JP2017031776A - 仮設兼用型の本設土構造物およびその構築方法 - Google Patents

仮設兼用型の本設土構造物およびその構築方法 Download PDF

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【課題】短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行できる、仮設兼用型の本設土構造物を提供すること。【解決手段】複数の大型どのう21,25を上下左右方向に積み上げて構成する仮設土構造物20と、仮設土構造物20の側面を被覆する緩衝層30と、緩衝層30の表面を覆う擁壁40とにより本設土構造物10を構成する。【選択図】図1

Description

本発明は道路、鉄道、堤防、砂防えん堤等に適用可能な土構造物に関し、特に短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行できる、仮設兼用型の本設土構造物に関するものである。
大型台風や大規模地震等の被災時に道路等の支持地盤が崩落した場合、その早期の復旧方法として、複数の土のうを積み上げて仮設構造物を構築することが知られている。
特許文献1には、圧縮耐力の大きな角形の大型土のうを盛土の側面に積み上げて構築した仮設構造物が開示されている。
特許文献2には、積み上げた複数の大型土のう間に棒状補強材を串刺しして構築した仮設構造物が開示されている。
特開2008−57285号公報(図4) 特開2010−77639号公報(図1)
既述した従来技術にはつぎのような問題点がある。
<1>土構造物においては、仮設構造物と本設構造物の設計指針が別々に存在することから、仮設構造物を丸ごと活かして本設構造物へ転換できる仮設兼用型の本設土構造物の実施工例は皆無である。
これまでは、仮設構造物を全面撤去した後に既設構造物を新設しており、工費面だけでなく工期面でも改善の余地がある。
<2>早期復旧の観点から、袋詰めする土砂や骨材等の中詰材の性状や中詰状態が問われることはなく、現地で調達可能な様々な中詰材を使用して大型土のうを製作している。
このようにして製作した大型土のうは、仮設構造物の構築後に地震等により大きな外力が加わったときに、大型土のう内の中詰材が変位し易く、仮設構造物が変形を起こし易い。
<3>仮設構造物の側面には大型土のうの袋体が露出したままである。
袋体が耐候性の素材で製作してあっても、紫外線による経年劣化や飛来物等により損傷して、仮設構造物の強度を長期に亘って維持することが難しい。
<4>そこで、大型土のうを保護するために、仮設構造物の側面にコンクリートを吹き付けて硬質覆工層で被覆して補強する方法が考えられる。
この硬質覆工層は仮設構造物と一体に構築されるため、地震時に中詰材が変位すると硬質覆工層にひび割れを生じたりたり破損したりする危険がある。
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行できる、仮設兼用型の本設土構造物を提供することにある。
本発明の他の目的は、仮設構造物及び本設土構造物の施工コストを低減できるとともに、工期も大幅に短縮できる、仮設兼用型の本設土構造物を提供することにある。
本発明は、仮設構造物を利用して本設構造物を構築する仮設兼用型の本設土構造物であって、複数の大型どのうを上下左右方向に積み上げて構成する仮設土構造物と、前記仮設土構造物の側面を層状に被覆する緩衝層と、前記緩衝層の表面側を覆う擁壁とにより構成することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物が上下左右方向に積み上げた複数の大型どのうと、壁面材を介して前記複数の大型どのうの側面を被覆する緩衝層とにより構成し、前記壁面材の一部が緩衝層と擁壁の間に位置して緩衝層を保持するように構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の少なくとも一側面を緩衝層及び擁壁の二層で被覆する。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物を構成する段積みした複数の大型土のうの間に、仮設土構造物の横断方向、縦断方向、又は両方向へ向けて単数又は複数の拘束帯を追加して介装してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の上面に簡易路面を形成してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の上面に路床を形成してもよい。
本発明はつぎの効果を奏する。
<1>短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行することができる。
<2>仮設構造物をそのまま利用して本設土構造物を構築できるから、本設土構造物の施工コストを低減できるとともに、工期も大幅に短縮することができる。
本発明の実施例1に係る説明図で、一部を省略した仮設兼用型の本設土構造物の斜視図 仮設土構造物の構築方法の説明図 完成した仮設土構造物の断面図 仮設土構造物の側面を緩衝層で覆った仮設土構造物の断面図 完成した本設土構造物の断面図 本発明の実施例2に係る説明図で、一部を省略した仮設土構造物の斜視図 実施例2に係る説明図で、一部を省略した本設土構造物の斜視図 本発明の実施例3に係る説明図で、仮設兼用型の本設土構造物の部分断面図 実施例4に係る説明図で、(A)は仮設土構造物の部分断面図、(B)は本設土構造物の部分断面図
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
[実施例1]
<1>仮設兼用型の本設土構造物
図1を参照して説明すると、本発明に係る仮設兼用型の本設土構造物10は、複数の大型どのうを上下左右方向に積み上げて構成する仮設土構造物20と、仮設土構造物20の側面を被覆する緩衝層30と、緩衝層30の表面を覆う擁壁40とを具備する。
本例では、仮設兼用型の本設土構造物10を自動車や鉄道の路盤として活用する場合について説明する。
<2>仮設土構造物
仮設土構造物20は複数の大型どのうの集合体であり、本例では仮設構造物20の下半層を、座布団状又は略円柱状を呈する扁平大型土のう21で構成し、仮設構造物20の上半層を、立方体状、又は円柱状を呈する方形大型土のう25で構成する場合について説明する。
これらの大型どのう21,25は耐久性、耐候性に優れたシート材で巾着状、円筒状又は方形に形成した袋体に1トン以上の良質中詰材を充填してなる平面形状が1m以上で、高さが20cm〜100cm程度の土構造物を指す。
本例では扁平大型土のう21の平面形状(着床面積)が方形大型土のう25に
対して大きい関係にある。
「良質中詰材」とは、密度、重量、締め固めによる硬度等の品質を管理された中詰材を指す。
<2.1>扁平大型土のう
扁平大型土のう21は不陸調整用の土のうであり、巾着状を呈する有孔構造の袋体22に良質の粗粒中詰材23を充填して構成する。
袋体22は耐久性、耐候性、耐UV性等に優れた樹脂製ネットからなり、袋体22の上口を紐等で閉じることで粗粒中詰材23を封入可能になっている。
粗粒中詰材23としては、例えば良質の玉石、砕石、コンクリートガラ等の径の大きな粗骨材を使用できる。
扁平大型土のう21を製作するにあたり、良質の粗粒中詰材23を使用することと、内部に過大な空洞や空隙が残存しないように、例えば振動を与えたり、転圧する等して粗粒中詰材23を密実に封入することが肝要である。
<2.2>方形大型土のう
方形大型土のう25は、方形の函体26と、函体26内に充填した良質の細粒中詰材27とにより構成する。
函体26は例えば耐候性、耐久性に優れた樹脂製シートからなり、函体26の上口を蓋シートで閉じて、細粒中詰材27を拘束して封入することが可能である。
又、函体26は例えば吊りベルト付きで、1トン程度の土砂を充填できる「コンテナバッグ」と呼ばれる袋体を使用することも可能である。
細粒中詰材27としては、例えば良質の土砂や砂等を使用できる。
方形大型土のう25を製作するにあたり、良質の細粒中詰材27を使用することと、内部に過大な空洞や空隙が残存しないように、例えば振動を与えたり、転圧する等して細粒中詰材27を密実に封入することが肝要である。
<3>緩衝層
緩衝層30は仮設構造体20の側面と擁壁40との間に形成した粒体層であり、仮設構造体20の変形吸収作用と排水作用を有する。
緩衝層30の素材としては、砂、土砂、砂利、砕石等の硬質粒体を使用することができる。
<4>擁壁
擁壁40はセメント系の素材で形成した保護層である。
擁壁40としては、吹付コンクリートや場所打ちコンクリートの他に、プレキャスト製の擁壁ブロックを含む。
[仮設土構造物の構築方法]
図2,3を参照して仮設土構造物20の構築方法について説明する。
<1>扁平大型土のうの敷設
図2を参照して説明すると、構築予定の支持地盤Gに複数の扁平大型土のう21を縦横方向に隙間なく敷設して一層目を形成する。
さらに一層目の上面に大型土のう21の上面に複数の扁平大型土のう21を縦横方向に敷設して断面台形状に積み上げる。
同様に最上面がほぼ水平となるまで複数の扁平大型土のう21を積み上げる。
本例では支持地盤Gがほぼ水平である場合を示すが、支持地盤Gに凹凸があったり傾斜している場合でも、敷設前に支持地盤Gを水平面として整地する必要はない。
扁平大型土のう21の可撓性により、支持地盤Gの傾斜や凹凸等の不陸を吸収して、方形土のう25の上面を水平に敷設することができる。
又、扁平大型土のう21の敷設に際し、扁平大型土のう21間に隙間を生じたときは、この隙間に別途の粗粒中詰材23や土砂等を充填するとよい。
<2>方形大型土のうの敷設
図3を参照して説明すると、複数の扁平大型土のう21の水平上面に、複数の方形大型土のう25を縦横方向に隙間なく敷設して一段目を形成する。
さらに一段目の方形大型土のう25の上面に所定の高さに達するまで方形大型土のう25を順次積み上げて、断面形状が略台形を呈する仮設土構造物20を得る。
方形大型土のう25の敷設に際し、方形大型土のう25間に隙間を生じたときは、この隙間に別途の細粒中詰材27や土砂等を充填するとよい。
このように積み上げた複数の扁平大型土のう21及び複数の方形大型土のう25の側面は、全体として階段状の段差面を形成する。
<3>簡易路面の形成
仮設土構造物20を道路の路盤として活用する場合は、図4に示すように仮設土構造物20の上面に敷鉄板、アスファルト舗装等の簡易路面28を形成して、各種車両の走行面として活用する。
仮設土構造物20を鉄道の路盤として活用する場合は、仮設土構造物20の上面に路床を形成した後にレールを敷設する。
仮設土構造物20の使途は道路や鉄道に限定されるものではなく、仮設土構造物20の上面には使途に応じた構造物を構築する。
仮設土構造物20に作用する載荷重は、複数の方形大型土のう25の集合体と、複数の扁平大型土のう21の集合体を経て支持地盤Gに支持される。
<4>仮設土構造物の側面の仮保護
仮設土構造物20の側面では、扁平大型土のう21の袋体22と方形大型土のう25の函体26が露出する。
仮設土構造物20の使用期間が比較的短期間であれば、仮設土構造物20の側面を露出したままでもよいが、仮設土構造物20の使用期間が長くなる場合は、必要に応じて、例えば図4に示すように仮設土構造物20の露出した側面を緩衝層30で被覆すると、仮設土構造物20の露出した側面を紫外線や飛来物等から効果的に保護できる。
<5>仮設土構造物の耐震性
仮設土構造物20を構成する複数の大型土のう21,25は、袋体22又は函体26に良質の中詰材23,27を密実に充填して製作したものである。
したがって、仮設土構造物20の構築後に地震等により大きな外力が加わっても、大型土のう21,25内の良質な粗粒中詰材23や細粒中詰材27が変位し難いため、仮設土構造物20の簡易路面28が陥没したり、仮設土構造物20の側面が孕み出したりすることがなく、安定した姿勢を長期間に亘って保持できる。
[本設土構造物の構築方法]
図4,5を参照して仮設土構造物20を元にした本設土構造物10の構築方法について説明する。
<1>緩衝層の形成
図4を参照して説明すると、仮設土構造物20の露出した側面を緩衝層30で被覆する。緩衝層30の被り厚は適宜選択する。
仮設土構造物20の構築段階で緩衝層30を形成した場合は、新たに緩衝層30を形成する工程は不要である。
<2>擁壁の形成
図5を参照して説明すると、緩衝層30の表面全面を適宜の層厚の擁壁40で被覆して本設土構造物10を得る。
本設土構造物10の構築にあたっては、仮設土構造物20をすべて活用し、仮設土構造物20の側面を緩衝層30と擁壁40の二層で被覆するだけでよいので、仮設土構造物20を解体撤去する時間と労力が不要となり、短期間のうちに経済的に施工することができる。
<3>路床の形成
本設土構造物10を道路の路盤として活用する場合は、図5に示すように本設土構造物10の上面に路床29と舗装24を形成して、各種車両の走行面として活用する。
本設土構造物10を鉄道の路盤として活用する場合は、本設土構造物10の上面に路床を形成した後にレールを敷設する。
本設土構造物10の使途も道路や鉄道に限定されるものではなく、本設土構造物10の上面には使途に応じた構造物を構築する。
<4>本設土構造物の側面の保護
擁壁40が本設土構造物10の外周面を被覆して保護している。
したがって、本設土構造物10の外観がよくなるだけでなく、擁壁40が紫外線の遮断、降雨による緩衝層30の流出防止、飛来物からの防護部材として機能する。
<5>仮設土構造物の耐震性
本発明に係る兼用型の本設土構造物10は仮設土構造物20を主体として構築するものである。
そのため、仮設土構造物20が単独で有する耐震性に加えて、緩衝層30及び擁壁40の自重が仮設土構造物20の側面の変位を拘束する部材として機能するため、本設土構造物10の耐震性は仮設土構造物20と比べて高くなる。
殊に、巨大地震により仮設土構造物20を構成する大型土のう21,25の一部が変位して孕み出る場合がある。このような場合でも、緩衝層30がこの変位を吸収するので、擁壁40に亀裂が生じたり破損したりすることがない。
したがって、本設土構造物10はその耐震性が著しく向上することから、大規模地震に対して有効であるとともに、本設構造物として長期に亘って使用することができる。
[実施例2]
以降に変形例と他の実施例について説明するが、その説明に際し、前記した実施例と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
<1>仮設兼用型の本設土構造物
本例では、海岸線や山岳地帯等の傾斜地に構築した仮設兼用型の本設土構造物10について説明する。
図6,7を参照して説明すると、本実施例に係る仮設兼用型の本設土構造物10は、複数の大型どのうを縦横方向に積み上げて構成する仮設土構造物20と、仮設土構造物20の一側面を被覆する緩衝層30と、緩衝層30の表面を覆う擁壁40とを具備する。
<2>仮設土構造物
図6に示すように、本例では仮設土構造物20を、座布団状又は略円柱状を呈する複数の扁平大型土のう21の集合体で構成する場合について説明するが、方形大型土のう25と組合せて構成してもよい。
扁平大型土のう21の中詰材は、既述した良質の粗粒中詰材23又は細粒中詰材27の何れでも使用可能である。
傾斜地に複数の扁平大型土のう21を上下左右方向へ向けて積み重ねて、傾斜した側面を有する仮設土構造物20を構築し、その上面に簡易路面28を形成して、仮設土構造物20を仮設の路体として活用する。
仮設土構造物20の耐震性等の特性は既述した実施例1で説明したとおりであるので説明を省略する。
又、仮設土構造物20の裾部を貫通させて公知のドレーン材を配置すれば、仮設土構造物20の排水性を高めることができる。
<3>本設土構造物
図7を参照して説明すると、仮設土構造物20の露出した一側面を緩衝層30で被覆し、さらに緩衝層30の表面全面を擁壁40で被覆して本設土構造物10を構築する。
本例では仮設土構造物20の一側面を緩衝層30及び擁壁40で被覆する。
<4>本例の効果
傾斜地の仮設構造物としては、ジオグリッド等の補強材の敷設工と盛土工とを交互に繰り返して構築する補強盛土構造物が広く知られている。
この補強盛土の場合は、予め傾斜地を切土すると共に、接地面を平らに整地する必要があり、工費及び工期の両面で負担が大きい。
これに対して、本実施例に係る仮設兼用型の本設土構造物10では、凹凸のある傾斜地に直接仮設土構造物20と本設土構造物10を構築することができる。
したがって、在来構造物である補強盛土構造物と比較して、工費及び工期の両面の負担を大幅に軽減できる。
[実施例3]
<1>仮設兼用型の本設土構造物
本例では、複数の扁平大型土のう21又は複数の方形大型土のう25を上方に積み上げて仮設土構造物20を構築する際に、仮設土構造物20の本体に単数又は複数の拘束帯50を追加して介装した他の実施例について説明する。
<2>拘束帯
拘束帯50は段積みした複数の扁平大型土のう21又は複数の方形大型土のう25を拘束して仮設土構造物20の全体を増強するための拘束部材である。
拘束帯50としては、例えば土砂層、砕石層、砂礫層等の粒体層、又は鋼板、コンクリート板等の硬質板等を適用できる。
拘束帯50を仮設土構造物20の水平横断方向に設置する場合、拘束帯50の形成時期は、大型どのう21,25の積み上げ作業中に形成するか、又は仮設土構造物20の完成後に形成する。
仮設土構造物20の完成後に拘束帯50を形成する方法としては、拘束帯50が粒体層である場合は、例えば仮設土構造物20に貫入させた充填用のケーシングやパイプを通じて充填するとよい。
又、拘束帯50が硬質板である場合は、例えば打ち込む等して硬質板を仮設土構造物20の内部に設置するとよい。
更に拘束帯50の配置方向は、仮設土構造物20の水平横断方向に限定されず、仮設土構造物20の縦断方向へ向けて複数の拘束帯50を追加して設置してもよい。
「縦断方向」とは、仮設土構造物20に対して縦方向だけでなく、斜め方向も含む。
縦断方向に配置する拘束体50は、仮設土構造物20の水平せん断耐力を高めるための補強部材として機能する。
換言すれば、縦断方向に配置する拘束帯50は、仮設土構造物20の側面に段積みして露出した複数の扁平大型土のう21又は複数の方形大型土のう25がダルマ落としのように飛び出すことを規制するため水平変位の拘束部材である。
縦断方向に配置する拘束帯50としては、可撓性を有するベルト材や、剛性を有する鋼棒や各種の鋼材等を使用することができる。
縦断方向に配置する拘束帯50の設置形態としては、各大型土のう21,25を貫通させて配置するか、又は貫通させずに大型土のう21,25の境界部に配置する。
縦断方向に配置する拘束帯50の設置位置は、仮設土構造物20の使途等を考慮して適宜選択するが、少なくとも仮設土構造物20の側面の表層側に設置してあればよい。
又、その全長は、水平横断方向に配置した複数の拘束帯50と交差可能な寸法を有する。
縦断方向に配置する拘束帯50を水平横断方向に配置した別途の拘束帯50と交差させる場合には、縦断方向に配置する拘束帯50を緊張して定着するか、或いは緊張せずに固定する。
縦断方向に配置する拘束帯50の設置時期は、拘束帯50の材質に応じて仮設土構造物20の施工中、又は施工後の何れでもよい。
尚、水平横断方向の拘束帯50を省略し、仮設土構造物20の縦断方向へ向けて拘束帯50のみを設置する場合もある。
<3>本例の効果
拘束帯50を仮設土構造物20の水平横断方向に配置した場合には、拘束帯50は、載荷重を利用して扁平大型土のう21又は複数の方形大型土のう25の上下面を強制的に拘束して中詰材の変位がし難くなるので、仮設土構造物20の変形防止性能が高くなる。
さらに拘束帯50を硬質板で形成した場合には、上載荷重を下位の大型土のう21,25へ分散して伝達できるので、自重を有効に活用して仮設土構造物20又は本設土構造物10の安定性が格段に向上する。
又、大型土のう21,25の中詰材の品質が良くない場合であっても、拘束帯50がこれらの大型土のう21,25を拘束することで、仮設土構造物20の変形を効果的に抑制できる。
本例では仮設土構造物20又は本設土構造物10の構築高さが高い場合の補強構造として有効である。
尚、拘束帯50が粒体層である場合には、拘束帯50は排水層としても機能する。
拘束帯50を仮設土構造物20の縦断方向へ向けて追加配置した場合には、仮設土構造物20の水平せん断耐力がさらに高まるので、仮設土構造物20の安定性が拘束帯50を水平横断方向のみに配置した場合と比べて向上するだけでなく、仮設土構造物20又は本設土構造物10として使用する際における安定姿勢の保証期間が長くなる。
[実施例4]
図9を参照して、断面略L字形を呈する複数の壁面材60を使用して緩衝層30を構築する他の実施例について説明する。
<1>壁面材
壁面材60はエキスパンドメタル、溶接金網等の帯板を略L字形に屈曲して形成した部材であり、緩衝層30を転圧する際の拘束具、及び仮設土構造物20として使用する際の緩衝層30の崩落防止材として機能する。
壁面材60は水平部61と、水平部61の一端から起立して形成した起立部62とを有する。
起立部62の高さは、例えば各大型土のう21,25の高さとほぼ同じ高さを有するか、各大型土のう21,25の高さの数倍の長さを有する。
水平部61と起立部62の寸法は適宜選択できる。
<2>仮設土構造物の構築
図9(A)に示すように、本例では仮設土構造物20を、複数の扁平大型土のう21の集合体で構成する場合について説明するが、仮設土構造物20を複数の方形大型土のう25で構成するか、又は既述したように両大型土のう21,25を組み合せて構成してもよい。
<2.1>壁面材の設置
壁面材60の設置方法としては、大型土のう21(25)を順次積み上げる際に、大型土のう21(25)の前方に壁面材60を設置しながら緩衝層30を階層的に形成する。
具体的に説明すると、最上段の大型土のう21(25)の露出端の上面に壁面材60の水平部61の一部を載置し、必要に応じて固定ピン等で固定する。
この際、壁面材60の起立部62を最上段の大型土のう21(25)の露出端の前面から離隔させておく。
つぎに壁面材60と大型土のう21,25の露出端との間に形成された空間に緩衝層30を構成する砂、土砂、砂利、砕石等の硬質粒体を撒き出して転圧する。
この際、必要に応じて起立部62の内側に不織布等の流出防止シートを付設して硬質粒体漏出を防止する。
壁面材60が硬質粒体の崩落を阻止するので、十分に締め固めた緩衝層30を形成できる。
既述した工程を繰り返して所定の高さの仮設土構造物20を得る。
施工を完了した仮設土構造物20において、各壁面材60の水平部61を上下の大型土のう21(25)の間に挟持させておくと、大型土のう21(25)の重量を活用して壁面材60を変位不能に位置決めできる。
<2.2>仮設土構造物の側面の保護構造
仮設土構造物20の使用中において、壁面材60は緩衝層30を保持して降雨による緩衝層30の流出を防止するだけでなく、緩衝層30と協働して仮設土構造物20の側面を飛来物や紫外線等から保護する防護部材としても機能する。
<3>本設土構造物の構築
図9(b)を参照して仮設土構造物20を元に本設土構造物10を構築する方法について説明する。
壁面材60の起立部62の表面全面にプレキャストブロック製、又は場所打ちコンクリート製の擁壁40を構築するだけの簡単な工程で本設土構造物10を構築することができる。
<4>本例の効果
本例にあっては、実施例1と同様の効果が得られることにくわえて、仮設土構造物20を構築した時点で仮設土構造物20を緩衝層30及び壁面材60で保護できるので、仮設土構造物20の安定性が更によくなる。
更に、本設土構造物10を構築する際には、擁壁40を構築するだけでよいので、既述した実施例と比べて本設土構造物10の工期を短縮することができる。
10・・・本設土構造物
20・・・仮設土構造物
21・・・扁平大型土のう
22・・・袋体
23・・・粗粒中詰材
25・・・方形大型土のう
26・・・函体
27・・・細粒中詰材
28・・・簡易路面
29・・・路床
30・・・緩衝層
40・・・擁壁
50・・・拘束帯
60・・・壁面材
本発明は道路、鉄道、堤防、砂防えん堤等に適用可能な土構造物に関し、特に短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行できる、仮設兼用型の本設土構造物およびその構築方法に関するものである。
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、短期間に構築した仮設構造物を利用しつつ、簡易な施工で以て耐震性能の高い本設構造物へ移行できる、仮設兼用型の本設土構造物およびその構築方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、仮設構造物及び本設土構造物の施工コストを低減できるとともに、工期も大幅に短縮できる、仮設兼用型の本設土構造物およびその構築方法を提供することにある。
本発明は、仮設構造物を利用して本設構造物を構築する仮設兼用型の本設土構造物であって、複数の大型どのうを上下左右方向に積み上げて構成する仮設土構造物と、前記仮設土構造物の側面を層状に被覆する緩衝層と、前記緩衝層の表面側を覆う擁壁とを具備し、前記大型どのうが、袋体と、該袋体に密実に充填して封入された粒状の良質中詰材とにより構成されていることを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物が上下左右方向に積み上げた複数の大型どのうと、壁面材を介して前記複数の大型どのうの側面を被覆する緩衝層とにより構成し、前記壁面材の一部が緩衝層と擁壁の間に位置して緩衝層を保持するように構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の少なくとも一側面を緩衝層及び擁壁の二層で被覆する。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物を構成する段積みした複数の大型土のうの間に、仮設土構造物を水平に横断するように単数又は複数の拘束帯を追加して介装してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の上面に簡易路面を形成してもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物の上面に路床を形成してもよい。
さらに本発明は、堤体形の仮設構造物を利用して本設構造物を構築する仮設兼用型の本設土構造物の構築方法であって、複数の大型どのうを上下左右方向に積み上げて仮設土構造物を構築し、前記大型どのうが、袋体と、該袋体に密実に充填して封入された粒状の良質中詰材とにより構成されており、前記仮設土構造物の側面を層状の緩衝層により被覆し、前記緩衝層の表面側を擁壁により被覆して本設土構造物を構築することを特徴とする。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物が上下左右方向に積み上げた複数の大型どのうと、壁面材を介して前記複数の大型どのうの側面を被覆する緩衝層とにより構成し、前記緩衝層と擁壁の間に位置させた壁面材により緩衝層を保持させてもよい。
本発明の他の形態において、前記仮設土構造物を構成する段積みした複数の大型土のうの間に、仮設土構造物の横断方向、縦断方向、又は両方向へ向けて単数又は複数の拘束帯を追加して介装してもよい。

Claims (6)

  1. 仮設構造物を利用して本設構造物を構築する仮設兼用型の本設土構造物であって、
    複数の大型どのうを上下左右方向に積み上げて構成する仮設土構造物と、
    前記仮設土構造物の側面を層状に被覆する緩衝層と、
    前記緩衝層の表面側を覆う擁壁とにより構成することを特徴とする、
    仮設兼用型の本設土構造物。
  2. 前記仮設土構造物が上下左右方向に積み上げた複数の大型どのうと、壁面材を介して前記複数の大型どのうの側面を被覆する緩衝層とにより構成し、前記壁面材の一部が緩衝層と擁壁の間に位置して緩衝層を保持することを特徴とする、請求項1に記載の仮設兼用型の本設土構造物。
  3. 前記仮設土構造物の少なくとも一側面を緩衝層及び擁壁の二層で被覆したことを請求項1又は2に記載の仮設兼用型の本設土構造物。
  4. 前記仮設土構造物を構成する段積みした複数の大型土のうの間に、仮設土構造物の横断方向、縦断方向、又は両方向へ向けて単数又は複数の拘束帯を追加して介装したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の仮設兼用型の本設土構造物。
  5. 前記仮設土構造物の上面に簡易路面を形成したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の仮設兼用型の本設土構造物。
  6. 前記仮設土構造物の上面に路床を形成したことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の仮設兼用型の本設土構造物。
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