JP3793491B2 - 緑化構造及び緑化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンションやビル等の陸屋根或いは緩勾配の屋根を緑化してヒートアイランド現象の緩和や環境改善、景観向上に役立ち、さらに植裁層に樹木等を植裁して傾倒防止用ワイヤーを張設したり、植裁周縁に堰き止め壁を設置する作業を容易に実施することができる緑化構造及び緑化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市部ではアスファルトやコンクリート等の構造物や建築物が多く、景観保全、環境保全等の目的で緑化スペースの確保並びに緑化推進が奨励され、建築物の屋上等に植裁層を施工して緑化する試みが行われている。
このような植裁層には、各種の草花が植裁されるが、樹木を植裁する場合、その傾倒を防止するために厚みの深い土壌層を必要としたり、傾倒防止用ワイヤー等を張設する必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、厚みの深い土壌層を設置する場合、使用する土壌の容量も膨大となるため、高重量が建築物の屋上等に作用することになり、強度的に許容されないことが多い。また、傾倒防止用ワイヤー等を張設する場合、その基端に取り付けたアンカーを植裁層内に埋設しただけでは十分な係止強度が得られず、またアンカーを防水層に打ち込んでは防水性が損なわれるため決して許容されない。そのため、防水層とは関係のない例えば壁面等に固定せざるを得ないが、その場合、樹木及び植裁層の設置場所が制限されたり、人間の歩行箇所が制限されることになる。
そこで、本発明は、上述の問題を生ずることなく樹木を植裁することができ、或いは樹木ばかりでなく周縁の堰き止め壁等の設置も容易に施工することができる緑化構造を提案することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記事情に鑑み提案されたもので、植裁層の底面にシート防水層を有し、植裁層周縁又は表面又は層内に設ける配設物を支持するための支持材を備える緑化構造であって、水勾配に沿って配設した受け部材の上面部上にて防水シート材の端部を重合接続したシート防水層を形成すると共に、前記受け部材に、上方へ延在する支持部を有する支持材を固定したことを特徴とする緑化構造及び緑化方法に関するものである。
上記配設物は、植裁層周縁又は表面又は層内に設けるものであって、例えば植裁層に植裁される樹木の傾倒防止用ワイヤー又は植裁層周縁の堰き止め壁などを指す。
【0005】
植裁層は、土壌を必ずしも必要とするものではないが、一種の土壌にて形成される培土層よりも、上層よりも透水速度が高い透水層を下層に設けた二層である培土層を備えることが望ましい。
また、シート防水層上に排水層を設けることが望ましい。
さらに、仕切部材を周辺に配することが望ましく、加えて、仕切部材の下方には、水抜き部を設けることが望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の緑化構造を施工する対象は、既設或いは新築の建築物や構造物の屋根であって、陸屋根であっても緩勾配であっても良い。
【0007】
本発明の緑化構造は、図1に示すように受け部材1の上面部11上にて隣り合う防水シート材2,2の端部(重合代21)を重合接続したシート防水層20を形成し、受け部材1に、上方へ延在する支持部92を有する支持材9を固定し、その上に植裁層として、土壌を充填して培土層3を形成し、その地表面に植物(芝生等)4を植裁させている。
【0008】
本発明に用いる支持材9は、植裁層周縁又は表面又は層内に設ける配設物を支持するためのものであって、固着部91と支持部92とを有する構成である。
具体的には例えば植裁される樹木等の傾倒防止用ワイヤー等の張設に用いられる部材、或いは植裁層の周縁の土壌の堰き止め壁の立設に用いられる部材、或いは植裁層表面に打ち込む表示板などの飛散防止用アンカー、培土層3から風雨により土が吹き飛ばされない(舞い上がらない)ように配するカバー材の固定材などが該当する。
そのため、支持材9は、例えば略L字状であっても棒状であっても良く、単一部材からなるものでも良いし、複数部材を溶接やボルト等により一体化したものでも良い。また、支持材9と受け材1の固定は、支持材9の固定部91を板状とすることで受け部材1に面状に支持させて固定しても良いし、点状に接触させて固定しても良い。尚、支持材9と受け材1との間にはシート防水層20(重ね代21)が介在しているので、防水ビスにより固定し、締着部分に防水処理(シーリング)を施すものとする。
図1の実施例における支持材9Aは、上端に環状部分を備える鋼材と上下両端に環状部分を有する鋼材を一体状に組み合わせてなり、防水ビスにより受け材1の上面部11に固着する固定部91から上方へ向かって略鉛直線状に支持部92が配設される構成であり、その配設状態においては、植裁層の表面に環状部分が露出するように配設した。
【0009】
また、このような支持材9に支持される配設物は、前述のように植裁層の表面や周縁に配される樹木4’や堰き止め壁7、表示板などであり、支持材9と直接的固定するか、或いは連結部材を介して固定することにより、傾倒或いは飛散などを防止することができる。
図1の実施例における配設物は低木4’であり、この低木4’と前記支持材9Aの支持部92の先端の環状部分との間に傾倒防止用ロープ81を張設して連結し、傾倒を防止する。
【0010】
本発明に用いる受け部材1は、水勾配に沿って取り付けるものであって、設置する下地面(屋根)よりも高い位置に上面部11を有する構成であり、特にその他の形状構成や素材(材質)構成について限定するものではなく、例えば角パイプ、形鋼(ハット状、円弧状、三角状等)などからなり、また素材についても例えばその上面部11への防水シート材2の固定方法に応じて防水ビス等の固着が可能な材質、溶着が可能な材質でも良い。特に受け部材1を塩ビ鋼板、防水シート材2を塩ビ系とすることにより、容易に接着を行うことができる。
また、この受け部材1の下地(屋根)に対する取り付けは、接着或いは防水ビス止めであっても良いし、位置規制するだけであっても良い。但し、既設の建築物に適用する場合、既存の防水処理層を破損させないためには、接着等により固定することが望ましい。
図1の実施例における受け部材1は断面が略ハット状の形鋼であって、下地5への取り付けは接着剤(図示せず)を介在させた接着により行っている。
【0011】
また、本発明に用いる防水シート材2は、非透水性のゴム系シート或いは樹脂系シートが用いられ、特に限定するものではないが、例えば一般的なシートとして、ゴムアスファルト系シート、塩ビ系シート等の防水シート、非加硫ブチルゴム系シート、高分子可塑剤を添加した特殊塩化ビニル樹脂系シートなどを使用することができる。
この防水シート材2にてシート防水層20を形成するには、隣り合う防水シート材2,2の端部(重ね代21)同士を前記受け部材1の上面部11上にて重合接続(接合)するのであるが、接合は溶着、接着、防水ビス止め、或いはこれらの併用等の公知の手段によって行えばよい。
図1の実施例における防水シート材2の端部(重ね代21)同士は溶着によって接合されており、下側に位置する重ね代21の受け部材1の上面部11への固定も溶着により行われている。
【0012】
さらに、本発明に用いる植裁層は、前述のように土壌等の培土層を必ずしも必要とするものではなく、植物が生育されるものであれば特にその構成、構造を限定するものではなく、どのようなものでも適用できる。
この植裁層に植裁させる植物4も、特にその種類を限定するものではなく、どのような草木をも植裁させることができるが、図1の実施例では地被植物(芝生等)を植裁させた。
そして、植裁させる植物4の生育環境に応じた植裁基盤を設ければ良い。
例えば培土層3を設ける場合は、その表面に植裁する植物に応じて適宜な種類の土壌を選択することができ、例えば畑土、人工土壌、改良土壌等を使用しても良いし、土、パーライト等の軽量土壌を用いても良いし、或いは培土層3の代わりにポーラス状のコンクリートブロック、繊維マット等の公知の緑化基盤材を用いても良く、或いは両者を併用しても良い。
また、予め培土層と芝、セダム、低木等の植物が一体化(コンテナ、トレイ等に充填されたものでも良い)されたパネル、ユニット等が既に市場に多種類提供されているので、これらをそのまま用いるようにしても良い。
【0013】
特に、培土層3を用いる場合、一種の土壌にて形成するよりも、上層よりも透水速度が高い透水層を下層に設けた二層であることが望ましい。即ち上層には相対的に透水性が低く保水性に富んだ層(土壌)を、下層には相対的に保水性が低く透水性に富んだ層(透水層)を形成することにより、多量の雨水が浸透した場合に透水層に至った雨水を速やかに水下側へ流下させることができ、その下方のシート防水層と水分との接触時間を低減することができる。
図1の実施例における培土層3は、大部分が畑土等からなるが、受け部材1,1間の最下層に砕石を充填した透水層31を設けた。
【0014】
このように本発明の緑化構造は、植裁層の表面から支持材9の支持部92の先端(環状部分)が露出する構成であるため、傾倒防止用ロープ91を容易に張設することができ、配設物である低木4’の傾倒を防止することができる。
【0015】
また、水勾配に沿って配した受け部材1の上面部11上にて隣接する防水シート材2,2を重合接続するようにしてシート防水層20を形成するようにしたので、例えば重ね継ぎ部分に溶着不良があったり、経年の後に重ね継ぎ部分に隙間が生じた場合に、仮に多量の雨水が浸透してきた際にも水勾配に沿って排水することができ、重ね継ぎ部分から漏水を生ずることがない。即ち培土層3の地表面から浸透してくる雨水は、自重により、より下方へ浸透しようとするので、受け部材1の上面部11上の重ね継ぎ部分にまで浸透した雨水はそこからさらに下方へ浸透し、受け部材1,1の配設間隔に至り、水勾配に沿って水下側へ流下させることができる。そして、水は、重ね継ぎ部分より下方を流下するため、万が一の破損等における漏水の危険が少ない。
そのため、特に広い面積の緑化に好適であり、建築物や構造物の陸屋根等を緑化することにより、緑化対象である建築物等に対して、並びに自然環境に対して以下に示す極めて多大な効果を果たす。
例えばヒートアイランド現象の緩和があり、土壌等で保水し、その水分を蒸気として発散することで温度上昇を抑えることができる。
また、建築物の断熱性を向上し、その結果、エアコン等の稼働を抑制して冷暖房費を軽減すると共に排熱を抑制し、前記ヒートアイランド現象の緩和にもつながる。
さらに、紫外線による建築物自体或いは陸屋根上の防水処理層の劣化を防止してその耐用年数を長期化することができる。
また、植物による大気の浄化作用も大いに期待される。
【0016】
また、図示実施例では、培土層3を、上層よりも透水速度が高い透水層31を下層に設けた二層構造としたので、前述の雨水の流下作用をこの透水層31の存在により著しく促進することができ、培土層3の適度な保水量を維持できる。
さらに、この透水層31は、その下方の防水シート材2(シート防水層20)と水分との接触時間を低減することができるので、防水シート材2の表面は常に乾いた状態となるので、その耐用年月を長期化することができる。
また、この透水層31として、適当な粒度の砕石類やゼオライト等を使用することにより、前述の作用に加え、上方の土壌を通過した泥水を濾過して浄化させる作用、即ち濾過層としての作用を付加することもできる。そして、この濾過層により浄化された水は、貯水して例えば緊急時の貯水源として利用するようにしても良い。
【0017】
図2に示す実施例は、配設物として堰き止め壁(仕切部材)7Aを用い、これを支持するために断面三角形状の支持材9Bを用い、この支持材9Bの縦片状の支持部92に堰き止め壁7A及び押さえ部材(角パイプ)82を沿わせ、固定具821で固定することにより、堰き止め壁7Aの傾倒を防止した。また、受け部材1として上面フランジ部(上面部11)を有する断面が略ユ形状の形鋼を用い、この形鋼(受け部材1)の左右(配設間隔)に発泡スチロール等からなる断熱材52,53を配設した。それ以外は、前記図1の実施例と殆ど同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
この実施例に用いた支持材9Bは、断面略三角形状のアングル材と、下端が受け部材1の上面部11に固着して上端が重ね代21から突起状に突出する金具とを一体状に組み合わせてなり、アングル材の下片を上面部11(重ね代21)に面状に支持させて固定した。
この支持材9Bに支持される堰き止め壁7Aは、上方部分が培土層3を構成する土壌の流れ止めに寄与し、下方部分に孔やスリット等が穿設されて水抜き部76を形成している。
このような堰き止め壁7Aは、植裁層の施工後に取付施工を行うようにしても良いし、植裁層の施工前に取付を行うようにしても良い。さらに水下側に限らず、水上側や側方等の周辺全てに配するようにしても良い。また、周辺に限らず、緑化部分を区分するように適宜に複数箇所に仕切壁として配するようにしても良い。特に勾配屋根の場合や緑化範囲が広い場合に有用である。
【0019】
また、この実施例に用いた受け部材1は、二重縦片からなる起立部14の上端に上面フランジ部(上面部11)を、下端に固定部15を有する構成であり、下地(屋根)本体50上に立設したアンカー51に起立部14が跨るように配設して取り付けた。また、上面部11の下方には断面略L字状の断熱材53を、それ以外には一定厚みの断熱材52を下地(屋根)本体50上に配設し、これら断熱材52,53及び受け部材1の上面部11を覆うようにシート防水層20を形成した。
尚、図中、16は受け部材1の中央空間部を塞ぐキャップ、100は陸屋根の側壁、2’は堰き止め壁7Aの更に水下側から臨む防水シート材である。
【0020】
図3及び図4に示す実施例は、配設物として流れ方向側方の周縁、及び水下側の周縁にそれぞれ堰き止め壁(仕切部材)7B,7Cを用い、これを支持するために断面三角形状の支持材9C,9Dを用い、これらの支持材9C,9Dの縦片状の支持部92に直接的に堰き止め壁7B,7Cを沿わせ、溶接して固定することにより、それらの傾倒を防止した。それ以外は、前記図1の実施例と殆ど同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
このように複数の堰き止め壁(仕切部材)7B,7Cを水下側、側方、並びに図示しないが水上側及びもう一方の側方に配することにより、容易に植裁層の周囲を囲うことができ、例えばレンガを積み上げたりコンクリート壁を施工して桝状とする場合に比べて、建築物や構造物に対する積載荷重の増加を軽減することができる。
また、レンガの積み上げやコンクリート壁による施工は、防水シート材2を敷設した上に実施した場合には高重量が作用するため破断する原因となることが多く、そのため防水シート材2を敷設する以前(敷設しない状態の陸屋根)に施工し、その後、その桝状の内側に防水シート材2を敷設していた。したがって、防水シート材2が壁面にて不連続となり、桝状の隅部にて漏水が生じ易かったり、隅部における防水シート材2の施工が困難であった。これに対し、この実施例のように、堰き止め壁(仕切部材)7B,7Cを防水シート材2上に容易に設置できる構造では、上述の問題を生ずることがなく、施工性に優れ、且つ土壌の流出などを生ずることがない構造とできる。
【0021】
図5及び図6に示す実施例は、配設物として、水下端の側面に堰き止め壁(仕切部材)7D及び水抜き部材7Eを用い、これらを支持するために断面略L字状の支持材9Eを用い、この支持材9Eの縦片状の支持部92に直接的に堰き止め壁7D及び水抜き部材7Eを固定してそれらの傾倒を防止した。
【0022】
図示実施例における上方に配される堰き止め壁(仕切部材)7D(ボーダー)は、仕切面部71の上下端にフランジ72,73を有する断面略コ字状であり、培土層3を構成する土壌の流れ止めに寄与し、例えば梅雨時などには培土層3が雨水を多く含んで流れやすくなっているので有効である。
また、下方に配される水抜き部材7E(水抜き面戸)は、縦面部74と横面部75とからなる断面略L字状であり、孔やスリット等が形成された素材、例えばパンチングメタル等を成形してなり、排水空間Aを流下してくる雨水等を排出することができる。
これらの堰き止め壁(仕切部材)7D及び水抜き部材7Eを安定に立設させるための支持材9Eは、水下端の側面に縦方向に配される縦片部921及び防水シート材2,2の重ね代21(受け部材1の上面部11)上に配される横片部(固定部91)からなる略L字状のフレーム材と、短冊状の締め付け片922と、締め付け具923とからなる。即ち縦片状の支持部92は、縦片部921と、その表面に沿わせた締め付け片922と、それらの隙間を締め付けたり緩めたりできる締め付け片923とからなる構成である。
そして、この支持材9Eは、横片部(固定部91)から固定具911を受け部材1の上面部11に打ち込んで固定(図中、912はシール材である。)した状態で、支持部92の縦片部921と締め付け片922との隙間に堰き止め壁(仕切部材)7Dの仕切面部71及び水抜き部材7Eの縦面部74の左右の端縁を挿入し、締め付け具923にて締め付けると、支持部92に直接的に安定に支持され、傾倒が防止される。
【0023】
これらの施工に際しては、まず支持材9Eを上述のように固定し、排水部材6を敷設した後、隣り合う受け金具81間に水抜き部材7Eを上方から落とし込むように臨ませて横面部75が排水部材6の上面に載置されるように配設し、縦片部分812と締め付け片813との隙間に縦面部74の左右の端縁を挿入すれば良い。仕切部材7aの配設も同様に行うことができるが、特に施工手順を限定するものではなく、防根シート32や植裁層(培土層3及び植物4)の配設後でも配設前でも良い。
これら以外は、前記実施例と殆ど同様であり、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
また、図示実施例は、シート防水層20上に複数の排水部材6を並列状に配設し、排水部材6,6の配設間隔及び排水部材6の裏面側に長さ方向に形成される溝部61を排水空間Aとすることができる。
ここで用いられる排水部材6は、上辺が下辺より長い略台形状の断面形状を有し、裏面中央に長さ方向に溝部61が形成され、前記受け部材1に対しては上面部11に溝部61が跨るように配置され、それ以外では一定間隔を隔てて並列状に配設される。また、溝部61の左右に形成される2本の脚部62には、横方向の浅溝部621が形成され、凸凹状の脚部62の底面がシート防水層20に接するように配設される。
このような排水部材6は、発泡ポリスチレン等からなるが、浸透してきた雨水を吸水しないような独立気泡型の発泡樹脂成形体、或いはその他の素材などからなる。また、図示しない防根シートをその上面に一面状に配設した。
【0025】
そのため、この実施例では、雨水の流れは、図6中、破線で示すように培土層3中を浸透、降下し、最下部に至り、防根シートに沿うように移動して排水部材6,6間より排水空間Aに浸入する。排水空間Aに至った雨水は浅横溝621などにより横方向にも移動可能ではあるが、水勾配があるため水下側へ排水させることができる。
このようにシート防水層20上に排水部材6が配設されているので、前述の透水層31と同様に雨水の流下、排水作用を促進でき、培土層3の適度な保水量を維持できる。
また、排水部材6は、シート防水層20と水分との接触面積を小さくすることができ、微量な水分を集めて流下させ易いので、シート防水層20を構成する防水シート材2の耐用年月を更に長期化することができる。特に受け部材1の上面部11上にて防水シート材2の端部(重ね代21)を重合接続した部分に跨るように排水部材6を配設すると、即ち排水空間Aを重合接続する重ね代21以外の平坦部分上に形成することにより、接続部分への水廻りが抑止され、漏水が確実に防止される。
さらに、この複数の排水部材6は、そのメンテナンス等に際して容易に取り外すことができる。さらに、排水部材6として発泡ポリスチレン等の独立気泡型の発泡樹脂成形体を用いたので、断熱性能も向上することができる。
【0026】
図7に示す実施例は、配設物として、水下端の側面に水抜き部材7Eを用い、これを支持するために断面略L字状の支持材9Fを用い、この支持材9Fの縦片状の支持部92に直接的に水抜き部材7Eを固定してその傾倒を防止した。また、植物4’としてセダム類を植裁し、前記各実施例における培土層3の代わりに排水性に優れた植裁基盤マット30を配設した。それ以外は殆ど同一であり、符号を付して説明を省略する。尚、支持材9Fは、支持部の高さが低い以外は前記図5,6の実施例に用いた支持材9Eと全く同様であるから、説明を省略する。
例えば芝生等の多くの植物は、適切な水分の供給を必要とするが、気象条件の厳しい場所に生息するセダム類等の一部の植物では、他の植物と同程度の水分を与えても生育できるが、水分の供給はむしろ虚弱になってしまい、基本的に殆ど水分を与えない方が長持ちすることが知られている。そのため、適切な水分の供給を必要とする多くの植物を植裁する場合には、保水性(吸水保持性)に優れた培土層3或いは吸水性を有する植裁基盤マットなどを用いれば良いし、乾燥状態を好むセダム類などを植裁する場合には、図示実施例のように排水性(透水性)に優れた植裁基盤マット30或いは排水性に富む土壌などを用いれば良い。
このように本発明の緑化構造における植裁層は、土壌(培土層)を必ずしも必要とするものではなく、植裁させる植物に応じて好適な環境を備えるものが望ましく、公知の植裁装置、ユニットとして用いられるのものであれば、どのようなものでも良い。
【0027】
以上本発明を図面の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の緑化構造及び緑化方法は、植裁層周縁又は表面又は層内に設ける配設物を支持するための支持材を、水の流路とならない箇所である受け材の上面に固定するのでシート防水層の裏面への浸水を防ぐことができ、配設物の設置を容易に実施することができる。
また、支持材の支持部或いはその先端を、植裁層内の任意の位置にすることができるので、従来のように人間の歩行箇所が制限されることが無く、樹木の設置箇所の自由度が増し、安全性も確保できる。
【0029】
また、防水シート材を高い位置で重ね継ぎするので、仮に経年の使用の後に重ね継ぎ部分に溶着不良が生じた場合であっても漏水を生ずることがなく、広い面積にわたって緑化することができる緑化構造を提供できる。
しかも本発明の緑化構造におけるシート防水層は、防水シート材が熱収縮してもその応力は平坦部分にのみに作用して重ね継ぎ部分に及ぶことがないため、重ね継ぎ部分での接合不良が生ずる恐れがない。
そのため、本発明は、特に広い面積の緑化に好適であり、建築物や構造物の陸屋根等を緑化することにより、緑化対象である建築物等に対して、並びに自然環境に対して極めて優れた効果を有し、例えばヒートアイランド現象の緩和、建築物の断熱性向上、紫外線による建築物自体或いは陸屋根上の防水処理層の劣化防止、植物による大気の浄化作用など極めて多大な貢献を果たすものである。
【0030】
また、支持材の上端を上層付近、或いは表面に延出させることにより、後から樹木を植えても容易に傾倒防止手段を施すことができ、周縁の壁材についても同様であり、支持材を周縁に位置させることにより、後から壁材を設置することもできる。
【0031】
また、堰き止め壁(仕切部材)を周辺に配した場合、植裁層を構成する土壌の流れ止めに寄与する。さらに、堰き止め壁(仕切部材)の下方に水抜き部(或いは水抜き部材)を設けた場合、過剰な水分を水抜き部から排出できるので、植裁層に水分が滞留して過剰な湿潤状態になったり、シート防水層の表面が常時濡れた状態になることを防止することができる。そして、このような効用を有する堰き止め壁(仕切部材)の設置を、支持材に取り付けるだけで容易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】低木を植裁した本発明の緑化構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】(a)水下端に堰き止め壁(仕切部材)を配設した本発明の緑化構造の他の一実施例を示す側断面図、(b)その一部を拡大した断面図である。
【図3】側方端に堰き止め壁(仕切部材)を配設した本発明の緑化構造の他の一実施例を示す断面図である。
【図4】図3の緑化構造の水下側の側断面図である。
【図5】水下端に堰き止め壁(仕切部材)及び水抜き部材を配設した本発明の緑化構造の他の一実施例を示す分解斜視図である。
【図6】図5の緑化構造の側断面図である。
【図7】水下端に水抜き部材を配設した本発明の緑化構造の他の一実施例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1 受け部材
11 上面部
2 防水シート材
20 シート防水層
3 培土層
31 透水層
4 植物
4’ 低木(=配設物)
5 下地(屋根)
6 排水部材
60 排水層
7A〜7D 堰き止め壁(仕切部材)(=配設物)
7E 水抜き部材(=配設物)
9 支持材
92 支持部
Claims (3)
- 植栽層の底面にシート防水層を有し、植栽層の周縁、表面又は層内に設ける配設物を支持するための支持材を備える緑化構造であって、
下地上に水勾配に沿って配設した防水シート材を受ける受け部材の上面部上にて防水シート材の端部を重合接続したシート防水層を形成すると共に、前記受け部材に、上方へ延在する支持部を有する支持材を固定したことを特徴とする緑化構造。 - 支持材は、上端が植栽層の周縁、表面又は上層付近に位置することを特徴とする請求項1に記載の緑化構造。
- 請求項1又は2に記載の緑化構造の施工方法であって、水勾配に沿って配設した防水シート材を受ける受け部材の上面部上にて防水シート材の端部を重合接続してシート防水層を形成した後、前記受け部材に、上方へ延在する支持部を有する支持材を固定すると共にシート防水層の上に植栽層を形成することを特徴とする緑化方法。
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