JP6598611B2 - 法面凍上抑制構造体および法面凍上抑制工法 - Google Patents
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Description
地盤の凍上は土質、温度、水分および荷重の4つの因子がそろったときに発生する。特に前者の3つの因子は従来から凍上の3要素と言われており、したがって、凍上現象を抑制するには、この要素のうちどれか一つ以上に対し対策をおこなえばよい。
すなわち、従来より凍上を抑制するため、以下のような方法がとられてきた。
道路舗装分野では凍上対策工法がある程度確立されており、北海道の国道歩道部では全道一律で置換え厚30cmの置換工法が採用されている。しかしながら、法面部における凍上対策は研究も含め未解決な部分が多い。
例えば特許文献1には、成形した法面上に、ハニカム状立体補強材を展張して設置し、セルに火山灰を充填することにより、凍上によって崩壊せず、法面が植生可能で、簡単に施工できるハニカム補強法面が記載されている。
[1]
法面を覆うように配される法面凍上抑制構造体であって、
複数の長片状の樹脂又は繊維シートが幅方向に並設され互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合されてなり、これが前記幅方向と直交する方向に展張されたハニカム状のセルを有するハニカム状3次元立体セル構造体と、該各セル内に充填された中詰め材とを有するブロックと、
前記ブロックと該ブロックの後方の法面との間に配された、透水性を有する断熱層を有し、該断熱層の厚みが50mm以上、200mm以下であることを特徴とする、法面凍上抑制構造体。
[2]
前記断熱層が発泡ポリスチレンから成る、[1]に記載の法面凍上抑制構造体。
[3]
以下の工程:
(1)幅方向に並設された複数の長辺状の樹脂又は繊維シートを互いに所定の間隔で繰り返し部分的に接合し、これを前記幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状3次元立体セル構造体のブロックを用意し、
(3)法面における所定の設置箇所に、透水性を有する断熱層を50mm以上、200mm以下の厚みに設け、
(4)前記断熱層上に、前記ハニカム状3次元立体セル構造体のブロックを、補助枠を用いて展張しつつ敷設し、
(5)該展張されたセル構造体の各セル内に、中詰め材を充填し、前記補助枠を外し、次いで転圧する、
を含むことを特徴とする法面凍上抑制工法。
図1は、本発明の法面凍上抑制構造体の一構成例を模式的に示す図である。
本発明の法面凍上抑制構造体(法面構造体10)は、法面20を覆うように配される法面凍上抑制構造体であって、幅方向に並設された複数の長片状の樹脂又は繊維シート2を互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合し、これを幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセル3を形成するハニカム状3次元立体セル構造体1の各セル3内に、中詰め材4が充填されてなる。そして本発明の法面構造体10は、ブロックと後方の法面20との間に配された、透水性を有する断熱層11を有する。
本発明において使用される自然石は、砕石、玉石等であることができ、特に制限されない。また、本発明において、自然石に代えて、人工物、例えばコンクリート塊を用いることもできる。セル構造体との間に充分な摩擦力を生じさせるという観点、及び洪水時に流されないという観点、入手容易性、経済性、施工作業容易性、無害性等の観点から、一定の質量をもち、表面に摩擦抵抗があり、安価である、例えば、平均粒径2cm乃至4cm程度のコンクリート用砕石が好ましい。
当然、中詰め材4として砕石、栗石、砂利、砂、土の1つ以上が組み合わせて使用される場合もある。また、同時に植栽したり、種を蒔いたりすることもある。また、砕石、栗石等の最大径が250〜100mm程度のものは、それ単独で中詰め材4とすることもある。通常、大小の石により、充填密度を上げている。
断熱層11は、発泡ポリスチレンから成ることが好ましい。断熱層11に、発泡ポリスチレンを用いることで、高い断熱効果を有するものとなり、凍上をより確実に抑制することができる。
チップドレン(登録商標)は、連続した空孔を有する構造体をしているので、透水性に加えて振動防止効果を有している。この連続した空孔構造体によって、交通振動の伝播防止が期待できる。これにより、例えば道路脇の擁壁斜面など、交通振動があるような場所であっても、振動によるブロックの剥離や変位を防止できる。
(1)法面上に断熱層として、透水性を有する発泡ポリスチレンから成るシートを敷設し、
(2)ブロックの幅方向が斜面方向と略直交するように、ブロックの一端を斜面(法面)の上部に固定し、
(3)斜面上部から下部に向かって、ブロックを展張する。
(4)2以上のブロックを敷設する場合、ブロックの他端に、次のブロックの一端を連結した後、前記ステップ(1)〜(2)を繰り返し、そして
(5)各セルの内部に、中詰め材を充填して、転圧する。
(2)におけるブロックの固定には、例えば、ブロックの幅方向の上端列のセル内部に杭を打つ方法が好ましく用いられる。
凍上抑制の効果を確認するために行った実施例および比較例について説明する。
なお、この実験は、2014年12月下旬〜2015年5月中旬にかけて、青森県八戸市の傾斜地(斜面勾配1:1.5)において行われた。
図4に模式的に示すように、施工平面としては、斜面を横方向に並んだ区画30に分け、それぞれの区画に、以下に示すように異なる施工を行った。1つの区画30の大きさは幅2.5m×高さ2.5mとした。
図4に示すように、地表面及び地中に温度計31を配し、ブロック部分、断熱層を配した場合は該断熱層部分、および、地表面から略垂直に350mm、700mm、1400mmの各地中深さにおける温度を測定した。
また、各区画毎に、位置を示す変位基準杭32を立てた。該基準杭32の位置を測定することにより、地面表層の変位を評価した。位置測定は、2014年12月25日、2015年2月23日、2015年5月18日の3回行い、それらを比較することにより、斜面の変位を評価した。
この期間の日射量の変化を図5に示し、外気温の変化を図6に示す。
実施例1では法面上にブロックを展張し、中詰め材として砕石を充填した。セル構造体の厚みは100mmとした。
このとき、法面とセル構造体との間に、断熱層として50mm厚さのチップドレン(登録商標)を配した。
実施例1と同様にして法面上にブロックを展張し、中詰め材として砕石を充填した。セル構造体の厚みは100mmとした。
このとき、法面とセル構造体との間に、断熱層として100mm厚さのチップドレン(登録商標)を配した。
実施例1と同様にして法面上にブロックを展張し、中詰め材として発生土(山砂)を充填した。セル構造体の厚みは100mmとした。
このとき、法面とセル構造体との間に、断熱層として50mm厚さのチップドレン(登録商標)を配した。
実施例1と同様にして法面上にブロックを展張し、中詰め材として発生土(山砂)を充填した。セル構造体の厚みは100mmとした。
このとき、法面とセル構造体との間に、断熱層として100mm厚さのチップドレン(登録商標)を配した。
実施例1と同様にして法面上にブロックを展張し、中詰め材として砕石を充填した。セル構造体の厚みは100mmとした。
セル構造体、及び断熱層のいずれの対策も施さず、法面がむき出しの状態とした。
ブロック部分の温度についてみると、中詰め材として砕石を用いた比較例1では、外気温が低い時期には0℃以下になっていることが多いが、実施例1及び2では、断熱層を配することによって、断熱層部分では0℃以上を維持することができている。すなわち、断熱層を配することによって、断熱性能が向上していることがわかる。
同様に、発生土を中詰めし、断熱層を配した実施例3,4において、断熱層厚みを50mmとした実施例3(図9)と、100mmとした実施例4(図10)とを比較すると、断熱層が厚い実施例4のほうが、地中温度が高く保たれていることがわかる。
中詰め材として砕石を用いた比較例1(図14)では、無対策の比較例2に比べてその変位量が小さくなってはいるものの、凍上が発生しており、凍上及び融解により地面が変位していることがわかる。
2 樹脂又は繊維シート
3 セル
4 中詰め材
10 法面凍上抑制構造体
11 断熱層
20 法面
Claims (3)
- 法面を覆うように配される法面凍上抑制構造体であって、
複数の長片状の樹脂又は繊維シートが幅方向に並設され互いに所定の間隔で千鳥状に繰り返し部分的に接合されてなり、これが前記幅方向と直交する方向に展張されたハニカム状のセルを有するハニカム状3次元立体セル構造体と、該各セル内に充填された中詰め材とを有するブロックと、
前記ブロックと該ブロックの後方の法面との間に配された、透水性を有する断熱層を有し、該断熱層の厚みが50mm以上、200mm以下であることを特徴とする、法面凍上抑制構造体。 - 前記断熱層が発泡ポリスチレンから成る、請求項1に記載の法面凍上抑制構造体。
- 以下の工程:
(1)幅方向に並設された複数の長辺状の樹脂又は繊維シートを互いに所定の間隔で繰り返し部分的に接合し、これを前記幅方向と直交する方向に展張することによってハニカム状のセルを形成するハニカム状3次元立体セル構造体のブロックを用意し、
(3)法面における所定の設置箇所に、透水性を有する断熱層を50mm以上、200mm以下の厚みに設け、
(4)前記断熱層上に、前記ハニカム状3次元立体セル構造体のブロックを、補助枠を用いて展張しつつ敷設し、
(5)該展張されたセル構造体の各セル内に、中詰め材を充填し、前記補助枠を外し、次いで転圧する、
を含むことを特徴とする法面凍上抑制工法。
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