい。また、この場合の排水層は、不透水下地層の上に断熱層が形成されている場合には断熱層の下側に形成するのがよく、また排水層としては布製のシート、例えば織布や不織布、ペーパードレーン、あるいは排水用の溝が一方向または二方向に多数形成された合成樹脂製の波板などでもよく、さらにはシンダー等の軽量骨材や砂などを所定の厚さに敷き詰めたものでもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、この発明に係る構造物の緑化構造の一例を示し、図においてRC構造物の屋上スラブ1の上に不透水下地層2が形成され、その上に排水層3が形成されている。
【0027】
この場合の不透水下地層2は、通常屋上スラブ1の上に広く一般的に行われているアスファルト防水層であるが、他に防水シート等を敷設してもよい。なお、アスファルト防水層の場合、通常その上には図示するようにシンダーコンクリート等が押えコンクリート2aとして所定の厚さに打設されている。
【0028】
また、不透水下地層2の上に、図では押えコンクリート2aの上に排水層4が形成され、この排水層4の上に断熱層5が形成されている。なお、排水層4は断熱層5の上にあってもよい。
【0029】
さらに、断熱層5または排水層4の上に布製格子状枠体6が布設され、この布製格子状枠体6の各格子目a(以下「セルa」という)内に植栽下地材7がそれぞれ充填され、そして植栽下地材7に芝生や灌木などが植栽されている。
【0030】
排水層4は、織布や不織布などからなる布製のシートやペーパードレーン、あるいは排水用の溝が一方向または二方向に多数形成された耐腐食性の波板、例えば合成樹脂製の波板を多数敷設する等して形成されている。
【0031】
断熱層5は、例えば発泡スチロール等から所定の厚さに成形された硬質性の発泡板を敷き詰めて形成され、その全体に複数の排水用孔5aと誘水用溝5bが所定間隔おきにそれぞれ形成され、さらに断熱層5の下面側には複数の排水用溝5cが一方向または二方向に所定間隔おきに形成されている。
【0032】
排水用孔5aと誘水用溝5bはそれぞれ、上側から下側に貫通する小孔とスリットであって、このうち排水用孔5aは集中豪雨などの際に植栽下地材7内に流れ込んだ余分な雨水を排水層4に速やかに排水することで、植栽の根腐れを防止する働きをするものである。
【0033】
また、誘水用溝5bは夏期の降雨量のきわめて少ない時期に排水層4内の水を植栽下地材7内に毛細管現象によって吸い上げ、植栽下地材7に必要な灌水を行うことで、水不足による植栽の立ち枯れを防止する働きをするものである。
【0034】
また、排水用溝5cは誘水溝5bと同様に断熱層5の全体にわたって所定間隔おきに格子状に形成され、さらに、必要に応じて排水層4内に灌水管8が縦横に布設されている。
【0035】
布製格子状枠体6は、例えば図2(b)に図示するように布などからなる所定幅、所定厚の帯状部材6aを複数重ね合わるとともに、この帯状部材6aどうしを縫い糸、または縫い糸と接着材の両方で所定間隔おきに接合し(以下、接合部分を「接合部6b」という)、かつ帯状部材6aの軸直角方向に伸展することにより接合部6b,6b間の伸展部6cが伸展方向に大きく開いて、例えば図2(a)に図示するような平面多角形、例えば平面六角形のセルaを多数有して形成されている。
【0036】
この場合の接合部6bと伸展部6cには熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂(以下「含浸樹脂」という)が含浸され、特に接合部6bには充分な量の含浸樹脂が含浸され、かつ伸展部6cには10g/m2 〜50g/m2 量の含浸樹脂が含浸されている。このため、接合部6bは透水性は特にないものの、高い自立性と可撓性を有し、伸展部6cは自立性と可撓性を有し、さらに透水性をも有している。
【0037】
なお、伸展部6cの含浸樹脂の含浸量が10g/m2 未満だと剛性が小さく、充分な自立性を確保できず、また含浸樹脂の含浸量が50g/m2 を超えると透水性が低く充分な排水機能が得られない。このため、含浸樹脂の含浸量が10g/m2 〜50g/m2 以内で自立性、可撓性、さらに透水性(k>10-1cm/s)を有し、望ましい。
【0038】
接合部6bと伸展部6cがそれぞれこのように形成されていることで、特に接合部6bが相当の剛性を有することで、各セルa内に充填された植栽下地材7を転圧する際の衝撃にも充分耐えることができ、したがって転圧で各セルaの形状が変形するなどのおそれはなく、また植栽下地材7を長期にわたって保持でき、植栽下地材7の安定性がきわめて高い。
【0039】
また、伸展部6cが透水性と保水性を有することで、たとえ一部のセルa内の植栽下地材7に雨水が降り注いだとしても、伸展部6cから周囲の植栽下地材7に浸透するため、各セルaにそれぞれ充填された植栽下地材7に均等に灌水され、灌水にむらが生じる心配はない。
【0040】
さらに、集中豪雨などの際に植栽下地材7内に流れ込んだ余分な雨水は、伸展部6cの働きによって断熱層5下の排水層4に速やかに排水されることで、植栽の根腐れを防止することができる。
【0041】
また、夏期の降雨量のきわめて少ない時期には、伸展部6cの毛細管現象によって、断熱層5表層部の水を植栽下地材7内に吸い上げ、植栽下地材7内に灌水させることで、植栽の立ち枯れを防止するためのものである。
【0042】
なお、この場合、断熱層5の上にも布製のシートやペーパードレーン等からなる排水層(図省略)が形成されていれば、植栽下地材7内に速やかに灌水させることができる。
【0043】
図3(a)は、格子状枠体6の他の例を示し、複数の帯状部材6aが平行にかつ所定間隔おきに配置され、この隣接する帯状部材6a,6a間に複数の連結部材6dが千鳥に配置され、かつ各連結部材6dの両端が帯状部材6aに縫い糸、または縫い糸と接着材の両方でそれぞれ接合されていることで、平面矩形状のセルaを多数有して形成されている。
【0044】
また、帯状部材6aと各連結部材6dとの各接合部6bには充分な量の含浸樹脂が含浸され、それ以外の部分には10g/m2 〜50g/m2 量の含浸樹脂が含浸されている。
【0045】
図3(b)は、同じく格子状枠体6の他の例を示し、複数の帯状部材6aが平行にかつ所定間隔おきに配置され、この帯状部材6a,6a間に複数の連結部材6dが同一延長線上に位置するように配置され、かつ各連結部材6dの両端が帯状部材6aに縫い糸、または縫い糸と接着材の両方でそれぞれ接合されていることで、平面矩形状のセルaを多数有して形成されている。
【0046】
また、帯状部材6aと各連結部材6dとの各接合部6bには充分な量の含浸樹脂がそれぞれ含浸され、それ以外の部分には10g/m2 〜50g/m2 量の含浸樹脂が含浸されている。
【0047】
植栽下地材7としては、例えば軽量骨材、人工軽量骨材、ピートモス、再生セラミック土壌などが使用されている。また、灌水管8の一端に給水管または貯水槽(いずれも図省略)が接続され、手動またはタイマー等によって自動的に植栽下地材7に灌水がなされるようになっている。なお、この場合の灌水管8としては、例えば麻布などの透水性の布からなるホースまたは孔が多数形成された塩ビ管などで形成されている。
【0048】
また、排水層4として敷設される布製のシート、断熱層5として敷設される発泡板、さらに格子状枠体6は所定サイズのパネル状に形成されていれば、施工時には屋上スラブ1の上に単に順に重ねて設置するだけでよく、さらにこれらが当初から一体に組み付けられていれば、一度に設置できて施工の大幅な省力化が図れる。
【0049】
なお、傾斜屋根や壁面の緑化に際しては、排水層4として敷設される布製のシート、断熱層5として敷設される発泡板、さらに格子状枠体6などをアンカーボルト等のアンカー部材によって躯体に固定すればよい。
【0050】
【発明の効果】
この発明は以上説明したとおりであり、特に布製格子状枠体が一定の剛性(自立性)を有するので、植栽下地材の転圧で枠体が変形してしまうようなおそれはなく、セル内に植栽下地材を入念に転圧して充填することができ、また傾斜面の緑化でも各セル内に充填された植栽下地材を安定して保持することができる。
【0051】
また、布製格子状枠体が保水性と透水性を有するので、雨天時などの際にたとえ一部にしか灌水されない場合でも、時間の経過とともに格子状枠体を通って全体の植栽下地材に均等に灌水される等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】RC建物の屋上スラブの緑化構造の一例を示し、(a)はその一部破断斜視図、(b)は一部縦断面図である。
【図2】(a)は伸展された布製格子状枠体の一部平面図、(b)は伸展される前の布製格子状枠体の一部平面図、(c)は断熱層の一部斜視図である。
【図3】(a),(b)は伸展された格子状枠体の一部平面図である。
【図4】RC建物の屋上スラブの緑化構造の他の一例を示し、(a)はその一部破断斜視図、(b)は一部縦断面図である。
【図5】従来のRC建物の屋上スラブの緑化構造の一例を示す一部斜視図である。
【符号の説明】
1 屋上スラブ
2 不透水下地層
2a 押えコンクリート
4 排水層
5 断熱層
5a 排水用孔
5b 誘水用溝
5c 排水用溝
6 布製格子状枠体
6a 帯状部材
6b 接合部
6c 伸展部
6d 連結部材
7 植栽下地材
8 灌水管

Claims (4)

  1. 躯体の上に不透水下地層を形成し、当該不透水下地層の上に布製格子状枠体を布設し、かつ当該布製格子状枠体内に植栽下地材を充填してなる構造物の緑化構造において、前記布製格子状枠体は、樹脂を含浸しかつ積層された複数の布製帯状部材から形成され、当該布製帯状部材を縫い糸または縫い糸と接着材の両方によって長手方向に所定間隔おきに接合された接合部と、当該接合部間が前記布製帯状部材の軸直角方向に開いた伸展部からなる多数のセルを有し、かつ前記各セル内に植栽下地材を充填してなることを特徴とする構造物の緑化構造。
  2. 躯体の上に不透水下地層を形成し、当該不透水下地層の上に布製格子状枠体を布設し、かつ当該布製格子状枠体内に植栽下地材を充填してなる構造物の緑化構造において、前記布製格子状枠体は所定間隔おきに配置された複数の布製帯状部材と隣接する各布製帯状部材間に配置され、両端が前記布製帯状部材に縫い糸または縫い糸と接着材の両方によって接合された複数の連結部材とからなる多数のセルを有して形成され、前記布製帯状部材は10g/m 2 〜50g/m 2 量の樹脂を含浸し、かつ前記各セル内に植栽下地材を充填してなることを特徴とする構造物の緑化構造。
  3. 不透水下地層の上にシート、ペーパードレーンまたは波板からなる排水層が形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の構造物の緑化構造。
  4. 不透水下地層の上に発泡板からなる断熱層が形成され、当該断熱層には上下方向に貫通する複数の排水用孔と誘水用溝が所定間隔おきに形成され、かつ下面側に複数の排水用溝が一方向または二方向に所定間隔おきに形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の構造物の緑化構造。
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