JP3667677B2 - 飲料ディスペンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料容器内に貯えた例えばビール等の発泡飲料をガス供給手段により供給した炭酸ガスの圧力によって注出バルブまで圧送し該注出バルブの開状態にて外部に注出し閉状態にて封止するようにした飲料ディスペンサに係り、特に所望量の飲料の自動注出を可能とする飲料ディスペンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置としては、飲料容器内に対する炭酸ガスの供給圧が所定の制御目標圧力となるようにガス供給手段に介装した調圧バルブを制御する調圧制御手段と、指示手段による指示に応答して、注出バルブを所定の注出時間の間だけ開くことにより所望量の発泡飲料を注出するようにした自動注出制御手段とを備え、飲料容器に対する炭酸ガスの供給圧を常に適切な大きさに保ちながら所望量の発泡飲料を自動的に注出しようとしたものがあった。この場合、例えば実開昭64−42299号公報に示されているように、指示手段による指示時、前記自動注出制御手段が注出バルブを開く注出時間をそのときの制御目標圧力に基づき決定するようにして、飲料容器に対する炭酸ガスの供給圧の大きさに関わらず常に所望量の発泡飲料を注出できるようにしようとしたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般に、飲料容器に対する実際の炭酸ガスの供給圧を常に制御目標圧力と同じ大きさに保つことは困難である。特に、実際の炭酸ガスの供給圧が制御目標圧力より高い場合は、発泡飲料の注出によってガス圧が下がるのを待つか、又は飲料容器内の炭酸ガスを抜く機構を別途設けておいて同機構の制御によりガス圧を下げるようにするかなどしなければならなかったため、実際の炭酸ガスの供給圧を制御目標圧力に追従させることが困難であった。したがって、この場合、上記制御目標圧力に基づき注出時間を決定する従来装置においては、実際より低い圧力に基づき注出時間を決定することになるため、注出時間が長くなりすぎて、発泡飲料を多く注出しすぎて外部のジョッキなどから溢れさせてしまうことがあった。
【0004】
一方、上記問題に対処するために、ガス供給手段が飲料容器内に供給している炭酸ガスの圧力を検出する圧力センサを設けておいて該圧力センサにより検出した実際の炭酸ガスの供給圧に基づき注出時間を決定するようにするということが考えられるが、この場合、特に、実際の炭酸ガスの供給圧が制御目標圧力の近傍であった場合は、発泡飲料の注出時、注出に伴うガス圧の低下とそれに対する調圧制御手段のフィードバック制御により実際の炭酸ガス圧が制御目標圧力の近傍にて不安定となりがちであるため、適切な注出時間を決定して所望量の発泡飲料を的確に注出することが困難となる。
【0005】
【発明の概要】
本発明の目的は、注出のしすぎを回避した上で所望量の発泡飲料を的確に注出する飲料ディスペンサを提供することにある。
【0006】
本発明の構成上の特徴は、前記調圧制御手段及び自動注出制御手段を備えた飲料ディスペンサにおいて、前記ガス供給手段が飲料容器内に供給している炭酸ガスの圧力を検出する圧力センサと、前記指示手段による指示時、圧力センサにより検出されたそのときの炭酸ガスの供給圧が前記制御目標圧力より所定圧だけ高い閾圧以下であった場合は前記自動注出制御手段が参照する注出時間を制御目標圧力に基づき決定し、前記圧力センサによる検出圧が前記閾圧より高かった場合は前記注出時間を前記検出圧に基づき決定する注出時間決定手段とを設けたことにある。
【0007】
上記構成を有する飲料ディスペンサにおいては、実際の炭酸ガスの供給圧が制御目標圧力の近傍以下であった場合は、制御目標圧力に基づき注出時間が決定される。したがって、この場合、発泡飲料注出中の不安定な実際の炭酸ガス圧に基づき不適切な注出時間を決定することもないため、所望量の発泡飲料を的確に注出することができる。一方、実際の炭酸ガスの供給圧が制御目標圧力より所定圧以上高かった場合は、圧力センサにより検出された実際の炭酸ガスの供給圧に基づき注出時間が決定される。したがって、この場合、実際の炭酸ガスの供給圧より低い圧力に基づき長すぎる注出時間を決定することもないため、発泡飲料を多く注出しすぎて外部のジョッキなどから溢れさせることを回避できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。同実施形態は、本発明による飲料ディスペンサとして図1,2に示したビールサーバを採用したものである。このビールサーバは、ビール樽80(飲料容器)内に貯えたビール(発泡飲料)を、ガスボンベ90(ガス供給手段)により供給した炭酸ガスの圧力によって本体10の前面に配設した注出コック11(注出バルブ)まで圧送し適宜注出するようにしたものである。
【0009】
注出コック11は、図示しない弁機構を内蔵して構成されており、切換駆動機構12によるレバー11aの傾倒操作に応じて、ビール樽80から圧送されたビールを液ノズル11bから液状態にて注出する液注出状態(開状態)と、前記ビールを泡ノズル11cから泡状態にて注出する泡注出状態(開状態)と、前記ビールを封止する中立状態(閉状態)とで切り換えられるようになっている。注出コック11の下方には、ビールジョッキを載置するためのジョッキ台13が配設されている。ジョッキ台13は、注出コック11からのビールの注出状況に応じて傾動駆動機構14により駆動されて起立状態又は傾斜状態に保たれるようになっている。
【0010】
本体10内には、ビール樽80からサイフォン管81、ディスペンサヘッド82、及びビール供給ホース83を通して圧送されたビールを注出コック11まで導くビール供給管15が収容されている。ビール供給管15のコイル状中間部15aは、冷却装置16により冷却される冷却水を貯えた冷却水タンク17内に収容されており、この冷却水タンク17内の冷却水によって供給管中間部15a内のビールが注出コック11に供給されるまでに冷却されるようになっている。ビール供給管15のコイル状中間部15aの上流位置には、同位置におけるビールの温度を検出する温度センサ18が収容されている。
【0011】
本体10内には、ガス供給管19(ガス供給手段)も収容されている。ガス供給管19は、ガスボンベ90から定圧バルブ91により所定圧力(例えば、0.5MPa)に減圧されてガス供給ホース92を通して供給された炭酸ガスを、ガス供給ホース84及びディスペンサヘッド82を通してビール樽80内に供給するものである。ガス供給管19には、電気的に開閉制御されて上記ビール樽80に供給する炭酸ガスの圧力を調整する調圧バルブ21と、同炭酸ガスの圧力を検出する圧力センサ22が介装されている。調圧バルブ21の下流及び圧力センサ22の上流には、それぞれガス供給管19の開度を調整するための開度調整バルブ21a,22aが介装されている。
【0012】
本体10の前面には、操作パネル23が設けられている。操作パネル23は、注出ボタン23a、液ボタン23b、及び泡ボタン23cを備えている(図2にのみ示す)。注出ボタン23aは、所定量のビールを自動的に注出する自動注出モード、又は自動注出モードにて注出するビールの量を設定するための注出量設定モードのうちから当該ビールサーバの動作モードを選択するためのものである。液ボタン23b及び泡ボタン23cは、注出ボタン23aによる注出量設定モードの選択中などにそれぞれ液状態及び泡状態のビールの注出の開始及び停止を指示するためのものである。各ボタン23a〜23cは、非操作時に常にオフ状態に保たれる常開スイッチである。
【0013】
各駆動機構12,14及び操作パネル23には、注出制御回路24が接続されている。注出制御回路24はマイクロコンピュータにより構成されており、図3に示したフローチャートに対応したプログラムを実行して、各駆動機構12,14の作動を制御する。注出制御回路24は、注出量設定モードにて計測した基準注出時間T1,T2を記憶するためのメモリ24aと、それぞれ液状態及び泡状態のビールの注出時間を計測するための液注出タイマ24b及び泡注出タイマ24cとを内蔵している。
【0014】
各センサ18,22及び調圧バルブ21には、調圧制御回路25が接続されている。調圧制御回路25もマイクロコンピュータにより構成されており、図4,5に示したフローチャートに対応したプログラムを実行して調圧バルブ21の作動を制御する。調圧制御回路25は、注出量設定モードにおける基準注出時間T1,T2の設定記憶時にビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧Psを記憶するメモリ25aを内蔵している。各制御回路24,25は互いに接続されており、それぞれの制御情報を相互に入出力できるようになっている。
【0015】
次に、上記のように構成した当該ビールサーバの動作について、図3〜5のフローチャートに沿って説明する。最初、図示しない電源スイッチが投入されると、冷却装置16が冷却水タンク17内の水を冷却し始めるとともに、各制御回路24,25がそれぞれ図3,4のステップ100,200にてプログラムの実行を開始する。注出制御回路24は、まず、ステップ102にて、いずれかのボタン23a〜23cがオン操作されるのを待つ。
【0016】
上記ステップ102における待機中、ジョッキ台13にビールジョッキが載置されて、液ボタン23bがオン操作されると、注出制御回路24はプログラムをステップ104へ進めて液状態のビールの注出を開始する。このとき、注出制御回路24は、液ボタン23bがオン状態に保たれている間、注出コック11を液注出状態に保ち、ビール樽80から圧送されたビールを注出コック11により液状態にて注出する。
【0017】
一方、上記ステップ102における待機中、泡ボタン23cがオン操作された場合、注出制御回路24はプログラムをステップ106へ進めて泡状態のビールの注出を開始する。このとき、注出制御回路24は、泡ボタン23cがオン状態に保たれている間、注出コック11を泡注出状態に保ち、ビール樽80から圧送されたビールを注出コック11から泡状態にて注出する。
【0018】
一方、上記ステップ102における待機中、注出ボタン23aがオン操作されてかつそのオン状態が所定時間以上保たれた場合、当該ビールサーバは注出量設定モードとなり、注出制御回路24はプログラムをステップ108へ進めて注出量設定処理を実行する。同処理中、注出制御回路24は、液ボタン23b又は泡ボタン23cがオン操作される毎に、注出コック11を液注出状態又は泡注出状態に切り換えて液状態又は泡状態のビールを注出する。そして、各状態のビールを注出した各総時間を液注出タイマ24b及び泡注出タイマ24cを用いてそれぞれ基準注出時間T1,T2として計測しメモリ24aに記憶する。これにより、ジョッキ台13上のビールジョッキ内に所望量のビールが注出され、同注出に要した時間が基準注出時間T1,T2として設定記憶されることになる。なお、上記ビールの注出中、ジョッキ台13は傾動駆動機構14により駆動されて傾斜状態及び起立状態に適宜保たれる。上記注出の完了後、注出ボタン23aのオン状態が解除されると、注出制御回路24はこの注出量設定処理を終了してプログラムをステップ102へ戻す。
【0019】
ところで、前記電源スイッチの投入時には、調圧制御回路25も図4のステップ200にてプログラムの実行を開始している。調圧制御回路25は、プログラムの実行開始時、まずステップ202にて初期設定を実行して、制御目標圧力P0、目標下限圧力P0’、及び目標上限圧力P0”の初期値を設定する。具体的には、そのとき圧力センサ22により検出したビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧Pxを制御目標圧力P0の初期値として設定し、その制御目標圧力P0より所定圧(例えば、0.005MPa)だけ低い圧力を目標下限圧力P0’として設定し、その制御目標圧力P0より所定圧(例えば、0.015MPa)だけ高い圧力を目標上限圧力P0”として設定する。ただし、検出圧力Pxが所定の最大目標圧力Pmax(例えば、0.39MPa)より高かった場合は最大目標圧力Pmaxを制御目標圧力P0の初期値として設定し、検出圧力Pxが所定の最小目標圧力Pmin(例えば、0.2MPa)より低かった場合は最小目標圧力Pminを制御目標圧力P0の初期値として設定する。また、このときフラグFLGの値を“0”に設定する。フラグFLGは、値“1”にて液状態のビールの注出が開始されたことを表すものである。
【0020】
上記初期設定後、調圧制御回路25は、ステップ204〜232からなる循環処理を繰り返し実行して、ガスボンベ90からビール樽80への炭酸ガスの供給圧を制御する。
【0021】
ステップ204〜208は、上記炭酸ガスの供給圧を制御目標圧力P0の近傍に保つための処理である。この場合、調圧制御回路25は、まずステップ204にて、圧力センサ22により検出したビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧Pxと、前記ステップ202又は後述するステップ228にて設定した目標下限圧力P0’及び目標上限圧力P0”とを比較判定する。このとき、検出圧力Pxが目標下限圧力P0’より低かった場合は、プログラムをステップ206へ進めて調圧バルブ21を開き炭酸ガスの供給圧を上げる。一方、このとき検出圧力Pxが目標上限圧力P0”より高かった場合は、プログラムをステップ208へ進めて調圧バルブ21を閉じ上記ガス圧の上昇を停止させる。また、このとき検出圧力Pxが制御目標圧力P0の近傍にあって目標下限圧力P0’と目標上限圧力P0”の間にあった場合は、調圧バルブ21のそれまでの状態を保ったままプログラムをステップ210へ進める。上記循環処理中、これらステップ204〜208からなる処理が繰り返し実行されることにより、調圧バルブ21が適宜開閉制御されて、ビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧は、通常、図6に示したように、調圧バルブ21が開かれることによる上昇とビールの注出に伴う低下を繰り返しながら、目標下限圧力P0’と目標上限圧力P0”の間に保たれることになる。
【0022】
ステップ210においては、注出制御回路24が後述するビールの自動注出を開始しようとしているか否かを判定し、このとき自動注出開始時でなければ「NO」と判定してプログラムをステップ212へ進める。ステップ212においては、フラグFLGが値“1”であるか否かを判定するが、最初、前記ステップ202の初期設定によりフラグFLGが値“0”に設定されたままであれば、「NO」と判定してプログラムをステップ214へ進める。ステップ214においては、注出制御回路24の制御下にて注出コック11が液状態のビールの注出を開始しようとしているか否かを判定し、このときビールの注出開始時でなければ「NO」と判定してプログラムをステップ204へ戻す。
【0023】
上記ステップ204〜214からなる処理の繰り返し実行中、液ボタン23bがオン操作されるか又は後述する自動注出が指示されるかして、注出コック11が注出制御回路24の制御下にて液注出状態に移行して液状態のビールの注出を開始すると、調圧制御回路25はステップ214にて「YES」と判定してプログラムをステップ216以降へ進める。ステップ216においては、温度センサ18により、注出開始時の飲料供給管15内のビールの温度を注出前温度kaとして計測する。ステップ218においては、フラグFLGの値を液状態のビールの注出が開始されたことを表す値“1”に設定する。ステップ220においては、注出制御回路24の制御下にて注出コック11が上記開始した液状態のビールの注出を停止しようとしているか否かを判定し、このときビールの注出停止時でなければ「NO」と判定してプログラムをステップ204へ戻す。
【0024】
上記ステップ218におけるフラグFLGの設定により、調圧制御回路25は、次回以降、ステップ212の実行時に「YES」と判定してステップ214〜218の処理を実行することなくプログラムをステップ220へ進めるようになるため、以後、ステップ204〜208からなる処理及びステップ210,212,220の各判定処理を繰り返し実行することになる。この繰り返し実行中、注出コック11は液注出状態に保たれて液状態のビールを注出し続ける。そして、液ボタン23bのオン状態が解除されるか又は自動注出が終了するかして、注出コック11が注出制御回路24の制御下にて中立状態に戻され上記液状態のビールの注出を停止すると、調圧制御回路25はステップ220にて「YES」と判定してプログラムをステップ222以降へ進める。ステップ222においては、温度センサ18により、注出終了時の飲料供給管15内のビールの温度を注出後温度kbとして計測する。ステップ224においては、フラグFLGの値を再び値“0”に設定する。
【0025】
ステップ226においては、上記ステップ216,222にてそれぞれ計測した注出前温度ka及び注出後温度kbの変化率から、予め実験などに基づき設定記憶したマップを参照してビール樽80の温度Kを推定し算出する。ステップ228においては、同算出した樽温度Kから、予め記憶した図7に示したマップを参照して、ビール樽80に対する炭酸ガスの適切な供給圧を制御目標圧力P0として算出する。樽温度K及び制御目標圧力P0は、樽温度Kが所定温度K1(例えば、15℃)以上かつ所定温度K2(例えば、34℃)以下であって制御目標圧力P0が最小目標圧力Pminより低くならずかつ最大目標圧力Pmaxより高くならない範囲においては比例関係にあり、樽温度Kが高くなるにつれて制御目標圧力P0も高い値に設定するようにして、ビール中の炭酸ガス量を常に飲用に適した所定量に保つようにしている。一方、樽温度Kが所定温度K1以下である領域においては、樽温度Kが低くなっても制御目標圧力P0をそれ以上に低くすることなく最小目標圧力Pminに保つようにして、ビールを確実に注出コック11まで圧送するようにしている。また、樽温度Kが所定温度K2以上である領域においては、樽温度Kが高くなっても制御目標圧力P0をそれ以上に高くすることなく最大目標圧力Pmaxに保つようにして、ビール樽80が膨張したりビールの流速が速くなりすぎたりするのを回避するようにしている。そして、調圧制御回路25は、前記ステップ202の初期設定時と同様に、算出した制御目標圧力P0より所定圧だけ低い圧力を目標下限圧力P0’として設定し、同制御目標圧力P0より所定圧だけ高い圧力を目標上限圧力P0”として設定する。
【0026】
ステップ230においては、当該ビールサーバが注出量設定モードにあって注出制御回路24が前述した注出量設定処理の実行中であるか否かを判定し、このとき注出量設定中でなければ「NO」と判定してプログラムをステップ204へ戻す。一方、このとき注出量設定中であれば、「YES」と判定して、ステップ232にて上記ステップ228にて算出した制御目標圧力P0を設定時圧力Psとしてメモリ25aに記憶する。このとき、既にメモリ25aに設定時圧力Psが記憶されている場合には、その記憶されている設定時圧力Psを書き換えて更新する。そして、プログラムをステップ204へ戻して、再びステップ206〜214からなる処理を繰り返し実行する。
【0027】
上述のように、調圧制御回路25は、ステップ202における初期設定後、ステップ204〜232からなる循環処理を繰り返し実行する。このとき、当該ビールサーバの動作モードに関わらず注出コック11が液状態のビールを注出する毎に注出前温度ka及び注出後温度kbを計測し、同計測した各温度ka,kbに基づき樽温度Kを推定して算出する。そして、同算出した樽温度Kに応じて制御目標圧力P0を算出し、ビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧を目標下限圧力P0’と目標上限圧力P0”の間に保って同算出した制御目標圧力P0の近傍に保つように調圧バルブ21を適宜開閉制御する。また、注出量設定中であれば、上記算出した制御目標圧力P0を設定時圧力Psとして記憶する。
【0028】
次に、上記注出量設定モードにて設定した量のビールを自動的に注出するようにした当該ビールサーバの自動注出モードについて説明する。注出制御回路24は、前記図3のステップ102における待機中、注出ボタン23aがオン操作されてかつそのオン状態が所定時間内に解除されると、プログラムをステップ110以降へ進めてビールの自動注出を開始する。このとき、調圧制御回路25は、図4のステップ210にて「YES」と判定してプログラムをステップ234へ進め、補正値α1,α2を算出する。補正値α1,α2は、前記注出量設定モードにて液状態及び泡状態のビールに対しそれぞれ計測して設定した基準注出時間T1,T2を補正して自動注出モードにて実際に液状態及び泡状態のビールを注出する注出時間T1’,T2’を決定するためのものであり、炭酸ガスの圧力差を思量した上で基準注出時間T1,T2の設定時と同量のビールを注出できるようにその値を決定されるものである。
【0029】
ここで、補正値α1,α2の算出方法と用い方について具体的に説明する。まず、一般に、注出量Qと、ビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧P、及び注出時間Tとの関係は、供給圧Pが所定圧以上である条件下において、下記数1のように表される。
【0030】
【数1】
Q=(a・P+b)・T
上記式中において、a,bはそれぞれ実験により予め求められる定数である。上記数1を前述した注出量設定モードにおけるビール注出時について適用すると、液状態及び泡状態のビールについてそれぞれ下記数2,3が成り立つ。
【0031】
【数2】
Q1=(a1・Ps+b1)・T1
【0032】
【数3】
Q2=(a2・Ps+b2)・T2
なお、a1,b1,a2,b2を定める際、基準とする注出量Q1,Q2は、液状態のビールについては質量とし、泡状態のビールについては体積とするとよい。
【0033】
次に、自動注出モードにおけるビール注出時、上記注出量設定モードにおける注出時と同量の注出量Q1,Q2を得ようとすれば、その注出に要する注出時間T1’,T2’はそのときの炭酸ガスの供給圧Pを用いて下記数4,5により与えられる。
【0034】
【数4】
Q1=(a1・P+b1)・T1’
【0035】
【数5】
Q2=(a2・P+b2)・T2’
数2〜5から、下記数6,7が成立する。
【0036】
【数6】
T1’={(a1・Ps+b1)/(a1・P+b1)}・T1
【0037】
【数7】
T2’={(a2・Ps+b2)/(a2・P+b2)}・T2
ここで、補正値α1,α2を下記数8,9のように定める。
【0038】
【数8】
α1=(a1・Ps+b1)/(a1・P+b1)
【0039】
【数9】
α2=(a2・Ps+b2)/(a2・P+b2)
数8,9を用いれば、数6,7は下記数10,11のように表される。
【0040】
【数10】
T1’=α1・T1
【0041】
【数11】
T2’=α2・T2
これにより、炭酸ガスの圧力差を思量した上で、基準注出時間T1,T2の設定時と同量のビールを注出するのに要する注出時間T1’,T2’を算出することができる。
【0042】
調圧制御回路25は、前記ステップ234における補正値α1,α2の算出の際、図5にて詳細に示したように、まず、そのときの圧力センサ22による検出圧力Pxと目標上限圧力P0”とを比較判定する(ステップ302)。このとき、前記図4のステップ204〜208からなる処理の繰り返し実行によりビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧が制御目標圧力P0に十分に追従していてその近傍に保たれており、圧力センサ22による検出圧力Pxが目標上限圧力P0”以下であった場合は、プログラムをステップ304へ進めて、上記数8,9にて炭酸ガスの供給圧Pとして制御目標圧力P0を採用した下記数12,13の算出式に従い補正値α1,α2を算出する。
【0043】
【数12】
α1=(a1・Ps+b1)/(a1・P0+b1)
【0044】
【数13】
α2=(a2・Ps+b2)/(a2・P0+b2)
一方、前記電源スイッチの投入若しくはビール樽80の交換から間もない場合など、圧力センサ22により検出されたガス供給圧Pxが制御目標圧力P0に十分に追従しておらず目標上限圧力P0”より大きかった場合は、プログラムをステップ306へ進めて、上記数8,9にて炭酸ガスの供給圧Pとして検出圧力Pxを採用した下記数14,15の算出式に従い補正値α1,α2を算出する。
【0045】
【数14】
α1=(a1・Ps+b1)/(a1・Px+b1)
【0046】
【数15】
α2=(a2・Ps+b2)/(a2・Px+b2)
上記ステップ304又はステップ306における補正値α1,α2の算出後、調圧制御回路25は、図4のステップ236にて同算出した補正値α1,α2を注出制御回路24に対して出力する。このとき、注出制御回路24は、その調圧制御回路25から入力した補正値α1,α2に基づいて、図3のステップ110にて、上記数10,11の算出式に従い注出時間T1’,T2’を決定する。そして、ステップ112にて、液注出タイマ24b及び泡注出タイマ24cにより時間を計測しながら同決定した注出時間T1’,T2’の間だけ注出コック11を液注出状態及び泡注出状態にそれぞれ保つことにより、液状態及び泡状態のビールを順次注出する。なお、上記ビールの注出中、ジョッキ台13は傾動駆動機構14により駆動されて傾斜状態及び起立状態に適宜保たれる。上記自動注出が完了すると、注出制御回路24はプログラムをステップ102へ戻して再びいずれかのボタン23a〜23cが操作されるのを待つ。
【0047】
上述のように、上記実施形態においては、調圧制御回路25が、図4のステップ204〜208からなる処理を繰り返し実行して、ビール樽80に対する炭酸ガスの供給圧を制御目標圧力P0の近傍に保つように調圧バルブ21を適宜開閉制御する。一方、注出制御回路24は、注出ボタン23aのオン操作に応じて図3のステップ112の処理を実行し、注出コック11を注出時間T1’,T2’の間だけ液注出状態及び泡注出状態にそれぞれ保つことにより、液状態及び泡状態のビールを順次自動注出する。
【0048】
上記場合において、注出時間T1’,T2’は、予め設定されている基準注出時間T1,T2と補正値α1,α2とに基づき決定される。ここで、補正値α1,α2は、注出ボタン23aのオン操作時、そのときの圧力センサ22による検出圧力Pxが目標上限圧力P0”以下であった場合は、図5のステップ304にて、基準注出時間T1,T2設定時の圧力Psと制御目標圧力P0とに基づき算出される。一方、そのときの圧力センサ22による検出圧力Pxが目標上限圧力P0”より大きかった場合は、図5のステップ306にて、設定時圧力Psと圧力センサ22による検出圧力Pxとに基づき算出される。
【0049】
すなわち、上記実施形態においては、実際の炭酸ガスの供給圧Pxが制御目標圧力P0の近傍以下であった場合は、制御目標圧力P0に基づき注出時間T1’,T2’が決定されることになる。したがって、この場合、図6に示したようなビール注出中の不安定な実際の炭酸ガス圧に基づき不適切な注出時間を決定することもないため、注出量設定モードにて設定した所望量のビールを的確に注出することができる。一方、実際の炭酸ガスの供給圧Pxが制御目標圧力P0より所定圧以上高かった場合は、圧力センサにより検出された実際の炭酸ガスの供給圧Pxに基づき注出時間T1’,T2’が決定されることになる。したがって、この場合、実際の炭酸ガスの供給圧より低い圧力に基づき長すぎる注出時間を決定することもないため、ビールを多く注出しすぎて外部のジョッキなどから溢れさせることを回避できる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、補正値α1,α2の算出の際に参照する圧力を制御目標圧力P0と検出圧力Pxのうちから選択するための閾圧として目標上限圧力P0”を採用したが、閾圧としては、目標上限圧力P0”より若干高い圧力を設定しておくようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るビールサーバの全体概略図である。
【図2】前記ビールサーバの電気制御部を表すブロック図である。
【図3】図1,2の注出制御回路により実行されるプログラムに対応したフローチャートである。
【図4】図1,2の調圧制御回路により実行されるプログラムに対応したフローチャートである。
【図5】図4の補正値の算出の詳細を表すフローチャートである。
【図6】図1,2の調圧バルブの状態と炭酸ガスの供給圧との関係を表すタイムチャートである。
【図7】図1,2のビール樽の温度と制御目標圧力との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
10…ビールサーバ本体、11…注出コック、19…ガス供給管、21…調圧バルブ、22…圧力センサ、23a…注出ボタン、24…注出制御回路、25…調圧制御回路、80…ビール樽、90…ガスボンベ。
Claims (1)
- 飲料容器内に貯えた発泡飲料をガス供給手段により供給した炭酸ガスの圧力によって注出バルブまで圧送し該注出バルブの開状態にて外部に注出し閉状態にて封止するようにした飲料ディスペンサであって、
前記飲料容器内に対する炭酸ガスの供給圧が所定の制御目標圧力となるように前記ガス供給手段に介装した調圧バルブを制御する調圧制御手段と、
指示手段による指示に応答して、前記注出バルブを所定の注出時間の間だけ開くことにより所望量の発泡飲料を注出するようにした自動注出制御手段とを備えた飲料ディスペンサにおいて、
前記ガス供給手段が飲料容器内に供給している炭酸ガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記指示手段による指示時、前記圧力センサにより検出されたそのときの炭酸ガスの供給圧が前記制御目標圧力より所定圧だけ高い閾圧以下であった場合は前記自動注出制御手段が参照する注出時間を前記制御目標圧力に基づき決定し、前記圧力センサによる検出圧が前記閾圧より高かった場合は前記注出時間を前記検出圧に基づき決定する注出時間決定手段とを設けたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
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